(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093152
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ずり積込み装置
(51)【国際特許分類】
E21D 9/12 20060101AFI20240702BHJP
B62D 55/06 20060101ALI20240702BHJP
E21F 13/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
E21D9/12 B
B62D55/06
E21F13/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209346
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】522503447
【氏名又は名称】坂本 匠
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(72)【発明者】
【氏名】坂本 匠
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054DA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ずりの大小に拘わらず、極めて低コストで小断面トンネルの掘進工事において切羽部分のずりを連続して高効率に隣接の搬送車両に積込むことができるずり積込み装置を提供する。
【解決手段】トンネル内工事現場から出るずりを搬出車両荷台に積み込むためのずり積込み装置であり、クローラ及び運転席を含む走行装置より上位であってクローラ走行方向に沿うように直線状に載置されたベルトコンベアと、ベルトコンベアの一部を走行装置に枢着させる枢着部と、ベルトコンベアの投入端を地面に接地させる状態と、地面から浮かせて走行装置を走行可能とする状態と、に変位させる変位機構と、を含む。走行装置とベルトコンベアのみの構成により装置を軽量、小型化して低コストで装置を製造し得る。また、搬送路途中でずりのサイズのために搬送を中断させることなく連続した安定搬送ができ、トンネル切羽部でのずり排出のための搬送作業を高効率に遂行できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内工事現場から出るずりを搬出車両荷台に積み込むためのずり積込み装置であり、クローラ及び運転席を含む走行装置より上位であってクローラ走行方向に沿うように直線状に載置されたベルトコンベアと、
ベルトコンベアの一部を走行装置に枢着させる枢着部と、
ベルトコンベアの投入端を地面に接地させる状態と、地面から浮かせて走行装置を走行可能とする状態と、に変位させる変位機構と、を含むことを特徴とするずり積込み装置。
【請求項2】
ベルトコンベアの投入端が地面に接地する状態から少なくともベルトコンベア全体が略
水平状態となる可動範囲で枢着部においてベルトコンベアの積込み投入端側を回動可能な
ようにベルトコンベアが設けられていることを特徴とする請求項1記載のずり積込み装置
。
【請求項3】
ベルトコンベアの投入端を地面から浮かせて運転席に着座した状態で運転者が走行装置を走行運転するとともに、ベルトコンベアの投入端を地面に接地させた状態で地上から運転席外の運転者が操作可能なようにベルトコンベアの直下面側に操作部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のずり積込み装置。
【請求項4】
変位機構は、ベルトコンベアの積込み投入端寄り側のコンベアフレームと上端側を枢支連結しベルトコンベアの積込み投入端側を上下移動させるシリンダ装置を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のずり積込み装置。
【請求項5】
運転席は運転席外の側方からの操作子の操作で少なくとも装置の起動・停止スイッチ及び、ベルトコンベア投入端側の上下動操作を可能とする外部開放型の運転席であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のずり積込み装置。
【請求項6】
ずり積込み装置の移動時にベルトコンベアの揺動を抑制する揺動抑制装置が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のずり積込み装置。
【請求項7】
ベルトコンベアの上方にずり積込み装置の一部を成す構造体が設けられていないことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のずり積込み装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内の掘削ずり排出時のずり積込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内空断面10m2未満の小断面トンネルが知られており、地方の新興開発地域や山間部、島嶼部、その他において例えば農業用水用トンネルや、水力発電ダム用水路トンネルとしてある程度の構築の需要がある。トンネルは、一般に「2地点間の交通と物資の輸送あるいは貯留などを目的とし、建設される地下の空間」であり、断面の高さあるいは幅に比べて軸方向に細長い地下空間であるとされている。小断面トンネル構築における掘進工法においては、断面の横及び縦サイズが例えばそれぞれ2~3メートル程度であり、バケットやショベルを搭載したブームを旋回したり広範な範囲を首振りしながらの中規模以上等の重機掘削作業はできない。トンネル掘進工においては、発破後に切羽から生じる岩石等を短時間で効率よく、かつ低コストの設備で坑外へ搬送させることが掘進を継続する上で必要である。また、暗所で閉鎖した空間での作業でもある点から作業者の労働環境の点からも迅速なずりの撤去が望まれる。従来、特許文献1においてトンネル内のずりの搬送方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1はトンネル掘削工事の際の発破作業において生じた岩石等のずりをトンネル外へ搬送する方法において、切羽で生じたずりをショベルローダで移動式クラッシャへ供給して所望のサイズまで破砕した後、毎日トンネル掘進距離に応じて伸長する延伸ベルトコンベヤを経由してトンネル外へ搬送することによりトンネル内のずりをトンネル外へ搬送するものである。
【0005】
特許文献1のずり搬送方法では、ショベルローダーから移動式クラッシャへずりを移載させる際にずりを掻き入れたショベルからずりを移動式クラッシャの振動フィーダに投入するからその都度ショベルローダーを旋回する必要があり、工程上の作業及び時間ロスを生じる。また、小断面トンネル内では旋回範囲の点から、小型のショベルローダーしか使用できず、一度のショベルローダーから移動式クラッシャ側へのずりの移動量が大きく確保できず効率が劣る。さらに、この方法で用いられる移動式クラッシャは、振動フィーダ、ジョークラッシャ、並びに搬送コンベアを装備するから、リース等のコストが高額である。さらに、フィーダにより除かれた800mm以上のずりや、クラッシャマシンで処理できない岩石を含むずりは、結局処理できないまま積み残されることとなり、処理困難なずりを堆積させてしまう欠点があった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、ずりの大小に拘わらず、かつ極めて低コストで小断面トンネルの掘進工事において切羽部分のずりを連続して高効率に隣接の搬送車両に積込むことができるずり積込み装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、トンネル内工事現場から出るずり200を搬出車両102荷台に積み込むためのずり積込み装置1であり、クローラ10及び運転席20を含む走行装置2より上位であってクローラ走行方向に沿うように直線状に載置されたベルトコンベア3と、ベルトコンベアの一部を走行装置に枢着させる枢着部と、ベルトコンベア3の投入端301を地面に接地させる状態と、地面から浮かせて走行装置2を走行可能とする状態と、に変位させる変位機構5と、を含むずり積込み装置1から構成される。
【0008】
その際、ベルトコンベア3の投入端301が地面に接地する状態から少なくともベルト
コンベア3全体が略水平状態となる可動範囲で枢着部4においてベルトコンベア3の積込
み投入端301側を回動可能なようにベルトコンベア3が設けられている構成としてもよ
い。
【0009】
また、ベルトコンベア3の投入端301を地面から浮かせて運転席20に着座した状態で運転者が走行装置2を走行運転するとともに、ベルトコンベア3の投入端301を地面に接地させた状態で地上から運転席外の運転者が操作可能なようにベルトコンベア3の直下面側に操作部18が設けられていることとしてもよい。
【0010】
更に、変位機構5は、ベルトコンベア3の積込み投入端301寄り側のコンベアフレーム26と上端側を枢支連結しベルトコンベア3の積込み投入端301側を上下移動させるシリンダ装置7を含むこととしてもよい。
【0011】
また、運転席20は運転席外の側方からの操作子24の操作で少なくとも装置の起動・停止スイッチ及び、ベルトコンベア投入端301側の上下動操作を可能とする外部開放型の運転席20であることとしてもよい。
【0012】
また、ずり積込み装置1の移動時にベルトコンベア3の揺動を抑制する揺動抑制装置9が設けられていることとするとよい。
【0013】
また、ベルトコンベア3の上方にずり積込み装置1の一部を成す構造体が設けられていない構成とするとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のずり積込み装置によれば、ずりの大小に拘わらず、かつ極めて低コストで小断面トンネルの掘進工事において切羽部分のずりを連続して高効率に隣接の搬送車両に積込むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係るベルトコンベアの一端を地面から浮かせた状態の本発明のずり積込み装置の側面図である。
【
図3】
図1のずり積込み装置のベルトコンベアを除いた状態の一部省略平面説明図である。
【
図4】ベルトコンベアと昇降装置の枢支部の拡大斜視説明図である。
【
図5】ベルトコンベアの支軸部の拡大説明図である。
【
図6】(a)は、
図1の装置の揺動抑制装置の要部拡大斜視図、(b)は揺動抑制装置の要部の作用説明図である。
【
図7】ベルトコンベアの投入端側を着地させた状態のずり積込み装置の側面図である。
【
図8】(a)は、本発明のずり積込み装置を用いた作業状態を示す縦断面説明図である。(b)は、同横断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ本発明のずり積込み装置の実施形態について説明する。
【0017】
本発明に係るずり積込み装置は、小断面トンネル中、断面サイズが内法で例えば横幅2メートル、高さ2.5メートル程度の極小断面トンネル等に適用して好適なずり積込み装置である。実施形態のずり積込み装置1は、
図3において、ベルトコンベア3を取り外した走行装置の平面視で、走行方向に対する幅方向が102cm(センチメートル)、走行方向に沿う方向長さが260cmであり、普及型のショベルローダーや移動式クラッシャーなどに比較すると相当程度小形で形成されている。さらに、走行装置上に搭載したベルトコンベア3の全長が526cm程度で構成されている。
【0018】
図1ないし
図6は、本発明の実施形態に係るずり積込み装置を示しており、
図1において、ずり積込み装置1は、走行装置2より上位に載置されたベルトコンベア3と、ベルトコンベア3の一部を走行装置に枢着させる枢着部4と、ベルトコンベアの変位機構5と、を含む。
【0019】
図3において、走行装置2は、ずり積込み装置1からその上端に配置されるように搭載されたベルトコンベア3をずり積込み装置1から取り外した走行体であり、クローラ10と、本体フレーム12と、油圧機器14と、運転席20と、クローラ駆動装置50と、を含む。クローラ10は、起動輪、転輪、誘導輪等を囲むように一帯に接続された環である無限軌道であり、これらを駆動することにより不整地等での車両の移動をも可能にする。
【0020】
クローラ10には、本体フレーム12が架設され、本体フレーム12を介して走行装置2に装置を構成する機器が搭載されている。
図3において、油圧機器14は、油圧装置15と、オイルフィルタ16と、を含む。油圧装置15は、油圧モータ17及び図示しないオイルタンクを含む。
【0021】
図3において、走行装置2は、矢視fが示す方向が進行方向であって、進行方向端部側が後述するベルトコンベアの投入端(テールプーリ)側であり、矢視rが示す方向が走行装置2の後端側であって、ベルトコンベアの排出端(ヘッドプーリ)側である。
【0022】
走行装置2の後部端にはクローラ10のエンジン及び燃料タンクを含む機関部22が設けられている。そして、走行装置2の本体フレーム12の前後中間位置よりやや後端側寄り位置に運転席20を含む操作部18が設けられている。操作部18は、運転席20と、操作子24と、を含む。
【0023】
運転席20は、走行装置2の進行方向に対してほぼ走行装置2の全横幅と略同じ横幅で所要の厚みを有する立型ケースの運転席パネル20aを備えており、該運転席パネル20aに複数の操作レバーを有する操作子24が取り付けられている。実施形態において、操作子24は、後述するベルトコンベア3の投入端側fの上下駆動を操作するシリンダ上下動レバー241、ローとハイのギア切替レバー242、右及び左転回のための左右操舵用レバー243、244、アクセルレバー245並びに起動・停止用回転スイッチ246を含む。なお、ベルトコンベアの排出端302寄り位置の側部コンベアフレームに作業者が走行装置の外側面部から容易に操作可能なように、図示しないベルトコンベア起動、停止用電動スイッチが設けられている。これらのスイッチはいずれもベルトコンベア3の投入端(前部)側を着地させた状態で運転席横の外部で操作者が地上に立った状態からも装置の起動・停止やベルトコンベア投入部側の上下動操作可能なように、地上に操作者が立った状態のままで席の側方外部側から操作可能な操作外部開放型の運転席で構成されている。
【0024】
すなわち、ベルトコンベア3の投入端301を地面から浮かせて運転席20に着座した状態で運転者が走行装置2を走行運転するとともに、ベルトコンベア3の投入端301を地面に接地させた状態で地上から運転席外の運転者が操作可能なようにベルトコンベア3の直下面側に操作部18が設けられている。これによって、走行装置2の上位に装置の全体を覆うようにベルトコンベア3を搭載して坑口から切羽部に当着するまでを運転席に着座した運転者がクローラ10により自走するとともに、切羽部の作業現場では運転席から降りた運転者が操作部18を操作してベルトコンベア3の前端部が着地するまで降下着地させる作業を運転席の側方外部側から操作してコンベア前端を着地させる操作を具体的に実現させる。また、これにより具体的に走行装置上にベルトコンベアを搭載可能とし得る。
【0025】
図1、
図2において、ベルトコンベア3は、複数のプーリーあるいはローラに調帯させて一方向に長い輪状に張設した幅広のベルト28を台車の上で回転させ、その上に運搬物を載せて移動させる物体の搬送手段であり、鋼棒や鋼板を組付け接合した一方向に長いフレーム体からなるコンベアフレーム26と、ゴム製等のベルト28と、を含む。ベルトコンベア3は図に示すように、走行装置2より上位であってクローラ走行方向に沿うように走行装置の上に直線状に載置されている。
【0026】
ベルトコンベア3は、走行装置2の進行方向端部側が投入端301とされ、他端側が排出端302とされ、それぞれコンベアの長手方向両端に配設した図示しないテールプーリ並びにヘッドプーリに調帯されて無限周回する。
【0027】
図2は走行装置2上にベルトコンベア3を搭載した状態のずり積込み装置の平面図であり、図において、ベルトコンベア3の投入端301には帯状のベルトに接続され接地する方向に向けて横幅を次第に拡大させた鋼板製の幅広ステージ部30が延長接続されている。幅広ステージ部30に例えばバックホウのバケット等で発破により生じた切羽部の石塊や岩石等を含むずりを集めて掻き入れ、駆動中のコンベアベルトに移載させてコンベアの排出端302から待機中の運搬車両荷台等へベルト搬送させる。
【0028】
図1、5において、走行装置2の本体フレーム12の後端部には門型枠体からなる支持枠34が鉛直状に取り付けられている。そして支持枠34の上端部においてベルトコンベア3の前端(投入端)側を上下動させる枢着部4が設けられている。これによって、ベルトコンベア3の後端(排出端)寄りが支持枠34の上端側で枢着支持されている。
【0029】
図5は、枢着部4の拡大説明図であり、枢着部4において走行装置2の支持枠34上端部とコンベアフレーム26の下部とはレバー操作で着脱可能とされている。すなわち、本実施形態において、枢着部4は、軸6と、着脱軸受け機構40とを含む。
【0030】
図5において、支持枠34から一体突設された排出端301寄り位置のコンベアフレーム26の下端にはコンベアベルトの走行方向と直交方向で左右に軸6が突設固定されている。そして、支持枠34の上端部には側方に開口する曲り鉤状の固定爪41が一体突設され、この固定爪41の鉤内側を貫通するように軸6が係合している。さらに、曲り鉤状の固定爪41と軸方向に隣接して同固定爪41の開口と逆向きに開口する開口を有し軸6に係合するレバー付き可動爪42が設けられている。
図5に示すように、固定爪41と可動爪42を軸方向に隣接配置し、それらの開口を同心状に位置させた状態で両開口部を軸6が串刺し状に貫通し、可動爪42の曲がりレバー43の持ち手部43a端が下方真下方向に向けられているときにはロックがかかり両爪41,42で軸6を受けて軸支状態を維持するとともに、曲りレバー43の持ち手部43aを持ち上げ上方に回動させると軸6から可動爪42が離脱可能となり、固定爪41の開口が開放して軸6自体が支持枠34から離脱可能となる。
図5は曲りレバー43を下降させた状態で、軸受け機構のロックがかかりその状態で走行装置の走行やベルトコンベアの周回運転を安定して行える状態である。実施形態において、着脱軸受け機構40は、コンベアフレーム側から突設した軸6と、支持枠34に固定された固定爪41と、可動爪42と、を含む。ベルトコンベア3を支持枠34から離脱させてコンベアフレームの取付部材を交換することによりベルトコンベアの枢着位置をより高位にしたり、長手方向の異なる位置に変更したり、あるいはベルトコンべア自体の修理、交換を簡単に行える。
【0031】
枢着部4は、走行装置2の全長より長いベルトコンベア3の前端側の上下動を走行装置側に枢着支持させる枢着支持手段であり、特に、ベルトコンベアの投入端が地面に接地する状態から少なくともベルトコンベア全体が略水平状態となる可動範囲でベルトコンベアの積込み投入端側を回動可能とさせる。
【0032】
図1,4において、テールプーリー側となるベルトコンベアの投入端301を地面に接地させる状態と、地面から浮かせて走行装置2を走行可能とする状態と、に変位させる変位機構5が設けられている。
【0033】
実施形態において、変位機構5は、シリンダ装置7と、連動装置8と、を含む。シリンダ装置7は、
図1、3、4に示すように、中空円筒部71と中空円筒部71内を筒軸方向に移動するシリンダロッド72と油圧モータ17とを含み、シリンダロッド72を軸方向に上下するように油圧駆動させる。また、シリンダロッド72の上端は連動装置8と連係しており、シリンダロッド72の筒内の伸縮移動に対応してベルトコンベアの投入端301を地面に接地させる状態と、地面から浮かせて走行装置2を走行可能とする状態と、に変位させる。
【0034】
図4において、連動装置8は、ベルトコンベア3のコンベアフレーム26から立ち上がる軸受け81と、軸受け81に軸支された軸82と、を有しており、軸82はシリンダ装置7のシリンダロッド72の上端部の軸孔を貫挿している。すなわち、コンベアフレーム26とシリンダ装置7のシリンダロッド72はベルトコンベア3の例えば長手中央寄り位置で枢支連結されており、これによってシリンダロッド72の伸縮動作が枢着部4を軸とするベルトコンベアの投入端301側を上下移動するように連動させる。
【0035】
さらに、
図6において、ずり積込み装置には揺動抑制装置9が設けられている。揺動抑制装置9は、ずり積込み装置1の例えば自走移動時にベルトコンベア3の揺動を抑制して特にシリンダ装置7の損傷を防止する揺動抑制手段である。
【0036】
図6に示すように、本実施形態の揺動抑制装置9は、ベルトコンベア3のコンベアフレーム26の複数箇所を下側から受けるフレーム受手段91で構成されている。すなわち、図において、フレーム受手段91は、走行装置2の本体フレーム12の前端側(投入端側)に設けられフレームから装置の幅方向に突設された枢軸92と、枢軸92に貫挿されて回動する2つのアーム93a、93bを有する枠体94と、それぞれのアーム93a,93bの先端に設けられた受部95a、95bを含む。受部95a、95bは、それぞれ両端より中央が凹設されたV字又はU字状の安定受部95a1、95b1を備えている。
【0037】
そして、ベルトコンベア3の投入端301側を枢着部4回りにたとえば略水平方向に上昇させた状態でフレーム受手段91の枠94の両アーム93a,93bを人力で立てた状態とし、この状態でシリンダ装置7を介してベルトコンベア3の投入端301側を下降させコンベアフレーム26の補強横杆から突設した突起96がアーム93a、93bの安定受部95a1、95b1に当着した段階でシリンダ装置7を停止してアーム93a、93bで下部からコンベアフレーム26を介してベルトコンベア3を支持した状態に保持させる。この状態でクローラにより装置を自走運転させても走行装置側でベルトコンベア3全体を下側から受けて支持しているので、自走時の揺動を十分に抑制することができシリンダ装置7を保護することができる。
【0038】
切羽から生じるずりの積込み現場に到着すると、ベルトコンベア3の投入端301側を枢着部4回りに回動させて上昇させ、ベルトコンベアの下部フレームがアーム93a,93bの安定受部95a1、95b1から離間した状態で作業者はアーム93a、93bをシリンダ装置7側に軸側の回動が停止するまで傾動させる。次に、ベルトコンベア3の投入端301側を枢着部4回りに回動下降させ、
図7に示すように投入端側すなわち実施形態では幅広ステージ部30を地面Gに着地させる。この状態で、別途準備したバックホウ等のずり収集掻き寄せ手段150で幅広ステージ部30からずりを掻き入れて運転中のベルトコンベアによりベルト搬送し、排出端rから搬送トラックの荷台上に落下させる。
【0039】
本実施形態のずり積込み装置1では、ベルトコンベア3の上方にずり積込み装置1の一部を成す構造体は設けられていない。すなわち、走行装置2の真上にべルトコンベア3を載置し、べルトコンベア3の上には何らの装備や設備も設けないことにより、稼働中にはベルトコンベア上に搬送すべき、ずりのみを搬送移動させることができる。したがって、ずりの形状、サイズにより移動が拘束されることなくベルトコンベアを可能な限り連続稼働させて待機中の運搬車両側に積込み運転をおこなうことができる。また、基本的にベルトコンベアの搭載、運転と自走のみの装備でよいから、ずり積込み装置1全体重量を軽量化し、さらにサイズを小型化できる。
【0040】
次に、実施形態のずり積込み装置1の作用について説明すると、
図1においてシリンダ装置7のシリンダロッド72を伸長駆動させてベルトコンベア3の投入端側を地上から浮かせ、揺動抑制装置9のアーム93a,93bを立てた状態でそれらの受部95a,95bにベルトコンベアのフレームを受けさせた状態でクローラ10によりトンネルの坑口側から切羽現場にトンネル内を自走する。この際、運転席20には運転者が搭乗した状態で各種操作子24を操作しながら走行する。
【0041】
切羽の現場に到着後、シリンダ装置7のシリンダロッド72を伸長させてベルトコンベア3の投入端側を上昇させ、その状態で作業者は支持枠34上部側を軸回りにシリンダ装置7側に倒す。その状態でシリンダ装置7のシリンダロッド72を縮長させてベルトコンベア3の投入端側を地上に着地させる。この状態では、運転席の上部をベルトコンベア3の底部が覆うが、運転者は車外に出て運転席の側方外部から操作子24のレバー等操作は実行できる。
【0042】
トンネルT内の切羽現場では、
図8(a)に示すようにずり積込み装置1の他に、発破作業後のずり200の収集、掻き寄せ用のバックホウ100、並びにずり積込み装置1のベルトコンベアの排出端302から排出投下されるずりを受けて坑口側へ搬送するトラックその他の搬送車両102が必要となる。
【0043】
バックホウ100は、現場に散乱するずりを収集しベルトコンベア3のステージ部30内に掻き寄せ移動させてコンベア上に搭載する作業が必要であり、この作業に要するバケットは小型でブームやアームも小規模小形のものでよい。したがって、断面縦横サイズが例えばそれぞれ2~3メートル程度の小断面トンネル内で本実施形態のずり積込み装置1とのトンネル内離合は十分に可能である。さらに、
図8(b)に示すように、ベルトコンベア3の幅広ステージ30へのずりの収集、掻きこみ作業もコンベアとバックホウとが横並び状態で作業を行える。これによって、全体の設備、装置コストを大幅にコストダウンでき、また、連続投入積込み可能により作業中断を行う必要なく高能率にずり積込み作業を継続することができる。
【0044】
以上説明した本願発明に係るずり積込み装置によれば、トンネル内工事現場から出るずりを搬出車両荷台に積み込むためのずり積込み装置であり、クローラ及び運転席を含む走行装置より上位であってクローラ走行方向に沿うように直線状に載置されたベルトコンベアと、ベルトコンベアの一部を走行装置に枢着させる枢着部と、ベルトコンベアの投入端を地面に接地させる状態と、地面から浮かせて走行装置を走行可能とする状態と、に変位させる変位機構と、を含む構成であるから、走行装置とベルトコンベアのみの構成により装置を軽量、小型化して低コストで装置を製造し得るとともに、搬送路途中でずりのサイズのために搬送を中断させることなく連続した安定搬送ができ、トンネル内発破現場等でのずり排出のための搬送作業を高効率に遂行することが可能である。
【0045】
また、ベルトコンベアの投入端が地面に接地する状態から少なくともベルトコンベア全体が略水平状態となる可動範囲で枢着部においてベルトコンベアの積込み投入端側を回動可能なようにベルトコンベアが設けられていることにより、小断面等のトンネル内の走行と、投入端側の着地によるずり積込み搬送と、を最低限行えるコンパクトな構造によりずりの積込み搬送作業を維持することが可能である。
【0046】
また、ベルトコンベアの投入端を地面から浮かせて運転席に着座した状態で運転者が走行装置を走行運転するとともに、ベルトコンベアの投入端を地面に接地させた状態で地上から運転席外の運転者が操作可能なようにベルトコンベアの直下面側に操作部が設けられた構成であるから、クローラによる自走とずり積込み作業時 に対応して運転、操作を可能としつつ装置全体を小型化して小断面トンネル内でバックホウ等の他の機器との離合を実現させる得る。
【0047】
また、変位機構は、ベルトコンベアの積込み投入端寄り側のコンベアフレームと上端側を枢支連結しベルトコンベアの積込み投入端側を上下移動させるシリンダ装置を含むことにより、ベルトコンベアの積込み投入端の着地によるずり積込み搬送状態と、投入端を上昇させて地上から浮かせた状態での装置の自走を随時変更して用いることができる。
【0048】
また、運転席は運転席外の側方からの操作子の操作で少なくとも装置の起動・停止スイッチ及び、ベルトコンベア投入端側の上下動操作を可能とする外部開放型の運転席であるから、ベルトコンベアと装置との後端側の枢着部位置を低位に設定することでき、ベルトコンベアの投入端側の上下動範囲を小さくして装置全体の小型化や小断面トンネル内でバックホウ等の他の機器との離合を具現化させることができる。
【0049】
更に、ずり積込み装置の移動時にベルトコンベアの揺動を抑制する揺動抑制装置が設けられていることにより、クローラによる装置の自走時にベルトコンベアとシリンダ装置等の上下駆動装置との枢着部の揺動による破損等を生じることなく、接続部分を保護することが可能である。
【0050】
ベルトコンベアの上方にずり積込み装置の一部を成す構造体が設けられていない構成とすることにより、装置の軽量小型化を図れるうえに、ずりのサイズに拘わらず安定して連続的にずりをコンベア搬送でき、作業効率を向上させることが可能である。
【0051】
上記したずり積込み装置の具体的な構成機器やサイズや形状は本発明の実施形態で記載した構成に限定されるものではない。発破部からのずりの掻きこみ作業を協働する機器はバックホウに限定されるものではなく、その他の油圧ショベル、パワーショベル、その他の土木等重機を用いることができる。また、ベルトコンベアの排出端側で待ち受ける坑外搬送用車両もトラックの他、パワーショベル、その他の搬送手段を用いることができる。
【0052】
以上説明した本発明のずり積込み装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、他の実施形態を用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のずり積込み装置は、農業用水路、発電用水路等の小断面トンネル内の切羽部等のずり積込みに用いて低コストで機能的な積込み手段として利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
f 投入端
r 排出端
1 ずり積込み装置
2 走行装置
3 ベルトコンベア
301 投入端
302 排出端
4 枢着部
5 変位機構
7 シリンダ装置
9 揺動抑制装置
10 クローラ
18 操作部
20 運転席
24 操作子
26 コンベアフレーム
34 支持枠
200 ずり