(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093153
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】通信制御装置および通信システム
(51)【国際特許分類】
H04L 69/28 20220101AFI20240702BHJP
H04L 41/0806 20220101ALI20240702BHJP
G06F 13/10 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H04L69/28
H04L41/0806
G06F13/10 310E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209347
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍜治本 晋明
(57)【要約】
【課題】通信デバイスの通信ラインに接続された別の通信デバイスにおける通信処理が阻害されることを抑制することができる通信制御装置および通信システムを提供する。
【解決手段】実施形態に係る通信制御装置は、複数の通信モードでそれぞれが通信可能な複数の通信デバイスを制御するコントローラを備える。コントローラは、通信デバイスが起動する際に、通信デバイスの通信モードが、通信デバイスと通信する他の通信デバイスの通信モードとは異なる通信モードの状態で起動させる。コントローラは、通信デバイスの起動後に、通信デバイスの通信モードを他の通信デバイスの通信モードと同じ通信モードに切り替える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信モードでそれぞれが通信可能な複数の通信デバイスを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記通信デバイスが起動する際に、前記通信デバイスの通信モードが、前記通信デバイスと通信する他の通信デバイスの通信モードとは異なる通信モードの状態で起動させ、
前記通信デバイスの起動後に、前記通信デバイスの通信モードを前記他の通信デバイスの通信モードと同じ通信モードに切り替える、
通信制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記通信デバイスの通信モードを前記他の通信デバイスの通信モードと同じ通信モードに切り替える前に、前記通信デバイスと前記他の通信デバイスとのバックチャンネル通信を無効化する、
請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記通信デバイスとの通信ラインに接続された別の通信デバイスに対する初期設定処理が完了した後に、前記通信デバイスの通信モードを前記他の通信デバイスの通信モードと同じ通信モードに切り替える、
請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記他の通信デバイスの起動後に生じる、前記通信デバイスと前記他の通信デバイスとのバックチャンネル通信の無効期間が経過した後に、前記通信デバイスの通信モードを前記他の通信デバイスの通信モードと同じ通信モードに切り替える、
請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記通信モードは、
GMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)の通信方式を用いた通信モードを含む、
請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項6】
複数の通信モードで通信可能な通信デバイスと、
前記通信デバイスとは異なる他の通信デバイスであって、複数の通信モードで通信可能な他の通信デバイスと、
前記通信デバイスおよび前記他の通信デバイスを制御するコントローラと
を備え、
前記コントローラは、
前記通信デバイスが起動する際に、前記通信デバイスの通信モードが、前記通信デバイスと通信する他の通信デバイスの通信モードとは異なる通信モードの状態で起動させ、
前記通信デバイスの起動後に、前記通信デバイスの通信モードを前記他の通信デバイスの通信モードと同じ通信モードに切り替える、
通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の通信デバイス間でデータ通信を行う通信制御装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、それぞれが通信デバイスとして機能する第1のCPU(Central Processing Unit)と第2のCPUとを備えたデータ処理装置が記載されている。かかる第1のCPUと第2のCPUとは、インターフェイスIC(Integrated Circuit)などを介してデータ通信を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように複数の通信デバイス間で相互にデータ通信を行う構成において、通信デバイスが複数の通信モードで通信可能に構成される場合がある。かかる場合、複数の通信デバイスにおいて、複数の通信モードのうち一つの通信モードが設定されると、通信デバイスと他の通信デバイスとは、設定された通信モードで通信を行う。
【0005】
ところで、上記した通信デバイスと、通信デバイス等を制御するマイコンとの間の通信ラインには、別の通信デバイスが接続される場合がある。マイコンは、別の通信デバイスに通信ラインを介して初期設定信号などを送信する。
【0006】
しかしながら、通信デバイスと他の通信デバイスとが、設定された通信モードで通信を行う際に、通信デバイスから他の通信デバイスへ向けて行われるバックチャンネル通信が有効になっている。そのため、別の通信デバイスに対する初期設定信号が通信デバイスからバックチャンネル通信にも送信される。初期設定信号がバックチャンネル通信に送信されると、通信デバイスの設定によっては、通信ラインにおいて、マイコンと通信デバイスとの通信がマイコンと別の通信デバイスとの通信より優先されることがある。この場合、マイコンは、別の通信デバイスからの初期設定信号に対する応答信号を受信することができない。従って、マイコンの別の通信デバイスに対する通信処理は、タイムアウトで終了してしまう。このように、従来技術においては、通信デバイスの通信ラインに接続された別の通信デバイスにおける通信処理が阻害されるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、通信デバイスの通信ラインに接続された別の通信デバイスにおける通信処理が阻害されることを抑制することができる通信制御装置および通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数の通信モードでそれぞれが通信可能な複数の通信デバイスを制御するコントローラを備える。前記コントローラは、前記通信デバイスが起動する際に、前記通信デバイスの通信モードが、前記通信デバイスと通信する他の通信デバイスの通信モードとは異なる通信モードの状態で起動させる。コントローラは、前記通信デバイスの起動後に、前記通信デバイスの通信モードを前記他の通信デバイスの通信モードと同じ通信モードに切り替える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信デバイスの通信ラインに接続された別の通信デバイスにおける通信処理が阻害されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、シリアライザにおけるバックチャンネル通信の無効期間を説明する図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る処理装置等の構成を説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る処理装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する通信制御装置および通信システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1を用いて、実施形態に係る通信システムについて説明する。
図1は、実施形態に係る通信システム1の構成例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、通信システム1は、カメラユニット10と、ディスプレイユニット20とを備える。通信システム1は、車両に搭載されるが、これに限定されるものではない。
【0014】
カメラユニット10は、カメラ11と、シリアライザ12とを備える。カメラ11は、車両に設置される。カメラ11は、車両の周囲を撮像する。カメラ11は、車両の周囲に限られず、車両の内部を撮像するものであってもよい。カメラ11は、撮像した画像データをシリアライザ12に出力する。画像データは、動画像であってもよい。画像データは、静止画像であってもよい。なお、画像データは、カメラ11によって撮像されたデータに限定されるものではなく、記憶部等に予め保存された画像データであってもよい。また、画像データは、カメラ11、記憶部等に限られず、その他の各種装置から得られた画像データであってもよい。
【0015】
シリアライザ12は、カメラ11と通信可能に接続される。シリアライザ12は、カメラ11から出力された画像データであるパラレルデータ(パラレル信号)をシリアルデータ(シリアル信号)に変換する。シリアライザ12は、変換した画像データ(シリアルデータ)をディスプレイユニット20に出力する。
【0016】
ディスプレイユニット20は、処理装置30と、表示部40とを備える。なお、ディスプレイユニット20は、ディスプレイオーディオと呼ばれる場合がある。なお、処理装置30は、通信制御装置の一例である。
【0017】
処理装置30は、カメラユニット10と通信可能に接続される。詳しくは、処理装置30は、カメラユニット10のシリアライザ12と通信可能に接続される。処理装置30は、画像データに対する画像処理、カメラユニット10との通信処理など各種処理を実行する。
【0018】
処理装置30は、デシリアライザ31と、マイコン32と、映像IC33とを備える。デシリアライザ31は、シリアライザ12と通信可能に接続される。なお、デシリアライザ31およびシリアライザ12で用いられる通信モードについては、後述する。
【0019】
デシリアライザ31は、カメラユニット10(正確にはシリアライザ12)から出力された画像データであるシリアルデータ(シリアル信号)をパラレルデータ(パラレル信号)に変換する。デシリアライザ31は、変換した画像データ(パラレルデータ)をマイコン32および映像IC33に出力する。
【0020】
マイコン32は、デシリアライザ31および映像IC33と通信可能に接続される。マイコン32は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、データフラッシュ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。CPUは、例えばROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、画像処理および通信処理など各種処理を実行する。なお、マイコン32は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することもできる。
【0021】
マイコン32は、デシリアライザ31、映像IC33、カメラユニット10のシリアライザ12、カメラ11などを制御することができる。マイコン32は、デシリアライザ31、映像IC33、シリアライザ12、カメラ11などの通信処理を制御することができる。なお、マイコン32は、コントローラの一例である。
【0022】
映像IC33は、画像に関する処理を行うICである。画像に関する処理には、例えば画像データにおける画像の大きさを拡大または縮小する処理、色合いを調整する処理などが含まれる。画像に関する処理は、これらの処理に限定されるものではない。映像IC33は、処理を施した画像データを表示部40に出力する。なお、
図1の例では、上記した画像データの伝送ルートを実線の矢印で示している。
【0023】
表示部40は、入力された画像データを基に画像(映像)を表示する。表示部40としては、TFT(Thin-Film-Transistor)液晶等の液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどを用いることができる。
【0024】
上記したカメラ11、シリアライザ12、デシリアライザ31および映像IC33は、通信デバイスの一例である。カメラ11とシリアライザ12との間、シリアライザ12とデシリアライザ31との間、デシリアライザ31と映像IC33との間など、複数の通信デバイス間で相互にデータ通信が行われる。
【0025】
マイコン32とデシリアライザ31とは、通信ラインA1を介して接続される。かかる通信ラインA1には、映像IC33が接続される。なお、映像IC33は、通信ラインA1に接続された別の通信デバイスの一例である。
【0026】
カメラ11とシリアライザ12とは、通信ラインA2を介して接続される。なお、通信ラインA1,A2としては、例えばI2C(Inter-Integrated Circuit)通信の通信方式を用いることができる。
【0027】
ここで、シリアライザ12およびデシリアライザ31は、複数の通信モードで通信可能に構成される。一例として、シリアライザ12およびデシリアライザ31は、GMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)の通信方式を用いた通信モードで通信可能に構成される。GMSLには、「GMSL1」および「GMSL2」が含まれる。GMSL1とGMSL2とは、例えば処理速度、制御内容、レジスタの設定、シーケンスなどが互いに異なっていることから、通信モードが互いに異なるといえる。以下では、GMSL1を「第1通信モード」、GMSL2を「第2通信モード」と記載する場合がある。
【0028】
また、シリアライザ12およびデシリアライザ31はそれぞれ、起動時の通信モードを設定する設定ピン(図示せず)を備える。具体的には、シリアライザ12の設定ピンは、シリアライザ12の起動時の通信モードを、第1通信モードおよび第2通信モードのいずれかに設定するものである。デシリアライザ31の設定ピンは、デシリアライザ31の起動時の通信モードを、第1通信モードおよび第2通信モードのいずれかに設定するものである。シリアライザ12およびデシリアライザ31は、起動すると、それぞれの設定ピンによって設定された通信モードで通信処理を行う。また、シリアライザ12およびデシリアライザ31における通信モードは、後述するように、マイコン32からの通信モードの設定信号により切り替え可能とされる。
【0029】
シリアライザ12とデシリアライザ31とは、設定された通信モードで、上記した画像データの送受信を行う。また、シリアライザ12とデシリアライザ31とは、設定された通信モードにおいて、バックチャンネル通信(破線の矢印B参照)可能に構成される。バックチャンネル通信は、デシリアライザ31からシリアライザ12へ向けて行われる通信である。詳しくは、バックチャンネル通信は、例えばマイコン32がI2Cの通信ラインA1、デシリアライザ31を介してカメラユニット10等の各種設定を行うときに出力する、カメラユニット10への設定信号等を送受信するものである。
【0030】
上記のように構成された通信システム1において、マイコン32は、映像IC33に対する設定処理を実行することができる。例えば、マイコン32は、映像IC33に対して初期設定処理を実行することができる。具体的には、マイコン32は、初期設定信号を通信ラインA1を介して映像IC33に出力することで、初期設定処理を実行する。なお、初期設定処理には、例えば映像IC33の画像に関する処理の設定等を初期の状態にする処理などが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0031】
また、マイコン32は、上記したように、カメラユニット10(例えばカメラ11)の設定処理も実行可能である。例えば、マイコン32は、カメラユニット10の設定信号を通信ラインA1を介してデシリアライザ31に出力する。デシリアライザ31は、入力された設定信号をバックチャンネル通信でシリアライザ12へ出力する。シリアライザ12は、入力された設定信号を通信ラインA2を介してカメラ11に出力する。これにより、カメラ11では、設定信号に基づいた設定処理が行われる。
【0032】
ところで、従来技術では、シリアライザ12およびデシリアライザ31において、複数の通信モード(ここでは第1、第2通信モード)のうち一つの通信モード(例えば第1通信モード)が予め設定される。具体的には、シリアライザ12およびデシリアライザ31の設定ピンがともに、第1通信モードに設定される。これにより、シリアライザ12とデシリアライザ31とは、設定された通信モード(ここでは第1通信モード)で通信を行う。なお、デシリアライザ31は、通信デバイスの一例であり、シリアライザ12は、他の通信デバイスの一例である。
【0033】
このように、シリアライザ12とデシリアライザ31とが、設定された通信モードで通信を行っている状態において、マイコン32から映像IC33に対する初期設定信号が通信ラインA1を介して送信されると、かかる通信処理が阻害されるおそれがあった。
【0034】
具体的には、デシリアライザ31とシリアライザ12とが、設定された通信モードで通信を行う際に、上記したバックチャンネル通信が有効になっている。そのため、映像IC33に対する初期設定信号がデシリアライザ31からバックチャンネル通信にも送信される。初期設定信号がバックチャンネル通信に送信されると、デシリアライザ31の設定によっては、通信ラインA1において、マイコン32とデシリアライザ31との通信がマイコン32と映像IC33との通信より優先されることがある。
【0035】
詳説すると、デシリアライザ31は、マイコン32から初期設定信号が入力されると、初期設定信号をバックチャンネル通信でシリアライザ12へ出力する。続いて、デシリアライザ31は、シリアライザ12からの応答信号(例えばACKあるいはNACK)を待つ。デシリアライザ31は、応答信号を待つ待機時間の間、通信ラインA1において、マイコン32との通信を保持(維持)する。すなわち、通信ラインA1において、マイコン32とデシリアライザ31との通信が、マイコン32と映像IC33との通信より優先される。なお、上記した待機時間は、任意の値に設定可能である。
【0036】
上記のように、通信ラインA1においては、マイコン32とデシリアライザ31との通信が保持(維持)されているため、マイコン32は、映像IC33からの初期設定信号に対する応答信号を、待機時間が経過するまで受信することができない。そのため、結果としてマイコン32の映像IC33に対する通信処理は、タイムアウトで終了してしまう。このように、従来技術においては、通信ラインA1に接続された別の通信デバイス(ここでは映像IC33)における通信処理が阻害されるおそれがあった。
【0037】
また、上記したマイコン32と映像IC33との通信処理が阻害される事象は、シリアライザ12の起動後に生じるバックチャンネル通信の無効期間に起因する場合もある。これについて、
図2を参照しつつ説明する。
図2は、シリアライザ12におけるバックチャンネル通信の無効期間を説明する図である。
【0038】
図2に示すように、カメラ11からの画像データは、時刻T0以降継続して出力されているものとする。シリアライザ12は、時刻T1において電源がオンされて起動する。シリアライザ12は、起動すると、画像データを設定された通信モード(GMSL1)でデシリアライザ31へ出力する準備を行う(時刻T1~T2参照)。シリアライザ12は、この準備処理の段階において、デシリアライザ31とのバックチャンネル通信がまだ確立されておらず、バックチャンネル通信が無効である無効期間となる。
【0039】
次いで、シリアライザ12は、時刻T2において準備処理が完了すると、画像データの伝送信号をデシリアライザ31へ出力する。シリアライザ12は、この画像データの伝送信号の出力が開始された段階において、バックチャンネル通信の無効期間は継続されている。そして、シリアライザ12は、時刻T3において、デシリアライザ31とのバックチャンネル通信が確立し、バックチャンネル通信が有効である有効期間となる。
【0040】
このように、シリアライザ12は、起動後、画像データの伝送信号を出力する一方で、バックチャンネル通信が無効となる無効期間が生じる(時刻T2~T3参照)。シリアライザ12は、かかる無効期間に、デシリアライザ31から初期設定信号などの出力があったとしても、バックチャンネル通信が無効であるため、受け付けることができない。そのため、シリアライザ12は、デシリアライザ31に対して応答信号(例えばACKあるいはNACK)を出力しない。しかしながら、デシリアライザ31は、シリアライザ12からの応答信号を待つこととなり、デシリアライザ31の待機時間の間、通信ラインA1においては、マイコン32とデシリアライザ31との通信が優先される。
【0041】
したがって、マイコン32は、映像IC33からの初期設定信号に対する応答信号を、待機時間が経過するまで受信することができず、映像IC33に対する通信処理は、タイムアウトで終了してしまう。このように、従来技術においては、別の通信デバイス(ここでは映像IC33)の初期設定信号の出力タイミングが、起動したシリアライザ12のバックチャンネル通信の無効期間であった場合も、映像IC33における通信処理が阻害されるおそれがあった。
【0042】
そこで、本実施形態に係る処理装置30を含む通信システム1にあっては、デシリアライザ31の通信ラインA1に接続された別の通信デバイス(映像IC33)における通信処理が阻害されることを抑制することができるように構成される。
【0043】
かかる構成について
図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る処理装置30等の構成を説明するための図である。
【0044】
図3に示すように、シリアライザ12およびデシリアライザ31においては、起動時の通信モードが互いに異なるように設定される。例えば、シリアライザ12は、起動時の通信モードが「第1通信モード」に設定される(ステップS1)。詳しくは、シリアライザ12の設定ピンが「第1通信モード」に設定される。これにより、シリアライザ12は、起動すると、第1通信モードで通信処理を行う。
【0045】
デシリアライザ31は、起動時の通信モードが「第2通信モード」に設定される(ステップS2)。詳しくは、デシリアライザ31の設定ピンが、シリアライザ12の設定ピンとは異なる「第2通信モード」に設定される。これにより、デシリアライザ31は、起動すると、第2通信モードで通信処理を行う。
【0046】
このように、本実施形態に係る処理装置30は、通信デバイスであるシリアライザ12およびデシリアライザ31が起動する際に、デシリアライザ31の通信モードが、シリアライザ12の通信モードとは異なる通信モードの状態で起動させる。このように、シリアライザ12およびデシリアライザ31は、通信モードが互いに異なるため、シリアライザ12とデシリアライザ31との通信は行われない。
【0047】
そして、マイコン32は、通信ラインA1に接続された別の通信デバイス(ここでは映像IC33)の初期設定を行う(ステップS3)。具体的には、マイコン32は、映像IC33に対する初期設定信号を通信ラインA1を介して出力する。このとき、デシリアライザ31は、マイコン32から初期設定信号が入力されても、シリアライザ12とは通信が行われていない。そのため、バックチャンネル通信も行われておらず、よってデシリアライザ31は、初期設定信号をシリアライザ12へ出力することはない。したがって、デシリアライザ31は、シリアライザ12からの応答信号を待つことがない。そのため、通信ラインA1において、マイコン32とデシリアライザ31との通信がマイコン32と映像IC33との通信より優先されることはない。
【0048】
これにより、マイコン32は、映像IC33からの初期設定信号に対する応答信号を、通信ラインA1を介して受信し、映像IC33との通信処理を終了する。言い換えると、マイコン32による映像IC33の初期設定処理が完了する。
【0049】
続いて、マイコン32は、デシリアライザ31の通信モードを、シリアライザ12の通信モードと同じ第1通信モードに切り替えるが、かかる切り替えの前に、デシリアライザ31とシリアライザ12とのバックチャンネル通信を無効化しておく。具体的には、マイコン32は、デシリアライザ31のレジスタ設定において、シリアライザ12とのバックチャンネル通信を無効化する(ステップS4)。
【0050】
マイコン32は、デシリアライザ31とシリアライザ12とのバックチャンネル通信を無効化した後、デシリアライザ31の通信モードを、シリアライザ12と同じ通信モード(ここでは第1通信モード)に切り替える(ステップS5)。具体的には、マイコン32は、デシリアライザ31に対し、通信モードの設定信号を出力する。デシリアライザ31は、通信モードを、かかる設定信号に応じた通信モードに切り替える処理を実行する。
【0051】
このように、本実施形態に係るマイコン32は、デシリアライザ31をシリアライザ12の通信モードとは異なる通信モードの状態で起動させ、デシリアライザ31の起動後に、通信モードをシリアライザ12の通信モードと同じ通信モードに切り替える。
【0052】
これにより、マイコン32から映像IC33への初期設定信号がデシリアライザ31からシリアライザ12へ出力されないため、マイコン32は、映像IC33からの初期設定信号に対する応答信号を、通信ラインA1を介して確実に受信することができる。すなわち、マイコン32は、デシリアライザ31の通信ラインA1に接続された別の通信デバイス(映像IC33)における通信処理が阻害されることを抑制することができる。
【0053】
また、マイコン32は、デシリアライザ31の通信モードを、シリアライザ12の通信モードと同じ通信モードに切り替える前に、デシリアライザ31とシリアライザ12とのバックチャンネル通信を無効化するようにした。これにより、マイコン32は、デシリアライザ31の通信ラインA1に接続された別の通信デバイス(映像IC33)における通信処理が阻害されることを抑制することができる。
【0054】
詳しくは、デシリアライザ31は、バックチャンネル通信が無効化されていないと、例えばリセットされて起動するようなとき、バックチャンネル通信が有効となる。このときに、デシリアライザ31において、バックチャンネル通信を無効化する処理が行われても、バックチャンネル通信が有効となる有効期間が生じる。このようなバックチャンネル通信の有効期間が存在すると、かかる有効期間にマイコン32から映像IC33の初期設定信号が出力され、上記したように、通信処理が阻害されるおそれがある。
【0055】
本実施形態に係るマイコン32は、デシリアライザ31の通信モードの切り替え前に、シリアライザ12とのバックチャンネル通信を無効化するようにしたので、上記した有効期間が生じることはなく、よって通信処理が阻害されることを抑制することができる。
【0056】
なお、本実施形態に係る通信システム1では、バックチャンネル通信を用いない仕様であるため、上記したバックチャンネル通信の無効化は継続される。また、通信システム1がバックチャンネル通信を用いる仕様である場合、マイコン32は、例えばバックチャンネル通信を利用するタイミングでバックチャンネル通信を有効化してもよい。
【0057】
次に、マイコン32がデシリアライザ31の通信モードの切り替えるタイミングについて説明する。
【0058】
マイコン32は、例えばデシリアライザ31との通信ラインA1に接続された別の通信デバイス(映像IC33)に対する初期設定処理が完了した後に、デシリアライザ31の通信モードをシリアライザ12の通信モードと同じ通信モードに切り替える。
【0059】
具体的には、マイコン32は、映像IC33の初期設定信号を映像IC33に出力する。映像IC33は、初期設定信号に応じて初期設定処理を行う。映像IC33は、初期設定処理が完了すると、初期設定処理が完了したことを示す設定完了信号をマイコン32へ出力する。マイコン32は、映像IC33からの設定完了信号を受信した後に、デシリアライザ31の通信モードをシリアライザ12の通信モードと同じ通信モードに切り替える。
【0060】
このように、本実施形態に係るマイコン32は、別の通信デバイス(映像IC33)に対する初期設定処理が完了した後に、デシリアライザ31の通信モードを切り替えるようにした。これにより、マイコン32は、別の通信デバイス(映像IC33)の初期設定に関する通信処理が阻害されることを確実に抑制することができる。
【0061】
マイコン32は、シリアライザ12の起動後に生じる、デシリアライザ31とシリアライザ12とのバックチャンネル通信の無効期間(
図2参照)が経過した後に、デシリアライザ31の通信モードをシリアライザ12の通信モードと同じ通信モードに切り替える。
【0062】
具体的には、マイコン32は、シリアライザ12が起動してからの経過時間がシリアライザ12のバックチャンネル通信の無効期間を経過したか否かを判定する。言い換えると、マイコン32は、シリアライザ12が起動してからの経過時間が無効期間を超えたか否かを判定する。かかる無効期間は、実験などを通じて予め設定される値であるが、これに限定されるものではない。そして、マイコン32は、シリアライザ12が起動してからの経過時間がシリアライザ12のバックチャンネル通信の無効期間を経過した後に、デシリアライザ31の通信モードをシリアライザ12の通信モードと同じ通信モードに切り替える。
【0063】
このように、本実施形態に係るマイコン32は、シリアライザ12の起動後に生じる、デシリアライザ31とシリアライザ12とのバックチャンネル通信の無効期間が経過した後に、デシリアライザ31の通信モードを切り替えるようにした。これにより、マイコン32は、別の通信デバイス(映像IC33)の初期設定に関する通信処理が阻害されることを確実に抑制することができる。
【0064】
すなわち、別の通信デバイス(映像IC33)の初期設定信号の出力が、起動時におけるシリアライザ12のバックチャンネル通信の無効期間に、シリアライザ12に出力されることはない。そのため、マイコン32は、別の通信デバイス(映像IC33)の初期設定に関する通信処理が、起動時におけるシリアライザ12のバックチャンネル通信の無効期間によって阻害されることを抑制することができる。
【0065】
次に、処理装置30における具体的な処理手順について
図4を用いて説明する。
図4は、実施形態に係る処理装置30が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0066】
図4に示すように、処理装置30のマイコン32は、デシリアライザ31を、シリアライザ12の通信モードとは異なる通信モードである「第2通信モード」で起動させる(ステップS10)。なお、シリアライザ12は、第1通信モードで起動する。
【0067】
また、ステップS10では、デシリアライザ31の設定ピンが「第2通信モード」に設定されることで、デシリアライザ31は、第2通信モードで起動するが、これに限られない。すなわち、マイコン32が通信モードの設定信号をデシリアライザ31に出力して、デシリアライザ31を第2通信モードで起動させてもよい。
【0068】
同様に、ここでは、シリアライザ12の設定ピンが「第1通信モード」に設定されることで、シリアライザ12は、第1通信モードで起動するが、これに限られない。すなわち、マイコン32が通信モードの設定信号をシリアライザ12に出力して、シリアライザ12を第1通信モードで起動させてもよい。
【0069】
続いて、マイコン32は、映像IC33の初期設定処理を実行する(ステップS11)。具体的には、マイコン32は、映像IC33に対する初期設定信号を通信ラインA1を介して出力する。なお、映像IC33では、マイコン32から出力された初期設定信号に応じて初期設定処理が行われる。映像IC33は、初期設定処理が完了すると、設定完了信号をマイコン32へ出力する。
【0070】
次いで、マイコン32は、映像IC33の初期設定処理が完了したか否かを判定する(ステップS12)。具体的には、マイコン32は、映像IC33から設定完了信号を受信したか否かを判定する。
【0071】
マイコン32は、映像IC33の初期設定処理が完了していないと判定された場合(ステップS12,No)、ステップS12の処理を繰り返す。一方、マイコン32は、映像IC33の初期設定処理が完了したと判定された場合(ステップS12,Yes)、シリアライザ12におけるバックチャンネル通信の無効期間が経過したか否かを判定する(ステップS13)。
【0072】
具体的には、マイコン32は、シリアライザ12が起動してからの経過時間を計測し、計測した経過時間がシリアライザ12とデシリアライザ31とのバックチャンネル通信の無効期間を経過したか否かを判定する。
【0073】
マイコン32は、シリアライザ12におけるバックチャンネル通信の無効期間が経過していないと判定された場合(ステップS13,No)、ステップS13の処理を繰り返す。一方、マイコン32は、シリアライザ12におけるバックチャンネル通信の無効期間が経過したと判定された場合(ステップS13,Yes)、デシリアライザ31とシリアライザ12とのバックチャンネル通信を無効化する(ステップS14)。
【0074】
次いで、マイコン32は、デシリアライザ31の通信モードを、第2通信モードから第1通信モードに切り替える(ステップS15)。詳しくは、マイコン32は、デシリアライザ31の通信モードを、シリアライザ12と同じ通信モード(第1通信モード)に切り替える。具体的には、マイコン32は、シリアライザ12と同じ通信モード(第1通信モード)となるような、通信モードの設定信号を出力する。これにより、デシリアライザ31では、通信モードが第1通信モードに切り替えられる。
【0075】
次いで、マイコン32は、各種の設定処理を実行する(ステップS16)。各種の設定処理では、デシリアライザ31およびシリアライザ12の通信モード(GMSL1)における通信スピードの設定などが行われるが、これは例示であって限定されるものではなく、任意の内容に設定可能である。
【0076】
上述してきたように、実施形態に係る処理装置30(通信制御装置の一例)は、複数の通信モードでそれぞれが通信可能な複数の通信デバイスを制御するマイコン32(コントローラの一例)を備える。コントローラは、デシリアライザ31(通信デバイスの一例)が起動する際に、デシリアライザ31の通信モードが、デシリアライザ31と通信するシリアライザ12(他の通信デバイスの一例)の通信モードとは異なる通信モードの状態で起動させる。マイコン32は、デシリアライザ31の起動後に、デシリアライザ31の通信モードをシリアライザ12の通信モードと同じ通信モードに切り替える。これにより、デシリアライザ31の通信ラインA1に接続された映像IC33(別の通信デバイスの一例)における通信処理が阻害されることを抑制することができる。
【0077】
また、通信モードは、GMSLの通信方式を用いた通信モードを含む。これにより、デシリアライザ31およびシリアライザ12が、GMSLの通信方式を用いた通信モードを用いる場合であっても、通信ラインA1に接続された映像IC33(別の通信デバイスの一例)における通信処理が阻害されることを抑制することができる。
【0078】
なお、上記では、通信モードが、GMSLの通信方式を用いた通信モードを含む例を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、通信モードは、GMSLに代えて、あるいは加えて、例えばFPDリンクやLVDS(Low Voltage Differential Signaling)などその他の通信方式の通信モードを含んでもよい。
【0079】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 通信システム
12 シリアライザ
30 処理装置
31 デシリアライザ
32 マイコン
33 映像IC