(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093155
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/58 20060101AFI20240702BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240702BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240702BHJP
H01L 23/34 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L23/56 D
H01L21/52 A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 657A
H01L29/78 655A
H01L29/78 655B
H01L29/78 655F
H01L29/78 652P
H01L29/78 652T
H01L23/36 D
H01L23/34 D
H01L29/78 657F
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209349
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】逸見 徳幸
【テーマコード(参考)】
5F047
5F136
【Fターム(参考)】
5F047AA03
5F047AB00
5F047BA01
5F136BB05
5F136DA27
5F136EA13
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA82
5F136HA01
5F136HA03
(57)【要約】
【課題】活性部の温度を適切に検出することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】基板2と、基板2の上面側に設けられ、活性素子を含む活性部、及び活性部の周辺部に設けられた温度検出部12を有する半導体チップ1と、基板2と半導体チップ1とを接合する接合層3とを備え、温度検出部12の少なくとも一部に重なる位置における接合層3の領域の熱伝導率が、温度検出部12の少なくとも一部に重なる位置の周囲における接合層3の熱伝導率よりも低い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上面側に設けられ、活性素子を含む活性部、及び前記活性部の周辺部に設けられた温度検出部を有する半導体チップと、
前記基板と前記半導体チップとを接合する接合層と、
を備え、
前記温度検出部の少なくとも一部に重なる位置における前記接合層の領域の熱伝導率が、前記温度検出部の少なくとも一部に重なる位置の周囲における前記接合層の熱伝導率よりも低い
半導体装置。
【請求項2】
前記温度検出部の少なくとも一部に重なる位置において、前記接合層を貫通するボイドが設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
平面視において、前記ボイドが、前記温度検出部の周囲を囲むように設けられている
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記温度検出部の少なくとも一部に重なる位置における前記接合層の厚さが、前記温度検出部の少なくとも一部に重なる位置の周囲における前記接合層の厚さよりも薄い
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記温度検出部の少なくとも一部に重なる位置において、前記接合層の上部にボイドが設けられている
請求項1又は4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記温度検出部の少なくとも一部に重なる位置において、前記接合層の下部にボイドが設けられている
請求項1又は4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記温度検出部の少なくとも一部に重なる位置において、前記半導体チップの下面側の主電極に開口部が設けられている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記接合層がはんだで構成され、
前記温度検出部の少なくとも一部に重なる位置において、前記基板の上面側に設けられ、前記基板よりも前記はんだに対する濡れ性が低い低濡れ性部材を更に備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記接合層がはんだで構成され、
前記温度検出部の少なくとも一部に重なる位置において、前記半導体チップの下面側に設けられ、前記半導体チップの下面よりも前記はんだに対する濡れ性が低い低濡れ性部材を更に備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記温度検出部の少なくとも一部に重なる位置において、前記基板と前記半導体チップとの間に、前記接合層よりも熱伝導率が低い低熱伝導部材を更に備える
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記温度検出部がダイオードで構成されている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体チップが、前記活性部の上面側に設けられ、ボンディングワイヤを接続可能なパッドを備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記半導体チップが、前記活性素子を制御する回路部を更に有する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記温度検出部が、前記活性部の重心から端部までの距離の半分よりも外側に設けられている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記温度検出部が、前記活性部の端部に設けられている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記接合層の前記半導体チップとの接合面のうち前記ボイドの割合が5%以上、20%以下である
請求項2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体装置において、ヒートシンクと半導体素子との間にはんだに対する濡れ性が低いアルミニウム系の材料を用いて形成されたワイヤ片を配置し、ヒートシンクと半導体素子とを接合するはんだとワイヤ片との間に空隙が形成されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-061393号公報(
図22)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
活性素子を含む活性部と、活性部の温度を検出する温度検出部(温度センサ)とを同一半導体チップに備える半導体装置において、温度検出部の配置には制約があり、温度検出部の配置位置によっては、活性部の温度を適切に検出することができない場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑み、活性部の温度を適切に検出することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の一態様は、基板と、基板の上面側に設けられ、活性素子を含む活性部、及び活性部の周辺部に設けられた温度検出部を有する半導体チップと、基板と半導体チップとを接合する接合層とを備え、温度検出部の少なくとも一部に重なる位置における接合層の領域の熱伝導率が、温度検出部の少なくとも一部に重なる位置の周囲における接合層の熱伝導率よりも低い半導体装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、活性部の温度を適切に検出することができる半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る半導体装置の一例を示す概略平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る半導体チップの概略平面図である。
【
図5】
図4のA-A´線で切断した概略断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る半導体装置の一例を示す概略断面図である。
【
図7】比較例に係る半導体装置の概略断面図である。
【
図8】実施例及び比較例に係る半導体チップに印加する電力変化を示すグラフである。
【
図9】比較例に係る半導体チップの発熱状態を示す概略平面図である。
【
図10】比較例に係る半導体チップの温度変化を示すグラフである。
【
図11】実施例に係る半導体チップの発熱状態を示す概略平面図である。
【
図12】実施例に係る半導体チップの温度変化を示すグラフである。
【
図13】第2実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【
図14】第3実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【
図15】第4実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【
図16】第5実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【
図17】第6実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【
図18】第7実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【
図19】第8実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【
図20】第9実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【
図21】第10実施形態に係る半導体装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示の第1~第10実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す第1~第10実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0010】
本明細書において、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)のエミッタ領域は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のソース領域として選択可能な「一方の主領域(第1主領域)」である。また、MOS制御静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)等のサイリスタ又はダイオードにおいては、「一方の主領域」はカソード領域として選択可能である。IGBTのコレクタ領域は、MOSFETにおいてはドレイン領域を、サイリスタ又はダイオードにおいてはアノード領域として選択可能な半導体装置の「他方の主領域(第2主領域)」である。本明細書において単に「主領域」と言うときは、当業者の技術常識から妥当な第1主領域又は第2主領域のいずれかを意味する。
【0011】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。また、「上面」は「おもて面」と読み替えてもよく、「下面」は「裏面」と読み替えてもよい。
【0012】
また、以下の説明では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。またnやpに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じnとnとが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る半導体装置として、ワンチップイグナイタを説明する。第1実施形態に係る半導体装置は、
図1及び
図2に示すように、基板(フレーム)2と、基板2に搭載された半導体チップ1と、半導体チップ1に電気的に接続された第1端子(ゲート端子)21、第2端子(コレクタ端子)22及び第3端子(エミッタ端子)23とを備える。半導体チップ1を含む領域は封止樹脂(不図示)で封止されていてよい。
【0014】
基板2は、例えば銅(Cu)等の金属材料で構成されている。基板2には、外部に固定するためのネジ穴2aが設けられている。半導体チップ1は、活性素子としてIGBT又はMOSFET等のパワー半導体素子を内蔵する。ここでは、半導体チップ1は、活性素子としてIGBTを内蔵するものとして説明する。半導体チップ1は、例えばシリコン(Si)からなる半導体基板で構成されている。半導体チップ1は、Si以外にも、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)等からなる半導体基板で構成されていてもよい。
【0015】
ゲート端子21、コレクタ端子22及びエミッタ端子23は、例えば銅(Cu)又はアルミニウム(Al)等の導電材料で構成されている。ゲート端子21、コレクタ端子22及びエミッタ端子23は、互いに平行に延伸するように配置されている。ゲート端子21は、基板2から離間して、アルミニウム(Al)等からなるボンディングワイヤ41を介して半導体チップ1に接続されている。コレクタ端子22は、基板2と一体的に形成されている。エミッタ端子23は、基板2から離間して、アルミニウム(Al)等からなるボンディングワイヤ42を介して半導体チップ1に接続されている。
【0016】
図3は、
図1及び
図2に示した半導体チップ1を含む領域を拡大した平面図である。
図3に示すように、半導体チップ1の上面側には、ボンディングワイヤ41,42をそれぞれ接続可能な第1パッド(ゲートパッド)1a及び第2パッド(エミッタパッド)1bが設けられている。
【0017】
ゲートパッド1aは、半導体チップ1により構成されるIGBTのゲート電極に電気的に接続されている。エミッタパッド1bは、半導体チップ1により構成されるIGBTのエミッタ電極に電気的に接続されている。ゲートパッド1aには、ボンディングワイヤ41を介してゲート端子21が接続されている。エミッタパッド1bには、ボンディングワイヤ42を介してエミッタ端子23が接続されている。半導体チップ1の下面側には、IGBTのコレクタ電極が設けられている。コレクタ電極には、コレクタ端子22が電気的に接続されている。
【0018】
図4は、半導体チップ1の概略平面図である。半導体チップ1は、活性素子としてのIGBTを含む活性部11と、活性部11の周辺部に設けられた温度検出部(温度センサ)12とを1チップに内蔵して備える。更に、半導体チップ1は、活性部11に隣接して、活性部11に含まれる活性素子の動作を制御する回路部13を備える。
図3に示したゲートパッド1a及びエミッタパッド1bは、回路部13及び活性部11の上面側に設けられているが、
図4では図示を省略している。
【0019】
活性部11は、例えば、略矩形状の平面パターンを有する。
図4では、
図3に示したエミッタパッド1bとボンディングワイヤ42との接合部(ワイヤ接続部)42aを破線で模式的に示している。ワイヤ接続部42aは、活性部11の平面パターンの重心Oの近傍であって、活性部11の中央部付近に位置する。温度検出部12は、活性部11の中央部よりも外側の周辺部に設けられている。例えば、活性部11の中央部は、活性部11の重心Oから活性部11の端部までの距離d1の半分(d1/2)よりも内側の矩形の領域であり、活性部11の周辺部は、活性部11の重心Oから活性部11の端部までの距離d1の半分(d1/2)よりも外側の環状の領域と定義される。
図4では、温度検出部12が、活性部11の端部よりも内側に設けられた場合を例示する。なお、温度検出部12は、活性部11の端部に設けられていてもよい。
【0020】
温度検出部12及び回路部13は、活性部11が過熱されたときに活性部11に含まれる活性素子を強制的にオフする過熱保護機能を有する。温度検出部12は、例えばポリシリコンからなるダイオードで構成されている。温度検出部12を構成するダイオードに微小電流を流し、ダイオードの順方向電圧VFを回路部13によりモニタする。ダイオードの温度特性により、高温になるほど順方向電圧VFが低くなるため、順方向電圧VFをモニタすることで活性部11の温度を計算することができる。
【0021】
回路部13は、設定温度(例えばTj=175℃)に対応する設定電圧と、ダイオードの順方向電圧VFとを比較する。順方向電圧VFが設定電圧に達した場合に、それ以上の温度上昇は活性素子を破壊する可能性があるため、回路部13が活性部11に含まれる活性素子のゲート電圧を遮断し、活性素子を強制的にオフする。
【0022】
なお、半導体チップ1は、活性部11及び温度検出部12のみを備え、回路部13を備えない構成であってもよい。その場合、回路部が半導体チップ1とは異なる半導体チップ等に設けられ、半導体チップ1の活性素子にボンディングワイヤ等を介して電気的に接続されていてもよい。また、半導体チップ1の上面側に、温度検出部12を構成するダイオードのアノード及びカソードにそれぞれ電気的に接続され、ボンディングワイヤをそれぞれ接続可能なアノードパッド及びカソードパッドが設けられていてもよい。
【0023】
図5は、
図4の温度検出部12を含む領域を通過するA-A´線で切断した半導体チップ1の断面図である。
図5の右側に示すように、半導体チップ1は、活性部11に含まれる活性素子としてプレーナゲート構造の縦型のIGBTを含む。なお、活性部11には、IGBTの他に、還流ダイオード(FWD)を更に含んでもよい。
【0024】
半導体チップ1は、第1導電型(n-型)のドリフト層103を備える。ドリフト層103の上部には、第2導電型(p+型)のウェル領域104a~104cが設けられている。ドリフト層103の上部には、ウェル領域104a~104cよりも高不純物濃度の第2導電型(p型)のベース領域105a~105dが設けられている。ベース領域105aは、ウェル領域104aに接している。ベース領域105b,105cは、ウェル領域104bに接している。ベース領域105dは、ウェル領域104cに接している。
【0025】
ドリフト層103の上部には、ドリフト層103よりも高不純物濃度の第1導電型(n+型)の第1主領域(エミッタ領域)106a~106cが選択的に設けられている。エミッタ領域106aは、ベース領域105b及びウェル領域104bに接している。エミッタ領域106bは、ベース領域105c及びウェル領域104bに接している。エミッタ領域106cは、ベース領域105d及びウェル領域104cに接している。
【0026】
ドリフト層103の上面側にはゲート絶縁膜111a,111bを介してゲート電極112a,112bが埋め込まれている。ゲート電極112aは、ウェル領域104aからエミッタ領域106aに亘って設けられている。ゲート電極112bは、エミッタ領域106bからエミッタ領域106cに亘って設けられている。ゲート絶縁膜111a,111b及びゲート電極112a,112bにより絶縁ゲート型電極構造(111a,112a),(111b,112b)が構成されている。
【0027】
ゲート絶縁膜111a,111bとしては、シリコン酸化膜(SiO2膜)の他、酸窒化珪素(SiON)膜、ストロンチウム酸化物(SrO)膜、窒化珪素(Si3N4)膜、アルミニウム酸化物(Al2O3)膜、マグネシウム酸化物(MgO)膜、イットリウム酸化物(Y2O3)膜、ハフニウム酸化物(HfO2)膜、ジルコニウム酸化物(ZrO2)膜、タンタル酸化物(Ta2O5)膜、ビスマス酸化物(Bi2O3)膜のいずれか1つの単層膜或いはこれらの複数を積層した複合膜等が採用可能である。ゲート電極112a,112bの材料としては、例えばp型不純物又はn型不純物を高不純物濃度に添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)や、チタン(Ti)、タングステン(W)又はニッケル(Ni)等の高融点金属が使用可能である。
【0028】
ゲート電極112a,112bの上面側には層間絶縁膜113a,113bが設けられている。層間絶縁膜113a,113bは、例えば硼素(B)及び燐(P)を添加したシリコン酸化膜(BPSG膜)、燐(P)を添加したシリコン酸化膜(PSG膜)、「NSG」と称される燐(P)や硼素(B)を含まないノンドープのシリコン酸化膜、硼素(B)を添加したシリコン酸化膜(BSG膜)、シリコン窒化膜(Si3N4膜)等の単層膜や、これらの積層膜で構成されている。層間絶縁膜113a,113bには、エミッタ領域106a~106c及びウェル領域104a~104cの上面を露出するようにコンタクトホールが設けられている。
【0029】
層間絶縁膜113a,113bと、層間絶縁膜113a,113bのコンタクトホールから露出したエミッタ領域106a~106c及びウェル領域104a~104cの上面を覆うように第1主電極(エミッタ電極)114が設けられている。エミッタ電極114は、例えばアルミニウム(Al)、アルミニウム-シリコン(Al-Si)、アルミニウム-銅(Al-Cu)、銅(Cu)等の金属で構成されている。エミッタ電極114の下面側には、例えば窒化チタン(TiN)、チタン(Ti)、又はTiを下層としたTiN/Tiの積層構造等のバリアメタル層が設けられていてよい。エミッタ電極114は、ゲート電極112a,112bに電気的に接続されるゲート電極配線(図示省略)と分離して設けられている。
【0030】
ドリフト層103の下面側には、ドリフト層103よりも高不純物濃度の第1導電型(n+型)のバッファ層102が設けられている。バッファ層102の下面側には、第2導電型(p+型)の第2主領域(コレクタ領域)101が設けられている。
【0031】
コレクタ領域101の下面側には、第2主電極(コレクタ電極)115が設けられている。コレクタ電極115としては、例えば金(Au)からなる単層膜や、コレクタ領域101側からチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、Auの順で積層された金属膜が使用可能であり、更にその最下層にモリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属膜を積層してもよい。また、コレクタ領域101とコレクタ電極115との間にオーミック接触のためのニッケルシリサイド(NiSix)膜等のドレインコンタクト層が設けられてもよい。コレクタ電極115の一部がエッチング等により選択的に除去されて、コレクタ電極115には、コレクタ領域101の下面を露出する開口部115aが設けられている。
【0032】
半導体チップ1のIGBTの動作時は、エミッタ電極114をアース電位として、コレクタ電極115に正電圧を印加し、ゲート電極112a,112bに閾値以上の正電圧を印加すると、ベース領域105a~105dに反転層(チャネル)が形成されてオン状態となる。オン状態では、コレクタ電極115からコレクタ領域101、バッファ層102、ドリフト層103、ベース領域105b~105dの反転層及びエミッタ領域106a~106cを経由してエミッタ電極114へ電流が流れる。一方、ゲート電極112a,112bに印加される電圧が閾値未満の場合、ベース領域105b~105dに反転層が形成されないため、オフ状態となり、コレクタ電極115からエミッタ電極114へ電流が流れない。
【0033】
図5の左側に示すように、ウェル領域104aの上面側には、フィールド絶縁膜等の絶縁膜116を介して温度検出部12が設けられている。温度検出部12はダイオードで構成されている。温度検出部12は、p型のアノード領域117と、アノード領域117に接して設けられたn型のカソード領域118を備える。アノード領域117及びカソード領域118は、例えばp型不純物又はn型不純物が添加されたポリシリコンで構成されている。アノード領域117及びカソード領域118を覆うように層間絶縁膜119が設けられている。
【0034】
アノード領域117には、層間絶縁膜119に設けられたコンタクトホールを介してアノード電極120が接続されている。カソード領域118には、層間絶縁膜119に設けられたコンタクトホールを介してカソード電極121が接続されている。半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に設けられた開口部115aは、温度検出部12の少なくとも一部と重なる位置に設けられている。
【0035】
図6は、第1実施形態に係る半導体装置の概略断面図であり、
図4の温度検出部12を通過するB-B´線で切断した半導体チップ1の断面の位置に対応する。
図6に示す半導体チップ1として、
図5に示した半導体チップ1の詳細構造は省略し、
図5に示した温度検出部12の位置を破線で示し、
図5に示した半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115を抜き出して示している。
図6に示すように、半導体チップ1と基板2とは接合層3により接合されている。接合層3は、例えばはんだ、又は銀(Ag)ペースト等の焼結材で構成されている。半導体チップ1での発熱は、接合層3を介して基板2へ放熱される。
【0036】
温度検出部12と重なる位置において、基板2の上面側には、接合層3が形成され難くなるように、接合層3を構成するはんだに対する濡れ性が低下する処理が施されている。濡れ性が低下する処理として、基板2の上面側には、接合層3を構成するはんだに対する濡れ性が基板2よりも低い部材(低濡れ性部材)51が設けられている。低濡れ性部材51は、例えば油性材料、アルミニウム等の金属材料、又は酸化膜等の絶縁材料で構成されている。
【0037】
温度検出部12と重なる位置において、半導体チップ1の下面側には、接合層3が形成され難くなるように、接合層3を構成するはんだに対する濡れ性が低下する処理が施されている。濡れ性が低下する処理として、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115には開口部115aが設けられ、コレクタ領域101(
図5参照)が露出している。コレクタ領域101は、コレクタ電極115よりも接合層3を構成するはんだに対する濡れ性が低い。
【0038】
温度検出部12と重なる位置において、半導体チップ1の下面側及び上面側で濡れ性が低下する処理が施されているため、接合層3には開口部3aが設けられ、開口部3aの内部には接合層3を貫通する空隙(ボイド)31が意図的に形成されている。第1実施形態に係る半導体装置においては、温度検出部12に重なる位置において、接合層3の領域にボイド31が形成されている。このため、温度検出部12に重なる位置における接合層3の領域の熱伝導率が、温度検出部12の重なる位置の周囲であって温度検出部12に重ならない位置における接合層3の熱伝導率よりも低くなっている。ボイド31の幅w2は、温度検出部12の幅w1よりも広い。接合層3のボイド31は、例えば、基板2の上面側に接合層3を用いて半導体チップ1をはんだ付けする際に形成される。
【0039】
図4では、半導体チップ1の下面側に隠れたボイド31の位置を破線で模式的に示している。ボイド31は、温度検出部12の周囲を囲むように設けられている。
図4では、ボイド31は円形の平面パターンを有するが、ボイド31の形状は特に限定されない、ボイド31は、温度検出部12の少なくとも一部と重なる位置に設けられていればよい。
【0040】
半導体チップ1と接合する接合層3の接合面のうちのボイド31の割合は、例えば10%程度であってよい。半導体チップ1と接合する接合層3の接合面のうちのボイド31の割合は、5%以上、20%以下程度であることが好ましい。ボイド31の割合が5%以上である場合、温度検出部12が配置された領域の温度を有効に上昇させることができる。ボイド31の割合が20%以上である場合、温度検出部12が配置された領域の温度が活性部11の最高温度よりも上昇することを抑制することができる。ボイド31の割合、サイズ及び位置を調整することにより、温度検出部12が配置された領域の温度変化量を調整可能であり、温度検出部12が配置された領域の温度を活性部11の最高温度に近づけることができる。
【0041】
ここで、比較例に係る半導体装置を説明する。比較例に係る半導体装置は、
図7に示すように、
図6に示した第1実施形態に係る半導体装置と基本的には同様の構造であるが、半導体チップ1と基板2とを接合する接合層3にボイドが設けられていない点が異なる。
【0042】
比較例に係る半導体装置において、半導体チップ1の活性素子を動作させた場合に、チップ温度は面内で異なり、活性部11の中央部付近に位置するワイヤ接続部42aの近傍で電流が集中し、最高温度となる。しかし、温度検出部12が検出する温度は活性部11の最高温度よりも低い温度となってしまい、過熱保護動作する前に活性素子が破壊に至る可能性がある。この理由は、温度検出部12は活性部11内の配置に制約があり、活性部11の中央部及びワイヤ接続部42aから遠ざけて配置されること、及び、温度検出部12には活性素子の主電流を流す訳ではないことからである。また、そのような過熱保護動作する前の活性素子の破壊を防ぐために、過熱保護動作のトリガとなる設定温度を本来設定したい温度よりも低めに設定する必要があり、本来の活性素子の性能を低下させる可能性もある。
【0043】
比較例に係る半導体装置を作製し、
図8に示すように、時刻t1から半導体チップ1に所定の電力を印加して、赤外線カメラを用いて半導体チップ1の面内の温度を測定した。
図9に示すように、比較例に係る半導体装置では、半導体チップ1の面内のうち、ワイヤ接続部42aを含む領域A1(斜線ハッチング部分)が最高温度となった。
【0044】
図10は、比較例に係る半導体装置のワイヤ接続部42a及び温度検出部12のそれぞれの位置の温度の時間変化を示す。
図10に示すように、比較例に係る半導体装置では、ワイヤ接続部42aの位置の温度に対して、温度検出部12の位置の温度が大きく乖離しているのが分かる。
【0045】
これに対して、第1実施形態に係る半導体装置によれば、
図6に示すように、温度検出部12と重なる位置において、接合層3にボイド31を意図的に形成することにより、温度検出部12と重なる位置での基板2への放熱効果を意図的に悪化(低下)させる。このため、温度検出部12が配置された領域の温度が上昇し、活性部11の最高温度に近づけることができる。よって、温度検出部12が活性部11の最高温度又はそれに近い温度を検出することができるため、過熱検出の精度を向上させることができ、適切な過熱保護動作を実現可能となる。
【0046】
第1実施形態に係る半導体装置を作製して実施例とし、
図8に示すように、時刻t1から半導体チップ1に所定の電力を印加して、赤外線カメラを用いて半導体チップ1の温度を測定した。
図11に示すように、実施例に係る半導体装置では、半導体チップ1の面内のうち、ワイヤ接続部42aを含む領域A1(斜線ハッチング部分)が最高温度となると共に、温度検出部12を含む領域A2(斜線ハッチング部分)も領域A1の最高温度に近い高温となった。
【0047】
図12は、実施例に係る半導体装置のワイヤ接続部42a及び温度検出部12のそれぞれの位置の温度の時間変化を示す。
図12に示すように、実施例に係る半導体装置では、
図10に示した比較例に係る半導体装置の場合と比較して、ワイヤ接続部42aの位置の温度に対して、温度検出部12の位置の温度が近似しているのが分かる。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る半導体装置は、
図13に示すように、接合層3のボイド31の位置が、温度検出部12の直下からずれている点が、
図6に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。接合層3のボイド31は、温度検出部12の一部と重なるように設けられている。第2実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0049】
第2実施形態に係る半導体装置によれば、接合層3のボイド31の位置が温度検出部12の少なくとも一部と重なるように設けられることで、温度検出部12が配置された領域の温度を上昇させて活性部11の最高温度に近づけることができるので、活性部11の温度を適切に検出することができる。
【0050】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る半導体装置は、
図14に示すように、接合層3の開口部3aのサイズが小さくなり、接合層3のボイド31の幅w2が温度検出部12の幅w1と略一致する点が、
図6に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。なお、接合層3のボイド31の幅w2は、温度検出部12の幅w1よりも狭くてもよい。第3実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0051】
第3実施形態に係る半導体装置によれば、接合層3のボイド31の幅w2が温度検出部12の幅w1と略一致するか、或いは温度検出部12の幅w1よりも狭い場合でも、温度検出部12が配置された領域の温度を上昇させて活性部11の最高温度に近づけることができるので、活性部11の温度を適切に検出することができる。
【0052】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る半導体装置は、
図15に示すように、温度検出部12と重なる位置において、基板2の上面側に低濡れ性部材51が無く、接合層3の下面が基板2の上面に接し、接合層3の上面側に凹部3bが設けられている点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0053】
温度検出部12に重なる位置における接合層3の厚さは、温度検出部12に重なる位置の周囲における接合層3の厚さよりも薄い。温度検出部12と重なる位置において、接合層3を構成するはんだに対する濡れ性を低下させる処理として、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に開口部115aが設けられている。これにより、接合層3の上面側に凹部3bが形成され、凹部3bにボイド31が形成されている。第4実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0054】
第4実施形態に係る半導体装置によれば、温度検出部12と重なる位置において、基板2の上面側に低濡れ性部材51が無く、接合層3の下面は基板2の上面に接し、接合層3の上面側に凹部3bが設けられている。このような場合でも、温度検出部12が配置された領域の温度を上昇させて活性部11の最高温度に近づけることができるので、活性部11の温度を適切に検出することができる。
【0055】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る半導体装置は、
図16に示すように、温度検出部12と重なる位置において、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に開口部が無く、接合層3の上面がコレクタ電極115に接し、接合層3の下面側に凹部3cが設けられている点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0056】
温度検出部12に重なる位置における接合層3の厚さは、温度検出部12に重なる位置の周囲における接合層3の厚さよりも薄い。温度検出部12と重なる位置において、接合層3を構成するはんだに対する濡れ性を低下させる処理として、基板2の上面側に低濡れ性部材51が設けられている。これにより接合層3に凹部3cが形成され、凹部3cにボイド31が形成されている。第5実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0057】
第5実施形態に係る半導体装置によれば、温度検出部12と重なる位置において、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に開口部が無く、接合層3の上面がコレクタ電極115に接し、接合層3の下面側に凹部3cが設けられている。このような場合でも、温度検出部12が配置された領域の温度を上昇させて活性部11の最高温度に近づけることができるので、活性部11の温度を適切に検出することができる。
【0058】
(第6実施形態)
第6実施形態に係る半導体装置は、
図17に示すように、温度検出部12と重なる位置において、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に開口部が無く、コレクタ電極115の下面側に低濡れ性部材52が設けられている点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0059】
低濡れ性部材52は、接合層3を構成するはんだに対する濡れ性がコレクタ電極115よりも低い材料で構成されている。低濡れ性部材52は、低濡れ性部材51と同じ材料で構成されていてもよく、異なる材料で構成されていてもよい。低濡れ性部材51,52を配置することにより、接合層3に開口部3aが形成され、開口部3aにボイド31が形成されている。第6実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0060】
第6実施形態に係る半導体装置によれば、温度検出部12と重なる位置において、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に開口部が無く、コレクタ電極115の下面側に低濡れ性部材52が設けられている。このような場合でも、接合層3に開口部3aが形成され、開口部3aにボイド31が形成される。このため、温度検出部12が配置された領域の温度を上昇させて活性部11の最高温度に近づけることができるので、活性部11の温度を適切に検出することができる。
【0061】
(第7実施形態)
第7実施形態に係る半導体装置は、
図18に示すように、温度検出部12と重なる位置において、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に開口部が無く、接合層3の開口部3aに接して低熱伝導部材53が設けられており、開口部3aにボイドが形成されていない点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0062】
低熱伝導部材53は、接合層3よりも熱伝導率が低い材料で構成されている。低熱伝導部材53の接合層3を構成するはんだに対する濡れ性は、コレクタ電極115又は基板2の濡れ性と比較して同等でもよく、高くてもよく、或いは低くてもよい。この場合、接合層3は、はんだで構成されていてもよく、焼結材で構成されていてもよい。低熱伝導部材53の側面は、接合層3の開口部3aに接している。低熱伝導部材53の下面は、基板2の上面に接している。なお、低熱伝導部材53の下面と基板2の上面との間に接合層3の一部が設けられていてもよい。低熱伝導部材53の上面は、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に接している。なお、低熱伝導部材53の上面とコレクタ電極115との間に接合層3の一部が設けられていてもよい。第7実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0063】
第7実施形態に係る半導体装置によれば、温度検出部12と重なる位置において、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に開口部が無く、接合層3の開口部3aに接して低熱伝導部材53が設けられており、開口部3aにボイドが形成されていない。このような場合でも、低熱伝導部材53を設けることで温度検出部12が配置された領域の温度を上昇させて活性部11の最高温度に近づけることができるので、活性部11の温度を適切に検出することができる。
【0064】
(第8実施形態)
第8実施形態に係る半導体装置は、
図19に示すように、温度検出部12と重なる位置において、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に開口部が無く、接合層3の上面側の凹部3bに接して低熱伝導部材53が設けられており、接合層3にボイドが形成されていない点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0065】
低熱伝導部材53の下面及び側面は、基板2の凹部3bに接している。低熱伝導部材53の上面は、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に接している。第8実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0066】
第8実施形態に係る半導体装置によれば、温度検出部12と重なる位置において、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に開口部が無く、接合層3の上面側の凹部3bに接して低熱伝導部材53が設けられており、接合層3にボイドが形成されていない場合でも、低熱伝導部材53を設けることで温度検出部12が配置された領域の温度を上昇させて活性部11の最高温度に近づけることができるので、活性部11の温度を適切に検出することができる。
【0067】
(第9実施形態)
第9実施形態に係る半導体装置は、
図20に示すように、温度検出部12と重なる位置において、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に開口部が無く、接合層3の下面側の凹部3cに低熱伝導部材53が設けられており、接合層3にボイドが形成されていない点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0068】
低熱伝導部材53の下面は、基板2の上面に接している。低熱伝導部材53の側面及び上面は、接合層3の凹部3cに接している。第9実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0069】
第9実施形態に係る半導体装置によれば、温度検出部12と重なる位置において、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115に開口部が無く、接合層3の下面側の凹部3cに低熱伝導部材53が設けられており、接合層3にボイドが形成されていない。このような場合でも、低熱伝導部材53を設けることで温度検出部12が配置された領域の温度を上昇させて活性部11の最高温度に近づけることができるので、活性部11の温度を適切に検出することができる。
【0070】
(第10実施形態)
第10実施形態に係る半導体装置は、
図21に示すように、温度検出部12が活性部11の端部に設けられている点が、第1実施形態に係る半導体装置と異なる。第10実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0071】
第10実施形態に係る半導体装置によれば、温度検出部12が活性部11の端部に設けられている場合でも、温度検出部12が配置された領域の温度を上昇させて活性部11の最高温度に近づけることができるので、活性部11の温度を適切に検出することができる。なお、必ずしもワイヤ接続部42aが活性部11の中央部付近にあり、且つ温度検出部12が活性部11の周辺部にある必要はない。例えば、温度検出部12が活性部11の中央部付近にあってもよい。また、必ずしも活性部11の中央部付近又はワイヤ接続部42a付近が最高温度になる必要が無い。活性部11の最高温度となる領域と離れて温度検出部12が配置されていれば、温度検出部12が配置された領域の温度を上昇させて活性部11の最高温度に近づけることができる。
【0072】
(その他の実施形態)
上記のように、本開示の第1~第10実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本開示を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0073】
例えば、第1~第10実施形態に係る半導体装置において、活性部11に含まれる活性素子としてIGBTを例示したが、p+型のコレクタ領域101の代わりにn+型のソース領域を設けた構成のMOSFETにも適用可能である。また、プレーナゲート構造の代わりにトレンチゲート構造のIGBT又はMOSFETにも適用可能である。更に、IGBT単体以外にも、逆導通型IGBT(RC-IGBT)や、逆阻止絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(RB-IGBT)にも適用可能である。
【0074】
また、第1~第10実施形態に係る半導体装置としてイグナイタを例示したが、イグナイタ以外の半導体装置にも適用可能である。また、基板2はイグナイタ用のフレームに限定されず、例えば直接銅接合(DCB)基板又は活性金属ろう付け(AMD)基板等の絶縁回路基板であってもよい。
【0075】
また、第1~第10実施形態に係る半導体装置において、半導体チップ1の下面側のはんだの濡れ性を低下させる処理として、半導体チップ1の下面側のコレクタ電極115を複数の金属膜の積層構造で構成し、温度検出部12と重なる位置において、積層構造のうちの接合層3側のはんだの濡れ性が相対的に高い金属膜の一部を選択的に除去して、はんだの濡れ性が相対的に低い金属膜を露出させてもよい。
【0076】
第1~第10実施形態に係る半導体装置では、1つの半導体チップ1を有する場合を例示したが、複数の半導体チップを有していてもよい。その場合、半導体チップ毎に接合層のボイドを形成してもよい。
【0077】
また、第1~第10実施形態が開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。このように、本開示はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本開示の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0078】
1…半導体チップ
2…基板
3…接合層
3a…開口部
3b,3c…凹部
11…活性部
12…温度検出部(温度センサ)
13…回路部
31…空隙(ボイド)
41,42…ボンディングワイヤ
51,52…低濡れ性部材
53…低熱伝導部材
101…コレクタ領域
102…バッファ層
103…ドリフト層
104a~104c…ウェル領域
105a~105d…ベース領域
106a~106c…エミッタ領域
111a,111b…ゲート絶縁膜
112a,112b…ゲート電極
113a,113b…層間絶縁膜
114…エミッタ電極
115…コレクタ電極
115a…開口部
116…絶縁膜
117…アノード領域
118…カソード領域
119…層間絶縁膜
120…アノード電極
121…カソード電極