(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093167
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】自律走行作業装置およびその自律走行作業方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240702BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20240702BHJP
A47L 7/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G05D1/02 H
A47L9/28 E
A47L7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209365
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】上山 浩行
【テーマコード(参考)】
3B057
5H301
【Fターム(参考)】
3B057DA00
5H301BB11
5H301CC03
5H301CC06
5H301GG09
5H301GG10
(57)【要約】
【課題】作業者の予期しない障害物や汚れが作業エリアに発生する状況に柔軟に対応した自動走行作業を可能とする。
【解決手段】
所定の清掃エリア50に対して予め設定された清掃プランに従って自動走行清掃を行う自律走行作業装置1は、清掃プランに従って自動走行清掃を制御する走行制御部23と、所定の判定点における清掃プランに基づく作業予定に対する自動走行清掃の作業経過を判定する作業経過判定部24と、作業予定に対する作業経過が、所定の先行量閾値以上先行していると判定された場合、または所定の遅延量閾値以上遅延していると判定された場合の判定結果に応じて、清掃プランを修正するプラン修正部25と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の作業エリアに対して予め設定された作業プランに従って自動走行作業を行う自律走行作業装置であって、
前記作業プランに従って前記自動走行作業を制御する走行制御部と、
所定の判定点における前記作業プランに基づく作業予定に対する前記自動走行作業の作業経過を判定する作業経過判定部と、
前記作業予定に対する前記作業経過が、所定の先行量閾値以上先行していると判定された場合、または所定の遅延量閾値以上遅延していると判定された場合の判定結果に応じて、前記作業プランを修正するプラン修正部と、
を備えることを特徴とする自律走行作業装置。
【請求項2】
前記作業経過判定部は、前記判定点における前記作業プランに基づく前記作業予定として、前記作業プランの開始位置から前記判定点に相当する判定位置までの作業予定時間または作業予定距離を算出し、また、前記作業経過として、前記自動走行作業の開始からの経過時間または経過距離を算出し、更に、前記経過時間または前記経過距離が、前記作業予定時間または前記作業予定距離より前記先行量閾値以上先行しているか否かを判定し、また、前記遅延量閾値以上遅延しているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項3】
前記作業経過判定部は、前記判定点を、前記作業プランに基づく走行経路において開始位置から所定間隔毎に設定することを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項4】
前記作業経過判定部は、前記自動走行作業により前記判定点に到達する毎に、当該判定点における前記作業予定に対する前記作業経過を判定し、
前記プラン修正部は、前記作業予定に対する前記作業経過が、前記先行量閾値以上先行していると判定された前記判定点、または前記遅延量閾値以上遅延していると判定された前記判定点において、前記作業プランを修正することを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項5】
前記作業経過判定部は、前記作業プランに基づく走行経路において開始位置から前記走行経路の全走行予定量に対する所定割合の走行量以上を経過した前記判定点で、前記作業予定に対する前記作業経過を判定することを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項6】
前記プラン修正部は、前記作業プランに基づく前記自動走行作業に掛かる全走行予定時間に基づいて前記自動走行作業の終了予定時刻を算出し、前記終了予定時刻に前記自動走行作業を終了させるように、前記作業プランを修正することを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項7】
前記作業経過判定部は、電源部の残電力量または作業部の残量について、前記作業予定に対する前記作業経過を判定することを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項8】
所定の作業エリアに対して予め設定された作業プランに従って自動走行作業を行う自律走行作業装置の自律走行作業方法であって、
前記作業プランに従って前記自動走行作業を制御する走行制御工程と、
所定の判定点における前記作業プランに基づく作業予定に対する前記自動走行作業の作業経過を判定する作業経過判定工程と、
前記作業予定に対する前記作業経過が、所定の先行量閾値以上先行していると判定された場合、または所定の遅延量閾値以上遅延していると判定された場合の判定結果に応じて、前記作業プランを修正するプラン修正工程と、
を有することを特徴とする自律走行作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の作業エリアに対して予め設定された作業プランに従って自動走行作業を行う自律走行作業装置およびその自律走行作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律走行作業装置は、事前に入力されたプログラムに従って、作業エリアに対して環境地図、走行経路、走行設定および作業設定(清掃設定)を作成または設定することで作業プランを予め設定し、その作業プランに基づいて自律的に走行し自動で作業(清掃)する自動走行作業(自動走行清掃)を行う。例えば、自律走行作業装置は、複数の、または広大な作業エリアを有する商業施設、オフィス、ホテル、病院などにおいて床面の清掃作業を行う産業用(業務用)の作業ロボットに適用される。
【0003】
例えば、特許文献1では、自律移動装置は、操作インターフェースを介して作業指示が入力されると、作業エリアまでの移動時間とその作業エリアにおける作業時間とを見積もることにより作業指示に関する作業の遂行に必要な所要時間を推定し、その推定結果を操作インターフェースを介してユーザに提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような従来技術によれば、自律走行作業装置は、作業者の指示した作業を行う際に、当該作業に掛かる時間や電力量に不足が生じた場合でも、作業者の思惑に近いレベルで当該作業を遂行することが可能となる。しかしながら、このような従来技術では、作業エリアにおいて、作業者の予期しない未知の障害物が存在した場合や、予期しない汚れが発生した場合に対応して作業を行うことは難しい。例えば、ショッピングモールなどの商業施設では、作業エリアの状況がイベントなどによって変化し易く、イベント期間中は来客が多くなることで多数の汚れが作業エリアに発生する状況が考えられる。また、イベント開催時に作業エリアの一画がイベントスペースとして割り当てられ、あるいは多数の資機材の置き場所に使用されることで、進入不可エリアとなる状況が考えられる。また、商業施設では、商品の入れ替えなどが行われる際に商品を入れた多数の段ボールが床面に置かれることで、作業者の予期しない多数の障害物が作業エリアに発生する状況が考えられる。また、商業施設では、天候によっては来客が雨などの汚れを店舗内にもたらすことで、作業者の予期しない多数の汚れが作業エリアに発生する状況が考えられる。このように作業者の予期しない障害物や汚れが作業エリアに発生した場合、自律走行作業装置は、事前に予測していた終了予定時刻に自動走行作業を終了できないことがある。
【0006】
本発明は、上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、作業者の予期しない障害物や汚れが作業エリアに発生する状況に柔軟に対応した自動走行作業を可能とする自律走行作業装置およびその自律走行作業方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の自律走行作業装置は、所定の作業エリアに対して予め設定された作業プランに従って自動走行作業を行う自律走行作業装置であって、前記作業プランに従って前記自動走行作業を制御する走行制御部と、所定の判定点における前記作業プランに基づく作業予定に対する前記自動走行作業の作業経過を判定する作業経過判定部と、前記作業予定に対する前記作業経過が、所定の先行量閾値以上先行していると判定された場合、または所定の遅延量閾値以上遅延していると判定された場合の判定結果に応じて、前記作業プランを修正するプラン修正部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1の自律走行作業装置によれば、作業者の予期しない障害物や汚れが作業エリアに発生して、作業者の予期しない作業状況が作業エリアに生じても、柔軟に対応して自動走行作業を継続させることができる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第2の自律走行作業装置において、前記作業経過判定部は、前記判定点における前記作業プランに基づく前記作業予定として、前記作業プランの開始位置から前記判定点に相当する判定位置までの作業予定時間または作業予定距離を算出し、また、前記作業経過として、前記自動走行作業の開始からの経過時間または経過距離を算出し、更に、前記経過時間または前記経過距離が、前記作業予定時間または前記作業予定距離より前記先行量閾値以上先行しているか否かを判定し、また、前記遅延量閾値以上遅延しているか否かを判定する。
【0010】
本発明の第2の自律走行作業装置によれば、作業エリアの状況に応じて、自動走行作業の作業状況を経過時間や経過距離によって判定することができる。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第3の自律走行作業装置において、前記作業経過判定部は、前記判定点を、前記作業プランに基づく走行経路において開始位置から所定間隔毎に設定する。
【0012】
本発明の第3の自律走行作業装置によれば、自動走行作業の作業状況を正確に把握することができる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第4の自律走行作業装置において、前記作業経過判定部は、前記自動走行作業により前記判定点に到達する毎に、当該判定点における前記作業予定に対する前記作業経過を判定し、前記プラン修正部は、前記作業予定に対する前記作業経過が、前記先行量閾値以上先行していると判定された前記判定点、または前記遅延量閾値以上遅延していると判定された前記判定点において、前記作業プランを修正する。
【0014】
本発明の第4の自律走行作業装置によれば、自動走行作業の作業状況を正確に把握した上で、適切な作業プランに修正することができる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第5の自律走行作業装置は、前記作業経過判定部は、前記作業プランに基づく走行経路において開始位置から前記走行経路の全走行予定量に対する所定割合の走行量以上を経過した前記判定点で、前記作業予定に対する前記作業経過を判定する。
【0016】
本発明の第5の自律走行作業装置によれば、自動走行作業の作業状況をより正確に把握した上で、より適切な作業プランに修正することができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第6の自律走行作業装置において、前記プラン修正部は、前記作業プランに基づく前記自動走行作業に掛かる全走行予定時間に基づいて前記自動走行作業の終了予定時刻を算出し、前記終了予定時刻に前記自動走行作業を終了させるように、前記作業プランを修正する。
【0018】
本発明の第6の自律走行作業装置によれば、作業状況に拘わらず、自動走行作業を終了予定時刻に終了することを、正確に実行させることができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第7の自律走行作業装置において、前記作業経過判定部は、電源部の残電力量または作業部の残量について、前記作業予定に対する前記作業経過を判定する。
【0020】
本発明の第7の自律走行作業装置によれば、電源部や作業部の状態に基づいて、自動走行作業の作業状況を正確に把握した上で、適切な作業プランに修正することができる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の第1の自律走行作業方法は、所定の作業エリアに対して予め設定された作業プランに従って自動走行作業を行う自律走行作業装置の自律走行作業方法であって、前記作業プランに従って前記自動走行作業を制御する走行制御工程と、所定の判定点における前記作業プランに基づく作業予定に対する前記自動走行作業の作業経過を判定する作業経過判定工程と、前記作業予定に対する前記作業経過が、所定の先行量閾値以上先行していると判定された場合、または所定の遅延量閾値以上遅延していると判定された場合の判定結果に応じて、前記作業プランを修正するプラン修正工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、自律走行作業装置およびその自律走行作業方法は、作業者の予期しない障害物や汚れが作業エリアに発生する状況に柔軟に対応した自動走行作業を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の構成を示す概要図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の清掃エリアの例を示す概要図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の清掃エリアにおいて走行経路が設定された例を示す概要図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の清掃エリアにおいて進入不可エリアが設定された例を示す概要図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の清掃エリアにおいて重点エリアが設定された例を示す概要図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の清掃エリアにおいて障害物を回避する例を示す概要図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の清掃エリアにおいて人を回避する例を示す概要図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の清掃エリアにおいて進入不可エリアが設定された場合の修正前の走行経路の例を示す概要図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置の清掃エリアにおいて進入不可エリアが設定された場合の修正した走行経路の例を示す概要図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る自律走行作業装置おける動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な具体例であって、種々の好ましい技術を開示しているが、本発明の技術範囲はこれらの態様に限定されるものではない。
【0025】
本発明の第1の実施形態による自律走行作業装置1について説明する。
図1は、自律走行作業装置1の構成を示す概要図である。自律走行作業装置1は、手動操作に基づく手動走行、および自動制御に基づく自律的な走行(自動走行)が可能な車両であって、手動走行モードおよび自動走行モードの何れかの動作モードで動作する。自動走行モードでは、自律走行作業装置1は、予め設定されたデータやプログラムからなる清掃プラン(作業プラン)に基づいて自律的に走行し自動で清掃(作業)する自動走行清掃(自動走行作業)を行う。
【0026】
図1に示すように、自律走行作業装置1は、各部を収容するための装置本体2と、装置本体2を走行させる走行部3とを備える。自律走行作業装置1は、所定の作業を実行する作業部として、例えば、装置本体2の下方の床面の清掃作業を実行する清掃部4を備えて、床面洗浄機として実現することができる。自律走行作業装置1は、例えば、ショッピングモールなどの商業施設、オフィス、ホテル、病院、学校、工場などの全部または一部の領域を清掃エリア50(作業エリア)として、清掃エリア50の床面を清掃対象(作業対象)とする(
図3参照)。
【0027】
自律走行作業装置1は、装置本体2と当該装置本体2の周囲の壁や置物などの障害物(物体)との距離および角度(例えば、装置本体2の前進方向に対する角度)などを計測する計測部5を備える。更に、自律走行作業装置1は、自律走行作業装置1の各部および各種機能(走行部3による走行、清掃部4による清掃作業、計測部5による計測など)を統括制御する制御部6と、各種機能の操作や表示のための操作表示部7と、図示しないバッテリーの充電制御や各部に電力を供給するための電源部8とを備える。
【0028】
走行部3は、装置本体2の下部に一体的に設けられていて、自在式の補助輪である1つの後輪11と、固定式で左右別々に回転可能な駆動輪である左右の前輪10と、左右の前輪10をそれぞれ駆動する左右の駆動モータ(図示せず)とを備える。後輪11は、装置本体2の下面後側で左右方向中央に設けられ、前輪10は、装置本体2の下面前側で左右方向両側にそれぞれ設けられる。各駆動モータは、装置本体2内に設けられ、駆動ギア(図示せず)を介して各前輪10の回転軸(図示せず)に接続されている。走行部3では、各駆動モータが2つの前輪10を同時に回転させることで装置本体2を前進または後退させることができる一方、左側の前輪10または右側の前輪10を停止させると同時に右側の前輪10または左側の前輪10を回転させることで装置本体2を左旋回または右旋回させることができる。
【0029】
清掃部4は、装置本体2の下部に設けられ、装置本体2の下方の床面を清掃するように構成される。清掃部4は、初期設定された清掃データ、操作表示部7を介して設定された清掃データ、または自動制御によって設定された清掃データに従って床面を清掃する。
【0030】
清掃部4は、例えば、洗剤として洗浄液を用いて床面を清掃する湿式の清掃機構で構成され、床面に接触して床面を清掃する清掃部材12(作業部材)と、洗浄液を床面に供給する洗浄液供給部13と、床面を清掃した使用後の洗浄液、即ち、汚水を吸引する吸引部14とを備える。清掃部4は、清掃部材12を床面上で回転させる清掃部材用モータ(図示せず)と、清掃部材12を床面に対して上下方向に移動させる清掃部材用アクチュエータ(図示せず)とを備える。清掃部4は、吸引部14で吸引された汚水を回収する汚水回収部(図示せず)を備える。なお、清掃部4は、床面がカーペットの場合には、洗浄液を使用せずに乾式の清掃作業を行うように構成されてよい。
【0031】
清掃部材12は、例えば、進行方向略中央で装置幅方向(左右方向)に並んで取り付けられた一対の洗浄パッドや一対の洗浄ブラシなどで構成される。左側の洗浄パッドまたは洗浄ブラシが上方視時計回りに回転し、右側の洗浄パッドまたは洗浄ブラシが上方視反時計回りに回転して、幅方向中央側で前方から後方へ向かうように回転する。これにより、一対の洗浄パッドまたは一対の洗浄ブラシの前方の汚水や塵埃を幅方向中央側に収集しつつ後方へ送出する。
【0032】
洗浄液供給部13は、供給ポンプ(図示せず)を用いて洗浄液タンク(図示せず)から床面に洗浄液を供給して散布するように構成される。
【0033】
吸引部14は、吸引ブロアなどで構成され、吸引した汚水を汚水回収部(図示せず)へと回収する。汚水回収部は、清掃部材12より後方で床面に接地して設けられたスキージ15によって、清掃部材12から後方に送出される汚水を受け止めて収集し、吸引部14に接続された汚水ダクト(図示せず)によって、収集された汚水を吸引部14の吸引力を利用して吸引し、吸引された汚水を、汚水ダクトに接続された汚水タンク(図示せず)へ回収する。
【0034】
上記のような清掃部4における清掃データには、清掃部材12の回転の作動/停止、洗浄液供給部13による洗浄液供給の作動/停止、吸引部14による吸引の作動/停止、清掃部材12の床面に対する接地圧の強度や回転数、洗浄液供給部13による洗浄液供給量、吸引部14による吸引強度などがある。
【0035】
計測部5は、装置本体2の周囲の障害物(物体)や壁面との距離および角度を計測する障害物センサ5aを備える。障害物センサ5aは、例えば、装置本体2の前面に設けられ、レーザーレンジファインダ(LRF:Laser Range Finder)などから構成され、床面から所定の計測可能高さ(例えば、30cm)以内で、障害物センサ5aから所定の計測可能範囲(例えば、半径20m)以内に存在する障害物を検出する。なお、障害物センサ5aを構成するLRFは、上下(高さ)方向に複数(2個以上)設けられてもよい。計測部5は、制御部6に接続されていて、計測結果を制御部6へと送信する。
【0036】
また、計測部5は、装置本体2に近接する障害物を検出する超音波センサ5bや、床面を含む装置本体2の前景を撮像可能なTOF(Time Of Flight)カメラ5c、走行部3が走行する床面の段差を検出する赤外線センサ(図示せず)を備えてもよい。超音波センサ5bやTOFカメラ5cは、装置本体2に近接する未知の障害物を三次元的に検知することができる。
【0037】
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)などで構成される。
図2は、自律走行作業装置1の電気的構成を示すブロック図である。制御部6は、
図2に示すように、記憶部16に対してバス17を介して接続され、バス17は、更にインターフェース18に接続されている。また、制御部6は、バス17およびインターフェース18を介して、上記の走行部3、清掃部4、計測部5、操作表示部7および電源部8に接続され、更に、通信部19に接続されている。
【0038】
記憶部16は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリなどからなり、自律走行作業装置1の各部および各種機能を制御するためのプログラムやデータが格納される。制御部6は、記憶部16に格納されたプログラムやデータを読み取り、このプログラムを実行することにより、各部および各種機能を制御する。通信部19は、Wi-Fi(登録商標)などの無線LANやBluetooth(登録商標)などの近距離無線を利用した無線通信方式によって外部機器と無線通信を行う。
【0039】
更に、制御部6は、モード切換部20と、地図作成部21と、プラン作成部22と、自動走行制御部23(走行制御部)と、作業経過判定部24と、プラン修正部25とを備える。なお、モード切換部20、地図作成部21、プラン作成部22、自動走行制御部23、作業経過判定部24およびプラン修正部25は、記憶部16に記憶されて制御部6に実行されるプログラムで構成されてよく、制御部6のようなコンピュータによって実行される。制御部6に備わる各部については後述する。
【0040】
操作表示部7は、装置本体2の上面に設けられ、例えば、メインスイッチと、強制停止ボタンと、スピーカと、表示器(いずれも図示せず)とを備える。操作表示部7の各部は、制御部6に接続されている。操作表示部7は、装置本体2と一体的に構成されるものでよいが、あるいは、装置本体2に対して着脱可能なタブレット型端末などで構成されていてもよい。
【0041】
メインスイッチは、「切」、「手動」、「自動」を切換可能に構成されている。メインスイッチを「手動」に切り換えることで、モード切換部20によって自律走行作業装置1の動作モードが手動走行モードに切り換えられる一方、メインスイッチを「自動」に切り換えることで、モード切換部20によって自律走行作業装置1の動作モードが自動走行モードに切り換えられる。
【0042】
強制停止ボタンは、自律走行作業装置1の強制停止を操作するもので、操作に応じて強制停止信号を制御部6へと出力する。スピーカは、制御部6の制御に応じて警報音などを発生させるものである。
【0043】
表示器は、タッチパネルなどで構成され、制御部6からの制御信号に応じて様々な画面を表示し、各画面でのタッチ操作に基づく操作信号を制御部6へと送信する。
【0044】
電源部8は、装置本体2内部に搭載されたバッテリー(電源)を備え、外部電源に接続することで充電可能に構成されていて、自律走行作業装置1の各部に電力を供給する
【0045】
また、自律走行作業装置1は、手動走行を操作するためのハンドルやスロットルなどからなる走行操作部(図示せず)を備えてもよい。走行操作部は、作業者によるハンドルの操舵量やスロットルの操作量を電気信号に変換し、当該電気信号を走行部3に出力して駆動モータを駆動させることで、手動走行を可能とする。
【0046】
次に、制御部6に備わる各部について説明する。
【0047】
モード切換部20は、操作表示部7のメインスイッチなどの操作に応じて、自律走行作業装置1の動作モードを手動走行モードおよび自動走行モードの何れかに切り換える。モード切換部20によって動作モードが手動走行モードに設定されている間、走行操作部の手動操作入力が可能となり、自動走行モードに設定されている間、走行操作部の手動操作入力が不能となる。
【0048】
地図作成部21は、リアルタイムで自己位置の推定と環境地図の作成とを行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などの技術を用いる。地図作成部21は、所定位置の装置本体2について、計測部5で計測された障害物(物体)からの距離および角度を座標変換して装置本体2の周囲の局所地図を作成すると共に、作成した局所地図や計測部5で計測された装置本体2の移動量に基づいて局所地図における装置本体2の自己位置を推定する。なお、計測部5の障害物センサ5aは、障害物からの距離および角度の二次元データを取得し、地図作成部21は、障害物センサ5aによって取得された二次元データをつなぎ合わせることで局所地図を作成する。
【0049】
プラン作成部22は、自動走行清掃を行う清掃エリア50(
図3参照)について環境地図と走行経路51(
図4参照)を含む清掃プラン(作業プラン)を作成して記憶部16に記憶する。例えば、プラン作成部22は、事前に入力された清掃エリア50の図面データに基づいて環境地図を作成する。あるいは、プラン作成部22は、清掃エリア50において自律走行作業装置1が手動走行を開始してから終了するまでの間の各位置で地図作成部21によって作成した各局所地図をつなぎ合わせる(合成する)ことで環境地図を作成する。
【0050】
また、プラン作成部22は、事前に入力された開始位置や終了位置、壁面などの障害物からの安全距離、走行部3の清掃時および非清掃時の走行速度などの走行データ、清掃部4の作業幅や清掃データ(清掃部材12の接地圧強度や回転数、洗浄液供給部13の洗浄液供給量、吸引部14の吸引強度など)などの各種設定値に基づいて、例えば、
図3に示すような清掃エリア50の環境地図において、
図4に示すように、清掃エリア50を塗りつぶすように(清掃漏れのないように)ジグザグに往復走行するような走行経路51を作成する。
図4では、走行経路51の開始位置を四角マークで示し、終了位置をバツマークで示す。このとき、プラン作成部22は、すれ違う往路と復路とで清掃部4が所定幅でオーバーラップするように走行経路51を作成するとよい。プラン作成部22は、走行経路51のステップ(所定間隔の位置)毎に、位置データ(座標や角度)、走行部3の走行データ、清掃部4の清掃データを関連付けて走行経路51を作成する。
【0051】
自動走行制御部23は、自動走行モードの実行時に、実行すべき清掃プランを記憶部16から読み取って、この清掃プランに基づいて走行部3に対して自動制御を行い、装置本体2が清掃プランの走行経路51や各ステップの走行データに従った自動走行を行うように走行部3を制御する。
【0052】
更に、自動走行制御部23は、自動走行モードの実行時に、走行部3が装置本体2を清掃プランの走行経路51に従った自動走行をさせる間、装置本体2の走行経路51上の位置に対応する清掃データを清掃プランから読み取り、この清掃データに従った自動制御によって清掃作業を行うように清掃部4を制御する。
【0053】
具体的には、自動走行制御部23は、複数の清掃プランの中から、自動走行清掃を実行すべき清掃プランを選択させるために、操作表示部7の表示器にプラン選択エリアを表示して、既に記憶部16に記憶されている清掃プランを選択可能に一覧表示する。そして、自動走行制御部23は、操作表示部7の操作キーを用いた選択操作や表示器での直接タッチ操作によって清掃プランが選択されると共に開始ボタンが操作されると、その清掃プランに従った自動走行清掃を開始する。
【0054】
自動走行制御部23は、自動走行清掃を開始すると、地図作成部21によって作成した局所地図と、清掃プランの環境地図とをマッチングすることで、環境地図における装置本体2の自己位置を把握し、当該自己位置が清掃プランの走行経路51に従うように、自動走行清掃を制御する。
【0055】
なお、自動走行制御部23は、自動走行清掃の実行中に、計測部5の超音波センサ5bやTOFカメラ5cによって、装置本体2に近接する未知の障害物を検知した場合、エラー停止として自動走行清掃を一時停止する。また、自動走行制御部23は、当該障害物を回避して走行可能か判断し、回避可能な場合は、当該障害物に対して安全距離を保持しつつ、当該障害物の外形に沿うような回避走行を行うように走行部3を制御する。自動走行制御部23は、当該障害物を回避した後、最も近い走行経路51上の位置まで自動走行で移動して、そこから自動走行清掃を継続する。一方、自動走行制御部23は、当該障害物を回避不可能な場合、その場で停止する。更に、自動走行制御部23は、エラー停止が生じた場合、その旨のメッセージを作業者の端末などに通知してもよい。
【0056】
作業経過判定部24は、自動走行清掃の実行中において、所定の判定点における清掃プランに基づく作業予定に対する自動走行清掃の作業経過を判定するものである。作業経過判定部24は、作業予定に対する作業経過が、所定の先行量閾値以上先行しているか否かを判定し、また、所定の遅延量閾値以上遅延しているか否かを判定する。
【0057】
作業経過判定部24は、判定点を、清掃プランに基づく走行経路51において、開始位置から所定間隔毎の経過距離または走行時間を経過した位置に設定し、例えば、走行経路51の全走行予定距離または全走行予定時間の1/20の間隔毎に設定する。作業経過判定部24は、自動走行清掃により自律走行作業装置1が各判定点に到達する毎に、当該判定点における作業予定に対する作業経過を判定する。
【0058】
作業経過判定部24は、自動走行清掃を開始する際に(その開始位置で)、走行経路51の各位置データに基づいて全走行予定距離を算出し、全走行予定距離を事前に設定された平均の走行速度で除算することで、自動走行清掃に掛かる全走行予定時間を算出する。なお、作業経過判定部24は、走行経路51の清掃区間を清掃時の平均の走行速度で除算し、走行経路51の非清掃区間を非清掃時の平均の走行速度で除算する。また、作業経過判定部24は、自動走行清掃を開始する際の現在時刻(開始時刻)に全走行予定時間を足すことで自動走行清掃の終了予定時刻を算出する。
【0059】
作業経過判定部24は、例えば、各判定点における清掃プランに基づく作業予定として、清掃プランの開始位置から判定点に相当する判定位置までの作業予定時間を算出し、また、作業経過として、自動走行清掃の開始からの経過時間を算出する。このとき、作業経過判定部24は、走行経路51における開始位置から判定点までの経過距離を平均の走行速度で除算することで、開始位置から判定点までの作業予定時間を算出し、また、自動走行清掃を開始してから実際に経過した時間を計測することで経過時間を算出する。そして、作業経過判定部24は、作業予定時間と経過時間との時間差分に応じて作業状況を判定し、例えば、経過時間が作業予定時間より先行量閾値の先行時間閾値以上先行しているか否かを判定し、また、遅延量閾値の遅延時間閾値以上遅延しているか否かを判定する。先行時間閾値や遅延時間閾値は、作業者の操作に応じて設定可能にしてもよく、または全走行予定時間に対する所定割合で自動的に設定されてもよく、若しくは、電源部8の残り電力量に基づいて自動的に設定されてもよい。
【0060】
あるいは、作業経過判定部24は、例えば、各判定点における清掃プランに基づく作業予定として、清掃プランの開始位置から判定点に相当する判定位置までの作業予定距離を算出し、また、作業経過として、自動走行清掃の開始からの経過距離を算出する。このとき、作業経過判定部24は、走行経路51における開始位置から判定点までの各位置データに基づいて作業予定距離を算出し、また、自動走行清掃を開始してから実際に経過した距離を計測することで経過距離を算出する。そして、作業経過判定部24は、作業予定距離と経過距離との距離差分に応じて作業状況を判定し、例えば、経過距離が作業予定距離より先行量閾値の先行距離閾値以上先行しているか否かを判定し、また、遅延量閾値の遅延距離閾値以上遅延しているか否かを判定する。先行距離閾値や遅延距離閾値は、作業者の操作に応じて設定可能にしてもよく、または全走行予定距離に対する所定割合で自動的に設定されてもよく、若しくは、電源部8の残電力量に基づいて自動的に設定されてもよい。
【0061】
また、作業経過判定部24は、清掃プランに基づく走行経路51において開始位置から走行経路51の全走行予定量に対する所定割合(例えば、50%)の走行量以上を経過した判定点で、作業予定に対する作業経過を判定する。換言すれば、作業経過判定部24は、自動走行清掃において全走行予定距離または全走行予定時間に対する所定割合の経過距離(判定有効距離)または走行時間(判定有効時間)を経過するまでは、判定点に到達したかに拘わらず、作業経過の判定を無効にし、判定有効距離または判定有効時間以上を経過した後の走行経路51上に設定されている判定点で作業経過の判定を有効にする。なお、作業経過判定部24は、所定割合を100%に設定して、自動走行清掃の終了位置で作業経過の判定を有効にしてもよい。
【0062】
具体的には、作業経過判定部24は、走行経路51において開始位置から所定の経過距離間隔毎に設定された判定点での作業予定時間に対して、経過時間との差分時間が、所定値(先行時間閾値)以上残っている場合、当該判定点において自動走行清掃が作業予定よりも先行していると判定し、状況Aのプラス状況であると判定する。一方、作業経過判定部24は、走行経路51において開始位置から所定の経過距離間隔毎に設定された判定点での作業予定時間に対して、経過時間との差分時間が、所定値(遅延時間閾値)以上不足している場合、当該判定点において自動走行清掃が作業予定よりも遅延していると判定し、状況Bのマイナス状況であると判定する。なお、作業経過判定部24は、判定点での作業予定時間に対して経過時間との差分時間が所定値未満残っている場合や、所定値未満不足している場合には、当該判定点において自動走行清掃が作業予定の範囲内であると判定し、通常状況と判定する。
【0063】
あるいは、作業経過判定部24は、走行経路51において開始位置から所定の走行時間間隔毎に設定された判定点での作業予定距離に対して、経過距離との差分距離が、所定値(先行距離閾値)以上残っている場合、当該判定点において自動走行清掃が作業予定よりも先行していると判定し、プラス状況(状況A)と判定する。一方、作業経過判定部24は、走行経路51において開始位置から所定の走行時間間隔毎に設定された判定点での作業予定距離に対して、経過距離との差分距離が、所定値(遅延距離閾値)以上不足している場合、当該判定点において自動走行清掃が作業予定よりも遅延していると判定し、マイナス状況(状況B)と判定する。なお、作業経過判定部24は、判定点での作業予定距離に対して経過距離との差分距離が所定値未満残っている場合や、所定値未満不足している場合には、当該判定点において自動走行清掃が作業予定の範囲内であると判定し、通常状況と判定する。
【0064】
ところで、自動走行清掃を行う清掃エリア50では、作業者の予期しない進入不可エリア52や障害物や汚れが発生することがあり、その場合、作業予定に対して作業経過が先行したり遅延したりすることがある。例えば、清掃エリア50でイベントが開催されるとき、
図5に示すように、清掃エリア50の一画がイベントスペースとして割り当てられ、あるいは多数の資機材の置き場所に使用されることで、進入不可エリア52となる場合がある。事前に操作表示部7への入力などにより清掃エリア50に進入不可エリア52が設定された場合、自律走行作業装置1は、進入不可エリア52では自動走行清掃を行わず、進入不可エリア52を回避して走行するため、清掃プランに従った自動走行清掃を終了するまでに要する作業時間が短くなる(早くなる)。そこで、作業経過判定部24は、進入不可エリア52が設定された場合、作業予定に対して作業経過が先行すると判定する。
【0065】
また、自律走行作業装置1は、
図7に示すように、自動走行清掃中に障害物を検出した場合には、走行プランの走行経路51に拘わらず、障害物を回避するように走行し、また、
図8に示すように、自動走行清掃中に障害物として移動する作業者などの人を検出した場合、安全のために、移動する人を所定の対人距離内で検出しなくなるまで一時停止する。従って、イベント期間中など、清掃エリア50を往来する人が多くなる場合には、自律走行作業装置1は、繰り返し一時停止することになり、清掃プランに従った自動走行清掃を終了するまでに要する作業時間が長くなる(遅くなる)。そこで、作業経過判定部24は、自動走行清掃中に障害物を検出した場合、作業予定に対して作業経過が遅延すると判定する。なお、
図8では、判定点を三角マークで示す。
【0066】
プラン修正部25は、作業経過判定部24によって、作業予定に対する作業経過が、所定の先行量閾値以上先行していると判定された場合、または所定の遅延量閾値以上遅延していると判定された場合の判定結果に応じて、清掃プランを修正する。例えば、プラン修正部25は、自動走行清掃において所定の判定点に到達したときに、作業予定に対する作業経過が、所定の先行量閾値以上先行していると判定された場合、または所定の遅延量閾値以上遅延していると判定された場合に、当該判定点以降の清掃プランを修正する。プラン修正部25は、清掃プランの修正履歴(ログ)を記憶部16に記憶する。自動走行制御部23は、清掃プランが修正されると、修正された清掃プランを設定して、当該清掃プランに基づいて自動走行清掃を行うように走行部3や清掃部4を制御する。
【0067】
プラン修正部25は、例えば、清掃プランの各ステップに関連付けられた走行データや清掃データの数値を修正して清掃プランを再作成する。あるいは、プラン修正部25は、清掃プランの各ステップに関連付けられた走行データに拘わらず、徐々に異なる走行速度になるように、例えば、徐々に加速または減速するように、清掃プランの各ステップの走行データを作成して清掃プランを再作成する。
【0068】
プラン修正部25は、作業経過が先行していてプラス状況(状況A)と判定された場合には、例えば、修正パターンAとして、清掃の仕上がりが向上するように走行データおよび清掃データを変更し、例えば、走行速度を設定されている速度よりも低速(例えば、現状の半分の速度)に変更し、清掃部材12の接地圧強度や回転数および洗浄液供給部13の洗浄液供給量を上げて吸引部14の吸引強度を下げるように変更して清掃プランを修正する。あるいは、プラン修正部25は、修正パターンBとして、清掃エリア50の自動走行清掃を繰り返すように清掃プランを修正する。
【0069】
ここで、プラン修正部25は、通常は、修正パターンAを選択するが、修正前の清掃プランに基づく自動走行清掃の終了予定時刻と、自動走行清掃を終了した終了時刻との時間差分に基づいて、清掃プランの自動走行清掃を繰り返し行える時間が余っている場合には、修正パターンBを選択する。なお、プラン修正部25は、修正パターンAまたは修正パターンBに基づく清掃プランの修正を作業者の端末などに通知してもよい。若しくは、プラン修正部25は、作業経過が先行していてプラス状況(状況A)と判定された場合に、修正パターンAおよび修正パターンBの何れを選択するかの問い合わせを作業者の端末に通知してもよい。
【0070】
また、プラン修正部25は、作業経過が遅延していてマイナス状況(状況B)と判定された場合には、例えば、修正パターンCとして、修正前の清掃プランに基づく自動走行清掃の終了予定時刻を優先するように走行データおよび清掃データを変更し、例えば、走行速度を設定されている速度よりも高速(例えば、現状の1.5倍の速度)に変更し、清掃部材12の接地圧強度や回転数および洗浄液供給部13の洗浄液供給量を下げて吸引部14の吸引強度を上げるように変更して清掃プランを修正する。あるいは、プラン修正部25は、修正パターンDとして、自動走行清掃を行うエリアを減らして、清掃エリア50に設定されている重点エリア53(
図6~
図8参照)を優先して自動走行清掃を行うように清掃プランを修正する。
【0071】
ここで、プラン修正部25は、走行速度を変更した清掃プランの自動走行清掃を、修正前の清掃プランに基づく自動走行清掃の終了予定時刻までに終了できると推定される場合には、修正パターンCを選択するが、終了できないと推定される場合には、修正パターンDを選択する。また、プラン修正部25は、修正前の清掃プランの走行速度が上限に設定されていた場合には、修正パターンDを選択するとよい。なお、プラン修正部25は、修正パターンCまたは修正パターンDに基づく清掃プランの修正を作業者の端末などに通知してもよい。若しくは、プラン修正部25は、作業経過が遅延していてマイナス状況(状況B)と判定された場合に、修正パターンCおよび修正パターンDの何れを選択するかの問い合わせを作業者の端末に通知してもよい。
【0072】
図6~
図8に示すように、清掃エリア50における重点エリア53は、より高いレベルで自動走行清掃を行うために予め設定される。例えば、制御部6は、清掃プランに基づく自動走行清掃の終了後に、同じ清掃エリア50において作業者によって手動走行モードで追加の手動清掃が行われたエリアを追加エリアとして記憶部16に記憶しておく。そして、制御部6は、所定期間(例えば、一週間など)の間に、同じ追加エリアで複数回、追加の手動清掃が行われた場合に、当該追加エリアを重点エリア53として設定し、記憶部16に記憶する。なお、制御部6は、手動走行モードで手動清掃を行う際に、重点エリア53として設定するか否かを、操作表示部7の操作キーを用いた操作や表示器でのタッチ操作に応じて切り換えてもよい。また、制御部6は、手動走行モードで清掃部4による清掃を行わずに、所定のエリアを取り囲むように手動走行することで、当該エリアを重点エリア53に設定してもよい。
【0073】
また、制御部6は、プラン作成部22によって清掃エリア50の環境地図および走行経路51を含む清掃プランが作成された後、当該清掃プランの作成時点または当該清掃プランの自動走行清掃の開始時点で、操作表示部7の表示器で環境地図を表示した画面において、作業者のタッチ操作などに応じて重点エリア53の設定を受け付けて、設定された重点エリア53を記憶部16に記憶する。あるいは、制御部6は、プラン作成部22によって清掃プランが作成された後、手動走行モードで清掃部4による清掃を行わずに手動走行する際に、操作表示部7の操作キーを用いた操作や表示器でのタッチ操作に応じて重点エリア53を設定してもよく、若しくは、取り囲んだエリアを重点エリア53に設定してもよい。
【0074】
なお、制御部6は、清掃エリア50の床面の汚れ状況に基づいて重点エリア53を設定してもよい。自律走行作業装置1は、吸引部14において床面から吸引した清掃汚水を汚水タンクに回収する汚水ダクトなどの配管に、汚水の濁度を計測する光学式濁度計を備え、制御部6は、自動走行清掃中に回収中の清掃汚水の濁度を光学式濁度計によって計測し、その計測結果に基づいて清掃エリア50の汚れ状況を判定する。制御部6は、清掃エリア50の自動走行清掃において所定間隔毎に清掃汚水の濁度を計測し、1回の自動走行清掃における清掃汚水の濁度の平均値を算出し、当該平均値よりも清掃汚水の濁度が高いエリアを汚れの多いエリアと判定し、重点エリア53に設定する。
【0075】
また、制御部6は、以前に清掃プランを修正した際に減らされて自動走行清掃から除外されたエリアを重点エリア53に設定してもよい。
【0076】
ところで、自律走行作業装置1は、
図5に示すように、清掃エリア50に進入不可エリア52が設定された場合には、
図9に示すように、修正前の清掃プランの走行経路51が進入不可エリア52に設定されていても、進入不可エリア52の自動走行清掃を行うことができない。そこで、プラン修正部25は、
図10に示すように、進入不可エリア52を回避するように走行経路51を修正して清掃プランを再作成する。この場合、修正前の清掃プランに基づく自動走行清掃の終了予定時刻や、洗浄液や電力の予定消費量に余裕が生まれるため、作業経過が先行するプラス状況と判定することができ、プラン修正部25は、例えば、上記した修正パターンAや修正パターンBを選択して、残りのエリアの清掃品質が上がるように清掃プランを修正するとよい。
【0077】
自律走行作業装置1は、通常、清掃プランを完遂することを優先させるため、当該清掃プランに基づく自動走行清掃の終了予定時刻を経過しても自動走行清掃を継続するが、プラン修正部25は、修正前の清掃プランに基づく終了予定時刻に自動走行清掃を終了させるように清掃プランを修正する作業総時間指定機能を有してもよい。例えば、プラン修正部25は、作業予定に対する作業経過が先行していて、修正前の清掃プランに基づく終了予定時刻に対して、当該清掃プランの実際の自動走行清掃の終了時刻が早まり、時間が余る場合には、プラン修正部25は、例えば、上記した修正パターンAや修正パターンBを選択して、残りのエリアの清掃品質が上がるように清掃プランを修正するとよい。一方、プラン修正部25は、作業予定に対する作業経過が遅延していて、修正前の清掃プランに基づく終了予定時刻に対して、当該清掃プランの実際の自動走行清掃の終了時刻が遅れて、時間が足りなくなる場合には、プラン修正部25は、例えば、上記した修正パターンCや修正パターンDを選択して、残りのエリアの清掃品質をある程度維持しつつ、終了予定時刻に合わせるように清掃プランを修正するとよい。
【0078】
なお、プラン修正部25は、修正パターンDのように、自動走行清掃を行うエリアを減らして清掃プランを修正する場合には、残りのエリアに新たに走行経路51を作成し、当該走行経路51に開始位置や終了位置を設定する。例えば、プラン修正部25は、自動走行清掃中に所定の判定点で、自動走行清掃を行うエリアを減らして重点エリア53の自動走行清掃を行うように清掃プランを修正する場合、重点エリア53に新たに走行経路51を作成すると共に、当該走行経路51に開始位置や終了位置を設定する。
【0079】
この場合、自動走行制御部23は、清掃プランの修正をした判定点から重点エリア53に設定された走行経路51の開始位置まで自律走行作業装置1を移動するように走行部3を制御し、当該開始位置への移動後に、修正された清掃プランに基づく自動走行清掃を行うように走行部3や清掃部4を制御する。このとき、自動走行制御部23は、判定点から開始位置までの移動を、修正前の走行経路51に沿って清掃部4による清掃を行わずに高速で自動走行することで行ってもよく、あるいは、判定点から開始位置までを直線で結ぶ最短距離の移動経路を新たに作成し、当該移動経路に沿って清掃部4による清掃を行わずに高速で自動走行することで行ってもよい。
【0080】
また、プラン修正部25は、作業経過が遅延していてマイナス状況と判定された場合であって、修正前の清掃プランに基づく終了予定時刻まで残り時間が少ないと判定した場合には、自動走行清掃を中止してその場で停止するように清掃プランを修正する。あるいは、この場合、プラン修正部25は、自動走行清掃を中止して直近の壁まで移動してから停止するように清掃プランを修正してもよく、若しくは、自動走行清掃を中止して修正前の清掃プランの終了位置まで最短距離で移動してから停止するように清掃プランを修正してもよい。
【0081】
図11は、自律走行作業装置1の動作例を示すフローチャートである。次に、自律走行作業装置1の動作例を
図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0082】
先ず、自律走行作業装置1では、作業者による操作表示部7の操作キーを用いた選択操作や表示器での直接タッチ操作によって清掃プランが設定され(ステップS1)、また、開始ボタンが操作されると、自動走行制御部23が、設定された清掃プランの走行経路51に沿った自動走行清掃を開始する(ステップS2)。
【0083】
自動走行清掃を行っている間、作業経過判定部24は、清掃プランの走行経路51において自律走行作業装置1が有効な判定点に到達したか否かを判定し(ステップS3)、判定点に到達した場合に(ステップS3:Yes)、当該判定点における清掃プランに基づく作業予定に対する自動走行清掃の作業経過を判定する(ステップS4)。
【0084】
作業経過判定部24によって、作業予定に対する作業経過が、所定の先行量閾値以上先行していると判定され、または所定の遅延量閾値以上遅延していると判定された場合、プラン修正部25は、清掃プランの修正が必要であると判定し(ステップS5:Yes)、作業予定に対する作業経過の判定結果に応じて、清掃プランを修正する(ステップS6)。
【0085】
プラン修正部25によって清掃プランが修正されると、自動走行制御部23は、修正された清掃プランを設定して(ステップS7)、当該清掃プランに基づいて自動走行清掃を行うように走行部3や清掃部4を制御する。
【0086】
自動走行制御部23が清掃プランに基づく自動走行清掃を終了すると(ステップS8:Yes)、自律走行作業装置1を停止して動作を終了する。
【0087】
上述のように、本実施形態によれば、所定の清掃エリア50(作業エリア)に対して予め設定された清掃プラン(作業プラン)に従って自動走行清掃(自動走行作業)を行う自律走行作業装置1は、清掃プランに従って自動走行清掃を制御する自動走行制御部23(走行制御部)と、所定の判定点における清掃プランに基づく作業予定に対する自動走行清掃の作業経過を判定する作業経過判定部24と、作業予定に対する作業経過が、所定の先行量閾値以上先行していると判定された場合、または所定の遅延量閾値以上遅延していると判定された場合の判定結果に応じて、清掃プランを修正するプラン修正部25と、を備える。
【0088】
換言すれば、所定の清掃エリア50(作業エリア)に対して予め設定された清掃プラン(作業プラン)に従って自動走行清掃(自動走行作業)を行う自律走行作業装置1の自律走行作業方法は、清掃プランに従って自動走行清掃を制御する走行制御工程と、所定の判定点における清掃プランに基づく作業予定に対する自動走行清掃の作業経過を判定する作業経過判定工程と、作業予定に対する作業経過が、所定の先行量閾値以上先行していると判定された場合、または所定の遅延量閾値以上遅延していると判定された場合の判定結果に応じて、清掃プランを修正するプラン修正工程と、を有する。
【0089】
このような構成により、本実施形態に係る自律走行作業装置1では、作業者の予期しない障害物や汚れが清掃エリア50に発生して、作業者の予期しない作業状況が清掃エリア50に生じても、柔軟に対応して自動走行清掃を継続させることができる。
【0090】
また、本実施形態に係る自律走行作業装置1において、作業経過判定部24は、判定点における清掃プランに基づく作業予定として、清掃プランの開始位置から判定点に相当する判定位置までの作業予定時間または作業予定距離を算出し、また、作業経過として、自動走行清掃の開始からの経過時間または経過距離を算出し、更に、経過時間または経過距離が、作業予定時間または作業予定距離より先行量閾値以上先行しているか否かを判定し、また、遅延量閾値以上遅延しているか否かを判定する。
【0091】
このような構成により、自律走行作業装置1は、清掃エリア50の状況に応じて、自動走行清掃の作業状況を経過時間や経過距離によって判定することができる。
【0092】
また、本実施形態に係る自律走行作業装置1において、作業経過判定部24は、判定点を、清掃プランに基づく走行経路51において開始位置から所定間隔毎に設定する。
【0093】
このような構成により、自律走行作業装置1は、自動走行清掃の作業状況を正確に把握することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る自律走行作業装置1において、作業経過判定部24は、自動走行清掃により判定点に到達する毎に、当該判定点における作業予定に対する作業経過を判定し、プラン修正部25は、作業予定に対する作業経過が、先行量閾値以上先行していると判定された判定点、または遅延量閾値以上遅延していると判定された判定点において、清掃プランを修正する。
【0095】
このような構成により、自律走行作業装置1は、自動走行清掃の作業状況を正確に把握した上で、適切な清掃プランに修正することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る自律走行作業装置1において、作業経過判定部24は、清掃プランに基づく走行経路51において開始位置から走行経路51の全走行予定量に対する所定割合の走行量以上を経過した判定点で、作業予定に対する作業経過を判定する。
【0097】
このような構成により、自律走行作業装置1は、自動走行清掃の作業状況をより正確に把握した上で、より適切な清掃プランに修正することができる。
【0098】
また、本実施形態に係る自律走行作業装置1において、プラン修正部25は、清掃プランに基づく自動走行清掃に掛かる全走行予定時間に基づいて自動走行清掃の終了予定時刻を算出し、終了予定時刻に自動走行清掃を終了させるように、清掃プランを修正する。
【0099】
このような構成により、自律走行作業装置1は、作業状況に拘わらず、自動走行清掃を終了予定時刻に終了することを、正確に実行させることができる。
【0100】
上記した実施形態では、作業経過判定部24は、所定の判定点における清掃プランに基づく作業予定に対する自動走行清掃の作業経過を判定する際に、作業予定時間と経過時間との時間差分に応じて、または作業予定距離と経過距離との距離差分に応じて作業状況を判定する例を説明したが、本発明は、この例に限定されない。変形例では、作業経過判定部24は、電源部8の残電力量や、洗浄液供給部13の洗浄液の残量や吸引部14の汚水タンクの残容量に応じて作業状況を判定してもよい。
【0101】
例えば、作業経過判定部24は、各判定点における清掃プランに基づく作業予定として、電源部8の予定残電力量を算出し、また、作業経過として、実際の電源部8の残電力量を算出する。このとき、作業経過判定部24は、電源部8の電圧を定期的に測定し、測定結果の電圧値の経時変化に基づいて電源部8の残電力量を推定し、または、電源部8の電力量に対する放電量をモニタリングすることで電源部8の残電力量を推定する。そして、作業経過判定部24は、予定残電力量と残電力量との差分に応じて作業状況を判定し、例えば、残電力量が予定残電力量より所定の先行量閾値以上多いか否かを判定することで作業経過が先行しているか否かを判定し、また、残電力量が予定残電力量より所定の遅延量閾値以上少ないか否かを判定することで作業経過が遅延しているか否かを判定する。
【0102】
具体的には、作業経過判定部24は、判定点での予定残電力量に対して、残電力量が、所定値(先行量閾値)以上残っている場合、当該判定点において自動走行清掃が作業予定よりも先行していると判定し、状況Cのプラス状況であると判定する。一方、作業経過判定部24は、判定点での予定残電力量に対して、残電力量が、所定値(遅延量閾値)以上不足している場合、当該判定点において自動走行清掃が作業予定よりも遅延していると判定し、状況Dのマイナス状況であると判定する。
【0103】
また、作業経過判定部24は、各判定点における清掃プランに基づく作業予定として、洗浄液供給部13の洗浄液の予定残量および吸引部14の汚水タンクの予定残容量を算出し、また、作業経過として、実際の洗浄液供給部13の洗浄液の残量および吸引部14の汚水タンクの残容量を算出する。このとき、作業経過判定部24は、洗浄液供給部13に設定された供給ポンプの吐出量に、自動走行清掃に掛かる作業予定時間を乗算することで、自動走行清掃に必要な供給量を推定し、洗浄液タンクに充填された洗浄液の容量から減算することで、洗浄液の予定残量を推定する。あるいは、作業経過判定部24は、洗浄液タンクに設けた液面センサ(レベル計)を用いて検出される洗浄液の減量の経時変化に基づいて洗浄液の予定残量を推定する。また、作業経過判定部24は、汚水タンクに設けた液面センサ(レベル計)を用いて検出される汚水の回収量の経時変化に基づいて汚水タンクの残容量を推定する。
【0104】
そして、作業経過判定部24は、洗浄液の予定残量と残量との差分に応じて作業状況を判定し、例えば、残量が予定残量より所定の先行量閾値以上多いか否かを判定することで作業経過が先行しているか否かを判定し、また、残量が予定残量より所定の遅延量閾値以上少ないか否かを判定することで作業経過が遅延しているか否かを判定する。
【0105】
具体的には、作業経過判定部24は、判定点での洗浄液の予定残量に対して、残量が、所定値(先行量閾値)以上残っている場合、当該判定点において自動走行清掃が作業予定よりも先行していると判定し、状況Eのプラス状況であると判定する。一方、作業経過判定部24は、判定点での洗浄液の予定残量に対して、残量が、所定値(遅延量閾値)以上不足している場合、当該判定点において自動走行清掃が作業予定よりも遅延していると判定し、状況Fのマイナス状況であると判定する。
【0106】
また、作業経過判定部24は、汚水タンクの予定残容量と残容量との差分に応じて作業状況を判定し、例えば、残容量が予定残容量より所定の先行量閾値以上多いか否かを判定することで作業経過が先行しているか否かを判定し、また、残容量が予定残容量より所定の遅延量閾値以上少ないか否かを判定することで作業経過が遅延しているか否かを判定する。
【0107】
具体的には、作業経過判定部24は、判定点での汚水タンクの予定残容量に対して、残容量が、所定値(先行量閾値)以上残っている場合、当該判定点において自動走行清掃が作業予定よりも先行していると判定し、状況Eのプラス状況であると判定する。一方、作業経過判定部24は、判定点での汚水タンクの予定残容量に対して、残容量が、所定値(遅延量閾値)以上不足している場合、当該判定点において自動走行清掃が作業予定よりも遅延していると判定し、状況Fのマイナス状況であると判定する。
【0108】
この変形例では、プラン修正部25は、電源部8の残電力量や、洗浄液供給部13の洗浄液の残量や吸引部14の汚水タンクの残容量に応じた作業状況の判定結果に応じて、清掃プランを修正する。
【0109】
例えば、プラン修正部25は、作業経過が先行していて状況Cおよび状況Eを満たすプラス状況と判定された場合には、修正パターンEとして、清掃の仕上がりが向上するように走行データおよび清掃データを変更し、例えば、清掃部材12の接地圧強度や回転数および洗浄液供給部13の洗浄液供給量を上げるように変更して清掃プランを修正する。プラン修正部25は、作業経過が先行していて状況Cを満たすプラス状況と判定された場合には、修正パターンFとして、清掃の仕上がりが向上するように走行データおよび清掃データを変更し、例えば、清掃部材12の接地圧強度や回転数を上げるように変更して清掃プランを修正する。プラン修正部25は、作業経過が先行していて状況Eを満たすプラス状況と判定された場合には、修正パターンGとして、清掃の品質が向上するように走行データおよび清掃データを変更し、例えば、洗浄液供給部13の洗浄液供給量を上げるように変更して清掃プランを修正する。
【0110】
また、プラン修正部25は、作業経過が遅延していて状況Dおよび状況Fを満たすマイナス状況と判定された場合には、修正パターンHとして、修正前の清掃プランに基づく自動走行清掃の終了予定時刻を優先するように走行データおよび清掃データを変更し、例えば、自動走行清掃を行うエリアを減らして、清掃エリア50に設定されている重点エリア53を優先して自動走行清掃を行うように清掃プランを修正する。プラン修正部25は、作業経過が遅延していて状況Dを満たすマイナス状況と判定された場合には、修正パターンIとして、修正前の清掃プランに基づく自動走行清掃の終了予定時刻を優先するように走行データおよび清掃データを変更し、例えば、清掃部材12の接地圧強度や回転数を下げるように変更して清掃プランを修正する。プラン修正部25は、作業経過が遅延していて状況Fを満たすマイナス状況と判定された場合には、修正パターンJとして、修正前の清掃プランに基づく自動走行清掃の終了予定時刻を優先するように走行データおよび清掃データを変更し、例えば、走行速度を設定されている速度よりも高速(例えば、現状の1.5倍の速度)に変更し、または洗浄液供給部13の洗浄液供給量を下げるように変更して清掃プランを修正する。
【0111】
上述のように、変形例によれば、作業経過判定部24は、電源部8の残電力量または清掃部4(作業部)の残量について、作業予定に対する作業経過を判定する。
【0112】
このような構成により、自律走行作業装置1は、電源部8や清掃部4の状態に基づいて、自動走行清掃の作業状況を正確に把握した上で、適切な清掃プランに修正することができる。
【0113】
また、他の例によれば、プラン修正部25は、天気予報の当日の天気が雨や雪の場合に、清掃部4の吸引部14や汚水回収部による汚水回収の強度を上げるように清掃プランを修正してもよい。例えば、制御部6は、汚水タンクに設けた液面センサを用いて検出される汚水の回収量に基づいて、汚水の回収量が比較的多い場合に天気を雨や雪と判定してよく、若しくはネットワークを介して取得される天気予報(または天気実況)データに基づいて天気を雨や雪と判定してもよい。この場合、プラン修正部25は、自動走行清掃の実行後に、汚水回収の強度を上げるために、清掃プランの走行経路51に沿って走行速度を変更せずに走行しながら、清掃部材12および洗浄液供給部13を動作させずに、吸引部14による汚水の吸引およびスキージ15や汚水回収部による汚水回収を行う汚水回収作業を繰り返し実行するように清掃プランを修正する。
【0114】
また、他の例によれば、プラン修正部25は、作業経過が遅延していてマイナス状況(状況B)と判定された場合に、修正パターンDとして、自動走行清掃を行うエリアを減らして、清掃エリア50に設定されている重点エリア53を優先して自動走行清掃を行うように清掃プランを修正し、更に、作業経過判定部24は、重点エリア53のみの作業状況を判定して、その判定結果に基づいて、重点エリア53の清掃品質が上がるように清掃プランを修正してもよい。
【0115】
ところで、プラン作成部22が清掃エリア50の環境地図に基づいてジグザグに往復走行するような走行経路51を作成して清掃プランを作成する場合でも、所定値(所定面積)以上の未清掃エリアが清掃エリア50に発生することがある。例えば、清掃エリア50に対して自動でジグザグに往復走行する走行経路51を作成する場合、大まかなレベルでしか走行経路51を作成できずに精度のある走行経路51を作成できないために、往路および復路を設定できない狭いエリアや、エリア幅の都合上、往路および復路の間に隙間が生じたり、往路または復路と壁との間に隙間が生じたりするエリアが、未清掃エリアとなることがある。
【0116】
そこで、他の例によれば、プラン修正部25は、所定値(所定面積)以上の未清掃エリアが発生する状況では、未清掃エリアの位置を考慮して走行経路51を再作成して清掃プランを修正する。例えば、プラン修正部25は、修正前の清掃プランの走行経路51に基づく自動走行清掃の後で、未清掃エリアの自動走行清掃を行うように走行経路51を再作成して清掃プランを修正する。あるいは、プラン修正部25は、修正前の清掃プランに基づく自動走行清掃の終了予定時刻までに、未清掃エリアの走行経路51の自動走行清掃を行う時間がない場合には、未清掃エリアの走行経路51を含むように、次回の自動走行清掃の清掃プランを変更するとよい。
【0117】
また、他の例によれば、作業経過判定部24は、清掃エリア50全体の床面の汚れ状況に基づいて作業状況を判定し、プラン修正部25は、その判定結果に応じて、清掃プランを修正してもよい。例えば、作業経過判定部24は、清掃エリア50に設けられた複数の判定点を汚れ確認点として、吸引部14において床面から吸引した清掃汚水を汚水タンクに回収する汚水ダクトなどの配管に設けた光学式濁度計によって、各汚れ確認点での汚水の濁度を計測する。そして、作業経過判定部24は、複数の汚れ確認点のうち、所定数(例えば、半数)以上の汚れ確認点で汚水濁度が所定の濁度閾値以上である場合、または、複数の汚れ確認点の汚水濁度の平均値が所定の濁度閾値以上である場合に、清掃エリア50全体が通常より汚れていると判定する。
【0118】
ここで、プラン修正部25は、清掃エリア50全体が通常より汚れていると判定した場合、例えば、清掃部材12の接地圧強度や回転数および洗浄液供給部13の洗浄液供給量を上げるように変更して清掃プランを修正する。一方、プラン修正部25は、清掃エリア50全体が通常より汚れていないと判定した場合、例えば、清掃部材12の接地圧強度や回転数および洗浄液供給部13の洗浄液供給量を下げるように変更して清掃プランを修正する。
【0119】
また、他の例によれば、プラン修正部25が清掃エリア50の清掃プランをプラス状況またはマイナス状況に基づいて修正し、自律走行作業装置1が修正した清掃プランに基づいて自動走行清掃を行った場合において、自律走行作業装置1が同じ清掃エリア50の次回の自動走行清掃を行う場合、プラン修正部25は、記憶部16に記憶された清掃プランの修正履歴(ログ)に基づいて、清掃プランを前回の修正と逆にして修正してもよい。
【0120】
例えば、プラン修正部25は、前回、清掃部材12の接地圧強度や回転数および洗浄液供給部13の洗浄液供給量を上げるように変更した走行経路51の区間では、今回、清掃部材12の接地圧強度や回転数および洗浄液供給部13の洗浄液供給量を下げるように変更して清掃プランを修正する。これにより、自律走行作業装置1は清掃エリア50での清掃品質を保ちつつ、床面に掛かる負荷を一定にして、自動走行清掃に起因する床面の傷を付き難くすることができる。
【0121】
また、他の例によれば、プラン修正部25が修正パターンDや修正パターンHにより自動走行清掃を行うエリアを減らした場合や、プラン作成部22がジグザグに往復走行する走行経路51を作成する際に未清掃エリアが発生した場合において、自動走行清掃の実行後に未清掃箇所が発生した場合には、このような未清掃箇所を重点エリア53に設定することで、プラン修正部25が次回の自動走行清掃で未清掃箇所であった重点エリア53を優先するように清掃プランを修正してもよい。これにより、自律走行作業装置1は、未清掃箇所が発生した場合でも、このような未清掃箇所の自動走行清掃を確実に行うことができる。
【0122】
なお、上記した本実施形態では、清掃部4が、清掃部材12、洗浄液供給部13および吸引部14を備えて、洗浄液を用いて床面を清掃する湿式の清掃機構で構成される例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、他の例では、清掃部4は、ロールブラシなどの清掃用部材、吸引部およびバケットなどを有して床面上の塵埃を吸引回収する乾式の清掃機構で構成されてもよい。
【0123】
また、上記した本実施形態では、自律走行作業装置1の制御部6が作業経過判定部24およびプラン修正部25を備える例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、他の例では、自律走行作業装置1とインターネットなどのネットワークを介して通信可能な外部サーバ(図示せず)に作業経過判定部24およびプラン修正部25を備えて、作業経過の判定および清掃プランの修正を行わせてもよい。
【0124】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自律走行作業装置および自律走行作業方法もまた本発明の技術思想に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、ホテルフロアやオフィスフロア等の比較的広い範囲の清掃作業等を実施するための、手動走行および自動走行が可能な自律走行作業装置において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0126】
1 自律走行作業装置
3 走行部
4 清掃部
5 計測部
6 制御部
8 電源部
21 地図作成部
22 プラン作成部
23 自動走行制御部
24 作業経過判定部
25 プラン修正部
50 清掃エリア
51 走行経路
52 進入不可エリア
53 重点エリア