(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093191
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】負荷制御装置、負荷制御プログラム及び負荷制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20240702BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240702BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240702BHJP
F24F 11/47 20180101ALI20240702BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20240702BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20240702BHJP
【FI】
H02J3/14 130
H02J3/00 130
H02J13/00 311T
F24F11/47
F24F11/64
F24F110:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209403
(22)【出願日】2022-12-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開日 令和4年11月25日 電気評論 2022年11・12月、2023年1月 特別合併号 第705号(第107巻第8号),第27頁~28頁
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亮
【テーマコード(参考)】
3L260
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
3L260BA42
3L260BA75
3L260CA32
3L260CB78
3L260DA12
3L260EA22
5G064AA04
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB21
5G064DA05
5G066AA02
5G066KA12
5G066KB07
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で需要調整を的確に行う負荷制御装置、負荷制御プログラム及び負荷制御方法を提供する。
【解決手段】回帰式作成部105は、過去の総需要の実績データを基に空調機器21の需要を気温感応需要として表す回帰式を作成する。空調機器需要推定部102は、総需要データを取得して、回帰式作成部105により作成された回帰式を用いて空調機器21の現在の需要を推定する。需要制御部104は、所定時刻における総需要の予測値を算出し、予測値及び空調機器需要推定部102により推定された空調機器21の現在の需要を基に、所定時刻における総需要が予め決められた需要目標値に収まるように空調機器21を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去の総需要の実績データを基に空調機器の需要を気温感応需要として表す回帰式を作成する回帰式作成部と、
総需要データを取得して、前記回帰式作成部により作成された前記回帰式を用いて空調機器の現在の需要を推定する空調機器需要推定部と、
所定時刻における総需要の予測値を算出し、前記予測値及び前記空調機器需要推定部により推定された前記空調機器の現在の需要を基に、前記所定時刻における総需要が予め決められた需要目標値に収まるように前記空調機器を制御する需要制御部と
を備えたことを特徴とする負荷制御装置。
【請求項2】
前記需要制御部は、前記空調機器の需要の削減可能量を算出し、前記削減可能量を基に、前記空調機器を制御することで前記所定時刻における総需要が前記需要目標値に収まるか否かを判定し、前記空調機器を制御することで前記所定時刻における総需要が前記需要目標値に収まる場合、前記空調機器を制御し、前記空調機器を制御することで前記所定時刻における総需要が前記需要目標値に収まらない場合、前記空調機器及び前記空調機器以外の他負荷機器を制御して、前記所定時刻における総需要が前記需要目標値に収めることを特徴とする請求項1に記載の負荷制御装置。
【請求項3】
前記需要制御部は、前記空調機器について設定温度の変更可能な温度差を予め有し、前記空調機器需要推定部により推定された前記空調機器の現在の需要及び前記温度差を基に、前記空調機器の需要の削減可能量を算出することを特徴とする請求項2に記載の負荷制御装置。
【請求項4】
前記回帰式作成部は、過去の総需要の実績データを前記空調機器及び前記空調機器以外の他負荷機器の稼働状況に応じて分類してグループ化し、前記グループ毎に前記回帰式を生成することを特徴とする請求項1に記載の負荷制御装置。
【請求項5】
前記回帰式作成部は、過去の総需要の実績データをクラスタリングにより分類することを特徴とする請求項4に記載の負荷制御装置。
【請求項6】
前記回帰式作成部は、過去の総需要の実績データを各日の総需要の頻度を基に分類することを特徴とする請求項4に記載の負荷制御装置。
【請求項7】
前記回帰式作成部は、各前記回帰式の回帰誤差が正規分布にしたがうように、複数の前記回帰式を過去の総需要の実績データに適合させることで、過去の総需要の実績データをグループ化し且つ複数の前記回帰式を作成することを特徴とする請求項4に記載の負荷制御装置。
【請求項8】
前記空調機器需要推定部は、前記回帰式を基に前記空調機器の需要の基準値及び前記空調機器以外の他負荷機器の総需要の基準値を算出し、前記回帰式の回帰誤差を算出し、算出した前記回帰誤差を按分して、前記空調機器の現在の需要を推定することを特徴とする請求項1に記載の負荷制御装置。
【請求項9】
前記空調機器需要推定部は、前記空調機器の需要の基準値と前記他負荷機器の総需要の基準値との比で前記回帰誤差を按分することを特徴とする請求項8に記載の負荷制御装置。
【請求項10】
前記空調機器需要推定部は、過去の総需要の実績データにおける前記空調機器が動作しない中間期と前記空調機器が動作する期間との回帰誤差の比率で、前記回帰誤差を按分することを特徴とする請求項8に記載の負荷制御装置。
【請求項11】
過去の総需要の実績データを基に空調機器の需要を気温感応需要として表す回帰式を作成する回帰式作成ステップと、
総需要データを取得して、前記回帰式作成ステップにより作成された前記回帰式を用いて空調機器の現在の需要を推定する空調機器需要推定ステップと、
所定時刻における総需要の予測値を算出し、前記予測値及び前記空調機器需要推定ステップにより推定された前記空調機器の現在の需要を基に、前記所定時刻における総需要が予め決められた需要目標値に収まるように前記空調機器を制御する需要制御ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする負荷制御プログラム。
【請求項12】
負荷制御装置が、
過去の総需要の実績データを基に空調機器の需要を気温感応需要として表す回帰式を作成する回帰式作成工程と、
総需要データを取得して、前記回帰式作成工程により作成された前記回帰式を用いて空調機器の現在の需要を推定する空調機器需要推定工程と、
所定時刻における総需要の予測値を算出し、前記予測値及び前記空調機器需要推定工程により推定された前記空調機器の現在の需要を基に、前記所定時刻における総需要が予め決められた需要目標値に収まるように前記空調機器を制御する需要制御工程と
を実行することを特徴とする負荷制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷制御装置、負荷制御プログラム及び負荷制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境や社会課題環境の変化を受けて、これまでの大規模発電所だけでなく、太陽光発電等の再生可能エネルギーの活用が積極的に進められている。一方で、再生可能エネルギーは、天候や気温等、自然の影響を大きく受けることで、発電量への変動影響が避けられないという課題も存在する。近年の再生可能エネルギーの導入拡大によってこの変動量が増加している。そのため、需要が多い時期には電力需給がひっ迫する一方、需要が少ない時期には供給が過剰になり、再生可能エネルギー由来の電気が余るといった事態も発生している。
【0003】
このような事態を回避するため、再生可能エネルギーの発電量に応じて需要を変化させ需要バランスを安定化させるため、需要家機器を用いた需要調整が検討されている。需要家機器を用いた対策を考えた場合、需要家側資源を活用するアグリゲータと呼ばれる仲介業者や小売電気事業者が、系統運用者の需要調整に寄与することで対価を得るビジネスが成立すると期待される。
【0004】
需要家機器を用いた需要調整の1つの方法として、デマンドレスポンス(DR:Demand Response)を活用することが考えられる。デマンドレスポンスとは、経済メリットを提供することにより需要を調整する技術である。例えば、デマンドレスポンスの活用としては、需要家における蓄電池の充放電にインセンティブやペナルティを与えることで、需要家の蓄電池を制御するといった需要調整が考えられる。
【0005】
このような需要調整では、需要家からの省エネや超過抑制等の要望に応えるために、小売電気事業者やアグリゲータは、需要家における需要量の最大値として期待される目標値であるデマンド目標値を超えないように各需要家の需要の調整の支援等を行う。例えば、省エネや超過抑制等の支援を需要家に対して行う方法として、需要家が使用する空調機器や照明機器等の各種負荷機器のそれぞれに対して出力を計測するセンサを配置して、各センサによる計測情報を用いて各負荷機器の制御を行う方法が存在する。
【0006】
他にも、需要調整の技術として、建物におけるエネルギー使用値及び屋外温度値を受信し、回帰分析を用いて、基準温度と屋外温度値との温度差及びエネルギー使用量を基に空調係数と非空調係数を決定して、空調機器等を制御する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0106471号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、個々の需要家における需要量を適切に制御するために負荷機器の出力を計測するセンサを用いる方法では、各負荷機器のそれぞれに対してセンサを設置する等の多くの作業が必要となり煩雑であるため、的確な需要調整の実現は困難であった。また、温度差及びエネルギー使用量を基に回帰分析を用いて空調係数等を算出して負荷機器を制御する技術では、需要割合に基づいて各負荷機器の推定値を按分してそれぞれの需要が推定されるが、単なる按分では実需要からの乖離のおそれがあり、的確な需要調整の実現は困難である。
【0009】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で需要調整を的確に行う負荷制御装置、負荷制御プログラム及び負荷制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の開示する負荷制御装置、負荷制御プログラム及び負荷制御方法の一つの態様において、回帰式作成部は、過去の総需要の実績データを基に空調機器の需要を気温感応需要として表す回帰式を作成する。空調機器需要推定部は、総需要データを取得して、前記回帰式作成部により作成された前記回帰式を用いて空調機器の現在の需要を推定する。需要制御部は、所定時刻における総需要の予測値を算出し、前記予測値及び前記空調機器需要推定部により推定された前記空調機器の現在の需要を基に、前記所定時刻における総需要が予め決められた需要目標値に収まるように前記空調機器を制御する。
【発明の効果】
【0011】
1つの側面では、本発明は、簡易な構成で需要調整を的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図3は、特定の需要家における温度と総需要の関係の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、温度及び稼働状況に応じて分類した場合の回帰式の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、総需要データの按分方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、空調機器の需要推定結果例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例1に係る負荷制御装置と需要割合で按分する方法との需要推定結果の比較を示す図である。
【
図9】
図9は、空調機器の需要の削減可能量の算出手法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施例1に係る負荷制御装置による需要調整処理のフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施例1に係る負荷制御装置による需要推定処理のフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施例1に係る負荷制御装置による負荷制御処理のフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施例2に係る稼働状況別の分類を説明するための図である。
【
図14】
図14は、高稼働日及び低稼働日におけるより詳細な稼働状況別の分類を説明するための図である。
【
図16】
図16は、回帰誤差のデュレーションカーブを示す図である。
【
図17】
図17は、負荷制御装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願の開示する負荷制御装置、負荷制御プログラム及び負荷制御方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示する負荷制御装置、負荷制御プログラム及び負荷制御方法が限定されるものではない。
【実施例0014】
図1は、負荷制御システムの概略図である。負荷制御システムは、需要家1の電力システムの一部として配置される。需要家1は、電気事業者2から供給された電気を使用する企業や家庭である。
【0015】
負荷制御システムは、
図1に示すように、負荷制御装置10、取引用メータ11及びパルスメータ12を有する。また、負荷制御システムは、空調機器21及び照明機器や電気給湯器等を含む空調機器21以外の他負荷機器22といった電力を消費する負荷となる各種負荷機器を有する。
図1では、他負荷機器22を1つ記載したが、他負荷機器22は通常は複数であり、その数に特に制限はない。空調機器21及び他負荷機器22は、電気事業者2から供給された電気を使用する。
【0016】
ここで、負荷制御とは、負荷制御システムに備わる需要家1の空調機器21及び他負荷機器22の出力を制御することで、需要家1の空調機器21及び他負荷機器22の出力の累積需要であるデマンドを需要目標値(デマンド目標値)内に抑える制御である。
【0017】
取引用メータ11は、例えば、スマートメータである。取引用メータ11は、電気事業者2に接続される。取引用メータ11は、電気事業者2から電力供給を受ける。そして、取引用メータ11は、空調機器21及び照明機器等の他負荷機器22に電力を供給する。また、取引用メータ11は、需要家1における積算電力量や30分平均電力等といった所定期間毎の電力使用量を計量し、需要家1の電力消費の変化を検出する。取引用メータ11は、パルスメータ12を備える。
【0018】
パルスメータ12は、空調機器21及び他負荷機器22を含む全負荷機器の出力の合計値及び瞬間値をパルスデータとして抽出する。そして、パルスメータ12は、抽出したパルスデータを負荷制御装置10へ出力する。
【0019】
負荷制御装置10は、例えば、EMS(Energy Management System)等に設けられてもよい。EMSは、エネルギーの使用状況である需要を可視化し、各種負荷機器の稼働を制御することで需要が最適となるように調整するシステムである。負荷制御装置10は、パルスメータ12に接続される。また、負荷制御装置10は、空調機器21及び他負荷機器22のそれぞれに接続される。
【0020】
負荷制御装置10は、空調機器21等の制御対象機器に対して制御指令値を出力することで制御対象機器の出力を削減して需要家1の全負荷機器の累積需要を制御する。負荷制御装置10は、例えば、デマンド目標値が30分の需要積算値として与えられる場合、30分毎に制御量を算出して制御指令値を出力する。ただし、制御指令値の出力タイミングはこれに限らず他のタイミングでもよい。
【0021】
図2は、負荷制御装置のブロック図である。実施例1に係る負荷制御装置10は、
図2に示すように、超過判定部101、空調機器需要推定部102、他負荷機器需要推定部103、需要制御部104、回帰式作成部105及びデータベース106を有する。以下では、需要の目標値を超過した場合の制御を行う処理を、需要調整処理と呼ぶ。
【0022】
データベース106は、需要家1の過去の総需要の実績データを日毎にその日の気温に対応させて格納する。データベース106は、負荷制御装置10とは異なる装置に配置されてもよい。
【0023】
回帰式作成部105は、データベース106に格納された過去の日毎の総需要の実績データを基に、空調機器21の需要及び各他負荷機器22の需要を足し合わせた他負荷機器22の総需要の算出に用いる回帰式を予め生成する。以下に、回帰式作成部105による回帰式の作成方法について説明する。
【0024】
気温感応需要として表される空調機器21の需要の基本原理について説明する。
図3は、特定の需要家における温度と総需要の関係の一例を示す図である。
図3は、横軸で気温を表し、縦軸で30分間の総需要の積算値を表す。
図3は、30分毎に需要目標値が得られる場合の例である。すなわち、
図3に示すグラフは、1日のうち48個作成することができる。
図3における線分200が気温に応じた総需要の変化を示す。紙面に向かって線分200から下の領域が需要家1における空調機器21の需要及び他負荷機器22の需要を合わせた総需要である。
【0025】
総需要は、
図3に示すように、冷房需要201、暖房需要202及びその他の需要203の3つの種類に分類される。冷房需要201は、空調機器21による冷房時の需要であり、気温が上がると増加する需要である。また、暖房需要202は、空調機器21による暖房時の需要であり、気温が下がると増加する需要である。その他の需要203は、総需要における冷房需要201及び暖房需要202以外の需要であり、他負荷機器22の総需要である。その他の需要203は、気温に関わらず一定であり、空調機器21が動作していない場合の需要にあたる。
【0026】
例えば、
図3に示すような気温と総需要との関係は、需要の変化を細かく分類する場合、需要家1毎に異なると考えることができる。また、需要の変化を大まかに分類する場合、気温と総需要との関係は、住宅と企業といった施設の種類毎に異なり、さらに、企業に関して業種毎に異なると考えることもできる。すなわち、
図3に示すグラフは、需要家1の分類形態に応じて分類毎に生成可能である。以下の説明では、需要家1毎に需要の変化が異なると考えて、
図3のグラフは需要家1毎作成される。また、気温と総需要との関係は、時間帯毎に異なる。すなわち、
図3に示すグラフは、時間毎に作成可能である。
【0027】
空調機器21の需要を推定する場合、
図3における線分200を表す回帰式を求めることで、空調機器21の需要が気温感応需要として抽出可能となる。そこで、回帰式作成部105は、線分200の回帰式を以下のように作成する。ここでは、冷房需要を例に説明する。
【0028】
本実施例1では、特定の温度から冷房需要が使われることを表現するための変数として、気温実績を変換した冷房変数Xcを用いる。冷房変数Xcは、次の数式(1)で表すことができる。
(1) Xc=max(0,T-Cth)
【0029】
ここで、maxは、0と気温-冷房閾値の値とのうちいずれか大きい方の値をとる関数である。Tは、気温を表す。また、Cthは、空調機器21の冷房需要の使用が始まる気温であり、冷房閾値と呼ぶ。
図4は、冷房変数の一例を示す図である。
図4の横軸は気温を表し、縦軸は所定の時刻から30分間の総需要の積算値を表す。
図4は、
図3の冷房需要201の部分を拡大したグラフの一例にあたる。線分210は、冷房変数を表し、線分200の冷房需要201の領域を含む範囲に対応する。範囲211では、T-Cthが0未満であるので、冷房変数Xc=0である。また、範囲212では、T-Cth≧0であるので、冷房変数Xc=T-Cthである。
【0030】
回帰式作成部105は、冷房閾値Cthとして、需要及び気温の実績データに回帰式が最も適合する値を選択する。例えば、回帰式作成部105は、0℃、1℃、2℃、・・・のように1℃刻みで探索して、冷房閾値Cthを求める。
【0031】
回帰式作成部105は、需要及び気温の実績データに対して次の数式(2)で表される回帰式を適合させて、時間帯毎の回帰式を決定する。
(2) yt=βc×Xc+β
【0032】
ここで、ytは、1日を30分毎分割した時間帯tの需要である。また、βcは、需要を算出するための回帰係数である。また、βは、値を調整するための定数項である。回帰式は時間帯別に作成されるため、定数項と回帰係数は時間帯tで変化する。
【0033】
さらに、需要の変動について、以下の2つの条件が仮定可能である。1つは、空調機器21の需要が稼働状況(操業状況)と気温とによって変化するという条件である。他の1つは、他負荷機器22の需要が稼働状況(操業状況)によって変化するという条件である。
【0034】
そこで、これら2つの仮定条件の下、気温感応需要をより高精度に抽出するため、回帰式作成部105は、需要及び気温の実績データに基づいて各日を分類して、分類毎に回帰式を作成する。
図5は、温度及び稼働状況に応じて分類した場合の回帰式の一例を示す図である。
図5の横軸は気温を表し、縦軸は所定時刻から30分間の総需要の積算値を表す。
図5は、各日を6つのグループに分類した例を示す。グループ数は対象とする需要家1において冷暖房需要の稼働状況に対応する分類となるような数が選択されることが好ましい。例えば、需要家1において、休日と平日で冷暖房需要の稼働状況が異なる場合、各日は、2つのグループに分けることができる。また、曜日によって冷暖房需要の稼働状況が異なる場合には、各日は、7つのグループに分けることができ、その中でも土日の稼働状況が似ているのであれば6つのグループに分けることもできる。
【0035】
回帰式作成部105は、稼働状況にしたがい分類するグループの数及びグループの順位を予め有する。例えば、回帰式作成部105は、最も需要の値が最も低いグループを第1グループとして、需要が高くなるにしたがい第2グループ、第3グループ、第4グループ、第5グループ、第6グループとするグループの順位を有する。
【0036】
回帰式作成部105は、需要家1の需要及び気温の実績データを表す点を、
図5における各点のように座標空間上にプロットする。次に、回帰式作成部105は、プロットされた各点を、例えば0℃、1℃、2℃、・・・のように1℃刻みで予め決められた数のグループに分類する。この際、回帰式作成部105は、クラスタリング手法等を用いて分類を行うことができる。ただし、回帰式作成部105は、需要及び気温の関係にしたがった分類ができる方法であれば他の分類手法を用いてもよい。
【0037】
次に、回帰式作成部105は、グループの順位にしたがい温度毎の分類されたグループを繋げて温度にしたがって連続するグループを生成する。その後、回帰式作成部105は、数式(1)及び(2)を用いて、グループ毎に冷房閾値Cthを選びつつ回帰式を適合させることで、グループ毎の総需要を表す回帰式を作成する。本実施例1では、回帰式作成部105は、例えば、最小二乗法等を用いて線形で表される回帰式を作成する。ただし、回帰式は、線形でなくてもよく、2次曲線等を用いてもよい。これにより、回帰式作成部105は、需要家1について、空調機器21及び他負荷機器22の稼働状況別且つ時間帯別に回帰式を作成する。回帰式作成部105は、予めこれらの回帰式を作成して保持しておく。
【0038】
以上のように、回帰式作成部105は、過去の総需要の実績データを基に空調機器21の需要を気温感応需要として表す回帰式を作成する。より詳しくは、回帰式作成部105は、過去の総需要の実績データを空調機器21及び他負荷機器22の稼働状況に応じて分類してグループ化し、グループ毎に回帰式を生成する。この際、回帰式作成部105は、過去の総需要の実績データをクラスタリングにより分類する。
【0039】
超過判定部101は、需要家1における総需要をその値以内に収めたい基準値となる需要目標値を有する。超過判定部101は、例えば、デマンド目標値を需要目標値として用いることができる。例えば、デマンド目標値が30分の需要積算値として与えられる場合、超過判定部101は、30分毎に与えられたデマンド目標値を需要目標値とする。
【0040】
超過判定部101は、使用量に応じたパルスデータの入力をパルスメータ12から受ける。そして、超過判定部101は、取得したパルスデータから空調機器21及び他負荷機器22を含む全負荷機器の総需要データを取得する。例えば、需要目標値が30分毎の需要積算値である場合、超過判定部101は、30分間の総需要の積算値を総需要データとして取得する。
【0041】
そして、超過判定部101は、取得した総需要データで示される総需要が需要目標値を超過したか否かを判定する。総需要が需要目標値を超過していなければ、超過判定部101は、需要調整処理を終了する。これに対して、総需要が需要目標値を超過した場合、超過判定部101は、総需要データを空調機器需要推定部102及び需要制御部104へ出力する。
【0042】
空調機器需要推定部102は、総需要データの入力を超過判定部101から受ける。また、空調機器需要推定部102は、気温データを温度計13から取得する。さらに、空調機器需要推定部102は、現在の空調機器21及び他負荷機器22の稼働状態及び現在の時間帯に応じた回帰式を回帰式作成部105から取得する。
【0043】
そして、空調機器需要推定部102は、回帰式、気温及び総需要データを用いて空調機器21の現在の需要を、気温にしたがって変化する気温感応需要として算出する。ここで、空調機器需要推定部102は、空調機器21の現在の需要を推定するが、以下では単に「空調機器21の需要」と呼ぶ。以下に、空調機器需要推定部102による空調機器21の需要の推定処理について説明する。
【0044】
空調機器需要推定部102は、取得した回帰式に温度計13から取得した現在の気温を代入して、現在の気温に対応する冷房需要又は暖房需要といった空調機器21の需要基準値を算出する。また、空調機器需要推定部102は、現在の気温に対応する他負荷機器22の総需要基準値を算出する。ただし、他負荷機器22の総需要基準値は一定であるので、空調機器需要推定部102は、一定値を取得することになる。
【0045】
次に、空調機器需要推定部102は、算出した空調機器21の需要基準値及び他負荷機器22の総需要基準値を用いて、実測された総需要データを空調機器21と他負荷機器22とに按分して、空調機器21の需要及び他負荷機器22の総需要を算出する。
【0046】
図6は、総需要データの按分方法を説明するための図である。
図6の横軸は気温を表し、縦軸は所定の時刻から30分間の総需要の積算値を表す。
図6における需要231が、温度がT℃の場合の空調機器21の需要基準値にあたる。また、需要232が、温度がT℃の場合の他負荷機器22の総需要基準値にあたる。ここでは、空調機器21の需要基準値をysaと表し、他負荷機器22の総需要基準値をysoと表す。
【0047】
例えば、空調機器需要推定部102は、総需要データと算出した空調機器21の需要基準値及び他負荷機器22の総需要基準値との合計との差分を回帰誤差εとして算出する。すなわち、
図6では、T℃の場合の総需要データが点233で表されるため、空調機器需要推定部102は、点233の値から需要231及び232を除いた需要234を回帰誤差εとして算出する。次に、空調機器需要推定部102は、次の数式(3)及び(4)を用いて、回帰誤差εを空調機器21の需要基準値ysaと他負荷機器22の総需要基準値ysoとの比で按分して空調機器21の需要Pa及び他負荷機器22の総需要Poを算出する。
(3) Pa=ysa+ε×(ysa/(ysa+yso))
(4) Po=yso+ε×(yso/(ysa+yso))
【0048】
空調機器需要推定部102は、空調機器21の冷房需要及び暖房需要のいずれの場合も同様に空調機器21の需要及び他負荷機器22の総需要を算出することができる。そして、空調機器需要推定部102は、算出した空調機器21の需要及び他負荷機器22の総需要の情報を他負荷機器需要推定部103へ出力する。また、空調機器需要推定部102は、算出した空調機器21の需要の情報を需要制御部104へ出力する。
【0049】
図7は、空調機器の需要推定結果例を示す図である。上述した方法により、
図7のグラフ310、320及び330は、空調機器需要推定部102により算出された空調機器21の需要の推定結果を表す。グラフ310、320及び330は、横軸で各日における30分毎の時間帯を表し、縦軸で所定の時刻から30分の間の総需要の積算値を表す。そして、グラフ310の領域311が、暖房需要の推定結果を表し、グラフ320の領域321及びグラフ330の領域331が、冷房需要の推定結果を表し、それ以外の領域がその他の需要を表す。時間帯別に抽出されたグラフ310、320及び330で表される暖房需要及び冷房需要を含む1年間の気温感応需要を繋ぎ合わせると、気温感応需要の365日×48時間帯の時系列データが得られる。
【0050】
以上のように、空調機器需要推定部102は、総需要データを取得して、回帰式作成部105により作成された回帰式を用いて空調機器21の現在の需要を推定する。また、空調機器需要推定部102は、回帰式を基に空調機器21の需要基準値及び他負荷機器22の総需要基準値を算出し、回帰式の回帰誤差を算出し、算出した回帰誤差を按分して、空調機器21の現在の需要を推定する。この際、空調機器需要推定部102は、空調機器21の需要基準値と他負荷機器22の総需要基準値との比で回帰誤差を按分する。
【0051】
図2に戻って説明を続ける。他負荷機器需要推定部103は、各他負荷機器22の需要の過去の実績データから推定される総需要データに対する他負荷機器22毎の需要割合を有する。例えば、他負荷機器22が3つある場合、他負荷機器需要推定部103は、25:15:10といった需要割合を有する。
【0052】
他負荷機器需要推定部103は、他負荷機器22の総需要の情報の入力を空調機器需要推定部102から受ける。そして、他負荷機器需要推定部103は、他負荷機器22の総需要を需要割合で按分して、他負荷機器22のそれぞれの需要を算出する。その後、他負荷機器需要推定部103は、他負荷機器22のそれぞれの需要の情報を需要制御部104へ出力する。
【0053】
図8は、実施例1に係る負荷制御装置と需要割合で按分する方法との需要推定結果の比較を示す図である。表341は、実施例1に係る負荷制御装置10による需要推定結果を表す。また、表342は、需要割合で按分して需要推定を行った場合の需要推定結果を表す。
【0054】
本実施例1に係る負荷制御装置10は、気温感応需要として空調機器21の需要を抽出して推定を行う。すなわち、空調機器21の需要は温度の上昇又は下降にしたがって大きくなると考えられるため、本実施例1に係る負荷制御装置10による需要推定は、単に需要割合で按分する場合に比べて、空調機器21の需要の推定精度が向上する。例えば、表341に示すように本実施例1に係る負荷制御装置10では、空調機器21の需要の推定値は真値と一致するが、需要割合で按分する方法では、空調機器21の需要の推定値と真値との間に大きな誤差が存在する。さらに、需要の中で空調機器21の需要の占める割合が大きいことから、空調機器21の需要の推定精度が向上することで、総需要の推定精度も向上する。例えば、表342では、総需要の推定値と真値との誤算の累積は80kWhである。これに対して、表341では、総需要の推定値と真値との誤算の累積は20kWhである。このように、本実施例1に係る負荷制御装置10による需要の推定は、需要割合で按分して需要推定を行った場合に比べて、精度が向上していることが分かる。
【0055】
図2に戻って説明を続ける。需要制御部104は、空調機器21の需要の情報の入力を空調機器需要推定部102から受ける。また、需要制御部104は、他負荷機器22のそれぞれの需要の情報の入力を他負荷機器需要推定部103から受ける。また、需要制御部104は、需要の目標値を有する。
【0056】
次に、需要制御部104は、調整対象とする時間帯の総需要の予測値を算出する。例えば、需要制御部104は、過去の同日の同時間帯の総需要を予測値としてもよい。他にも、需要制御部104は、0~15分の積算需要及び15分時点での需要を用いて、15~30分の積算需要を予測する等してもよい。需要制御部104は、総需要の予測方法としてどの様な方法を用いてもよい。
【0057】
次に、需要制御部104は、総需要の予測値から需要の目標値を減算して目標超過量Peを算出する。そして、需要制御部104は、目標超過量Peが0より大きいかを確認して、総需要の予測値が需要の目標値を超過しているか否かを判定する。
【0058】
需要制御部104は、総需要の予測値が需要の目標値を超過している場合、温度設定の調整限度を基に、空調機器21の需要の削減可能量Pamaxを算出する。具体的には、需要制御部104は、以下のように空調機器21の需要の削減可能量Pmaxを算出する。
【0059】
温度設定の調整限度とは、業務に支障をきたさない範囲での温度設定に基づいて決定され、現在の温度設定からどのくらい温度を変更可能か、すなわち需要削減を意識しない温度設定からの変更可能温度である。温度設定の調整限度は、冷房需要に対しては、現在の温度設定から何度高めに設定できるかを表し、暖房需要に対しては、現在の温度設定から何度低めに設定できるかを表す。例えば、冷房需要において、現在の設定温度が23℃であり25℃まで温度を上げられるのであれば、温度設定の調整限度は2℃である。この温度設定の調整限度は、需要家1毎異なり、各需要家1により個別に決定されることが好ましい。例えば、省エネ意識が高い需要家1であれば、温度設定の調整限度を大きくすることができる。
【0060】
図9は、空調機器の需要の削減可能量の算出手法を説明するための図である。
図9は、横軸で冷房変数を表し、縦軸で所定時刻から30分間の総需要を表す。ここでは、冷房需要を例に説明する。温度設定の調整限度をx℃とする。温度設定がx℃高めの空調機器21の需要は、気温がx℃低く、且つ、需要削減を意識しない場合の空調機器21の需要に相当する。また、需要241が制御前の総需要を表し、需要242が制御後の総需要を表す。
【0061】
ここで、制御前の冷房変数をXc1とすると、制御後の冷房変数はXc2=Xc1-xである。そして、制御前の空調機器21の需要をPa1と表し、制御前の他負荷機器22の総需要をPo1と表し、制御後の空調機器21の需要をPa2と表し、制御後の他負荷機器22の総需要をPo2と表すと、需要制御部104は、以下の式(5)~(8)によりPa1、Pa2、Po1及びPo2を算出できる。ここで、数式(5)及び(6)は、数式(3)及び(4)にあたる。
(5) Pa1=ysa+ε×(ysa/(ysa+yso))
(6) Po1=yso+ε×(yso/(ysa+yso))
(7) Pa2=Pa1×((Xc1-x)/Xc1)
(8) Po2=Po1
【0062】
そこで、需要制御部104は、空調機器21の需要の削減可能量Pamaxを次の数式(9)により算定する。ここでは、冷房需要を例に説明したが、需要制御部104は、暖房需要についても同様の方法で削減可能量Pamaxを算出することができる。
(9)Pamax=Pa1-Pa2
=ysa+ε×(ysa/(ysa+yso))-Pa1×((Xc1-x)/Xc1)
=(ysa+ε×ysa/(ysa+yso))×(1-(Xc1-x)/Xc1)
=(ysa+ε×ysa/(ysa+yso))×(x/Xc1)
【0063】
次に、需要制御部104は、算出した空調機器21の需要の削減可能量が、目標超過量より大きいか否かを判定する。算出した空調機器21の需要の削減可能量が、目標超過量より大きければ、需要制御部104は、目標超過量を空調機器21の需要削減量と決定する。この場合、需要制御部104は、他負荷機器22の需要の削減は行わなくてもよい。そして、需要制御部104は、空調機器21の需要において決定した需要削減量が削減されるように空調機器21を制御する。
【0064】
これに対して、算出した空調機器21の需要の削減可能量が、目標超過量以下の場合、需要制御部104は、空調機器21の需要の削減可能量を空調機器21の需要削減量と決定する。次に、需要制御部104は、業務に支障のない他負荷機器22を選定する。例えば、需要制御部104は、需要家1から指定された他負荷機器22を、業務に支障のない他負荷機器22として選定することができる。
【0065】
次に、需要制御部104は、目標超過量から空調機器21の需要の削減可能量を減算して、他負荷機器22の需要総削減量を算出する。ここで、需要制御部104は、各他負荷機器22の需要の過去の実績データから推定される総需要データに対する他負荷機器22毎の需要割合を有する。需要制御部104は、他負荷機器22の需要総削減量を選定した他負荷機器22の需要割合で按分して、選定した他負荷機器22のそれぞれの需要削減量を算出する。
【0066】
そして、需要制御部104は、空調機器21の需要から決定した需要削減量が削減されるように空調機器21を制御する。また、需要制御部104は、選定した他負荷機器22のそれぞれの需要から決定した需要削減量が削減されるように選定した他負荷機器22を制御する。
【0067】
以上のように、需要制御部104は、予測対象とする所定時刻における総需要の予測値を算出し、予測値及び空調機器需要推定部102により推定された空調機器21の現在の需要を基に、所定時刻における総需要が予め決められた需要目標値に収まるように空調機器21を制御する。より具体的には、需要制御部104は、空調機器21の需要の削減可能量を算出し、削減可能量を基に、空調機器21を制御することで所定時刻における総需要が需要目標値に収まるか否かを判定し、空調機器21を制御することで所定時刻における総需要が需要目標値に収まる場合、空調機器21を制御し、空調機器21を制御することで所定時刻における総需要が需要目標値に収まらない場合、空調機器21及び他負荷機器22を制御して、所定時刻における総需要が需要目標値に収める。さらに、需要制御部104は、空調機器21について設定温度の変更可能な温度差である温度設定の調整限度を予め有し、空調機器需要推定部102により推定された空調機器21の現在の需要及び温度差を基に、空調機器21の需要の削減可能量を算出する。ただし、数式(9)における変形後の式から明らかなように、需要制御部104は、空調機器21の総需要の予測値を直接は用いずに空調機器21の需要の削減可能量を算出することができる。
【0068】
図10は、実施例1に係る負荷制御装置による需要調整処理のフローチャートである。次に、
図10を参照して、実施例1に係る負荷制御装置10による需要調整処理の流れを説明する。
【0069】
超過判定部101は、使用量に応じたパルスデータの入力をパルスメータ12から受ける。そして、超過判定部101は、パルスデータから空調機器21及び他負荷機器22を含む全負荷機器の総需要を示す総需要データを取得する(ステップS1)。
【0070】
次に、超過判定部101は、総需要データで示される総需要が予め有する需要目標値を超過したか否かを判定する(ステップS2)。総需要が需要目標値を超過していない場合(ステップS2:否定)、超過判定部101は、需要調整処理を終了する。
【0071】
これに対して、総需要が需要目標値を超過した場合(ステップS2:肯定)、超過判定部101は、総需要データを空調機器需要推定部102及び需要制御部104へ出力する。空調機器需要推定部102は、現在の温度、予め作成した回帰式及び総需要データを用いて空調機器21の需要を推定する(ステップS3)。この際、空調機器需要推定部102は、他負荷機器22の総需要も推定する。
【0072】
他負荷機器需要推定部103は、空調機器需要推定部102により推定された他負荷機器22の総需要を、保持する需要割合にしたがって按分して、他負荷機器22のそれぞれの需要を推定する(ステップS4)。
【0073】
需要制御部104は、調整対象とする時間帯の総需要の予測値を算出する。そして、総需要の予測値、需要の目標値、温度設定の調整限度、空調機器21の需要の推定値及び他負荷機器22の需要の推定値を用いて、空調機器21を含む制御対象の機器を決定し、さらに、制御対象の機器それぞれの需要削減量を決定する(ステップS5)。
【0074】
次に、需要制御部104は、決定した需要削減量にしたがって、制御対象機器それぞれの制御を行う(ステップS6)。
【0075】
その後、需要制御部104は、需要家1からの制御終了指示の入力の有無等により、制御を終了させるか否かを判定する(ステップS7)。制御を継続する場合(ステップS7:否定)、需要調整処理は、ステップS1へ戻る。これに対して、制御を終了させる場合(ステップS7:肯定)、需要制御部104は、需要調性処理を終了する。
【0076】
図11は、実施例1に係る負荷制御装置による需要推定処理のフローチャートである。次に、
図11を参照して、実施例1に係る負荷制御装置10による需要推定処理の流れを説明する。
図11のフローにおける各処理は、
図10のフローのステップS3で実行される処理の一例にあたる。
【0077】
空調機器需要推定部102は、回帰式作成部105により予め作成された暖房需要及び冷房需要を気温感応需要として表す回帰式を用いて、現在の温度に対応する空調機器21の需要基準値及び他負荷機器22の総需要基準値を算出する(ステップS101)。
【0078】
次に、空調機器需要推定部102は、総需要データから得られる実測された総需要から空調機器21の需要基準値及び他負荷機器22の総需要基準値を減算して、回帰誤差を算出する(ステップS102)。
【0079】
次に、空調機器需要推定部102は、数式(3)及び(4)を用いて、空調機器21の需要及び他負荷機器22の総需要を算出する。具体的には、空調機器需要推定部102は、回帰誤差を空調機器21の需要基準値と他負荷機器22の総需要基準値との比で按分する。そして、空調機器需要推定部102は、按分結果のそれぞれを空調機器21の需要基準値と他負荷機器22の総需要基準値とに加算して、空調機器21の需要及び他負荷機器22の総需要を算出して、空調機器21の需要及び他負荷機器22の総需要の推定値とする(ステップS103)。
【0080】
図12は、実施例1に係る負荷制御装置による負荷制御処理のフローチャートである。次に、
図12を参照して、実施例1に係る負荷制御装置10による負荷制御処理の流れを説明する。
図12のフローにおける各処理は、
図10のフローのステップS5で実行される処理の一例にあたる。
【0081】
需要制御部104は、調整対象とする時間帯の総需要の予測値を算出する。次に、需要制御部104は、総需要の予測値から需要の目標値を減算して目標超過量Peを算出する(ステップS201)。
【0082】
そして、需要制御部104は、目標超過量Peが0より大きい(Pe>0)か否かを判定する(ステップS202)。
【0083】
目標超過量Peが0以下の場合(ステップS202:否定)、総需要の予測値が需要の目標値内に収まっているので、需要制御部104は、負荷制御処理を終了する。
【0084】
これに対して、目標超過量Peが0より大きい場合(ステップS202:肯定)、すなわち、総需要の予測値が需要の目標値を超えている場合、需要制御部104は、空調機器21の需要の削減可能量Pamaxを算出する(ステップS203)。具体的には、需要制御部104は、空調機器21の需要基準値、他負荷機器22の総需要基準値、回帰誤差、温度設定の調整限度及び現在の温度から求められる制御前の冷房係数又は暖房係数を用いて数式(9)により、削減可能量Pamaxを算出することができる。
【0085】
次に、需要制御部104は、算出した空調機器21の需要の削減可能量Pamaxが、目標超過量Peより大きい(Pamax>Pe)か否かを判定する(ステップS204)。
【0086】
空調機器21の需要の削減可能量Pamaxが目標超過量Peより大きい場合(ステップS204:肯定)、需要制御部104は、目標超過量Peを空調機器21の需要削減量Parと決定する(Par=Pe)(ステップS205)。
【0087】
需要制御部104は、空調機器21の需要において決定した需要削減量が削減されるように空調機器21を制御する(ステップS206)。
【0088】
これに対して、空調機器21の需要の削減可能量Pamaxが目標超過量Pe以下の場合(ステップS204:否定)、需要制御部104は、空調機器21の需要の削減可能量Pamaxを空調機器21の需要削減量Parと決定する(Pamax=Par)(ステップS207)。
【0089】
次に、需要制御部104は、業務に支障のない他負荷機器22を選定する(ステップS208)。
【0090】
次に、需要制御部104は、目標超過量から空調機器21の需要の削減可能量を減算して、他負荷機器22の需要総削減量Porを算出する(Por=Pe-Pamax)(ステップS209)。
【0091】
次に、需要制御部104は、他負荷機器22の需要総削減量Porを選定した他負荷機器22の需要割合で按分して、選定した他負荷機器22のそれぞれの需要削減量を算出する(ステップS210)。
【0092】
そして、需要制御部104は、空調機器21の需要から決定した需要削減量が削減されるように空調機器21を制御する。また、需要制御部104は、選定した他負荷機器22のそれぞれの需要から決定した需要削減量が削減されるように選定した他負荷機器22を制御する(ステップS211)。
【0093】
以上に説明したように、本実施例1に係る負荷制御装置は、総需要データを基に予め作成した回帰式を用いて温度に応じた空調機器の需要及び空調機器以外の負荷機器の需要を推定する。さらに、負荷制御装置は、制御対象時刻の需要を予測し、予測した需要が需要目標値を超えている場合、総需要データから空調機器の需要の削減可能量を算出する。そして、空調機器の需要の削減で需要目標値を達成できる場合には、需要目標値を達成するように空調機器を制御する。また、空調機器の需要の削減では足りない場合には、空調機器の需要を削減可能量まで削減するとともに業務に支障のない他の負荷機器の需要を削減して需要目標を達成するように、空調機器及び他の負荷機器を制御する。
【0094】
これにより、各種負荷機器に対する出力計測用のセンサの設置を行わずに、取引用メータのパルスデータに基づいて、需要目標を達成するように需要家の空調機器を含む各種負荷機器を制御することができる。したがって、簡易な構成で需要調整を的確に行うことが可能となる。
実施例1では、気温感応需要を高精度に抽出するために、各日の気温と需要とを表す点をグラフ上にプロットしてクラスタリングにより各日の稼働状況による分類を行った。これに対して、実施例2では、回帰式作成部105は、以下の方法により各日の稼働状況による分類を行う。
グラフ402は、領域411~413のそれぞれで表される稼働状況における各稼働パターンを示す。グラフ402は、横軸で時刻を表し、縦軸で30分間の積算需要を表す。グラフ402は、領域411~413のそれぞれの各日の30分間の積算需要の平均値を表す。グラフ402のカーブ421は領域411の高稼働日における稼働パターンである。また、カーブ422は領域412の低稼働日における稼働パターンである。また、カーブ423は領域413の休業日における稼働パターンである。グラフ402からも分かるように、領域411~413それぞれで、空調機器21及び他負荷機器22の稼働パターンに特徴があり、領域411の高稼働日では需要が大きく、領域412の低稼働日では需要が高稼働日よりも小さく、領域413の休業日では需要がほぼないことが明らかである。したがって、空調機器需要推定部102により領域411~413として分けられた稼働状況の分類が、正しいことが確認できる。
グラフ404は、領域431~433のそれぞれで表される稼働状況における各稼働パターンを示す。グラフ404は、横軸で時刻を表し、縦軸で30分間の積算需要を表す。グラフ404のカーブ441は領域431の長時間稼働日における稼働パターンである。また、カーブ442は領域432の定時間稼働日における稼働パターンである。また、カーブ443は領域433の短時間稼働日における稼働パターンである。グラフ404からも分かるように、領域431~433それぞれで、空調機器21及び他負荷機器22の稼働パターンに特徴があり、領域431の長時間稼働日では長時間にわたり需要が発生し、領域432の定時間稼働日は通常の稼働時間であり、需要の発生時間が長時間稼働日よりも短く、領域433の短時間稼働日では需要が定時間稼働日よりも短いことが明らかである。したがって、空調機器需要推定部102により領域431~433として分けられた稼働状況の分類が、正しいことが確認できる。
以上により、回帰式作成部105は、各日を稼働状況に応じて7つのグループに分類することができる。その後、回帰式作成部105は、作成した稼働状況別のグループ毎に、実施例1と同様に回帰式を作成する。空調機器需要推定部102は、上述した方法で回帰式作成部105により作成された回帰式を用いて、空調機器21の需要及び他負荷機器22の総需要を推定する。このように、回帰式作成部105は、過去の総需要の実績データを各日の総需要の頻度を基に分類する。
以上に説明したように、本実施例2に係る負荷制御装置は、各日の総需要の頻度に応じて空調機器及び負荷機器の稼働状況による分類を行い、稼働状況別のグループを生成し、生成したグループ毎に気温感応需要を表す回帰式を生成する。この方法でも、気温感応需要を高精度に抽出することが可能である。したがって、各日の総需要の頻度に応じて空調機器及び負荷機器の稼働状況別のグループを生成する方法でも、簡易な構成で需要調整を的確に行うことが可能である。