(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093196
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】バイオマス貯留機能付き乾燥装置を備えるバイオマス発電システム
(51)【国際特許分類】
F26B 9/06 20060101AFI20240702BHJP
F26B 17/04 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F26B9/06 H
F26B17/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209409
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】591079018
【氏名又は名称】株式会社大和三光製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】大和 章伸
(72)【発明者】
【氏名】登家 章司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 修平
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA02
3L113AB02
3L113AC08
3L113AC15
3L113AC35
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC50
3L113AC51
3L113BA05
3L113CB05
3L113CB23
3L113DA02
(57)【要約】
【課題】
バイオマス発電装置において、使用されるバイオマス原料の水分含量によって、仕様上の発電効率が保てないことが、特にヨーロッパ製の発電装置の場合に見られ、安定した電力供給の妨げとなっていた
【解決手段】
木質バイオマス原料を乾燥させる乾燥装置と、乾燥した前記木質バイオマス原料をガス化させる熱分解装置と、前記ガスにより電力を発電する発電装置と、前記木質バイオマス原料の状態によって前記乾燥装置に供給する送風機電力量を調整する制御装置とを備えることを特徴とするバイオマス発電システムを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質バイオマス原料を乾燥させる乾燥装置と、
乾燥した前記木質バイオマス原料をガス化させる熱分解装置と、
前記ガスにより電力を発電する発電装置と、
前記木質バイオマス原料の状態によって前記乾燥装置に供給する送風機電力量を調整する制御装置とを備えることを特徴とするバイオマス発電システム。
【請求項2】
前記制御装置が、買電価格情報に基づいて、売電に供する電力量と前記乾燥装置に供給する電力使用量とを調整することを特徴とする請求項1に記載のバイオマス発電システム。
【請求項3】
前記制御装置が、買電価格が設定価格よりも高い時、乾燥装置に供給する電力使用量を削減させ、売電に供する電力量を増加させる調整を行う請求項2に記載のバイオマス発電システム。
【請求項4】
前記乾燥装置が、貯留ホッパ、床面、油圧シリンダーで駆動する搬送機構、及び送風機構を備える乾燥装置である、請求項1に記載のバイオマス発電システム。
【請求項5】
前記送風機構がインバータにより駆動することで、前記乾燥装置における送風機構の電力使用量を調整する請求項4に記載のバイオマス発電システム。
【請求項6】
前記乾燥装置における電力使用量の変動に関わらず、木質バイオマス原料を所定の含水量にまで乾燥させる請求項5記載のバイオマス発電システム。
【請求項7】
前記搬送機構が、前記貯留ホッパから乾燥ゾーンへ木質バイオマス原料を搬送供給する搬送装置と、乾燥ゾーンで搬送及び移送する搬送装置とを備え、それぞれの搬送装置が独立した油圧シリンダーにより往復動作する請求項4に記載のバイオマス発電システム。
【請求項8】
前記乾燥装置において、供給される木質バイオマス原料の量に対応して、木質バイオマス原料の乾燥ゾーンにおける床面からの厚さをダンパの高さをアクチエータにより操作することで調整する請求項6に記載のバイオマス発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス貯留機能付き乾燥装置を備えるバイオマス発電システムに関し、特に、乾燥装置への供給電力が削減された節電モードであっても、バイオマス原料の乾燥レベルを一定に保つことのできるバイオマス貯留機能付き乾燥装置を備えるバイオマス発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策として化石燃料である石油の使用量を削減する方向で発電システムの技術開発が行われている。バイオマス、特に木材資源を用いた発電技術はヨーロッパを中心として開発されており、我が国において導入されているバイオマスガス化炉を使用した発電装置についても約9割がヨーロッパ製であると言われている。ヨーロッパ製のバイオマス発電装置としては、40~100kW程度の規模から段階的に発電容量をパッケージされた装置が開発されており、同一の装置を並列運転することで地域内での電力提供が行われている。
【0003】
バイオマス発電装置の構成は、通常、乾燥装置、熱分解装置(バイオガス発生装置)、及びエンジン発電装置を含むものであり、ヨーロッパにおいては、それぞれの装置はユニット化され、ヨーロッパ向けの仕様のままパッケージ化され、安価なバイオマス発電装置として大量に生産され、使用に供されている。
【0004】
我が国においても、地産地消を目的としてバイオマス発電が奨励され、上記のとおり、開発の進んでいるヨーロッパ製の乾燥装置付き発電装置がヨーロッパ向けの仕様のまま輸入され、FIT(固定価格買取制度)を利用した売電等に用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、輸入されたヨーロッパ製のバイオマス発電装置が、我が国ではヨーロッパにおける仕様上の発電効率を保つことが出来ない現象が起きている。この原因の一つとして、バイオマス原料の原木の含水率の違いが挙げられており、日本の原木の含水率は60%W.B(湿量基準含水率)程度であり、ヨーロッパの原木の含水率は40%W.B(湿量基準含水率)程度といわれている。そのため、日本国内で日本の原木を用いてバイオマス発電を行う場合、ヨーロッパ製のバイオマス発電装置において奨励されているバイオマスの含水率である10~15%程度まで、乾燥処理により含水率を調整する必要がある。含水率を15%とするためには、含水率が60%W.Bである原木の場合には、含水率が40%W.Bである原木の場合に比べて、2.5~2.7倍の水分を除去する必要がある。さらに、バイオマス資源には様々な種類があり、単位重量ごとの発熱量や水分量の違い、あるいは季節変動もあるため、乾燥装置の能力設定を一律に定めることが難しく、乾燥処理能力を高く設定した乾燥装置を用いることが求められている。したがって、我が国においては、ヨーロッパ製のバイオマス発電装置において標準的に備えられている乾燥装置と比較して、2から4倍の水分の蒸発能力が必要となり、このため、我が国でヨーロッパ製のバイオマス発電装置を使用し、仕様上の発電効率を保つためには、我が国の事情に対応した乾燥装置を備えることが必要となっている。
【0006】
一方、乾燥装置に供給され、消費される電力には、かかる乾燥装置を含むバイオマス発電装置により発電された電力が用いられる。そして、日本国内でのバイオマス乾燥用乾燥装置は、ヨーロッパ製のバイオマス発電装置の備える標準的な乾燥装置に比べて、乾燥処理能力を高める必要があり、そのため送風機の電力量を上げることで高い乾燥処理能力を確保している。その結果、乾燥装置の電気消費量はバイオマス発電装置の発電量のうち、1割程度が使用されることもある。また、従来型の乾燥装置では、装置設計時に送風機の能力が決定されており、マグネット等で給電されるため、電力使用量が固定的に決まってしまっていた。この結果、発電した電力のうち余裕分が有効に使われないため、売電時の電気量を減らすことに繋がっていた。
【0007】
以上のとおり、ヨーロッパ製のバイオマス発電装置はコスト面及び品質面から開発が進んでおり、我が国にも多くが輸入され、実際の使用の例も多い。しかしながら、ヨーロッパ製のバイオマス発電装置の標準的な構成では、バイオマス原料の原木の水分含有量がヨーロッパ産と日本産とでは異なるため、日本国内では仕様上の定格電力が発電できないという事情があった。そのため、仕様上の定格電力を発電するためには、バイオマス発電装置を構成する乾燥装置を日本仕様の乾燥装置に置き換え、使用に供する必要があった。日本仕様の乾燥装置は、日本産のバイオマスをヨーロッパ製のバイオマス発電装置で使用可能な状態にまで乾燥することで、ヨーロッパ製の発電装置の仕様上の定格電力を得ている。しかしながら、乾燥能力を高めるということは、発電量の一部を使用して乾燥能力を高めることとなるため、発電量に占める売電量が減少し売電の利益が小さくなる課題があった。また、バイオマス原料は季節変動や保存方法により含水率が変動するが、従来型の乾燥装置では目標とする水分調整が困難なため、仕様上の定格電力が得られず、結果的に使用電力量の削減ができないため、売電量を増やすことが出来ない課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
気象条件等により変化するバイオマス原料を、最適な電力量で、求められる含水量に乾燥する機能と共に、買電価格の情報に基づいて乾燥装置に供給する電力量を調整する機能とを備えるバイオマス発電システムを提供する。乾燥装置に供給する電力が少ない時(節電モード)には、インバータにより使用電力を削減する制御装置と共に、少ない電力でも一定の乾燥が実現できるように、複数個の往復搬送装置と移送羽根の形状により乾燥に供するバイオマスの供給量を減らし、ダンパによりバイオマスの厚さを調整する乾燥装置を提供する。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の事項により特定されるとおりのものである。
[1]木質バイオマス原料を乾燥させる乾燥装置と、
乾燥した前記木質バイオマス原料をガス化させる熱分解装置と、
前記ガスにより電力を発電する発電装置と、
前記木質バイオマス原料の状態によって前記乾燥装置に供給する送風機構のための電力量を調整する制御装置とを備えることを特徴とするバイオマス発電システム。
[2]前記制御装置が、買電価格情報に基づいて、売電に供する電力量と前記乾燥装置に供給する電力使用量とを調整することを特徴とする[1]に記載のバイオマス発電システム。
[3]前記制御装置が、買電価格が設定価格よりも高い時、乾燥装置に供給する電力使用量を削減させ、売電に供する電力量を増加させる調整を行う[2]に記載のバイオマス発電システム。
[4]前記乾燥装置が、貯留ホッパ、床面、油圧シリンダーで駆動する搬送機構、及び送風機構を備える乾燥装置である、[1]に記載のバイオマス発電システム。
[5]前記送風機構がインバータにより駆動することで、前記乾燥装置における送風機構の電力使用量を調整する[4]に記載のバイオマス発電システム。
[6]前記乾燥装置における電力使用量の変動に関わらず、木質バイオマス原料を所定の含水量にまで乾燥させる[5]記載のバイオマス発電システム。
[7]前記搬送機構が、前記貯留ホッパから乾燥ゾーンへ木質バイオマス原料を搬送供給する搬送装置と、乾燥ゾーンで搬送及び移送する搬送装置とを備え、それぞれの搬送装置が独立した油圧シリンダーにより往復動作する[4]に記載のバイオマス発電システム。
[8]前記乾燥装置において、乾燥ゾーンに供給される木質バイオマス原料の量に対応して、木質バイオマス原料の乾燥ゾーンにおける床面からの厚さをダンパの高さをアクチエータにより操作することで調整する[6]に記載のバイオマス発電システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヨーロッパ製のバイオマス発電装置を使用して、仕様上の発電量で継続的に運転することが可能となり、かかるバイオマス発電装置により発電された電気を、買電情報に応じて、必要な時にできるだけ多く売電でき、一方、乾燥装置については、インバータと送風機構の使用電力量との関係を利用して消費する電力使用量の調整を行い、1日単位での必要なバイオマス原料の確保と適切な乾燥能力を確保することで乾燥装置における使用電力量を削減し、適切な売電量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明に係る乾燥装置の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る乾燥装置における搬送機構の態様を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る乾燥装置における搬送機構の別の態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
バイオマス発電装置は、太陽光発電や風力発電とは異なり、気象条件に左右されることなく、継続的に運転される。本発明に係る乾燥装置はバイオマス発電を行うために特化した乾燥装置であり、バイオマス発電装置により発電された電力を必要な時にできるだけ多く供給できるように動作するものである。そのためには、乾燥装置については可能な限り省エネ化を行うことで、1日に必要な乾燥したバイオマス原料を確保すると共に、1日単位での乾燥装置の使用電力量を最小にしていく必要がある。
【0013】
電気は発電した時点で消えていくため蓄電(貯留)の困難なエネルギーである。そのため、電力会社では需要に合わせて発電量を調整することが行われている。また、電力会社からの電力の供給に加えて、FIT制度を利用した売電システムが発足し、さらに、時間や気象条件によって買電単価が変わっていくFIP制度の導入も検討されており、再エネルギー発電事業者からの電力の供給も始まっている。太陽光発電は日照時間中は有効に発電するが、それ以外の時間は発電できないため、主たる電源を太陽光発電にした場合に、日照条件に発電量が左右されないバイオマス発電を補助的電源とすることは重要であると考えられている。
バイオマス発電装置は、電力需要が高い時点あるいは電力単価が高い時点で売電量を増やしていく機能を有することが収益上優位となる。売電を考慮すると最も電力需要が高い時間帯あるいは買電単価が高い時間帯には、発電装置により発生した電力の内の内部消費量を減らして外部に多く供給できること、すなわち売電量を増やすことが望ましい。そのためには、こうした時間帯において乾燥装置で使用する電力使用量を削減することが有効である。一方、日本国内でのバイオマス乾燥用乾燥機はヨーロッパの乾燥装置に比べて、乾燥能力を高める必要があり、そのため、送風機構の電力使用量を上げることで乾燥能力を確保している。日本国内での生木仕様での発電装置において、乾燥装置の送風機で使用される電力使用(消費)量は発電装置の発電量のうちの1割程度が使用される結果となる。日本国内のバイオマス原料については、生木では60%内部水分が、自然乾燥・雪付着の状態では60%付着水が、自然乾燥・雨天の状態では55%付着水が、自然乾燥・曇りの状態では50%程度、自然乾燥・晴れの状態では50%以下の水分量といわれており、これらの状態に応じて、乾燥機の風量調整することが求められる。
【0014】
バイオマス発電装置では発電ピークに合わせて熱分解装置(バイオガス発生装置)を運転するため、排ガスのエネルギー量は発電ピークとほぼ同一のピークを迎える傾向となる。そこで、電力需要が多い時間帯では、乾燥装置で使用する電力を削減し、発生する電力を売電し、電力需要が少なくなった時間帯では、必要とする乾燥バイオマス原料の量を確保する発電制御システムを開発した。以下、電力を削減する段階を節電モードという。
【0015】
バイオマス発電装置における乾燥装置は、木質バイオマス原料を所定の含水率に乾燥した後、木質バイオマス原料をガス化させる熱分解装置に供給するために、熱分解装置と組み合わせて使用されるものである。熱分解装置(バイオガス発生装置)としては、その規模に応じて、バイオマス原料をバッチ的に一度に供給されるものと、連続的な供給が必要なものとが存在する。本発明に係る乾燥装置は、いずれの熱分解装置であっても、組み合わせて使用可能なものである。
【0016】
乾燥装置は、水分を蒸発させる目的でバイオマス発電装置に設置され、エアを吹き付けることで木質バイオマス原料を乾燥させる。エアを吹き付けるタイプの乾燥装置において乾燥能力を高めるためには、通常、できるだけ高温のエアを吹き付けるために使用する熱風の温度を高める、又は吹き付けるエアのスピードを上げることで風量を増加させることが行われる。また、乾燥対象が木質バイオマス原料の場合には、乾燥装置内でのバイオマス原料が積まれた状況ではこの中をエアが通過するためにはバイオマス原料層の厚みに応じた送風機による静圧が必要となるため、バイオマス原料を乾燥装置内で攪拌することで、空気との接触を多くすることが好ましい。バイオマス発電装置の乾燥装置においては、吹き付けるエアとして、発電装置からの高温の排ガスを乾燥装置で使用することが一般的である。しかしながら、発電装置からの排ガスが利用できない、あるいは排ガスの温度が足りない場合には熱交換器を使用して蒸気・湯水等の使用が検討され、電気ヒータ等を使用することもできる。さらに、発電装置の排ガスを利用する場合には、使用できる温度、供給量が発電装置の能力に依存してしまうため、発電装置の能力に合わせた乾燥装置の設計が必要となる。
したがって、乾燥装置の乾燥能力を高めるために、送風機構の能力を拡大することが最も現実的な対応である。
【0017】
バイオマス発電装置の備える乾燥装置には、3つの機能が求められる。すなわち、バイオマス原料を搬送する機能、バイオマス原料を加熱し、水を蒸発する機能、及び蒸発した水分を排出する機能を必要とする。本発明に係る乾燥装置の場合には、これらの機能に加えて、バイオマス原料を貯留する機能が加わっている。
【0018】
バイオマス発電装置の備える乾燥装置は、上記の機能を満たすために、以下の基本的な構成を有する。
(1)バイオマス原料貯留ホッパ(入口)
指定された大きさの木材をバイオマス原料として乾燥装置に投入して、バイオマス原料を貯留する
(2)バイオマス搬送コンベヤ(油圧シリンダー式)
乾燥装置下部に設置された搬送機構で、バイオマス原料を入口から出口まで搬送するもので、コンベヤ上には移送羽根が取り付けられている。搬送装置としては、油圧シリンダーを使用して駆動し、一定の距離を往復するコンベヤからなる。移送羽根は、往路では入口から出口方向に向けてバイオマス原料を押しながら移送し、一方、復路ではバイオマス原料を押すことなく、移送先に残す形状となっている。
(3)供給規制ダンパ1
貯留ホッパから出口側に向けてのバイオマス原料の供給量を調整する機構であり、手動で供給量を設定することができる。バイオマス原料を乾燥に適した厚みの層に調整する機構であり、通常、バイオマス原料層の厚みは400~500mm程度である。
(4)エア排気口及び貯留スペース
エア排気口は乾燥に使われたエアの排気のためのもので、特に形状等に制限はなく、貯留スペースはバイオマス原料を2次的に保管するスペースである。
(5)供給規制ダンパ2
エア排気口及び貯留スペース出口側にあるバイオマス原料の供給量を調整する機構であり、手動で供給量を設定することができる。バイオマス原料層の厚みを調整すると共に乾燥に使われる熱風がエア排気口に直接流れ込むのを防ぎ、バイオマス原料層内を通過し、バイオマス原料と接触するように取り付けられる。通常、乾燥に供されるバイオマス原料層の厚みである400~500mmを基準として、設定される。供給規制ダンパ2が適切に調整されていないと、乾燥のための熱風がバイオマス原料層内を通過しないで、エア排気口にショートパスしてしまい、熱風が有効に熱利用されないため、バイオマス原料は十分乾燥しないおそれがある。
(6)送風機構
乾燥に使用されるエア(熱風)を乾燥ゾーンに送る機構であり、送風機を設置して、吹き出し口を下に向けてエアを吹き出すものであれば、特に制約はない。発電装置からの排熱ガスを使用する時は、発電装置側からの排熱ガスを吸気して吹き出す。排熱ガスからエアに十分な熱量が得られない場合には、電気ヒータ、湯水等を使用して熱風を作り、吹き出す必要がある。通常、送風機構のモータには電磁開閉器等を使用し給電している。
(7)乾燥ゾーン
送風機構から送られた熱量を持ったエア(熱風)はバイオマス原料層内を通過して、熱交換し、乾燥処理を行う。バイオマス原料層の厚さは500mm程度に設定されている。
(8)排出コンベヤ
バイオマス搬送コンベヤを使って搬送されたバイオマス原料は乾燥ゾーンで乾燥し、排出コンベヤを通して装置外(出口)に排出される。
【0019】
以上の基本的な構成を有するバイオマス発電装置の備える乾燥装置において、本発明に係る乾燥装置では、使用する電気の使用量を削減するために、送風機構にインバータを使用して周波数を変えることで電気の使用量の削減を可能とした。仮に、非節電モード時に送風機構を周波数60Hzで運転していた場合、節電モード時に周波数をαHzに変えることで、変更後の運転時の電力の使用量は(α/60)の3乗となり、静圧は(α/60)の2乗となり、風量は(α/60)となる。節電モードにおいては、これらの関係を利用して、適正な電力の使用量、静圧及び風量を設定して、運転することにより、乾燥装置における電力使用量を削減することを可能とした。
【0020】
節電モードにおいては、周波数を変えることにより、乾燥装置の送風機構の能力を変化させることから、乾燥装置の乾燥能力に関して、次のような影響が考えられる。すなわち、風速(風量と比例)が落ちることでバイオマス原料との熱交換量が不足し、乾燥速度は低下し、同様に、熱源を確保するために熱交換器等を使用していた場合には熱交換の性能も低下する。また、静圧に関しても低下することで、エアがバイオマス原料間を通過する能力が落ち、熱交換能力が低下する。場合によっては、排気の機能が大きく低下することで、バイオマス原料中から出てきた水分が結露する可能性がある。したがって、これらの影響を考慮し、かつ、所定の含水率にまでバイオマス原料を乾燥させるためには、節電モード時には乾燥ゾーンにおけるバイオマス原料の供給量を調整し、バイオマス原料層の厚みを薄くしてより乾燥しやすい環境とすることが必要となる。
【0021】
本発明に係る乾燥装置においては、供給規制ダンパ1及び2をアクチュエータを使用して上下させることでバイオマス原料の供給量を制御し、乾燥ゾーンでのバイオマス原料層の厚みを変化させ、レベル制御を可能とする。また、供給規制ダンパは副次的に熱風の漏れを防ぎ乾燥ゾーン内のバイオマス原料内に熱風を侵入させる効果を持つ。
【0022】
さらに、本発明に係る乾燥装置においては、バイオマス搬送機構としては搬送装置を複数個設置するものであり、少なくとも、貯留ホッパから乾燥ゾーンへバイオマス原料を搬送供給する搬送装置と、乾燥ゾーン内で搬送・移送する搬送装置とを含むものである。これらの2の搬送装置はそれぞれ油圧シリンダーにより独立して動作可能である。また、これらの2の搬送装置は同じ高さに設置することもできるが、貯留ホッパから乾燥ゾーンへバイオマス原料を搬送供給する搬送装置を乾燥ゾーン内で搬送・移送する搬送装置よりも高く設置することが好ましく、貯留ホッパから乾燥ゾーンへバイオマス原料を搬送供給する搬送装置の乾燥ゾーン側の端部と乾燥ゾーン内で搬送・移送する搬送装置の貯留スペース側の端部とがオバーラップしていることが好ましい。非節電モードでの運転時は上記2の搬送装置を連動させることで、定常厚み(400から500mm)のレベルでバイオマス原料を搬送する。一方、節電モードでの運転時では、貯留ホッパから乾燥ゾーンへの移送供給に係る搬送装置を停止もしくは運転回数を減らすことで乾燥ソーンへのバイオマス原料の供給量を減らして、バイオマス原料層の厚みを減らし乾燥を促進させ運転を行う。節電モードに変更する前から貯留ホッパからのバイオマス原料の供給を停止させることで乾燥ゾーンでのバイオマス原料層の厚みを薄くし、非節電モードから節電モードへスムーズに移行することも可能である。また、上下動する供給規制ダンパを下げることでも、バイオマス原料層の厚みを低下させることができる。さらに、送風機構の風量に合わせてバイオマス原料層の厚みを調整する機能を持たせることもできる。バイオマス原料層の厚みを調整するための態様としては、往復するバイオマス原料搬送機構に移送羽根を設け、さらに、貯留ホッパから乾燥ゾーンまでの搬送を行う機構(装置)と乾燥ゾーン内の搬送・移送を行う機構(装置)とを独立して動作させることにより、乾燥ゾーンにおけるバイオマス原料層の厚みを変化させることができる。
【0023】
以下に、添付図面に基づいて、本発明に係る乾燥装置の具体的な態様を説明するが、本発明に係る乾燥装置は、なんら図面に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明に係る乾燥装置の好ましい実施の態様の概略図である。
バイオマス原料(図示せず)は、貯留ホッパ(入り口)から乾燥装置に導入され、貯留スペースに貯留される。貯留スペースに貯留されたバイオマス原料は、乾燥装置の下部、床面(1)上方に設置された搬送装置であるバイオマス搬送コンベヤ(2a)が、油圧シリンダー(3a)により駆動し、左右に往復運動することにより、貯留スペースから乾燥ゾーンへと搬送される。バイオマス搬送コンベヤ(2a)上には移送羽根(5)が設けられており、バイオマス搬送コンベヤ―(2a)が貯留スペースから乾燥ゾーンに向かう動きの場合には、バイオマス原料を押し込み、一方、バイオマス搬送コンベヤ―(2a)が乾燥ゾーンから貯留スペースに戻る動きの場合には、バイオマス原料をその場に残す形状である。
【0025】
貯留スペースと乾燥ゾーンとの間には、供給規制ダンパ1(4a)が設けられており、かかるダンパを上下させることにより、貯留スペースからのバイオマス原料の供給量を1次的に調整する。供給規制ダンパ1の上下動は、手動による機構でもよく、また機械的な操作による機構でもよい。供給規制ダンパ1(4a)の乾燥ゾーン側には、供給規制ダンパ2(4b)が設けられており、かかるダンパを上下させることにより、貯留スペース出口側の供給量を2次的に調整する。供給規制ダンパ2(4b)の上下動についても、供給規制ダンパ1(4a)と同様に、手動による機構でもよく、また機械的な操作による機構でもよい。
図1においては、バイオマス搬送コンベヤ(2b)は、バイオマス搬送コンベヤ(2a)よりも低い位置に設けられており、バイオマス搬送コンベヤ(2b)の貯留スペース側の端部とバイオマス搬送コンベヤ(2a)の乾燥ゾーン側の端部とは油圧シリンダー(3a、3b)の移動ストローク程度オバーラップして設けられている。
床面(1)、及びバイオマス搬送コンベヤ―(2b)上のバイオマス原料層の厚みは、通常、400~500mmとなるように、供給規制ダンパ1(4a)及び供給規制ダンパ2(4b)によりバイオマス原料の供給量が調整される。
【0026】
供給規制ダンパ1(4a)と供給規制ダンパ2(4b)との間にエア排出口が設けられる。供給規制ダンパ2(4b)は、供給規制ダンパ2(4b)の出口側に設けられる送風機構から送られる熱風がエア排気口に直接流れ込むのを防ぎ、バイオマス原料層内を通過することで、バイオマス原料と接触し、乾燥させるための機能を有している。
【0027】
送風機構は、バイオマス原料の乾燥に使用される熱風を乾燥ゾーンに送る機構であり、送風機を設置して、吹き出し口を下に向けて吹き出す機構であれば、特に制限はないが、バイオマス原料の状態に応じて、乾燥装置に供給する送風機電力量を調整する制御装置を備えたものである。制御装置としては、送風機電力量を調整できるものであれば、特に制限はないが、インバータを使用して周波数を変えることで電力量を調整する機構が好ましい。
【0028】
送風機電力量の変化に応じて、乾燥能力が変化することから、バイオマス原料層の厚さを乾燥能力と連動して調整することが好ましく、送風機構における制御装置と、供給規制ダンパ1(4a)と供給規制ダンパ2(4b)とが連動していることが好ましい。さらに、バイオマス原料層の厚さは、バイオマス搬送コンベヤ(2b)を左右に往復運動することにより調整が可能であるし、アクチュエータを使用して供給規制ダンパ1(4a)及び2(4b)を上下させることでも調整が可能である。なお、バイオマス搬送コンベヤ(2a、2b)には、それぞれ油圧シリンダー(3a、3b)が備えられており、バイオマス搬送コンベヤ(2a、2b)は、独立して、左右に往復運動することができる。
【0029】
乾燥ゾーンにおいて、熱風がバイオマス原料内を通過し、乾燥処理が行われ、熱風はエア排出口から排出され、乾燥したバイオマス原料は出口へと排出される。
【0030】
図2は、本発明に係る乾燥装置における床面(1)、バイオマス搬送コンベヤ(2a、2b)及び移送羽根(5)の態様を示す概略図である。
バイオマス搬送コンベヤ(2a、2b)は床面(1)の上方に設置するものであり、バイオマス搬送コンベヤ(2a)は貯留スペースに設置され、バイオマス搬送コンベヤ(2b)は貯留スペース及び乾燥ゾーンにわたって設置される。バイオマス搬送コンベヤ(2a、2b)上には、バイオマス原料を移送するための移送羽根が設けられている。移送羽根の形状としては、バイオマス搬送コンベヤが入り口から出口方向に向けて動く場合にはバイオマス原料を押し込み、一方、バイオマス搬送コンベヤが出口方向から入口方向に向けて動く場合にはバイオマス原料をその場に残す形状である。バイオマス搬送コンベヤに設けられる移送羽根の大きさ・個数は、乾燥装置の能力などに応じて、適宜設定できるものであるが、好ましくは、高さ約40~90mm、幅約200~800mm、長さ約200~400mmの範囲であり、床面面積当たり羽根面積が10~30%程度である。
【0031】
図3は、本発明に係る乾燥装置における床面(1)、バイオマス搬送コンベヤ(2a、2b)及び移送羽根(5)の別の態様を示す概略図である。
この態様においては、
図2で示した態様と比べて、移送羽根(5)の幅を小さくすることにより、小型の移送羽根を多数設ける態様を示しており、バイオマス原料の移送・攪拌において細かい調整が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明により、ヨーロッパ製のバイオマス発電装置の利用可能性が拡大すると共に、バイオマス原料の状況に応じて乾燥装置に供給する電力量を調整することができることから、様々なバイオマス原料を用いた発電装置への応用が期待される。
【符号の説明】
【0033】
1 床面
2a、2b バイオマス搬送コンベヤ
3a、3b 油圧シリンダー
4a 供給規制ダンパ1
4b 供給規制ダンパ2
5 移送羽根