(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093213
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】防振支持具
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20240702BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20240702BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20240702BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F16F15/08 K
F16B19/00 E
F16F15/08 E
F16F1/36 K
F16B19/00 N
F16B5/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209434
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】592077121
【氏名又は名称】竹内工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅也
【テーマコード(参考)】
3J001
3J036
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J001FA03
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JC03
3J001JC13
3J001KA19
3J001KA22
3J001KB06
3J036AA03
3J036DA02
3J036DA06
3J036DB04
3J048AA01
3J048BA06
3J048EA07
3J059BA59
3J059GA21
(57)【要約】
【課題】第1基板と第2基板との間の防振効果を高めた防振支持具を提供する。
【解決手段】第1基板(シャーシ)B1に支持されるスナップステム2と、第2基板(回路基板)B2に取り付けられ、スナップステム2に支持される防振ゴム(防振グロメット)3と、スナップステム2に取り付けられて防振ゴム3の脱落を防止する係止ブッシュ4を備える。スナップステム2は、その基端側に設けられてシャーシB1の支持穴H1に弾性支持されるスナップ部6と、防振ゴム3及び係止ブッシュ4が挿通支持されるとともに、係止ブッシュ4を係止するステム部5を備える。スナップ部6は、スナップ係止爪62と協働してスナップステム2をシャーシB1に弾性的に支持する弾接片65を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板に支持されるスナップステムと、第2基板に取り付けられるとともに前記スナップステムに支持される防振グロメットと、前記スナップステムに取り付けられて前記防振グロメットが前記スナップステムから脱落することを防止する係止ブッシュとを備え、前記スナップステムは、当該スナップステムの基端側に設けられて前記第1基板の支持穴に弾性支持されるスナップ部と、前記防振グロメット及び前記係止ブッシュが挿通支持されるとともに、前記係止ブッシュを当該スナップステムに係止するステム部を備えることを特徴とする防振支持具。
【請求項2】
前記スナップ部は、前記第1基板に開口された支持穴を挿通されて当該支持穴に嵌合されるスナップ係止爪と、当該スナップ係止爪と協働して前記第1基板を板厚方向に挟持する弾接片を備え、これらスナップ係止爪と弾接片とで前記スナップステムを第1基板に立設状態に支持する請求項1に記載の防振支持具。
【請求項3】
前記防振グロメット及び前記係止ブッシュはそれぞれ前記ステム部の先端側から挿通される中心穴を有する筒状部材として構成され、前記防振グロメット及び前記係止ブッシュの順で前記ステム部に挿通され、前記ステム部は基端側に設けられて前記防振グロメットを支承するフランジと、先端側に設けられて拡径されたときに前記係止ブッシュの中心穴の内縁に係止されるステム係止爪を備えており、前記フランジと前記係止ブッシュとで前記防振グロメットを支持する請求項1に記載の防振支持具。
【請求項4】
前記ステム部は平行に配置された2つのステム片を備え、各ステム片の先端部にそれぞれステム係止爪が配設される請求項3に記載の防振支持具。
【請求項5】
前記係止ブッシュは軸穴回りに回転操作が可能であり、その回転位置の変化に応じて前記ステム係止爪を縮径させて当該係止ブッシュとの係止を解除させる係止解除カムを備える請求項3または4に記載の防振支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器のシャーシやパネル等の第1基板に、回路基板等の第2基板を防振支持するための防振支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器のシャーシ等の第1基板に、電子回路を構成する回路基板等の第2基板を支持するための支持具として、第1基板又は第2基板に生じる振動が相手方の第2基板又は第1基板に伝わらないようにした防振機能を有する支持具が提案されている。この種の防振支持具として、第1基板と第2基板との間に防振ゴムを介装し、この防振ゴムを挿通させたボルト・ナットにより第1基板と第2基板とを締結する防振支持具が提案されている。しかし、この防振支持具はボルトとナットを螺合させるための作業が面倒であり、作業性が低いという課題がある。また、ボルトは第1基板と第2基板に直接的に連結されているため、一方の基板の振動がボルトを介して他方の基板に伝達してしまい、防振効果が低下するという課題もある。
【0003】
一方、特許文献1にはボルト・ナットを不要にした防振クリップが提案されている。この防振クリップはピン部材と弾性部材からなるグロメットとで構成されており、例えば、グロメットを第2基板の穴に嵌合するとともに、このグロメットにピン部材を挿通させ、ピン部材に設けた係止フックを第1基板に設けた穴に係合させる構成である。この防振クリップによれば、第1基板に対する取付作業は、単にピン部材の係止フックを第1基板の穴に係止させる作業で済むため作業性が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の防振クリップは、作業性を改善する上では有効であるが、ピン部材自体は防振機能を有していない点においてボルト・ナットを用いた防振構造と同じである。そのため、第1基板の振動はそのままピン部材に伝達され、グロメットにおける防振機能が低い場合には、ピン部材に伝達された振動は第2基板に伝達され、防振クリップ全体としての防振効果が十分に得られないという課題がある。反対に第2基板の振動がピン部材に伝達されたときには、当該ピン部材から第1基板に伝達され、防振効果が得られ難くなる。
【0006】
本発明の目的は、第1基板と第2基板との間の防振効果を高めることが可能な防振支持具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防振支持具は、第1基板に支持されるスナップステムと、第2基板に取り付けられるとともにスナップステムに支持される防振グロメットと、スナップステムに取り付けられて防振グロメットがスナップステムから脱落することを防止する係止ブッシュとを備える。スナップステムは、スナップステムの基端側に設けられて第1基板の支持穴に弾性支持されるスナップ部と、防振グロメット及び係止ブッシュが挿通支持されるとともに、係止ブッシュをスナップステムに係止するステム部を備える。
【0008】
本発明の好ましい形態は、スナップ部は、第1基板に開口された支持穴を挿通されて当該支持穴に嵌合されるスナップ係止爪と、スナップ係止爪と協働して第1基板を板厚方向に挟持する弾接片を備え、これらスナップ係止爪と弾接片とでスナップステムを第1基板に立設状態に支持する構成である。
【0009】
本発明のさらに好ましい形態は、防振グロメット及び係止ブッシュはそれぞれステム部の先端側から挿通される中心穴を有する筒状部材として構成され、防振グロメット及び係止ブッシュの順でステム部に挿通される。ステム部は基端側に設けられて防振グロメットを支承するフランジと、先端側に設けられて拡径されたときに係止ブッシュの中心穴の内縁に係止されるステム係止爪を備えており、フランジと係止ブッシュとで防振グロメットを支持する構成である。
【0010】
また、本発明は次の形態とすることが好ましい。例えば、ステム部は平行に配置された2つのステム片を備え、各ステム片の先端部にそれぞれステム係止爪が配設される。あるいは、係止ブッシュは軸穴回りに回転操作が可能であり、その回転位置の変化に応じてステム係止爪を縮径させて当該係止ブッシュの係止を解除させる係止解除カムを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スナップステムは、スナップ部により第1基板に弾性支持されるので、この弾性により第1基板とスナップステムとの間での振動伝達を防止することができ、第1基板と第2基板との間の防振効果が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1の防振支持具を組み立てた状態の、(a)斜視図、(b)正面図。
【
図3】実施形態1の防振支持具の、(a)正面図、(b)右側面図、(c)上面図、(d)下面図。
【
図4】実施形態1の防振支持具の組み立て工程を示す一部を破断した正面図。
【
図5】実施形態2の防振支持具のスナップステムの斜視図。
【
図6】実施形態2の防振支持具の、(a)正面図、(b)右側面図。
【
図7】実施形態2の防振支持具の組み立て工程を示す一部を破断した正面図。
【
図9】変形例の係止ブッシュの、(a)係止状態の斜視図、(b)係止解除状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
次に本発明の実施形態を説明する。
図1は実施形態1の防振支持具を組み立てた状態を示しており、(a)は斜視図、(b)は正面図である。また、
図2はその部分分解斜視図である。実施形態1では、本発明の第1基板に相当する電子機器等のシャーシB1に、本発明の第2基板に相当する回路基板B2が防振支持される例を示している。シャーシB1と回路基板B2にはそれぞれ所要の径寸法の支持穴H1,H2が開口されており、防振支持具1はこれらの支持穴H1,H2を利用して回路基板B2をシャーシB1に防振支持する構成とされている。シャーシB1の支持穴H1は円形穴として開口されているが、回路基板B2の支持穴H2は縁部から切り欠かれた切欠き溝Cに連なる円形穴として開口されている。
【0014】
実施形態1の防振支持具1は、シャーシB1の支持穴H1に固定されるスナップステム2と、回路基板B2の支持穴H2に嵌装されてスナップステム2に支持される円筒状をした防振グロメット3と、スナップステム2に係止されて防振ゴム3をスナップステム2に係止する係止ブッシュ4を備えている。なお、以降の説明において、上下方向は
図1を基準にしており、
図1に表れているシャーシB1の上方に向けられている表面側が上側になる。
【0015】
防振グロメット3は、ここでは防振ゴムとして構成されている。この防振ゴム3は、軸穴31を有する概ね円筒状に形成されており、少なくとも筒軸方向に弾性変形が可能とされている。軸穴31の内径寸法は、スナップステム2の後述するステム係止爪54の外径寸法よりも幾分大きくされている。防振ゴム3の外周面には筒軸方向の中央位置に環状の凹溝32が形成されており、この環状溝32を回路基板B2に設けられた切欠き溝Cを通して支持穴H2に嵌入させることにより、防振ゴム3はその筒軸方向の両端部がそれぞれ回路基板B2の表面側と裏面側に突出された状態で回路基板B2に取り付けられる。また、この実施形態1では、防振ゴム3の互いに反対方向に向けられた両端面にそれぞれ複数の半球状の凸部33が一体に形成されている。この凸部33は必ずしも設けられていなくてもよく、あるいは、凸部33は半径方向に延びる放射状をした複数の凸条で構成されてもよい。
【0016】
係止ブッシュ4は底面部45を有する所定の厚さの円環部41を有しており、この底面部45には中心穴42が開口されている。また、この中心穴42を囲むようにして環軸方向に所要の長さで突出された円筒状のスリーブ43が一体に形成されている。このスリーブ43の長さは前記した防振ゴム3の筒軸方向の寸法よりも短く、またスリーブ43の外径寸法は防振ゴム3の軸穴31の内径寸法にほぼ等しくされている。
【0017】
スナップステム2は、
図3(a)~(d)に正面図、右側面図、上面図、下面図を示すように、幾分の弾性を有する樹脂の一体成形により形成されており、略真直な柱状をしたステム部5と、このステム部5の下端部に一体に構成されたスナップ部6を備えている。このスナップステム2は、スナップ部6がシャーシB1の支持穴H1に嵌合されることによりシャーシB1の表面上に立設状態に固定される。また、このスナップステム2のステム部5には前記防振ゴム3が挿通され、さらに前記係止ブッシュ4が係止されることにより当該防振ゴム3を支持することが可能とされている。
【0018】
前記ステム部5は、径方向に放射状に突出された4つのリブ52を有するステム51と、このステム51の下端部、すなわちスナップ部6との境界部に設けられた円板状をしたフランジ53と、ステム51の上端部に設けられた矢尻状をした一対のステム係止爪54を備えている。フランジ53からステム係止爪54までの長さは、前記防振ゴム3の筒軸方向の長さよりも幾分長くされている。ステム51の4つのリブ52はそれぞれ径方向に突出したフィン状に形成されており、ステム51の長さ方向に延長されている。これら4つのリブ52の下端部の径位置は上端部よりも大径位置にあり、この大径位置を結ぶ仮想円の径寸法は防振ゴム3の軸穴31の内径寸法にほぼ等しい寸法に設定されている。
【0019】
一対のステム係止爪54は先端から下方に向けて徐々に径寸法が拡大する矢尻状に形成されており、径方向に弾性変形が可能とされている。これらステム係止爪54の矢尻先端の径寸法は前記した係止ブッシュ4の中心穴42の内径寸法よりも幾分大径に形成されるとともに、それぞれには径方向の段部55が形成されており、この段部55における径寸法は係止ブッシュ4の中心穴42の内径寸法にほぼ等しい寸法とされている。また、この段部55とフランジ53との間の長さ寸法は防振ゴム3の筒軸方向の両端面間の長さ寸法に係止ブッシュ4の底面部45の厚み寸法を加えた長さにほぼ等しく設計されている。
【0020】
前記スナップ部6は、フランジ53の下面から下方に向けて突出されたポスト61と、このポスト61の下端に下向きの矢尻状に形成された一対のスナップ係止爪62を備えている。このスナップ係止爪62の構成は前記したステム係止爪54とほぼ同様の構成であるが、スナップ係止爪62の矢尻先端の径寸法はシャーシB1の支持穴H1の内径寸法よりも幾分大径に形成され、各スナップ係止爪62に形成されている径方向の段部63における径寸法はシャーシB1の支持穴H1の径寸法にほぼ等しい寸法とされている。
【0021】
また、各スナップ係止爪62の矢尻先端には連結部64を介してそれぞれ対をなす弾接片65と解除片66が連結形成されている。各弾接片65は連結部64から互いに水平方向の反対方向に延長されるとともに各先端は連結部64よりも幾分下方に傾斜された構成とされている。各解除片66は連結部64から上方に向けて外側に膨らんだ弧を描くようにして延長され、各先端がフランジ53の下面に沿うようにしてポスト61の側面に近接配置された構成とされている。これら解除片66は作業者が指で摘むことによりポスト61側に向けて弾性変形され、この弾性変形に伴って一対のスナップ係止爪62を互いに近接する方向、すなわちスナップ係止爪62の外形寸法を縮小する方向に弾性変形することが可能とされている。
【0022】
以上の構成の実施形態1の防振支持具1で回路基板B2をシャーシB1に防振支持する工程を
図4に示す。
図4は一部を破断した正面図である。先ず、
図4(a)のように、スナップステム2のスナップ部6をシャーシB1の上方から支持穴H1に嵌合させる。すなわち、スナップ部6のスナップ係止爪62を支持穴H1に嵌入すると、スナップ係止爪62は縮径されながら弾性変形されて支持穴H1を挿通され、挿通後に弾性復帰して拡径されてシャーシB1の下面側から支持穴H1の内縁部に係止される。このとき、弾接片65は板厚方向に弾性変形されてシャーシB1の上面に弾接される。これにより、スナップ係止爪62と弾接片65が協働してシャーシB1を板厚方向に挟持し、スナップステム2はシャーシB1の上面に立設した状態でかつステム21の長さ方向に弾性移動可能な状態に固定支持される。
【0023】
一方、防振ゴム3は、予め回路基板B2に設けられている支持穴H2に嵌合支持される。ここでは、支持穴H2は切欠き溝Cにより回路基板B1の縁部から切り欠かれているので、防振ゴム3は弾性変形されながら切欠き溝Cを通して支持穴H2に嵌合され、支持される。そして、このようにして回路基板B2に支持された防振ゴム3をスナップステム2の上端側から挿通させる。回路基板B2は防振ゴム3を嵌合させた状態でシャーシB1の上面側から組み付けられることになるが、スナップステム2はシャーシB1の上面に立設されており、このスナップステム2は防振ゴム3の中心穴31を通して視認することができるので、防振ゴム3の中心穴31をスナップステム2に対して位置合わせすることにより、容易に防振ゴム3ないし回路基板B2の取り付けが実現できる。
【0024】
スナップステム2に回路基板B2を取り付けると、防振ゴム3はフランジ53により下支えされた状態でステム51に挿通支持される。この支持された状態ではステム51の上端のステム係止爪54は防振ゴム3の上端側に突出状態とされる。また、ステム51の4つのリブ52の外縁が防振ゴム3の軸穴31の内周面に当接されるので、ステム51に対する防振ゴム3の径方向のガタが防止される。したがって、シャーシB1に対する防振ゴム3ないし回路基板B2の平面方向の位置決めが行われる。
【0025】
しかる上で、
図4(b)のように、防振ゴム3の上側から係止ブッシュ4を装着する。係止ブッシュ4のスリーブ43はステム51の外周と防振ゴム3の軸穴31との隙間に内挿される。この内挿時には、ステム51のステム係止爪54は弾性変形により縮径されて径ブッシュ4のスリーブ43内を挿通され、係止ブッシュ4の中心穴42を挿通された後に弾性復帰して拡径される。これにより、ステム係止爪54の段部55は係止ブッシュ4の底面部45の中心穴42の内縁に係合され、係止ブッシュ4はステム51に係止される。したがって、防振ゴム3はフランジ53と係止ブッシュ4との間に挟持され、係止ブッシュ4によりステム51、すなわちスナップステム2からの脱落が防止される。
【0026】
このようにして回路基板B2は防振ゴム3及びスナップステム2を介してシャーシB1に支持される。したがって、シャーシB1に生じる振動は防振ゴム3により吸収され、回路基板B2への伝達が防止される。あるいは、回路基板B2に生じる振動は防振ゴムにより吸収され、シャーシB1への伝達が防止される。また、この実施形態1においては、防振ゴム3の両端部に複数の凸部33が形成されているので、スナップステム2の長さ寸法、特に、フランジ53とステム係止爪55間の長さ寸法と、防振ゴム3の筒軸方向の長さ寸法とに幾分の寸法差が生じていても、この寸法差は凸部33での弾性変形によって吸収され、両者の寸法差によるガタが防止される。
【0027】
防振ゴム3で吸収されない振動が生じたときには、防振ゴム3を支持しているスナップステム2のスナップ部6において吸収される。すなわち、このスナップ部6には弾性変形が可能な弾接片65と解除片66が設けられているので、防振ゴム3で吸収されない振動は、弾接片65が板厚方向に弾性変形されることにより吸収され、さらには解除片66の湾曲形状が弾性変形されることにより吸収される。これにより、防振ゴム3による振動の吸収作用に加えてスナップ部6における振動の吸収作用が加えられることになり、全体としての防振効果が高められる。
【0028】
第1基板B1と第2基板B1との組み付け工程は、以上とは逆の工程であってもよい。すなわち、第2基板B2に取り付けた防振ゴム3を先ずスナップステム2のステム部5に挿通させ、さらに係止ブッシュ4をステム部5に係止することにより防振ゴム3を介して第2基板B2をスナップステム2に支持させる。しかる上で、スナップステム2のスナップ部5を第1基板B1の支持穴H1に内挿して、スナップステム2を第1基板B1に支持させることにより、第2基板B2を第1基板B1に支持させる。この工程によれば、スナップステム2、防振ゴム3、係止ブッシュ4及び第2基板B2をサブアッセンブリしておけば、自動機等によりスナップステム2のスナップ部6を第1基板B1の支持穴H1に内挿し、第2基板B2を第1基B1に対して防振支持させることが可能であり、作業性が改善される。
【0029】
なお、この防振構造をリユースのために分解するときには、プライヤー等の治具でステム係止爪54を摘んで縮径させることにより、係止ブッシュ4をスナップステム2から取り出し、さらに防振ゴム3をスナップステム2から引き出すことにより回路基板B2を取り外すことができる。また、スナップ部6の解除片66を両側から摘むと、連結部63を介してスナップ係止爪62が縮径されるので、スナップ部6をシャーシB1の支持穴H1から抜き出すことができ、スナップステム2をシャーシB1から取り外すことができる。
【0030】
(実施形態2)
図5は実施形態2の防振支持具におけるスナップステム2Aの斜視図である。また、
図6はこのスナップステム2Aの、(a)正面図と(b)右側面図である。この実施形態2では、スナップステム2Aの構成が実施形態1とは相違しており、その他の構成、特に
図5と
図6には表れていない防振ゴム3と係止ブッシュ4は一部を除いて実施形態1と同じであるので等価な部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0031】
実施形態2におけるスナップステム2Aは、ステム部5が細片状をした一対の(2つの)ステム片56で構成されており、両ステム片56はフランジ53の上面から所要の対向間隔を持って平行に延長配置されている。各ステム片56の上端部はそれぞれ操作片部57として構成されるとともに、これら操作片部57の下部位置には外側に向けてフック状をしたステム係止爪54が突出形成されている。また、各ステム片56の下端部と、これらステム片56の下端部で挟まれる位置の両側にはそれぞれ凸部58が形成されている。これら4つの凸部58は、実施形態1におけるリブ52と等価であり、これら凸部58の外縁を結んで構成される仮想円の直径は、防振ゴム3の軸穴31の内径寸法に略等しくされている。
【0032】
実施形態2では対向配置されている一対のステム片56の対向方向の外形寸法が実施形態1のステム51の外形寸法よりも大きくされているので、これに対応して防振ゴム3の軸穴31と係止ブッシュ4の中心穴42のそれぞれの内径寸法は実施形態1よりも大径にされている。
【0033】
実施形態2の防振支持具で回路基板を防振支持する工程はほぼ実施形態1と同様であり、
図7に一部を破断した正面図を示す。
図7(a)のように、スナップステム2Aのスナップ部6がシャーシB1の支持穴H1に嵌合されることにより、スナップステム2AはシャーシB1の上面に立設される。防振ゴム3はスナップステム2Aのステム部5に挿通されてフランジ53上に支持される。その上で、係止ブッシュ4がステム部5に挿通される。係止ブッシュ4が挿通されるときには、一対のステム片56が互いに接近する方向に弾性変形される。
【0034】
そして、
図7(b)のように、各ステム片56のステム係止爪54が係止ブッシュ4の中心穴42を挿通され、ステム係止爪54が中心穴42の縁部に係止されることにより係止ブッシュ4がステム片56に係止され、防振ゴム3がステム部5に支持される。これにより、実施形態1と同様に回路基板B2がシャーシB1に防振支持される。この支持に際して、ステム部の4つの凸部58の外縁が防振ゴム3の軸穴31の内周面に当接され、スナップステム2Aに対する防振ゴム3の径方向のガタが防止されることは実施形態1と同様である。
【0035】
実施形態2においては、スナップステム2Aに係止ブッシュ4が係止される構成が実施形態1と相違するが、防振ゴム3による防振効果、並びにスナップステム2Aのスナップ部6における防振効果については実施形態1と同じである。すなわち、防振ゴム3による防振効果と、スナップ部6での弾性変形による防振効果が得られる。また、回路基板B2及び防振ゴム3をシャーシB1に取り付ける際には、スナップステム2AはシャーシB1の上面に立設されているので、防振ゴム3の中心穴31を通してスナップステム2Aを視認しながら位置合わせすることにより、容易に回路基板B2の取り付けが実現できることも実施形態1と同じである。
【0036】
この防振構造をリユースのために分解するときには、実施形態2では一対のステム片56の上端部が操作片部57として構成されているので、これらの操作片部57を作業者が指で摘んでステム片56の対向幅を縮幅させることによりステム係止爪54による係止ブッシュ4の係止を解除することができる。したがって、治具や工具を用いることなく係止ブッシュ4ないし防振ゴム3をスナップステム2Aから取り出すことができる。一対のステム片56は細片状であるので縮幅させるための力は少なくて済み、取り出し作業は極めて容易になる。
【0037】
この実施形態2においても、第1基板B1と第2基板B2との組み付けに際しては、第2基板B2に取り付けた防振ゴム3を先にスナップステム2Aのステム部5に挿通させ、係止ブッシュ4をステム部5に係止して第2基板B2をスナップステム2Aに支持させる。その上で、スナップステム2Aのスナップ部6を第1基板B1の支持穴H1に内挿して、スナップステム2Aを第1基板B1に支持させるようにしてもよい。このようによれば、実施形態1と同様に、自動機等による組み付けが可能であり、作業性が改善される。
【0038】
ここで、実施形態1,2における係止ブッシュ4は、
図8に示すように、係止解除カム44を備える係止ブッシュ4Aとして構成されてもよい。この例では、係止ブッシュ4Aの底面部45の上面に、中心穴42を径方向に挟んで一対の係止解除カム44が立設されている。各係止解除カム44の内周面は、周方向に沿って径方向の面位置が徐々に変化される螺旋状の曲面で形成されており、周方向の一端部は中心穴42の内縁に沿う面位置とされ、ここから
図8の反時計方向の他端部に向けて徐々に面位置が外径方向に変位される構成とされている。
【0039】
この係止ブッシュ4Aによれば、
図9(a)のように、係止解除カム44がステム係止爪54に干渉しないように係止ブッシュ4Aの回転位置を設定すれば、係止ブッシュ4Aをスナップステム2に挿通させたときに、ステム係止爪54を拡径させて係止ブッシュ4Aに係止させることができる。一方、係止ブッシュ4Aを取り外す際には、
図9(b)のように、係止ブッシュ4Aを細線矢印のように所要角度だけ反時計方向に回転させると、係止解除カム44の内周面がステム係止爪54に当接されてステム係止爪54を強制的に縮径させ、係止ブッシュ4Aとの係止を解除することができる。したがって、治具や工具を用いることなく係止ブッシュ4Aを太線矢印のように係止ブッシュ4A及び防振ゴム3を取り外すことができる。
【0040】
本発明の防振支持具において、図示は省略するが、スナップステム2,2Aのスナップ部6は、解除片66を備えていないスナップ構造としてもよい。すなわち、スナップ係止片62と弾接片65を備えるスナップ部として構成されてもよい。この場合においても弾接片65での弾性変形により防振効果を得ることができる。解除片66を備えないことによりスナップ部の高さ寸法を低減することができる。
【0041】
本発明の実施形態においては、スナップステム2,2Aのステム部5とスナップ部6との境界位置にフランジ53を備え、このフランジ53で防振ゴム3の一方の端面を支承している。これにより、特許文献1のように防振グロメットが直接第1基板に接することはなく、防振ゴム3と第1基板B1との間に任意のスペース(間隔寸法)を確保することができる。したがって、フランジ53の位置を任意に設定することにより、第1基板B1と第2基板B2とを任意の間隔寸法で支持するスペーサとして有効利用できる。
【0042】
本発明は、一方の基板から他方の基板への振動の伝達を防止する防止構造を構成するために用いられる防止支持具であれば、本発明における第1基板と第2基板は、実施形態に記載のシャーシと回路基板に限られるものではない。すなわち、実施形態では第1基板から第2基板への振動の伝達を防止する例について説明したが、第2基板から第1基板への振動の伝達を防止する構成であってもよい。また、本発明における第1基板と第2基板は必ずしも全体が基板として構成されているものに限られるものではなく、特に、第2基板は各種電子部品、例えば振動を発生するスピーカやモータ等の一部に設けられている板状部位で構成されるものであってもよい。また、防振グロメットは実施形態に記載の防振ゴムに限られるものではなく、防振効果のある柔軟な素材で構成されていればよい。
【符号の説明】
【0043】
1,1A 防振支持具
2,2A スナップステム
3 防振ゴム(防振グロメット)
4,4A 係止ブッシュ
5 ステム部
6 スナップ部
31 軸穴
33 凸部
42 中心穴
43 スリーブ
44 係止解除カム
51 ステム
52 リブ
53 フランジ
54 ステム係止爪
56 ステム片
57 操作片部
58 凸部
62 スナップ係止爪
65 弾接片
66 解除片
B1 シャーシ(第1基板)
B2 回路基板(第2基板)
H1,H2 支持穴