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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093216
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/02 20060101AFI20240702BHJP
   H04R 1/46 20060101ALI20240702BHJP
   H04R 1/28 20060101ALI20240702BHJP
   A61B 7/04 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H04R17/02
H04R1/46
H04R1/28 320Z
A61B7/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209443
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武島 儀忠
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
(72)【発明者】
【氏名】香川 真哉
【テーマコード(参考)】
5D004
5D017
【Fターム(参考)】
5D004AA02
5D004DD03
5D004FF08
5D017BF02
(57)【要約】
【課題】ピエゾ素子により音が採取される場合であっても、ピークディップの発生を防止すること。
【解決手段】聴診器1は、ピエゾ素子3bと、ピエゾ素子3bの少なくとも一部に接触するダンピング材7と、を備える。ダンピング材7は、複数であり、ピエゾ素子3bの複数箇所に接触する。ピエゾ素子3bは、扁平な略円盤形状である。ダンピング材7は、ピエゾ素子3bの中心に対して、非対称な位置に配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピエゾ素子と、
前記ピエゾ素子の少なくとも一部に接触する制振材と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記制振材は、複数であり、前記ピエゾ素子の複数箇所に接触することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制振材は、複数であり、前記ピエゾ素子のいずれか一方の面側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制振材は、複数であり、
少なくとも複数の前記制振材の一部において、前記複数の制振材の前記ピエゾ素子への接触面積は、互いに異なっていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制振材は、複数であり、
少なくとも複数の前記制振材の一部において、前記ピエゾ素子のいずれか一方の面側に隣り合う前記制振材の距離が異なるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記制振材は、複数であり、前記ピエゾ素子のいずれか一方の面側に規則性なく不規則に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記ピエゾ素子は、扁平な略円盤形状であり、
前記制振材は、複数であり、前記ピエゾ素子のいずれか一方の面側に、前記ピエゾ素子の中心に対して、非対称な位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記制振材は、前記ピエゾ素子の所定領域にわたって接触することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
前記制振材は、前記ピエゾ素子の所定領域を覆うように、前記ピエゾ素子のいずれか一方の面側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項10】
前記制振材に孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項11】
前記孔は、複数であることを特徴とする請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
複数の前記孔の少なくとも一部において、前記複数の孔の大きさは、互いに異なることを特徴とする請求項11に記載の電子機器。
【請求項13】
複数の前記孔の大きさは、同一であり、
前記複数の孔は、規則性なく不規則に設けられていることを特徴とする請求項11に記載の電子機器。
【請求項14】
前記孔が延びる方向に対する幅は、一定ではないことを特徴とする請求項10に記載の電子機器。
【請求項15】
前記制振材は、扁平な略円盤形状であり、
前記制振材の中心に対して、非対称な位置に、複数の孔が前記制振材に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項16】
前記孔は、前記孔の内側に突出する複数の凸部、及び、前記孔の外側に後退する複数の凹部を有し、
前記複数の凸部及び凹部は、不均一であることを特徴とする請求項10に記載の電子機器。
【請求項17】
前記制振材は、前記ピエゾ素子の側面に接触することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項18】
前記制振材は、前記ピエゾ素子の側面を取り囲んでおり、
前記制振材には、外側から中心方向に突出する複数の凸部、及び、中心方向から外側に後退する複数の凹部が設けられていることを特徴とする請求項17に記載の電子機器。
【請求項19】
前記複数の凸部及び凹部は、不均一であることを特徴とする請求項18に記載の電子機器。
【請求項20】
前記制振材は、所定の質量を有することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項21】
前記制振材は、所定の面積で、前記ピエゾ素子に接触することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項22】
前記ピエゾ素子が取り付けられる被固定部材と、
前記ピエゾ素子を保持し、前記被固定部材に固定する保持部材と、をさらに備え、
前記制振材は、前記保持部材の一部であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項23】
前記制振材は、前記ピエゾ素子のいずれか一方の面側に配置されており、
前記制振材の前記ピエゾ素子側に、不均一な凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項24】
聴診器であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
聴診器の中には、マイク等のセンサーにより電子的に心音等の音を採取し、採取した音を増幅し、増幅した音を医師等に聴取させる、いわゆる電子聴診器と呼ばれるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上述した電子聴診器には、心音等の採取のために、ピエゾ(圧電)素子が用いられる場合がある。図13は、従来の電子聴診器101の一例を示す図である。図13において、電子聴診器101は、ピエゾ素子103a、103bを覆う筐体が省かれて図示されている。図14(a)は、ピエゾ素子103a等を示す図である。図14(b)は、ピエゾ素子103bを示す図である。電子聴診器101は、ピエゾ素子103a、103b側を身体等に接触させて、使用される。
【0004】
図示するように、ピエゾ素子103aにおいては、ピエゾ素子103aの外縁(外周)が、ネジ105により、等間隔に8箇所で、ピエゾホルダー104aに固定されている。また、ピエゾ素子103bにおいては、ピエゾ素子103bの外縁(外周)全体(全周)が、ピエゾホルダー104bに固定されており、ネジが用いられていない構造が特徴となっている。
【0005】
このように、従来の電子聴診器101では、ピエゾ素子103aの外縁の複数箇所、又は、ピエゾ素子103bの外縁全体を固定することで、感度の向上が図られている。図15は、従来の電子聴診器101によって採取された聴診音を示すグラフである。横軸は、周波数[Hz]、縦軸は、レベル[dBmV]を示している。ピエゾ素子の外縁の複数箇所、又は外縁全体が固定されることで、図15に示すように、周波数に急峻なピークディップ(破線で囲われた箇所)が発生している。これにより、不要な音が目立つことになる。また、聴感的に、急峻なピークは、避けたいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-242849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、ピエゾ素子により音が採取された場合、ピークディップが発生するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ピエゾ素子により音が採取される場合であっても、ピークディップの発生を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明の電子機器は、ピエゾ素子と、前記ピエゾ素子の少なくとも一部に接触する制振材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明では、電子機器は、ピエゾ素子の少なくとも一部に接触する制振材を備える。この制振材により、ピエゾ素子の振動が抑制され、共振が起こりにくくなる。これにより、ピエゾ素子により採取された音において、ピークディップの発生が防止される。
【0011】
第2の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記制振材は、複数であり、前記ピエゾ素子の複数箇所に接触することを特徴とする。
【0012】
第3の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記制振材は、複数であり、前記ピエゾ素子のいずれか一方の面側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明の電子機器は、第2又は第3の発明の電子機器において、前記制振材は、複数であり、少なくとも複数の前記制振材の一部において、前記複数の制振材の前記ピエゾ素子への接触面積は、互いに異なっていることを特徴とする。
【0014】
第5の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記制振材は、複数であり、少なくとも複数の前記制振材の一部において、前記ピエゾ素子のいずれか一方の面側に隣り合う前記制振材の距離が異なるように配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明では、複数の制振材は、ピエゾ素子のいずれか一方の面に隣り合う制振材の距離が異なるように配置され、ピエゾ素子にアンバランスに接触する。これにより、共振の発生の防止効果が高くなる。
【0016】
第6の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記制振材は、複数であり、前記ピエゾ素子のいずれか一方の面側に規則性なく不規則に配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明では、複数の制振材は、ピエゾ素子のいずれか一方の面に規則性なく不規則に配置され、ピエゾ素子に不規則に接触する。これにより、共振の発生の防止効果が高くなる。
【0018】
第7の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記ピエゾ素子は、扁平な略円盤形状であり、前記制振材は、複数であり、前記ピエゾ素子のいずれか一方の面側に、前記ピエゾ素子の中心に対して、非対称な位置に配置されていることを特徴とする。
【0019】
本発明では、複数の制振材は、ピエゾ素子のいずれか一方の面側に、ピエゾ素子の中心に対して、非対称な位置に配置されている。これにより、共振の発生の防止効果が高くなる。
【0020】
第8の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記制振材は、前記ピエゾ素子の所定領域にわたって接触することを特徴とする。
【0021】
本発明では、制振材は、ピエゾ素子の所定領域にわたって接触する。すなわち、ある程度の大きさの制振材により、質量が大きくなるため、共振の発生の防止効果が高くなる。
【0022】
第9の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記制振材は、前記ピエゾ素子の所定領域を覆うように、前記ピエゾ素子のいずれか一方の面側に配置されていることを特徴とする。
【0023】
第10の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記制振材に孔が設けられていることを特徴とする。
【0024】
第11の発明の電子機器は、第10の発明の電子機器において、前記孔は、複数であることを特徴とする。
【0025】
第12の発明の電子機器は、第11の発明の電子機器において、複数の前記孔の少なくとも一部において、前記複数の孔の大きさは、互いに異なることを特徴とする。
【0026】
第13の発明の電子機器は、第11の発明の電子機器において、複数の前記孔の大きさは、同一であり、前記複数の孔は、規則性なく不規則に設けられていることを特徴とする。
【0027】
本発明では、制振材に設けられた複数の孔は、規則性なく不規則に設けられている。これにより、共振の発生の防止効果が高くなる。
【0028】
第14の発明の電子機器は、第10の発明の電子機器において、前記孔が延びる方向に対する幅は、一定ではないことを特徴とする。
【0029】
第15の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記制振材は、扁平な略円盤形状であり、前記制振材の中心に対して、非対称な位置に、複数の孔が前記制振材に設けられていることを特徴とする。
【0030】
第16の発明の電子機器は、第10の発明の電子機器において、前記孔は、前記孔の内側に突出する複数の凸部、及び、前記孔の外側に後退する複数の凹部を有し、前記複数の凸部及び凹部は、不均一であることを特徴とする。
【0031】
第17の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記制振材は、前記ピエゾ素子の側面に接触することを特徴とする。
【0032】
第18の発明の電子機器は、第17の発明の電子機器において、前記制振材は、前記ピエゾ素子の側面を取り囲んでおり、前記制振材には、外側から中心方向に突出する複数の凸部、及び、中心方向から外側に後退する複数の凹部が設けられていることを特徴とする。
【0033】
第19の発明の電子機器は、第18の発明の電子機器において、前記複数の凸部及び凹部は、不均一であることを特徴とする。
【0034】
第20の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記制振材は、所定の質量を有することを特徴とする。
【0035】
本発明では、制振材は、所定の質量を有する。従って、適切な質量に設定することにより、共振の発生の防止効果が高くなる。
【0036】
第21の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記制振材は、所定の面積で、前記ピエゾ素子に接触することを特徴とする。
【0037】
本発明では、制振材は、所定の面積で、ピエゾ素子に接触する。従って、接触面積を適切に設定することにより、共振の発生の防止効果が高くなる。
【0038】
第22の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記ピエゾ素子が取り付けられる被固定部材と、前記ピエゾ素子を保持し、前記被固定部材に固定する保持部材と、をさらに備え、前記制振材は、前記保持部材の一部であることを特徴とする。
【0039】
本発明では、制振材は、ピエゾ素子を保持し、被固定部材に固定する保持部材の一部である。このため、新たに制振材を設ける必要がないため、構成が簡易になる。
【0040】
第23の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、前記制振材は、前記ピエゾ素子のいずれか一方の面側に配置されており、前記制振材の前記ピエゾ素子側に、不均一な凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0041】
第24の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、聴診器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、ピエゾ素子により採取された音において、ピークディップの発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の実施形態に係る聴診器を示す斜視図である。
図2】(a)は、ピエゾ素子等の断面を示す図である。(b)は、図2(a)における破線部Aの拡大図である。
図3】一実施例のピエゾ素子、ダンピング材等を示す図である(実施例1)。
図4】一実施例のピエゾ素子、ダンピング材等を示す図である(実施例2)。
図5】(a)は、規則性について説明するための図である。(b)は、不規則であることについて説明するための図である。
図6】一実施例のピエゾ素子、ダンピング材等を示す図である(実施例3)。
図7】一実施例のダンピング材を示す図である(実施例4)。
図8】一実施例のダンピング材を示す図である(実施例5)。
図9】一実施例の保持部材の底面に設けられる孔の形状を示す図である(実施例6)。
図10】(a)は、一実施例のホルダーを示す図である。(b)は、図10(a)におけるB-B線断面図である。(c)は、図10(b)における破線部Cの拡大図である。(実施例7)
図11】ピエゾ素子によって採取された音を示す図である。
図12】ピエゾ素子によって採取された音を示す図である。
図13】従来の電子聴診器の一例を示す図である。
図14】ピエゾ素子等を示す図である。
図15】従来の電子聴診器によって採取された聴診音を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る聴診器1(電子機器)を示す斜視図である。以下では、ピエゾ素子3a、3bが設けられ、聴診対象に接触する接触面側を正面、正面と反対側を背面として説明する。聴診器1の使用者は、聴診器1の背面側から、聴診器1を手で握って、聴診器1の正面側を聴診対象に当てて、使用する。
【0045】
聴診器1は、正面視、略砂時計形状である。聴診器1は、筐体2と、ピエゾ(圧電)素子3a、3bと、ホルダー4a、4bと、等を備える。筐体2は、内部に、基板、バッテリー等を収容する。本実施形態では、筐体2の正面側に、2つのピエゾ素子3a、3bが設けられている。なお、本実施形態では、2つのピエゾ素子3a、3bが設けられているが、ピエゾ素子3a、3bの数は、2つに限られず、1つ、3つ以上であってもよい。ピエゾ素子3は、扁平な略円盤形状である。ピエゾ素子3a、3bは、ホルダー4a、4b(被固定部材)に取り付けられている。
【0046】
ピエゾ素子3aは、ネジ5(固定部材)によって、ホルダー4aに8箇所(複数箇所)で固定されている。具体的には、ネジ5は、ピエゾ素子3の外縁(外周)を8箇所でホルダー4aに固定している。ネジ5でホルダー4aに固定している箇所は、等間隔、すなわち、ピエゾ素子3aの中心から45度間隔となっている。ホルダー4aには、ネジ5に対応したネジ孔が設けられている。
【0047】
図2(a)は、ピエゾ素子3b等の断面を示す図である。図2(b)は、図2(a)における破線部Aの拡大図である。ピエゾ素子3bは、保持リング6(固定部材、保持部材)によって、ホルダー4bに固定されている。具体的には、ピエゾ素子3bは、ピエゾ素子3bの外縁(外周)全体(全周)にわたってホルダー4bに固定されている。保持リング6は、ピエゾ素子3bの外縁(外周)を挟んで保持している。具体的には、保持リング6の内側から、保持リング6の径方向外側に後退した保持凹部6aが、ピエゾ素子3bの外縁(外周)を挟んで保持している。また、保持リング6の外側には、保持リング6の径方向外側に突出した係合凸部6bが設けられている。さらに、ホルダー4bには、保持リング6の係合凸部6bに対応した形状の係合凹部4baが設けられている。保持リング6の係合凸部6bと、ホルダー4bの係合凹部4baとが係合することで、保持リング6に保持されたピエゾ素子3bは、ホルダー4bに固定される。このように、ピエゾ素子3bを挟んで保持することで、ネジを用いる必要がないため、表面にネジが表出しない構造となる。なお、保持凹部6a上方のピエゾ素子3bを保持する上部保持片6aaと、保持凹部6a下方のピエゾ素子3bを保持する下部保持片6abとによって、保持凹部6aが形成される。
【0048】
また、ピエゾ素子3bの背面側には、樹脂板9が設けられている。ピエゾ素子3bと樹脂板9とによって、空間8が形成される。言い換えれば、ピエゾ素子3bと樹脂板9との間には、所定の距離がある。
【0049】
なお、本実施形態では、ネジ5によって、ピエゾ素子3aは、ホルダー4aに8箇所で固定されているが、固定箇所は、2箇所~7箇所、9箇所以上であってもよい。また、図1においては、2つのピエゾ素子3a、3bが、それぞれ、ホルダー4a、4bに対して固定される態様が異なっているが、これは、バリエーションを例示するためであり、ピエゾ素子3a、3bは、それぞれ、ホルダー4a、4bに対して、同じ態様で固定されてもよい。
【0050】
聴診器1は、さらに、ダンピング材(制振材)を備えている。ダンピング材の材質は、例えば、ゴム、樹脂、金属等であり、場合によって、これらから選択することができる。なお、図1及び図2においては、ダンピング材は、示されていない。
【0051】
(実施例1)
図3は、一実施例のピエゾ素子3b、ダンピング材7等を示す図である。ダンピング材7は、ピエゾ素子3bの少なくとも一部に接触する。図3においては、ダンピング材7は、2つ以上(複数)であり、ピエゾ素子3bの2箇所以上(複数箇所)に接触する。なお、図面上は、2つのダンピング材7が示されているが、2つ以上のダンピング材7が、設けられており、ピエゾ素子3bの2箇所以上に接触している。聴診器1の接触面側をピエゾ素子3bの表面側とすると、ダンピング材7は、ピエゾ素子3bの裏面側に配置されている。ダンピング材7は、ピエゾ素子3bと樹脂板9とによって形成された空間8に設けられている。以下に説明する実施例でも同様である。
【0052】
ダンピング材7は、扁平な略円盤形状であるピエゾ素子3bの中心に対して、非対称な位置に配置されている。例えば、ダンピング材7は、ピエゾ素子3bの中心を通る線分に対して、線対称な位置にはなく、中心に対して、非対称に配置されている。また、ダンピング材7は、ピエゾ素子3bの中心に対して、点対称な位置になく、中心に対して、非対称に配置されている。ダンピング材7は、扁平な略円盤形状である。2つ以上のダンピング材7の表面(裏面)の面積は、互いに異なっている。このため、2つ以上のダンピング材7のピエゾ素子3bへの接触面積は、異なっている。
【0053】
なお、ダンピング材7は、常に、ピエゾ素子3bに接触している必要はなく、例えば、聴診器1の使用時に、ダンピング材7が、ピエゾ素子3bに接触するようになっていてもよい。例えば、聴診器1の使用状態において、ピエゾ素子が、身体に押し付けられることにより、ピエゾ素子3bは、裏面側に撓むが、このときに、ピエゾ素子3bとダンピング材7とが接触するようになっていてもよい。すなわち、ダンピング材7は、ピエゾ素子3bとの間に、若干の隙間を隔てて、設けられていてもよい。もちろん、ダンピング材7は、ピエゾ素子3bに接触して設けられていてもよい。以下に説明する実施例でも同様である。
【0054】
ここで、ダンピング材7が設けられる一つの目的(目的1)は、ピエゾ素子3bの振動を抑制するためである。加えて、実施例1では、ダンピング材7は、扁平な略円盤形状であるピエゾ素子3bの中心に対して、非対称な位置に配置されることによって、ピエゾ素子3bにおける共振を分散させ、共振を抑制する効果が奏されている(目的2)。非対称な位置にダンピング材7が配置されることによって、バランスが崩れ、共振が分散され、共振が抑制されるのである。以下で説明する実施例においても、実施例3を除き、この目的1及び2を達成するために、ダンピング材が設けられている。
【0055】
(実施例2)
図4は、一実施例のピエゾ素子3b、ダンピング材47等を示す図である。図4に示すように、複数のダンピング材47は、ピエゾ素子3bの裏面側に、隣り合うダンピング材47の距離が異なるように配置されている。ダンピング材47は、扁平な略円盤形状である。複数のダンピング材47の表面(裏面)の面積は、互いに同一である。このため、複数のダンピング材47のピエゾ素子3bへの接触面積は、同一である。
【0056】
なお、図4においては、複数のダンピング材47全てにおいて、隣り合うダンピング材47の距離が異なるように、ダンピング材47が配置されている。これに限らず、少なくとも複数のダンピング材47の一部において、隣り合うダンピング材47の距離が異なるように、ダンピング材47が配置されていてもよい。この場合でも、共振分散の効果は、得られるためである。また、少なくとも複数のダンピング材47の一部において、複数のダンピング材47の表面(裏面)の面積は、互いに異なっていてもよい。この場合、少なくとも複数のダンピング材47の一部において、複数のダンピング材47のピエゾ素子3bへの接触面積は、互いに異なることになる。これによっても、共振分散の効果は、得られる。
【0057】
ここで、図5(a)においては、複数の円において、隣り合う円の中心間の距離dが、一定となるように、円が配置されている。言い換えれば、複数の円において、隣り合う円の中心の距離dは、全て同じであり、複数の円は、一定の間隔dで配置されている。一方で、図5(b)においては、複数の円において、左右方向の隣り合う円の中心の距離dは、互いに異なっている。上下方向も同様である。共振分散の効果を得るためには、図5(b)に示されているように、ダンピング材は、隣り合う距離が異なるように、配置されていることがよい。ここで、本明細書及び特許請求の範囲では、図5(a)に示されているように、共振分散の効果が得られにくい、複数のものが一定の間隔で配置されている態様を、「規則性がある」と言い、図5(b)に示されているように、複数のものが一定の間隔でなく配置されている態様を、「規則性がない(不規則である)」という場合がある。従って、図4に示す実施例2においては、複数のダンピング材47は、ピエゾ素子3bの裏面側に規則性なく不規則に配置されているとも言える。
【0058】
図4においては、表面(裏面)の面積が同一である複数のダンピング材47が、隣り合うダンピング材47の距離が異なるように、配置されている。これに限らず、例えば、表面(裏面)の面積が異なる複数のダンピング材が、隣り合うダンピング材の距離が同一となるように、配置されていてもよい。この場合であっても、バランスが崩れるため、共振分散の効果は、得られる。
【0059】
(実施例3)
図6は、一実施例のピエゾ素子3b、ダンピング材17等を示す図である。図6においては、ダンピング材17は、1つであり、ピエゾ素子3bの所定領域にわたって接触する。ダンピング材17は、ピエゾ素子の所定領域を覆うように、ピエゾ素子3bの裏面側に配置されている。ダンピング材17は、扁平な略円盤形状である。
【0060】
(実施例4)
図7は、一実施例のダンピング材27を示す図である。ダンピング材27は、扁平な略円盤形状である。ダンピング材27には、一つの孔27aが設けられている。孔27aは、一つであり、孔27aが延びる方向に対する幅Wは、一定ではない。
【0061】
(実施例5)
図8は、一実施例のダンピング材37を示す図である。ダンピング材37は、扁平な略円盤形状である。ダンピング材37には、孔37aが設けられている。孔37aは、複数であり、複数の孔37aの大きさは、同一である。複数の孔37aは、規則性なく不規則に設けられている。
【0062】
ここで、図2(b)に示すように、保持凹部6a下方のピエゾ素子3bを保持(支持)する下部保持片6abは、中心方向に所定量突出しているが、下部保持片6abの内側は、空間8となっている。すなわち、保持リング6は、リング状であり、底面が中空となっている。これに限らず、ピエゾ素子3bを保持する保持部材は、底面が中空となっておらず(リング状ではなく)、底面を有していてもよい。すなわち、保持リング6に底面を付け加えた構成の保持部材であってもよい。この場合、保持部材の底面は、ピエゾ素子3bに接触することになる。この保持部材の底面に、図7又は図8に示す孔が設けられていてもよい。言い換えれば、保持リング6の底面に、図7に示すダンピング材27又は図8に示すダンピング材37が設けられ、保持リング6とダンピング材27又は37とが一体化された構成であってもよい。この場合、ダンピング材は、保持部材の一部となる。
【0063】
(実施例7)
図9は、一実施例の保持部材の底面に設けられる孔57aの形状を示す図である。孔57aは、孔57aの内側に突出する複数の凸部、及び、孔57aの外側に後退する複数の凹部を有している。孔57は、不均一な複数の凹凸を有する形状である。具体的には、孔57は、連続した、不均一な複数の凹凸を有している。
【0064】
複数の凸部及び凹部において、突出量、後退量、及び幅が、それぞれ、互いに異なっており、複数の凸部及び凹部は、均一ではなく、不均一となっている。具体的には、以下の少なくともいずれか1つの構成が設けられ、複数の凸部及び凹部が、不均一となっていればよい。
(1)複数の凸部の少なくとも一部において、複数の凸部の突出量は、互いに異なっている。
(2)複数の凸部の少なくとも一部において、複数の凸部の幅は、互いに異なっている。(3)複数の凹部の少なくとも一部において、複数の凹部の後退量は、互いに異なっている。
(4)複数の凹部の少なくとも一部において、複数の凹部の幅は、互いに異なっている。
(5)複数の凹部及び前記複数の凸部の少なくとも一部において、凸部の突出量と凹部の後退量とは、互いに異なっている。
(6)複数の凹部及び前記複数の凸部の少なくとも一部において、凸部の幅と凹部の幅とは、互いに異なっている。
【0065】
(実施例7)
図10(a)は、一実施例のホルダー4bを示す図である。図10(b)は、図10(a)におけるB-B線断面図である。図10(c)は、図10(b)における破線部拡大図である。本実施例では、保持リング16が、他の実施例におけるダンピング材の機能を果たす。上述したように、保持リング16は、ピエゾ素子3bの外縁(外周)を挟んで保持している。従って、保持リング16は、ピエゾ素子3bの側面を取り囲んでいる。ここで、保持リング16には、外側から中心方向に突出する複数の凸部、及び、中心方向から外側に後退する複数の凹部が設けられている。具体的には、保持リング16の内周側に、凹凸が連続して設けられている。
【0066】
保持リング16に設けられた、複数の凸部及び凹部において、突出量、後退量、及び幅が、それぞれ、互いに異なっており、複数の凸部及び凹部は、均一ではなく、不均一となっている。具体的には、以下の少なくともいずれか1つの構成が設けられ、複数の凸部及び凹部が、不均一となっていればよい。
(1)複数の凸部の少なくとも一部において、複数の凸部の突出量は、互いに異なっている。
(2)複数の凸部の少なくとも一部において、複数の凸部の幅は、互いに異なっている。(3)複数の凹部の少なくとも一部において、複数の凹部の後退量は、互いに異なっている。
(4)複数の凹部の少なくとも一部において、複数の凹部の幅は、互いに異なっている。
(5)複数の凹部及び前記複数の凸部の少なくとも一部において、凸部の突出量と凹部の後退量とは、互いに異なっている。
(6)複数の凹部及び前記複数の凸部の少なくとも一部において、凸部の幅と凹部の幅とは、互いに異なっている。
【0067】
図11は、実施例2のように、複数のダンピング材が、不規則に配置された場合にピエゾ素子のよって採取された音を示すグラフである。図12は、実施例3のように、1つのダンピング材が、ピエゾ素子の所定領域を覆うように配置された場合にピエゾ素子によって採取された音を示すグラフである。複数のダンピング材が不規則に配置されることで、図11に示すように、図15に示す従来例に比べて、ピークが緩和している(矢印で示す箇所)。また、質量の大きいダンピング材が配置されることで、図12に示すように、図11に示す例にくらべて、さらにピークディップが緩和している(矢印で示す箇所)。
【0068】
ここで、ダンピング材は、所定の質量を有するように設定される。ダンピング材の質量は、ある程度の大きさがあれば、ピエゾ素子の共振の発生防止効果が得られる。ただし、質量が大きすぎると、不自然になるため、聴感を含め、設定される。また、ダンピング材は、所定の面積で、ピエゾ素子に接触するように設定される。接触面積は、ある程度の大きさがあれば、ピエゾ素子の共振の発生防止効果が得られる。ただし、接触面積が大きすぎると、不自然になるため、聴感を含め、設定される。また、ダンピング材は、密度が高く、かつ、低反発のものが、共振防止効果が高い。
【0069】
なお、上述の実施例では、ダンピング材は、ピエゾ素子の裏面側に配置されているが、表面側に配置されていてもよい。また、ピエゾ素子の形状は、扁平な略円盤形状に限られず、例えば、扁平な多角形の柱状であってもよい。また、ピエゾ素子の形状は、扁平な略円盤形状に限られず、例えば、扁平な多角形の柱状であってもよい。
【0070】
また、ダンピング材は、ピエゾ素子のいずれか一方の面側(例えば、裏面側)に配置されており、ダンピング材のピエゾ素子側(表面側)に、不均一な凹凸が形成されていてもよい。ここで、不均一な凹凸とは、例えば、多角形状の凸部と、凸部によって、凸部の内部に形成される、多角形状の凹部と、が複数形成され、複数の凸部において、隣接する凸部の一辺が、双方の多角形を形成する一部であり、複数の多角形状の凸部及び凹部における多角形は、異なる多角形を含んでいる構成である。例えば、不均一な凹凸は、出願人の出願である特開2020-036240号公報の図3(b)に示されている形状である。
【0071】
以上説明したように、上述の実施例では、聴診器は、ピエゾ素子の少なくとも一部に接触するダンピング材を備える。このダンピング材により、ピエゾ素子の振動が抑制され、共振が起こりにくくなる。これにより、ピエゾ素子により採取された音において、ピークディップの発生が防止される。
【0072】
また、上述の実施例では、複数のダンピング材は、ピエゾ素子のいずれか一方の面に隣り合う制振材の距離が異なるように配置され、ピエゾ素子にアンバランスに接触する。これにより、共振の発生の防止効果が高くなる。
【0073】
また、上述の実施例では、複数のダンピング材は、ピエゾ素子のいずれか一方の面に規則性なく不規則に配置され、ピエゾ素子に不規則に接触する。これにより、共振の発生の防止効果が高くなる。
【0074】
また、上述の実施例では、複数のダンピング材は、ピエゾ素子のいずれか一方の面側に、ピエゾ素子の中心に対して、非対称な位置に配置されている。これにより、共振の発生の防止効果が高くなる。
【0075】
また、上述の実施例では、ダンピング材は、ピエゾ素子の所定領域にわたって接触する。すなわち、ある程度の大きさのダンピング材により、質量が大きくなるため、共振の発生の防止効果が高くなる。
【0076】
また、上述の実施例では、ダンピング材に設けられた複数の孔は、規則性なく不規則に設けられている。これにより、共振の発生の防止効果が高くなる。
【0077】
また、上述の実施例では、ダンピング材は、ピエゾ素子を保持し、ホルダーに固定する保持部材の一部である。このため、新たにダンピング材を設ける必要がないため、構成が簡易になる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、電子機器に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0080】
1 聴診器(電子機器)
2 筐体
3a、3b ピエゾ素子
4a、4b ホルダー(被固定部材)
5 ネジ(固定部材)
6 保持リング(固定部材、保持部材)
16 保持リング(固定部材、保持部材、制振材)
7、17、27、37、47 ダンピング材(制振材)
8 空間
9 樹脂板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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