(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093222
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】人流分析装置、プログラムおよび人流分析方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0201 20230101AFI20240702BHJP
【FI】
G06Q30/0201
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209452
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 和浩
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB01
5L049BB01
(57)【要約】
【課題】複数フロアを備える施設に来た顧客の顧客情報の分析を可能とする。
【解決手段】人流分析装置100は、施設が備える複数のフロアそれぞれに顧客が滞在したことを示す複数の滞在情報、および、複数のフロアの滞在情報の何れかに含まれる同一の顧客を示す同定情報を基に、顧客の行動に関する行動属性情報を算出する分析部113を備える。行動属性情報は、買物目的、および、利用フロアのうち少なくとも1つを含んでもよく、買物目的は、買い回り、または、目的買いを含んでもよい。また人流分析装置100は、複数のフロアに滞在する顧客の性別、年代、服装、服色の何れかを基に同定情報を算出する同定部112をさらに備えてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設が備える複数のフロアそれぞれに顧客が滞在したことを示す複数の滞在情報、および、前記複数のフロアの滞在情報の何れかに含まれる同一の顧客を示す同定情報を基に、前記顧客の行動に関する行動属性情報を算出する分析部を備える
人流分析装置。
【請求項2】
前記行動属性情報は、買物目的、および、利用フロアのうち少なくとも1つを含み、
前記買物目的は、買い回り、または、目的買いを含む
請求項1に記載の人流分析装置。
【請求項3】
前記滞在情報は、前記顧客が滞在したフロア、当該フロアに当該顧客が滞在した時間である滞在時間、当該フロアに当該顧客が流入した流入時刻、および、当該フロアから当該顧客が流出した流出時刻のうち少なくとも1つを含む
請求項2に記載の人流分析装置。
【請求項4】
前記滞在時間が所定時間以下であるフロアは利用フロアとしない
請求項3に記載の人流分析装置。
【請求項5】
前記分析部は、
前記顧客の滞在時間が所定時間以上であるフロアである利用フロアが1つであれば、当該顧客の買物目的を目的買いとする
請求項3に記載の人流分析装置。
【請求項6】
前記分析部は、
前記顧客の滞在時間が所定時間以上であるフロアである利用フロアが複数であれば、当該顧客の買物目的を買い回りとする
請求項3に記載の人流分析装置。
【請求項7】
前記分析部は、
前記顧客の滞在時間が所定時間以上であるフロアである利用フロアの数別の顧客数を示す画面を出力する
請求項3に記載の人流分析装置。
【請求項8】
前記分析部は、
前記利用フロアの組合せ別の顧客数を示す画面を出力する
請求項3に記載の人流分析装置。
【請求項9】
前記分析部は、
指定されたフロアを利用フロアとする顧客について、他の利用フロア別の顧客数を示す画面を出力する
請求項3に記載の人流分析装置。
【請求項10】
前記分析部はさらに、性別、年代、嗜好、家族連れ、カップル、グループのうち少なくとも1つを含む顧客属性情報を算出する
請求項1または2に記載の人流分析装置。
【請求項11】
前記複数のフロアに滞在する顧客の、性別、年代、服装、服色、帽子の有無、メガネの有無、カバンの有無の何れかを基に前記同定情報を算出する同定部をさらに備える
請求項1に記載の人流分析装置。
【請求項12】
前記同定部は、各前記フロアに設置された撮影装置で前記顧客を撮影した撮影画像に基づき、前記同定情報を算出する
請求項11に記載の人流分析装置。
【請求項13】
前記複数のフロアに滞在する顧客が所有する通信端末の、アドレス、携帯電話固有番号、電話番号、登録情報、アクセスポイント接続履歴、移動履歴の何れかを基に前記同定情報を算出する同定部をさらに備える
請求項1に記載の人流分析装置。
【請求項14】
コンピュータを請求項1に記載の人流分析装置として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
人流分析装置が、
施設が備える複数のフロアそれぞれに顧客が滞在したことを示す複数の滞在情報、および、前記複数のフロアの滞在情報の何れかに含まれる同一の顧客を示す同定情報を基に、前記顧客の行動に関する行動属性情報を算出するステップを実行する
人流分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーケティング分析に有用な人流分析を行う人流分析装置、プログラムおよび人流分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ショッピングモールの運営者が知りたい顧客の行動の1つに、顧客の移動情報(移動履歴)である人流がある。特許文献1に記載の人流分析方法によれば、顧客の所有物から利用店舗を推定することで、顧客が来店した店舗の順序を判断することができる。また特許文献2に記載の施設内活動分析装置によれば、売場単位、各階のフロア単位に、顧客の活動傾向を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-020986号公報
【特許文献2】特開2017-188023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ショッピングモールにレストランフロアがある場合、ショッピングモールの運営者は、ショッピング目的で来訪した顧客にレストランを利用してもらいたいと考える。こうすることで、顧客一人あたりの売上単価の向上が狙えるからである。このため運営者は、顧客がレストランフロアとショッピングフロアとを利用しているかを知りたい。
【0005】
またショッピングモールの運営者の責任は、テナントの前に人を誘導することであり、テナント出店者の責任は、テナント前に来た人をテナント内に誘導することであるという考え方がある。このため、ショッピングモールの運営者は、テナントに顧客が何人入ったかではなく、顧客がテナント近くに何人通ったかが知りたい。
【0006】
これらショッピングモールの運営者の希望を統合すると、ターゲット顧客が複数のフロアを利用しているかどうかを把握することが重要であることがわかる。しかしながら、特許文献1,2に記載の技術では、顧客が複数のフロアをどのように訪問しているかは把握できない。よって、顧客が複数のフロアをどのように移動しているかを分析する方法について、更なる改善が必要とされる。
【0007】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、複数フロアを備える施設に来た顧客の顧客情報の分析を可能とする人流分析装置、プログラムおよび人流分析方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)施設が備える複数のフロアそれぞれに顧客が滞在したことを示す複数の滞在情報、および、前記複数のフロアの滞在情報の何れかに含まれる同一の顧客を示す同定情報を基に、前記顧客の行動に関する行動属性情報を算出する分析部を備える人流分析装置。
【0010】
(2)前記行動属性情報は、買物目的、および、利用フロアのうち少なくとも1つを含み、前記買物目的は、買い回り、または、目的買いを含む(1)に記載の人流分析装置。
【0011】
(3)前記滞在情報は、前記顧客が滞在したフロア、当該フロアに当該顧客が滞在した時間である滞在時間、当該フロアに当該顧客が流入した流入時刻、および、当該フロアから当該顧客が流出した流出時刻のうち少なくとも1つを含む(2)に記載の人流分析装置。
【0012】
(4)前記滞在時間が所定時間以下であるフロアは利用フロアとしない(3)に記載の人流分析装置。
【0013】
(5)前記分析部は、前記顧客の滞在時間が所定時間以上であるフロアである利用フロアが1つであれば、当該顧客の買物目的を目的買いとする(3)に記載の人流分析装置。
【0014】
(6)前記分析部は、前記顧客の滞在時間が所定時間以上であるフロアである利用フロアが複数であれば、当該顧客の買物目的を買い回りとする(3)に記載の人流分析装置。
【0015】
(7)前記分析部は、前記顧客の滞在時間が所定時間以上であるフロアである利用フロアの数別の顧客数を示す画面を出力する(3)に記載の人流分析装置。
【0016】
(8)前記分析部は、前記利用フロアの組合せ別の顧客数を示す画面を出力する(3)に記載の人流分析装置。
【0017】
(9)前記分析部は、指定されたフロアを利用フロアとする顧客について、他の利用フロア別の顧客数を示す画面を出力する(3)に記載の人流分析装置。
【0018】
(10)前記分析部はさらに、性別、年代、嗜好、家族連れ、カップル、グループのうち少なくとも1つを含む顧客属性情報を算出する(1)または(2)に記載の人流分析装置。
【0019】
(11)前記複数のフロアに滞在する顧客の、性別、年代、服装、服色、帽子の有無、メガネの有無、カバンの有無の何れかを基に前記同定情報を算出する同定部をさらに備える(1)に記載の人流分析装置。
【0020】
(12)前記同定部は、各前記フロアに設置された撮影装置で前記顧客を撮影した撮像画像に基づき、前記同定情報を算出する(11)に記載の人流分析装置。
【0021】
(13)前記複数のフロアに滞在する顧客が所有する通信端末の、アドレス、携帯電話固有番号、電話番号、登録情報、アクセスポイント接続履歴、移動履歴の何れかを基に前記同定情報を算出する同定部をさらに備える(1)に記載の人流分析装置。
【0022】
(14)コンピュータを(1)に記載の人流分析装置として機能させるためのプログラム。
【0023】
(15)人流分析装置が、施設が備える複数のフロアそれぞれに顧客が滞在したことを示す複数の滞在情報、および、前記複数のフロアの滞在情報の何れかに含まれる同一の顧客を示す同定情報を基に、前記顧客の行動に関する行動属性情報を算出するステップを実行する人流分析方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数フロアを備える施設に来た顧客の顧客情報の分析を可能とする人流分析装置、プログラムおよび人流分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態に係る人流分析装置の機能ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る検出情報データベースのデータ構成図である。
【
図3】本実施形態に係るフロア滞在情報データベースのデータ構成図である。
【
図4】本実施形態に係る同定情報データベースのデータ構成図である。
【
図5】本実施形態に係る利用フロア分析画面の画面構成図である。
【
図6】本実施形態に係るフロア別利用フロア分析画面の画面構成図である。
【
図7】本実施形態に係る人流分析装置全体の処理を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る分析処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
≪人流分析装置の概要≫
以下に本発明を実施するための形態(実施形態)における人流分析装置について説明する。複数のフロアがある施設に来た顧客について人流分析装置は、施設の各フロアにあるカメラ(撮影装置)の撮影画像を基に顧客が滞在したフロアごとの滞在時間(利用時間)や顧客の属性情報を算出する。例えば人流分析装置は、複数のフロアを利用した顧客について、利用フロア別の人数や顧客属性を出力する。
このような人流分析装置を利用することで施設の運営者は、レストランフロアを利用した顧客が他のフロアも利用している比率や複数のショッピングフロアを利用する買い回り客と目的買い客との比率など、フロアに着目した人流分析が可能となる。
【0027】
≪人流分析装置の構成≫
図1は、本実施形態に係る人流分析装置100の機能ブロック図である。人流分析装置100はコンピュータであり、制御部110、記憶部120、および入出力部180を備える。入出力部180には、ディスプレイやキーボード、マウスなどのユーザインターフェイス機器が接続される。入出力部180が通信デバイスを備え、施設の各フロアに設置されたカメラなど他の装置とのデータ送受信が可能であってもよい。また入出力部180にメディアドライブが接続され、記録媒体を用いたデータのやり取りが可能であってもよい。
【0028】
≪人流分析装置:記憶部≫
記憶部120は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)などの記憶機器を含んで構成される。記憶部120には、検出情報データベース130、フロア滞在情報データベース140、同定情報データベース150、フロア情報データベース160、およびプログラム128が記憶される。
【0029】
≪記憶部:検出情報データベース≫
図2は、本実施形態に係る検出情報データベース130のデータ構成図である。検出情報データベース130は例えば表形式のデータであって、1つの行(レコード)はカメラの撮影画像から検出された顧客を示す。検出情報データベース130のレコードは、検出識別情報131、カメラ132、フロア133、時間134、年齢135、性別136、および服装137の列(属性)を含む。検出情報データベース130は、さらに別の撮影画像から検出される顧客の属性を含んでもよい。
【0030】
検出識別情報131(
図2では「検出ID」と記載)は、撮影画像から検出された顧客に割り振られた識別情報である。カメラ132は、撮影画像を撮影したカメラの識別情報である。フロア133は、カメラが設置されているフロアである。時間134は、顧客が撮影画像に写っている時間である。年齢135、および性別136は、撮影画像から判別された顧客の年齢(年代)および性別である。服装137は、顧客の服装や服装の色、携帯物(例えば鞄)の有無、帽子の有無、メガネの有無などである。なお1人の顧客が時間をおいて同じカメラに写った場合、検出情報データベース130には当該顧客の複数のレコードが存在することになる。
【0031】
≪記憶部:フロア滞在情報データベース≫
図3は、本実施形態に係るフロア滞在情報データベース140のデータ構成図である。フロア滞在情報データベース140は例えば表形式のデータであって、1つの行(レコード)はフロアごとの撮影画像から検出された顧客を示す。フロア滞在情報データベース140のレコードは、フロア検出識別情報141、フロア142、検出識別情報143、開始時刻144、終了時刻145、および滞在時間146の列(属性)を含む。
【0032】
フロア検出識別情報141(
図2では「フロア検出ID」と記載)は、1つのフロアにある1つ以上のカメラの撮影画像から検出された顧客に割り振られた識別情報である。フロア142は、カメラが設置されているフロアである。
【0033】
検出識別情報143は、検出情報データベース130(
図2参照)の検出識別情報131に対応し、フロア142に示されるフロアにいる同じ顧客の検出情報データベース130のレコードを示す。換言すれば、フロア滞在情報データベース140の1つのレコードは1つのフロアにいる1人の顧客を示し、検出識別情報143は当該顧客を示す検出情報データベース130の1つ以上のレコードを示している。このようにフロア滞在情報データベース140の1つのレコードは、検出情報データベース130の1つ以上のレコードに対応している。
【0034】
開始時刻144(流入時刻)は、フロアにいる顧客が検出された最初の時刻である。換言すれば開始時刻144は、当該顧客に対応する検出情報データベース130のレコードにある時間134のなかで最早となる時刻である。終了時刻145(流出時刻)は、フロアにいる顧客が検出された最後の時刻である。換言すれば終了時刻145は、当該顧客に対応する検出情報データベース130のレコードにある時間134のなかで最遅となる時刻である。滞在時間146は、顧客がフロアにいた時間であって、開始時刻144と終了時刻145との差(単位は分とする)である。
【0035】
≪記憶部:同定情報データベース≫
図4は、本実施形態に係る同定情報データベース150のデータ構成図である。同定情報データベース150は例えば表形式のデータであって、1つの行(レコード)は全フロアでの撮影画像から検出された顧客を示す。同定情報データベース150のレコードは、人物識別情報151、日152、フロア検出識別情報153、フロア利用時間154、買物目的155、および属性156の列(属性)を含む。
【0036】
人物識別情報151(
図4では「人物ID)と記載)は、施設に来た顧客に割り振られた識別情報である。日152は、顧客が写った日(年月日)である。
フロア検出識別情報153は、フロア滞在情報データベース140(
図3参照)のフロア検出識別情報141に対応し、同じ日に写った同じ顧客のフロア滞在情報データベース140のレコードを示す。換言すればフロア検出識別情報153は、複数フロアに滞在した同一顧客を同定した同定情報である。同定情報データベース150の1つのレコードは1人の顧客を示し、フロア検出識別情報153は当該顧客を示すフロア滞在情報データベース140の1つ以上のレコードを示している。このように同定情報データベース150の1つのレコードは、フロア滞在情報データベース140の1つ以上のレコードに対応している。
【0037】
フロア利用時間154は、フロアごとの滞在時間(滞在時間146参照)のリストである。
買物目的155は、顧客の目的を示し「目的買い」「買い回り」または「なし」である。利用時間(滞在時間)が所定利用時間(所定時間)以上であるフロアを利用フロアと呼び、利用時間が最長の利用フロアを目的フロアと呼ぶ。逆に言えば、例えばエスカレータで移動中に短時間フロアに滞在しても利用フロアとはしない。利用フロアが複数である顧客の目的は「買い回り」であり、1つである顧客の目的は「目的買い」である。利用フロアがない顧客は「なし」となる。「目的買い」または「買い回り」の場合には、買物目的155に利用フロアが含まれる。
図4においてレコード158に示される顧客の目的は「買い回り」であり、目的フロアは8階で他の利用フロアとして4階がある。レコード159に示される顧客の目的は「目的買い」であり、目的フロアは6階である。つまり分析部113は、顧客の滞在時間が所定時間以上であるフロアである利用フロアが1つあれば、この顧客の買物目的を目的買いとする。分析部113は、顧客の利用フロアが複数であれば、この顧客の買物目的を買い回りとする。
【0038】
属性156は、顧客の属性(顧客属性、顧客属性情報)である。属性156の値には、年齢135や性別136、服装137の他に、後記するフロア情報データベース160を参照して得られる属性、撮影画像から検出される一緒に移動している顧客を基に得られる「家族連れ」「カップル」「グループ」などの属性がある。なお買物目的155を行動属性情報とも記し、行動属性情報は利用フロアを含む。
【0039】
≪記憶部:フロア情報データベース≫
フロア情報データベース160には、フロアと当該フロアを利用する顧客の属性とが関連付けられて記憶される。例えば高級ブランドを扱う店舗が入るフロアには「富裕層」や「ブランド嗜好」という嗜好を含む顧客属性が関連付けられる。
プログラム128には、後記する分析処理他の手順の記述が含まれる。
【0040】
≪人流分析装置:制御部≫
図1に戻って制御部110を説明する。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、検出部111、同定部112、および分析部113が備わる。制御部110は、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを含んで構成されてもよい。制御部110のCPUがプログラム128を実行することにより、検出部111、同定部112、および分析部113が具現化される。
【0041】
≪制御部:検出部≫
検出部111は、1つのカメラ(撮影装置)の撮影画像から顧客(人物)を検出して、検出情報データベース130(
図2参照)に格納する検出処理を実行する。詳しく説明すると検出部111は、撮影画像に連続して写る顧客を検出して、年齢や性別を推定し、鞄などの携帯物やメガネ、帽子など服装を特定する。続いて検出部111は、検出情報データベース130にレコードを追加して、当該レコードに新規の検出識別情報、カメラの識別情報、カメラのあるフロア、検出された時間、推定された年齢と性別、および服装を、それぞれ検出識別情報131、カメラ132、フロア133、時間134、年齢135、性別136、および服装137に格納する。
【0042】
≪制御部:同定部≫
同定部112は、検出情報データベース130(
図2参照)を基にフロア滞在情報データベース140(
図3参照)を作成する。また同定部112は、検出情報データベース130とフロア滞在情報データベース140と基に同定情報データベース150(
図4参照)を作成する。これらの処理を同定処理S12と記す(後記する
図7参照)。
【0043】
詳しく説明すると同定部112は、検出情報データベース130のレコードのなかでフロア133と年齢135と性別136と服装137とが同じであって時間134が重ならない同じ日(時間134参照)のレコードを探し出し、これらのレコードに対応するフロア滞在情報データベース140のレコードを作成する。フロア滞在情報データベース140のレコードのフロア検出識別情報141は、新規の識別情報である。フロア142、および検出識別情報143は、探し出した検出情報データベース130のレコードに含まれる同一のフロア133、およびそれぞれの検出識別情報131である。開始時刻144、終了時刻145、および滞在時間146は、フロア滞在情報データベース140で説明したとおりである。なお検出情報データベース130のなかで顧客のレコードを探し出す場合に、カメラの視野が重なっているレコードについては時間134が重なってもよい。
【0044】
同定部112は、フロア滞在情報データベース140のレコードのなかで、検出識別情報143が示す検出情報データベース130に含まれるレコードの年齢135と性別136と服装137とが同じであって、フロア142が異なり、開始時刻144から終了時刻145までの時間が重ならない同じ日のレコードを探し出し、これらのレコードに対応する同定情報データベース150のレコードを作成する。同定情報データベース150のレコードの人物識別情報151は、新規の識別情報である。日152は、探し出したフロア滞在情報データベース140のレコードの開始時刻144および終了時刻145に含まれる日である。フロア検出識別情報153は、探し出したフロア滞在情報データベース140のレコードに含まれるフロア検出識別情報141である。フロア利用時間154、買物目的155および属性156については、分析部113が更新する。
【0045】
≪制御部:分析部≫
分析部113は、同一の顧客を示す同定情報データベース150のレコード(顧客)ごとに、フロア利用時間154、買物目的155、および属性156を更新する。詳しく説明すると分析部113は、同定情報データベース150のフロア検出識別情報153にあるフロア検出識別情報に対応する、フロア滞在情報データベース140のレコードの滞在時間146を参照して、当該顧客のフロア別の利用時間(滞在時間)を取得して、フロア利用時間154に格納する。例えばレコード158(
図4参照)は、当該レコードが示す顧客が4階に49分、8階に74分滞在したことを示している。
【0046】
分析部113は、フロア利用時間154を参照して、当該顧客の買物目的155に「買い回り」「目的買い」または「なし」を格納する。また分析部113は、目的フロアや利用フロアを買物目的155に追加する。
分析部113は、フロア検出識別情報153にあるフロア検出識別情報に対応する、フロア滞在情報データベース140のレコードの検出識別情報143にある検出識別情報に対応する、検出情報データベース130のレコードの年齢135と性別136を取得して、属性156に格納する。また分析部113は、フロア情報データベース160を参照して、利用フロアに対応する顧客属性を取得して、当該顧客の属性156に追加する。また分析部113は、撮影画像から検出される一緒に移動している顧客を基に「家族連れ」「カップル」「グループ」などの属性を追加してもよい。
【0047】
つまり分析部113は、施設が備える複数のフロアそれぞれに顧客が滞在したことを示す複数の滞在情報、および、これら複数のフロアの滞在情報の何れかに含まれる同一の顧客を示す同定情報を基に、買物目的155(行動属性情報)や属性156(顧客属性、顧客属性情報)を算出する。
【0048】
フロア滞在情報データベース140は、顧客が滞在したフロア、フロアに顧客が滞在した時間である滞在時間、フロアに顧客が流入した流入時刻(開始時刻144参照)、および、フロアから顧客が流出した流出時刻(終了時刻145参照)のうち少なくとも1つを含んでいればよく、限定されない。
【0049】
また分析部113は、同定情報データベース150を参照して利用フロアに着目した集計処理を行い、後記する利用フロア分析画面210(後記する
図5参照)やフロア別利用フロア分析画面220(後記する
図6参照)を入出力部180に接続されるディスプレイに出力する。
【0050】
≪利用フロア分析画面≫
図5は、本実施形態に係る利用フロア分析画面210の画面構成図である。ドロップダウンリスト211では「利用フロア分析」が選択されており、この画面が利用フロア分析画面210であることを示している。テキストボックス212には、分析対象期間が設定される。
【0051】
分析対象期間が設定されると分析部113は、同定情報データベース150のレコードのなかで、日152が当該分析対象期間に含まれるレコードを取得して、利用フロア数別の顧客(同定情報データベース150のレコード)数を集計して、領域213に表示する。なお利用フロアとは、フロア利用時間154に示されるフロアの利用時間(滞在時間)が所定利用時間以上のフロアのことである。
図5の例によると、利用フロア数が3である(3つのフロアそれぞれに所定利用時間以上いた)顧客が最も多かったことわかる。
【0052】
また領域213に示される利用フロア数別顧客数を参照することで、顧客の買物目的がわかる。つまりは、利用フロアが1つだけである「目的買い」の顧客や、利用フロアが複数ある「買い回り」の顧客の数や比率がわかる。このように分析部113は、顧客の滞在時間が所定時間以上であるフロアである利用フロアの数別の顧客数を示す利用フロア分析画面210を出力する。
【0053】
ドロップダウンリスト214では利用フロア数が設定される。利用フロア数が設定されると分析部113は、同定情報データベース150のレコードのなかで、日152が分析対象期間に含まれ、利用フロア数が設定された利用フロア数であるレコードを取得して、利用フロア別の顧客(同定情報データベース150のレコード)数を集計して、領域215に表示する。
図5によると、利用フロア数が2である113,485人(領域213参照)のうち10,034人が地下1階と3階を利用していることがわかる。
【0054】
また領域215に表示されるレコード(行)にポインタが置かれると、当該レコードに含まれる顧客の属性が表示される。このように分析部113は、当該レコードに対応する顧客の属性156を参照して、ポップアップウィンドウ216に属性156に多く含まれる属性を表示する。
【0055】
≪フロア別利用フロア分析画面≫
図6は、本実施形態に係るフロア別利用フロア分析画面220の画面構成図である。ドロップダウンリスト221では「フロア別利用フロア分析」が選択されており、この画面がフロア別利用フロア分析画面220であることを示している。テキストボックス222には、分析対象期間が設定される。ドロップダウンリスト223には分析対象となる利用フロアが設定される。
図6では3階が分析対象の利用フロアとして設定されている。
【0056】
分析対象期間および分析対象利用フロアが設定されると分析部113は、同定情報データベース150のレコードのなかで、日152が分析対象期間に含まれ、利用フロア(フロア利用時間154参照)として分析対象利用フロアを含むレコードを取得する。分析部113は、他の利用フロア別の顧客(レコード)数を集計して、領域224に表示する。
図6によると、3階を利用フロアに含む31,343人の顧客のなかでは、他の利用フロアとしては2階が最も多いことがわかる。このように分析部113は、利用フロアの組合せ別の顧客数を示すフロア別利用フロア分析画面220を出力する。
【0057】
≪全体の処理≫
図7は、本実施形態に係る人流分析装置100全体の処理を示すフローチャートである。
図7に示すように、検出部111が実行する検出処理S11と、同定部112が実行する同定処理S12と、分析部113が実行する分析処理S13(後記する
図8参照)とが、同時並行に処理される。なお検出処理とは、カメラの撮影画像から顧客を検出して、検出情報データベース130(
図2参照)に格納する処理である。また同定処理とは、検出情報データベース130を基にフロア滞在情報データベース140(
図3参照)を作成し、検出情報データベース130とフロア滞在情報データベース140と基に同定情報データベース150(
図4参照)の人物識別情報151、日152、およびフロア検出識別情報153を作成する処理である。
【0058】
≪分析処理≫
図8は、本実施形態に係る分析処理のフローチャートである。
ステップS21において分析部113は、顧客(同定情報データベース150のレコード)ごとにステップS22~S24を繰り返す処理を開始する。
ステップS22において分析部113は、フロア滞在情報データベース140を参照してフロア利用時間を算出してフロア利用時間154に格納する。
【0059】
ステップS23において分析部113は、フロア利用時間154を参照して買物目的を取得して、買物目的155に格納する。
ステップS24において分析部113は、検出情報データベース130の年齢135、性別136、服装137を取得して、属性156に格納する。また分析部113は、フロア情報データベース160を参照して、利用フロアに対応する顧客属性を取得して、属性156に追加する。
【0060】
≪人流分析装置の特徴≫
人流分析装置100は、顧客がフロアにいる滞在情報である検出情報データベース130(
図2参照)およびフロア滞在情報データベース140(
図3参照)と、顧客の同定情報であるフロア検出識別情報153を基に、フロア利用時間154や買物目的155、属性156を算出する。また人流分析装置100は、利用フロアに注目した集計を行い、顧客が利用(滞在)するフロアに着目した分析が可能となる(
図5、
図6参照)。
【0061】
≪変形例:同定処理≫
同定部112は、顧客の年代(年齢135参照)、性別136、服装137(服色、帽子の有無、メガネの有無、カバンの有無など)の何れかを基に、複数フロアに滞在した同一顧客を同定した同定情報(フロア検出識別情報153参照)を算出する。このような撮影画像を基に顧客を同定する手法の他に同定部112は、顧客が所有する通信端末にアクセスして、アドレスや携帯電話固有番号、電話番号、登録情報、アクセスポイント接続履歴、移動履歴の何れかを基に顧客を同定してもよい。また撮影画像そのものを基に顧客を同定してもよい。また同定部112は、POS(Point of Sales)情報から取得できる顧客情報(例えば施設の会員カードの情報)と店舗情報(店舗があるフロアやフロア内の位置)を基に顧客を同定してもよい。
【0062】
≪変形例:データベースの構成≫
上記した実施形態では、検出情報データベース130(
図2参照)はカメラが検出した顧客のレコード、フロア滞在情報データベース140(
図3参照)はフロアごとの顧客のレコード、同定情報データベース150(
図4参照)は顧客ごとのレコードを含んでいる。このような構成とは異なるデータベースの構成であってもよい。
【0063】
例えばフロア滞在情報データベース140がなく、同定情報データベース150がフロア検出識別情報153の替わりに検出識別情報131を含む属性を備えてもよい。この場合、同定情報データベース150の1つのレコードは、1つ以上の検出情報データベース130のレコードと対応することになる。このような場合であっても分析部113は、施設が備える複数のフロアそれぞれに顧客が滞在したことを示す複数の滞在情報(検出情報データベース130参照)、および、複数のフロアの滞在情報の何れかに含まれ、同一の顧客を示す同定情報(フロア検出識別情報153の替わりとなる検出識別情報131を含む属性)を基に、行動属性情報や顧客属性情報を算出する。
【0064】
≪変形例≫
上記した実施形態において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。例えば人流分析装置100は検出部111を備え、検出情報データベース130を作成するが、これに替わり他の装置が作成した検出情報データベース130にアクセスするようにしてもよい。また人流分析装置100は同定部112を備え、フロア滞在情報データベース140を作成するが、これに替わり他の装置が作成したフロア滞在情報データベース140にアクセスするようにしてもよい。さらに複数フロアに滞在した同一顧客を同定した同定情報(フロア検出識別情報153参照)について、同定部112が作成する替わりに、他の装置が生成した同定情報にアクセスするようにしてもよい。
【0066】
ここまで施設はショッピングモールや百貨店のような商業施設を例にして説明したが、これに限定されるものではない。例えばオフィスビルにおける従業員や訪問客の利用フロア、病院や役所、美術館など公共施設における職員や訪問者の利用フロアなど、人流分析装置100は様々な施設における人の行動分析(人流分析)に利用することができる。なお同定部112の同定手法は施設によって異なる。例えばオフィスビルでは、従業員や訪問客が携帯するIDカードや携帯端末(パソコンやスマートフォンなど)の位置情報を基に同定処理S12を行ってもよい。
【0067】
本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
100 人流分析装置
111 検出部
112 同定部
113 分析部
128 プログラム
130 検出情報データベース(滞在情報)
140 フロア滞在情報データベース(滞在情報)
150 同定情報データベース
153 フロア検出識別情報(同定情報)
160 フロア情報データベース
210 利用フロア分析画面
220 フロア別利用フロア分析画面