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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093225
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/337 20060101AFI20240702BHJP
   B41M 5/333 20060101ALI20240702BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20240702BHJP
   B41M 5/44 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B41M5/337 230
B41M5/333 220
B41M5/41 200
B41M5/44 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209460
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 尚
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直信
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026BB02
2H026BB24
2H026CC07
2H026DD48
2H026DD55
2H026EE05
(57)【要約】
【課題】印字面に印字が転写する虞がなく、耐熱地肌カブリ性に優れる感熱記録体を提供する。
【解決手段】支持体上に、ロイコ染料、顕色剤及び接着剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、接着剤としてオレフィン-アクリル酸系共重合体塩及びスチレン-ブタジエン系ラテックスを含有し、顕色剤として非フェノール系顕色剤を含有する。顕色剤としてN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を含有することが好ましい。顕色剤として3-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルホナートを含有することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、ロイコ染料、顕色剤及び接着剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記接着剤としてオレフィン-アクリル酸系共重合体塩及びスチレン-ブタジエン系ラテックスを含有し、前記顕色剤として下記一般式(1):
【化1】
(式中、Rは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表し、前記アラルキル基及びアリール基は炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよく、複数のRは、同じであっても異なっていてもよい。Aは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表し、複数のAは、同じであっても異なっていてもよい。)
によって表されるN,N’-ジアリール尿素系化合物、下記一般式(2):
【化2】
(式中、R~Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又はアリールアミノ基を表す。)
によって表される化合物、及び下記一般式(3):
【化3】
によって表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の非フェノール系顕色剤を含有することを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるN,N’-ジアリール尿素系化合物がN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(o-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(メシチレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(4-エチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(p-メトキシベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(ベンジルスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(エタンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)-4-メチル-フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(エタンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、及びN,N’-ジ-[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)]フェニル尿素からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるN,N’-ジアリール尿素系化合物としてN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を含有する、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物として3-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルホナートを含有する、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項5】
前記感熱記録層の全固形量中、前記オレフィン-アクリル酸系共重合体塩の含有割合が4~25質量%であり、前記スチレン-ブタジエン系ラテックスの含有割合が15~40質量%である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項6】
前記オレフィン-アクリル酸系共重合体塩の含有量が前記スチレン-ブタジエン系ラテックス100質量部に対して10~150質量部である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項7】
前記オレフィン-アクリル酸系共重合体塩及びスチレン-ブタジエン系ラテックスの含有割合の合計が感熱記録層の全固形量中25~50質量%である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項8】
前記支持体が合成紙又は合成樹脂フィルムである、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項9】
前記支持体がポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項10】
前記感熱記録層上に接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含有する保護層を有する、請求項1に記載の感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に紙、合成紙又は合成樹脂フィルム等からなる支持体の少なくとも片面上に、ロイコ染料と顕色剤とを熱エネルギーによって発色反応させて記録画像を得ることができる感熱記録体は、記録装置がコンパクトでしかも安価であり、且つ保守が容易であること等の利点を有し、ファクシミリや自動券売機、科学計測機の記録用媒体として、また、POSラベル、CAD、CRT医療画像用等の各種プリンター、プロッターの出力媒体として広く使用されている。これらの中で合成紙や合成樹脂フィルムを支持体として使用したものは、耐水性や画質の点で優れているため、食品用ラベル、医療用ラベルや、医療画像用等の各種プリンターの出力媒体として、使用量が著しく増加してきている。
【0003】
しかしながら、合成紙等のフィルムベースは、紙ベースに比べ、支持体上に形成される層を構成する塗料の含浸がなく、ベース基材と感熱記録層との結着性、感熱記録層と保護層との結着性が、紙を支持体とした場合よりも低下し易い。この結着性不足による剥がれ、特に水に濡れた時の水溶性成分の溶出による基材からの剥がれ、更には、機械的外力が加わった場合には容易に剥がれが発生する。その結果、印字記録部が剥がれ、バーコード読取り機での読取り不良等の障害が発生する。
【0004】
合成紙基材と感熱記録層との結着性を高めるために、特許文献1及び2では、感熱記録層中にスチレン-ブタジエン系共重合体を添加する感熱記録体が提案されており、結着性に優れるが、浸水時での塗膜剥がれが生じるため、更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-175007号公報
【特許文献2】特開平9-226246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、印字面に対して印字が転写する虞がなく、耐熱地肌カブリ性に優れる感熱記録体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、支持体上に、ロイコ染料、顕色剤及び接着剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、接着剤としてオレフィン-アクリル酸系共重合体塩及びスチレン-ブタジエン系ラテックスを含有し、顕色剤として特定の非フェノール系顕色剤を含有することにより、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の感熱記録体に係る。
【0008】
項1:支持体上に、ロイコ染料、顕色剤及び接着剤を含有する感熱記録層を有する感熱記録体において、前記接着剤としてオレフィン-アクリル酸系共重合体塩及びスチレン-ブタジエン系ラテックスを含有し、前記顕色剤として下記一般式(1):
【0009】
【化1】
(式中、Rは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表し、前記アラルキル基及びアリール基は炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよく、複数のRは、同じであっても異なっていてもよい。Aは、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表し、複数のAは、同じであっても異なっていてもよい。)
によって表されるN,N’-ジアリール尿素系化合物、下記一般式(2):
【0010】
【化2】
(式中、R~Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又はアリールアミノ基を表す。)
によって表される化合物、及び下記一般式(3):
【0011】
【化3】
によって表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の非フェノール系顕色剤を含有することを特徴とする感熱記録体。
項2:前記一般式(1)で表されるN,N’-ジアリール尿素系化合物がN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(o-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(メシチレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(4-エチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(p-メトキシベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(ベンジルスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(エタンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)-4-メチル-フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(エタンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、及びN,N’-ジ-[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)]フェニル尿素からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の感熱記録体。
項3:前記一般式(1)で表されるN,N’-ジアリール尿素系化合物としてN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を含有する、項1又は2に記載のいずれかの感熱記録体。
項4:前記一般式(2)で表される化合物として3-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルホナートを含有する、項1~3のいずれか1項に記載の感熱記録体。
項5:前記感熱記録層の全固形量中、前記オレフィン-アクリル酸系共重合体塩の含有割合が4~25質量%であり、前記スチレン-ブタジエン系ラテックスの含有割合が15~40質量%である、項1~4のいずれか1項に記載の感熱記録体。
項6:前記オレフィン-アクリル酸系共重合体塩の含有量が前記スチレン-ブタジエン系ラテックス100質量部に対して10~150質量部である、項1~5のいずれか1項に記載の感熱記録体。
項7:前記オレフィン-アクリル酸系共重合体塩及びスチレン-ブタジエン系ラテックスの含有割合の合計が感熱記録層の全固形量中25~50質量%である、項1~6のいずれか1項に記載の感熱記録体。
項8:前記支持体が合成紙又は合成樹脂フィルムである、項1~7のいずれか1項に記載の感熱記録体。
項9:前記支持体がポリオレフィン系樹脂を含む、項1~8のいずれか1項に記載の感熱記録体。
項10:前記感熱記録層上に接着剤としてアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含有する保護層を有する、項1~9のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感熱記録体は、印字面に対して印字が転写する虞がなく、耐熱地肌カブリ性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中において、「含む」なる表現については、「含む」、「実質のみからなる」、及び「のみからなる」旨の概念を含む。
【0014】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
本発明におけるラテックスは、分散媒体を乾燥させることにより形成されるゲル又は乾燥皮膜の状態を含む。
【0016】
[支持体]
本発明における支持体は、種類、形状、寸法等に格別の限定はなく、例えば、上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙、ポリオレフィン系合成紙、合成繊維紙、不織布、合成樹脂フィルム等の他、各種透明支持体等の中から適宜選択して使用することができる。支持体の厚みは特に制限されず、通常、20~200μm程度である。
【0017】
本発明における支持体は、好ましくは合成紙又は合成樹脂フィルムである。本発明における支持体に用いられる合成紙又は合成樹脂フィルムとしては、特に制限はなく、基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体フィルムが挙げられる。また、支持体中には顔料を含有していてもよい。例えば、ポリオレフィン系樹脂と白色無機顔料を加熱混練して、ダイから押し出し、縦方向に延伸したものの両面にポリオレフィン系樹脂と白色無機顔料からなるフィルムを片面当たり1~2層積層し、横方向に延伸して半透明化あるいは不透明化して製造される合成紙を用いることもできる。かかる合成紙は、ポリオレフィン系樹脂を含むため、感熱記録層との密着性が依然として劣る一方、顔料によるボイドを形成するため、クッション性と断熱性を兼ね備え、発色性と画質に優れる。また、感熱記録層の投錨効果が得られる反面、空隙に浸透する水を含んで耐水性を低下させることから、支持体としての用途が限られてきたが、本発明によれば、その効果を遺憾なく発揮させ、好ましく用いることができる。
【0018】
[感熱記録層]
本発明における感熱記録層は、接着剤としてオレフィン-アクリル酸系共重合体塩及びスチレン-ブタジエン系ラテックスを含有し、支持体上に形成されている。これにより、優れた耐水性、耐水ブロッキング性、及び支持体と感熱記録層との密着性を得ることができる。そして、耐水ブロッキング性が得られるとともに、後述する特定の非フェノール性顕色剤との相乗効果により、印字面に対して印字が転写する虞がない。
【0019】
本発明に用いられるオレフィン-アクリル酸系共重合体塩は、オレフィン部分の疎水性が高いため、高い耐水性を発揮できる。また、オレフィン-アクリル酸系共重合体塩のカルボキシ基部分は、フィルムとの密着性に優れ、高い結着性を発揮することができる。
【0020】
オレフィン-アクリル酸系共重合体塩におけるオレフィン成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等が挙げられる。これらのなかでも、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂が、耐水性、密着性の観点から好ましく用いられる。オレフィン-アクリル酸共重合体塩中のオレフィン成分の比率は、50~90mol%程度が好ましい。
【0021】
オレフィン-アクリル酸系共重合体塩の分子量は、2万~20万が好ましく、3万~15万がより好ましい。分子量を2万以上とすることにより、耐水性、密着性を向上できる。一方、分子量を20万以下とすることにより、成膜性に優れ、密着性を向上できる。
【0022】
オレフィン-アクリル酸系共重合体塩の塩としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。これらのなかでも、水分散性、耐水性を向上する観点からアンモニウム塩が好ましい。
【0023】
オレフィン-アクリル酸系共重合体塩の含有割合は、感熱記録層の全固形量中4~25質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましく、5~15質量%がさらに好ましい。4質量%以上とすることにより、耐水性を向上できる。一方、25質量%以下とすることにより、発色性を向上できる。
【0024】
オレフィン-アクリル酸系共重合体塩は、例えば、三井化学株式会社製のケミパールS100、S650、S75N等、東邦化学工業株式会社製のハイテックS3121、S8512等として市販されており、エマルションの状態で容易に入手し利用することができる。
【0025】
本発明に用いられるスチレン-ブタジエン系ラテックスとしては、ブタジエン単量体の含有割合が全単量体の固形分量中20~45質量%、且つゲル含有率が70~85%であるラテックスが好ましい。ブタジエンの共重合率を20質量%以上とすることにより、成膜性を向上できる。一方、45質量%以下とすることにより、凝集力を高めて、ドライピック強度を向上することができる。また、ゲル含有率を70%以上とすることにより、接着力を向上できる。また、スチレン-ブタジエン系ラテックスを構成するスチレン単量体の含有割合は、ラテックスの安定性を高める観点から、40~70質量%程度が好ましい。
【0026】
本発明に用いられるスチレン-ブタジエン系ラテックスは、スチレンとブタジエンを主構成モノマーとするが、更に変性を目的とする各種不飽和カルボン酸単量体の少なくとも1種を単量体組成物に含むことができる。かかる不飽和カルボン酸単量体の具体例としては、例えばイタコン酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸モノアルキルエステル等が挙げられる。これらの単量体を0.5~10質量%の割合で単量体組成中に含有せしめるのが望ましい。更に、スチレン-ブタジエン系ラテックス単量体組成には、他のオレフィン系単量体を含有せしめることができ、かかる単量体の具体例としては、例えばα-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン等の芳香族ビニル単量体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート等のアクリレート系単量体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレート系単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基を含有する単量体等が挙げられる。これらの単量体は本発明の効果を阻害しない範囲で、0~35質量%程度使用することができる。
【0027】
スチレン-ブタジエン系ラテックスの製造方法については特に限定されるものではなく、例えば連続乳化重合、一括乳化重合等、公知の乳化重合法が採用でき、またその際に各種公知の乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤、電解質、キレート化剤等、一般の乳化重合に用いられる添加剤が適宜使用でき、更に重合温度も高温あるいは低温のいずれを選ぶこともできる。
【0028】
スチレン-ブタジエン系ラテックスの含有割合は、感熱記録層の全固形量中15~40質量%であることが好ましく、より好ましくは15~30質量%である。15質量%以上とすることにより密着性を向上できる。一方、40質量%以下とすることにより、発色性を向上できる。
【0029】
オレフィン-アクリル酸系共重合体塩及びスチレン-ブタジエン系ラテックスの含有割合の合計は、感熱記録層の全固形量中25~50質量%が好ましく、25~40質量%がより好ましく、25~30質量%が更に好ましい。25質量%以上とすることにより、耐水性、耐水ブロッキング性及び密着性を向上できる。一方、50質量%以下とすることにより、発色性を向上できる。
【0030】
感熱記録層におけるスチレン-ブタジエン系ラテックスに対するオレフィン-アクリル酸系共重合体塩の含有量は、スチレン-ブタジエン系ラテックス100質量部に対して、10~150質量部であることが好ましく、より好ましくは20~100質量部、更に好ましくは30~90質量部である。オレフィン-アクリル酸系共重合体塩を10質量部以上とすることにより、耐水性、耐水ブロッキング性を向上できる。一方、150質量部以下とすることにより、発色性を向上でき、密着性について相乗効果が得られる。
【0031】
本発明で感熱記録層に使用する接着剤は、オレフィン-アクリル酸系共重合体塩とスチレン-ブタジエン系ラテックスであるが、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で各種公知のその他の接着剤を使用してもよい。その他の接着剤としては、例えば、酸化澱粉、酸変性澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉及び酢酸ビニル変性グラフト化澱粉等の澱粉類、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、完全(又は部分)鹸化ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性接着剤、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリブチルメタクリレート、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル系共重合体等のラテックス等の水分散性接着剤が挙げられる。
【0032】
本発明において、感熱記録層に含有されるロイコ染料としては各種公知のものが使用できる。例えば、黒色発色を与えるロイコ染料としては、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アリニノフルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-(N-イソアミル-N-エチルアミノ)-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-2-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-(N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-〔N-(3-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ〕-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-〔N-(3-エトキシプロピル)-N-メチルアミノ〕-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジ(n-ブチルアミノ)-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン等の少なくとも1種を用いることができる。また、必要に応じて、ロイコ染料としては、黒とは異なる色調に発色する、例えば赤、赤紫、オレンジ、青、緑等の発色色調を与えるロイコ染料を使用してもよい。
【0033】
本発明で使用されるロイコ染料は、これらに限定されるものではなく、2種以上を併用することもできる。かかるロイコ染料の含有割合は、感熱記録層の全固形量中3~30質量%程度である。
【0034】
本発明において、ロイコ染料を固体微粒子状態として使用する場合、ロイコ染料を、水を分散媒体として、サンドグラインダー、アトライター、ボールミル、コボーミル等の各種湿式粉砕機によって粉砕し、これをポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スチレン-無水マレイン酸共重合体塩及びそれらの誘導体等の水溶性合成高分子化合物のほか、必要に応じて界面活性剤、消泡剤等と共に分散媒体中に分散させて分散液とし、この分散液を感熱記録層用塗液の調製に用いることができる。
【0035】
また、ロイコ染料を溶剤に溶解した後、この溶液を水中で上記水溶性高分子を安定化剤として乳化分散後、この乳化液から溶剤を蒸発させロイコ染料を固体微粒子化して使用することもできる。いずれの場合も固体微粒子状態で使用するロイコ染料の分散粒子の平均粒子径は、適切な発色感度を得るために0.2~3.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.3~1.0μmである。
【0036】
本発明においては、ロイコ染料の使用方法として、上記固体微粒子状態で使用する以外に、有機高分子とロイコ染料とからなる複合粒子としても使用することができる。複合粒子の作製については、公知の方法により可能である。例えば、前記有機高分子がポリウレア及びポリウレア-ポリウレタンの少なくとも1種である複合粒子の作製方法について記載する。上記複合粒子は、ロイコ染料、並びに重合によりポリウレア及びポリウレア-ポリウレタンの少なくとも1種を形成する高分子形成性原料を、100℃以下の沸点を有する水不溶性有機溶剤に溶解混合し、この有機溶剤溶液をポリビニルアルコール等の親水性保護コロイド溶液中に平均粒子径が0.5~3μm程度となるように乳化分散し、更に必要によりポリアミン等の反応性物質を混合後、この乳化分散液を加熱して前記有機溶剤を揮発除去し、その後、前記高分子形成性原料を高分子化することにより調製されたもの、或いは前記ロイコ染料を高分子形成性原料に溶解し、この溶解液を前述の方法で平均粒子径が0.5~3μm程度に乳化分散後、前記高分子形成性原料を高分子化することにより調製される。
【0037】
本発明における感熱記録層は、顕色剤として前記一般式(1)によって表されるN,N’-ジアリール尿素系化合物、前記一般式(2)によって表される化合物、及び前記一般式(3)によって表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の非フェノール系顕色剤を含有する。これにより、印字面に対して印字が転写する虞がない。ここで、印字面に対して印字が転写する現象とは、例えば市松模様のベタ黒印字、バーコードといったパターン印字を施した印字面どうしを、水に濡れた状態で合わせてブロッキング試験を行い、乾燥させ、剥離すると、それぞれの印字が他方の印字面に、分かり易くは印字面の印字されていない白紙部に、濃度は薄いが反転した鏡像として写っている現象である。剥離した後の印字面を観察しても、表面が膨潤あるいは溶解しているといった変化がなく、また、感熱記録層あるいは必要により設けた保護層が凝集破壊あるいは層間剥離を生じているといった形跡がないことから、水分を介して顕色剤が何らかの作用を受けていると推測できる。支持体が合成紙又は合成樹脂フィルムであれば、水分が支持体側へ浸透することなく、支持体とは逆側の表面に留まり易いことから、目視で判別できる程度に顕著な効果となって現れ易い。この現象を引き起こす感熱記録体は、印刷物としての品位を損ね、印字された情報の読み取り不良を招くために問題である。
【0038】
前記一般式(1)中、 Rの、炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は脂環状のいずれでもよく、好ましくは炭素数が1~6のアルキル基、より好ましくは炭素数が1~3のアルキル基である。炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-エチルへキシル基、ラウリル基などが挙げられる。ここでのアルキル基には、炭素数1~12のアルコキシ基のアルキル部分も含まれる。
アラルキル基とはアリールアルキル基を意味する。炭素数7~12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基などが挙げられる。
アリール基とは、5又は6員の芳香族炭化水素環からなる単環又は多環系の基を意味する。炭素数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基などが挙げられる。ここでのアリール基には、アラルキル基のアリール部分も含まれる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。
一般式(1)中、複数のR-SO-の置換位置は、同じ置換位置であっても異なっていてもよい。置換位置は、3位、4位又は5位が好ましく、3位がより好ましい。また、Rの、炭素数7~12のアラルキル基及び炭素数6~12のアリール基が、置換基を有する場合の置換基の数は特に制限されず、例えば1~4個である。
の、炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基など挙げられる。
複数のAの置換位置は、同じ置換位置であっても異なっていてもよい。置換位置は、3位、4位又は5位が好ましい。
【0039】
一般式(1)で表されるN,N’-ジアリール尿素系化合物としては、特に限定されないが、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(o-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(メシチレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(4-エチルベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(2-ナフタレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(p-メトキシベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(ベンジルスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(エタンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)-4-メチル-フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[4-(エタンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、及びN,N’-ジ-[2-(p-トルエンスルホニルオキシ)]フェニル尿素からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの中でも、N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素が好ましい。
【0040】
N,N’-ジアリール尿素系化合物の含有量は、特に制限されず、使用されるロイコ染料に応じて調整すればよく、一般にロイコ染料1質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、1.2質量部以上がより一層好ましく、1.5質量部以上が特に好ましい。一方、N,N’-ジアリール尿素系化合物の含有量は、ロイコ染料1質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、4質量部以下がさらに好ましく、3.5質量部以下が特に好ましい。0.5質量部以上とすることにより、記録性能を高めることができる。一方、10質量部以下とすることにより、高温環境下での耐熱地肌カブリを効果的に抑えることができる。
【0041】
前記一般式(2)中、 R~Rの、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
アルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよく、好ましくは直鎖又は分岐鎖アルキル基、より好ましくは直鎖アルキル基である。通常、炭素数が1~12のアルキル基であり、好ましくは炭素数が1~8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数が1~6のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数が1~4のアルキル基である。
アルコキシ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよく、好ましくは直鎖又は分岐鎖アルコキシ基、より好ましくは直鎖アルコキシ基である。通常、炭素数が1~12のアルコキシ基であり、好ましくは炭素数が2~8のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数が2~6のアルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素数が2~4のアルコキシ基である。
アルキルカルボニルオキシ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよく、好ましくは直鎖又は分岐鎖アルキルカルボニルオキシ基、より好ましくは直鎖アルキルカルボニルオキシ基である。また、炭素数が1~10のアルキルカルボニルオキシ基が好ましい。
アルキルカルボニルアミノ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよく、好ましくは直鎖又は分岐鎖アルキルカルボニルアミノ基、より好ましくは直鎖アルキルカルボニルアミノ基である。また、炭素数が1~10のアルキルカルボニルアミノ基が好ましい。
アルキルスルホニルアミノ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよく、好ましくは直鎖又は分岐鎖アルキルスルホニルアミノ基、より好ましくは直鎖アルキルスルホニルアミノ基である。また、炭素数が1~10のアルキルスルホニルアミノ基が好ましい。
アリール基とは、5又は6員の芳香族炭化水素環からなる単環又は多環系の基を意味する。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、好ましくは炭素数が6~12のアリールオキシ基である。アリールカルボニルオキシ基としては、好ましくは炭素数が6~12のアリールカルボニルオキシ基である。アリールカルボニルアミノ基としては、好ましくは炭素数が6~12のアリールカルボニルアミノ基である。アリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは炭素数が6~12のアリールスルホニルアミノ基である。
モノアルキルアミノ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよく、好ましくは直鎖又は分岐鎖のモノアルキルアミノ基、より好ましくは直鎖のモノアルキルアミノ基である。また、アルキル基の炭素数が1~10であるモノアルキルアミノ基が好ましい。
ジアルキルアミノ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよく、好ましくは直鎖又は分岐鎖のジアルキルアミノ基、より好ましくは直鎖のジアルキルアミノ基である。また、アルキル基の炭素数が1~10であるジアルキルアミノ基が好ましい。
アリールアミノ基としては、モノアリールアミノ基又はジアリールアミノ基が挙げられ、好ましくは炭素数が6~12のモノアリールアミノ基である。
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、R~Rがアルキル基又は水素原子であり、好ましくはR~Rが炭素数1~8の直鎖アルキル基又は水素原子であり、より好ましくはR~Rが炭素数1~4の直鎖アルキル基又は水素原子であり、更に好ましくはR~Rがメチル基又は水素原子である。
一般式(2)で表される化合物のその他の具体例としては、R、R、R及びRが水素原子であり且つRが水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、又はアリールアミノ基(好ましくは水素原子又はアルキル基、より好ましくは水素原子又は炭素数が1~8のアルキル基、さらに好ましくは水素原子又は炭素数が1~4アルキル基、特に好ましくはメチル基)である。
一般式(2)中のジフェニル尿素構造の一方のベンゼン環に結合する、置換基の置換位置としては、当該ベンゼン環上のアミノカルボニル基に対してオルト位、メタ位又はパラ位が挙げられ、好ましくはオルト位又はメタ位、より好ましくはメタ位である。
【0042】
一般式(2)で表される化合物としては、特に限定されないが、3-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルホナート、2-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルホナート、及び4-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルホナートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの中でも、3-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルホナートが好ましい。
【0043】
一般式(2)で表される化合物の含有量は、特に制限されず、使用されるロイコ染料に応じて調整すればよく、一般にロイコ染料1質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、1.2質量部以上がより一層好ましく、1.5質量部以上が特に好ましい。一方、一般式(2)で表される化合物の含有量は、ロイコ染料1質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、4質量部以下がさらに好ましく、3.5質量部以下が特に好ましい。0.5質量部以上とすることにより、記録性能を高めることができる。一方、10質量部以下とすることにより、高温環境下での耐熱地肌カブリを効果的に抑えることができる。
【0044】
前記一般式(3)で表される化合物の含有量は、特に制限されず、使用されるロイコ染料に応じて調整すればよく、一般にロイコ染料1質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、1.2質量部以上がより一層好ましく、1.5質量部以上が特に好ましい。一方、一般式(3)で表される化合物の含有量は、ロイコ染料1質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、4質量部以下がさらに好ましく、3.5質量部以下が特に好ましい。0.5質量部以上とすることにより、記録性能を高めることができる。一方、10質量部以下とすることにより、高温環境下での耐熱地肌カブリを効果的に抑えることができる。
【0045】
本発明における感熱記録層中には増感剤を含有させることもできる。これにより、記録感度を高めることができる。増感剤としては、例えば、ステアリン酸アミド、メトキシカルボニル-N-ステアリン酸ベンズアミルド、N-ベンゾイルステアリン酸アミド、N-エイコサン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、N-メチロールステアリン酸アミド、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジオクチル、ジフェニルスルホン、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニル、2-ナフチルベンジルエーテル、m-ターフェニル、p-ベンジルビフェニル、シュウ酸ジ-p-クロロベンジルエステル、シュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステル、シュウ酸ジベンジルエステル、p-トリルビフェニルエーテル、ジ(p-メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-メトキシフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-クロロフェノキシ)エタン、1,2-ジフェノキシエタン、1-(4-メトキシフェノキシ)-2-(3-メチルフェノキシ)エタン、p-メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4-ジ(フェニルチオ)ブタン、p-アセトトルイジド、p-アセトフェネチジド、N-アセトアセチル-p-トルイジン、1,2-ジフェノキシメチルベンゼン、ジ(β-ビフェニルエトキシ)ベンゼン、p-ジ(ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1-イソプロピルフェニル-2-フェニルエタン、アジピン酸ジ-o-クロルベンジル、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、1,3-ビス(2-ナフトキシ)プロパン、ジフェニル、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらの中でも、耐水可塑剤性、耐アルコール性を低下させずに増感効果を得る観点から、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタンが好ましい。これらは支障のない範囲で併用できる。増感剤の含有割合は、増感のために有効な量とすればよく、通常は、感熱記録層の全固形量のうち、5~30質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましく、15~25質量%がさらに好ましい。
【0046】
本発明では、感熱記録層中に、主に発色像の保存性をより一層高めるために、保存性改良剤をさらに含有させることができる。このような保存性改良剤としては、例えば、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-〔1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)〕ビスフェノール、4,4’-〔1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)〕ビスフェノール等のフェノール化合物;4-ベンジルオキシフェニル-4’-(2-メチル-2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニルスルホン、4-(2-メチル-1,2-エポキシエチル)ジフェニルスルホン、4-(2-エチル-1,2-エポキシエチル)ジフェニルスルホン等のエポキシ化合物;並びに1,3,5-トリス(2,6-ジメチルベンジル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。もちろん、これらに制限されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0047】
保存性改良剤を使用する場合、その使用量は、保存性改良のために有効な量とすればよく、通常は、感熱記録層の全固形量のうち、1~25質量%程度が好ましく、5~20質量%程度がより好ましい。
【0048】
感熱記録層を構成する他の成分材料としては、必要により、無機または有機の顔料、架橋剤、ワックス類、金属石鹸、耐水化剤、分散剤、有色染料、蛍光染料等の助剤を用いることができる。
【0049】
無機顔料としては、各種のものが使用できるが、具体例としては、軽質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、カオリン等のクレー、タルク等の無機顔料が挙げられる。これらの中でも、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム及びクレーからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。無機顔料の含有割合は、広い範囲から選択できるが、感熱記録層の全固形量のうち、2~40質量%が好ましく、3~30量%がより好ましく、4~20質量%がさらに好ましい。
【0050】
架橋剤を感熱記録層中に含有させることにより、感熱記録層の耐水性を向上させることができる。架橋剤としては、例えば、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、グリオキシル酸塩、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物;過硫酸アンモニウム、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、四硼酸ソーダ、四硼酸カリウム等の無機化合物;硼酸、硼酸トリエステル、硼素系ポリマー、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、グリオキシル酸塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。架橋剤の使用量は、感熱記録層の全固形量のうち、0.2~5質量%程度が好ましく、0.3~3質量%程度がより好ましい。
【0051】
感熱記録層は、例えば、水を分散媒体とし、ロイコ染料及び顕色剤をそれぞれ、必要により増感剤若しくは保存性改良剤と一緒に、又は別々にボールミル、コボールミル、アトライター、縦型及び横型のサンドミル等の各種撹拌・湿式粉砕機によりポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、スチレン-無水マレイン酸共重合体塩等のような水溶性合成高分子化合物、その他界面活性剤と共に分散して、それぞれの分散液とした後、平均粒子径が2μm以下となるように微細化して得た分散液を用いて、接着剤、必要により助剤等を混合することにより調製された感熱記録層用塗料を塗布した後、乾燥されて支持体上に形成される。感熱記録層の塗布量は、特に制限されず、乾燥質量で1~12g/m程度が好ましく、2~10g/mがより好ましく、2.5~8g/mがさらに好ましく、3~5.5g/mが特に好ましい。なお、感熱記録層は必要に応じて2層以上に分けて形成することができ、各層の組成と塗布量とは、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0052】
[保護層]
感熱記録体では、感熱記録層上に必要に応じて保護層を備えることもできる。保護層は、顔料及び接着剤を含有することが好ましい。さらに保護層には、サーマルヘッドに対するスティッキングを防止する目的で、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸亜鉛のような滑剤を含有させることが好ましく、紫外線吸収剤を含有させることもできる。また、光沢を有する保護層を設けることにより、製品の付加価値を高めることもできる。
【0053】
保護層に含有される顔料としては、特に限定されず、例えば無定形シリカ、カオリン、クレー、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、コロイダルシリカ、合成層状雲母等の無機顔料、尿素-ホルマリン樹脂フィラー等のプラスティックピグメント等が挙げられる。
【0054】
保護層に含有される接着剤としては、特に制限されず、水溶性又は水分散性の水性接着剤を使用できる。接着剤は、感熱記録層に使用できるものの中から適宜選択することができる。これらの接着剤のうち、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等の各種変性ポリビニルアルコールがより好ましく用いられる。耐水ブロッキング性を向上する観点から、さらに好ましくはアセトアセチル変性ポリビニルアルコールである。
【0055】
保護層は、例えば、水を分散媒体とし、顔料と接着剤、必要により助剤等を混合することにより調製された保護層用塗料を塗布した後、乾燥されて感熱記録層上に形成される。保護層用塗料の塗布量は、特に制限されず、乾燥質量で0.3~15g/m程度が好ましく、0.3~10g/m程度がより好ましく、0.5~8g/m程度がさらに好ましく、1~8g/m程度が特に好ましく、1~5g/m程度がより一層好ましい。なお、保護層は、必要に応じて2層以上に分けて形成することができ、各層の組成と塗布量とは、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0056】
[その他の層]
本発明では、支持体の少なくとも一方面に粘着層を有することが好ましい。これにより、感熱記録体の付加価値を高めることができる。粘着層としては、例えば、一方面に粘着剤、再湿接着剤、ディレードタック型の粘着剤等による塗布加工を施すことにより粘着紙、再湿接着紙、ディレードタック紙等とすることができる。また、支持体の感熱記録層とは逆側の面を利用して、これに熱転写用紙、インクジェット記録用紙、ノーカーボン用紙、静電記録用紙、ゼオグラフィー用紙等としての機能を付与し、両面記録が可能な記録紙とすることもできる。もちろん、両面感熱記録体とすることもできる。また、感熱記録体裏面からの油及び可塑剤の浸透を抑制したり、カールコントロールしたり、帯電防止したりするためにバック層を設けることもできる。保護層上にシリコーンを含有した剥離層を塗布加工し、一方面に粘着剤を塗布加工することにより、剥離紙を必要としないライナーレスラベルとすることも可能である。
【0057】
[感熱記録体]
感熱記録体は、支持体上に上記各層を形成することにより製造することができる。支持体上に上記各層を形成する方法としては、エアナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、カーテン法、スロットダイ法、スライドダイ法、エクストルージョン法等の既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。また、各塗料は1層ずつ塗布及び乾燥して各層を形成してもよく、同一の塗料を2層以上に分けて塗布してもよい。さらに、2つ以上の層を同時に塗布する同時多層塗布を行ってもよい。また、各層を形成し終えた後、又は全ての層を形成し終えた後の任意の過程で、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等の既知の方法を用いて平滑化処理することができる。
【実施例0058】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。平均粒子径、最大粒子径等の粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置SALD2200(島津製作所社製)によって測定した。ここで、平均粒子径とは、メジアン径(D50)である。
【0059】
(実施例1)
(1)ロイコ染料分散液(A液)調製
3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が0.5μmになるまで粉砕してロイコ染料分散液(A液)を得た。
【0060】
(2)顕色剤分散液(B液)調製
N,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕して顕色剤分散液(B液)を得た。
【0061】
(3)増感剤分散液(C液)調製
1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン(商品名:KS-232、三光社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕して増感剤分散液(C液)を得た。
【0062】
(4)感熱記録層用塗料の調製
A液34.1部、B液68.2部、C液45.5部、オレフィン-アクリル酸系共重合体塩(商品名:ハイテックS-3121、エチレン-アクリル酸共重合体アンモニア塩の水性ディスパージョン、東邦化学社製、固形分26.5%)26部、スチレン-ブタジエン系ラテックス(商品名:スマーテックスPA-9281、日本A&L社製、固形分濃度48%)41.7部、炭酸カルシウム(商品名:ブリリアント15、白石工業社製)5部、アジピン酸ジヒドラジド(大塚化学社製)0.5部、及び水200部を混合撹拌して感熱記録層用塗料を得た。
【0063】
(5)保護層用塗料の調製
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセネックスZ-200、日本合成社製)の12%水溶液208部、カオリン(商品名:HYDRAGLOSS90、KaMinLLC社製)55部、ポリエチレンワックス(商品名:ケミパールW-400、三井化学社製、固形分濃度40%)2.5部、ステアリン酸亜鉛(商品名:ハイドリンZ-8-36、中京油脂社製、固形分濃度36%)20.8部、及び水150部からなる組成物を混合撹拌して保護層用塗料を得た。
【0064】
(6)感熱記録体の作製
ポリオレフィン系樹脂と白色無機顔料として炭酸カルシウムを加熱混練して、ダイから押し出し、縦方向に延伸したものの両面にポリオレフィン系樹脂と白色無機顔料として炭酸カルシウムからなるフィルムを積層し、横方向に延伸して不透明化して製造される合成紙(商品名:ユポFPG95、紙厚95μm、ユポコーポレーション社製)の一方の面に、感熱記録層用塗料を乾燥質量が4.0g/mとなるように塗布及び乾燥して感熱記録層を形成し、その上に保護層用塗料を乾燥質量が2.5g/mとなるように塗布及び乾燥して保護層を形成した後、スーパーキャレンダーで表面を平滑化して感熱記録体を得た。
【0065】
(実施例2)
顕色剤分散液(D液)調製
3-[(フェニルカルバモイル)アミノ]フェニル-4-メチルベンゼンスルホナート40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕して顕色剤分散液(D液)を得た。
【0066】
実施例1の感熱記録層用塗料の調製において、B液に代えてD液を用いた以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0067】
(実施例3)
顕色剤分散液(E液)調製
前記一般式(3)で表される化合物40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕して顕色剤分散液(E液)を得た。
【0068】
実施例1の感熱記録層用塗料の調製において、B液に代えてE液を用いた以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0069】
(比較例1)
顕色剤分散液(F液)調製
N-p-トリルスルホニル-N’-3-(p-トリルスルホニルオキシ)フェニルウレア(商品名:PF-201、Solenis社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕して顕色剤分散液(F液)を得た。
【0070】
顕色剤分散液(G液)調製
4,4’-ビス〔(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン(商品名:UU、ケミプロ化成社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕して顕色剤分散液(G液)を得た。
【0071】
実施例1の感熱記録層用塗料の調製において、B液68.2部に代えて、F液56.8部とG液11.4部を用いた以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0072】
(比較例2)
顕色剤分散液(H液)調製
4-アリルオキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホン(商品名:BPS-MAE、日華化学社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕して顕色剤分散液(H液)を得た。
【0073】
顕色剤分散液(I液)調製
下記一般式(4)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物(商品名:D-90、日本曹達社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕して顕色剤分散液(I液)を得た。
【0074】
【化4】
(式中、nは1~6の整数を表す。)
【0075】
実施例1の感熱記録層用塗料の調製において、B液68.2部に代えて、H液56.8部とI液11.4部を用いた以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0076】
かくして得られた感熱記録体について、以下の評価を行った。その結果は、表1に示す通りであった。
【0077】
[記録濃度]
感熱記録評価機(商品名:TH-PMD、大倉電機社製)を用い、最高発色濃度が得られる印加エネルギー:0.25mJ/dotにて各感熱記録体を記録し、得られた記録部の反射濃度を分光濃度計(X-Rite504、X-Rite社製)で測定した。記録濃度の評価基準を下記とした。
濃度1.30以上:印字が鮮明で優れている。
濃度1.10以上1.30未満:バーコードの読取が良好で、実用上問題ない。
濃度1.10未満:バーコードの読取性がやや劣り、実用上問題あり。
【0078】
[100℃耐熱性]
感熱記録評価機(商品名:TH-PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー:0.25mJ/dot(最高発色濃度)にて各感熱記録体を記録し、得られた紙片を縦9cm横4cmに裁断する。得られた紙片を100℃の乾燥機中に1時間静置する処理を施した。処理前後の地肌部(未印字の白紙部)と処理後の記録部の反射濃度を分光濃度計(X-Rite504、X-Rite社製)で測定した。地肌部の評価基準を下記とした。記録部の評価基準は、前記の記録濃度に準じる。
地肌部濃度が0.10以下:耐熱性に優れている。
地肌部濃度が0.20以下0.10超:実用上問題ない。
地肌部濃度が0.20超:耐熱地肌カブリが大きく、耐熱性に劣る。
【0079】
[転写試験]
感熱記録評価機(商品名:TH-PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー:0.25mJ/dot(最高発色濃度)にて各感熱記録体を記録し、得られた紙片を縦9cm横4cmに裁断し、同じ紙片を2枚用意する。得られた紙片のそれぞれの印字面側に霧吹きで水を塗布し、2枚の印字面どうしを合わせる。合わせた試験片の上に1kgの重りを載せて、23℃で65%RHの環境下にて3日間静置した。3日間静置した後、試験片と重りを40℃の乾燥機にて1日静置し、水分を蒸発させた。水分を蒸発させた後、2枚の試験片を剥離し、互いの印字面に他方の印字が転写されていないか目視で観察した。印字転写の評価基準を下記とした。
○:目視にて印字の転写が全く無い。
×:目視にて印字の転写が認められる。
【0080】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の感熱記録体は、印字面に対して印字が転写する虞がなく、耐熱地肌カブリ性に優れることから、耐水ブロッキング性が求められ、過酷な環境下で使用されるハンディーターミナル、配送伝票等の用途での性能向上に対する要請を十分に満たすものである。