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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093226
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】スリット照明
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/02 20060101AFI20240702BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20240702BHJP
   F21S 4/24 20160101ALI20240702BHJP
   F21Y 107/70 20160101ALN20240702BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240702BHJP
【FI】
F21S8/02 410
E04B9/00 H
F21S4/24
F21Y107:70
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209461
(22)【出願日】2022-12-27
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100208269
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】北川原 望
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 江美
(57)【要約】
【課題】 天井面において、所定の輪郭形状を強調することができ、メンテナンスが容易な照明を提供する。
【解決手段】 天井面4aの天井下地材の一部に形成された所定幅のスリット15が所定の帯形状をなして延在する天井下地材に支持された箱状体20内に天井面4aの下方からスリット15を通じて見えないように、箱状体20の内部空間の所定位置に保持され、内部空間に向けて発光するLED光源11を備える。LED光源11の発光により箱状体20の内部空間で反射した光が、スリット15を通じて天井面4aの下方を、所定の光の幅で所定の帯形状をなして照らす。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面から下方に向いた開放面を有し、天井下地材の一部で前記開放面の一部を覆うことで、前記天井面に所定幅のスリットが形成され、該スリットが所定の帯形状をなして延在するように、前記天井面の一部を構成する天井下地材に支持された箱状体と、
前記天井面の下方から前記スリットを通じて見えないように、前記箱状体の内部空間の所定位置に保持され、前記内部空間に向けて発光する帯状光源と、
を備え、
前記帯状光源の発光により前記箱状体の内部空間で反射した光が、前記スリットを通じて前記天井面の下方を、所定の光の幅で所定の帯形状をなして照らすことを特徴とするスリット照明。
【請求項2】
前記箱状体は、前記スリットが建物の下階の天井面と上階の床面とをつなぐように設けられた吹き抜け部の下端開口の周縁に沿って形成されるように、前記下階の天井面の一部を構成する天井下地材に支持された請求項1に記載のスリット照明。
【請求項3】
前記スリットは、前記開口面の一部において、前記天井下地材の端部に取り付けられた仕切り板と前記箱状体の一部との間に形成された請求項1に記載のスリット照明。
【請求項4】
前記帯状光源は、前記仕切り板の上端近傍に保持された請求項1に記載のスリット照明。
【請求項5】
前記帯状光源は、湾曲自在なLEDテープライトである請求項1または請求項3に記載のスリット照明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスリット照明に係り、建築物内に設けられた、半円形、円形等の断面形状を有する吹抜け部の周縁部を際立たせるスリット照明に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築化照明の間接照明として、たとえば折り上げ天井に組み込まれて設けられるコーブ照明などが種々提案されている。コーブ照明の一例として、光源となるテープLEDを小型の支持台上に取り付け、天井を照らすようにした間接照明が提案されている(特許文献1)。この間接照明の支持台は、室内側に現れた梁側面に片持ち状に突出するように取り付けられ、支持台上に天井面を照らすテープLEDが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-115491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された間接照明は、上述したように、光源が躯体の直線梁の側面に取り付けられた支持台上に設けられるため、梁が近くに配置されていない吹き抜け部、特にその断面形状が円形や半円形等のデザインに設計された吹き抜け部に用いる間接照明として採用することはできない。
【0005】
また、吹き抜け部の円形等の断面形状を強調するために、吹き抜け部の周縁に沿った帯状に光るような間接照明を配置したデザインの場合、従来の照明器具では、照射される部分の光の幅や、円形などの曲線形状に倣って照明の寸法を合わせることはできない。
【0006】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、光源から照射され、内部の面板で反射下方を照らす光を任意の幅に設定でき、円形等の曲線形状の吹き抜け部の形状を強調することができる間接照明を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスリット照明は、天井面から下方に向いた開放面を有し、天井下地材の一部で前記開放面の一部を覆うことで、前記天井面に所定幅のスリットが形成され、該スリットが所定の帯形状をなして延在するように、前記天井面の一部を構成する天井下地材に支持された箱状体と、前記天井面の下方から前記スリットを通じて見えないように、前記箱状体の内部空間の所定位置に保持され、前記内部空間に向けて発光する帯状光源とを備え、前記帯状光源の発光により前記箱状体の内部空間で反射した光が、前記スリットを通じて前記天井面の下方を、所定の光の幅で所定の帯形状をなして照らすことを特徴とする。
【0008】
前記箱状体は、前記スリットが建物の下階の天井面と上階の床面とをつなぐように設けられた吹き抜け部の下端開口の周縁に沿って形成されるように、前記下階の天井面の一部を構成する天井下地材に支持されたことが好ましい。
【0009】
前記スリットは、前記開口面の一部において、前記天井下地材の端部に取り付けられた仕切り板と前記箱状体の一部との間に形成されたことが好ましい。
【0010】
前記帯状光源は、前記仕切り板の上端近傍に保持されたことが好ましい。
【0011】
前記帯状光源は、湾曲自在なテープライトであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スリット照明として、吹き抜け部の周縁に形成されたスリットから下方を照らす光を任意の幅に設定でき、曲線形状の吹き抜け部の輪郭形状を強調することができ、また照明カバー等がないためメンテナンスが容易であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のスリット照明を天井面に現れた吹き抜け部下端の周縁に設けた一実施形態を示した斜視図。
図2図1に示したスリット照明の配置例を示した天井見上げ図。
図3】本発明のスリット照明が建物内の吹き抜け部での設置例を示した建物の部分断面図。
図4】(a)、(b):本発明のスリット照明の断面構成を拡大して示した部分断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のスリット照明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の2基のスリット照明10A、10Bが、建物の上下の階をつなぐ空間となる2箇所の吹き抜け部2A、2Bの下階の天井面4aに現れる下端開口3A、3Bの周縁に沿って設けられた例を示している。図2は、図1に示された天井面4aを見上げた状態の吹き抜け部2A、2B及びスリット照明10A、10Bの位置関係を示している。図3は、一例として建物の4階~6階に設けられた吹き抜け部2A、2Bの各階の天井面4a、5aに現れる下端開口3A、3Bの周縁及び天井面6aに沿って設けられたスリット照明10A、10B、10Cの設置例を断面で示している。2箇所の吹き抜け部2A、2Bは、それぞれ断面形状が半円形、円形、すなわち吹き抜け部2の空間形状が円筒形あるいは半割円筒形状をなす。各吹き抜け部2A、2Bの下端開口3A、3Bの周縁に沿って所定幅のスリット15を有する照明(スリット照明10)が設けられている。 なお、本明細書中、所定のスリット幅で長い帯状に光る照明を「スリット照明」と呼ぶが、そのスリット幅、照明の延長は、吹き抜け部の下端開口3A、3Bの形状に倣って適宜設定されるものとする。また、以後の記載において、複数の吹き抜け部、例えば吹き抜け部2A、2Bを区別しない場合には、吹き抜け部2、下端開口3と記し、スリット照明10A、10Bを区別しない場合には、スリット照明10とのみ記す。
【0016】
上述した2箇所の吹き抜け部2A、2Bは、図3に示したように、4階の天井面4aと5階の床面5fとをつなぐように設けられている。また、5階の天井面5aと6階の床面6fとの間には、見上げ時に半円形をなす吹き抜け部2Aのみが設けられている。これらの吹き抜け部2A、2Bの上半部は、上階側の床面から立ち上がる所定高さの手摺壁7で囲まれるように構成されている。さらに、6階の天井面6aには吹き抜け部は設けられておらず、4階、5階の天井面4a、5aに現れる半円形状の吹き抜け部2Aの下端開口3Aと同寸法の半径の半円形の帯状のスリット照明10Cが設けられている。
【0017】
また、図2に示したように、2箇所の吹き抜け部2A、2Bでは、円形、半円形をなす下端開口3A、3Bの周縁に沿ってスリット15が位置するようにスリット照明10が設けられている。これにより、スリット照明10の点灯時にはスリット15が円形あるいは半円形状に光り、吹き抜け部2A、2Bの下端開口3A、3Bの周縁を際立たせることができる。
【0018】
本実施形態では、各階の天井は、上階を支持する梁部材等に吊持され天井下地材(図示せず)および天井面を構成する天井面材8とから構成された吊り天井構造からなる。各スリット照明10は、吹き抜け部に面した壁際位置において、天井下地材と吹き抜け部2を構成する、図示しない各部材(柱材、横架材)とに支持されている。
【0019】
各図において、薄墨が施された部分はスリット照明10が点灯した状態を示している。スリット照明10は、各図に示したように、スリット照明10の内部に設置されたLED光源11(たとえば図4(a)、その構成は後述する。)が発光すると、LED光源11からの直接照射光と、光源を囲むように設けられた天板12、側板13からなる面板表面でムラなく反射した反射光とにより、下方に向いて開放して設けられたスリット15からムラのない所定の光の幅で下方を照らすことができる。
【0020】
以下、本実施形態のスリット照明10の構成について、図2図4を参照して説明する。図4(a)は、帯状光源としてのLED光源11を内部に備えたスリット照明10の拡大断面図である。同図に拡大して示したスリット照明10の外形は、図2図3に示したように、4,5階の天井面4a、5aに現れた吹き抜け部2A、2Bの下端開口3A、3Bの形状に倣った円形状、半円形状をなすように天井下地材と吹き抜け部の一部に固定支持された箱状体20からなる。この箱状体20は、内部空間の高さが約360mm、幅が約400mmの下面が開放された略逆U字形状断面を有し、吹き抜け部2の下端開口3の縁に沿った帯状をなす。箱状体20の下面の約半分の範囲は、天井下地材の端部で覆われ、その部分以外が幅約200mmのスリットとなっている。図4(b)は、天板14として半円筒形状の曲面からなる面板を採用した例を示している。同図に示したスリット照明10では、スリット15内に図4(a)のおいて現れる天板と側板との境界線が現れず、また天板14が曲面として現れる。このため、スリット照明10の点灯時に、光は光源から箱状体20内に照射され、曲面(天板14)で反射し、スリット15を通じて下方の室内を照らす際、明るさにムラのない安定した反射光を発することができる。その他、LED光源11の上方に位置して反射面を構成する天板12(図4(a))を傾斜させることで、スリット15から下方を照らす反射光を所定方向に偏向させるようにすることも可能である。
【0021】
本実施形態では、スリット照明10の箱状体20の内面には、反射効果を高める白色の石膏ボードからなる反射板26が貼着され、箱状体20内部に設置されたLED光源11の色味がそのまま明かりの色となる。本実施形態ではLED光源11として電球色が採用されている。このため、スリット照明10としての色味は暖色となっている。採用されるLED光源11については、天井面の色と調和する各色の光源を採用することが好ましい。なお、図4(b)に示したように、内面が曲面からなる場合には、不燃性樹脂を所定の曲面形状に成形した板材を使用することが好ましい。
【0022】
また、箱状体20の下面の一部を覆う下地材の端面には鉛直仕切り板16が取り付けられている。本実施形態の鉛直仕切り板16は、高さ約160mmあり、この鉛直仕切り板16と、対向する側板とによって仕切られることで、所定幅(本実施形態では200mm)のスリット15が形成されている。このため、天井面(たとえば4a)に現れるスリット15から内部が臨めるような奥行き感が得られる。本実施形態の場合、箱状体20の内部空間21の高さが約360mmに対して鉛直仕切り板16の高さが約160mmで、その高さ比率は44%である。鉛直仕切り板16の高さ、箱状体20内のLED光源11が発光した際に、LED光源11の光源位置と影部分との兼ね合いから、箱状体20の内部空間21が十分明るく照らされるように設定することが好ましい。たとえば、鉛直仕切り板16の高さは、内部空間21の高さの40~50%程度とすることが好ましい。
【0023】
一方、スリット15のスリット幅と箱状体20の内部空間21の幅との関係においては、たとえばスリット照明10のスリット15は各階の天井面(たとえば4a、5a)に形成されるため、各階の床面(たとえば4f、5f)に立った人が天井を見上げた際、スリット照明10のデザインとして、十分な光量で吹き抜け部2の下端開口3に沿って帯状をなす光のラインが現れ、下端開口3の周縁を際立たせているように感じられることが好ましい(図3)。このためには、スリット幅は本実施形態のように、200mm以上とすることが好ましい。また、このスリット幅が確保された状態で、十分な光量が得られるように、箱状体20の内部空間21の幅はスリット幅の2倍程度(本実施形態では約400mm)に設定することが好ましい。
【0024】
鉛直仕切り板16のスリット15側と反対側面には支持フレーム17が箱状体20の延長方向に沿って取り付けられている。この支持フレーム17には所定サイズの軽量形鋼が用いられ、その上面に帯状のLED光源11が箱状体20の延長方向に沿って固定保持されている。これにより、LED光源11を箱状体20の所定位置(高さ、幅方向位置)に保持することができる。支持フレーム17としては、形鋼に代えて合成樹脂フレーム等、種々の部材を使用することができる。
【0025】
本発明のLED光源11には、柔軟性があり、自在に湾曲可能な帯状のLEDテープライトが用いられている。LEDテープライトは、個々のLEDモジュールをテープ状の支持体上に所定間隔で配線して貼着されたテープ状の光源あるいはLEDチップをテープ状基板に実装したテープ状の光源等の公知の照明部品であり、本発明では、照明としての仕様が適合すれば、テープ状、帯状の種々のLED光源11が適用可能である。また、上述したように、照明の色味も電球色の他、温白色、昼白色、昼光色等、室内空間の用途にあったものを選択し、採用することができる。
【0026】
スリット照明10のテープライト11(LED光源11)の発光時の作用について簡単に説明する。支持フレーム17上のテープライト11が図4(a)に示したように発光すると、その照射光は、所定の照射角の範囲にわたり箱状体20内面の天板12の全面と、側板13の上部に照射され、さらに対向する側板13と鉛直仕切り板16間で反射した反射光がスリット15側に導かれ、スリット15から下方を照らす明かりとなる。下方から天井面(たとえば4a)を見上げると、吹き抜け部2の周縁に倣って帯状をなして光るため、吹き抜け部2の輪郭が際立って見えるという視覚効果が得られる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
2,2A,2B 吹き抜け部
3,3A,3B 下端開口
4a(5a) 4階の天井面(5階の天井面)
4f(5f) 4階の床面(5階の床面)
10,10A,10B スリット照明
11 LED光源(テープライト)
12,14 天板
13 側板
15 スリット
16 鉛直仕切り板
17 支持フレーム
20 箱状体
図1
図2
図3
図4