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特開2024-93233画像復号装置、画像復号方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093233
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】画像復号装置、画像復号方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/105 20140101AFI20240702BHJP
   H04N 19/139 20140101ALI20240702BHJP
【FI】
H04N19/105
H04N19/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209474
(22)【出願日】2022-12-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「3次元空間データの無線伝送に向けた高能率圧縮技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木谷 佳隆
【テーマコード(参考)】
5C159
【Fターム(参考)】
5C159TA63
5C159TB08
5C159TC12
(57)【要約】
【課題】参照可能領域の外側を参照する動きベクトルが参照可能領域外にクリップされた後、かかる動きベクトルを原点とするテンプレートマッチングの探索範囲が、参照画像を含む参照可能領域を超えることを回避すること。
【解決手段】本発明に係る画像復号装置200において、動き補償部208は、動きベクトルが参照画像を含む参照可能領域外を参照する場合に、テンプレートマッチングが有効であるか否かに応じて、前記動きベクトルのクリップ位置を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像復号装置であって、
制御情報を復号する復号部と、
復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、
前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、
前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部とを具備し、
前記動き補償部は、動きベクトルが参照画像を含む参照可能領域外を参照する場合に、テンプレートマッチングが有効であるか否かに応じて、前記動きベクトルのクリップ位置を制御することを特徴とする画像復号装置。
【請求項2】
画像復号装置であって、
制御情報を復号する復号部と、
復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、
前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、
前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部とを具備し、
前記動き補償部は、動きベクトルが参照画像を含む参照可能領域外を参照する場合に、テンプレートマッチングが有効であるか否か及び復号対象ブロックの幅又は高さに応じて、前記テンプレートマッチングの探索範囲を制限することを特徴とする画像復号装置。
【請求項3】
前記動き補償部は、前記テンプレートマッチングが有効であるか否かに応じて、前記動きベクトルのクリップ位置を制御する場合に、前記動きベクトルの参照位置を整数画素精度位置に常に丸めることを特徴とする請求項1の画像復号装置。
【請求項4】
画像復号方法であって、
制御情報を復号する工程Aと、
復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成する工程Bと、
前記復号済み画素を蓄積する工程Cと、
前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する工程Dとを有し、
前記工程Dにおいて、動きベクトルが参照画像を含む参照可能領域外を参照する場合に、テンプレートマッチングが有効であるか否かに応じて、前記動きベクトルのクリップ位置を制御することを特徴とする画像復号方法。
【請求項5】
コンピュータを、画像復号装置として機能させるプログラムであって、
前記画像復号装置は、
制御情報を復号する復号部と、
復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、
前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、
前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部とを具備し、
前記動き補償部は、動きベクトルが参照画像を含む参照可能領域外を参照する場合に、テンプレートマッチングが有効であるか否かに応じて、前記動きベクトルのクリップ位置を制御することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像復号装置、画像復号方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1では、動きベクトルが参照画像外を参照する場合であっても動き補償できるように、画面境界の画素値を参照画像境界の外側方向に所定画素数だけ複製(パディング)した領域(すなわち、反復パディング領域)が規定されている。
【0003】
さらに、非特許文献1には、動きベクトルが参照画像や反復パディング領域を含む参照可能な領域外を参照する場合に、動きベクトルの参照位置を参照可能な領域内に平行移動(クリップ)する技術が開示されている。
【0004】
非特許文献2には、動きベクトルを修正するテンプレートマッチングが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ITU-T H.266/VVC
【非特許文献2】Algorithm description of Enhanced Compression Model 6(ECM 6)、JVET-AA2025
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献2で開示されているテンプレートマッチングが有効な場合で且つ動きベクトルが参照画像を含む参照可能な領域(参照可能領域)の外側を参照する場合に、クリップされた動きベクトルを原点とするテンプレートマッチングの探索範囲が、かかる参照可能領域を超えるという問題点があった。 そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、参照可能領域の外側を参照する動きベクトルがクリップされた後、かかる動きベクトルを原点とするテンプレートマッチングの探索範囲が、参照画像を含む参照可能領域を超えることを回避することができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴は、画像復号装置であって、制御情報を復号する復号部と、復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部とを具備し、前記動き補償部は、動きベクトルが参照画像を含む参照可能領域外を参照する場合に、テンプレートマッチングが有効であるか否かに応じて、前記動きベクトルのクリップ位置を制御することを要旨とする。
【0008】
本発明の第2の特徴は、画像復号装置であって、制御情報を復号する復号部と、復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部とを具備し、前記動き補償部は、動きベクトルが参照画像を含む参照可能領域外を参照する場合に、テンプレートマッチングが有効であるか否か及び復号対象ブロックの幅又は高さに応じて、前記テンプレートマッチングの探索範囲を制限することを要旨とする。
【0009】
本発明の第3の特徴は、画像復号方法であって、制御情報を復号する工程Aと、復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成する工程Bと、前記復号済み画素を蓄積する工程Cと、前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する工程Dとを有し、前記工程Dにおいて、動きベクトルが参照画像を含む参照可能領域外を参照する場合に、テンプレートマッチングが有効であるか否かに応じて、前記動きベクトルのクリップ位置を制御することを要旨とする。
【0010】
本発明の第4の特徴は、コンピュータを、画像復号装置として機能させるプログラムであって、前記画像復号装置は、制御情報を復号する復号部と、復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部とを具備し、前記動き補償部は、動きベクトルが参照画像を含む参照可能領域外を参照する場合に、テンプレートマッチングが有効であるか否かに応じて、前記動きベクトルのクリップ位置を制御することを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、参照可能領域の外側を参照する動きベクトルが参照可能領域外にクリップされた後、かかる動きベクトルを原点とするテンプレートマッチングの探索範囲が、参照画像を含む参照可能領域を超えることを回避することができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る画像復号装置200の機能ブロックの一例を示す図である。
図2図2は、テンプレートマッチング(TM)について説明するための図である。
図3図3は、非特許文献1及び非特許文献2で開示されている動き補償部208における動きベクトル導出時の参照可能領域の一例を示す図である。
図4図4は、図4に、動き補償パディング領域の具体的な発生例について説明するための図である。
図5図5は、非特許文献1で開示されている参照可能領域に対して、動きベクトルが参照画像右側の参照可能領域外を参照する場合のクリップ方法の一例を示す図である。
図6図6は、非特許文献1で開示されている参照可能領域に対して、動きベクトルが参照画像左側の参照可能領域外を参照する場合のクリップ方法の一例を示す図である。
図7図7は、テンプレートマッチングが有効である場合で且つ動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合に、かかる動きベクトルをクリップするケースの一例を示す図である。
図8図8は、テンプレートマッチングが有効である場合で且つ動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合に、かかる動きベクトルをクリップするケースの一例を示す図である。
図9図9は、テンプレートマッチングが有効である場合で且つ動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合に、かかる動きベクトルをクリップするケースの一例を示す図である。
図10図10は、テンプレートマッチングが有効である場合で且つ動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合に、かかる動きベクトルをクリップするケースの一例を示す図である。
図11図11は、解決方法1について説明するための図である。
図12図12は、解決方法2について説明するための図である。
図13図13は、解決方法2について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は、適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0014】
<第1実施形態>
以下、図1図13を参照して、本実施形態に係る画像復号装置200について説明する。図1は、本実施形態に係る画像復号装置200の機能ブロックの一例について示す図である。
【0015】
図1に示すように、画像復号装置200は、符号入力部210と、復号部201と、逆量子化部202と、逆変換部203と、イントラ予測部204と、加算器206と、蓄積部207と、動き補償部208と、画像出力部220とを有する。
【0016】
符号入力部210は、画像符号化装置によって符号化された符号情報を取得するように構成されている。
【0017】
復号部201は、符号入力部210から入力された符号情報から、制御情報並びに量子化値を復号するように構成されている。例えば、復号部201は、かかる符号情報に対して可変長復号を行うことで制御情報及び量子化値を出力するように構成されている。
【0018】
ここで、量子化値は、逆量子化部202に送られ、制御情報は、動き補償部208及びイントラ予測部204に送られる。なお、かかる制御情報は、逆量子化部202、動き補償部208及びイントラ予測部204等の制御に必要な情報を含み、シーケンスパラメータセットやピクチャパラメータセットやピクチャヘッダやスライスヘッダ等のヘッダ情報を含んでもよい。
【0019】
逆量子化部202は、復号部201から送られた量子化値を逆量子化して復号された変換係数とするように構成されている。かかる変換係数は、逆変換部203に送られる。
【0020】
逆変換部203は、逆量子化部202から送られた変換係数を逆変換して復号された予測残差とするように構成されている。かかる予測残差は、加算器206に送られる。
【0021】
イントラ予測部204は、復号済み画素と復号部201から送られた制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するように構成されている。ここで、復号済み画素は、加算器206を介して得られて蓄積部207に蓄積されるものである。また、第1予測画素は、加算器206で予測残差と加算するための予測画素である。なお、第1予測画素は、加算器206に送られる。
【0022】
蓄積部207は、加算器206から送られた復号済み画素を累積的に蓄積するように構成されている。かかる復号済み画素は、蓄積部207を介して動き補償部208からの参照を受ける。
【0023】
動き補償部208は、蓄積部207に蓄積された復号済み画素と復号部201から送られた制御情報とに基づいて第2予測画素を生成するように構成されている。ここで、第2予測画素は、加算器206で予測残差と加算するための予測画素である。第2予測画素は、加算器206に送られる。
【0024】
加算器206は、逆変換部203から送られる予測残差と、入力された第1予測画素及び第2予測画素のいずれかを加算して復号済み画素を得るように構成されている。かかる復号済み画素は、画像出力部220、蓄積部207及びイントラ予測部204へ送られる。
【0025】
画像出力部220は、加算器206から送信された復号済み画素を出力するように構成されている。
【0026】
以下、本実施形態に係る画像復号装置200の特徴的構成である動き補償部208について説明する。
【0027】
<動きベクトルの導出方法及びインター予測画像の生成方法>
動き補償部208は、インター予測画素を生成するために(すなわち、参照画像から動き補償するために)必要な動きベクトル及び参照画像の組み合わせを導出する。
【0028】
ここで、動き補償部208によって導出される動きベクトル及び参照画像の組み合わせは、非特許文献1に開示されている最大で2つの異なる動きベクトル及び参照画像の組み合わせで構成されてもよい。
【0029】
或いは、動き補償部208によって導出される動きベクトル及び参照画像の組み合わせは、非特許文献2に開示されている複数仮説予測(MHP:Multiple Hypothesis Prediction)やOBMC(Overlapped Block Motion Compensation)のような2つ以上(例えば、3つや4つ)の動きベクトル及び参照画像の組み合わせで構成されてもよい。
【0030】
また、動き補償部208は、動きベクトル及び参照画像の導出方法として、非特許文献1で開示されている適応動きベクトル予測(AMVP:Adaptive Motion Vector Prediction)モード或いはマージモードを用いてもよい。
【0031】
動き補償部208は、AMVPモードを用いる場合、復号対象ブロックの動きベクトルを導出するために、非特許文献1や非特許文献2で開示されている空間AMVPや時間AMVPやヒストリーベースドAMVP等の方法で、動きベクトル予測(MVP:Motion Vector Prediction)の候補を生成し、復号部201から送られる制御情報に応じてMVPの候補を選択する。
【0032】
また、動き補償部208は、AMVPモードを用いる場合、復号部201から送られる制御情報に含まれる動きベクトル差分(MVD:Motion Vector Difference)と選択したMVPの候補とを足し合わせて、最終的な動きベクトル及び参照画像を導出する。
【0033】
動き補償部208は、マージモードを用いる場合、復号対象ブロックの動きベクトルを導出するために、非特許文献1や非特許文献2で開示されている空間マージや時間マージや非隣接空間マージやヒストリーベースドマージやペアワイズ平均マージ等からマージ候補(動きベクトル及び参照画像の組み合わせ)を生成し、マージリスト内に登録する。
【0034】
また、動き補償部208は、マージモードを用いる場合、復号部201から送られる制御情報に含まれるマージインデックスを用いて、マージ候補から最終的な動きベクトル及び参照画像を導出する。
【0035】
さらに、動き補償部208は、上述のAMVPモード又はマージモードにより導出された動きベクトルに対して、非特許文献2で開示されている動きベクトルを修正するテンプレートマッチングを適用してもよい。
【0036】
具体的に、テンプレートマッチングは、図2に示すように、復号対象ブロックの動きベクトル(Initial MV)を原点として、所定の探索範囲(Search range)でテンプレートコストが最小となる参照位置(すなわち、MVD)を導出して、復号対象ブロックの動きベクトル(Initial MV)に足し合わせ、最終的な動きベクトル(Final MV)を生成するという技術である。
【0037】
ここで、テンプレートコストとは、復号対象ブロックと参照ブロックの左部及び/又は上部に隣接する1ライン又は複数ラインの復号済み画素との絶対値差分和(SAD:Sum of Absolute Difference)やアダマール変換絶対値誤差和(SATD:Sum of Absolute Transformed Difference)である。
【0038】
また、動き補償部208は、最終的な動きベクトルの生成のみならず、AMVPモードにおけるMVPの候補の選択に対しても、上述したテンプレートコストの比較を適用してもよい。
【0039】
すなわち、動き補償部208は、AMVPモードにおいて、テンプレートコストが最小となるMVPを選択してもよい。
【0040】
テンプレートマッチングの探索範囲は、図2及び非特許文献2で規定されている動きベクトル(Initial MV)を原点として上下左右方向に8画素(±8画素)の範囲で構成されてもよい。
【0041】
或いは、テンプレートマッチングの探索範囲は、上述の範囲よりも小さい範囲(例えば、±2、±4、±6画素)や、上述の範囲よりも大きい範囲(例えば、±10、±12、±14画素)で構成されてもよい。
【0042】
或いは、テンプレートマッチングの探索範囲は、上下左右方向に対して非対称の探索範囲で構成されてもよい。
【0043】
また、テンプレートマッチングにおけるMVDの探索精度は、図2及び非特許文献2で開示されているように、AMVPモード及びマージモードに対する動きベクトルの精度を考慮して制御されてもよい。
【0044】
例えば、AMVPモードに対して、動きベクトルの精度が非特許文献1で開示されているAMVR(Adaptive Motion Vector Resolution)で4画素精度や整数画素精度である場合は、動き補償部208は、それぞれの画素精度でのみ探索を実施してもよい。
【0045】
マージモードにおいては、非特許文献1で開示されている動き補償用の代替補間フィルタ(Switchable Interpolation Filter)が有効である場合は、動き補償部208は、図2のように、1/2画素精度及び整数画素精度のみで探索してもよい。
【0046】
最後に、動き補償部208は、上述のように導出された動きベクトル及び参照画像を用いて、復号対象ブロックのインター予測画素を生成する。
【0047】
<動きベクトルの参照可能領域>
以下、動き補償部208において導出される動きベクトルの参照可能領域について説明する。
【0048】
図3は、非特許文献1及び非特許文献2で開示されている動き補償部208における動きベクトル導出時の参照可能領域の一例を示す図である。
【0049】
画面全体の動きが速い映像シーン(左右方向や上下方向に素早くカメラパンするような映像)では、予測対象の人物、物体、背景等)が参照画像の外側(参照画像外)にある場合、すなわち、動き補償部208で導出される動きベクトルが参照画像外を参照する場合がある。
【0050】
このような場合に対応するために、非特許文献1及び非特許文献2では、参照画像の外側に所定画素数分だけ参照可能な領域を規定している。
【0051】
具体的には、非特許文献1では、図3(a)に示すように、参照画像外に復号対象ブロック(符号化対象ブロック)の幅又は高さの最大サイズ(すなわち、符号化ツリーブロックの幅又は高さ)(図3の例では、maxCUwidth)に16画素を加えたサイズの反復パディング領域(Repetitive Padding Area)が規定されている。かかる反復パディング領域の大きさ(参照画像の境界からの画素数)として、16画素以外の固定値を設定してもよい。具体的な事例は後述する。
【0052】
かかる反復パディング領域は、参照画像の境界に位置する画素値を参照画像の外側方向に複製(パディング)して生成される。
【0053】
動き補償部208は、参照画像又は反復パディング領域を含む参照可能領域の外側を動きベクトルが参照する場合は、かかる反復パディング領域内に動きベクトルの参照位置を平行移動する(クリップ)する。
【0054】
次に、非特許文献2では、図3(b)に示すように、参照画像の境界と反復パディング領域との間に、動き補償パディング領域(Motion Compensation Padding Area)が規定されている。
【0055】
動き補償パディング領域は、動き補償部208における動き補償の精度向上のために、反復パディング領域のような参照画像境界に位置する画素値の複製ではなく、参照画像の参照画素値を割り当てる。
【0056】
図4に、動き補償パディング領域の具体的な発生例を示す。
【0057】
例えば、図4に示すように、復号対象画像の境界を挟んで、復号対象画像内にある復号対象ブロック(BBlk)及び復号対象画像外にある隣接ブロック(MCP Blk)それぞれの参照ブロックが参照画像内にある場合、隣接ブロックに対する参照ブロックは、参照画像の境界画素値の複製ではなく、参照画像内の画素値を保有する。
【0058】
このような場合において、参照画像境界の画素値の複製ではない参照画素値を動き補償パディング領域として保持することで、動きベクトルが参照画像外で且つ動き補償パディング領域内を参照する場合において、参照画像外に反復パディング領域を規定する場合よりも、動き補償の精度が向上する。
【0059】
動き補償パディング領域の大きさは、非特許文献2に開示されているように、16画素で構成されていてもよいし、図3に示すように、64画素で構成されていてもよい。或いは、動き補償パディング領域の大きさは、これ以外の4画素や8画素や32画素や128画素や256画素といった復号対象ブロックの最小サイズ、最大サイズ又は取りうるサイズ値(2のべき乗の画素数)で構成されていてもよい。
【0060】
なお、動きベクトルが、参照画像、動き補償パディング領域又は反復パディング領域を含む参照可能領域の外側を参照する場合、動き補償部208は、かかる反復パディング領域内に動きベクトルの参照位置を平行移動(クリップ)する。
【0061】
<動きベクトルが参照可能領域外を参照する際のクリップ方法>
以下、動き補償部208が、動きベクトルが参照可能領域外を参照する際のクリップ方法について説明する。
【0062】
第1に、図5及びと図6を用いて、テンプレートマッチングが無効である場合で且つ動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合の動きベクトルのクリップ方法について説明する。
【0063】
図5は、非特許文献1で開示されている参照可能領域(参照画像及び反復パディング領域で構成)に対して、動きベクトルが参照画像右側の参照可能領域外を参照する場合のクリップ方法の事例を示している。
【0064】
非特許文献1では、図5に示すように、動きベクトル(Intitial MV)が参照可能領域外を参照する場合、すなわち、参照ブロック(RefBlk)が参照可能領域外にある場合、動き補償部208は、参照ブロックの左上端を示す動きベクトルを、参照画像の境界から8画素離れた位置に平行移動(クリップ)する。
【0065】
かかるクリップ動作は、参照画像の下方向に動きベクトルが参照画像外を参照する場合についても同様である。
【0066】
図6は、非特許文献1で開示されている参照可能領域(参照画像及び反復パディング領域で構成)に対して、動きベクトルが参照画像左側の参照可能領域外を参照する場合のクリップ方法の事例を示している。
【0067】
非特許文献1では、図6に示すように、動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合、すなわち、参照ブロック(RefBlk)が参照可能領域外にある場合、動き補償部208は、参照ブロックの左上端を示す動きベクトル(Intitial MV)を、参照画像の境界から8画素に復号対象ブロックの最大幅(maxCUwidth)或いは最大高さを加えた距離だけ離れた位置に平行移動(クリップ)する。
【0068】
かかるクリップ動作は、参照画像の上方向に動きベクトルが参照画像外を参照する場合についても同様である。
【0069】
非特許文献1では、かかる参照画像の境界或いは参照可能領域の境界から8画素離れた位置に動きベクトルがクリップされるため、図5及び図6で示すように、仮に参照ブロック(RefBlk)の幅或いは高さが、復号対象ブロックの最大幅或いは最大高さであっても、図5及び図6に示すように、参照ブロック(RefBlk)は、参照可能領域内に収容される。
【0070】
さらに、参照可能領域の境界から参照画像方向に対して8画素確保されているため、動きベクトルが小数画素精度位置を参照する場合であっても、動き補償画素を生成する際に適用する動き補償補間フィルタ(非特許文献1では8タップ、非特許文献2では12タップ)のための、参照ブロックの左右及び上下方向の参照画素(8タップの場合は、ブロックの左側及び上側で3画素が必要で、右側及び下側で4画素が必要であり、12タップの場合は、ブロックの左側及び上側で5画素が必要であり、右側及び下側で6画素が必要である)が確保されている。
【0071】
なお、動き補償部208は、動き補償補間フィルタのタップ数(フィルタ長)に応じて、かかる参照可能領域の反復パディング領域の画素数を変更してもよい。
【0072】
具体的には、動き補償部208は、かかる反復パディング領域の大きさとして、上述の16画素以外に、符号化ブロック(復号対象ブロック)の最小幅又は最小高さの倍数(べき数)で規定してもよい。
【0073】
例えば、動き補償部208は、符号化ブロック(復号対象ブロック)の最小幅が4画素である場合、かかる反復パディング領域の大きさとして、8画素、32画素、64画素のような固定値で設定してもよい。
【0074】
或いは、反復パディング領域の幅或いは高さの画素数は、復号対象ブロックの最大幅或いは最大高さに対して、それぞれ動き補償補間フィルタのタップ数(フィルタ長)Tよりも大きな画素数、すなわち、T+αを加えて構成されていてもよい。
【0075】
この動き補償補間フィルタのタップ数(フィルタ長)Tよりも大きな画素数T+αとしては、例えば、T+α=kT(e.g., k=1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0)といったTの1.0倍から2.0倍の固定値で設定してもよい。
なお、動き補償部208は、動き補償補間フィルタのタップ数(フィルタ長)に応じて、動きベクトル参照可能領域の外側を参照する場合、かかる参照画像の境界或いは参照可能領域の境界からの動きベクトルのクリップ位置(図5及び図6の事例では、8画素)を動き補償補間フィルタのタップ数が収容できるように、予め設定を変更してもよい。
【0076】
具体的には、反復パディング領域の幅或いは高さの画素数が、上述の図5及び図6に示すように、復号対象ブロックの最大幅或いは最大高さに対して、それぞれ動き補償補間フィルタのタップ数(フィルタ長)よりも大きな画素数を加えて構成される場合、動き補償部208は、動きベクトルのクリップ位置を(T+α)/2画素だけ、かかる参照画像の境界或いは参照可能領域の境界からそれぞれ離れた位置にクリップしてもよい。
【0077】
第2に、図7図10を用いて、テンプレートマッチングが有効である場合で且つ動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合の動きベクトルのクリップ方法について説明する。
【0078】
図7図10は、テンプレートマッチングが有効である場合で且つ動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合に、かかる動きベクトルをクリップする一例を示す図である。
【0079】
図7及び図8は、非特許文献1で開示されている参照可能領域(参照画像及び反復パディング領域で構成)に対して、動きベクトルが参照画像右側の参照可能領域外を参照する場合のクリップ方法の事例を示している。
【0080】
図7及び図8に示すケースでは、共通してテンプレートマッチングが有効であるため、図5に示すケースとは異なり、動きベクトル(Initial MV)の参照位置が、参照画像の境界から8画素離れた位置に平行移動(クリップ)されるのではなく、かかる動きベクトルを原点としたテンプレートマッチングの探索範囲の左端位置が同位置に平行移動(クリップ)される。
【0081】
かかるクリップ動作は、参照画像の下方向に動きベクトルが参照画像外を参照する場合についても同様である。
【0082】
ここで、図7に示すケースでは、テンプレートマッチングの探索範囲(8画素×2+RefBlkの幅)が反復パディング領域のクリップ位置から参照可能領域の境界までに収容される画素数であるため、すなわち、テンプレートマッチングの探索範囲が、図7に示すように、参照可能領域の境界外側方向に超えないため、テンプレートマッチングの探索を実行できる。
【0083】
一方、図8に示すケースでは、テンプレートマッチングの探索範囲(8画素×2+RefBlkの幅)が反復パディング領域のクリップ位置から参照可能領域の境界までに収容されない画素数であるため、すなわち、テンプレートマッチングの探索範囲が、図8に示すように、参照可能領域の境界外側方向に超えるため、テンプレートマッチングの探索を実行できない。
【0084】
なお、図8に示すケースでも、動きベクトルの参照位置が、小数画素精度位置になる場合は、動き補償補間フィルタのタップ数次第では、図7のケースと同様に、テンプレートマッチングの探索範囲が参照可能領域の境界外側方向に越える場合がある。
【0085】
かかるテンプレートマッチングが有効時の探索範囲の動作は、参照画像の下方向に動きベクトルが参照画像外を参照する場合についても同様である。
【0086】
図9及び図10は、非特許文献1で開示されている参照可能領域(参照画像及び反復パディング領域で構成)に対して、動きベクトルが参照画像左側の参照可能領域外を参照する場合のクリップ方法の事例を示している。
【0087】
図9及び図10に示すケースでは、共通してテンプレートマッチングが有効であるため、図6に示すケースとは異なり、動きベクトルの参照位置が、参照可能領域の境界から8画素離れた位置に平行移動(クリップ)されるのではなく、かかる動きベクトルを原点としたテンプレートマッチングの探索範囲の左端位置が同位置に平行移動(クリップ)される。
【0088】
かかるクリップ動作は、参照画像の上方向に動きベクトルが参照画像外を参照する場合についても同様である。
【0089】
ここで、図9に示すケースでは、テンプレートマッチング探索範囲(8画素×2+RefBlkの幅)が反復パディング領域のクリップ位置から参照画像領域の境界までに収容される画素数であるため、すなわち、テンプレートマッチングの探索範囲が、図9に示すように、参照画像の境界内側方向に超えないため、テンプレートマッチングの探索を実行できる。
【0090】
一方、図10に示すケースでは、テンプレートマッチング探索範囲(8画素×2+RefBlkの幅)が反復パディング領域のクリップ位置から参照画像領域の境界までに収容されない画素数であるため、すなわち、テンプレートマッチングの探索範囲が、図10に示すように、参照画像の境界内側方向を越えるため、テンプレートマッチングの探索を実行できるが、テンプレートマッチングの探索範囲内で参照画像の境界内側を超えた領域のみ参照画像境界にある画素値が反復されてない画素値を持つことになる。
【0091】
すなわち、テンプレートマッチングの探索範囲にある画素値において、上述の参照画像の境界内側方向には、左右方向における画素値の不均一性が生じるため、左右方向の動きベクトル差分(MVD)が生成され、テンプレートマッチングにより左右方向に動きベクトルが修正される(本ケースにおいて、参照画像の境界内側方向を越えない場合は、上下方向のみMVDのみが発生する)。
【0092】
かかるテンプレートマッチングが有効時の探索範囲の動作は、参照画像の上方向に動きベクトルが参照画像外を参照する場合についても同様である。
【0093】
図6図10では、図3で説明した非特許文献2に示す動き補償パディング領域が存在しないケースに基づいて、テンプレートマッチングが有効な場合で且つ動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合に生じるケースの課題を説明した。
【0094】
一方、非特許文献2の動き補償パディング領域があるケースにおいても同じ課題は生じる。何故なら、非特許文献2において、動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合に動きベクトルがクリップされる位置は、動き補償パディング領域が存在する前提で設定されているためである。
【0095】
具体的に、図5に対しては、動きベクトルは、参照画像の境界ではなく、動き補償パディング領域の境界から8画素だけ参照可能領域の境界方向に離れた位置にクリップされる。なお、かかるクリップ動作は、参照画像の上方向に動きベクトルが参照画像外を参照する場合についても同様である。
また、図6に対しては、動きベクトルは、参照画像の境界ではなく、動き補償パディング領域の境界から8画素+復号対象ブロックの最大幅だけ参照可能領域の境界方向に離れた位置(すなわち、参照可能領域の境界から参照画像方向に8画素離れた位置)にクリップされる。なお、かかるクリップ動作は、参照画像の上方向に動きベクトルが参照画像外を参照する場合についても同様である。
【0096】
かかる課題を解消するために、動き補償部208は、以下の解決方法1~3の少なくもいずれか一つを選択する。
【0097】
<解決方法1:テンプレートマッチングの探索範囲の制御/制限>
動き補償部208は、動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合、テンプレートマッチングが有効であるか否かに応じて、テンプレートマッチングの探索範囲を制御する。
【0098】
或いは、動き補償部208は、動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合、テンプレートマッチングが有効であるか否か及び参照ブロックの幅、高さ又はサイズに応じて、テンプレートマッチングの探索範囲を制御してもよい。
【0099】
具体的に、動き補償部208は、参照ブロックの幅、高さ又はサイズ及びテンプレートマッチングの探索範囲と所定画素数との比較により、テンプレートマッチングの探索範囲を制御してもよい。
【0100】
ここで、所定画素数とは、例えば、符号化対象ブロック(復号対象ブロック)の最大幅、最大高さ又は最大サイズとしてもよいし、予め規定した画素数T+α(上述の図5から図10で示した事例では8画素)としてもよい。
【0101】
具体的には、動き補償部208は、以下の式が満たされる場合は、テンプレートマッチングの探索範囲を維持し、以下の式が満たされない場合は、テンプレートマッチングの探索範囲を制限する。
【0102】
CuWidth+TmPmWidth<maxCUwidth+(T+α)/2
ここで、CuWidthは、復号対象ブロック(参照ブロック)の幅であり、TmPmWidthは、テンプレートマッチングの探索幅(非特許文献2では±8画素=16画素)であり、maxCUwidthは、復号対象ブロック(参照ブロック)の最大幅である。また、T+αは、上述した通り、補間フィルタのタップ数(フィルタ長)に所定画素数αを加えた値である。
【0103】
動き補償部208は、テンプレートマッチングの探索範囲の削減方法を用いる場合、図11に示すように、動きベクトルが参照可能領域外を参照する方向の探索を全て禁止する(図11の例では、左右方向の探索幅を制限する)。
【0104】
すなわち、テンプレートマッチングの探索範囲は、上下方向のみになるため、テンプレートマッチングで生成されるMVDは、図11に示すように、上下方向のみの成分を持つ。
【0105】
図11では、動きベクトルが参照可能領域外の右側を参照する場合の一例を示したが、動きベクトルが参照可能領域外の左側を参照する場合であっても、同じ方法で、テンプレートマッチングの探索範囲を制限することで、動きベクトルを原点として参照画像境界を越えてテンプレートマッチングされるようなケースを回避できる。
【0106】
同様に、動き補償部208は、動きベクトルが参照可能領域外の上側、下側を参照する場合であっても、同じ方法を適用することで対処できる。
【0107】
或いは、動き補償部208は、上述のような参照可能領域外への参照方向のみを対象としたテンプレートマッチングの探索範囲の一括制限(禁止)ではなく、テンプレートマッチングの探索範囲の画素数を削減してもよい。
【0108】
さらに、動き補償部208は、復号対象ブロック(参照ブロック)の幅、高さ又はサイズ(画素数)に応じて、テンプレートマッチングの画素数の削減数を、制御してもよい。
【0109】
<解決方法2:動きベクトルのクリップ位置の修正>
動き補償部208は、動きベクトルが参照可能領域外を参照する場合、テンプレートマッチングが有効であるか否かに応じて、動きベクトルのクリップ位置を制御する。
【0110】
具体的には、動き補償部208は、テンプレートマッチングが有効ではない場合は、上述の図5及び図6で説明した位置に、動きベクトルの参照位置を平行移動(クリップ)する。
【0111】
一方、動き補償部208は、テンプレートマッチングが有効である場合は、図12及び図13に示す位置(すなわち、図2では参照画像の境界、図13では参照可能領域の境界)に、それぞれ動きベクトルの参照位置を平行移動(クリップ)する。
【0112】
ここで、それぞれのクリップ位置が小数画素精度である場合は、動き補償部208は、クリップ位置を整数画素精度の位置に(常に)丸めてもよい。これにより、動き補償補間フィルタが不要になり、図12及び図13に示すように、反復パディング領域内にテンプレートの探索範囲が収容される。
【0113】
なお、図12及び図13の例では、テンプレートマッチングの探索範囲を16画素(±8画素)、反復パディング領域の符号化対象ブロック(復号対象ブロック)の最大幅を除いた領域の画素数を16画素(反復パディングリザーブ領域)としているが、テンプレートマッチングの探索範囲が16画素以上になる場合は、反復パディングリザーブ領域をテンプレートマッチングの探索範囲にあわせて16画素以上に設定することで、同様に対処できる。
【0114】
変更例として、動き補償部208は、テンプレートマッチングが有効であるか否かに関わらず、上述した位置、に動きベクトルをクリップしてもよい。
【0115】
<解決方法3:反復パディング領域の拡張>
動き補償部208は、テンプレートマッチングが有効である場合、反復パディング領域を拡張する。
【0116】
具体的には、動き補償部208は、テンプレートマッチングの探索範囲に応じて、反復パディング領域をテンプレートマッチングの探索範囲の画素数分だけ、テンプレートマッチングが無効時の規定領域に対して拡張する。
【0117】
本実施形態に係る画像復号装置200によれば、動きベクトルが参照画像を含む参照可能領域外を超えてテンプレートマッチングすることを回避することができる。
【0118】
動き補償部208は、テンプレートマッチングが有効であるか否かを、復号部201で復号或いは推定される制御情報に基づいて判定してもよい。
【0119】
具体的には、制御情報には、テンプレートマッチングが有効であるか否かを特定するための符号化対象ブロック(復号対象ブロック)単位のフラグが含まれてもよく、動き補償部208は、このフラグの値に基づいて判定できる。
【0120】
例えば、動き補償部208は、かかるフラグの値が1の場合は、テンプレートマッチングが有効であり、かかるフラグが0の場合は、テンプレートマッチングが無効であると判定してもよい。
【0121】
また、制御情報には、この符号化対象ブロック(復号対象ブロック)単位より前に、シーケンス単位又はピクチャ単位又はスライス単位で、テンプレートマッチングが有効であるか否かを特定するためのフラグが含まれてもよく、復号部201は、1つ前の階層のフラグ(ブロックに対してはスライス、スライスに対してはピクチャ)の復号結果に基づいて復号するか否かを制御してもよい。
【0122】
上述の画像復号装置200は、コンピュータに各機能(各工程)を実行させるプログラムであって実現されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0123】
なお、本実施形態によれば、例えば、動画像通信において総合的なサービス品質の向上を実現できることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0124】
200…画像復号装置
201…復号部
202…逆量子化部
203…逆変換部
204…イントラ予測部
206…加算器
207…蓄積部
208…動き補償部
210…符号入力部
220…画像出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13