(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093237
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】レンズユニット、カメラモジュール、撮像システムおよび移動体
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240702BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20240702BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240702BHJP
G03B 17/08 20210101ALI20240702BHJP
H04N 23/52 20230101ALI20240702BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G03B30/00
G03B15/00 V
G02B7/02 Z
G03B17/08
H04N23/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209481
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 航志
【テーマコード(参考)】
2H044
2H101
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AD02
2H044AJ04
2H101CC54
2H101CC60
2H101CC91
5C122DA14
5C122EA02
5C122FB03
5C122FB08
5C122GE05
5C122GE11
(57)【要約】
【課題】第1レンズを加熱する発熱体の取り扱いが容易であるとともに、発熱体の損傷を防止できるレンズユニット、カメラモジュール、撮像システムおよび移動体を提供する。
【解決手段】複数のレンズ13~16が当該レンズの光軸に沿って並べられたレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒12と、最も物体側に位置する第1レンズ13と、この第1レンズ13と鏡筒12との間に設けられたリング状のシール部材26Aとを備え、シール部材26Aは、シール部材本体27Aと、このシール部材本体27Aの内部に設けられたPTC発熱体30とを有し、PTC発熱体30に一対の導電線31a,31bが接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられたレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒と、最も物体側に位置する第1レンズと、この第1レンズと前記鏡筒との間に設けられたリング状のシール部材とを備えたレンズユニットにおいて、
前記シール部材は、シール部材本体と、このシール部材本体の内部に設けられたPTC発熱体とを有し、
前記PTC発熱体に一対の導電線が接続されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられたレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒と、最も物体側に位置する第1レンズと、この第1レンズと前記鏡筒との間に設けられたリング状のシール部材とを備えたレンズユニットにおいて、
前記シール部材が、弾性係数が1.2MPa~1.8MPaのPTC発熱体によって構成され、
前記PTC発熱体に一対の導電線が接続されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項3】
前記シール部材は、断面が長軸を前記第1レンズの光軸方向と平行に向けた楕円形状であるか、または、断面が断面円形の一部を前記光軸方向と平行にカットした形状を有するDカット部を有し、
前記PTC発熱体に接続される一対の前記導電線は、前記PTC発熱体を前記光軸方向において挟むように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記PTC発熱体に接続される一対の前記導電線は、前記PTC発熱体の周囲にスパイラル状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のレンズユニットと、前記レンズユニットの前記レンズ群を通じて集光される光を電気信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のカメラモジュールと、前記カメラモジュールを制御するとともに前記カメラモジュールの撮像素子から出力される電気信号を処理する制御部とを有する撮像装置と、
前記撮像装置により取得される画像信号を処理する処理装置と、
前記処理装置により処理されて出力される画像を表示する表示装置と、
を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項7】
請求項6に記載の撮像システムを搭載し、前記表示装置により乗員への情報を出力することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成するレンズユニット、カメラモジュール、撮像システムおよび撮像システムを搭載した移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたカメラ(車載カメラ)が車外の風景等を撮像し、その撮像画像が車内に搭載されたモニタ等に表示される技術が知られている。車載カメラのレンズユニットは、撮像対象に向けられる側(物体側)が車外に露出した状態となるので、強度、防水性、耐薬品性、高温耐久性等が要求される。また、温度変化によるレンズの曇りを防止する必要などがある。
【0003】
特許文献1には、レンズの曇りを防止するために、鏡筒内部の気密状態を確保したレンズユニットが開示されている。このレンズユニットでは、4つのレンズが鏡筒内に光軸方向に沿って並べて配置されている。物体側では、最も物体側のレンズと鏡筒の内周面との間に0リングを配置することで、シール性が実現されている。また、像側(撮像素子側)では、接着剤を介して光学フィルタを鏡筒に取り付けることで、シール性が実現されている。このように、物体側のシールと結像側のシールとにより鏡筒内部の気密性が確保され、レンズの曇りが防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したように鏡筒内部の機密状態を確保しても、外気温とレンズユニット内の温度との間の差が大きくなると、レンズユニット内の水蒸気が凝縮してレンズ表面に結露が生じる。特に、外部との温度差の影響が最も大きい第1レンズ(最も物体側の位置するレンズ)とこれに隣り合う第2レンズとの間のレンズ間空間内で、とりわけ第1レンズの裏面に結露が生じ易い。
そこで、第1レンズの裏面の結露を除去するために、例えば、第1レンズをFPCヒータ等の面状ヒータ(発熱体)によって加熱することが考えられる。面状ヒータ(発熱体)は、ドーナツ板形状に形成されて、第1レンズのフランジ裏面(像側を向く面)に貼り付けられるが、面状ヒータ(発熱体)は薄いため、取り扱いが容易でなく、また、第1レンズのフランジ裏面(像側を向く面)に貼り付ける際に面状ヒータ(発熱体)が損傷するおそれもある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、第1レンズを加熱する発熱体の取り扱いが容易であるとともに、発熱体の損傷を防止できるレンズユニット、カメラモジュール、撮像システムおよび移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係るレンズユニットは、複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられたレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒と、最も物体側に位置する第1レンズと、この第1レンズと前記鏡筒との間に設けられたリング状のシール部材とを備えたレンズユニットにおいて、
前記シール部材は、シール部材本体と、このシール部材本体の内部に設けられたPTC発熱体とを有し、
前記PTC発熱体に一対の導電線が接続されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、シール部材本体は、例えばOリングを形成するゴム材料によって形成されるのが好ましい。
【0009】
本発明においては、シール部材がシール部材本体と、このシール部材本体の内部に設けられたPTC発熱体とを有するので、第1レンズと鏡筒との間にシール部材を設けることによって、PTC発熱体の取り扱いが容易となるとともに、PTC発熱体の損傷を防止できる。
【0010】
また、本発明に係るレンズユニットは、複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられたレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒と、最も物体側に位置する第1レンズと、この第1レンズと前記鏡筒との間に設けられたリング状のシール部材とを備えたレンズユニットにおいて、
前記シール部材が、弾性係数が1.2MPa~1.8MPaのPTC発熱体によって構成され、
前記PTC発熱体に一対の導電線が接続されていることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、シール部材が、弾性係数が1.2MPa~1.8MPaのPTC発熱体によって構成されているので、第1レンズと鏡筒との間にシール部材を設けることによって、PTC発熱体の取り扱いが容易となるとともに、PTC発熱体の損傷を防止できる。
【0012】
また、本発明の前記構成において、前記シール部材は、断面が長軸を前記第1レンズの光軸方向と平行に向けた楕円形状であるか、または、断面が断面円形の一部を前記光軸方向と平行にカットした形状を有するDカット部を有し、
前記PTC発熱体に接続される一対の前記導電線は、前記PTC発熱体を光軸方向において挟むように配置されていてもよい。
【0013】
第1レンズと鏡筒との間にシール部材を設ける際に、シール部材を第1レンズにはめ込むと、当該シール部材は第1レンズの光軸方向に変形し易くなるが、前記構成によれば、シール部材は、断面が長軸を第1レンズの光軸方向と平行に向けた楕円形状であるか、または、断面が断面円形の一部を前記光軸方向と平行にカットした形状を有するDカット部を有しているので、シール部材は、第1レンズの光軸方向に変形し難くなる。このため、PTC発熱体に接続される一対の導電線の断線を防止できる。
また、シール部材は、第1レンズの光軸方向に変形し難くなるため、導電線も光軸方向に変形(撓み)難くなる。このため、導電線の抵抗値の上昇量を抑えることができる。
【0014】
また、本発明の前記構成において、前記PTC発熱体に接続される一対の前記導電線は、前記PTC発熱体の周囲にスパイラル状に配置されていてもよい。
この場合、導電線の長さは、シール部材を弾性的に延ばした際の、長さより長くすることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、導電線がPTC発熱体の周囲にスパイラル状に配置されているので、シール部材を第1レンズにはめ込む際に、シール部材が引っ張りによって弾性的に延びても、導電線の断線を防止できる。
【0016】
また、本発明は、前記レンズユニットを有するカメラモジュール、当該カメラモジュールを有する撮像システム、および、撮像システムを搭載して成る移動体も提供する。このようなカメラモジュール、撮像システムおよび移動体によっても上述したレンズユニットと同様の作用効果を得ることができる。なお、「移動体」とは、移動できる物体の全てを指し、例えば車両等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1レンズを加熱するPTC発熱体の取り扱いが容易であるとともに、PTC発熱体の損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示すもので、レンズユニットの概略断面図である。
【
図2】同、(a)はシール部材の第1例を示す断面図、(b)はシール部材の第2例を示す断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態を示すもので、(a)はレンズユニットに組み込まれるシール部材の第1例を示す断面図、(b)はレンズユニットに組み込まれるシール部材の第2例を示す断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態を示すもので、レンズユニットに組み込まれるシール部材を示す断面図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態を示すもので、(a)はレンズユニットに組み込まれるシール部材を示す断面図、(b)はシール部材の一部の斜視図である。
【
図6】同、(a)はシール部材を延ばした状態の断面図、(b)はシール部材を延ばした状態の一部の斜視図である。
【
図7】同、シール部材を製造する方法を説明するための概略図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態のレンズユニットを備えたカメラモジュールの概略断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るカメラモジュールを備える撮像システム(車載システム)が搭載される移動体としての車両の概略図である。
【
図10】
図9に示す撮像システムを構成する撮像装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、本実施形態は、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の、「9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラを開発する。」に貢献する。
なお、以下で説明される本実施形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、全ての図においてレンズおよびスペーサについてはハッチングを省略している。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、本実施形態のレンズユニット11は、例えば樹脂製の円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12内に配置される複数の平面視円形状のレンズ、例えば、物体側(
図1において上側)から、第1レンズ13、第2レンズ14、第3レンズ15、第4レンズ16、第5レンズ17、第6レンズ18および第7レンズ19から成る7つのレンズと、絞り部材22とを備えている。
なお、第2レンズ14と第3レンズ15との間には、円環板状のスペーサ20が設けられ、スペーサ20と第5レンズ17との間にスペーサ21が設けられている。スペーサ21は円筒状に形成され、その内周面には径方向内側に突出するフランジ部が形成され、このフランジ部が第3レンズ15と第4レンズ16との間に介在し、これによって第3レンズ15と第4レンズ16との間隔が保持されている。
【0021】
絞り部材22は第2レンズ14とスペーサ20との間に配置されている。この絞り部材22は透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
【0022】
鏡筒12内に収容される複数のレンズ13~19は、それぞれの光軸を一致させた状態で積み重ねられて配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13~19が並べられた状態となって、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。この場合、レンズ群Lを構成する最も物体側に位置する第1レンズ13は、物体側に凸曲面を有するとともに像側に凹面を有する球面ガラスレンズであり、その他のレンズ14~19は樹脂レンズであるが、これに限定されない(例えば、第1レンズ13が樹脂レンズであっても構わない)。
なお、レンズの数、スペーサの数やレンズ、スペーサおよび鏡筒の素材等については用途等に応じて任意に設定できる。
また、これらのレンズ13~19の表面には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。
【0023】
また、本実施形態において、最も物体側に位置する第1レンズ13と鏡筒12との間にはリング状のシール部材26Aが介挿され、鏡筒12の内側のレンズ群L内に水や塵埃が侵入しないようにしている。この場合、第1レンズ13の外周面13dに、該レンズ13の像側部分で径が小さくなった段差状の縮径部13eが設けられ、この縮径部13eにシール部材26Aが装着されている。そして、第1レンズ13の縮径部13eの外周面と鏡筒12の内周面との間でシール部材26Aが径方向で圧縮されることにより、鏡筒12の物体側端部が封止された状態となっている。
なお、シール部材26Aに代えて後述するシール部材26B~26Fを使用してもよい。
【0024】
また、鏡筒12は、レンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、その物体側の端部(
図1において上端部)のカシメ部23が径方向内側に熱的にカシメられることにより、レンズ群Lの最も物体側に位置する第1レンズ13をこのカシメ部23により鏡筒12の物体側端部に光軸方向で固定している。この場合、安定したカシメを行なえるように、カシメ部23が圧接されるガラスレンズ13の部位は平面状に斜めにカットされた平坦部13bとして形成される。
【0025】
また、鏡筒12は、像側の端部(
図1において下端部)において、第7レンズ19よりも径の小さい開口部を有する内側フランジ部24を有している。この内側フランジ部24とカシメ部23とにより、鏡筒12内にレンズ群Lを構成する複数のレンズ13~19と、絞り部材22と、スペーサ20,21とが光軸方向で保持固定されている。
また、鏡筒12の外周面には、鏡筒12を車載カメラに設置する際に用いられる外側フランジ部25が鏡筒12の外周面に鍔状に設けられている。
【0026】
図2(a)に示すように、前記シール部材26Aは、リング状のシール部材本体27Aと、当該シール部材本体27Aの内部に設けられたリング状のPTC発熱体30とを有している。
シール部材本体27Aは、Oリングを形成するゴム材料によって中空のリング状に形成され、その内部にPTC発熱体30が挿入されている。シール部材本体27Aは、上型と下型に分割された金型を使用し、熱加硫圧縮成形することで一体物として製造してもよいし、押し出し成形された断面がリング状のゴム部材を、汎用の接着剤でつなげる方法によって製造してもよい。
【0027】
PTC発熱体30は、結晶性樹脂に導電性粒子を配合してリング状でかつ断面円形状に形成されたものである。結晶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレートあるいはそれらの共重合体等があげられる。また、導電性粒子としてはカーボンブラック、グラファイトあるいはこれらの混合物等があげられる。
【0028】
図2(a)に示すようなシール部材26Aを製造する場合、まず、前記結晶性樹脂に前記導電性粒子を、バンバリーミキサー、2軸押出機などの混練機を用いて混練することにより成形用にペレット化したPTC材料を製造する。
【0029】
次に、押出機と金型を備える押出成型機に前記ペレット化したPTC材料を供給し、所定の押出温度(例えば150℃)、所定の線引速度(例えば15m/分)の条件で、押出成形して金型内に導かれた一対の線状導電線をPTC材料で被覆して、所定の電極間隔の線状導電線を有する断面円形状の線状PTC発熱体を製造する。なお、この線状PTC発熱体は、所定の温度まで冷却される。
【0030】
次に、線状PTC発熱体を、Oリングを形成するゴム材料によって押出成形によって覆うことで、線状シール部材を製造する。
次に、前記線状シール部材を所定の長さごとに切断して、切断シール部材を作成し、この切断シール部材をリング状に曲げて、対向する両端部を接着することによって、リング状のシール部材26Aを製造する。
このようにして製造されたシール部材26Aは、Oリングを形成するゴム材料によって形成されたリング状のシール部材本体27Aと、線状PTC発熱体によって形成され、かつシール部材本体27Aの内部に設けられたリング状のPTC発熱体30とを有する。
【0031】
また、リング状のシール部材26Aからは、一対の導電線31a,31bが延出している。導電線31a,31bをシール部材26Aから延出させるには、例えば、前記線状シール部材を所定の長さごとに切断する際に、シール部材26Aの外周に沿った長さより、所定の長さだけ長く切断し、この切断シール部材の一端から所定長さだけゴム材料の部分だけを除去することによって、線状導電線を延出させたうえで、切断シール部材をリング状に曲げて、対向する両端部を接着することによって、対向する両端部間から一対の導電線31a,31bを延出させればよい。
【0032】
このようにして製造されたシール部材26Aは、Oリングを形成するゴム材料によって形成されたリング状のシール部材本体27Aと、線状PTC発熱体によって形成され、かつシール部材本体27Aの内部に設けられたリング状のPTC発熱体30とを有する。
また、PTC発熱体30には、一対の導電線31a,31bが接続されており、当該導電線31a,31bはシール部材26Aから延出している。
【0033】
また、
図2(b)に示すようなシール部材26Bを製造する場合、まず前記シール部材26Aを製造した場合と同様にして、ペレット化したPTC材料を製造する。
次に、PTC材料を押出成形することによって、線状PTC発熱体を製造する。この線状PTC発熱体は、断面が略矩形でかつ両端が円弧状に形成された断面形状となる。
次に、線状PTC発熱体を、Oリングを形成するゴム材料によって押出成形によって覆うことで、線状シール部材を製造する。この押出成形の際に、押出成形の金型内に一対の線状導電線を導くことによって、線状PTC発熱体を挟むように、かつ線状PTC発熱体に接するようにして、一対の線状導電線を配置する。
【0034】
次に、シール部材26Aを製造する場合と同様にして、線状シール部材を所定の長さごとに切断して、切断シール部材を作成し、この切断シール部材をリング状に曲げて、対向する両端部を接着することによって、リング状のシール部材26Bを製造する。
【0035】
このようにして製造されたシール部材26Bは、Oリングを形成するゴム材料によって形成されたリング状のシール部材本体27Bと、線状PTC発熱体によって形成され、かつシール部材本体27Bの内部に設けられたリング状のPTC発熱体30とを有する。
また、シール部材26Aを製造する場合と同様にして、リング状のシール部材26Bから、一対の導電線31a,31bを延出させる。PTC発熱体30には、一対の導電線31a,31bが接続されており、当該導電線31a,31bはシール部材26Bから延出している。
【0036】
また、
図1に示すように、鏡筒12の物体側端部(
図1において上端部)には、光軸Оとほぼ平行に延在する挿通孔12jが設けられ、当該挿通孔12jの上端はシール部材26Aが設けられた側に開口し、下端は鏡筒12に径方向に貫通して設けられた挿通孔12kの一端部に連通している。挿通孔12kの他端部は鏡筒12の外周面に開口している。挿通孔12j,12kは1つであってもよいし、鏡筒12の周方向に所定間隔で複数設けられていてもよい。
上述したように、PTC発熱体30に一対の導電線31a,31bの一端部が接続され、当該導電線31a,31bの他端部は挿通孔12j,12kに挿通されて、鏡筒12の外部に引き出され、図示しない電源に接続されている。PTC発熱体30は、電源から導電線31a,31bを通して給電され、発熱するようになっている。PTC発熱体30が発熱すると、シール部材本体27Aが加熱され、この熱によって第1レンズ13が縮径部13eから加熱される。
【0037】
また、本実施形態では、第1レンズ13以外の部位にPTC発熱体30による熱が伝導するのを抑制する熱伝導抑制部材35を備えている。
熱伝導抑制部材35は、シール部材26Aと鏡筒12の軸方向(光軸方向)とほぼ平行な内周面12aとの間に設けられた第1熱伝導抑制部材35aと、シール部材26Aと鏡筒12の軸方向と交差する交差面12dとの間に設けられた第2熱伝導抑制部材35bと、鏡筒12の軸方向(光軸方向)とほぼ平行でかつ前記内周面12aより内径側に位置する内周面12bと、第2レンズ14の外周面との間に設けられた第3熱伝導抑制部材35cとを備えている。
【0038】
第1熱伝導抑制部材35a、第2熱伝導抑制部材35bおよび第3熱伝導抑制部材35cは一体的に、かつ、鏡筒12の周方向に連続する薄肉円筒状に形成されている。このような薄肉円筒状の熱伝導抑制部材35は、断熱シートによって形成し、当該断熱シートを鏡筒12の内周面12a,12bおよび交差面12dに接着してもよい。断熱シートを形成する材料としては、例えば、繊維系断熱材(グラスウール、ロックウール、セルローズファイバー、炭化コルク、羊毛断熱材)、発砲系断熱材(ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、発砲ゴム、押し出し法ポリスチレン)、その他(エアロゲル、ヒュームドシリカ、真空断熱材)を挙げることができる。
また、熱伝導抑制部材35は、鏡筒12の内周面12a,12bおよび交差面12dに熱伝導を抑制する機能を有する薄膜を形成(コーテイング)することによって構成してもよい。薄膜は蒸着、溶射、塗装等の薄膜形成技術によって形成すればよい。
また、熱伝導抑制部材35は、熱伝導率が第1レンズ13および鏡筒12より低いものを使用し、熱伝導率は1[W/(m・K)]以下が好ましい。
【0039】
本実施形態によれば、シール部材26A(26B)がシール部材本体27A(27B)と、このシール部材本体27A(27B)の内部に設けられたPTC発熱体30とを有するので、PCT発熱体30がシール部材本体27A(27B)によって保護される。したがって、第1レンズ13と鏡筒12との間にシール部材26A(26B)を設けることによって、PTC発熱体30の取り扱いが容易となるとともに、PTC発熱体30の損傷を防止できる。
また、PTC発熱体30で発熱した熱は、熱伝導抑制部材35によって第1レンズ13以外の部位に伝導するのが抑制されるので、PTC発熱体30によって第1レンズ13を効率的に加熱することができる。
また、熱伝導抑制部材35が、鏡筒12の内周面12a,12bおよび交差面12dに接に形成されているので、PTC発熱体30で発熱した熱を、鏡筒12に伝導するのを効果的に抑制することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態を示すもので、シール部材の断面図である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、レンズユニットのシール部材の構成であり、その他のレンズユニットの構成は第1の実施形態と同様であるので、当該構成についての説明は省略する。
【0041】
図3(a)に示すように、第2の実施形態の第1例のシール部材26Cは、長軸を前記第1レンズ13の光軸方向と平行に向けた断面楕円形状となっている。
このシール部材26Cは、リング状のシール部材本体27Cと、当該シール部材本体27Cの内部に設けられたリング状のPTC発熱体30とを有している。
シール部材本体27Cは、Oリングを形成するゴム材料によって中空のリング状に形成され、その内部にPTC発熱体30が挿入されている。シール部材本体27Cは断面の外形が長軸を第1レンズ13の光軸方向と平行に向けた楕円形状となっている。シール部材本体27Cは中空に形成され、その内部(中空)にリング状のPTC発熱体30が挿入されている。PTC発熱体30は断面円形状に形成され、PTC発熱体30に接続される一対の導電線31a,31bは、PTC発熱体30を光軸方向において挟むように配置されている。また、一対の導電線31a,31bは、PTC発熱体30の外周面に接しているとともに、シール部材本体27Cの外面に露出しておらず、シール部材本体27Cの内部に設けられている。
【0042】
このようなシール部材26Cを製造する場合、まず前記シール部材26A,26Bを製造した場合と同様にして、ペレット化したPTC材料を製造する。
次に、PTC材料を押出成形することによって、線状PTC発熱体を製造する。この線状PTC発熱体は円形の断面形状となる。
次に、線状PTC発熱体を、Oリングを形成するゴム材料によって押出成形によって覆うことで、断面の外形が長軸を第1レンズ13の光軸方向と平行に向けた楕円形状となる線状シール部材を製造する。この押出成形の際に、押出成形の金型内に一対の線状導電線を導くことによって、線状PTC発熱体を挟むように、かつ線状PTC発熱体に接するようにして、一対の線状導電線を配置する。
【0043】
次に、シール部材26A,26Bを製造する場合と同様にして、線状シール部材を所定の長さごとに切断して、切断シール部材を作成し、この切断シール部材をリング状に曲げて、対向する両端部を接着することによって、リング状のシール部材26Cを製造する。
【0044】
このようにして製造されたシール部材26Cは、Oリングを形成するゴム材料によって形成されたリング状のシール部材本体27Cと、線状PTC発熱体によって形成され、かつシール部材本体27Cの内部に設けられたリング状のPTC発熱体30とを有する。
また、シール部材26A,26Bを製造する場合と同様にして、リング状のシール部材26Cから、一対の導電線31a,31bを延出させる。PTC発熱体30には、一対の導電線31a,31bが接続されており、当該導電線31a,31bはシール部材26Cから延出している。
【0045】
通常、第1レンズ13と鏡筒12との間にシール部材を設ける際に、シール部材を第1レンズ13にはめ込むと、当該シール部材は第1レンズ13の光軸方向に変形し易くなるが、上記構成のシール部材26Cによれば、当該シール部材26Cは、断面が長軸を第1レンズ13の光軸方向と平行に向けた楕円形状であるので、第1レンズ13の光軸方向に変形し難くなる。このため、PTC発熱体30に接続される一対の導電線31a,31bの断線を防止できる。
また、シール部材26Cは、第1レンズ13の光軸方向に変形し難くなるため、導電線31a,31bも光軸方向に変形(撓み)難くなる。このため、導電線31a,31bの抵抗値の上昇量を抑えることができる。導電線31a,31bを第1レンズ13の光軸方向と直交する方向においてPTC発熱体30を挟むようにして配置した場合、導電線31a,31bの抵抗値は50%上昇したが、シール部材26Cのように、導電線31a,31bを第1レンズ13の光軸方向においてPTC発熱体30を挟むようにして配置した場合、導電線31a,31bの抵抗値は15%上昇した。
【0046】
図3(b)に示すように、第2の実施形態の第2例のシール部材26Dは、断面が、断面円形の一部を第1レンズ13の光軸方向と平行にカットした形状を有するDカット部28を有している。
このシール部材26Dは、リング状のシール部材本体27Dと、当該シール部材本体27Dの内部に設けられたリング状のPTC発熱体30とを有している。
シール部材本体27Dは、Oリングを形成するゴム材料によって中空のリング状に形成され、その内部にPTC発熱体30が挿入されている。シール部材本体27Dは断面の外形に前記Dカット部28を有している。PTC発熱体30は断面円形状に形成され、PTC発熱体30に接続される一対の導電線31a,31bは、PTC発熱体30を光軸方向において挟むように配置されている。また、一対の導電線31a,31bは、PTC発熱体30の外周面に接しているとともに、シール部材本体27Dの外面に露出しておらず、シール部材本体27Dの内部に設けられている。
【0047】
このようなシール部材26Dを製造する場合、まず前記シール部材26A,26B,26Cを製造した場合と同様にして、ペレット化したPTC材料を製造する。
次に、PTC材料を押出成形することによって、線状PTC発熱体を製造する。この線状PTC発熱体は円形の断面形状となる。
次に、線状PTC発熱体を、Oリングを形成するゴム材料によって押出成形によって覆うことで、断面の外形に前記Dカット部28が設けられた線状シール部材を製造する。この押出成形の際に、押出成形の金型内に一対の線状導電線を導くことによって、線状PTC発熱体を挟むように、かつ線状PTC発熱体に接するようにして、一対の線状導電線を配置する。
【0048】
このようにして製造されたシール部材26Dは、Oリングを形成するゴム材料によって形成されたリング状のシール部材本体27Dと、線状PTC発熱体によって形成され、かつシール部材本体27Dの内部に設けられたリング状のPTC発熱体30とを有する。
また、シール部材26A,26B,26Cを製造する場合と同様にして、リング状のシール部材26Dから、一対の導電線31a,31bを延出させる。PTC発熱体30には、一対の導電線31a,31bが接続されており、当該導電線31a,31bはシール部材26Dから延出している。
【0049】
通常、第1レンズ13と鏡筒12との間にシール部材を設ける際に、シール部材を第1レンズ13にはめ込むと、当該シール部材は第1レンズ13の光軸方向に変形し易くなるが、上記構成のシール部材26Dによれば、当該シール部材26Dは、断面が断面円形の一部を光軸方向と平行にカットした形状を有するDカット部28を有しているので、第1レンズ13の光軸方向に変形し難くなる。このため、PTC発熱体30に接続される一対の導電線31a,31bの断線を防止できる。
また、シール部材26Dは、第1レンズ13の光軸方向に変形し難くなるため、導電線31a,31bも光軸方向に変形(撓み)難くなる。このため、導電線31a,31bの抵抗値の上昇量を抑えることができる。
【0050】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態を示すもので、シール部材の断面図である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、レンズユニットのシール部材の構成であり、その他のレンズユニットの構成は第1の実施形態と同様であるので、当該構成についての説明は省略する。
【0051】
図4に示すように、第3の実施形態のシール部材26Eは、弾性係数が1.2MPa~1.8MPaのPTC発熱体33によって構成されている。PTC発熱体33は、断面円形でかつリング状に形成され、当該PTC発熱体33に一対の導電線31a,31aが接続されている。
また、PTC発熱体33は、前記PTC発熱体30と同様に、結晶性樹脂に導電性粒子を配合してリング状でかつ断面円形状に形成されたものである。結晶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレートあるいはそれらの共重合体等があげられる。また、導電性粒子としてはカーボンブラック、グラファイトあるいはこれらの混合物等があげられる。
【0052】
このようなシール部材26Eを製造する場合、まず、上述したような結晶性樹脂およびゴム材料に導電性粒子を、バンバリーミキサー、2軸押出機などの混練機を用いて混練することにより成形用にペレット化したPTC材料を製造する。
【0053】
次に、押出機と金型を備える押出成型機に前記ペレット化したPTC材料を供給し、所定の押出温度(例えば150℃)、所定の線引速度(例えば15m/分)の条件で、押出成形して金型内に導かれた一対の線状導電線をPTC材料で被覆して、所定の電極間隔を有する線状導電線を有する断面円形状の線状PTC発熱体を製造する。なお、この線状PTC発熱体は、所定の温度まで冷却される。また、線状PTC発熱体には前記線状導電線の外周面が接している。
【0054】
次に、前記線状PTC発熱体を所定の長さごとに切断して、切断線状PTC発熱体を作成し、この切断線状PTC発熱体をリング状に曲げて、対向する両端部を接着することによって、リング状のシール部材26Eを製造する。
このようにして製造されたシール部材26Eは、弾性係数が1.2MPa~1.8MPaのPTC発熱体33によって構成され、当該PTC発熱体33に一対の導電線31a,31aが接続されている。
【0055】
また、リング状のシール部材26Eからは、一対の導電線31a,31bが延出している。導電線31a,31bをシール部材26Eから延出させるには、例えば、前記線状PTC発熱体を所定の長さごとに切断する際に、シール部材26Eの外周に沿った長さより、所定の長さだけ長く切断し、この切断線状PTC発熱体の一端から所定長さだけゴム材料の部分だけを除去することによって、線状導電線を延出させたうえで、切断線状PTC発熱体をリング状に曲げて、対向する両端部を接着することによって、対向する両端部間から一対の導電線31a,31bを延出させればよい。
【0056】
このようにして製造されたシール部材26Eは、弾性係数が1.2MPa~1.8MPaのPTC発熱体33によって構成されている。PTC発熱体33は、断面円形でかつリング状に形成され、当該PTC発熱体33に一対の導電線31a,31aが接続されており、当該導電線31a,31bはシール部材26Eから延出している。
【0057】
本実施形態によれば、シール部材26Eが、弾性係数が1.2MPa~1.8MPaのPTC発熱体33によって構成されているので、第1レンズ13と鏡筒12との間にシール部材26Eを設けることによって、PTC発熱体33の取り扱いが容易となるとともに、PTC発熱体33は弾性を有しているので、PTC発熱体33の損傷を防止できる。
【0058】
(第4の実施形態)
図5~
図7は、第4の実施形態を示すもので、
図5(a)はシール部材の断面図、
図5(b)はシール部材の一部の斜視図、
図6(a)はシール部材を延ばした状態の断面図、
図6(b)は、シール部材を延ばした状態の一部の斜視図、
図7はシール部材の製造方法を説明するための概略図である。
本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、レンズユニットのシール部材の構成であり、その他のレンズユニットの構成は第1の実施形態と同様であるので、当該構成についての説明は省略する。
【0059】
図5に示すように、シール部材26Fは、リング状のシール部材本体27Fと、当該シール部材本体27Fの内部に設けられたリング状のPTC発熱体30とを有している。
シール部材本体27Fは、Oリングを形成するゴム材料によって中空のリング状に形成されるとともに、断面円環状に形成されている。また、PCT発熱体30は断面円状に形成されている。
また、PCT発熱体30の外周部には一対の導電線32a,32bが設けられており、当該導電線32a,32bはPTC発熱体30の周囲にスパイラス状に配置されるとともに、PTC発熱体30の外周面とほぼ面一か当該外周面に埋設されるように設けられている。また、導電線32a,32bの長さ(スパイラル状に配置された導電線32a,32bを直線状に延ばした際の長さ)は、シール部材26Fを弾性的に延ばした際の、長さより長くなっている。
なお、
図5(b)および
図6(b)においては、PCT発熱体30の外周部に設けられる導電線32a,32bを破線で示しているが、この破線は導電線32a,32bのPTC発熱体30の外周面に略接している側の外形のラインを示ししている。
【0060】
このようなシール部材26Fを製造する場合、まず前記シール部材26A~26Dを製造した場合と同様にして、ペレット化したPTC材料を製造する。
次に、PTC材料を押出成形することによって、線状PTC発熱体を製造する。この線状PTC発熱体は円形の断面形状となる。
次に、
図7(a)に示すように、線状PTC発熱体をリング状に成形して、リング状PTC発熱体を製作する。
次に、
図7(b),(d)に示すように、リング状PTC発熱体の周りに一対の導電線をスパイラル状に巻き付ける。この際、一対の導電線はリング状PTC発熱体の外周部に埋め込むようにして巻き付け、一対の導電線の一端部をリング状PTC発熱体の一箇所から引き出す。また、線状PTC発熱体を製造する際に、当該線状PTC発熱体に外周面に導電線を埋め込むための一対の凹溝をスパイラル状に形成し、当該一対の凹溝に一対の導電線を嵌め込んでもよい。
次に、
図7(c)に示すように、一対の導電線が巻き付けられたリング状PTC発熱体を、Oリング形成用のゴム材料によって覆うことで、リング状PTC発熱体の外側にシール部材本体を形成する。これによって、リング状のシール部材本体27Fと、当該シール部材本体27Fの内部に設けられたリング状のPTC発熱体30と、導電線32a,32bとを備えたシール部材26Fを製作する。
【0061】
このようにして製造されたシール部材26Fは、Oリングを形成するゴム材料によって形成されたリング状のシール部材本体27Fと、線状PTC発熱体によって形成され、かつシール部材本体27Fの内部に設けられたリング状のPTC発熱体30とを有する。
また、リング状のシール部材26Fから、一対の導電線32a,32bを延出させる。PTC発熱体30には、一対の導電線32a,32bが接続されており、当該導電線32a,32bはシール部材26Fから延出している。
さらに、PTC発熱体30に接続される一対の導電線32a,32bは、PTC発熱体30の周囲にスパイラル状に配置されている。
【0062】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得られる他、導電線32a,32bがPTC発熱体30の周囲にスパイラル状に配置されているので、シール部材26Fを第1レンズ13にはめ込む際に、
図6に示すように、シール部材26Fが引っ張りによって弾性的に延びても、当該延びに伴って、導電線32a,32bがスパイラルピッチを延ばすようにして、PTC発熱体30の軸方向に沿う長さが長くなるので、導電線32a,32bの断線を防止できる。
【0063】
図8は、
図1に示すレンズユニット11を有する本実施形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、カメラモジュール300は、フィルタ99が装着されたレンズユニット11を含んで構成されている。
【0064】
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子;イメージセンサ)304を備えている。
【0065】
上ケース301は、鏡筒12の外周面に鍔状に設けられる外側フランジ部25に係合されるとともに、レンズユニット11の物体側の端部を露出させて他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒12の外周面との間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0066】
パッケージセンサ304は、赤外線カットフィルタ99と対向してマウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、CCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0067】
図9には、
図8に示すカメラモジュール300を含む撮像装置250を備える車載システム(撮像システム)が搭載される移動体としての車両240が概略的に示されている。図示のように、撮像装置250は車両240に搭載することができ、
図9は、車両240における撮像装置250の搭載位置を例示する配置例である。車両240に搭載される撮像装置250は、車載カメラと呼ぶこともでき、車両240の種々の場所に設置することができる。例えば、第1の撮像装置250aは、車両240が走行する際の前方を監視するカメラとして、フロントバンパーまたはその近傍に配置されてもよい。また、前方を監視する第2の撮像装置250bは、車両240の車室内のルームミラー(Inner Rearview Mirror)の近傍に配置されてもよい。第3の撮像装置250cは、運転者の運転状況を監視するカメラとしてダッシュボード上またはインスツルメントパネル内等に配置されてもよい。第4の撮像装置250dは、車両240の後方モニタ用に車両240の後部に設置されてもよい。撮像装置250a、250bはフロントカメラと呼ぶことができる。第3の撮像装置250cは、インカメラと呼ぶことができる。第4の撮像装置250dはリアカメラと呼ぶことができる。撮像装置250は、これらに限られず、左後ろ側方を撮像する左サイドカメラおよび右後ろ側方を撮像する右サイドカメラ等、種々の位置に設置される撮像装置を含む。
【0068】
撮像装置250により撮像された画像の画像信号は、車両240内の情報処理装置242および/または表示装置243等に出力され得る。これらの情報処理装置242および表示装置243は、撮像装置250と共に車載システムを構成する。車両240内の情報処理装置242は、撮像装置250により取得される画像信号を処理し、画像を認識して運転者の運転を支援する装置を含む。また、情報処理装置242は、例えば、ナビゲーション装置、衝突被害軽減ブレーキ装置、車間距離制御装置、および、車線逸脱警報装置等を含むが、これらに限定されない。表示装置243は、情報処理装置242により処理されて出力される画像を表示するが、撮像装置250から直接に画像信号を受信することもできる。また、表示装置243は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、および、無機ELディスプレイを採用し得るが、これらに限定されない。表示装置243は、リアカメラ等の運転者から視認しづらい位置の画像を撮像する撮像装置250から出力された画像信号を、運転者に対して表示することができる(乗員への情報を出力できる)。
【0069】
図10には、
図9に示す車載システムを構成する撮像装置の構成が示される。図示のように、実施形態に係る撮像装置250は、制御部252と、記憶部254と、前述した
図8に示すカメラモジュール300を備える。
【0070】
制御部252は、カメラモジュール300を制御するとともに、カメラモジュール300の撮像素子304から出力される電気信号を処理する。この制御部252は例えばプロセッサとして構成されてもよい。また、制御部252は1つ以上のプロセッサを含んでもよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、および、特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでもよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(Integrated Circuit)を含んでもよい。特定用途向けICは、ASIC(Application
Specific Integrated Circuit)とも称される。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。プログラマブルロジックデバイスは、PLD(Programmable Logic Device)とも称される。PLDは、FPGA(Field-Programmable
Gate Array)を含んでもよい。制御部252は、1つ以上のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、および、SiP(System In a Package)のいずれかであってもよい。
【0071】
記憶部254は、撮像装置250の動作に係る各種情報またはパラメータを記憶する。記憶部254は、例えば半導体メモリ等で構成されてもよい。記憶部254は、制御部252のワークメモリとして機能してもよい。記憶部254は、撮像画像を記憶してもよい。記憶部254は、制御部252が撮像画像に基づく検出処理を行なうための各種パラメータ等を記憶してもよい。記憶部254は制御部252に含まれてもよい。
【0072】
前述したように、カメラモジュール300は、レンズユニット11を介して結像する被写体像を撮像素子304で撮像し、撮像した画像を出力する。カメラモジュール300で撮像された画像は、撮像画像とも称される。
【0073】
撮像素子304は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサまたはCCD(Charge Coupled Device)等で構成されてよい。撮像素子304は、複数の画素が並ぶ撮像面を有する。各画素は、入射した光量に応じて電流または電圧で特定される信号を出力する。各画素が出力する信号は、撮像データとも称される。
【0074】
撮像データは、全ての画素についてカメラモジュール300で読み出され、撮像画像として制御部252に取り込まれてもよい。全ての画素について読み出された撮像画像は、最大撮像画像とも称される。撮像データは、一部の画素についてカメラモジュール300で読み出され、撮像画像として取り込まれてもよい。言い換えれば、撮像データは、所定の取り込み範囲の画素から読み出されてもよい。所定の取り込み範囲の画素から読み出された撮像データは、撮像画像として取り込まれてもよい。所定の取り込み範囲は、制御部252によって設定されてもよい。カメラモジュール300は、制御部252から所定の取り込み範囲を取得してもよい。撮像素子304は、レンズユニット11を介して結像する被写体像のうち所定の取り込み範囲の画像を撮像してもよい。
【0075】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズ、鏡筒などの形状等は、上述した実施形態に限定されない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した実施形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、上述した実施形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0076】
11 レンズユニット
12 鏡筒
13 第1レンズ
13,14,15,16 レンズ
26A~26F シール部材
27A~27D、27F シール部材本体
28 Dカット部
30,33 PTC発熱体
31a,31b,32a,32b 導電線
240 車両(移動体)
242 処理装置
243 表示装置
250 撮像装置
252 制御部
300 カメラモジュール
304 撮像素子
L レンズ群
O 光軸