(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093238
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】蓋付き注出キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 51/16 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B65D51/16 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209485
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】落合 皐汰朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DC03
3E084EA02
3E084EB02
3E084EC03
3E084FA02
3E084FB01
3E084GA06
3E084GB06
3E084HA03
3E084HB05
3E084HD04
3E084KA05
3E084KB01
3E084LA17
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】固化する内容物を注出させる場合にもサックバック機能が維持される蓋付き注出キャップを提案する。
【解決手段】蓋付き注出キャップは、注出キャップ1と蓋体6とを備え、注出キャップ1は、容器10の口部12aに装着した状態で口部12aを覆う隔壁2aと、隔壁2aから収容空間Sに向けて突出する筒状壁2cと、筒状壁2cの内側を介して注出口4cと収容空間Sとを通じさせる連通口2eと、筒状壁2cの内側に移動可能に配され、連通口2eに向けて移動する際は注出口4cから筒状壁2cの内側に向けて内容物を引き戻す移動弁5と、を備え、蓋体6は、閉蓋時において注出口4cに挿入される棒状部6cを備え、移動弁5は係合部5cを有し、棒状部6cは閉蓋時において係合部5cに係合する被係合部6fを有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着され該容器の収容空間に収めた内容物を注出口から注出させる注出キャップと、該注出口を覆って該注出キャップに開閉可能に保持される蓋体とを備える蓋付き注出キャップであって、
前記注出キャップは、前記口部に装着した状態で該口部を覆う隔壁と、該隔壁から前記収容空間に向けて突出する筒状壁と、該筒状壁の内側を介して前記注出口と該収容空間とを通じさせる連通口と、該筒状壁の内側に移動可能に配され、該連通口に向けて移動する際は該注出口から該筒状壁の内側に向けて内容物を引き戻す移動弁と、を備え、
前記蓋体は、閉蓋時において前記注出口に挿入される棒状部を備え、
前記移動弁は係合部を有し、前記棒状部は閉蓋時において該係合部に係合する被係合部を有する蓋付き注出キャップ。
【請求項2】
前記移動弁は、該移動弁が前記連通口に向けて移動した際に前記筒状壁の内面に接触するシール部と、該シール部から前記注出口に向けて延在するとともに先端に前記係合部が設けられた延出部を有し、
前記注出キャップは、前記延出部に向けて延在し、前記移動弁が前記注出口に向けて移動した際に前記シール部が接触して該移動弁の移動を規制する少なくとも1つのキャップ側ストッパー片を有する、請求項1に記載の蓋付き注出キャップ。
【請求項3】
前記移動弁は、該移動弁が前記連通口に向けて移動した際に前記筒状壁の内面に接触するシール部と、該シール部から前記注出口に向けて延在するとともに先端に前記係合部が設けられた延出部と、該延出部から延在し、該移動弁が該注出口に向けて移動した際に前記注出キャップに接触して該移動弁の移動を規制する少なくとも1つの移動弁側ストッパー片を有する、請求項1に記載の蓋付き注出キャップ。
【請求項4】
前記棒状部は、閉蓋時において前記注出口に接触するシール部を有する、請求項1に記載の蓋付き注出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に装着して使用される蓋付き注出キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
内容物を収容した容器の口部に装着されて注出口から内容物を注出させる注出キャップ、及び注出口を覆ってこの注出キャップに開閉可能に保持される蓋体を備える蓋付き注出キャップが既知である。
【0003】
このような蓋付き注出キャップとして、例えば特許文献1には、弾性変形可能な容器の口部に装着される吐出キャップが示されている。
【0004】
特許文献1の蓋付き注出キャップは、その内部に、筒状壁と筒状壁の内側を移動可能な球状の移動弁を備えている。この移動弁は、容器の収容空間から内容物を吐出させる際は注出口に向けて移動し、内容物の吐出が終了すると筒状壁に設けた連通口に向けて移動するものであり、このような構成によって注出口付近の内容物を注出キャップの内側に引き戻すサックバック機能を備えている。また移動弁は、内容物の吐出が終了した状態では筒状壁の内周面に接触していて、これにより連通口から収容空間内への外気の侵入を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでこの種の蓋付き注出キャップが装着される容器に対し、例えば乾性油(一例として亜麻仁油)のように空気と触れることによって固化する内容物を収容する場合は、筒状壁の内周面と移動弁との間で内容物が次第に固まってしまうことがあり、この場合は、移動弁が筒状壁内で移動できずにサックバック機能が損なわれるおそれがある。
【0007】
このような点に鑑み、本発明は、固化する内容物を注出させる場合にもサックバック機能が維持される蓋付き注出キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、容器の口部に装着され該容器の収容空間に収めた内容物を注出口から注出させる注出キャップと、該注出口を覆って該注出キャップに開閉可能に保持される蓋体とを備える蓋付き注出キャップであって、
前記注出キャップは、前記口部に装着した状態で該口部を覆う隔壁と、該隔壁から前記収容空間に向けて突出する筒状壁と、該筒状壁の内側を介して前記注出口と該収容空間とを通じさせる連通口と、該筒状壁の内側に移動可能に配され、該連通口に向けて移動する際は該注出口から該筒状壁の内側に向けて内容物を引き戻す移動弁と、を備え、
前記蓋体は、閉蓋時において前記注出口に挿入される棒状部を備え、
前記移動弁は係合部を有し、前記棒状部は閉蓋時において該係合部に係合する被係合部を有する蓋付き注出キャップである。
【0009】
前記移動弁は、該移動弁が前記連通口に向けて移動した際に前記筒状壁の内面に接触するシール部と、該シール部から前記注出口に向けて延在するとともに先端に前記係合部が設けられた延出部を有し、
前記注出キャップは、前記延出部に向けて延在し、前記移動弁が前記注出口に向けて移動した際に前記シール部が接触して該移動弁の移動を規制する少なくとも1つのキャップ側ストッパー片を有することが好ましい。
【0010】
前記移動弁は、該移動弁が前記連通口に向けて移動した際に前記筒状壁の内面に接触するシール部と、該シール部から前記注出口に向けて延在するとともに先端に前記係合部が設けられた延出部と、該延出部から延在し、該移動弁が該注出口に向けて移動した際に前記注出キャップに接触して該移動弁の移動を規制する少なくとも1つの移動弁側ストッパー片を有することが好ましい。
【0011】
前記棒状部は、閉蓋時において前記注出口に接触するシール部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蓋付き注出キャップは、注出口に挿入される棒状部が蓋体に設けられていて、移動弁は係合部を有し、棒状部は蓋体を閉蓋した際にこの係合部に係合する被係合部を有している。すなわち、筒状壁の内周面と移動弁との間で内容物が固化して移動弁が移動できない状態であっても、蓋体を開蓋した際に棒状部によって移動弁が持ち上げられるため、これにより固化した内容物から剥がされた移動弁は筒状壁内で再び移動することが可能となり、サックバック機能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明に係る蓋付き注出キャップの第一実施形態を示した側面視での断面図である。
【
図2】
図1Aに示した移動弁が上昇した状態での部分断面図である。
【
図3A】本発明に係る蓋付き注出キャップの第二実施形態を示した側面視での断面図である。
【
図4】
図3Aに示した移動弁が上昇した状態での部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る蓋付き注出キャップの一実施形態について説明する。なお本明細書等における上下方向とは、図示した軸線O(後述する外層体12の軸線)に沿う方向である。また径方向とは、軸線Oに対して垂直な面内で軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で軸線Oを中心として周回する方向である。
【0015】
図1Aは、本発明に係る蓋付き注出キャップの第一実施形態を示している。本実施形態の蓋付き注出キャップは、注出キャップ1(中栓2、弁部材3、キャップ本体4、移動弁5で構成される)と蓋体6を備えていて、容器10に装着される。
【0016】
まず容器10について説明する。本実施形態の容器10は、所謂、二重容器(デラミ容器、積層剥離容器と称されることもある)であって、内層体11と外層体12で構成される。
【0017】
内層体11は、薄手の合成樹脂によって形成されていて減容変形可能であって、その内側には内容物を収容可能な収容空間Sが設けられている。
【0018】
外層体12は、軸線Oに沿って延在する円筒状の口部12aを備えている。口部12aの外周面には、雄ねじ部12bが設けられている。また口部12aは、口部12aを径方向に貫通する通気口12cを備えている。更に口部12aは、通気口12cが開口する部位において、上下方向に延在して雄ねじ部12bを分断する切欠き12dを備えている。図示は省略するが、口部12aの下方には中空状であって可撓性を有する胴部と、胴部の下端を閉鎖する底部が設けられていて、外層体12はボトル状の形態をなしている。また本実施形態の外層体12は合成樹脂製であって、胴部は可撓性を有している。
【0019】
そして内層体11と外層体12との相互間には、通気口12cに通じる内部空間Nが形成されている。
【0020】
中栓2は、口部12aの上方に位置し、口部12aを覆って収容空間Sを閉鎖する隔壁2aを備えている。隔壁2aは、上方を開口させた環状凹部2bを備えている。環状凹部2bの径方向内側には、下方に向けて(収容空間Sに向けて)突出する筒状壁2cが設けられている。筒状壁2cは、その上部は円筒状をなしていて、その下部は下方に向けて縮径している。ここで筒状壁2cの下部を縮径部2dと称する。縮径部2dの下端には、筒状壁2cの内側と収容空間Sとを連通させる連通口2eが設けられている。
【0021】
また中栓2は、隔壁2aの外縁から上方に向けて延在する外縁壁2fを備えている。隔壁2aと外縁壁2fとの連結部には、これらを貫通する空気用連通口2gが設けられている。そして隔壁2aの下面には、内層体11と液密に接触する環状のシール壁2hが設けられている。
【0022】
弁部材3は、弾性を有する素材(例えばゴムやエラストマー、軟質ポリエチレン(低密度ポリエチレン)等)で形成されている。弁部材3は、軸線Oを中心とする円筒状であって下端部が環状凹部2bによって支持される基部3aを備えている。また基部3aの径方向外側には、軸線Oを中心とする薄肉のドーナツ板状であって、上下方向に弾性変形可能な空気弁3bが設けられている。
【0023】
また
図1A、
図1Bに示すように弁部材3は、基部3aの内面と全周に亘って連結するとともに軸線Oに向けて延在する板状のリング壁3cと、リング壁3cの内面の一部と連結するとともに軸線Oに向けて延在するストッパー片(キャップ側ストッパー片3d)を備えている。本実施形態のキャップ側ストッパー片3dは、周方向に等間隔で合計4つ設けられていて、隣り合うキャップ側ストッパー片3dの間には、内容物が通過可能な内容物通路T1が形成されている(
図1B参照)。
【0024】
キャップ本体4は、弁部材3の上方に位置する天壁4aと、天壁4aの外縁に一体に連結するとともに口部12aを取り囲む外周壁4bとを備えている。天壁4aの中央部には、天壁4aを貫通する注出口4cと、注出口4cを取り囲んで上方に向けて延在する注出筒4dが設けられている。また天壁4aの下面には、下方に向けて突出する円環状の内側突起4eと、内側突起4eの径方向外側で下方に向けて突出する円環状の外側突起4fが設けられている。図示したように内側突起4eと外側突起4fとの間には、基部3aの上端部が挿入される。なお、基部3aの下端部が環状凹部2bに支持されて基部3aの上端部が内側突起4eと外側突起4fで支持された状態において、基部3aの径方向内側には、隔壁2a、基部3a、及び天壁4aで取り囲まれる連通空間Kが区画されている。
【0025】
更に天壁4aの下面には、空気弁3bの外縁部が接触する段部4gが設けられている。更に天壁4aは、段部4gの径方向内側において、その表裏を貫通する外気導入口4hを備えている。また天壁4aの上面における外縁部には、径方向外側に向けて凸状になるように形作られ蓋体6を保持する保持凸部4jが設けられている。
【0026】
そして外周壁4bは、その内周面に雄ねじ部12bに適合する雌ねじ部4kを備えている。なお外周壁4bの下端部は、キャップ本体4を口部12aに装着した状態において、口部12aの外周面に気密に接触している。
【0027】
またキャップ本体4を口部12aに装着した状態において、上述した外気導入口4hから通気口12cに至る間には、空気用連通口2gから切欠き12dを経由する、或いは、空気用連通口2gから雄ねじ部12bと雌ねじ部4kとの間に形成される螺旋状の隙間を経由する通路(空気通路T2)が設けられている。なお、切欠き12dを設けることで空気通路T2を通る空気が流れやすくなるが、これを省略してもよい。
【0028】
移動弁5は、下部は水平方向に延在し側部は円弧状に延在して全体的に半球殻状になる弁体部5aを備えている。弁体部5aは、
図1Aに示す状態(移動弁5が下方に移動した状態)において、縮径部2dの内面と全周に亘って接触している。
【0029】
また移動弁5は、弁体部5aの中央部から上方に向けて延出された円柱状の延出部5bを備えている。延出部5bの先端(上端)には、径方向外側に向けて球状に膨出された係合部5cが設けられている。そして係合部5cの下方における延出部5bの外周面には、径方向外側に向けて突出するリブ5dが設けられている。なおリブ5dの外縁とキャップ側ストッパー片3dの内縁との間には隙間があいている。
【0030】
蓋体6は、天壁4aの上方に位置する頂壁6aと、頂壁6aに一体に連結する蓋体外周壁6bとを備えている。
【0031】
頂壁6aの中央部における下面には、閉蓋時において注出筒4dの内側を通過して注出口4cに挿入される棒状部6cを備えている。棒状部6cは、外周面が円形状であって頂壁6aに連結する根元部6dと、外周面が根元部6dよりも小径の円形状になる先端部6eを備えている。根元部6dは、本明細書等における「シール部」に相当する部位であって、閉蓋時において注出口4cに接触する。また棒状部6cは、先端部6eの下端から上方に向けて延在し、蓋体6を閉じた状態で係合部5cが挿入される上側凹部6fを備えている。上側凹部6fの内面は、径方向外側に向けて膨出するように形作られていて、係合部5cは上側凹部6fに係合する。係合部5cが上側凹部6fに挿入された際、棒状部6cの先端はリブ5dに接触するため、係合部5cが上側凹部6fに過剰に挿入されることはない。なお上側凹部6fは、本明細書等における「被係合部」に相当する。
【0032】
蓋体外周壁6bの内周面には、保持凸部4jに係合する保持凹部6gが設けられている。また蓋体外周壁6bの外周面には、キャップ本体4の外周壁4bに一体に連結する屈曲可能なヒンジ部6hが設けられている。
【0033】
このような構成になる注出キャップ1から内容物を注出するにあたっては、まず蓋体6を開蓋姿勢に変位させる。ここで、蓋体6に設けた棒状部6cの上側凹部6fは、移動弁5の係合部5cに係合しているため、蓋体6が開く際に移動弁5が持ち上げられる(
図2を参照)。なお持ち上げられた移動弁5は、弁体部5aがキャップ側ストッパー片3dに接触したところで上昇が阻止されるため、上側凹部6fと係合部5cとの係合が外れ、その後、移動弁5は自重で落下する。すなわち、蓋体6を開蓋姿勢に変位させていても、弁体部5aが縮径部2dに接触して連通口2eが閉鎖されるため、収容空間Sへの外気の流れ込みを防止することができる。そして外層体12の胴部を押圧すると、内部空間Nが加圧されて収容空間Sの圧力が高まるため、収容空間Sの内容物は、連通口2eを通過して筒状壁2cの内側に流れ込み、移動弁5を上方に向けて移動させつつ弁体部5aと筒状壁2cの間を通過し、連通空間Kに導入される。なお、連通空間Kにはキャップ側ストッパー片3dが配置されているが、キャップ側ストッパー片3dの間には内容物通路T1が形成されていて、またキャップ側ストッパー片3dとリブ5dとの間には隙間があいているため、内容物はキャップ側ストッパー片3dよりも上方へ流動し、注出口4cから注出筒4dを経て外界へ注出される。なお、キャップ側ストッパー片3dとリブ5dとの間の隙間は比較的小さいため、筒状壁2cの内側で移動弁5が移動して弁体部5aが縮径部2dから離れた状態であっても、軸線Oに対する移動弁5の傾きを抑制することができる。また通気口12cと外気導入口4hとをつなぐ空気通路T2は、空気弁3bが段部4gに接触して閉鎖されているため、内部空間Nの空気が外界へ漏れ出すことはない。
【0034】
その後、外層体12への押圧を解除して胴部が復元し始めると、内部空間Nの容積が増えることから内部空間Nは減圧状態になる。すなわち外界と内部空間Nとの間に圧力差が生じるため、外気は、段部4gから離反するように空気弁3bを弾性変形させつつ、外気導入口4hからキャップ本体4の内側に導入され、更に空気通路T2を通って内部空間Nへ導入される。これにより内層体11を減容変形させたまま、外層体12を復元させることができる。
【0035】
また、外層体12への押圧を解除すると加圧されていた収容空間Sの圧力が低下するため、注出口4c側へ移動していた移動弁5は、連通口2e側へ移動する。これにより筒状壁2cの上方内側には、移動弁5が移動した分のスペースが形成されることになるため、このスペース分に相当する分の内容物を注出口4cから連通空間K内へ引き戻すことができ(サックバック機能)、注出筒4dの先端からの液だれを有効に防止することができる。そして連通口2e側へ移動した移動弁5は、再び弁体部5aが縮径部2dに接触して連通口2eが閉鎖されるため、収容空間Sへの外気の流れ込みを防止することができる。
【0036】
ところで亜麻仁油のような内容物を収容する場合、例えば弁体部5aと縮径部2dとの間で内容物が次第に固化すると、移動弁5が筒状壁2c内で移動できないおそれがある。一方、本実施形態の蓋付き注出キャップは、
図1Aに示すように蓋体6を閉じた状態においては、棒状部6cが注出口4cに挿入されて移動弁5の係合部5cが上側凹部6fに係合している。従って蓋体6を開くと、それに伴って上昇する棒状部6cによって移動弁5にも上向きの力が作用するため、移動弁5は固化した内容物から剥がされて持ち上げられ、筒状壁2c内で再び移動させることが可能になる。すなわち本実施形態の注出キャップ1によれば、固化しやすい内容物を収容する場合でも内容物を安定的に吐出することができ、またサックバック機能も維持することができる。
【0037】
ところで上述したキャップ側ストッパー片3dは、弁体部5aの外縁部よりも径方向内側まで延在している。すなわち、蓋体6を開いて移動弁5が持ち上げられた場合、
図2に示すように弁体部5aがキャップ側ストッパー片3dに接触するため、移動弁5が過剰に持ち上げられることはない。また弁体部5aがキャップ側ストッパー片3dに接触した状態において、弁体部5aの下部は筒状壁2cの内側に位置しているため、移動弁5が筒状壁2cから抜け出すことはない。
【0038】
また本実施形態の注出キャップ1は、蓋体6を閉じた状態において、根元部6dは注出口4cに接触するため、外気が注出口4cの内側に侵入しにくい状態にある。すなわち、弁体部5aと縮径部2dとの間での内容物の固化をより効果的に防止することができる。また蓋体6を閉じる際は、下降する棒状部6cが延出部5bに押し当たって移動弁5を押下げるため、弁体部5aと縮径部2dとを確実に接触させることができ、収容空間Sへの外気の流れ込みをより安定的に防止することができる。
【0039】
次に本発明に係る蓋付き注出キャップの第二実施形態について、
図3A、
図3B、
図4を参照しながら説明する。なお、上述した第一実施形態と共通する部位については、図面に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0040】
図3Aに示した蓋付き注出キャップは、上述したキャップ側ストッパー片3dを省略した弁部材3Aを備えている。またこの蓋付き注出キャップは、上述した移動弁5に替えて移動弁7を備えている。
【0041】
移動弁7は、上部は水平方向に延在し側部は下方に向けて延在する有蓋筒状の弁体部7aを備えている。弁体部7aの下端部は、縮径部2dの内面に沿うように傾斜していて、
図3Aに示す状態(移動弁7が下方に移動した状態)において、縮径部2dの内面と全周に亘って接触している。
【0042】
また移動弁7は、弁体部7aの中央部から上方に向けて延出された円柱状の延出部7bを備えていて、延出部7bの先端(上端)には、径方向外側に向けて突出する係合部7cが設けられている。そして係合部7cの下方には、上部よりも下部の外形が大きくなる段部7dが設けられている。係合部7cは、蓋体6を閉じた状態において上側凹部6fに挿入され、両者は係合する。なお係合部7cが上側凹部6fに挿入された際、棒状部6cの先端は段部7dに接触するため、係合部7cが上側凹部6fに過剰に挿入されることはない。
【0043】
更に移動弁7は、延出部7bと全周に亘って連結するとともに径方向外側に向けて延在する板状のリング壁7eと、リング壁7eの外面の一部と連結するとともに径方向外側に向けて延在するストッパー片(移動弁側ストッパー片7f)を備えている。本実施形態の移動弁側ストッパー片7fは、
図3Aに示すように内側突起4eの直下に位置するところまで延在している。また移動弁側ストッパー片7fは、本実施形態では周方向に等間隔で合計4つ設けられていて、隣り合う移動弁側ストッパー片7fの間には、内容物が通過可能な内容物通路T1が形成されている(
図3B参照)。
【0044】
図3Aに示した蓋付き注出キャップにおいても、
図1Aに示した蓋付き注出キャップと同様の手順で内容物を注出口4cから外界へ注出させることができる。また内容物を注出口4cから注出させた後は、注出口4c側へ移動していた移動弁7が連通口2e側へ移動してサックバック機能が発揮されるため、注出筒4dの先端からの液だれを有効に防止することができる。なお、移動弁7は移動弁側ストッパー片7fを備えていて、移動弁側ストッパー片7fと基部3aとの間に設けられる隙間は比較的小さいため、移動弁7が筒状壁2cの内側で移動する際の軸線Oに対する移動弁7の傾きを抑制することができる。
【0045】
また
図3Aに示した蓋付き注出キャップにおいても、蓋体6を閉じた状態においては、棒状部6cが注出口4cに挿入されて移動弁7の係合部7cが上側凹部6fに係合する。従って蓋体6を開くと、それに伴って上昇する棒状部6cによって移動弁7が持ち上げられる。よって、内容物が弁体部7aと縮径部2dとの間で固化した場合でも、移動弁7を筒状壁2c内で再び移動させることが可能になり、サックバック機能を維持することができる。
【0046】
上述した移動弁側ストッパー片7fは、内側突起4eの直下に位置するところまで延在していて、蓋体6を開いて移動弁7が持ち上げられた場合、
図4に示すように移動弁側ストッパー片7fが内側突起4eに接触するため、移動弁7が過剰に持ち上げられることはない。また移動弁側ストッパー片7fが内側突起4eに接触した状態において、弁体部7aの下部は筒状壁2cの内側に位置しているため、移動弁7が筒状壁2cから抜け出すことはない。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0048】
例えば上述した実施形態において、係合部と被係合部は凸部又はこれに係合する凹部であったが、これらの形態に限られず、例えば両者は爪状になるものでもよい。また上述した蓋体6は、ヒンジ部6hによってキャップ本体4に一体的に連結していたが、キャップ本体4と蓋体6を別異の部材とし、一方に雄ねじ部を設けて他方に雌ねじ部を設け、これらを螺合させるように構成してもよいし、アンダーカットによって両者が係合するように構成してもよい。またキャップ側ストッパー片3dと移動弁側ストッパー片7fの数は、本実施形態のように4つに限られず、少なくとも1つあればよい。
【0049】
また本発明に係る蓋付き注出キャップは、二重容器に装着されるものに限られず、内層体を持たない容器に装着することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:注出キャップ
2:中栓
2a:隔壁
2b:環状凹部
2c:筒状壁
2d:縮径部
2e:連通口
2f:外縁壁
2g:空気用連通口
2h:シール壁
3:弁部材
3A:弁部材
3a:基部
3b:空気弁
3c:リング壁
3d:キャップ側ストッパー片
4:キャップ本体
4a:天壁
4b:外周壁
4c:注出口
4d:注出筒
4e:内側突起
4f:外側突起
4g:段部
4h:外気導入口
4j:保持凸部
4k:雌ねじ部
5:移動弁
5a:弁体部
5b:延出部
5c:係合部
5d:リブ
6:蓋体
6a:頂壁
6b:蓋体外周壁
6c:棒状部
6d:根元部(シール部)
6e:先端部
6f:上側凹部(被係合部)
6g:保持凹部
6h:ヒンジ部
7:移動弁
7a:弁体部
7b:延出部
7c:係合部
7d:段部
7e:リング壁
7f:移動弁側ストッパー片
10:容器
11:内層体
12:外層体
12a:口部
12b:雄ねじ部
12c:通気口
12d:切欠き
K:連通空間
N:内部空間
O:軸線
S:収容空間
T1:内容物通路
T2:空気通路