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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093239
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】蓋付き注出キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/16 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B65D51/16 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209486
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DC03
3E084EA02
3E084EB02
3E084EC03
3E084FA03
3E084FB01
3E084GA06
3E084GB06
3E084HB05
3E084HD02
3E084KA05
3E084KB01
3E084LA21
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】サックバック機能がより確実に発揮される蓋付き注出キャップを提案する。
【解決手段】蓋付き注出キャップは、注出キャップ1Aと蓋体6とを備え、注出キャップ1Aは、収容空間Sからの内容物が通過する連通口5nと、連通口5nと注出開口4eとをつなぐ空間が内側に設けられる内部周壁2cと、内部周壁2cの内面に摺動可能に接触し、注出開口4eに近づく前進位置と注出開口4eから離れる後退位置との間で移動するピストン5Aと、を備え、蓋体6は、閉蓋時にピストン5Aに接触してピストン5Aを後退位置へ移動させる棒状部6cを備える。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着され該容器の収容空間に収めた内容物を注出開口から注出させる注出キャップと、該注出開口を覆って該注出キャップに開閉可能に保持される蓋体とを備える蓋付き注出キャップであって、
前記注出キャップは、
前記収容空間からの内容物が通過する連通口と、
前記連通口と前記注出開口とをつなぐ空間が内側に設けられる内部周壁と、
前記内部周壁の内面に摺動可能に接触し、前記注出開口に近づく前進位置と該注出開口から離れる後退位置との間で移動するピストンと、を備え、
前記蓋体は、閉蓋時に前記ピストンに接触して該ピストンを前記後退位置へ移動させる棒状部を備える蓋付き注出キャップ。
【請求項2】
前記ピストンは係合部を有し、前記棒状部は閉蓋時において該係合部に係合する被係合部を有する請求項1に記載の蓋付き注出キャップ。
【請求項3】
前記ピストンは、
前記連通口を有するピストン周壁と、
前記ピストン周壁の内側と前記注出開口とを通じさせる中間開口と、
前記ピストン周壁の内側に配され、該ピストン周壁の内面から離反して該連通口と該中間開口とを連通させる解放位置と、該ピストン周壁の内面に接触して前記連通口と前記中間開口とを非連通にする閉鎖位置との間で移動する移動弁と、を備える請求項1に記載の蓋付き注出キャップ。
【請求項4】
前記ピストンは、前記移動弁を前記閉鎖位置に向けて付勢する弾性部を有する請求項3に記載の蓋付き注出キャップ。
【請求項5】
前記注出キャップは、前記ピストンが前記後退位置に移動した際に前記移動弁に接触して該移動弁を前記ピストン周壁の内面から離反させる接触部を有する請求項3に記載の蓋付き注出キャップ。
【請求項6】
前記内部周壁の内面に、内容物が通過する溝部を有する請求項1に記載の蓋付き注出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に装着して使用される蓋付き注出キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
内容物を収容した容器の口部に装着されて注出開口から内容物を注出させる注出キャップ、及び注出開口を覆ってこの注出キャップに開閉可能に保持される蓋体を備える蓋付き注出キャップが既知である。
【0003】
このような蓋付き注出キャップとして、例えば特許文献1には、弾性変形可能な容器の口部に装着される吐出キャップが示されている。
【0004】
特許文献1の蓋付き注出キャップは、その内部に、筒状壁と筒状壁の内側を移動可能な球状の移動弁を備えている。この移動弁は、容器の収容空間から内容物を吐出させる際は注出開口に向けて移動し、内容物の吐出が終了すると筒状壁に設けた連通口に向けて移動するものであり、このような構成によって注出開口付近の内容物を注出キャップの内側に引き戻すサックバック機能を実現している。サックバック機能を備える蓋付き注出キャップによれば、注出開口付近に内容物が溜まったままになる状態を防止することができる。
【0005】
ところで蓋付き注出キャップには、蓋体を閉めた際に注出開口に挿入されるシール用の棒状部を備えているものがあり、このような棒状部によって、注出開口から注出キャップの内部への空気の侵入を防止している。ここで、注出開口付近に内容物が溜まっていると挿入された棒状部で内容物が溢れて周囲を汚してしまうおそれがあるが、サックバック機能を有する場合は溜まった内容物が注出キャップの内側に引き戻されているため、このような不具合を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-159942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、このような移動弁を設けた場合でも、例えば内容物の性状や使用状況、使用される周囲の環境等の要因で移動弁が意図した通りに移動せず、内容物が注出キャップの内側へ十分に引き戻されないことがあった。
【0008】
このような点に鑑み、本発明は、サックバック機能がより確実に発揮される蓋付き注出キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、容器の口部に装着され該容器の収容空間に収めた内容物を注出開口から注出させる注出キャップと、該注出開口を覆って該注出キャップに開閉可能に保持される蓋体とを備える蓋付き注出キャップであって、
前記注出キャップは、
前記収容空間からの内容物が通過する連通口と、
前記連通口と前記注出開口とをつなぐ空間が内側に設けられる内部周壁と、
前記内部周壁の内面に摺動可能に接触し、前記注出開口に近づく前進位置と該注出開口から離れる後退位置との間で移動するピストンと、を備え、
前記蓋体は、閉蓋時に前記ピストンに接触して該ピストンを前記後退位置へ移動させる棒状部を備える蓋付き注出キャップである。
【0010】
前記ピストンは係合部を有し、前記棒状部は閉蓋時において該係合部に係合する被係合部を有することが好ましい。
【0011】
前記ピストンは、
前記連通口を有するピストン周壁と、
前記ピストン周壁の内側と前記注出開口とを通じさせる中間開口と、
前記ピストン周壁の内側に配され、該ピストン周壁の内面から離反して該連通口と該中間開口とを連通させる解放位置と、該ピストン周壁の内面に接触して前記連通口と前記中間開口とを非連通にする閉鎖位置との間で移動する移動弁と、を備えることが好ましい。
【0012】
前記ピストンは、前記移動弁を前記閉鎖位置に向けて付勢する弾性部を有することが好ましい。
【0013】
前記注出キャップは、前記ピストンが前記後退位置に移動した際に前記移動弁に接触して該移動弁を前記ピストン周壁の内面から離反させる接触部を有することが好ましい。
【0014】
前記内部周壁の内面に、内容物が通過する溝部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の蓋付き注出キャップは、上記のような連通口、内部周壁、ピストンを備えていて、蓋体を閉めた際、蓋体の棒状部はピストンに接触してこれを後退位置へ移動させるよう構成されている。すなわち、ピストンが後退位置へ移動することによって、内部周壁の内側には注出開口側にスペースが形成されるため、注出開口付近の内容物をこのスペースに引き戻すことができる。また棒状部でピストンを強制的に移動させているため、内容物を引き戻すサックバック機能がより確実に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本発明に係る蓋付き注出キャップの第一実施形態を示した側面視での断面図である。
図1B図1AにおけるA部の部分拡大図である。
図1C図1AにおけるB部の部分拡大図である。
図2A図1Aに示した蓋付き注出キャップにおける蓋体を開いた状態での断面図である。
図2B図2AにおけるC部の部分拡大図である。
図3】本発明に係る蓋付き注出キャップの第二実施形態を示した側面視での断面図である。
図4図3に示した蓋付き注出キャップにおける蓋体を開いた状態での断面図である。
図5】本発明に係る蓋付き注出キャップの第三実施形態を示した側面視での断面図である。
図6図5に示した蓋付き注出キャップにおける蓋体を開いた状態での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る蓋付き注出キャップの一実施形態について説明する。なお本明細書等における上下方向とは、図示した軸線O(後述する外層体12の軸線)に沿う方向である。また径方向とは、軸線Oに対して垂直な面内で軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で軸線Oを中心として周回する方向である。
【0018】
図1Aは、本発明に係る蓋付き注出キャップの第一実施形態を示している。本実施形態の蓋付き注出キャップは、注出キャップ1A(中栓2A、弁部材3、キャップ本体4、ピストン5Aで構成される)と蓋体6を備えていて、容器10に装着される。
【0019】
まず容器10について説明する。本実施形態の容器10は、所謂、二重容器(デラミ容器、積層剥離容器と称されることもある)であって、内層体11と外層体12で構成される。
【0020】
内層体11は、薄手の合成樹脂によって形成されていて減容変形可能であって、その内側には内容物を収容可能な収容空間Sが設けられている。
【0021】
外層体12は、軸線Oに沿って延在する円筒状の口部12aを備えている。口部12aの外周面には、雄ねじ部12bが設けられている。また口部12aは、口部12aを径方向に貫通する通気口12cを備えている。更に口部12aは、通気口12cが開口する部位において、上下方向に延在して雄ねじ部12bを分断する切欠き12dを備えている。図示は省略するが、口部12aの下方には中空状であって可撓性を有する胴部と、胴部の下端を閉鎖する底部が設けられていて、外層体12はボトル状の形態をなしている。また本実施形態の外層体12は合成樹脂製であって、胴部は可撓性を有している。
【0022】
そして内層体11と外層体12との相互間には、通気口12cに通じる内部空間Nが形成されている。
【0023】
中栓2Aは、口部12aの上方に位置し、口部12aを覆って収容空間Sを閉鎖する隔壁2aを備えている。隔壁2aは、上方を開口させた環状凹部2bを備えている。環状凹部2bの径方向内側には、内面が円形になる内部周壁2cが設けられている。内部周壁2cの下端部には、径方向内側に向けて突出する抜け止め部2dが設けられている。抜け止め部2dの径方向内側には、開口(下部開口2e)が設けられている。また図1Bに示すように内部周壁2cの内面には、後述するように内容物を通過させる(僅かに通過させる)ことができる溝部2fが設けられている。溝部2fは、内部周壁2cの上端部から軸線Oに沿って、内部周壁2cと抜け止め部2dとの連結部の上方まで延在している。また溝部2fの溝幅及び溝深さは内部周壁2cのサイズに比して微小である。
【0024】
また中栓2Aは、隔壁2aの外縁から上方に向けて延在する外縁壁2gを備えている。隔壁2aと外縁壁2gとの連結部には、これらを貫通する空気用連通口2hが設けられている。そして隔壁2aの下面には、内層体11と液密に接触する環状のシール壁2jが設けられている。
【0025】
弁部材3は、弾性を有する素材(例えば軟質ポリエチレン(低密度ポリエチレン)やエラストマー等)で形成されている。弁部材3は、軸線Oを中心とする円筒状であって下端部が環状凹部2bによって支持される基部3aを備えている。また基部3aの径方向外側には、軸線Oを中心とする薄肉のドーナツ板状であって、上下方向に弾性変形可能な空気弁3bが設けられている。
【0026】
キャップ本体4は、弁部材3の上方に位置する天壁4aと、天壁4aの外縁に一体に連結するとともに口部12aを取り囲む外周壁4bとを備えている。天壁4aの中央部には、天壁4aを貫通する貫通孔4cが設けられていて、天壁4aの上面には、貫通孔4cを取り囲む注出筒4dが設けられている。ここで、注出筒4dの上端に設けられた開口を注出開口4eと称する。
【0027】
そして天壁4aの下面には、下方を開口させた形状をなし基部3aの上端部が支持される環状凹部4fが設けられている。また天壁4aの下面には、空気弁3bの外縁部が接触する段部4gが設けられている。更に天壁4aは、段部4gの径方向内側において、その表裏を貫通する外気導入口4hを備えている。また天壁4aの上面における外縁部には、径方向外側に向けて凸状になるように形作られ蓋体6を保持する保持凸部4jが設けられている。
【0028】
そして外周壁4bは、その内周面に雄ねじ部12bに適合する雌ねじ部4kを備えている。なお外周壁4bの下端部は、キャップ本体4を口部12aに装着した状態において、口部12aの外周面に気密に接触している。
【0029】
またキャップ本体4を口部12aに装着した状態において、上述した外気導入口4hから通気口12cに至る間には、空気用連通口2hから切欠き12dを経由する、或いは、空気用連通口2hから雄ねじ部12bと雌ねじ部4kとの間に形成される螺旋状の隙間を経由する通路(空気通路T)が設けられている。なお、切欠き12dを設けることで空気通路Tを通る空気が流れやすくなるが、これを省略してもよい。
【0030】
ピストン5Aは、軸線Oに沿って延在する円柱状の延出部5aを備えている。延出部5aの先端(上端)には、図1Cに示すように径方向外側に向けて球状に膨出された係合部5bが設けられている。そして係合部5bの下方には、上部よりも下部の外形が大きくなる段部5cが設けられている。
【0031】
そしてピストン5Aは、延出部5aの下端に連結するとともに径方向外側に向かうにつれて下方へ傾く連結壁5dを備えている。連結壁5dには、これを貫通する中間開口5eが設けられている。そして連結壁5dの外縁部には、上端部と下端部が径方向外側に位置するように湾曲し、この上端部と下端部が内部周壁2cの内面に摺動可能且つ密に接触するピストンシール部5fが設けられている。
【0032】
またピストン5Aは、ピストンシール部5fの内側に設けられる円環状の基部5gと、概略円板状をなしていて基部5gの下方に位置する移動弁5hと、基部5gに対して移動弁5hを下方に向けて付勢する弾性部5jを備えている。本実施形態の弾性部5jは、螺旋状に延在するとともに一端部が基部5gに一体的に連結するとともに他端部が移動弁5hに一体的に連結する複数の弾性片で構成されている。なお移動弁5hは、実際には図1Aに示した軸線Oに対して線対称になる形状であるが、図1Aでは説明の都合上、移動弁5hが下方に移動した状態を軸線Oに対して左側に示し、移動弁5hが上方に移動した状態を軸線Oに対して右側に示している。また図1A図2Aでは、弾性部5jを簡略化して示している。弾性部5jは、複数の弾性片で構成されるものや螺旋状に延在するものに限られず、一つの弾性片で構成してもよいし、他の形状(例えば板状)になるように構成してもよい。また弾性部5jは、基部5gと移動弁5hに一体的に連結するものに限られず、例えば合成樹脂製の基部5gと移動弁5hの間に金属製のコイルスプリングを介在させてもよい。
【0033】
更にピストン5Aは、一端部が基部5gの下方に位置し、そこから下方に向かうにつれて外径を小さくしながら延在するピストン周壁5kを備えている。ピストン周壁5kの下部には、縮径部5mが設けられている。なおピストン周壁5kの下部に設けられた開口を連通口5nと称する。
【0034】
図示したように移動弁5hと弾性部5jは、ピストン周壁5kの内側に位置している。また弾性部5jによって下方に付勢された移動弁5hは、通常時は縮径部5mの内面に接触している(図1Aにおいて軸線Oの左側に示した図を参照)が、収容空間Sが加圧されて内容物が連通口5nへ流れる状態では縮径部5mの内面から離反する(図1Aにおいて軸線Oの右側に示した図を参照)。ここで、移動弁5hが縮径部5mの内面に接触する位置を「閉鎖位置」と称し、移動弁5hが縮径部5mの内面から離反した位置を「解放位置」と称する。解放位置に移動弁5hが移動した際、連通口5nは、ピストン周壁5kの内側、中間開口5e、連結壁5dと内部周壁2cと天壁4aで取り囲まれる空間(以下、この空間を「連通空間K」と称する)、貫通孔4c、及び注出筒4dの内側を介して注出開口4eに連通している。一方、閉鎖位置に移動弁5hが移動した際、連通口5nと注出開口4eは非連通になる。
【0035】
ピストン5Aは、図1A図2Aに示したように、内部周壁2cの内側で上下方向に移動することができる。ここで、図1A図1Bに示したようにピストン5Aが内部周壁2cに対して下方へ移動した位置(本実施形態では更に、下方へ移動した際にピストンシール部5fの下端部が抜け止め部2dの上面に接触する位置)を「後退位置」と称し、図2A図2Bに示したようにピストン5Aが内部周壁2cに対して上方へ移動した位置(本実施形態では更に、上方へ移動した際にピストンシール部5fの上端部が天壁4aの下面に接触する位置)を「前進位置」と称する。
【0036】
蓋体6は、天壁4aの上方に位置する頂壁6aと、頂壁6aに一体に連結する蓋体外周壁6bとを備えている。
【0037】
頂壁6aの中央部における下面には、棒状部6cが設けられている。本実施形態の棒状部6cは、外周面が円形状であって頂壁6aに連結する根元部6dと、外周面が根元部6dよりも小径の円形状になる先端部6eを備えている。また棒状部6cは、図1Aに示すように閉蓋時において、注出開口4eから注出筒4dの内側を通過して更に貫通孔4cに挿入される。なお貫通孔4cに挿入された根元部6dは、貫通孔4cの内面に密に接触する。更に棒状部6cは、先端部6eの下端から上方に向けて延在し、蓋体6を閉じた状態で係合部5bが挿入される上側凹部6fを備えている。上側凹部6fの内面は、径方向外側に向けて膨出するように形作られていて、係合部5bは上側凹部6fに係合する。係合部5bが上側凹部6fに挿入された際、棒状部6cの先端は段部5cに接触するため、係合部5bが上側凹部6fに過剰に挿入されることはない。なお上側凹部6fは、本明細書等における「被係合部」に相当する。
【0038】
蓋体外周壁6bの内周面には、保持凸部4jに係合する保持凹部6gが設けられている。また蓋体外周壁6bの外周面には、キャップ本体4の外周壁4bに一体に連結する屈曲可能なヒンジ部6hが設けられている。
【0039】
このような構成になる注出キャップ1Aから内容物を注出するにあたっては、図1Aに示した閉蓋状態の蓋体6を、図2Aに示したように開蓋状態へ変位させる。蓋体6が閉蓋状態のとき、棒状部6cの上側凹部6fはピストン5Aの係合部5bに係合している。従ってピストン5Aは、蓋体6を開くときに棒状部6cによって引き上げられて、図2Aに示した前進位置へ移動する。そして外層体12の胴部を押圧すると、内部空間Nが加圧されて収容空間Sの圧力が高まるため、収容空間Sの内容物は、連通口5nに向かって流れ込み、弾性部5jの付勢力に抗して移動弁5hを上方に向けて移動させ、ピストン周壁5kの内側、中間開口5e、連通空間K、及び注出筒4dの内側を通って注出開口4eから外界へ注出される。なお、通気口12cと外気導入口4hとをつなぐ空気通路Tは、空気弁3bが段部4gに接触して閉鎖されているため、内部空間Nの空気が外界へ漏れ出すことはない。
【0040】
その後、外層体12への押圧を解除して胴部が復元し始めると、内部空間Nの容積が増えることから内部空間Nは減圧状態になる。すなわち外界と内部空間Nとの間に圧力差が生じるため、外気は、段部4gから離反するように空気弁3bを弾性変形させつつ、外気導入口4hからキャップ本体4の内側に導入され、更に空気通路Tを通って内部空間Nへ導入される。これにより内層体11を減容変形させたまま、外層体12を復元させることができる。
【0041】
また外層体12への押圧を解除すると、加圧されていた収容空間Sの圧力が下がって解放位置へ移動していた移動弁5hが閉鎖位置に戻るため、注出開口4eと連通口5nとの間が非連通状態になって収容空間Sを密封することができる。
【0042】
ここで、ピストン5Aが前進位置にあるとき、図2Bに示すようにピストンシール部5fの上端部と下端部は、溝部2fが設けられた領域で内部周壁2cの内面に接触している。すなわち、ピストンシール部5fの上端部よりも上方の空間(連通空間Kや、これにつながる注出筒4dの内側の空間等)とピストンシール部5fの下端部よりも下方の空間(内部周壁2cとピストン周壁5kの間に位置する空間や、これにつながる収容空間S等)は溝部2fを介してつながっている。従って、加圧されていた収容空間Sの圧力が下がる際、注出筒4dの内側に溜まった内容物を、溝部2fを介して収容空間Sに僅かに引き戻すことができる。図2Aに示すように本実施形態における延出部5aの上端部は、注出開口4eよりも下方に位置しているが、注出筒4dの内側に溜まった内容物が溝部2fを介して収容空間Sに引き戻されることにより、延出部5aの上端部を溜まった内容物から露出させることができる。
【0043】
そして蓋体6を閉じると、棒状部6cが延出部5aに接触してピストン5Aを押し下げるため、図1Aに示すようにピストン5Aは、後退位置へ移動する。これにより内部周壁2cの上方内側には、ピストン5Aが移動した分のスペースが形成されることになるため、このスペース分に相当する分の内容物を注出筒4dの内側の空間から内部周壁2c内へ引き戻すことができる。後退位置へ移動したピストン5Aは、ピストンシール部5fの下端部が抜け止め部2dの上面に接触するため、内部周壁2cから抜け出すことはない。またピストン5Aは後退位置で停止するため、係合部5bと上側凹部6fとを係合させることができる。そしてピストン5Aが後退位置にあるとき、図1Bに示すようにピストンシール部5fの下端部は、溝部2fが設けられた領域よりも下方に位置するところで内部周壁2cの内面に接触している。すなわち、ピストンシール部5fの下端部は内部周壁2cの内面に対して全周に亘って接触しているため、溝部2fの内側に空気が流れ込むことがあっても収容空間Sへの侵入を防止することができる。
【0044】
次に本発明に係る蓋付き注出キャップの第二実施形態について、図3図4を参照しながら説明する。なお、上述した第一実施形態と共通する部位については、図面に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】
図3図4に示した蓋付き注出キャップは、注出キャップ1B(中栓2A、弁部材3、キャップ本体4、ピストン5Bで構成される)と蓋体6を備えていて、容器10に装着される。
【0046】
ピストン5Bは、連結壁5dから下方に向けて延在するピストン周壁5pと、ピストン周壁5pの下部に設けられた縮径部5qと、ピストン周壁5pの下部に設けられた開口(連通口5r)を備えている。またピストン周壁5pの内側には、球状になる移動弁5sが配されている。移動弁5sは、ピストン周壁5p内を上下方向に移動可能である。また移動弁5sが下方に移動した際、移動弁5sと縮径部5qは全周に亘って接触する。ここで、移動弁5sが縮径部5qに接触する位置を「閉鎖位置」と称し、移動弁5sが上方へ移動して縮径部5qから離反した状態になる位置を「解放位置」と称する。
【0047】
ピストン5Bも、ピストン5Aと同様に、内部周壁2cの内側で上下方向に移動することができる。ここで、図3に示したようにピストン5Bが内部周壁2cに対して下方へ移動した位置(本実施形態では更に、下方へ移動した際にピストンシール部5fの下端部が抜け止め部2dの上面に接触する位置)を「後退位置」と称し、図4に示したようにピストン5Bが内部周壁2cに対して下方へ移動した位置(本実施形態では更に、上方へ移動した際にピストンシール部5fの上端部が天壁4aの下面に接触する位置)を「前進位置」と称する。
【0048】
このような構成になる注出キャップ1Bから内容物を注出するにあたっては、図3に示した閉蓋状態の蓋体6を、図4に示したように開蓋状態へ変位させる。これによりピストン5Bは、棒状部6cによって引き上げられて図4に示した前進位置へ移動する。そして外層体12の胴部を押圧すると、内部空間Nが加圧されて収容空間Sの圧力が高まるため、収容空間Sの内容物は、連通口5rに向かって流れ込み、移動弁5sを上方に向けて移動させ、ピストン周壁5pの内側、中間開口5e、連通空間K、及び注出筒4dの内側を通って注出開口4eから外界へ注出される。
【0049】
その後、外層体12への押圧を解除して胴部が復元し始めると、内部空間Nは減圧状態になり、外気導入口4hからキャップ本体4の内側を経て内部空間Nへ空気が導入されるため、内層体11を減容変形させたまま、外層体12を復元させることができる。また外層体12への押圧を解除して加圧されていた収容空間Sの圧力が下がると、解放位置へ移動していた移動弁5sが閉鎖位置に戻るため、注出開口4eと連通口5rとの間が非連通状態になって収容空間Sを密封することができる。また図4に示すようにピストン5Bが前進位置にあるときは、図2Bを用いて説明したように、注出筒4dの内側に溜まった内容物を、溝部2fを介して収容空間Sに僅かに引き戻すことができるため、延出部5aの上端部を溜まった内容物から露出させることができる。
【0050】
そして蓋体6を閉じると、棒状部6cが延出部5aに接触してピストン5Bを押し下げるため、図3に示すようにピストン5Bは後退位置へ移動し、これにより注出筒4dの内側の空間から内部周壁2c内へ内容物を引き戻すことができる。後退位置へ移動したピストン5Bは、ピストンシール部5fの下端部が抜け止め部2dの上面に接触するため、内部周壁2cから抜け出すことはない。またピストン5Bは後退位置で停止するため、係合部5bと上側凹部6fとを係合させることができる。またそしてピストン5Bが後退位置にあるときは、図1Bを用いて説明したように、溝部2fの内側に空気が流れ込むことがあっても収容空間Sへの侵入を防止することができる。
【0051】
次に本発明に係る蓋付き注出キャップの第三実施形態について、図5図6を参照しながら説明する。なお、上述した第一実施形態、第二実施形態と共通する部位については、図面に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
図5図6に示した蓋付き注出キャップは、注出キャップ1C(中栓2C、弁部材3、キャップ本体4、ピストン5Bで構成される)と蓋体6を備えていて、容器10に装着される。
【0053】
中栓2Cは、抜け止め部2dの内縁部から下方に向けて延在した後、軸線Oに向かって延在し、その後上方に向けて延在して抜け止め部2dの対向する内縁部に連結する連結アーム2kを備えている。連結アーム2kの中央部には、上方に向けて突出する突起部2mが設けられている。なお突起部2mは、本明細書等における「接触部」に相当する。
【0054】
このような構成になる注出キャップ1Cも上述した注出キャップ1Bと同様に、図6に示すように蓋体6を開蓋状態へ変位させると、ピストン5Bは、棒状部6cによって引き上げられて前進位置へ移動する。そして外層体12の胴部を押圧することによって、注出開口4eから内容物を注出させることができる。外層体12への押圧を解除すれば、内層体11を減容変形させたまま、外層体12を復元させることができる。また外層体12への押圧を解除することにより、縮径部5qから離反していた移動弁5sは、図6に示すように縮径部5qに接触するため、注出開口4eと連通口5rとの間が非連通状態になって収容空間Sを密封することができる。
【0055】
そして蓋体6を閉じると、棒状部6cが延出部5aに接触してピストン5Bを押し下げるため、図5に示すようにピストン5Bは後退位置へ移動し、これにより注出筒4dの内側の空間から内部周壁2c内へ内容物を引き戻すことができる。またピストン5Bが後退位置へ移動した際、突起部2mが移動弁5sに下方から接触するため、移動弁5sは縮径部5qから離反する。ここで、収容空間Sに収容された内容物が例えば乾性油のように空気と触れることによって固化するものである場合、このような内容物が隙間の狭い部分に付着したままの状態が続くと、そこで固化してしまうことがある。すなわち、乾性油のような内容物をする場合に移動弁5sが縮径部5qに接触したままの状態が続くと、移動弁5sに付着した内容物が縮径部5qとの間で固化してしまい、移動弁5sがピストン周壁5k内で移動できなくなるおそれがある。一方、本実施形態のように突起部2mを設ける場合、移動弁5sを縮径部5qから離反させることができるため、このような固化に関する問題を有効に防止することができる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0057】
例えば上述した実施形態において、係合部と被係合部は凸部又はこれに係合する凹部であったが、これらの形態に限られず、例えば両者は爪状になるものでもよい。また上述した蓋体6は、ヒンジ部6hによってキャップ本体4に一体的に連結していたが、キャップ本体4と蓋体6を別異の部材とし、一方に雄ねじ部を設けて他方に雌ねじ部を設け、これらを螺合させるように構成してもよいし、アンダーカットによって両者が係合するように構成してもよい。またピストン5A、5B、5Cに設けた延出部5aの上端部は、図2A図4図6に示すように注出開口4eよりも下方に位置しているが、この上端部は注出開口4eと揃う位置にあってもよいし、注出開口4eより上方に飛び出していてもよい。
【0058】
また本発明に係る蓋付き注出キャップは、内層体を持たない容器に装着することも可能である。なお、二重容器は内層体が基本的に復元せず、それ故、注出筒に内容物が溜まったままになりやすいことから、本発明に係る蓋付き注出キャップを装着する容器としては、二重容器が特に好適である。
【符号の説明】
【0059】
1A、1B、1C:注出キャップ
2A、2C:中栓
2a:隔壁
2b:環状凹部
2c:内部周壁
2d:抜け止め部
2e:下部開口
2f:溝部
2g:外縁壁
2h:空気用連通口
2j:シール壁
2k:連結アーム
2m:突起部(接触部)
3:弁部材
3a:基部
3b:空気弁
4:キャップ本体
4a:天壁
4b:外周壁
4c:貫通孔
4d:注出筒
4e:注出開口
4f:環状凹部
4g:段部
4h:外気導入口
4j:保持凸部
4k:雌ねじ部
5A、5B:ピストン
5a:延出部
5b:係合部
5c:段部
5d:連結壁
5e:中間開口
5f:ピストンシール部
5g:基部
5h:移動弁
5j:弾性部
5k:ピストン周壁
5m:縮径部
5n:連通口
5p:ピストン周壁
5q:縮径部
5r:連通口
5s:移動弁
6:蓋体
6a:頂壁
6b:蓋体外周壁
6c:棒状部
6d:根元部
6e:先端部
6f:上側凹部(被係合部)
6g:保持凹部
6h:ヒンジ部
10:容器
11:内層体
12:外層体
12a:口部
12b:雄ねじ部
12c:通気口
12d:切欠き
K:連通空間
N:内部空間
O:軸線
S:収容空間
T:空気通路
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6