(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093246
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240702BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209494
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】松澤 陽
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FA13
2C056HA01
2C056HA07
2C056JA01
2C056JA08
2C056JA13
(57)【要約】
【課題】液体噴射ヘッドに対してキャップから予期せぬ大きな荷重が作用して、液体噴射ヘッドのヘッドチップを破損させてしまう虞がある。
【解決手段】ノズル21を有する複数のヘッドチップ2と、ヘッドチップ2が固定される第1面と第2面S2とを有し、露出開口部61が形成された固定板60と、Z2方向に見た平面視においてヘッドチップ2を囲む収容壁部41を有し、固定板60と収容壁部41との間で画定される収容空間内で複数のヘッドチップ2を保持するホルダーと、を有する記録ヘッド1と、固定板60の第2面S2の第1領域R1に当接可能な第1囲繞壁と、を有する第1キャップとを備え、複数のヘッドチップ2はY方向に沿って並んで配置され、第1領域R1のうちヘッドチップ2に対してY方向に並び且つ隣り合う第1部分RL及び第1部分RRは前記平面視において収容壁部41と重なる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する複数のノズルで構成されるノズル群が形成されたノズルプレートをそれぞれが有する複数のヘッドチップと、
前記複数のヘッドチップが固定される第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記ノズル群をそれぞれ露出する複数の露出開口部が形成された固定板と、
前記固定板の前記第1面に固定されるとともに前記第1面に垂直な方向に見た平面視において前記複数のヘッドチップを囲む収容壁部を有し、前記固定板と前記収容壁部との間で画定される収容空間内で前記複数のヘッドチップを保持するホルダーと、を有する液体噴射ヘッドと、
第1底壁と、前記第1底壁から突出するとともに前記固定板の前記第2面の第1領域に当接可能な第1囲繞壁と、を有する第1キャップと、
を備え、
前記複数のヘッドチップは、第1方向に沿って並んで配置され、
前記第1領域のうち前記ヘッドチップに対して前記第1方向に並び且つ隣り合う部分は、前記平面視において、前記収容壁部と重なる、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記第1領域の全ては、前記平面視において、前記複数のヘッドチップと重ならない、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記平面視において、前記ヘッドチップの外形は、前記ノズルプレートよりも大きい、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記第1領域の全ては、前記平面視において、前記収容壁部と前記ヘッドチップとの間の隙間と重ならない、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記第1領域の全ては、前記平面視において、前記収容壁部と重なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記収容壁部は、前記液体噴射ヘッドの外形を構成する外周壁を有し、
前記第1領域の全ては、前記平面視において前記外周壁と重なる、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記収容壁部は、前記平面視において、前記複数のヘッドチップのうち隣り合うヘッドチップの間に設けられた隔壁を有し、
前記平面視において、前記第1領域の少なくとも一部は、前記隔壁と重なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
第2底壁と、前記第2底壁から突出するとともに前記固定板の前記第2面の第2領域に当接可能な第2囲繞壁と、を有する第2キャップを更に備え、
前記複数のヘッドチップは、互いに隣り合う第1ヘッドチップ及び第2ヘッドチップを含み、
前記収容壁部は、前記平面視において、前記第1ヘッドチップと前記第2ヘッドチップとの間に設けられた隔壁を有し、
前記平面視において、前記第1領域の一部及び前記第2領域の一部は、前記第1ヘッドチップと前記第2ヘッドチップとの間に設けられた同じ前記隔壁と重なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記複数のヘッドチップは、前記第1ヘッドチップに隣り合う第3ヘッドチップを含み、
前記第1ヘッドチップ及び前記第3ヘッドチップは、前記平面視において前記第1領域に囲まれており、
前記第1ヘッドチップと前記第3ヘッドチップとの間には、前記収容壁部が介在しない、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記第1領域の前記一部と前記第2領域の前記一部とは、前記平面視において重なる、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記ホルダーは、前記収容空間を画定するとともに前記収容壁部が突出するベース部を有し、
前記ベース部と前記複数のヘッドチップとは、シリコーン系の接着剤で固定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項12】
前記第1キャップは、前記液体噴射ヘッドに対して、前記第1面に垂直な方向に沿って相対移動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項13】
液体を噴射する複数のノズルで構成されるノズル群が形成されたノズルプレートをそれぞれが有する複数のヘッドチップと、
前記複数のヘッドチップが固定される第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記ノズル群をそれぞれ露出する複数の露出開口部が形成された固定板と、
前記固定板の前記第1面に固定されるとともに前記第1面に垂直な方向に見た平面視において前記複数のヘッドチップを囲む収容壁部を有し、前記固定板と前記収容壁部との間で画定される収容空間内で前記複数のヘッドチップを保持するホルダーと、を有する液体噴射ヘッドと、
第1底壁と、前記第1底壁から突出するとともに前記固定板の前記第2面の第1領域に当接可能な第1囲繞壁と、を有する第1キャップと、
を備え、
前記第1領域の全ては、前記平面視において、前記収容壁部と重なる、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項14】
前記ヘッドチップは、前記収容壁部のうち前記固定板の前記第1面に固定される面とは反対側の面に設けられた固定位置で固定され、
前記平面視において、前記固定位置は、前記第1領域に重なる、
ことを特徴とする請求項13に記載の液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を噴射する液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを噴射するインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を噴射する液体噴射装置の代表例であるインクジェット式記録装置(以下、単に記録装置ともいう)としては、液体噴射ヘッドの代表例であるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドともいう)と、キャップと、を備えたものがある(特許文献1参照)。記録ヘッドは、インクを噴射する複数のヘッドチップと、複数のヘッドチップを保持するホルダーと、ホルダー及び複数のヘッドチップが固定された固定板とを備えている。固定板にはヘッドチップのノズルが露出する開口が形成されており、キャップは固定板に当接して当該開口を封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した構成の記録装置は、キャッピングを行う際の記録ヘッドとキャップとの相対移動の方向に見て、キャップの側壁の先端に弾性部が設けられており、この弾性部がヘッドチップと重なる。そのため、キャップを記録ヘッドに当接させる際に、記録ヘッドに対してキャップから予期せぬ大きな荷重が作用してしまった場合などに、ヘッドチップを変形させて破損させてしまう虞がある。
【0005】
なお、上記のような問題は、あらゆる構成のインクジェット式記録装置で起こり得るものであり、またインクを噴射するインクジェット式記録装置だけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射装置においても同様に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、液体を噴射する複数のノズルで構成されるノズル群が形成されたノズルプレートをそれぞれが有する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップが固定される第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記ノズル群をそれぞれ露出する複数の露出開口部が形成された固定板と、前記固定板の前記第1面に固定されるとともに前記第1面に垂直な方向に見た平面視において前記複数のヘッドチップを囲む収容壁部を有し、前記固定板と前記収容壁部との間で画定される収容空間内で前記複数のヘッドチップを保持するホルダーと、を有する液体噴射ヘッドと、第1底壁と、前記第1底壁から突出するとともに前記固定板の前記第2面の第1領域に当接可能な第1囲繞壁と、を有する第1キャップと、を備え、 前記複数のヘッドチップは、第1方向に沿って並んで配置され、前記第1領域のうち前記ヘッドチップに対して前記第1方向に並び且つ隣り合う部分は、前記平面視において、前記収容壁部と重なる、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【0007】
また、本発明の他の態様は、液体を噴射する複数のノズルで構成されるノズル群が形成されたノズルプレートをそれぞれが有する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップが固定される第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記ノズル群をそれぞれ露出する複数の露出開口部が形成された固定板と、前記固定板の前記第1面に固定されるとともに前記第1面に垂直な方向に見た平面視において前記複数のヘッドチップを囲む収容壁部を有し、前記固定板と前記収容壁部との間で画定される収容空間内で前記複数のヘッドチップを保持するホルダーと、を有する液体噴射ヘッドと、第1底壁と、前記第1底壁から突出するとともに前記固定板の前記第2面の第1領域に当接可能な第1囲繞壁と、を有する第1キャップと、を備え、前記第1領域の全ては、前記平面視において、前記収容壁部と重なる、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】インクジェット式記録装置とその一部を拡大した概略図である。
【
図2】実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【
図3】実施形態1に係るZ2方向に見た記録ヘッドの平面図である。
【
図5】実施形態1に係るヘッドチップの分解斜視図である。
【
図6】実施形態1に係るヘッドチップの平面図である。
【
図8】実施形態1に係るZ2方向にみた記録ヘッドの平面図である。
【
図9】実施形態1に係る第1キャップが当接した記録ヘッドの断面図である。
【
図10】実施形態1の変形例に係るZ2方向にみた記録ヘッドの平面図である。
【
図11】実施形態1の変形例に係る第1キャップが当接した記録ヘッドの断面図である。
【
図12】比較例に係るZ2方向にみた記録ヘッドの平面図である。
【
図13】実施形態2に係るZ2方向にみた記録ヘッドの平面図である。
【
図14】実施形態2に係る第1キャップが当接した記録ヘッドの断面図である。
【
図15】実施形態3に係るZ2方向にみた記録ヘッドの平面図である。
【
図16】実施形態3に係る第1キャップが当接した記録ヘッドの断面図である。
【
図17】実施形態3の変形例に係るZ2方向にみた記録ヘッドの平面図である。
【
図18】実施形態3の変形例に係る第1キャップが当接した記録ヘッドの断面図である。
【
図19】実施形態4に係るZ1方向にみた記録ヘッドの平面図である。
【
図20】実施形態4に係る記録ヘッドの斜視図である。
【
図21】実施形態4に係る固定板及び第1キャップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
各図において同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。正方向及び負方向を限定せず、それら3つの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向をX1方向、Y1方向、Z1方向、矢印の反対方向をX2方向、Y2方向、Z2方向とする。Z1方向は鉛直方向の下向きであり、Z2方向は鉛直方向の上向きである。なお、Z方向は鉛直方向である必要はない。さらに、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交するがこれに限定されず、例えば、80度以上100度以下の範囲内の角度で交差していてもよい。
【0011】
〈実施形態1〉
図1は、インクジェット式記録装置とその一部を拡大した概略図である。本発明に係るインクジェット式記録装置I(以下、単に「記録装置I」ともいう)は、液体の一種であるインクをインク滴として印刷用紙等の媒体Sに噴射・着弾させて、媒体Sに形成されるドットの配列により画像等の印刷を行う印刷装置である。なお、媒体Sとしては、記録用紙の他、樹脂フィルムや布等の任意の材質を用いることができる。
【0012】
記録装置Iは、液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に「記録ヘッド1」ともいう)と、液体貯留部3と、媒体Sを送り出す搬送機構4と、制御ユニット5と、移動機構6とを備えている。
【0013】
液体貯留部3は、記録ヘッド1から噴射されるインクが貯留されている。液体貯留部3としては、例えば、記録装置Iに着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。本実施形態では、液体貯留部3として、記録ヘッド1に着脱可能に設けられたカートリッジを用いた。また、液体貯留部3には、色や種類の異なる複数種類のインクが個別に貯留されている。
【0014】
制御ユニット5は、特に図示していないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と半導体メモリー等の記憶装置とを含んで構成される。制御ユニット5は、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することで記録装置Iの各要素、すなわち、搬送機構4、移動機構6、記録ヘッド1等を統括的に制御する。
【0015】
搬送機構4は、制御ユニット5によって制御されて媒体SをX1方向に搬送する。具体的には、搬送機構4は、装置本体9に設けられたプラテン400、給紙手段410及び搬送手段420を備えている。
【0016】
プラテン400は、Y方向に延在され、媒体Sのインクが噴射される面とは反対側の面、すなわちZ1方向側の面を支持する部材である。プラテン400は、少なくとも記録ヘッド1のY方向の移動範囲では、記録ヘッド1よりもZ1方向側に配置され、記録ヘッド1側に対向して媒体Sを支持する面を有している。プラテン400は、後述の給紙手段410よりもX1方向側に配置され、後述の搬送手段420よりもX2方向側に配置されている。
【0017】
なお、プラテン400には、プラテン400の記録ヘッド1に対向する面に媒体Sを吸着させる吸着手段が設けられていてもよい。吸着手段としては、例えば、媒体Sを吸引することで吸引吸着するものや、静電気力で媒体Sを静電吸着するもの等が挙げられる。
【0018】
給紙手段410は、媒体SをX1方向に搬送し、装置本体9に配置された記録ヘッド1へ給紙する。具体的には、給紙手段410は、給紙ローラー411、給紙従動ローラー412、及び図示しない駆動モーターなどの駆動手段を備え、記録ヘッド1よりもX2方向側に配置されている。給紙ローラー411は、Y方向に延在された部材であり、Y軸周りに回転可能に装置本体9に取り付けられ、駆動手段により回転される。給紙従動ローラー412は、Y方向に延在された部材であり、Y軸周りに回転可能に装置本体9に取り付けられ、給紙ローラー411に従動する。制御ユニット5が駆動手段を駆動させることで給紙ローラー411が回転する。媒体Sは、回転する給紙ローラー411と給紙従動ローラー412の間を通ってX1方向側へ搬送される。
【0019】
搬送手段420は、媒体SをX1方向に搬送し、装置本体9の外部に排出する。具体的には、搬送手段420は、搬送ローラー421、搬送従動ローラー422、及び図示しない駆動モーターなどの駆動手段を備え、記録ヘッド1よりもX1方向側に配置されている。搬送ローラー421は、Y方向に延在された部材であり、Y軸周りに回転可能に装置本体9に取り付けられ、駆動手段により回転される。搬送従動ローラー422は、Y方向に延在された部材であり、Y軸周りに回転可能に装置本体9に取り付けられ、搬送ローラー421に従動する。制御ユニット5が駆動手段を駆動させることで搬送ローラー421が回転する。媒体Sは、回転する搬送ローラー421と搬送従動ローラー422の間を通ってX1方向側へ搬送される。
【0020】
媒体Sは給紙手段410によってX1方向に搬送されて記録ヘッド1に給紙される。媒体Sはプラテン400にZ1方向側から支持され、記録ヘッド1から噴射されたインク滴が着弾される。インク滴が着弾された媒体Sは、搬送手段420によって装置本体9の外部に排出される。
【0021】
なお、媒体Sを搬送する搬送機構4は、給紙ローラー411や搬送ローラー421などのローラーを用いた構造に限らず、ベルトやドラムによって媒体Sを搬送するものであってもよい。
【0022】
移動機構6は、制御ユニット5によって制御されて記録ヘッド1をY方向に往復させる。移動機構6によって記録ヘッド1が往復するY方向は、媒体Sが搬送されるX1方向に交差する方向である。
【0023】
具体的には、本実施形態の移動機構6は、記録ヘッド1を保持する保持部材7と搬送ベルト8とガイドレール8bを具備する。保持部材7は、記録ヘッド1を収容する略箱形の構造体、所謂、キャリッジであり、搬送ベルト8に固定される。搬送ベルト8は、Y方向に沿って架設された無端ベルトである。制御ユニット5による制御のもとで駆動モーター8aの駆動力が搬送ベルト8に伝わり、搬送ベルト8が回転することで記録ヘッド1が保持部材7と共にY方向に沿って延在するガイドレール8bに沿って往復移動する。そして記録装置Iは、媒体Sの搬送及び記録ヘッド1の反復的な往復に並行して記録ヘッド1が媒体Sにインクを噴射することで、媒体Sの表面に所望の画像が形成される。なお、液体貯留部3は、記録ヘッド1とともに保持部材7に搭載されているが、このような構成に限定されない。液体貯留部3を記録ヘッド1とは別に装置本体9内に載置することも可能である。
【0024】
また、記録装置Iには、Y2方向側に第1キャップ90Aが設けられている。詳細な構成については後述するが、第1キャップ90Aは記録ヘッド1の固定板60(
図9参照)に当接してノズル21(
図9参照)を封止する部材である。第1キャップ90Aは、Z方向に移動可能となるよう記録装置Iに設けられている。第1キャップ90AがZ方向に移動可能であるとは、記録ヘッド1に対してZ方向に相対的に移動可能であることをいう。本実施形態では、記録ヘッド1はZ方向には移動せず、第1キャップ90AがZ方向に移動可能となっている。もちろん、第1キャップ90AがZ方向に移動せず、記録ヘッド1がZ方向に移動可能としてもよい。また、第1キャップ90AはZ方向にのみ移動可能としてもよいし、X方向又はY方向に移動可能としてもよい。
【0025】
なお上述した記録装置Iは、記録ヘッド1がY方向に往復移動するものを例示したが、これに限定されない。例えば、記録ヘッド1が媒体Sの幅よりも長尺であり、印刷を行うために媒体Sに液体を噴射している間に記録ヘッド1が移動しないで、媒体SをX方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0026】
図2から
図4を参照して記録ヘッド1について説明する。
図2は、記録ヘッドの分解斜視図であり、
図3はZ2方向に見た記録ヘッドの平面図であり、
図4は
図3のA-A線断面図である。
【0027】
記録ヘッド1は、ノズル21からインクをインク滴として噴射する4つのヘッドチップ2と、4つのヘッドチップ2を保持するホルダー40と、ヘッドチップ2に液体を供給する流路部材200と、を具備する。また、記録ヘッド1は、ホルダー40と流路部材200とを接続するシール部材300と、ホルダー40と流路部材200との間に配置された中継基板500と、ヘッドチップ2のZ1方向に設けられた固定板60と、を具備する。
【0028】
流路部材200は、本実施形態では、第1流路部材201と、第2流路部材202と、第3流路部材203と、を具備する。第1流路部材201、第2流路部材202および第3流路部材203は、液体を噴射するZ1方向にこの順番で積層されている。なお、流路部材200は、特にこれに限定されるものではなく、単一の部材であってもよく、2つ以上の複数の部材で構成されていてもよい。また、流路部材200を構成する複数の部材の積層方向も特に限定されず、例えば、X軸方向、Y軸方向であってもよい。
【0029】
流路部材200は、液体貯留部3とヘッドチップ2との間で液体を流通させる流路210を有する。この流路210は、第1流路部材201に設けられた第1流路211と、第2流路部材202に設けられた第2流路212と、第3流路部材203に設けられた第3流路213と、を有する。
【0030】
第1流路部材201は、Z2方向を向く面に液体貯留部3に接続される接続部204を有する。本実施形態では、接続部204は、Z2方向に向かって針状に突出したものである。なお、接続部204には、インクカートリッジなどの液体貯留部3が直接、接続されてもよく、また、インクパック、インクタンクなどの液体貯留部3がチューブ等の供給管などを介して接続されてもよい。第1流路部材201は、一端が接続部204のZ2方向の端部に開口し、他端が第1流路部材201のZ1方向を向く面に開口する第1流路211を有する。この第1流路211に液体貯留部3からのインクが供給される。なお、第1流路211は、後述する第2流路212の位置に応じて、Z方向に延びる流路や、Z方向に直交する方向、すなわち、X方向およびY方向で規定されるXY平面に沿って延設された流路等で構成されている。以降、Z方向に延びる流路を垂直流路と称し、XY平面に沿って延設された流路を水平流路と称する。また、水平流路は、延設方向に、水平面に向かう成分(別称、ベクトル)が存在することを言う。つまり、水平流路は、XY平面に沿った流路だけでなく、Z軸方向およびXY平面に沿った方向の双方に対して傾斜した流路も含まれる。また、流路の延設方向とはインクが流れる方向を言う。
【0031】
第2流路部材202は、第1流路部材201のZ1方向を向く面に固定される。第2流路部材202は、第1流路211に連通する第2流路212を有する。第2流路212は、一端が第2流路部材202のZ2方向を向く面に開口し、他端が、第2流路部材202のZ1方向を向く面に開口して設けられている。また、第2流路212の他端側には、第1流路211よりも内径が広く拡幅された第1液体溜まり部212aが設けられている。
【0032】
第3流路部材203は、第2流路部材202のZ1方向を向く面に固定される。また、第3流路部材203は、第2流路212に連通する第3流路213を有する。第3流路213は、一端が第3流路部材203のZ2方向を向く面に開口し、他端が、第3流路部材203のZ1方向を向く面に開口して設けられている。また、第3流路213の一端側は、第1液体溜まり部212aに応じて拡幅された第2液体溜まり部213aとなっている。そして、第1流路部材201と第2流路部材202との間、すなわち、第1液体溜まり部212aと第2液体溜まり部213aとの間には、インクに含まれるゴミや気泡などの異物を除去するためのフィルター206が設けられている。このため、第2流路212から供給されたインクは、フィルター206を介してゴミや気泡などの異物が除去された状態で第3流路213に供給される。
【0033】
また、第3流路213は、第2液体溜まり部213aよりもヘッドチップ2側、すなわち、第2流路212とは反対側で、2つに分岐されており、第3流路213は第3流路部材203のホルダー40側の面に2つの排出口214として開口する。
【0034】
すなわち、1つの接続部204に対応する流路210は、第1流路211、第2流路212及び第3流路213を有し、流路210は、ホルダー40側で2つの排出口214として開口する。
【0035】
また、第3流路部材203のホルダー40側、すなわち、Z1方向を向く面には、ホルダー40に向かって突出する第1突起部207が設けられている。第1突起部207は、分岐された第3流路213毎に設けられており、第1突起部207のZ1方向を向くそれぞれの先端面に排出口214が開口する。
【0036】
このような流路210が設けられた第1流路部材201、第2流路部材202及び第3流路部材203は、例えば、接着剤や、溶着等によって一体的に接合されている。なお、第1流路部材201、第2流路部材202及び第3流路部材203をネジやクランプ等で固定することもできるが、接着剤や溶着等によって接合することで第1流路211から第3流路213に至るまでの接続部分からインクが漏出するのを抑制することができる。
【0037】
このように本実施形態では、1つの流路部材200は4つの接続部204を有し、1つの流路部材200は4つの独立した流路210を有する。そして、各流路210がホルダー40側で2つに分岐されて、合計8個の排出口214が設けられている。ちなみに、本実施形態では、流路210をフィルター206よりもヘッドチップ2側で2つに分岐した構成を例示したが、特にこれに限定されず、フィルター206よりもヘッドチップ2側で流路210が3つ以上に分岐されていてもよい。もちろん、1つの流路210がフィルター206よりも接続部204側で2つ以上に分岐されていてもよい。また、1つの流路210は分岐されていなくてもよい。
【0038】
ホルダー40は、詳細な構成は後述するが、複数のヘッドチップ2が収容される収容空間45を有する。このような収容空間45に複数のヘッドチップ2が第1接着剤151によって接着されている。本実施形態では、ホルダー40の収容空間45には4個のヘッドチップ2が第1接着剤151によって固定されている。
【0039】
ホルダー40に保持された4個のヘッドチップ2は、X方向に関して同じ位置で、Y方向に並んで配置されている。つまり、収容空間45は、4個のヘッドチップ2に共通して設けられている。もちろん、収容空間45は、ヘッドチップ2毎に独立して設けられていてもよい。なお、4個のヘッドチップ2の配置は、特にこれに限定されず、例えば、X方向およびY方向の両方向において異なる位置に配置されていてもよい。また、複数のヘッドチップ2は、X方向に沿って千鳥状に配置されていてもよい。ここで複数のヘッドチップ2が千鳥状に配置されているとは、X方向に並設されたヘッドチップ2を交互にY方向にずらして配置することである。つまり、X軸方向に並設されたヘッドチップ2の列が、Y軸方向に2列並設され、2列のヘッドチップ2の一方の列をX軸方向に半ピッチずらして配置することである。このように複数のヘッドチップ2をX軸方向に沿って千鳥状に配置することで、2つヘッドチップ2のノズルをX軸方向で部分的に重複させて、X軸方向に亘って連続したノズルの列を形成することができる。また、ホルダー40に固定するヘッドチップ2の数は、特にこれに限定されず、1つのホルダー40に対してヘッドチップ2が1個であっても、また、2個以上の複数であってもよい。
【0040】
なお、各ヘッドチップ2とホルダー40とは、Z方向で対向する面同士が第1接着剤151によって接着されている。つまり、ヘッドチップ2のZ2方向を向く面と、ホルダー40の収容空間45のZ1方向を向く底面と、が第1接着剤151によって接着されている。
【0041】
また、ホルダー40は、流路部材200の流路210に接続される接続流路47を有する。ホルダー40のZ2方向を向く面には、Z2方向に向かって突出する第2突起部43aが設けられている。第2突起部43aは、第1突起部207に対応して、流路210毎、すなわち、第1突起部207毎にそれぞれ設けられている。また、接続流路47の一端は第2突起部43aの先端面に開口し、他端は収容空間45のZ1方向を向く底面に開口している。このような接続流路47は、各流路210の排出口214に独立して設けられている。すなわち、1つの流路210は、2つの排出口214を有するため、2つの排出口214のそれぞれに連通する接続流路47が設けられている。
【0042】
そして、1つのヘッドチップ2に対応する2つの接続流路47のうち、一方の接続流路47は、本実施形態では、Z方向に沿って直線状に形成されている。また、他方の接続流路47は、途中にXY平面に沿って延設された水平流路を有する。本実施形態では、ホルダー40は、後述するベース部42のZ2方向を向く面に固定された流路形成部43を備えている。また、他方の接続流路47の水平流路は、ベース部42と流路形成部43との積層界面に形成されている。もちろん、ホルダー40は、単一の部材で構成されていてもよいし、3個以上の複数の部材で構成されていてもよい。また、他方の接続流路47は、途中に水平流路を有するものとしたが、特にこれに限定されず、接続流路47は、垂直流路のみで構成されていてもよく、2以上の水平流路を有するものであってもよい。また、一方の接続流路47は、水平流路を有するものであってもよい。
【0043】
また、1つのヘッドチップ2に対応する2つの接続流路47の間には、配線基板120を挿通するために配線部材挿通孔46が設けられている。配線部材挿通孔46は、ヘッドチップ2の第2配線挿通孔103に連通して、配線基板120をホルダー40上の中継基板500側に挿通するためのものである。
【0044】
このようなホルダー40は、樹脂材料を成型により安価に形成することができる。もちろん、ホルダー40は、金属材料等で形成されていてもよい。
【0045】
シール部材300は、流路部材200とホルダー40との間に配置される。シール部材300は、流路部材200の流路210とホルダー40の接続流路47とを接続する継手として機能する。
【0046】
シール部材300は、記録ヘッド1に用いられるインクに対して耐液体性を有し、且つ弾性変形可能な材料を用いることができる。シール部材300は、接続流路47毎に管状部分301を有する。管状部分301は、内部に連通流路310が設けられている。そして、管状部分301の連通流路310を介して流路部材200の流路210とホルダー40の接続流路47とが連通される。流路部材200の第1突起部207の先端面と、ホルダー40の第2突起部43aの先端面と、の間で、管状部分301はZ方向に所定の圧力が付与された状態で保持されている。このように流路210と連通流路310とはシール部材300にZ方向に圧力が付与された状態で接続され、連通流路310と接続流路47とはシール部材300にZ方向に圧力が付与された状態で接続される。したがって、流路210と接続流路47とは連通流路310を介して液密な状態で連通される。
【0047】
なお、本実施形態の管状部分301は、1つの流路部材200に対して複数個が一体的になるように、流路部材200側で板状部分によって連結されている。また、本実施形態では、1つの流路部材200に流路210の排出口214が8個設けられているため、8個の管状部分301が一体的に設けられたシール部材300となっている。
【0048】
また、中継基板500は、シール部材300とホルダー40との間に配置される。中継基板500には、配線基板120が接続される。中継基板500は、配線基板120が挿通される第1挿通孔501と、シール部材300の管状部分301が挿入される第2挿通孔502と、を有する。第1挿通孔501は、各ヘッドチップ2に対して1個、第2挿通孔502は、各ヘッドチップ2に対して2個、設けられている。第1挿通孔501および第2挿通孔502は、中継基板500をZ軸方向に貫通して設けられる。
【0049】
本実施形態では、中継基板500は、リジッド基板からなり、4個のヘッドチップ2に共通して1個設けられている。もちろん、中継基板500は、ヘッドチップ2毎または複数のヘッドチップ2で構成される群毎に分割して設けてもよく、分割した中継基板500同士をフレキシブル基板で接続した、所謂、リジットフレキシブル基板であってもよい。
【0050】
中継基板500は、コネクター510を有する。コネクター510は、本実施形態では、中継基板500のY方向の両端部およびZ1方向の片面に設けられている。コネクター510には、記録ヘッド1の外部に配置された不図示の外部配線が接続される。この外部配線によって、制御ユニット5と中継基板500とが電気的に接続される。
【0051】
固定板60は、複数のヘッドチップ2が固定される第1面S1と、第1面S1とは反対側の第2面S2とを有し、複数のノズル群NGをそれぞれ露出する複数の露出開口部61が形成された部材である。ノズル群NGは、1つのノズルプレート20に形成された複数のノズル21で構成されており、記録ヘッド1は、ノズルプレート20の数に応じて複数のノズル群NGを有する。本実施形態では、固定板60は、複数の露出開口部61が形成された平板部62を有し、平板部62のZ2方向側の面が第1面S1となっており、Z1方向側の面が第2面S2となっている。平板部62はホルダー40の収容壁部41によって画定された開口を覆う略矩形状に形成されており、平板部62の各辺からZ2方向に折曲部63が延在している。折曲部63はホルダー40の収容壁部41を囲んでいる。なお、固定板60は、折曲部63を備えていなくてもよく、平板部62のみで構成されていてもよい。また露出開口部61は、ノズルプレート20が露出する大きさに形成されており、ヘッドチップ2ごとに独立して設けられている。なお、本実施形態では固定板60は一枚の板状部材から構成されているが、これに限定されない。固定板60は、複数の板状部材がZ軸方向に積層されることで構成されていてもよい。また固定板60は、材料は特に限定されず、例えば属材料や樹脂材料から形成することができる。
【0052】
本実施形態のヘッドチップ2の一例について説明する。
図5はヘッドチップ2の分解斜視図であり、
図6はヘッドチップの平面図であり、
図7は
図6のB-B線断面図である。
図7ではヘッドチップ2の他にホルダー40及び固定板60の一部を図示している。
【0053】
図示するように、本実施形態に係るヘッドチップ2は、圧力室基板10、連通板15、ノズルプレート20、保護基板30、ケース部材100、コンプライアンス基板110、を具備する。これらヘッドチップ2を構成する複数の構成部材は、積層されて接着剤等によって接合されて一体化されている。
【0054】
圧力室基板10は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板等からなる。圧力室基板10には、Z1方向側に開口した凹部である圧力室12がX方向に沿って並んで配置されている。複数の圧力室12は、Y方向の位置が同じ位置となるように、X方向に沿った直線上に配置されている。X方向で互いに隣り合う圧力室12は、不図示の隔壁によって区画されている。本実施形態では、圧力室12は、X方向に沿って一列となるように並んで配置されている。このような一列に並んだ複数の圧力室12からなる圧力室の列はY方向に2列設けられている。各列の複数の圧力室12は、Y方向の位置が同じ位置となるように配置されている。なお、圧力室12の配置は特に限定されない。例えば、X方向に並ぶ複数の圧力室12の配置は、各圧力室12を1つ置きにY方向にずれた位置とする、いわゆる千鳥配置となっていてもよい。
【0055】
圧力室12は、Z1方向に見た平面視においてY方向の長さがX方向の長さよりも長い長方形に形成されている。もちろん、圧力室12の形状は特に限定されず、平行四辺形状、多角形状、円形状、オーバル形状等であってもよい。なお、ここでいうオーバル形状とは、長方形状を基本として長手方向の両端部を半円状とした形状をいい、角丸長方形状、楕円形状、卵形状などが含まれるものとする。
【0056】
圧力室基板10のZ1方向側には、連通板15とノズルプレート20及びコンプライアンス基板110とが順次積層されている。
【0057】
連通板15には、圧力室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。連通板15には、複数の圧力室12が連通する共通液室となるマニホールド130の一部を構成する第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15をZ方向に貫通して設けられている。第2マニホールド部18は、連通板15をZ方向に貫通することなく、Z1方向側の面に開口して設けられている。
【0058】
連通板15には、圧力室12のY方向の一方の端部に連通する供給連通路19が圧力室12の各々に独立して設けられている。供給連通路19は、第2マニホールド部18と各圧力室12とを連通して、マニホールド130内のインクを各圧力室12に供給する。
【0059】
連通板15としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板等を用いることができる。
【0060】
ノズルプレート20は、連通板15の圧力室基板10とは反対側であるZ1方向側の面に設けられている。ノズルプレート20には、各圧力室12にノズル連通路16を介して連通するノズル21が形成されている。ノズルプレート20の形状は特に限定はないが、本実施形態では、
図8に示すように、Z2方向にみた平面視において、ヘッドチップ2の外形はノズルプレート20よりも大きい。
【0061】
複数のノズル21は、各圧力室12に対応して設けられ、X方向に沿って一列となるように並んで配置されている。このような一列に並んだ複数のノズル21からなるノズル列はY方向に2列設けられている。各列の複数のノズル21は、Y方向の位置が同じ位置となるように配置されている。なおノズル21の配置は特に限定されない。例えば、X方向に並んで配置されるノズル21は、1つ置きにY方向にずれた位置に配置されていてもよい。
【0062】
ノズルプレート20の材料としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板を用いることができる。金属板としては、例えば、ステンレス基板等が挙げられる。さらにノズルプレート20の材料としては、ポリイミド樹脂のような有機物などを用いることもできる。
【0063】
コンプライアンス基板110は、ノズルプレート20と共に、連通板15の圧力室基板10とは反対側であるZ1方向側の面に設けられている。コンプライアンス基板110は、ノズルプレート20の周囲に設けられ、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18の開口を封止する。コンプライアンス基板110は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜111と、金属等の硬質の材料からなる固定基板112と、を具備する。固定基板112のマニホールド130に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された除去部118となっている。このため、マニホールド130の一方面は、可撓性を有する封止膜111のみで封止されたコンプライアンス部119となっている。
【0064】
圧力室基板10のZ2方向側の面には振動板84及び圧電素子80が設けられている。すなわちZ1方向からZ2方向に向かって圧力室基板10、振動板84及び圧電素子80は、この順で積層されている。
【0065】
振動板84は、圧力室基板10のZ2方向側の面に設けられた弾性膜と、弾性膜のZ2方向側の面に設けられた絶縁体膜とから構成されている。弾性膜は、例えば、酸化シリコン(SiO2)で形成される膜である。このような弾性膜は、例えば、圧力室基板のZ2方向側の面を熱酸化することによって形成することができる。絶縁体膜は、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)で形成される膜である。このような絶縁体膜は、例えば、スパッタリング法等によりジルコニウム単体の層を形成した後に、当該層を熱酸化することによって形成することができる。なお、振動板は弾性膜及び絶縁体膜で構成されたものに限定されない。例えば、振動板として弾性膜及び絶縁体膜の何れか一方を設けたものであってもよい。また、弾性膜及び絶縁体膜を設けずに、後述する圧電素子80の第1電極を振動板としてもよい。
【0066】
圧電素子80は、圧力室12ごとに形成されている。本実施形態ではX方向に複数並んだ圧力室12の列がY方向に2列あるので、圧電素子80も同様にX方向に複数並んで列をなし、その圧電素子80の列がY方向に2列設けられている。圧電素子80は、圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段であり圧電アクチュエーターとも称される。圧電素子80は、振動板84側であるZ1方向側からZ2方向側に向かって順次積層された第1電極81と、圧電体層83と、第2電極82とを具備する。圧電素子80は、第1電極81と第2電極82との間に電圧を印加した際に、圧電体層83に圧電歪みが生じる部分である。
【0067】
一般的には、第1電極81又は第2電極82の一方を圧電素子80毎に独立する個別電極とし、他方を複数の圧電素子80に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、第1電極81が個別電極を構成し、第2電極82が共通電極を構成している。
【0068】
具体的には、第1電極81は、圧力室12毎に切り分けられて圧電素子80毎に独立する個別電極を構成する。第1電極81は、X方向において圧力室12の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、X方向において、第1電極81は、圧力室12の内側に位置している。
【0069】
Y方向において、第1電極81の内側の端部は、圧力室12に対向する領域から圧力室12の外側まで延在しており、第1電極81の外側の端部は、圧力室12に対向する領域に配置されている。第1電極81の内側の端部とは、Y方向において2列の圧電素子80の間の領域に近い側の端部をいう。第1電極81の外側の端部とは、Y方向において2列の圧電素子80の間の領域から遠い側の端部をいう。具体的には、Y方向において2列ある圧電素子80のうちY1側にある圧電素子80については、第1電極81の内側の端部はY2側の端部であり、第1電極81の外側の端部はY1側の端部である。Y方向において2列ある圧電素子80のうちY2側にある圧電素子80については、第1電極81の内側の端部はY1側の端部であり、第1電極81の外側の端部はY2側の端部である。第2電極82及び圧電体層83についても内側及び外側の端部は第1電極81と同様である。
【0070】
圧電体層83は、Z方向の厚さを所定の厚さとし、Y方向の長さを所定の長さとし、X方向に沿って連続して設けられている。すなわち圧電体層83は、圧力室12の並設方向に沿って連続して設けられている。圧電体層83のY方向の長さは、圧力室12の長手方向であるY方向の長さよりも長く、圧電体層83は、Y方向において圧力室12の両外側まで延在している。
【0071】
本実施形態では、圧電体層83の外側の端部は、第1電極81の端部よりも外側に位置している。すなわち、第1電極81の外側の端部は圧電体層83によって覆われている。また、圧電体層83の内側の端部は、第1電極81の端部よりも圧力室12側に位置しており、第1電極81の内側の端部は、圧電体層83で覆われることなく露出されている。
【0072】
圧電体層83は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電材料を用いて構成されている。圧電材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT;Pb(Zr,Ti)O3)を用いることができる。もちろん、圧電材料はチタン酸ジルコン酸鉛に限定されず、公知のものを適用することができる。
【0073】
第2電極82は、圧電体層83の第1電極81とは反対側であるZ2方向側に連続して設けられており、複数の圧電素子80に共通する共通電極を構成する。第2電極82は、Y方向の長さを所定の長さとし、X方向に沿って連続して設けられている。
【0074】
第1電極81から個別リード電極85が引き出され、第2電極82から共通リード電極86が引き出されている。これら個別リード電極85および共通リード電極86には、圧電素子80とは反対側の端部において、可撓性を有する配線基板120が接続されている。本実施形態では、個別リード電極85及び共通リード電極86は、保護基板30に形成された第1配線挿通孔32内に露出するように延設され、この第1配線挿通孔32内で配線基板120と電気的に接続されている。配線基板120には、圧電素子80を駆動するためのスイッチング素子を有する駆動回路121が実装されている。
【0075】
上述した圧電素子80は、第1電極81を圧電素子80毎の個別電極とし、第2電極を各圧電素子80に共通した共通電極としているが、このような構成に限定されない。すなわち、第1電極81を各圧電素子80に共通した共通電極とし、第2電極を圧電素子80毎の個別電極としてもよい。また、圧力発生手段は、圧電素子80に限定されない。例えば、圧力発生手段としては、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル21からインク滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル21から液滴を吐出させるものなどを用いることができる。
【0076】
圧力室基板10のZ2方向側の面には、圧力室基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電素子80を保護する空間である保持部31を有する。保持部31は、X方向に並んで配置された圧電素子80の列毎に独立して設けられたものであり、Y方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、Y方向に並んで配置された2つの保持部31の間にZ方向に貫通する第1配線挿通孔32が設けられている。
【0077】
連通板15のZ2方向側の面には、ケース部材100が固定されている。ケース部材100は、Z方向に見た平面視において連通板15の外形と略同一形状を有する。また、ケース部材100は、圧力室基板10及び保護基板30を収容可能な深さの空間である収容部101を有する。収容部101は、保護基板30の圧力室基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、収容部101に圧力室基板10及び保護基板30が収容された状態で収容部101の圧力室基板10側の開口面が振動板84によって封止されている。ケース部材100には、保護基板30の第1配線挿通孔32に連通して配線基板120が挿通される第2配線挿通孔103が設けられている。ケース部材100には、Y方向における収容部101の両外側に、第3マニホールド部102がそれぞれ画成されている。第3マニホールド部102は、Z1方向に向かう面に開口して設けられている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17および第2マニホールド部18と、ケース部材100に設けられた第3マニホールド部102と、によってマニホールド130が構成されている。マニホールド130は、圧力室12の列毎に1個ずつ、合計2個設けられている。各マニホールド130は、圧力室12が並んで配置されるX方向に亘って連続して設けられており、各圧力室12とマニホールド130とを連通する供給連通路19は、X方向に並んで配置されている。また、ケース部材100には、マニホールド130にインクを供給するための導入口104が設けられている。
【0078】
このような本実施形態のヘッドチップ2では、図示しない外部インク供給手段と接続した導入口104からマニホールド130にインクが供給され、マニホールド130からノズル21に至るまで内部をインクで満たされた後、駆動回路121からの記録信号に従い、圧力室12に対応するそれぞれの圧電素子80に電圧を印加する。これにより圧電素子80と共に振動板84がたわみ変形して各圧力室12内の圧力が高まり、各ノズル21からインク滴が噴射される。
【0079】
図4、
図7及び
図8を用いて、上記構成のヘッドチップ2を備えた記録ヘッド1のホルダー40、固定板60について詳細に説明する。
図8はZ2方向にみた記録ヘッド1の平面図である。
図8においてはホルダー40のうちベース部42の図示は省略し、固定板60よりもZ2方向側にある収容壁部41をハッチングで示している。
【0080】
本実施形態のホルダー40は、収容壁部41と、ベース部42とを有している。収容壁部41は、固定板60の第1面S1に固定されるとともに第1面S1に垂直な方向であるZ2方向に見た平面視において複数のヘッドチップ2を囲み、ベース部42からZ1方向に突出する。ホルダー40は、固定板60の第1面S1と収容壁部41とベース部42のZ1方向を向く面との間で画定される収容空間45内で複数のヘッドチップ2を保持する。ベース部42は、上述した接続流路47及び配線部材挿通孔46が形成されたホルダー40の一部分である。ベース部42はZ2方向にみた平面視において略矩形状に形成されており、各辺からZ1方向に向けて収容壁部41が延在している。
【0081】
収容壁部41とは、固定板60の第1面S1に垂直な方向であるZ2方向にみた平面視において複数のヘッドチップ2を囲むホルダー40の一部をいう。本実施形態では、収容壁部41は、Z2方向にみた平面視において略四角の枠状に形成されており、複数のヘッドチップ2を囲んでいる。収容壁部41のうち記録ヘッド1の外形を構成する部分を外周壁と称する。本実施形態では、収容壁部41は記録ヘッド1の外形を構成する外周壁を有しており、厳密には収容壁部41は外周壁のみから構成されている。収容壁部41が複数のヘッドチップ2を囲むとは、外周壁の内側に複数のヘッドチップ2が配置されていることをいう。
【0082】
4つのヘッドチップ2は「第1方向」であるY方向に並んでおり、収容壁部41に囲まれて配置されている。各ヘッドチップ2のZ2方向を向く面は、ベース部42のZ1方向を向く面に第1接着剤151によって接着される。第1接着剤151は、接続流路47を塞がないようにヘッドチップ2とベース部42との間に設けられており、接続流路47と導入口104とを接続する流路の一部を画定している。
【0083】
また、ヘッドチップ2のノズルプレート20が露出開口部61に露出するようにして固定板60が収容壁部41及びヘッドチップ2に第2接着剤152によって接着される。具体的には、固定板60の第1面S1とヘッドチップ2のコンプライアンス基板110とは第2接着剤152で接着され、固定板60の第1面S1と収容壁部41のZ1方向を向く面とは第2接着剤152で接着される。このように第2接着剤152によって収容壁部41と固定板60とを接着することにより、固定板60の第1面S1に収容壁部41が固定されている。なお、ヘッドチップ2のうちコンプライアンス基板110が固定板60に固定される部位となっているが、このような態様に限定されずヘッドチップ2の任意の部位に固定板60を固定することができる。例えばヘッドチップ2のうちノズルプレート20が固定板60に固定されてもよい。
【0084】
第1接着剤151と第2接着剤152とは同種のものであってもよいし、別種のものであってもよい。さらには固定板60の第1面S1とヘッドチップ2のコンプライアンス基板110とを接着する第2接着剤152、及び固定板60の第1面S1と収容壁部41のZ1方向側の面とを接着する第2接着剤152は同種としてあるが、異なる種類であってもよい。ベース部42とヘッドチップ2とを接着する第1接着剤151としては、シリコーン系の接着剤を用いることが好ましいがこれに限定されない。また、第1接着剤151及び第2接着剤152としてはエポキシ系の接着剤を用いることもできるがこれに限定されない。
【0085】
収容壁部41が固定板60の第1面S1に固定される態様としては、収容壁部41のZ1方向側の面と固定板60の第1面S1とが第2接着剤152を介して面接触するようにして固定された態様に限定されない。例えば、収容壁部41のZ1方向側の面に固定板60側へ突出する複数の凸部が設けられており、複数の凸部と固定板60の第1面S1とが第2接着剤152を介して接触するようにして固定された態様であっても、本発明の収容壁部と第1面との固定の一態様に含まれる。またこのような凸部は固定板60の第1面S1に設けられていてもよい。さらに、収容壁部41と固定板60とを固定する態様としては第2接着剤152による接着を例示したがこのような態様に限定されない。例えば、収容壁部41のZ1側の面と固定板60とが直接接触した状態をネジ及びナットなどの固定部材によって維持することで収容壁部41と固定板60とを固定した態様も、本発明の収容壁部と第1面との固定の一態様に含まれる。
【0086】
このようにして、ホルダー40と固定板60との間で画定された収容空間45、すなわち、ベース部42のZ1方向側の面と収容壁部41の内側の面と固定板60の第1面S1とから画定された直方体状の収容空間45に4つのヘッドチップ2が収容されている。もちろん、収容空間45はこのような直方体状である必要はなく、ヘッドチップ2を収容できる形状であればよい。
【0087】
図1、
図8及び
図9を用いて、記録ヘッド1と記録ヘッド1のノズル21を封止する第1キャップ90Aについて説明する。
図9は第1キャップ90Aが当接した記録ヘッド1の断面図である。
図9の断面は
図4の断面に対応しており、また記録ヘッド1の上部並びに第1接着剤151及び第2接着剤152の図示を省略している。
【0088】
第1キャップ90Aは、固定板60に対してZ方向に相対移動可能であり、記録装置Iに設けられている。第1キャップ90Aは、第1底壁91Aと、第1底壁91Aから突出するとともに固定板の第2面S2の第1領域R1に当接可能な第1囲繞壁92Aと、を有する。換言すれば、第1領域R1は、第1キャップ90Aが当接した固定板60の第2面S2のうち、第1囲繞壁92Aが当接した一領域をいう。
【0089】
本実施形態では第1底壁91AはZ2方向にみた平面視において収容空間45と略同形状に形成された板状部材である。第1底壁91Aの各辺から固定板60側であるZ2方向に第1囲繞壁92Aが延在している。Z2方向にみた第1囲繞壁92Aは略四角の枠状に形成されている。これらの第1底壁91A及び第1囲繞壁92Aは、特に材料に限定はないが、金属材料や樹脂材料から形成することができる。また、第1囲繞壁92AのうちZ2方向側の先端部分は弾性部93となっている。弾性部93は、第1囲繞壁92Aよりも高い弾性を有した部材、例えばエラストマーで形成されている。第1領域R1は、第2面S2のうち弾性部93に当接された一領域となっている。
【0090】
このような第1キャップ90Aは、Z1方向側からZ2方向側へ移動し、第1囲繞壁92Aの弾性部93が固定板60の第2面S2に当接する。第1キャップ90Aは、固定板60に接触することで固定板60との間で閉空間94を形成し、複数の露出開口部61や露出開口部61から露出したノズルプレート20を封止する。このように閉空間94を形成することで、ノズルプレート20のノズル21の近傍にあるインクが乾燥することを抑制してインクの増粘を抑制することができる。固定板60に弾性部93が当接することで、閉空間94の気密性が向上するとともに、第1キャップ90Aが固定板60に当接した際の衝撃が緩和される。また、第1キャップ90Aは、このように閉空間94を形成する構成に限定されない。例えば、第1キャップ90Aと固定板60との間の空間を吸引ポンプで負圧にすることでヘッドチップ2から強制的にインクを吐出させる、いわゆるクリーニングを行うためのキャップとして第1キャップ90Aを構成してもよい。
【0091】
図8及び
図9を用いて、第1領域R1について説明する。第1領域R1は、第1部分RLと第1部分RRとを有している。第1部分RL及び第1部分RRとは、第1領域R1のうちヘッドチップ2に対して第1方向であるY方向に並び且つ隣り合う部分である。第1部分RLは第1領域R1のうち複数のヘッドチップ2に対してY2方向側に位置した部分であり、第1部分RRは第1領域R1のうち複数のヘッドチップ2に対してY1方向側に位置した部分である。これらの第1部分RLと第1部分RRとはY方向に隣り合っている。換言すれば、Y方向における第1部分RLと第1部分RRとの間には、第1領域R1の一部が存在していない。本実施形態では、第1囲繞壁92AはZ2方向にみた平面視で略四角の枠状となっている。このような第1囲繞壁92Aに応じて形成される第1領域R1も略四角の枠状となっており、第1領域R1のうちヘッドチップ2の長手方向であるX方向に略平行な直線部分を第1部分RL及び第1部分RRとしている。
【0092】
もちろん、第1部分RL及び第1部分RRはX方向に略平行な直線形状に限定されない。第1領域R1は、第1キャップ90Aの第1囲繞壁92Aに応じた形状となるので、第1部分RLや第1部分RRも第1囲繞壁92Aに応じた形状となる。任意の形状の第1囲繞壁92Aであっても、第1領域R1のうちヘッドチップ2に対して第1方向に並び且つ隣り合う部分を第1部分RL及び第1部分RRとすればよい。
【0093】
上述した記録ヘッド1と第1キャップ90Aとを備えた記録装置Iは、印刷が終わった後やクリーニングなどを行う際には、記録ヘッド1を第1キャップ90Aの上方に移動させ、第1キャップ90AをZ1方向からZ2方向に移動させて固定板60に当接させる。第1キャップ90Aを固定板60に当接させる動作をキャッピングと称する。
【0094】
このようにキャッピングした状態においては、第1領域R1のうち第1部分RL及び第1部分RRは、Z2方向にみた平面視において収容壁部41と重なる。さらに本実施形態では、第1部分RL及び第1部分RRのみならず、第1領域R1の全ては前記平面視において収容壁部41と重なる。本実施形態では前記平面視において収容壁部41及び第1領域R1はいずれも略四角の枠状に形成されており、第1領域R1は収容壁部41に内包される大きさとなっている。なお、上述したように本実施形態では収容壁部41は外周壁のみから構成されているので、第1領域R1の全ては、前記平面視において外周壁に重なっているともいえる。
【0095】
また、第1領域R1の全ては、前記平面視において、複数のヘッドチップ2に重ならない。本実施形態では、第1領域R1は複数のヘッドチップ2よりも外側に配置されており、それらのヘッドチップ2には重なっていない。
【0096】
また、第1領域R1の全ては、前記平面視において、収容壁部41とヘッドチップ2との間の隙間と重ならない。本実施形態では、複数のヘッドチップ2は、前記平面視において、収容壁部41から離れて収容壁部41の内側に配置されており、収容壁部41とヘッドチップ2とは間に隙間が存在する。第1領域R1は、当該隙間よりも外側に配置されており、当該隙間に重なっていない。
【0097】
以上に説明した記録装置Iは、インクを噴射する複数のノズル21で構成されるノズル群NGが形成されたノズルプレート20をそれぞれが有する複数のヘッドチップ2と、複数のヘッドチップ2が固定される第1面S1と、第1面S1とは反対側の第2面S2とを有し、複数のノズル群NGをそれぞれ露出する複数の露出開口部61が形成された固定板60と、固定板60の第1面S1に固定されるとともに第1面S1に垂直な方向であるZ2方向に見た平面視において複数のヘッドチップ2を囲む収容壁部41を有し、固定板60と収容壁部41との間で画定される収容空間45内で複数のヘッドチップ2を保持するホルダー40と、を有する記録ヘッド1と、第1底壁91Aと、第1底壁91Aから突出するとともに固定板60の第2面S2の第1領域R1に当接可能な第1囲繞壁92Aと、を有する第1キャップ90Aと、を備え、複数のヘッドチップ2は、第1方向であるY方向に沿って並んで配置され、第1領域R1のうちヘッドチップ2に対して第1方向であるY方向に並び且つ隣り合う第1部分RL及び第1部分RRは、前記平面視において、収容壁部41と重なる。
【0098】
このような構成とすることで、第1部分RL及び第1部分RRが収容壁部41に重なっているので、第1キャップ90Aによる荷重は特定のヘッドチップ2に集中的に掛かりにくく、収容壁部41に分散させることができる。このため、キャッピング時に予期せぬ荷重が第1キャップ90Aから記録ヘッド1に作用したとしても、ヘッドチップ2が破損してしまうことを防止することができる。
【0099】
また、第1領域R1の全ては前記平面視において、複数のヘッドチップ2に重ならない。このような構成とすることで、第1キャップ90Aによる荷重がヘッドチップ2に掛かりにくい。したがって、ヘッドチップ2の破損をより確実に防止することができる。
【0100】
また、第1領域R1の全ては前記平面視において、収容壁部41とヘッドチップ2との間の隙間と重ならない。このような構成とすることで、固定板60に第1キャップ90Aによる荷重が直接的に掛からないので、固定板60が変形することを抑制することができる。
【0101】
また、第1領域R1の全ては前記平面視において、収容壁部41に重なる。このような構成とすることで、第1キャップ90Aによる荷重を収容壁部41により一層分散させることができ、ヘッドチップ2の破損をより確実に防止することができる。
【0102】
また、収容壁部41は、記録ヘッド1の外形を構成する外周壁を有し、第1領域R1の全ては、前記平面視において前記外周壁と重なる。上述したように本実施形態では収容壁部41は外周壁のみから構成されている。このような構成とすることで、第1キャップ90Aによる荷重を、外周壁である収容壁部41により一層分散させることができ、ヘッドチップ2の破損をより確実に防止することができる。
【0103】
また、ホルダー40は、収容空間45を画定するとともに収容壁部41が突出するベース部42を有し、ベース部42と複数のヘッドチップ2とは、シリコーン系の第1接着剤151で固定されている。仮に、固定板60の収容空間45を画定する部分にキャッピング時の荷重が作用すると、シリコーン系の第1接着剤151が変形し、ヘッドチップ2のアライメントがずれる虞がある。しかしながら、本実施形態の記録ヘッド1は、固定板60の収容空間45を画定する部分にキャッピング時の荷重が作用しなくなるので、柔らかいシリコーン系の第1接着剤151を使用してもヘッドチップ2を固定板60上に精度良くアライメントできる。
【0104】
〈実施形態1の変形例〉
図10及び
図11を用いて実施形態1の変形例を説明する。
図10はZ2方向にみた記録ヘッド1Aの平面図である。
図10においてはホルダー40のうちベース部42の図示は省略し、固定板60よりもZ2方向側にある収容壁部41をハッチングで示している。
図11は第1キャップ90Aが当接した記録ヘッド1の断面図である。
図11の断面は
図4の断面に対応しており、また記録ヘッド1の上部並びに第1接着剤151及び第2接着剤152の図示を省略している。上述した実施形態1の構成と同じものには同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0105】
変形例に係るホルダー40は、ベース部42からZ2方向に向けて延在する収容壁部41を有している。収容壁部41は、Z2方向にみた平面視において、複数のヘッドチップ2のうち、隣り合うヘッドチップ2の間に設けられた隔壁48と、外周壁49とを有している。変形例の外周壁49は、略矩形状に形成されたベース部42のZ2方向側の面の各辺からZ2方向側に延在しており、前記平面視において略四角の枠状に形成されている。隔壁48は、前記平面視においてX方向に延在しており、両端が外周壁49に接続している。このような構成の収容壁部41に固定板60が接着されることで、収容壁部41と固定板60とから隔壁48で隔てられ、Y方向に並設された2つの収容空間45が形成されている。
【0106】
本実施形態では、Y1方向側の収容空間45及びY2方向側の収容空間45にはそれぞれヘッドチップ2が2個ずつ収容されている。なお、収容空間45に収容するチップの数に限定はない。また隔壁48で隔てられた収容空間45の数は2個に限定されない。
【0107】
第1領域R1は、略四角の枠状となっており、各辺を構成する第1部分RL、第1部分RR、第1部分RT及び第1部分RBを有している。Z2方向にみた平面視において、第1部分RLと第1部分RRは外周壁49に重なっているが、第1部分RT及び第1部分RBは、少なくとも一部が外周壁49とは重なっていない。第1部分RT及び第1部分RBは、第1領域R1のうち第1部分RL及び第1部分RRを除いた部分であって、ヘッドチップ2に対してX方向に並び且つ隣り合う部分である。第1部分RTは第1領域R1のうち複数のヘッドチップ2に対してX2方向側に位置した部分であり、第1部分RBは第1領域R1のうち複数のヘッドチップ2に対してX1方向側に位置した部分である。これらの第1部分RTと第1部分RBとはX方向に隣り合っている。換言すれば、X方向における第1部分RTと第1部分RBとの間には、第1領域R1の一部が存在していない。
【0108】
キャッピングした状態においては、第1領域R1のうち第1部分RL及び第1部分RRは、Z2方向にみた平面視において外周壁49と重なる。一方、第1部分RT及び第1部分RBは、外周壁49に重なっていない部分を有し、かつ一部が隔壁48に重なる。このように第1領域R1は、全てが収容壁部41を構成する外周壁49又は隔壁48に重なっていない。また、第1部分RTの一部は各ヘッドチップ2のX2方向側の端部に重なり、第1部分RBの一部は各ヘッドチップ2のX1方向側の端部に重なっている。
【0109】
このように本変形例に係る記録ヘッド1では、実施形態1と同様に、第1領域R1のうちヘッドチップ2に対して第1方向であるY方向に並び且つ隣り合う第1部分RL及び第1部分RRが収容壁部41に重なっているので、第1キャップ90Aによる荷重が収容壁部41に分散し、ヘッドチップ2に掛かる荷重を低減できる。また、第1領域R1のうち、収容壁部41に重なった第1部分RL及び第1部分RR以外の部分、すなわち第1部分RT及び第1部分RBは前記平面視において複数のヘッドチップ2に重なっている。このような構成とすることで、複数のヘッドチップ2に第1キャップ90Aによる荷重を分散できるので特定のヘッドチップ2のみに荷重が集中することを回避できる。
【0110】
また、収容壁部41はZ2方向に見た平面視において複数のヘッドチップ2のうち隣り合うヘッドチップの間に設けられた隔壁48を有し、前記平面視において、第1領域R1の一部である第1部分RT及び第1部分RBは隔壁48と重なる。このような構成とすることで、第1キャップ90Aによる荷重が隔壁48にも分散するので、より一層、ヘッドチップ2に掛かる荷重を低減できる。
【0111】
なお、本変形例においては、収容壁部41は隔壁48を有しているが、隔壁48を有していなくてもよい。すなわち、第1部分RT及び第1部分RBが収容壁部41に重なっておらず、複数のヘッドチップ2に重なる構成であってもよい。このような構成としても、第1領域R1のうち第1部分RL及び第1部分RRが収容壁部41に重なることから第1キャップ90Aによる荷重を収容壁部41に分散することができ、第1部分RT及び第1部分RBが複数のヘッドチップ2に重なることから特定のヘッドチップ2に荷重が集中しないという効果を得ることができる。
【0112】
また、本変形例においては、第1領域R1の一部が隔壁48に重なっているが、このような態様に限定されない。X方向に3個、Y方向に3個、合計9個の収容空間45が形成されるようにマトリックス状に隔壁48を形成し、中央の収容空間45にヘッドチップ2を収容した構成では、第1領域R1の全てを隔壁48に重ねることができる。
【0113】
〈比較例〉
図12を用いて比較例を説明する。
図12はZ2方向にみた記録ヘッド1Xの平面図である。
図12においてはホルダー40のうちベース部42の図示は省略し、固定板60よりもZ2方向側にある収容壁部41をハッチングで示している。上述した実施形態1の構成と同じものには同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0114】
第1領域R1は、第1部分RL、第1部分RR、第1部分RT及び第1部分RBを有している。Z2方向にみた平面視において、第1部分RLと第1部分RRは収容壁部41に重なっておらず、Y方向に並設された複数のヘッドチップ2のうち両端のヘッドチップ2に重なっている。一方、第1部分RT及び第1部分RBは、収容壁部41に重なっている。
【0115】
このように比較例に係る記録ヘッド1では、第1領域R1のうち収容壁部41に重なっていない一部である第1部分RL及び第1部分RRが、第1方向であるY方向に並設された複数のヘッドチップ2のうちの両端にあるヘッドチップ2のみに重なっている。このため、両端のヘッドチップ2には、両端のヘッドチップ2の間にあるヘッドチップ2によりも第1キャップ90Aによる荷重が大きく掛かる。すなわち、特定のヘッドチップ2に荷重が集中してしまう。
【0116】
〈実施形態2〉
図13及び
図14を用いて実施形態2に係る記録装置Iについて説明する。
図13はZ2方向にみた記録ヘッド1Bの平面図である。
図13においてはホルダー40のうちベース部42の図示は省略し、固定板60よりもZ2方向側にある収容壁部41をハッチングで示している。
図14は第1キャップ90Aが当接した記録ヘッド1Bの断面図である。
図14の断面は
図4の断面に対応しており、また記録ヘッド1の上部並びに第1接着剤151及び第2接着剤152の図示を省略している。上述した実施形態1及びその変形例の構成と同じものには同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0117】
本実施形態に係るホルダー40には、2つの収容空間45を有し、各収容空間45には2個ずつ計4個のヘッドチップ2がY方向に並設されて収容されている。複数のヘッドチップ2のうち互いに隣り合う第1ヘッドチップ及び第2ヘッドチップをヘッドチップ2A及びヘッドチップ2Bとも称する。本実施形態ではY方向に並設された4個のヘッドチップ2のうち内側の2個をそれぞれヘッドチップ2A、ヘッドチップ2Bとしてある。また、ヘッドチップ2Aと同じ収容空間45に収容され、ヘッドチップ2Aに隣り合う第3ヘッドチップをヘッドチップ2C、ヘッドチップ2Bと同じ収容空間45に収容され、ヘッドチップ2Bに隣り合う第4ヘッドチップをヘッドチップ2Dとも称する。隔壁48は、これらのヘッドチップ2A及びヘッドチップ2Bとの間に設けられている。
【0118】
また、本実施形態の記録装置Iは、収容空間45ごとに複数のキャップを有しており、それぞれ第1キャップ90A、第2キャップ90Bとする。第1キャップ90Aはヘッドチップ2A及びヘッドチップ2Cのノズル21を封止し、第2キャップ90Bはヘッドチップ2B及びヘッドチップ2Dのノズル21を封止する。
【0119】
第2キャップ90Bは、固定板60に対してZ方向に相対移動可能であり、記録装置Iに設けられている。第2キャップ90Bは、第2底壁91Bと、第2底壁91Bから突出するとともに固定板の第2面S2の第2領域R2に当接可能な第2囲繞壁92Bと、を有する。換言すれば、第2領域R2は、第2キャップ90Bが当接した固定板60の第2面S2のうち、第2囲繞壁92Bが当接した一領域をいう。具体的な第2底壁91B、第2囲繞壁92Bの構成は、第1キャップ90Aの第1底壁91A、第1囲繞壁92Aの構成と同じであり、第2囲繞壁92BのZ2方向側の先端は弾性部93となっている。
【0120】
第1領域R1は、略四角の枠状となっており、各辺を構成する第1部分RL1、第1部分RR1、第1部分RT1及び第1部分RB1を有している。Z2方向にみた平面視において、第1部分RL1、第1部分RT1及び第1部分RB1は外周壁49に重なり、第1部分RR1は隔壁48に重なっている。すなわち、第1領域R1の全てが収容壁部41に重なっている。
【0121】
第2領域R2は、略四角の枠状となっており、各辺を構成する第2部分RL2、第2部分RR2、第2部分RT2及び第2部分RB2を有している。Z2方向にみた平面視において、第2部分RR2、第2部分RT2及び第2部分RB2は外周壁49に重なり、第2部分RL2は隔壁48に重なっている。すなわち、第2領域R2の全てが収容壁部41に重なっている。
【0122】
また、Z2方向にみた平面視において、第1領域R1の一部である第1部分RR1及び第2領域R2の一部である第2部分RL2は、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Bとの間に設けられた同じ隔壁48と重なっている。
【0123】
また、Z2方向にみた平面視において、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Cは第1領域R1に囲まれている。そして、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Cとの間には、収容壁部41の隔壁48が介在していない。
【0124】
第1キャップ90A及び第2キャップ90Bがキャッピングした状態においては、第1領域R1の全てが収容壁部41に重なり、第2領域R2の全てが収容壁部41に重なる。このような構成とすることで実施形態1の記録装置Iと同様の効果を奏する。
【0125】
さらに、本実施形態では、第2底壁91Bと、第2底壁91Bから突出するとともに固定板60の第2面S2の第2領域R2に当接可能な第2囲繞壁92Bと、を有する第2キャップ90Bを更に備え、複数のヘッドチップ2は、互いに隣り合うヘッドチップ2A及びヘッドチップ2Bを含み、収容壁部41は、Z2方向に見た平面視において、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Bとの間に設けられた隔壁48を有し、前記平面視において、第1領域R1の一部である第1部分RR1及び第2領域R2の一部である第2部分RL2は、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Bとの間に設けられた同じ隔壁48と重なる。このような構成とすることで、第1キャップ90A及び第2キャップ90Bが固定板60に当接して形成される第1領域R1と第2領域R2とで同じ隔壁48を共有することができる。このように隔壁48を共有することができるので、第1領域R1と第2領域R2のそれぞれに隔壁48を設ける構成と比較して、記録ヘッド1を小型化することができる。
【0126】
さらに、本実施形態では、Z2方向にみた平面視において、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Cは第1領域R1に囲まれており、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Cとの間には、収容壁部41の隔壁48が介在していない。このような構成とすることで、収容空間45内に隔壁48が介在しない分、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Cとの間隔を狭くすることができるので、記録ヘッド1及び第1キャップ90Aを小型化することができる。本実施形態では、
図14に示す通り、隔壁48を介在せずに隣り合うヘッドチップ2Aとヘッドチップ2CとのY方向に関する距離は、隔壁48を介在して隣り合うヘッドチップ2Aとヘッドチップ2BとのY方向に関する距離よりも短い。同様に、隔壁48を介在せずに隣り合うヘッドチップ2Bとヘッドチップ2BとのY方向に関する距離は、隔壁48を介在して隣り合うヘッドチップ2Aとヘッドチップ2BとのY方向に関する距離よりも短い。
【0127】
なお、本実施形態では、第1領域R1及び第2領域R2は全てが収容壁部41に重なる構成であるが、このような構成に限定されない。すなわち、実施形態1の変形例で示したように、第1領域R1及び第2領域R2の全てが収容壁部41に重ならず、一部が複数のヘッドチップ2に重なるようにしてもよい。
【0128】
〈実施形態3〉
図15及び
図16を用いて実施形態3に係る記録装置Iについて説明する。
図15はZ2方向にみた記録ヘッド1Cの平面図である。
図15においてはホルダー40のうちベース部42の図示は省略し、固定板60よりもZ2方向側にある収容壁部41をハッチングで示している。
図16は第1キャップ90Aが当接した記録ヘッド1Cの断面図である。
図16の断面は
図4の断面に対応しており、また記録ヘッド1の上部並びに第1接着剤151及び第2接着剤152の図示を省略している。上述した実施形態1及びその変形例の構成と同じものには同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0129】
本実施形態に係るホルダー40には、4つの収容空間45を有し、各収容空間45には1個ずつ計4個のヘッドチップ2がY方向に並設されて収容されている。このように一つの収容空間45に一つのヘッドチップ2が収容されているが、このような態様も本発明の態様に含まれる。すなわち、収容壁部41が複数のヘッドチップ2を囲むとは、外周壁49の内側に複数のヘッドチップ2が配置されていることをいう。つまり記録ヘッド1の外形を構成する外周壁49の内側に複数のヘッドチップ2が収容されていればよく、外周壁49の内側を区分する隔壁48によって囲まれた範囲においてはヘッドチップ2が一つでもよい。
【0130】
複数のヘッドチップ2のうち互いに隣り合う第1ヘッドチップ及び第2ヘッドチップをヘッドチップ2A及びヘッドチップ2Bとも称する。本実施形態ではY方向に並設された4個のヘッドチップ2のうち内側の2個をそれぞれヘッドチップ2A、ヘッドチップ2Bとしてある。また、ヘッドチップ2Aのヘッドチップ2Bとは反対側に配置された第3ヘッドチップをヘッドチップ2C、ヘッドチップ2Bのヘッドチップ2Aとは反対側に配置された第4ヘッドチップをヘッドチップ2Dとも称する。隔壁48は、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Bとの間、ヘッドチップ2Cとヘッドチップ2Aとの間、ヘッドチップ2Bとヘッドチップ2Dとの間にそれぞれ設けられている。
【0131】
また、本実施形態の記録装置Iは、収容空間45ごとに複数のキャップを有しており、それぞれ第1キャップ90A、第2キャップ90B、第3キャップ90C、第4キャップ90Dとする。なお、これらのキャップを区別せずに纏めてキャップ90とも称する。第1キャップ90Aはヘッドチップ2Aのノズル21を封止し、第2キャップ90Bはヘッドチップ2Bのノズル21を封止し、第3キャップ90Cはヘッドチップ2Cのノズル21を封止し、第4キャップ90Dはヘッドチップ2Dのノズル21を封止する。
【0132】
第3キャップ90C及び第4キャップ90Dは何れも、固定板60に対してZ方向に相対移動可能であり、記録装置Iに設けられている。第3キャップ90Cは、第3底壁91Cと、第3底壁91Cから突出するとともに固定板の第2面S2の第3領域R3に当接可能な第3囲繞壁92Cと、を有する。換言すれば、第3領域R3は、第3キャップ90Cが当接した固定板60の第2面S2のうち、第3囲繞壁92Cが当接した一領域をいう。第4キャップ90Dは、第4底壁91Dと、第4底壁91Dから突出するとともに固定板の第2面S2の第4領域R4に当接可能な第4囲繞壁92Dと、を有する。換言すれば、第4領域R4は、第4キャップ90Dが当接した固定板60の第2面S2のうち、第4囲繞壁92Dが当接した一領域をいう。第3キャップ90C及び第4キャップ90Dの具体的な構成は第1キャップ90Aの構成と同じである。
【0133】
第1領域R1は、略四角の枠状となっており、各辺を構成する第1部分RL1、第1部分RR1、第1部分RT1及び第1部分RB1を有している。Z2方向にみた平面視において、第1部分RL1、第1部分RT1及び第1部分RB1は外周壁49に重なり、第1部分RR1は隔壁48に重なっている。すなわち、第1領域R1の全てが収容壁部41に重なっている。
【0134】
第2領域R2は、略四角の枠状となっており、各辺を構成する第2部分RL2、第2部分RR2、第2部分RT2及び第2部分RB2を有している。Z2方向にみた平面視において、第2部分RT2及び第2部分RB2は外周壁49に重なり、第2部分RL2及び第2部分RR2は隔壁48に重なっている。すなわち、第2領域R2の全てが収容壁部41に重なっている。
【0135】
第3領域R3は、略四角の枠状となっており、各辺を構成する第3部分RL3、第3部分RR3、第3部分RT3及び第3部分RB3を有している。Z2方向にみた平面視において、第3部分RT3及び第3部分RB3は外周壁49に重なり、第3部分RL3及び第3部分RR3は隔壁48に重なっている。すなわち、第3領域R3の全てが収容壁部41に重なっている。
【0136】
第4領域R4は、略四角の枠状となっており、各辺を構成する第4部分RL4、第4部分RR4、第4部分RT4及び第4部分RB4を有している。Z2方向にみた平面視において、第4部分RR4、第4部分RT4及び第4部分RB4は外周壁49に重なり、第4部分RL4は隔壁48に重なっている。すなわち、第4領域R4の全てが収容壁部41に重なっている。
【0137】
また、Z2方向にみた平面視において、第1領域R1の一部である第1部分RR1及び第2領域R2の一部である第2部分RL2は、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Bとの間に設けられた同じ隔壁48と重なっている。第1領域R1の一部である第1部分RL1及び第3領域R3の一部である第3部分RR3は、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Cとの間に設けられた同じ隔壁48と重なっている。第2領域R2の一部である第2部分RR2及び第4領域R4の一部である第4部分RL4は、ヘッドチップ2Bとヘッドチップ2Dとの間に設けられた同じ隔壁48と重なっている。
【0138】
第1キャップ90A及び第2キャップ90Bがキャッピングした状態においては、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び第4領域R4のそれぞれの全てが収容壁部41に重なる。このような構成とすることで本実施形態に係る記録装置Iは実施形態1の記録装置Iと同様の効果を奏する。
【0139】
また、本実施形態では、Z2方向にみた平面視において、第1領域R1の一部である第1部分RR1及び第2領域R2の一部である第2部分RL2は、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Bとの間に設けられた同じ隔壁48と重なっている。第1領域R1の一部である第1部分RL1及び第3領域R3の一部である第3部分RR3は、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Cとの間に設けられた同じ隔壁48と重なっている。第2領域R2の一部である第2部分RR2及び第4領域R4の一部である第4部分RL4は、ヘッドチップ2Bとヘッドチップ2Dとの間に設けられた同じ隔壁48と重なっている。このような構成とすることで、第1キャップ90A及び第2キャップ90Bが固定板60に当接して形成される第1領域R1と第2領域R2とで同じ隔壁48を共有することができる。第3領域R3と第1領域R1、及び第2領域R2と第4領域R4について同様に同じ隔壁48を共有することができる。このように隔壁48を共有することができるので、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、第4領域R4のそれぞれに隔壁48を設ける構成と比較して、記録ヘッド1を小型化することができる。
【0140】
なお、本実施形態では、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び第4領域R4は全てが収容壁部41に重なる構成であるが、このような構成に限定されない。すなわち、実施形態1の変形例で示したように、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び第4領域R4の全てが収容壁部41に重ならず、一部が複数のヘッドチップ2に重なるようにしてもよい。
【0141】
〈実施形態3の変形例〉
図17及び
図18を用いて実施形態3の変形例に係る記録装置Iについて説明する。
図17はZ2方向にみた記録ヘッド1Dの平面図である。
図17においてはホルダー40のうちベース部42の図示は省略し、固定板60よりもZ2方向側にある収容壁部41をハッチングで示している。
図18は第1キャップ90Aが当接した記録ヘッド1Dの断面図である。
図18の断面は
図4の断面に対応しており、また記録ヘッド1の上部並びに第1接着剤151及び第2接着剤152の図示を省略している。上述した実施形態3の構成と同じものには同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0142】
本変形例に係る記録装置Iは、共通キャップ95を備え、共通キャップ95は固定板60に対してZ方向に相対移動可能となっている。具体的には、共通キャップ95は、第1キャップ90Aの第1囲繞壁92AのうちY方向において第2キャップ90B側に位置する一部と、第2キャップ90Bの第2囲繞壁92BのうちY方向において第1キャップ90A側に位置する一部とが共通化されている。共通化とは、一つの囲繞壁を第1キャップ90Aの第1囲繞壁92A及び第2キャップ90Bの第2囲繞壁92Bとして共用することをいう。
【0143】
同様に、第3キャップ90Cの第3囲繞壁92CのうちY方向において第1キャップ90A側に位置する一部と、第1キャップ90Aの第1囲繞壁92AのうちY方向において第3キャップ90C側に位置する一部とが共通化されている。第2キャップ90Bの第2囲繞壁92BのうちY方向において第4キャップ90D側に位置する一部と、第4キャップ90Dの第4囲繞壁92DのうちY方向において第2キャップ90B側に位置する一部とが共通化されている。
【0144】
また、本変形例の共通キャップ95は、第1キャップ90Aの第1底壁91A、第2キャップ90Bの第2底壁91B、第3キャップ90Cの第3底壁91C、第4キャップ90Dの第4底壁91Dについても共通化されている。すなわち一つの底壁が各第1底壁91A-第4底壁91Dとして共用されている。
【0145】
また、Z2方向にみた平面視において、第1領域R1の一部である第1部分RR1及び第2領域R2の一部である第2部分RL2は、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Bとの間に設けられた同じ隔壁48と重なっている。さらに、第1キャップ90A及び第2キャップ90Bの各囲繞壁を共通化したことから、第1部分RR1と第2部分RL2は重なっている。
【0146】
第1領域R1の一部である第1部分RL1及び第3領域R3の一部である第3部分RR3は、ヘッドチップ2Aとヘッドチップ2Cとの間に設けられた同じ隔壁48と重なっている。さらに、第3キャップ90C及び第1キャップ90Aの各囲繞壁を共通化したことから、第1部分RL1と第3部分RR3は重なっている。
【0147】
第2領域R2の一部である第2部分RR2及び第4領域R4の一部である第4部分RL4は、ヘッドチップ2Bとヘッドチップ2Dとの間に設けられた同じ隔壁48と重なっている。さらに、第2キャップ90B及び第4キャップ90Dの各囲繞壁を共通化したことから、第2部分RR2と第4部分RL4は重なっている。
【0148】
共通キャップ95がキャッピングした状態においては、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び第4領域R4のそれぞれの全てが収容壁部41に重なる。このような構成とすることで本変形例に係る記録装置Iは実施形態3の記録装置Iと同様の効果を奏する。
【0149】
また、本変形例では、第1キャップ90Aの第1囲繞壁92Aの一部と、第2キャップ90Bの第2囲繞壁92Bの一部とは、Z2方向にみた平面視において重なる。このような構成とすることで、囲繞壁が共通化されるので、第1囲繞壁92Aの一部及び第2囲繞壁92Bの一部に対向する隔壁48のY方向における幅を薄くすることができる。同様に、第3キャップ90Cの第3囲繞壁92Cの一部と、第1キャップ90Aの第1囲繞壁92Aの一部を共通化するので、第3囲繞壁92Cの一部及び第1囲繞壁92Aの一部に対向する隔壁48のY方向における幅を薄くすることができる。第2キャップ90Bの第2囲繞壁92Bの一部と、第4キャップ90Dの第4囲繞壁92Dの一部を共通化するので、第2囲繞壁92Bの一部及び第4囲繞壁92Dの一部に対向する隔壁48のY方向における幅を薄くすることができる。これにより、記録ヘッド1並びに第1キャップ90A、第2キャップ90B、第3キャップ90C、及び第4キャップ90Dを備える共通キャップ95を小型化することができる。
【0150】
なお、本変形例では、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び第4領域R4は全てが収容壁部41に重なる構成であるが、このような構成に限定されない。すなわち、実施形態1の変形例で示したように、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3及び第4領域R4の全てが収容壁部41に重ならず、一部が複数のヘッドチップ2に重なるようにしてもよい。
【0151】
〈実施形態4〉
図19から
図21を用いて実施形態4に係る記録装置Iについて説明する。
図19はZ1方向にみた記録ヘッド1Eの平面図である。
図20は記録ヘッド1Eの斜視図である。
図21は固定板60及び第1キャップ90Aの斜視図である。
【0152】
本実施形態に係る記録ヘッド1Eは、複数のヘッドチップ2Eと、固定板60Eと、複数のヘッドチップ2Eを保持するホルダー40Eと、を有する。
【0153】
本実施形態に係る複数のヘッドチップ2Eは、ヘッドチップ本体部160と、インクを噴射する不図示の複数のノズルで構成されるノズル群NGが形成されたノズルプレート20と、を備えている。ノズルプレート20は、X方向に並設された複数のノズルで構成されたノズル群NGを有している。
【0154】
ヘッドチップ本体部160の内部には、特に図示しないが、液体容器から供給されるインクの流路が形成されており、当該流路の開口がヘッドチップ本体部160のZ2方向側の面に形成されている。また、ヘッドチップ本体部160の内部には、ノズルに連通する圧力発生室、当該圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧電素子が設けられている。さらに、ヘッドチップ本体部160には、不図示の圧電素子と、圧電素子を駆動するためのスイッチング素子を有する駆動回路(
図2参照)と、制御ユニット(
図1参照)を駆動回路に接続するためのコネクター等が設けられている。
【0155】
このような構成のヘッドチップ2Eは、不図示の液体容器から導入口161を介して内部の流路にインクが供給される。そして当該流路から圧力発生室にインクが満たされ、駆動回路からの記録信号に従い圧電素子が圧力発生室に圧力変化を生じさせることで圧力発生室内のインクがノズルから噴射される。
【0156】
また、ヘッドチップ本体部160には、X1方向側及びX2方向側の側面のそれぞれからX1方向及びX2方向へ突出するフランジ部162が形成されている。フランジ部162は、Z1方向側の面がホルダー40EのZ2方向側の表面に当接する。ヘッドチップ2Eは、フランジ部162でホルダー40Eに保持される。また、フランジ部162には、Z方向に貫通する第1貫通孔163が形成されている。第1貫通孔163は、ヘッドチップ2Eをホルダー40Eに固定するためのネジが挿通されるものである。
【0157】
Y方向に並設された2個のヘッドチップ2Eをヘッドチップ群と称する。本実施形態では、記録ヘッド1は、ヘッドチップ群P1、ヘッドチップ群P2、ヘッドチップ群P3、ヘッドチップ群P4を有している。2個のヘッドチップ群P1とヘッドチップ群P2とがX方向に並設されてヘッドチップ列L1を構成している。同様に、ヘッドチップ群P3とヘッドチップ群P4とがX方向に並設されてヘッドチップ列L2を構成している。ヘッドチップ列L1とヘッドチップ列L2とはY方向に並設されている。また、ヘッドチップ群P1からヘッドチップ群P4はX方向に沿って千鳥状に配置されている。すなわち、Y1方向にみてヘッドチップ群P1の一部がヘッドチップ群P3に重なり、ヘッドチップ群P2の一部がヘッドチップ群P3及びヘッドチップ群P4に重なる。同様に、Y1方向にみてヘッドチップ群P3の一部がヘッドチップ群P1及びヘッドチップ群P2に重なり、ヘッドチップ群P4の一部がヘッドチップ群P2に重なる。このように一方のヘッドチップ列に属するヘッドチップ群の一部が他方のヘッドチップ列に属するヘッドチップ群に重なっている。なお、各ヘッドチップ群を構成するヘッドチップ2Eの個数に限定はなく、各ヘッドチップ列を構成するヘッドチップ群の個数に限定はない。また、ヘッドチップ列の個数にも限定はなく、さらにヘッドチップ群が千鳥状に配置されている構成に限定されない。
【0158】
固定板60Eは、複数のヘッドチップ2Eが固定される第1面S1と、第1面S1とは反対側の第2面S2とを有し、複数のノズル21からなるノズル群NGをそれぞれ露出する複数の露出開口部61が形成されている。本実施形態では、一枚の固定板60Eについて2つの露出開口部61が形成されており、計4個の固定板60Eが後述するホルダー40EのZ1方向側の面に固定されている。
【0159】
ホルダー40Eは、固定板60Eの第1面S1に固定されるとともに第1面S1に垂直な方向であるZ2方向側に見た平面視において複数のヘッドチップ2を囲む収容壁部41を有し、固定板60Eと収容壁部41との間で画定される収容空間45内で複数のヘッドチップ2を保持する。本実施形態では、収容壁部41は、隔壁48と外周壁49とを有している。外周壁49は、収容壁部41のうち記録ヘッド1の外形を構成する部分である。また、隔壁48は、Z2方向にみた平面視において、収容壁部41のうちヘッドチップ群P1からヘッドチップ群P4のそれぞれの間に形成されている部分である。本実施形態ではX方向におけるヘッドチップ群P1とヘッドチップ群P2との間、X方向におけるヘッドチップ群P3とヘッドチップ群P4との間、Y方向におけるヘッドチップ群P1とヘッドチップ群P3との間、Y方向におけるヘッドチップ群P2とヘッドチップ群P3との間、Y方向におけるヘッドチップ群P2とヘッドチップ群P4との間に、隔壁48が形成されている。
【0160】
隔壁48と外周壁49とで囲まれたホルダー40Eの開口部分を塞ぐように、ホルダー40EのZ1方向側の面に固定板60Eが固定される。これにより、固定板60Eと収容壁部41との間で4つの収容空間45が画定されている。本実施形態のホルダー40Eは、実施形態1のベース部42を有していないため、収容空間45のZ2方向側は開放されているが、このような態様の収容空間45も本発明の収容空間の態様に含まれる。
【0161】
また、ホルダー40Eには、各収容空間45よりもX1方向の外側及びX2方向の外側の領域に、Z方向に貫通する第2貫通孔164が形成されている。第2貫通孔164はヘッドチップ2Eをホルダー40Eに固定するためのネジが挿通されるものである。第2貫通孔164は、ヘッドチップ2Eの第1貫通孔163に対応して設けられている。
【0162】
ヘッドチップ2Eは、収容空間45に挿通されており、フランジ部162がホルダー40EのZ2方向側の面に保持されている。そして、フランジ部162に形成された第1貫通孔163と、ホルダー40Eに設けられた第2貫通孔164とが連通し、図示しないネジが第1貫通孔163及び第2貫通孔164を挿通する。そして図示しないナットが当該ネジに螺合することで、ヘッドチップ2Eがホルダー40Eに保持される。なお、ヘッドチップ2Eをホルダー40Eに固定する手段としてはネジやナットなどの固定部材に限定されない。例えば接着剤によってヘッドチップ2Eをホルダー40Eに固定してもよい。
【0163】
本実施形態に係る不図示の記録装置は、上述した記録ヘッド1Eを備える。この記録装置は記録ヘッド1Eを固定し、記録ヘッド1Eに対して媒体を供給する、いわゆるライン型の記録装置である。本実施形態の記録装置は、Y2方向からY1方向へと媒体Sが供給されるように構成されており、その媒体Sに各ヘッドチップ2Eからインクが噴射されて所望の画像が形成される。
【0164】
本実施形態の記録装置は、収容空間45ごとに第1キャップ90Aを有している。本実施形態では4個の収容空間45があるので、4個の第1キャップ90Aを備えている。第1キャップ90Aは、固定板60に対してZ方向に相対移動可能であり、記録装置に設けられている。第1キャップ90Aは、第1底壁91Aと、第1底壁91Aから突出するとともに固定板の第2面S2の第1領域R1に当接可能な第1囲繞壁92Aと、を有する。換言すれば、第1領域R1は、第1キャップ90Aが当接した固定板60の第2面S2のうち、第1囲繞壁92Aが当接した一領域をいう。
【0165】
本実施形態では第1底壁91AはZ2方向にみた平面視において収容空間45と略同形状に形成された板状部材である。第1底壁91Aの各辺から固定板60側であるZ2方向に第1囲繞壁92Aが延在している。Z2方向にみた第1囲繞壁92Aは略四角の枠状に形成されている。これらの第1底壁91A及び第1囲繞壁92Aは、特に材料に限定はないが、金属材料や樹脂材料から形成することができる。また、第1囲繞壁92AのうちZ2方向側の先端部分は弾性部93となっている。弾性部93は、第1囲繞壁92Aよりも高い弾性を有した部材、例えばエラストマーで形成されている。第1領域R1は、第2面S2のうち弾性部93に当接された一領域となっている。
【0166】
このような第1領域R1は、4個の第1キャップ90Aに応じて4個形成される。各第1領域R1は、略四角の枠状となっており、Z2方向にみた平面視において第1領域R1の全てが収容壁部41に重なっている。
【0167】
また、ヘッドチップ2Eは、収容壁部41のうち固定板60の第1面S1に固定される面とは反対側の面に設けられた固定位置165で固定されている。本実施形態では収容壁部41のうち固定板60の第1面S1に固定される面は、収容壁部41のZ1方向側の面であり、その反対側の面は収容壁部41のZ2方向側の面である。固定位置165は、収容壁部41のZ2方向側の面、すなわちホルダー40EのZ2方向側の面のうちヘッドチップ2Eのフランジ部162に当接された部分である。そして、Z2方向に見た平面視において、固定位置165は第1領域R1に重なる。
【0168】
上述した構成の記録装置は、インクを噴射する複数のノズルで構成されるノズル群NGが形成されたノズルプレート20をそれぞれが有する複数のヘッドチップ2Eと、複数のヘッドチップ2Eが固定される第1面S1と、第1面とは反対側の第2面S2とを有し、複数のノズル群NGをそれぞれ露出する複数の露出開口部61が形成された固定板60Eと、固定板60Eの第1面S1に固定されるとともに第1面S1に垂直な方向であるZ2方向に見た平面視において複数のヘッドチップ2Eを囲む収容壁部41を有し、固定板60と収容壁部41との間で画定される収容空間45内で複数のヘッドチップ2Eを保持するホルダー40Eと、を有する記録ヘッド1と、第1底壁91Aと、第1底壁91Aから突出するとともに固定板60Eの第2面S2の第1領域R1に当接可能な第1囲繞壁92Aと、を有する第1キャップ90Aと、を備え、第1領域R1の全ては、前記平面視において、収容壁部41と重なる。
【0169】
このような構成とすることで、第1キャップ90Aがキャッピングした状態においては、第1領域R1の全てが収容壁部41に重なるので、実施形態1の記録装置Iと同様の効果を奏する。
【0170】
また、ヘッドチップ2Eは、収容壁部41のうち固定板60の第1面S1に固定される面とは反対側の面に設けられた固定位置165で固定され、前記平面視において、固定位置165は第1領域R1に重なる。このような構成とすることで固定位置165と第1領域R1とが重なるため、第1領域R1が固定位置165よりも外側に設けられている場合に比べて、収容壁部41を厚くする必要がなくなり、記録ヘッド1を小型化することができる。
【0171】
なお、本実施形態では、第1領域R1は全てが収容壁部41に重なる構成であるが、このような構成に限定されない。すなわち、実施形態1の変形例で示したように、第1領域R1の全てが収容壁部41に重ならず、一部が複数のヘッドチップ2に重なるようにしてもよい。
【0172】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0173】
本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。また、液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、上述した他の液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置にも用いることが可能である。
【0174】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・前記実施形態の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって前記実施形態の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・前記実施形態の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が前記実施形態の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用することは本発明の一実施形態として開示されるものである。
【0175】
〈付記〉
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0176】
好適な態様1に係る液体噴射装置は、液体を噴射する複数のノズルで構成されるノズル群が形成されたノズルプレートをそれぞれが有する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップが固定される第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記ノズル群をそれぞれ露出する複数の露出開口部が形成された固定板と、前記固定板の前記第1面に固定されるとともに前記第1面に垂直な方向に見た平面視において前記複数のヘッドチップを囲む収容壁部を有し、前記固定板と前記収容壁部との間で画定される収容空間内で前記複数のヘッドチップを保持するホルダーと、を有する液体噴射ヘッドと、第1底壁と、前記第1底壁から突出するとともに前記固定板の前記第2面の第1領域に当接可能な第1囲繞壁と、を有する第1キャップと、を備え、前記複数のヘッドチップは、第1方向に沿って並んで配置され、前記第1領域のうち前記ヘッドチップに対して前記第1方向に並び且つ隣り合う部分は、前記平面視において、前記収容壁部と重なる。
【0177】
態様1によれば、第1部分が収容壁部に重なっているので、第1キャップによる荷重は特定のヘッドチップに集中的に掛かりにくく、収容壁部に分散させることができる。このため、キャッピング時に予期せぬ荷重が第1キャップから液体噴射ヘッドに作用したとしても、ヘッドチップが破損してしまうことを防止することができる。
【0178】
また態様1の具体例である態様2において、前記第1領域の全ては、前記平面視において、前記複数のヘッドチップと重ならない。このような態様2によれば、第1キャップによる荷重がヘッドチップに掛かりにくい。したがって、ヘッドチップの破損をより確実に防止することができる。
【0179】
また態様2の具体例である態様3において、前記平面視において、前記ヘッドチップの外形は、前記ノズルプレートよりも大きい。
【0180】
また態様2の具体例である態様4において、前記第1領域の全ては、前記平面視において、前記収容壁部と前記ヘッドチップとの間の隙間と重ならない。このような態様4によれば、固定板60に第1キャップによる荷重が直接的に掛からないので、固定板が変形することを抑制することができる。
【0181】
また態様1の具体例である態様5において、前記第1領域の全ては、前記平面視において、前記収容壁部と重なる。このような態様5によれば、第1キャップによる荷重を収容壁部により一層分散させることができ、ヘッドチップの破損をより確実に防止することができる。
【0182】
また態様5の具体例である態様6において、前記収容壁部は、前記液体噴射ヘッドの外形を構成する外周壁を有し、前記第1領域の全ては、前記平面視において前記外周壁と重なる。このような態様6によれば、第1キャップによる荷重を外周壁により一層分散させることができ、ヘッドチップの破損をより確実に防止することができる。
【0183】
また態様1の具体例である態様7において、前記収容壁部は、前記平面視において、前記複数のヘッドチップのうち隣り合うヘッドチップの間に設けられた隔壁を有し、前記平面視において、前記第1領域の少なくとも一部は、前記隔壁と重なる。このような態様7によれば、第1キャップによる荷重が隔壁にも分散するので、より一層、ヘッドチップに掛かる荷重を低減できる。
【0184】
また態様1の具体例である態様8において、第2底壁と、前記第2底壁から突出するとともに前記固定板の前記第2面の第2領域に当接可能な第2囲繞壁と、を有する第2キャップを更に備え、前記複数のヘッドチップは、互いに隣り合う第1ヘッドチップ及び第2ヘッドチップを含み、前記収容壁部は、前記平面視において、前記第1ヘッドチップと前記第2ヘッドチップとの間に設けられた隔壁を有し、前記平面視において、前記第1領域の一部及び前記第2領域の一部は、前記第1ヘッドチップと前記第2ヘッドチップとの間に設けられた同じ前記隔壁と重なる。このような態様8によれば、第1キャップ及び第2キャップが固定板に当接して形成される第1領域と第2領域とで同じ隔壁を共有することができる。このように隔壁を共有することができるので、第1領域と第2領域のそれぞれに隔壁を設ける構成と比較して、液体噴射ヘッドを小型化することができる。
【0185】
また態様8の具体例である態様9において、前記複数のヘッドチップは、前記第1ヘッドチップに隣り合う第3ヘッドチップを含み、前記第1ヘッドチップ及び前記第3ヘッドチップは、前記平面視において前記第1領域に囲まれており、前記第1ヘッドチップと前記第3ヘッドチップとの間には、前記収容壁部が介在しない。このような態様9によれば、収容空間内に隔壁が介在しない分、第1ヘッドチップと第3ヘッドチップとの間隔を狭くすることができるので、液体噴射ヘッド及び第1キャップを小型化することができる。
【0186】
また態様8の具体例である態様10において、前記第1領域の前記一部と前記第2領域の前記一部とは、前記平面視において重なる。このような態様10によれば、第1キャップの第1囲繞壁の一部と第2キャップの第2囲繞壁の一部が共通化されるので、第1囲繞壁の一部及び第2囲繞壁の一部に対向する隔壁の幅を薄くすることができる。隔壁の幅を薄くできることにより、液体噴射ヘッド並びに第1キャップ及び第2キャップを小型化することができる。
【0187】
また態様1の具体例である態様11において、前記ホルダーは、前記収容空間を画定するとともに前記収容壁部が突出するベース部を有し、前記ベース部と前記複数のヘッドチップとは、シリコーン系の接着剤で固定されている。このような態様11によれば、柔らかいシリコーン系の第1接着剤を使用してもヘッドチップを固定板上に精度良くアライメントできる。
【0188】
また態様1の具体例である態様12において、前記第1キャップは、前記液体噴射ヘッドに対して、前記第1面に垂直な方向に沿って相対移動する。
【0189】
また好適な他の態様である態様13に係る液体噴射装置は、液体を噴射する複数のノズルで構成されるノズル群が形成されたノズルプレートをそれぞれが有する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップが固定される第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記ノズル群をそれぞれ露出する複数の露出開口部が形成された固定板と、前記固定板の前記第1面に固定されるとともに前記第1面に垂直な方向に見た平面視において前記複数のヘッドチップを囲む収容壁部を有し、前記固定板と前記収容壁部との間で画定される収容空間内で前記複数のヘッドチップを保持するホルダーと、を有する液体噴射ヘッドと、第1底壁と、前記第1底壁から突出するとともに前記固定板の前記第2面の第1領域に当接可能な第1囲繞壁と、を有する第1キャップと、を備え、前記第1領域の全ては、前記平面視において、前記収容壁部と重なる。
【0190】
態様13によれば、第1部分が収容壁部に重なっているので、第1キャップによる荷重は特定のヘッドチップに集中的に掛かりにくく、収容壁部に分散させることができる。このため、キャッピング時に予期せぬ荷重が第1キャップから液体噴射ヘッドに作用したとしても、ヘッドチップが破損してしまうことを防止することができる。
【0191】
また態様13の具体例である態様14において、前記ヘッドチップは、前記収容壁部のうち前記固定板の前記第1面に固定される面とは反対側の面に設けられた固定位置で固定され、前記平面視において、前記固定位置は、前記第1領域に重なる。このような態様14によれば、固定位置と第1領域とが重なるため、第1領域が固定位置よりも外側に設けられている場合に比べて、収容壁部を厚くする必要がなくなり、液体噴射ヘッドを小型化することができる。
【符号の説明】
【0192】
I…記録装置(液体噴射装置)、R1…第1領域、R2…第2領域、R3…第3領域、R4…第4領域、S1…第1面、S2…第2面、1、1A、1B、1C、1D、1E…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、2、2A、2B、2C、2D、2E…ヘッドチップ、20…ノズルプレート、21…ノズル、40…ホルダー、41…収容壁部、42…ベース部、45…収容空間、48…隔壁、49…外周壁、60、60E…固定板、61…露出開口部、90A…第1キャップ、90B…第2キャップ、90C…第3キャップ、90D…第4キャップ、91A…第1底壁、91B…第2底壁、91C…第3底壁、91D…第4底壁、92A…第1囲繞壁、92B…第2囲繞壁、92C…第3囲繞壁、92D…第4囲繞壁、93…弾性部、94…閉空間、151…第1接着剤、152…第2接着剤、165…固定位置