(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093249
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240702BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209498
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 彩加
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 臣吾
(72)【発明者】
【氏名】野口 祥太
(72)【発明者】
【氏名】明石 彩
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK07C
4F100AK25B
4F100AK25D
4F100AK25E
4F100AK51B
4F100AK51D
4F100AK51E
4F100AL05E
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100CA13D
4F100CA30C
4F100CB00B
4F100EH46
4F100EJ65B
4F100EJ86
4F100HB00D
4F100JA13C
4F100JB16C
4F100JC00B
4F100JC00C
4F100JC00D
4F100JC00E
4F100JL10D
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、化粧シートとしての用途に適した物性を維持することの可能な化粧シート及び化粧材を提供する。
【解決手段】プライマー層5と熱可塑性樹脂層2と表面保護層4とがこの順に積層された積層体を有し、熱可塑性樹脂層2は、ナノサイズの核剤が添加された植物由来のポリプロピレンを含む樹脂層であり、プライマー層5及び表面保護層4は、それぞれ植物由来成分を含む。これにより、化石燃料の使用量を削減しつつ、化粧シートとしての用途に適した物性を維持することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマー層と熱可塑性樹脂層と表面保護層とがこの順に積層された積層体を有し、
前記熱可塑性樹脂層は、ナノサイズの核剤が添加された植物由来のポリプロピレンを含む樹脂層であり、
前記プライマー層及び前記表面保護層は、それぞれ植物由来成分を含むことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層と前記表面保護層との間に絵柄層を有し、
当該絵柄層は、着色剤と植物由来成分とを含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記絵柄層は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシン(メタ)アクリレートとを少なくとも含有する樹脂組成物を含み、当該樹脂組成物に含有される前記ポリオールと前記イソシアネート化合物と前記ヒドロキシン(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つは、植物由来成分を含むことを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記表面保護層は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシン(メタ)アクリレートとを少なくとも含有する樹脂組成物を含み、当該樹脂組成物に含有される前記ポリオールと前記イソシアネート化合物と前記ヒドロキシン(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つは、植物由来成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記植物由来のポリプロピレンは植物由来のプロピレンを含むモノマーが重合して形成され、
前記熱可塑性樹脂層は、前記植物由来のポリプロピレンと、化石燃料由来のプロピレンを含むモノマーが重合して形成される化石燃料由来のポリプロピレンと、を含有する樹脂組成物を含み、且つ前記植物由来のプロピレンを、前記樹脂組成物全体の質量に対して5質量%以上含み、
さらに、前記熱可塑性樹脂層は、密度が0.9g/cm3以上1.3g/cm3以下の範囲内であり、厚みが50μm以上200μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記ナノサイズの核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記ナノサイズの核剤の添加量は、前記ナノサイズの核剤が添加された植物由来のポリプロピレンの質量を基準として、500ppm以上2000ppm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記プライマー層は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシン(メタ)アクリレートとを少なくとも含有する樹脂組成物を含み、当該樹脂組成物に含有される前記ポリオールと前記イソシアネート化合物と前記ヒドロキシン(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つは、植物由来成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項9】
基材と、
当該基材の一方の面に積層された請求項1又は請求項2に記載に記載の化粧シートと、を有することを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及び化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル製の化粧シートに代わる化粧シートとして、例えば、特許文献1に開示されているように、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、環境問題の背景から、化粧シートの材料を、従来の材料である石油由来の材料から、植物由来の材料へ代える要求がある。しかしながら、化粧シートに用いることが可能な植物由来の材料として、例えばバイオマスポリエチレン等のバイオマスポリオレフィンを用いると、化粧シートとしての用途に適した物件の維持が困難であるという問題があった。
本発明は、上述した問題点に鑑み、植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、化粧シートとしての用途に適した物性を維持することの可能な化粧シート及び化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、プライマー層と熱可塑性樹脂層と表面保護層とがこの順に積層された積層体を有し、熱可塑性樹脂層は、ナノサイズの核剤が添加された植物由来のポリプロピレンを含む樹脂層であり、プライマー層及び表面保護層は、それぞれ植物由来成分を含む化粧シートが提供される。
また、本発明の他の態様によれば、基材と、基材の一方の面に積層された上記態様の化粧シートと、を有する、化粧材が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することの可能な化粧シート及び化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る化粧シート及び化粧材の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0009】
以下、
図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、
図1に示すように、化粧シート1と基材6とを備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
基材6は、例えば、木質ボード類、無機質ボード類、金属板等を用いて板状に形成されており、一方の面(
図1では、上側の面)に、化粧シート1が積層されている。すなわち、化粧材10は、基材6と、基材6の一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
【0010】
〔化粧シートの構成〕
化粧シート1は、
図1に示すように、熱可塑性樹脂層2と、絵柄層3と、表面保護層4と、プライマー層5とを備える。熱可塑性樹脂層2の一方の面(
図1では、上側の面)に、絵柄層3と表面保護層4とがこの順に積層され、熱可塑性樹脂層2の他方の面にプライマー層5が設けられている。
【0011】
<熱可塑性樹脂層>
熱可塑性樹脂層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層であって、植物由来(バイオマス由来)のポリプロピレンを含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層である。熱可塑性樹脂層2は、着色されていてもよく、無色透明であってもよい。つまり、熱可塑性樹脂層2は、植物由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層であればよく、植物由来のポリプロピレン以外に、化石燃料由来のポリプロピレンを含んでいてもよい。
【0012】
ここで、環境問題の背景から、近年では化粧シートの材料として植物由来の樹脂材料を用いることが注目されている。しかしながら、化粧シートとしての用途に適した物性を維持することが可能な植物由来のプラスチックの種類は少なく、植物由来の樹脂材料を用いた化粧シートの実用化は十分に進んでいなかった。本実施形態による化粧シート1は、再生可能資源である植物由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で熱可塑性樹脂層2を形成することにより、石油資源の節約を可能にするとともに、二酸化炭素の排出量が削減できる。このため、環境へ配慮した持続可能な社会へ貢献することができる。
【0013】
以下、熱可塑性樹脂層2の組成について詳しく説明する。
(植物由来のポリプロピレン)
本実施形態において、植物由来のポリプロピレンは、植物由来のプロピレンを含むモノマーが重合してなるものである。植物由来のプロピレンは、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたプロピレンを用いることができる。原料であるモノマーとして植物由来のプロピレンを用いているため、重合されてなるポリプロピレンは植物由来となる。
なお、ポリプロピレンの原料モノマーは、植物由来のプロピレンを100質量%含むものでなくてもよい。
植物由来のポリプロピレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のプロピレンをさらに含んでもよい。
【0014】
植物由来の原料であるプロピレンを用いることで、理論上100%植物由来の成分により熱可塑性樹脂層2を製造することが可能となる。
上記の植物由来のポリプロピレン中の植物由来のプロピレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定による植物由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリプロピレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、植物由来の炭素の割合を算出することができる。本実施形態においては、ポリプロピレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、植物由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
【0015】
Pbio(%)=PC14/105.5×100
本実施形態においては、理論上、ポリプロピレンの原料として、全て植物由来のプロピレンを用いれば、植物由来のプロピレン濃度は100%であり、植物由来のポリプロピレンのバイオマス度は100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリプロピレン中の植物由来のプロピレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリプロピレンのバイオマス度は0となる。
本実施形態において、植物由来のポリプロピレンやそのポリプロピレンを含んで構成された化粧シートは、バイオマス度が100である必要はない。
【0016】
本実施形態において、植物由来のプロピレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、プロピレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
【0017】
プロピレン重合体の重合方法は、目的とするポリプロピレンの種類、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0018】
また、植物由来のポリプロピレンとして、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンをそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0019】
(植物由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物)
本実施形態において、樹脂組成物は、上記のポリプロピレンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、植物由来のプロピレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5質量%以上99質量%未満、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の範囲内で含んでなるものである。樹脂組成物中の植物由来のプロピレンの濃度が5質量%以上99質量%未満の範囲内であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0020】
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリプロピレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、植物由来のプロピレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
【0021】
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のプロピレンをさらに含んでもよい。つまり、本実施形態においては、樹脂組成物は、植物由来のポリプロピレンと、化石燃料由来のポリプロピレンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
本実施形態によれば、植物由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物は、好ましくは5質量%以上99質量%以下、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の植物由来のポリプロピレンと、好ましくは1質量%以上95質量%以下、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の範囲内の化石燃料由来のポリプロピレンとを含むものである。このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、植物由来のプロピレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
【0022】
(造核剤ベシクル)
熱可塑性樹脂層2は、ナノサイズの造核剤を含んでいる。ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用される。熱可塑性樹脂層2は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、化粧シート1の耐傷性、耐衝撃性、耐キャスター性等を向上することができる。なお、本実施形態において、熱可塑性樹脂層2を構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていてもよい。
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下の範囲内であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
【0023】
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、ポリプロピレン樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。このため、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。この結果、結晶化度の高い高硬度のポリプロピレン層とすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制したポリプロピレン層を実現することができる。
【0024】
ここで、造核剤を単純添加した場合は、ポリプロピレン樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなると共に添加した造核剤量に対して結晶核の数が、造核剤ベシクルとして添加した場合よりも大幅に少なくなってしまうことがある。このため、ポリプロピレン樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が大きくなってしまい、曲げ加工時の割れや白化が抑制できないことがある。よって、結晶化度を高めることによる弾性率向上と加工性が両立できないことがある。
【0025】
本実施形態の化粧シート1を構成する熱可塑性樹脂層2は、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して造核剤添加量に換算して0.05質量部以上0.2質量部以下(500ppm以上2000ppm以下)の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることが好ましく、0.15質量部以上0.2質量部以下(1500ppm以上2000ppm以下)の範囲内で造核剤ベシクルが添加されていることがより好ましい。造核剤ベシクルの添加量が0.05質量部(500ppm)未満の場合、結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。また、造核剤ベシクルの添加量が0.2質量部(2000ppm)を超える場合、結晶核が過多のため球晶成長が逆に阻害され、結果的に結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。
【0026】
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
【0027】
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
【0028】
また、超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。次に、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
【0029】
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製することができる。その中でも特に超臨界逆相蒸発法が好ましい。
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。またその外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本実施形態では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
【0030】
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0031】
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ2-ビニルピリジン、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
【0032】
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしてもよい。本実施形態の化粧シート1においては、造核剤ベシクルを、リン脂質を含む外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質で構成することによって、熱可塑性樹脂層2の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
【0033】
本実施形態の化粧シート1は、「熱可塑性樹脂層2が、ベシクルに内包された造核剤を含有する」ものである。そして、造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち熱可塑性樹脂層2中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果を奏するが、その特徴を、完成された化粧シート1の状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっていて、作製した化粧シート1の状態においても、造核剤は熱可塑性樹脂層2に高分散されている。しかしながら、熱可塑性樹脂層2を構成する樹脂組成物に造核剤をベシクルの状態で添加して熱可塑性樹脂層2を作製した後の、化粧シート1の作製工程においては、通常、積層体への圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施されるが、このような処理によって、造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕や化学反応して、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高く、その外膜が破砕や化学反応している状態が化粧シート1の処理工程によってばらつくためである。そして、この造核剤が外膜で包含されていないなどの状況は、物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。このように、本実施形態は、従来に比して、熱可塑性樹脂層2に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート1の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
【0034】
熱可塑性樹脂層2は1層で形成されていてもよく、複数層で形成されていてもよいが、押し出し機の構造が複雑化し作業の煩雑さが大きくなるため、3層までが好ましい。熱可塑性樹脂層2が複数層で形成されている場合には、造核剤を全ての層に混合してもよく、いずれか一つ又は複数の層に混合されていてもよい。
【0035】
上記の樹脂組成物の製造工程において製造された樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリプロピレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下、好ましくは1質量%以上10質量%以下の範囲で添加される。
【0036】
以上のように、熱可塑性樹脂層2は、植物由来のポリプロピレンを熱可塑性樹脂層2全体に対して好ましくは5質量%以上99質量%以下、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の範囲内で含んでなるものである。熱可塑性樹脂層2中の植物由来のポリプロピレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
熱可塑性樹脂層2は、0.9g/cm3以上1.3g/cm3以下の範囲内の密度を有するものである。熱可塑性樹脂層2の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。熱可塑性樹脂層2の密度が0.9g/cm3以上であれば、熱可塑性樹脂層2の剛性を高めることができる。また、熱可塑性樹脂層2の密度が1.3g/cm3以下であれば、熱可塑性樹脂層2の透明性、押出適正や機械的強度を高めることができる。
【0037】
熱可塑性樹脂層2は、熱可塑性樹脂層2全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
熱可塑性樹脂層2の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本実施形態においては、押出成形で形成することが好ましい。
熱可塑性樹脂層2の厚さは、50μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましく、60μm以上150μm以下であることがより好ましい。
これは、植物由来のポリプロピレンからなる熱可塑性樹脂層2の厚さが50μm以上である場合、下地となるプライマー層5の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、熱可塑性樹脂層2の厚さが200μm以下である場合、熱可塑性樹脂層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
【0038】
<絵柄層>
絵柄層3は、熱可塑性樹脂層2の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。
絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
【0039】
絵柄層3は、上述の着色剤とバインダ樹脂とを含んで形成される。以下、本実施形態において絵柄層3に用いられるバインダ樹脂について、説明する
(バインダ樹脂)
絵柄層3が含有するバインダ樹脂は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0040】
また絵柄層3において、上述のウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、植物由来成分を含む。ポリオール、イソシアネート化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくともいずれかは、植物由来成分を含む。以下の説明において、植物由来成分を含むウレタン(メタ)アクリレートのことを、バイオウレタン(メタ)アクリレートとも称する。
【0041】
つまり、絵柄層3は、上述の着色剤と、バイオウレタン(メタ)アクリレートと、を含有する樹脂層である。すなわち絵柄層3は、着色剤と植物由来成分とを含んでいる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール及びイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られるものである。バイオウレタン(メタ)アクリレートにおいては、ポリオールとして植物由来のポリオールを使用するか、イソシアネートとして植物由来のイソシアネートを使用するか、或いはポリオール及びイソシアネートの何れも植物由来のものを使用することができる。
ポリオールとしては、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオール、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物であるポリエーテルポリオール、又は、多官能アルコールとカーボネートとの反応物であるポリカーボネートポリオールを用いることができる。以下、各ポリオールについて説明する。
【0042】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールが植物由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能カルボン酸の少なくともいずれか一方が植物由来成分を含む。植物由来成分を含むポリエステルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・植物由来の多官能アルコールと植物由来の多官能カルボン酸との反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールと植物由来の多官能カルボン酸との反応物
・植物由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物
植物由来の多官能アルコールとしては、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、及びサゴヤシ等の植物原料から得られる脂肪族多官能アルコールを用いることができる。植物由来の脂肪族多官能アルコールとしては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコール等があり、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。
【0043】
植物由来のポリプロピレングリコールは、植物原料を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造されたポリプロピレングリコールは、EO製造法のポリプロピレングリコールと比較し、安全性面から乳酸等の有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能であることも好ましい。
植物由来のブチレングリコールは、植物原料からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得て、これを水添することによって製造することができる。
植物由来のエチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造することができる。
【0044】
化石燃料由来の多官能アルコールとしては、1分子中に2個以上、好ましくは2~8個の水酸基を有する化合物を用いることができる。具体的には、化石燃料由来の多官能アルコールとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコールの他、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等を使用することができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0045】
植物由来の多官能カルボン酸としては、再生産可能な大豆油、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油、ひまし油等の植物由来の油、及びそれらを主体とした廃食用油等をリサイクルした再生油等の植物原料から得られる脂肪族多官能カルボン酸を用いることができる。植物由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、例えば、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、グルタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。本発明では、特に、植物由来のコハク酸又は植物由来のセバシン酸を用いることが好ましい。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0046】
化石燃料由来の多官能カルボン酸としては、脂肪族多官能カルボン酸や芳香族多官能カルボン酸を用いることができる。化石燃料由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、アジピン酸、ドデカン二酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、及びダイマー酸、ならびにそれらのエステル化合物等が挙げられる。また、化石燃料由来の芳香族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、及びピロメリット酸、ならびにそれらのエステル化合物等を用いることができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0047】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールが植物由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能イソシアネートの少なくともいずれか一方が植物由来成分を含む。植物由来成分を含むポリエーテルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・植物由来の多官能アルコールと植物由来の多官能イソシアネートとの反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールと植物由来の多官能イソシアネートとの反応物・植物由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物
植物由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明した植物由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールを用いることができる。
【0048】
植物由来の多官能イソシアネートとしては、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化し、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られたものを用いることができる。植物由来の多官能イソシアネートは、例えば、植物由来のジイソシアネートである。植物由来のジイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のジイソシアネートを得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
【0049】
1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの他の合成方法としては、ホスゲン化法やカルバメート化法が挙げられる。より具体的には、ホスゲン化方法は、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩を直接ホスゲンと反応させる方法や、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を不活性溶媒中に懸濁させてホスゲンと反応させる方法により、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。また、カルバメート化法は、まず、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩をカルバメート化し、ペンタメチレンジカルバメ
ート(PDC)を生成させた後、熱分解することにより、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。本発明において、好適に使用されるポリイソシアネートとしては、三井化学株式会社製の1,5-ペンタメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(商品名:スタビオ(登録商標))が挙げられる。
【0050】
化石燃料由来の多官能イソシアネートとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDI等の脂環式ジイソシアネート等も挙げられる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0051】
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールが植物由来成分を含む場合、ポリカーボネートポリオールとしては、植物由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来のカーボネートとの反応物を用いることができる。または、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、植物由来成分を含むカーボネートとの反応物を用いることができる。カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
植物由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明した植物由来の多官能アルコールを用いることができる。
【0052】
<イソシアネート化合物>
次に、イソシアネート化合物について説明する。植物由来成分を含むイソシアネート化合物としては、ポリエーテルポリオールにおいて説明した植物由来の多官能イソシアネートを用いることができる。
【0053】
<ヒドロキシ(メタ)アクリレート>
次に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートについて説明する。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を一つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を二つ以上有するヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
また、絵柄層3のバインダ樹脂は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートに加えて、ニトロセルロースを含んで形成されていてもよい。つまり、絵柄層3は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートを含んでいてもよいし、バイオウレタン(メタ)アクリレートに加えてニトロセルロースを含んでいてもよい。
【0055】
<ニトロセルロース>
ニトロセルロースは、セルロース骨格の水酸基の一部を硝酸エステル化したニトロ基置換体のセルロース系樹脂である。ニトロセルロース樹脂のセルロース骨格は、バイオマス材料である。ニトロセルロースとしては、一般的なニトロセルロースが支障なく利用できるが、とりわけ、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1.3~2.7個のニトロ基で置換されたものを利用することが好ましい。
ニトロセルロースには、分子量に応じてLタイプとHタイプがある。有機溶剤に対する溶解性の面からは、Lタイプのものを利用することが好ましい。
絵柄層3は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下の範囲内のバイオマス度を有する。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。絵柄層3の乾燥後の重量は、好ましくは0.1g/m2以上15g/m2以下、より好ましくは3g/m2以上10g/m2以下、さらに好ましくは6g/m2以上9g/m2以下の範囲内である。絵柄層3は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.5μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.7μm以上3μm以下の範囲内の厚さを有する。なお、このような重量や厚さを有する絵柄層3が複数設けられていてもよい。
【0056】
「バイオマス度」について、例えばバイオウレタン(メタ)アクリレートの場合には、上述のとおり、放射性炭素(C14)測定による植物由来の炭素の含有量を測定した値として求められる。
【0057】
また「バイオマス度」について、例えばニトロセルロースの場合には、出発物質であるセルロース骨格を構成するグルコース単位1個(式量=172)当たりに含まれる水酸基の数が3個であるから、この水酸基の1~3個が硝酸エステル化し(水素がニトロ基(非
バイオマス材料、式量=46)に置換され)得る。そうすると、もとのセルロース骨格が
バイオマス材料100重量%からなるとして、グルコース単位1個あたりの置換されたニトロ基の数が平均してn個の場合、ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合(重量%)は、(172-n)×100/(172-n+46n)で計算できる。
【0058】
ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合は、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1個のニトロ基で置換された場合は、約78.8重量%、2個のニトロ基で置換された場合は約64.9重量%、3個のニトロ基に置換された場合は約55.0重量%になる(上記の式での計算値)。
【0059】
また、絵柄層3の厚さが10μm以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
【0060】
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
【0061】
絵柄層3の絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と熱可塑性樹脂層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
【0062】
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
【0063】
<表面保護層>
表面保護層4は、絵柄層3の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
表面保護層4は、絵柄層3のバインダ樹脂と同様の材料を用いて形成することができる。このため、表面保護層4の構成は、着色剤を含まない点以外は、絵柄層3の構成と同様である。
表面保護層4は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレート、すなわちバイオウレタン(メタ)アクリレートで形成されている。また表面保護層4において、上述のウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、植物由来成分を含む。つまり、表面保護層4は、植物由来成分を含んでいる。
【0064】
また、表面保護層4は、絵柄層3のバインダ樹脂と同様に、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートに加えて、ニトロセルロースを含んで形成されていてもよい。つまり、表面保護層4は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートで形成されてもよいし、バイオウレタン(メタ)アクリレートにニトロセルロースを添加して形成されてもよい。
表面保護層4は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下の範囲内のバイオマス度を有する。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。表面保護層4の乾燥後の重量は、好ましくは0.1g/m2以上15g/m2以下、より好ましくは3g/m2以上10g/m2以下、さらに好ましくは6g/m2以上9g/m2以下の範囲内である。表面保護層4は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは3μm以上10μm以下、さらに好ましくは6μm以上9μm以下の範囲内の厚さを有する。
【0065】
また、表面保護層4には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層4には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
【0066】
<プライマー層>
プライマー層5は、下地となる層であって、熱可塑性樹脂層2と基材6との密着性・耐食性を向上させるための層である。
プライマー層5は、熱可塑性樹脂層2の他方の面(
図1では、下側の面)に積層され、植物由来成分を含んでいる。
プライマー層5は、0.3μm以上3μm以下の範囲内の厚みを有し、塗布量が0.3g/m
3以上3.0g/m
3の範囲内であることが好ましい。また、プライマー層5は、主となる樹脂成分に対して、シリカ等といった無機物が、重量比で1.0%以上60.0%以下の範囲内で含有された材料を使用することが好ましい。
プライマー層5の樹脂としては、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレート、すなわちバイオウレタン(メタ)アクリレートで形成されている。またプライマー層5において、上述のウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、植物由来成分を含む。
【0067】
なお、プライマー層5には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合してもよい。
また、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0068】
〔本実施形態の効果〕
本実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)プライマー層5と熱可塑性樹脂層2と表面保護層4とがこの順に積層された積層体を有し、熱可塑性樹脂層2は、植物由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物を用いて形成された樹脂層であり、この樹脂組成物にはナノサイズの核剤が添加されている。また、プライマー層5及び表面保護層4は、それぞれ植物由来成分を含む。
これにより、植物由来の材料を用いることで、化石燃料の使用量を削減した環境配慮型であり、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することの可能な化粧シート1を提供することができる。
また、従来の化石燃料から得られる原料から製造された化粧シートと物性面で遜色ない化粧シート1を提供することができる。
また、化粧シートのバイオマス度を高めることができ、二酸化炭素の排出量を削減し、環境に優しい持続可能な社会へ貢献することができる。
(2)熱可塑性樹脂層2と表面保護層4との間に絵柄層3を有し、絵柄層3は、着色剤と植物由来成分とを含む。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減しつつ、より意匠性の高い化粧シートを提供することができる。
(3)絵柄層3は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシン(メタ)アクリレートとを少なくとも含有する樹脂組成物を含み、この樹脂組成物に含有されるポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシン(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つは、植物由来成分を含む。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を確実に削減した環境配慮型であり、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を確実に維持することの可能な化粧シート1を提供することができる。
(4)表面保護層4は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシン(メタ)アクリレートとを少なくとも含有する樹脂組成物を含み、この樹脂組成物に含有されるポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシン(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つは、植物由来成分を含む。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を確実に削減した環境配慮型であり、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を確実に維持することの可能な化粧シート1を提供することができる。
(5)植物由来のポリプロピレンは植物由来のプロピレンを含むモノマーが重合して形成され、熱可塑性樹脂層2は、植物由来のポリプロピレンと、化石燃料由来のプロピレンを含むモノマーが重合して形成される化石燃料由来のポリプロピレンと、を含有する樹脂組成物を含み、さらに植物由来のプロピレンを、熱可塑性樹脂層2全体の質量に対して5質量%以上含み、密度が0.9g/cm3以上1.3g/cm3以下の範囲内であり、厚みが50μm以上200μm以下の範囲内である。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減した環境配慮型であり、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することができる化粧シート1を提供することができる。
(6)熱可塑性樹脂層2に添加されたナノサイズの核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包されている。
これにより、熱可塑性樹脂層2の樹脂層中への造核剤の分散性を飛躍的に向上させることができる。
(7)ナノサイズの核剤の添加量は、このナノサイズの核剤が添加された植物由来のポリプロピレンを含む樹脂層の質量の、500ppm以上2000ppm以下の範囲内である。
これにより、結晶化度を十分に向上させることができる。
(8)プライマー層5は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシン(メタ)アクリレートとを少なくとも含有する樹脂組成物を含み、樹脂組成物に含有されるポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシン(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つは、植物由来成分を含む。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減した環境配慮型であり、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することができる化粧シート1を提供することができる。
(9)化粧材10は、基材6と、基材6の一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
これにより、植物由来の材料を用いることで化石燃料の使用量を削減し、且つ化粧シートとしての用途に適した物性を維持することができる化粧材10を提供することができる。
【0069】
<変形例>
上記実施形態においては、化粧材10の構成を、基材6の一方の面に積層された化粧シート1を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、化粧材10の構成を、基材6の一方の面に加え、基材6の他方の面(
図1では、下側の面)にも、化粧シート1を備える構成としてもよい。
【実施例0070】
次に、実施形態を参照しつつ、以下、実施例1~9の化粧シートと、比較例1の化粧シートについて説明する。
【0071】
(実施例1)
厚みが120μmの熱可塑性樹脂層2の一方の面に、コロナ放電処理を施した後、この熱可塑性樹脂層2の一方の面に、木目柄の絵柄層3を設けた。また、熱可塑性樹脂層2と化粧材用の基材6との接着性を向上させる目的で、熱可塑性樹脂層2の他方の面にコロナ放電処理を施した後、この熱可塑性樹脂層2の他方の面に植物由来のポリエステル系樹脂からなるプライマー層5を形成した。
【0072】
その後、表面保護の目的で、表面保護層4を絵柄層3の上に積層した。これにより、実施例1の化粧シート1を得た。
プライマー層5は、熱可塑性樹脂層2の絵柄層3とは反対の面に、植物由来のプライマーを1.2g/m2(無機材含有率9%)を塗布し、乾燥させた後、このプライマー層5側に基材6としてMDF(Medium density fiberboard:中質繊維板)を貼り合わせることで化粧材10を得た。
実施例1では、熱可塑性樹脂層2として、植物由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物を用い、植物由来のポリプロピレンの質量を基準として、1500ppmとなるように、核剤として、リケマスターCN-002を添加して形成した。
【0073】
また、絵柄層3として、植物由来のポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂化合物を5質量%以上含むインキを用いて木目柄の絵柄層3を設けた。
表面保護層4は、植物由来のポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂化合物を5質量%以上含む表面保護層用樹脂を塗布し、乾燥硬化させて形成した。
【0074】
(実施例2)
熱可塑性樹脂層2の厚みを50μmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例2の化粧材10を得た。
(実施例3)
熱可塑性樹脂層2の厚みを200μmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例3の化粧材10を得た。
(実施例4)
熱可塑性樹脂層2に添加する核剤としての、リケマスターCN-002を、植物由来のポリプロピレンの質量を基準として500ppmとなるようにした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例4の化粧材10を得た。
(実施例5)
熱可塑性樹脂層2に添加する核剤としての、リケマスターCN-002を、植物由来のポリプロピレンの質量を基準として2000ppmとなるようにした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例5の化粧材10を得た。
(実施例6)
熱可塑性樹脂層の厚みを40μmに変更した。これ以外は、実施例1と同様にして実施例6の化粧材10を得た。
(実施例7)
熱可塑性樹脂層の厚みを350μmに変更した。これ以外は、実施例1と同様にして実施例7の化粧材10を得た。
(実施例8)
熱可塑性樹脂層に添加する核剤としての、リケマスターCN-002を、植物由来のポリプロピレンの質量を基準として50ppmとなるようにした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例8の化粧材10を得た。
(実施例9)
熱可塑性樹脂層に添加する核剤としての、リケマスターCN-002を、植物由来のポリプロピレンの質量を基準として2200ppmとなるようにした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例9の化粧材10を得た。
【0075】
(比較例1)
プライマー層の材料を石油由来とし、熱可塑性樹脂層の材料を石油由来PP(ポリプロピレン)とし、絵柄層の材料をウレタン系のインキに変更し、表面保護層の材料を石油由来の材料に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして比較例1の化粧材を得た。
【0076】
(性能評価、評価結果)
実施例1~9の化粧材10と、比較例1の化粧材に対し、それぞれ、意匠性、鉛筆硬度、生産性、隠蔽性、後加工性、石油依存性を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。評価結果を表1に示す。
【0077】
<意匠性>
各実施例・比較例の化粧材に備わる絵柄層の絵柄がはっきりし、よれが生じていない状態であるもの(予定した絵柄がはっきりと視認できるもの)を「〇」と評価し、絵柄に若干のよれがあるもの及び絵柄層に一部欠けが確認されたものを「×」と評価した。
なお、本実施例では、「○」を合格とした。
【0078】
<鉛筆硬度>
表面強度の評価としてJIS K5600-5-4 引っかき硬度(鉛筆法)に準じた試験を行った。
各実施例・比較例の化粧シートに対して鉛筆に荷重を付加した状態でスライドさせ、表
面保護層に凹み(傷)が形成されるか観察をした。
化粧シートとしての耐傷性を十分有しているものを「〇」と評価し、耐傷性が若干劣る
ものを「△」とし、耐傷性が劣るものを「×」と評価した。そして、硬度が4B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「○」と評価した。また、5Bの場合に表面保護層に若干の傷が生じた場合を「△」、硬度が5B未満の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「○」を合格とした。
【0079】
<生産性(押出適性)>
生産ラインにおいて、基材層を押出成形する際に支障がなかったもの(問題なく成形できるもの)を「〇」と評価し、押出成形する際に少し支障があったもの(不良が出る可能性があるもの)、及び押出成形する際に、そのほとんどに支障があったもの(不良が出る可能性が極めて高いもの)を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「○」を合格とした。
【0080】
<隠蔽性>
隠蔽性の評価は、MDF(基板)に貼り合せる前後における化粧シートの色変化を、化粧シートの隠蔽性として目視評価した。
印刷部分に色変化がほとんど確認されなかった場合を「◎」、印刷部分に著しい色変化が確認されなかった場合を「〇」、印刷部分に僅かに色変化が確認されたが品質に問題ない場合を「△」、印刷部分に著しく色変化が確認された場合を「×」と評価した。
なお、本実施例では、「◎」、「○」を合格とした。なお、評価が「△」であれば使用上問題ない。
【0081】
<後加工性(曲げ加工性)>
MDFに貼り合わせた化粧シート(即ち化粧材)を用いてVカット加工適正(曲げ加工適性)に問題がないもの(折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等がほとんど無し)を「〇」と評価し、Vカット加工適正にほとんど問題がないもの(折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等が少し生じたもの)を「△」と評価し、Vカット加工適正に問題があったもの(折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等が多く生じたもの)を「×」と評価した。
本実施例では、「○」を合格とした。なお、評価が「△」であれば、使用上問題はない。
【0082】
<石油依存性>
化粧シートを作成する際の化石燃料への依存性を、相対的に「高」「中」「低」で評価した。
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果を、表1に示す。
【0083】
【0084】
表1に示すように、実施例1~5の化粧材10は、全ての評価項目に対して、従来の化石燃料由来の材料を用いた比較例1の化粧材と同等の性能を示した。また、熱可塑性樹脂層2の厚みが50μm以上200μm以下の範囲外となる実施例6及び7では、隠蔽性及び後加工性の点で評価が低下するものの、その他の項目については従来の化石燃料由来の材料を用いた比較例1の化粧材と同等の性能を示した。また、熱可塑性樹脂層2の添加される核剤の添加量が、500ppm以上2000mm以下の範囲外となる実施例8及び9では、表面強度(鉛筆硬度)及び後加工性の点で評価が低下する項目があるものの、その他の項目については従来の化石燃料由来の材料を用いた化粧材と同等の性能を示した。
【0085】
なお、本発明は、例えば、以下のような構成をとることができる。
(1)
プライマー層と熱可塑性樹脂層と表面保護層とがこの順に積層された積層体を有し、
前記熱可塑性樹脂層は、ナノサイズの核剤が添加された植物由来のポリプロピレンを含む樹脂層であり、
前記プライマー層及び前記表面保護層は、それぞれ植物由来成分を含むことを特徴とする化粧シート。
(2)
前記熱可塑性樹脂層と前記表面保護層との間に絵柄層を有し、
当該絵柄層は、着色剤と植物由来成分とを含むことを特徴とする上記(1)に記載の化粧シート。
(3)
前記絵柄層は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシン(メタ)アクリレートとを少なくとも含有する樹脂組成物を含み、当該樹脂組成物に含有される前記ポリオールと前記イソシアネート化合物と前記ヒドロキシン(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つは、植物由来成分を含むことを特徴とする上記(2)に記載の化粧シート。
(4)
前記表面保護層は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシン(メタ)アクリレートとを少なくとも含有する樹脂組成物を含み、当該樹脂組成物に含有される前記ポリオールと前記イソシアネート化合物と前記ヒドロキシン(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つは、植物由来成分を含むことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の化粧シート。
(5)
前記植物由来のポリプロピレンは植物由来のプロピレンを含むモノマーが重合して形成され、
前記熱可塑性樹脂層は、前記植物由来のポリプロピレンと、化石燃料由来のプロピレンを含むモノマーが重合して形成される化石燃料由来のポリプロピレンと、を含有する樹脂組成物を含み、且つ前記植物由来のプロピレンを、前記樹脂組成物全体の質量に対して5質量%以上含み、
さらに、前記熱可塑性樹脂層は、密度が0.9g/cm3以上1.3g/cm3以下の範囲内であり、厚みが50μm以上200μm以下の範囲内であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか一項に記載の化粧シート。
(6)
前記ナノサイズの核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包されていることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の化粧シート。
(7)
前記ナノサイズの核剤の添加量は、前記ナノサイズの核剤が添加された植物由来のポリプロピレンの質量を基準として、500ppm以上2000ppm以下の範囲内であることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の化粧シート。
(8)
前記プライマー層は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシン(メタ)アクリレートとを少なくとも含有する樹脂組成物を含み、当該樹脂組成物に含有される前記ポリオールと前記イソシアネート化合物と前記ヒドロキシン(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つは、植物由来成分を含むことを特徴とする上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の化粧シート。
(9)
基材と、
当該基材の一方の面に積層された上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の化粧シートと、を有することを特徴とする化粧材。