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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093252
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】バイオマス燃料生成システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/70 20220101AFI20240702BHJP
   F26B 11/14 20060101ALI20240702BHJP
   C02F 11/06 20060101ALI20240702BHJP
   C02F 11/13 20190101ALI20240702BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20240702BHJP
   B09B 3/38 20220101ALI20240702BHJP
【FI】
B09B3/70
F26B11/14
C02F11/06 B ZAB
C02F11/13
B09B3/40
B09B3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209501
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】502258598
【氏名又は名称】株式会社石橋
(71)【出願人】
【識別番号】518174606
【氏名又は名称】WEF技術開発株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000242644
【氏名又は名称】北陸電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517184141
【氏名又は名称】ADMIEXCOエンジン設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】別森 敬一
(72)【発明者】
【氏名】青山 章
(72)【発明者】
【氏名】宮内 正裕
(72)【発明者】
【氏名】山田 真一
(72)【発明者】
【氏名】余川 学
【テーマコード(参考)】
3L113
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
3L113AA08
3L113AB03
3L113AC22
3L113AC58
3L113BA36
3L113DA01
4D004AA01
4D004AB01
4D004BA03
4D004CA04
4D004CA24
4D004CA36
4D004CA42
4D004CB21
4D004CB31
4D004CC02
4D059AA01
4D059AA03
4D059AA07
4D059BC01
4D059BD11
4D059BD21
4D059BJ01
4D059BJ02
4D059BK01
4D059CA10
4D059CA16
4D059CB06
4D059CC03
4D059DA70
(57)【要約】
【課題】バイオマスを原料とする良質なバイオマス燃料を、容易に且つ効率よく生成できるシンプルな構成のバイオマス燃料生成システムを提供する。
【解決手段】内容物を撹拌する機能を備えた撹拌室22を有し、撹拌室22内にバイオマス12が投入される乾燥キルン16を備える。外部から搬入された空気の中に活性酸素を発生させて活性酸素含有空気32を生成し、撹拌室22に送り込む活性酸素発生装置18を備える。撹拌室22の外壁を加熱することによって、撹拌室22内のバイオマス12を加熱する加熱装置20を備える。バイオマス12を、活性酸素含有空気32に接触させることによって酸化させて分解し、さらに乾燥させてバイオマス燃料14を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を撹拌する機能を備えた撹拌室を有し、前記撹拌室内にバイオマスが投入される乾燥キルンと、
外部から搬入された空気の中に活性酸素を発生させて活性酸素含有空気を生成し、前記撹拌室に送り込む活性酸素発生装置と、
前記撹拌室の外壁を加熱することによって、前記撹拌室内の前記バイオマスを加熱する加熱装置とを備え、
前記バイオマスを、前記活性酸素含有空気に接触させることによって酸化させて分解し、さらに乾燥させてバイオマス燃料を生成することを特徴とするバイオマス燃料生成システム。
【請求項2】
前記撹拌室内に発生したガスを吸引することによって搬出し、搬出した前記ガスを貯液槽内のスクラバ液に通過させて冷却し浄化して排出するスクラバ装置を備える請求項1記載のバイオマス燃料生成システム。
【請求項3】
前記スクラバ装置の前記スクラバ液は、前記ガスを外部から密閉して排気のみを可能にする封止弁である請求項2記載のバイオマス燃料生成システム。
【請求項4】
前記加熱装置は、熱を低温側から高温側へ移動させるヒートポンプ機構と、前記ヒートポンプ機構により移動した熱で前記撹拌室の外壁を加熱する撹拌室加熱機構とで構成され、
前記スクラバ装置は、前記ヒートポンプ機構の一部として動作するものであり、
前記ヒートポンプ機構は、前記貯液槽内の前記スクラバ液の熱が熱源となり、前記貯液槽内に設置された蒸発器に冷媒が通過することによって前記スクラバ液の熱が前記冷媒に移動し、前記蒸発器を通過した前記冷媒が圧縮機で圧縮されて昇温され、昇温された前記冷媒の熱が凝縮器で他の熱媒体に移動し、前記凝縮器を通過した前記冷媒が膨張弁で減圧されて冷却され、再び前記蒸発器に送られるよう構成され、
前記撹拌室加熱機構は、前記凝縮器を通過した前記熱媒体が前記乾燥キルンに送られ、前記熱媒体の熱が前記撹拌室に移動し、熱を奪われた前記熱媒体が再び前記凝縮器に送られるよう構成されている請求項2又は3記載のバイオマス燃料生成システム。
【請求項5】
前記蒸発器に接続された冷媒搬送用の配管の、前記貯水槽の外に位置する部分で空気を冷却することによって乾燥空気を生成し、前記活性酸素発生装置に搬送する除湿装置が設けられ、
前記活性酸素発生装置は、前記除湿装置から搬入された前記乾燥空気中に前記活性酸素を発生させる請求項4記載のバイオマス燃料生成システム。
【請求項6】
前記加熱装置は、熱を低温側から高温側へ移動させるヒートポンプ機構と、前記ヒートポンプ機構により移動した熱で前記撹拌室の外壁を加熱する撹拌室加熱機構とで構成され、
前記ヒートポンプ機構は、冷媒が蒸発器、圧縮機、凝縮器及び膨張弁を順に循環し、前記圧縮機で昇温された前記冷媒の熱が前記凝縮器で他の熱媒体に移動するように構成され、
前記撹拌室加熱機構は、前記凝縮器を通過した前記熱媒体が前記乾燥キルンに送られ、前記熱媒体の熱が前記撹拌室に移動し、熱を奪われた前記熱媒体が再び前記凝縮器に送られるよう構成されている請求項1又は2記載のバイオマス燃料生成システム。
【請求項7】
前記蒸発器で空気を冷却することによって乾燥空気を生成し、前記活性酸素発生装置に搬送する除湿装置が設けられ、
前記活性酸素発生装置は、前記除湿装置から搬入された前記乾燥空気中に前記活性酸素を発生させる請求項6記載のバイオマス燃料生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥、食品残渣、畜糞、水草等の廃棄物やその他のバイオマスを原料としてバイオマス燃料を生成するバイオマス燃料生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスは、地球温暖化防止に貢献できる有望な化石燃料代替資源であるが、これをエネルギー化する技術は開発途上にある。特に、高含水のバイオマス系廃棄物等のバイオマスからバイオマス燃料を生成する場合、バイオマスの含水率を燃料として実用可能なレベルまで低下させる必要があるところ、この工程を効率よく低コストに行うことが課題になっている。
【0003】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、所定の活性酸素発生装置で活性酸素を発生させ、バイオマスと活性酸素とを接触させることによってバイオマスの細胞膜や細胞壁を酸化させ分解する分解処理方法があった。この分解処理方法によれば、バイオマスに含まれる水分を従来よりも短い時間で蒸発させて除去することが可能になり、活性酸素の接触時間を調整して分解処理を停止することによって、バイオマスが完全分解(水、二酸化炭素、無機残渣)することなく、乾燥燃料又は乾燥肥料等を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-80149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された分解処理方法は汎用性が高く優れた方法であるが、バイオマスからバイオマス燃料を生成する場合の、実用的で具体性のあるシステム構成については開示していない。
【0006】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、バイオマスを原料とする良質なバイオマス燃料を、容易に且つ効率よく生成できるシンプルな構成のバイオマス燃料生成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容物を撹拌する機能を備えた撹拌室を有し、前記撹拌室内にバイオマスが投入される乾燥キルンと、外部から搬入された空気の中に活性酸素を発生させて活性酸素含有空気を生成し、前記撹拌室に送り込む活性酸素発生装置と、前記撹拌室の外壁を加熱することによって、前記撹拌室内の前記バイオマスを加熱する加熱装置とを備え、前記バイオマスを、前記活性酸素含有空気に接触させることによって酸化させて分解し、さらに乾燥させてバイオマス燃料を生成するバイオマス燃料生成システムである[請求項1]。
【0008】
前記撹拌室内に発生したガスを吸引することによって搬出し、搬出した前記ガスを貯液槽内のスクラバ液に通過させて冷却し浄化して排出するスクラバ装置を備える構成にすることが好ましい[請求項2]。前記スクラバ装置の前記スクラバ液は、前記ガスを外部から密閉して排気のみを可能にする封止弁としても機能するものである[請求項3]。
【0009】
前記加熱装置は、熱を低温側から高温側へ移動させるヒートポンプ機構と、前記ヒートポンプ機構により移動した熱で前記撹拌室の外壁を加熱する撹拌室加熱機構とで構成され、前記スクラバ装置は、前記ヒートポンプ機構の一部として動作するものであり、
前記ヒートポンプ機構は、前記貯液槽内の前記スクラバ液の熱が熱源となり、前記貯液槽内に設置された蒸発器に冷媒が通過することによって前記スクラバ液の熱が前記冷媒に移動し、前記蒸発器を通過した前記冷媒が圧縮機で圧縮されて昇温され、昇温された前記冷媒の熱が凝縮器で他の熱媒体に移動し、前記凝縮器を通過した前記冷媒が膨張弁で減圧されて冷却され、再び前記蒸発器に送られるよう構成され、
前記撹拌室加熱機構は、前記凝縮器を通過した前記熱媒体が前記乾燥キルンに送られ、前記熱媒体の熱が前記撹拌室に移動し、熱を奪われた前記熱媒体が再び前記凝縮器に送られるよう構成されることが好ましい[請求項4]。
【0010】
さらに、前記蒸発器に接続された冷媒搬送用の配管の、前記貯水槽の外に位置する部分で空気を冷却することによって乾燥空気を生成し、前記活性酸素発生装置に搬送する除湿装置が設けられ、前記活性酸素発生装置は、前記除湿装置から搬入された前記乾燥空気中に前記活性酸素を発生させる構成にすることが好ましい[請求項5]。
【0011】
前記加熱装置は、熱を低温側から高温側へ移動させるヒートポンプ機構と、前記ヒートポンプ機構により移動した熱で前記撹拌室の外壁を加熱する撹拌室加熱機構とで構成され、
前記ヒートポンプ機構は、冷媒が蒸発器、圧縮機、凝縮器及び膨張弁を順に循環し、前記圧縮機で昇温された前記冷媒の熱が前記凝縮器で他の熱媒体に移動するように構成され、
前記撹拌室加熱機構は、前記凝縮器を通過した前記熱媒体が前記乾燥キルンに送られ、前記熱媒体の熱が前記撹拌室に移動し、熱を奪われた前記熱媒体が再び前記凝縮器に送られるよう構成されることが好ましい[請求項6]。
【0012】
さらに、前記蒸発器で空気を冷却することによって乾燥空気を生成し、前記活性酸素発生装置に搬送する除湿装置が設けられ、前記活性酸素発生装置は、前記除湿装置から搬入された前記乾燥空気中に前記活性酸素を発生させる構成にすることが好ましい[請求項7]。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバイオマス燃料生成システムは、原料であるバイオマスを、乾燥キルンの撹拌室の中で活性酸素含有空気に接触させることによって酸化させて分解し、バイオマス中の水分の蒸発を容易にし、撹拌室の外壁を加熱装置で加熱して乾燥させるというシンプルで熱効率のよい独特な構成であり、バイオマス燃料を効率よく短時間で生成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のバイオマス燃料生成システムの一実施形態を示すシステム構成図である。
図2】活性酸素の有り無しによる下水汚泥の含水率の低下速度の差を評価する実験を行った時の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のバイオマス燃料生成システムの一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態のバイオマス燃料生成システム10は、原料である下水汚泥等の高含水のバイオマス系廃棄物やその他の生物系原料であるバイオマス12からバイオマス燃料14を生成するシステムである。
【0016】
図1に示すように、バイオマス燃料生成システム10は、基本的な構成として、乾燥キルン16、活性酸素発生装置18、及び加熱装置20を備えている。
【0017】
乾燥キルン16は、内容物を撹拌するスクリュー22aやパドルを備えた2連式の撹拌室22を有している。スクリュー22aやパドルは、各々の撹拌室22の側方に設けられた駆動モータ23により回転駆動される。撹拌室22は、長さ方向の2つの端部にロータリー弁24a,24bが各々設けられ、投入口26から投入されたバイオマス12がロータリー弁24aを通じて撹拌室22に搬入され、生成されたバイオマス燃料14がロータリー弁24bを通じて搬出口28から搬出される構造になっている。
【0018】
活性酸素発生装置18は、外部から搬入された空気30の中に活性酸素を発生させて活性酸素含有空気32を生成し、乾燥キルン16の撹拌室22に送り込む装置である。活性酸素発生装置18は、例えば、上記の特許文献1に開示された活性酸素発生装置を使用するとよい。活性酸素含有空気32は、撹拌室22のバイオマス投入口25の近傍、または撹拌室22の途中、好ましくは撹拌室22の上流側に送気されればよい。従って、活性酸素含有空気32の送気用の配管は、バイオマス投入口25近傍のバイオマス投入配管や撹拌室22内に連通して接続されている。また、加熱装置20は、乾燥キルン16の撹拌室22を、外壁を介して加熱することによって、撹拌室22内のバイオマス12を加熱する装置である。
【0019】
バイオマス燃料生成システム10は、乾燥キルン16、活性酸素発生装置18及び加熱装置20が協働し、高含水率のバイオマス12の細胞壁や細胞膜を、活性酸素含有空気32に接触させることによって分解し、バイオマス12の水分滲出及び蒸発を容易にして加熱し、バイオマス12を乾燥させてバイオマス燃料14を生成する機能を備える。
【0020】
良質なバイオマス燃料14を得るためには、例えば下水汚泥が原料の場合、原料のバイオマス12の含水率を約20%以下に低下させる必要があり、投入エネルギーに対して効率よく乾燥させるためには、バイオマス12の細胞壁や細胞膜の内部に保持されて乾燥の妨げとなる水分を効率よく放出させることが課題になる。バイオマス燃料生成システム10では、バイオマス12を、活性酸素含有空気32に接触させることによってバイオマス12の細胞膜や細胞壁を酸化させて分解する。つまり、バイオマス12の細胞壁や細胞膜を切断して内部の水分を滲出しやすくするので、非常に効率よく水分を蒸発させ乾燥させることができる。
【0021】
バイオマス12に対する活性酸素含有空気32の量は、バイオマス12の材料により異なるが、1kgのバイオマス12に対して1m~3m程度送り込むとよい。なお処理に必要な活性酸素の量は、バイオマス12と活性酸素の接触状態等によって異なるもので、撹拌室22でのバイオマス12の撹拌状態もパラメータとなり、スクリュー22aやパドルの形状、駆動モータ23による回転数等の種々の条件を適切に選択することにより、効率的な乾燥処理が可能となる。
【0022】
発明者らは、小型の簡易型乾燥キルンに下水汚泥[約54kg、含水率76%]を投入し、乾燥キルンに活性酸素を含まない空気[温度65~70℃]を送った時と、乾燥キルンに活性酸素を含む空気[温度65~70℃]を送った時の、下水汚泥の含水率の低下速度の差を評価する実験を行った。このときに送り込む上記の各空気の量は、1kgのバイオマス12に対して両方とも同条件で1m~3m程度の割合で送り込んだ。その結果、図2に示すように、活性酸素を含まない空気を送った時は、含水率が35.8%まで低下するのに約30時間かかったのに対し、活性酸素を含む空気を送った時は、約22時間で含水率が33%まで低下した。さらに、約25時間で、燃料として利用可能な含水率20%まで低下した。この実験結果からも、活性酸素が作用することによって、含水率の低下速度が格段に向上し、効率よくバイオマス燃料14を製造することができることが分かった。
【0023】
次に、図1の中のスクラバ装置34について説明する。スクラバ装置34は、吸引排気用ファン36と、スクラバ液38が入れられた貯留槽40とを備え、撹拌室22内に発生した高温高湿度ガス42を吸引することによって搬出し、高温高湿度ガス42を貯液槽40内のスクラバ液38に通過させて冷却し浄化し、高湿度清浄ガス44を大気中に排出する装置である。
【0024】
スクラバ液38は例えば水であり、スクラバ液38に高温高湿度ガス42を通過させることによって、高温高湿度ガス42に含まれる粉塵等の異物や臭いを取り除くことができ、粉塵等は、貯液槽40の底部から沈殿物46として回収される。スクラバ装置34のスクラバ液38は、高温高湿度ガス42を外部から密閉して吸引排気用ファン36からの排気のみを可能にする封止弁としても機能する。
【0025】
また、吸引排気用ファン36が撹拌室22内の高温高湿度ガス42を吸引して搬出するので、撹拌室22内の気圧が低下し、バイオマス12に含まれる水分の蒸発をより促進させる。さらに、高温高湿度ガス42の熱(排熱)がスクラバ液38で回収され、後述する加熱装置20で再利用されるので、高い熱効率を得ることができる。
【0026】
次に、加熱装置20の詳細な構成を説明する。加熱装置20は、熱を低温側から高温側へ移動させるヒートポンプ機構48と、ヒートポンプ機構48が発生させた熱で乾燥キルン16の撹拌室22を、外壁を介して加熱する撹拌室加熱機構50とで構成され、スクラバ装置34は、ヒートポンプ機構48の一部として動作する。
【0027】
ヒートポンプ機構48は、貯液槽40内のスクラバ液38[温度は例えば26~30℃程度]が熱源となる。貯留槽40内にはコイル状に形成された蒸発器52が設置され、蒸発器52にフロン等の冷媒54[蒸発温度は例えば18℃程度]が通過することによってスクラバ液38の熱が冷媒54に移動する。蒸発器52を通過した冷媒54は、圧縮機56で圧縮されて昇温され、昇温された冷媒54の熱が凝縮器58[凝縮温度は例えば58℃程度]で他の熱媒体60に移動する。凝縮器58を通過した冷媒54は、膨張弁62で減圧されて冷却され、再び蒸発器52に送られる。
【0028】
撹拌室加熱機構50は、撹拌室22の外壁を包むように取り付けられた熱媒体貯留ジャケット64と、熱媒体貯留ジャケット64及び凝縮器58を通る経路に取り付けられた、熱媒体60を循環させるポンプ66とで構成される。熱媒体60は例えば水であり、凝縮器58を通過した熱媒体60は、乾燥キルン16に送られ、熱媒体貯留ジャケット64内で熱媒体60が撹拌室22の外壁に面接触し、熱媒体60の熱[温度は例えば55℃程度]が撹拌室22の外壁に移動して、撹拌室22内のバイオマス12を効果的に加熱する。乾燥キルン16で熱を奪われた熱媒体60は、再び凝縮器58に送られる。
【0029】
このように、加熱装置20は、ヒートポンプ方式を適用した独特な構成であり、乾燥キルン16内の高温高湿度ガス42から回収した熱を再利用する等のメカニズムにより、システム全体の乾燥効率の向上に大きく寄与するものである。
【0030】
次に、図1の中の除湿装置68について説明する。除湿装置68は、蒸発器52に接続された冷媒搬送用の配管の、貯水槽40の外に位置する部分で空気を冷却することによって乾燥空気30を生成し、活性酸素発生装置18に搬送する装置である。蒸発器52は貯液槽40内のスクラバ液38の中に設置されているので、空気を蒸発器52で直接冷却することができないが、貯留槽40の外に位置する配管であっても、蒸発器52に近い部分であれば、空気を十分に冷却して除湿することができる。
【0031】
この除湿装置68を設けることによって、活性酸素発生装置18から撹拌室22に送り込まれる活性酸素含有空気32が低湿度な空気になるので、バイオマス12をさらに効率よく乾燥させることができる。
【0032】
以上説明したように、バイオマス燃料生成システム10は、原料であるバイオマス12を、乾燥キルン16の撹拌室22の中で活性酸素に接触させることによってバイオマス12の細胞壁や細胞膜を酸化させて分解し、さらに撹拌室22の外壁を加熱装置20で加熱してバイオマス12を乾燥させるというシンプルで独特な構成により、バイオマス12からバイオマス燃料14を非常に効率よく短時間で生成することができるものである。
【0033】
また、スクラバ装置34で高温高湿度ガス42を外部から密閉してスクラバ液38中を通過させ、脱臭及び除塵等を行い浄化して排気するとともに、高温高湿度ガス42とスクラバ液38とで熱交換して、高温高湿度ガス42の熱を効率的に回収して、ヒートポンプ機構48により乾燥キルン16を加熱するので、極めて高い熱効率のバイオマス燃料生成システム10を形成することができる。これにより、バイオマス燃料14を得るために投入されたエネルギーに対して、バイオマス燃料14により得られるエネルギーが従来のシステムと比較して各段に大きく、実験的には3倍のエネルギーを得ることができた。
【0034】
なお、本発明のバイオマス燃料生成システムは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、乾燥キルン16の撹拌室22は、2連式の他、3連式以上のものや、1連のものでも良く、用途等に応じて選択することができる。ロータリー弁24a,24bは、撹拌室内の気密性を保つために設置されているが、他の構造の弁などに置き換えても良く、例えばバイオマスとして下水汚泥を想定した場合には、入口側の弁をロータリー弁以外のものにしても良い。また、除湿装置68は、蒸発器52を利用して乾燥空気30を生成するものであるが、蒸発器52を利用しないタイプの除湿装置を設けてもよい。また、除湿装置は、必要に応じて無くすことも可能である。
【0035】
上記のバイオマス燃料生成システム10では、スクラバ装置34をヒートポンプ機構48の一部として動作させているが、スクラバ装置34をヒートポンプ機構から独立させ、別形態のヒートポンプ機構を設けるようにしてもよい。また、撹拌室22内の高温高湿ガス42をスクラバ装置で処理するのではなく別の手段で処理する構成に変更してもよく、その場合、スクラバ装置は無くすことができる。また、撹拌室加熱機構50は、撹拌室22の外壁を包むように熱媒体貯留ジャケット64を設け、熱媒体60の熱を伝熱面接触方式で効率よく伝える構造にしているが、熱交換を別の構造で行うことも可能である。ただし、システム全体としての乾燥効率を最大化するためには、上記実施形態のバイオマス燃料生成システム10のような構成にすることが好ましい。
【符号の説明】
【0036】
10 バイオマス燃料生成システム
12 バイオマス
14 バイオマス燃料
16 乾燥キルン
18 活性酸素発生装置
20 加熱装置
22 撹拌室
30 乾燥空気
32 活性酸素含有空気
34 スクラバ装置
38 スクラバ液
40 貯液槽
42 高温高湿度ガス
44 高湿度清浄ガス
48 ヒートポンプ機構
50 撹拌室加熱機構
52 蒸発器
54 冷媒
56 圧縮機
58 凝縮器
60 熱媒体
62 膨張弁
68 除湿装置
図1
図2