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特開2024-93258メタン製造システム及びメタン製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093258
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】メタン製造システム及びメタン製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/08 20060101AFI20240702BHJP
   C25B 3/03 20210101ALI20240702BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240702BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20240702BHJP
   C07C 1/22 20060101ALI20240702BHJP
   C25B 3/26 20210101ALI20240702BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
C25B15/08 302
C25B3/03
C25B9/00 G
C07C9/04
C07C1/22
C25B3/26
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209516
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】522503724
【氏名又は名称】株式会社アールイーウィズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 泰二
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4K021
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC90
4H006BA09
4H006BA23
4H006BA30
4H006BD10
4H006BE20
4H006BE41
4H039CA19
4H039CB20
4K021AC02
4K021BA02
4K021BB03
(57)【要約】
【課題】より低温環境でのメタン化反応を実現可能なメタン製造技術を提供する。
【解決手段】水電解装置1と、水電解装置に水を供給する水供給装置7aと、水電解装置に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置8aと、を有し、水電解装置は、電解質2に浸漬される第1電極3及び第2電極4と、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することにより、第1電極をアノード、第2電極をカソードとして機能させる第1電源6とを備え、第2電極に向けて、キャビテーションによる気泡10を発生させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解装置と、
前記水電解装置に水を供給する水供給装置と、
前記水電解装置に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、を有し、
前記水電解装置は、電解質に浸漬される第1電極及び第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することにより、前記第1電極をアノード、前記第2電極をカソードとして機能させる第1電源とを備え、
前記第2電極に向けて、キャビテーションによる気泡を発生させるメタン製造システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記二酸化炭素供給装置からの二酸化炭素が、前記第2電極に向けて高速流体として供給されることによりキャビテーションが発生するメタン製造システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記二酸化炭素供給装置からの二酸化炭素は気体として前記水電解装置に供給され、
前記二酸化炭素を前記水電解装置に供給する配管中に圧縮機を備えるメタン製造システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記第2電極にメタン化反応を促進する触媒が配置されるメタン製造システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2電極は電極触媒であるメタン製造システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記水電解装置は、電解質に浸漬される第1誘導電極及び第2誘導電極と、前記第1誘導電極と前記第2誘導電極との間に電圧を印加する第2電源とを備え、
前記第1誘導電極は、前記第1誘導電極と前記第2電極により前記第1電極を挟むように配置され、
前記第2誘導電極は、前記第1電極と前記第2誘導電極により前記第2電極を挟むように配置され、
前記第2電源が前記第2誘導電極に対して前記第1誘導電極に印加する電圧V2の極性は、前記第1電源が前記第2電極に対して前記第1電極に印加する電圧V1の極性と等しく、
前記第2電源による前記電圧V2の印加によっては前記水電解装置において水電解反応は開始されず、前記第2電源による前記電圧V2及び前記第1電源による前記電圧V1の印加により前記水電解装置において水電解反応が開始されるメタン製造システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1電源は、高周波パルス電圧を印加する高周波パルス電源であるメタン製造システム。
【請求項8】
水電解装置と、水供給装置と、二酸化炭素供給装置と、を備えるメタン製造システムによりメタンを製造するメタン製造方法であって、
前記水電解装置は、電源と電解質に浸漬される第1電極及び第2電極とを備え、
前記水供給装置は、前記水電解装置に水を供給し、
前記二酸化炭素供給装置は、前記水電解装置に二酸化炭素を供給し、
前記電源は、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することにより、前記第1電極をアノード、前記第2電極をカソードとして機能させ、
前記水電解装置において、前記第2電極に向けて、キャビテーションによる気泡が発生させられるメタン製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記二酸化炭素供給装置からの二酸化炭素が、前記第2電極に向けて高速流体として供給されることによりキャビテーションが発生するメタン製造方法。
【請求項10】
請求項8において、
前記第2電極にメタン化反応を促進する触媒が配置されるメタン製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン製造システム及びメタン製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラルの実現に向け、種々の技術開発が行われている。二酸化炭素と水素から天然ガスの主成分であるメタンを合成するメタネーション技術は、その有望技術の一つに位置付けられている。
【0003】
現在、早期の実現化に向けて開発が進められているメタネーション技術は、サバティエ反応を利用するものである。サバティエ反応では、ニッケル等を触媒として、高温高圧下で気体の水素(H2)と二酸化炭素(CO2)とを反応させ、メタン(CH4)と水(H2O)とを生成する。また、サバティエ反応を促進するための各種の触媒の開発が進められており、例えば酸化アルミニウムとルテニウムの触媒によりメタン合成が促進されることが知られている。
【0004】
特許文献1はサバティエ反応を利用するメタン製造装置を開示するものであり、2つのサバティエ反応を生じさせる反応器を備え、一方の反応器で生じた熱を他方の反応器に供給することにより熱の利用効率を向上させている。
【0005】
特許文献2は、水素あるいはその他の化合物を製造するための電気分解システムに関し、独立した2つの直流電源を使用して消費電力を低下させる電気分解システムを開示する。
【0006】
非特許文献1には、液体中で発生するキャビテーションが圧潰した後に残留する小さなキャビテーション残留気泡には水素が多く含まれており、さらに二酸化炭素を溶解した水を用いてキャビテーションを発生させた場合、そのキャビテーション残留気泡中のメタンが増大していることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-142808号公報
【特許文献2】特開2007-100187号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.Soyama et al., “Chemical Reactor Using Radical Induced by a Cavitating Jet”, Proceeding of 20th Water Jetting Conference, Graz, 20-22 October, 2010, pp.259-267
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既に実証実験段階にあるサバティエ反応を利用するメタネーション技術が広く普及されるには、水素を生成する水電解工程では大量の電力を必要とすること、また、最終的にメタンを合成するまでに多数の工程が必要であることなどから、合成メタンの製造コスト低減は重要な課題である。例えば、サバティエ反応は高温(~500℃)で行う必要があることから、熱マネジメントは重要な課題の一つであり、特許文献1は、熱エネルギー効率を向上させ、メタン製造コストの低減を図るものと位置づけられる。
【0010】
これに対し、発明者は非特許文献1に示された現象に着目し、水電解反応とメタン合成とを一体的に行うことが可能な新規なメタン製造装置、メタン製造方法を検討した。本発明の目的は、より低温環境でのメタン化反応を実現可能なメタン製造装置及びメタン製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施の形態であるメタン製造システムは、水電解装置と、水電解装置に水を供給する水供給装置と、水電解装置に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、を有し、水電解装置は、電解質に浸漬される第1電極及び第2電極と、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することにより、第1電極をアノード、第2電極をカソードとして機能させる第1電源とを備え、第2電極に向けて、キャビテーションによる気泡を発生させる。
【発明の効果】
【0012】
より低温環境でのメタン化反応を実現可能なメタン製造技術を提供する。その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1のメタン製造システムの構成例である。
図2】水電解装置内に発生する気泡の様子を示す図である。
図3】実施例2のメタン製造システムの構成例である。
図4】実施例2のメタン製造システムの別の構成例である。
図5】固体高分子型水電解方式による水電解装置を用いたメタン製造システムの構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例0015】
図1に、実施例1のメタン製造システムの構成例を示す。メタン製造システムは、主要な構成として、メタン化反応装置である水電解装置1、水供給装置7a、二酸化炭素供給装置8aを備えている。
【0016】
水電解装置1として、ここではアルカリ水電解方式による水電解装置を示している。例えば、電解質2としては、水酸化カリウム(KOH)や水酸化ナトリウム(NaOH)の水溶液を用いることができる。電解質2には、直流電源6から直流電圧が印加されることにより、アノード(陽極)として機能する第1電極3、及びカソード(陰極)として機能する第2電極4が浸漬されている。水電解装置1には、水供給装置7aから配管7bを通して水が供給されて、水の電気分解が行われる。具体的には、アノード3では水酸化物イオンから酸素と水が生成する反応、カソード4では水が水素と水酸化物イオンになる反応が生じる。なお、水電解装置1は水の電気分解を行うための構成、例えばアノードとカソードの間を仕切る隔膜などを備えているが、図1では省略して示している。
【0017】
実施例1のメタン製造システムでは、二酸化炭素供給装置8aから配管8bを通して、第2電極4の第1電極3と対向する面に向けて二酸化炭素を供給する。第2電極4の第1電極3と対向する面には、メタン化反応を促進するための触媒5が配置されている。なお、二酸化炭素供給装置8aは例えば、工場や発電所等で排出される二酸化炭素を回収して、供給する装置である。配管8bの途中には圧縮機8cが設けられており、二酸化炭素は圧縮されて水電解装置1に供給される。この結果、配管8bの開口からは二酸化炭素の高速気流が噴出されることにより、キャビテーションが発生する。
【0018】
キャビテーションとは、速度の増大に伴って圧力が低下し、液体の飽和蒸気圧まで圧力が減少した結果、液体が気体(気泡)になる現象である。速度の低下により気体が液体に戻るとき、断熱圧縮により気泡内部が高温高圧になる。非特許文献1に示された現象は、キャビテーションにより発生した気泡における高温高圧環境下で、水が分解されるのみならず、二酸化炭素の還元によりメタン化反応が進行することを意味している。この現象をメタン製造技術として実用化するには、メタンの収率を向上させる必要がある。このため、本実施例はメタン化反応を発生させるキャビテーションを水素と二酸化炭素とが豊富な環境下において発生させる。
【0019】
実施例1では、キャビテーションを水電解装置1内において発生させるとともに、二酸化炭素を噴流として供給することによりキャビテーションを発生させる。これにより、キャビテーションによる短時間の気泡の発生と消滅が、水素と二酸化炭素とが豊富な環境において継続することにより、メタンの収率を向上させることができる。図2に水電解装置1内に発生する気泡の様子を示す。
【0020】
水電解装置1において水の電気分解を行うことにより、カソード4のアノード3に対向する面には水素イオン(H)が豊富な状態となっている。この面に向けて、配管8bから二酸化炭素が噴流として供給されることによりキャビテーションが発生し、キャビテーションにより発生した気泡10はカソード4のアノード3に対向する面に沿って広がり、気泡内部においてメタン化反応が進行する。発生したメタンは、水電解装置1から配管9を通して取り出される。
【0021】
本実施例では、さらにカソード4のアノード3に対向する面にメタン化反応を促進するための触媒5を配置することにより、さらにメタン収率の向上を図っている。触媒5としては、レアメタルや酸化アルミニウムなどを適用することが考えられる。
【0022】
なお、図1は実施例1のメタン製造システムを模式的に示すものであって、実際の形状や配置を限定するものではない。メタンの収率を向上させる観点からは、キャビテーションにより発生した気泡10がカソード4のアノード3に対向する面に効果的に広がることが求められる一方、キャビテーションは装置に損傷を与えるおそれのある現象である。装置への悪影響を抑えながら、メタンの収率を向上させる電極の材料、構造、形状や電極に対する配管8bの配置が求められる。一例として、第2電極4を電極触媒とすることが考えられる。ここで、電極触媒とは電極自体が触媒としても機能する材料、例えば電極材と触媒とを混合した材料で作られた電極をいう。この場合、キャビテーションにより第2電極4が損傷することによる触媒性能の劣化を抑制することができる。あるいは、第2電極4を電極層と触媒層の多層膜として構成することもできる。
【0023】
本実施例では、二酸化炭素を気体として水電解装置1に供給する構成を示しているが、二酸化炭素溶液、例えば水溶液をポンプにより噴流として供給することも考えられる。このように本実施例では、気体または液体を高速流体として供給することでキャビテーションを発生させることを想定しているが、その他の方法によりキャビテーションを発生させることを妨げない。
【0024】
キャビテーションで発生する気泡の内部は、数千℃、数万気圧の高温高圧状態が生じているとされているが、その体積が微小であるため、システム全体に及ぼす熱負荷も小さい。本実施例において利用するメタン化反応は常温常圧の環境下においても進行するため、水電解装置1の運転温度(~200℃)においても十分メタン化反応が進行する。したがって、サバティエ反応を利用するメタネーション技術のような高温を必要とせず、低コストでのメタン製造が可能になる。
【実施例0025】
本実施例では、消費電力を低減させたメタン製造システムについて説明する。図3に、実施例2のメタン製造システムの一例を示す。図3に示すメタン製造システムの水電解装置1bは複式電極を採用している。なお、実施例1と同じ構成については、同じ符号を付して示し、重複する説明は省略する。
【0026】
水電解装置1bの電解質2には、第1直流電源11から直流電圧が印加されることにより、アノード(陽極)として機能する第1電極3、及びカソード(陰極)として機能する第2電極4に加え、第2直流電源12から直流電圧が印加される第1誘導電極(誘導アノード)13及び第2誘導電極(誘導カソード)14が浸漬されている。第1誘導電極13は、第1誘導電極13と第2電極4とで第1電極3を挟むように配置され、第2誘導電極14は、第2誘導電極14と第1電極3とで第2電極4を挟むように配置される。また、第2直流電源12が第2誘導電極14に対して第1誘導電極13に印加する電圧V1の極性は、第1直流電源11が第2電極4に対して第1電極3に印加する電圧V2の極性と等しい。
【0027】
図1に示す水電解装置1において、直流電源6によってアノード-カソード間に電圧Vを印加しても、所定のしきい値電圧Vthに達するまでは水電解反応は開始されない。しきい値電圧Vth以下では、カソード表面には過剰の電子による負の電荷が、アノード表面には電子の欠乏により正の電荷が現れ、カソード4の表面には電解質2中の正イオンが、アノード3の表面には電解質2中の負イオンが引き付けられる。この段階では、第1電極3と第2電極4との間に電流は流れない。アノード-カソード間にしきい値電圧Vthが印加された状態において、電極の表面電荷密度が飽和に達する。直流電源6がアノード-カソード間にしきい値電圧Vthを超える電圧を印加すると、飽和表面電荷密度を超えた電荷がイオンと結合するようになる、すなわち電極反応が開始される。これにより、第1電極3と第2電極4との間に電流が流れるようになる。
【0028】
本実施例の複式電極を備える水電解装置1bでは、第2直流電源12から誘導電極間に電圧V2を印加することによって、第1電極3と第2電極4との間にしきい値電圧Vthに相当する電圧を印加したときの電界を発生させる。これにより、電極の表面電荷密度は飽和に達するが、まだ電極反応は開始されていないので、電流は流れない。その後、第1直流電源11からアノード-カソード間に電圧V1を印加することにより、飽和表面電荷密度を超えた電荷が電極に供給されることにより、電荷とイオンとが結合するようになり、電極反応が開始される。これにより、第1電極3と第2電極4との間に電流が流れるようになるが、この場合、第1直流電源11の印加する電圧V1はしきい値電圧Vthから超過分の電圧のみである。このように、誘導電極を用いて、実際に電流が流れる回路の電源電圧をできるだけ小さくすることにより、消費電力を低減させつつ、合成メタンを製造することができる。
【0029】
なお、第2直流電源12が誘導電極間に印加する電圧V2が、第1電極3と第2電極4の表面電荷密度を飽和させる大きさであるときに最も消費電力が低減されるが、このような制御に限定されるものではない。電圧V2の印加により、第1電極3及び第2電極4に表面電荷が誘起され、さらに電圧V1を印加することにより、電極の飽和表面電荷密度を超えた電荷が供給されるよう、電圧V1、電圧V2の大きさが設定されていればよい。
【0030】
図4は、さらに消費電力を低減可能な構成例であり、図3の構成例において、第1直流電源11に代えて、高周波パルス電源15を用いる例である。しきい値電圧Vthを超過させる電圧を、直流電圧に代えて高周波パルス電圧とすることで、さらに消費電力の低減を図ることができる。
【0031】
図3図4では、誘導電極の間に一対のアノード-カソードを配置する例を示しているが、誘導電極の間に複数対のアノード-カソードを配置し、それぞれのカソードにおいてメタン化反応を生じさせるよう構成してもよい。これにより、消費電力を抑えつつ、さらにメタンの発生量を増加させることができる。
【0032】
以上、本発明を2つの実施例に基づいて説明した。なお、実施例では水電解装置1(1b)をアルカリ水電解方式による水電解装置とする例によって説明したが、固体高分子型水電解方式による水電解装置とすることもできる。図5に、水電解装置1を固体高分子型水電解方式による水電解装置とした例を示す。実施例1と同じ構成については、同じ符号を付して示し、重複する説明は省略する。
【0033】
固体高分子型水電解方式による水電解装置では、固体高分子電解質膜22を挟んで、第1電極23と第2電極24とが配置されている。直流電源21から直流電圧が印加されることにより、第1電極23はアノード(陽極)として機能し、第2電極24はカソード(陰極)として機能する。第1電極23には第1流路25が、第2電極24には第2流路26が、それぞれ接して設けられている。第2電極24の第2流路26に対向する面には、メタン化反応を促進するための触媒5が配置されている。実施例1と同様、第2電極4を電極触媒としたり、電極層と触媒層の多層膜としたりしてもよい。第1流路25には配管7bを介して、第2流路26には配管7cを介して、水供給装置7aから水が供給される。第1流路25には水電解のための水が供給されるのに対し、第2流路26にはメタン化反応のためのキャビテーションを発生させるために水が供給される。この場合、水電解により固体高分子電解質膜22を水素イオンがカソード24に向けて移動することにより、カソード24の第2流路26の対向する面には水素分子(H)が豊富な状態となっている。第2流路26に二酸化炭素を噴流として供給してキャビテーションが発生することにより、キャビテーションによる短時間の気泡の発生と消滅が、水素と二酸化炭素とが豊富な環境において継続することにより、メタンの収率を向上させることができる。
【0034】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、カーボンニュートラルに向け、エネルギー分野に貢献できる。特に、水素製造プロセスとメタン合成プロセスとが一体化され、連鎖的に実行されることで、システムの簡素化や経済性向上が可能となる。また、比較的低温でメタン合成が可能であるために、通常は熱として廃棄されているような余剰エネルギーの利活用につながる。
【符号の説明】
【0036】
1:水電解装置、2:電解質、3:第1電極(アノード)、4:第2電極(カソード)、5:触媒、6:直流電源、7a:水供給装置、7b,7c,8b,9:配管、8a:二酸化炭素供給装置、8c:圧縮機、10:気泡、11:第1直流電源、12:第2直流電源、13:第1誘導電極、14:第2誘導電極、15:高周波パルス電源、21:直流電源、22:固体高分子電解質膜、23:第1電極(アノード)、24:第2電極(カソード)、25:第1流路、26:第2流路。
図1
図2
図3
図4
図5