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特開2024-93260セルロース繊維と硫酸バリウムの複合繊維からシートを製造する方法
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  • 特開-セルロース繊維と硫酸バリウムの複合繊維からシートを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093260
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】セルロース繊維と硫酸バリウムの複合繊維からシートを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/56 20060101AFI20240702BHJP
   D21H 17/67 20060101ALI20240702BHJP
   D21H 15/10 20060101ALI20240702BHJP
   C01F 11/46 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
D06M11/56
D21H17/67
D21H15/10
C01F11/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209519
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】大川 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 幸司
【テーマコード(参考)】
4G076
4L031
4L055
【Fターム(参考)】
4G076AA14
4G076AB06
4G076BA11
4G076BC07
4G076BC08
4G076CA08
4G076CA10
4G076CA26
4G076DA30
4L031AA02
4L031AB01
4L031BA05
4L031DA00
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AF09
4L055AF47
4L055AG08
4L055AG16
4L055AH16
4L055EA05
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA16
4L055EA32
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、硫酸バリウムがセルロース繊維表面に定着した複合繊維について、シートの製造技術を提供することである。
【解決手段】本発明によれば、硫酸を用いて硫酸バリウムとセルロース繊維との複合体を合成した上でシートを製造する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維と水酸化バリウムとの複合繊維を含有するシートの製造方法であって、
(a) セルロース繊維と水酸化バリウムとを含有するスラリーに硫酸水溶液を滴下し、セルロース繊維と硫酸バリウムの複合繊維を得る工程、
(b) 得られた複合繊維と紙力剤を含むスラリーからシートを形成する工程、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記複合繊維において硫酸バリウムがセルロース繊維表面に自己定着しており、硫酸バリウムの平均一次粒子径が120~1000nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
坪量が4500g/mのシートにした際の鉛当量が0.24mmPb以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シートが放射線遮蔽用シートである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スラリーが、スラリーの固形分に対して0.01~3.3重量%の紙力剤を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維と硫酸バリウムの複合繊維からシートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維を始めとする繊維は、その表面の官能基などに基づいて種々の特性を発揮するところ、用途によっては表面を改質する必要が生じる場合があり、これまで、繊維を表面改質する技術が開発されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、セルロース繊維の表面に硫酸バリウムを定着させた複合繊維が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-066578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、セルロース繊維と硫酸バリウムの複合繊維について、シートを製造する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これに限定されるものではないが、本発明は、下記の発明を包含する。
[1] セルロース繊維と水酸化バリウムとの複合繊維を含有するシートの製造方法であって、
(a) セルロース繊維と水酸化バリウムとを含有するスラリーに硫酸水溶液を滴下し、セルロース繊維と硫酸バリウムの複合繊維を得る工程、
(b) 得られた複合繊維と紙力剤を含むスラリーからシートを形成する工程、
を含む、上記方法。
[2] 前記複合繊維において硫酸バリウムがセルロース繊維表面に自己定着しており、硫酸バリウムの平均一次粒子径が120~1000nmである、[1]に記載の方法。
[3] 坪量が4500g/mのシートにした際の鉛当量が0.24mmPb以上である、[1]に記載の方法。
[4] 前記シートが放射線遮蔽用シートである、[1]に記載の方法。
[5] 前記スラリーが、スラリーの固形分に対して0.01~3.3重量%の紙力剤を含む、[1]に記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高いX線遮蔽性を備え、かつ、強度に優れる複合繊維シートを得ること可能になる。したがって、従来の製品と同等のX線遮蔽性を低い坪量で出すことができる。すなわち、複合繊維シートの軽量化をすることができる。また、硫酸バリウムが繊維に付着していることから、灰分歩留りが良いX放射線遮蔽材を得ることができる。また、濾水時間が短く、強度が高いため、シート製造時の操業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、複合繊維1の電子顕微鏡写真である(左:3000倍、右:10000倍)。
図2図2は、複合繊維3の電子顕微鏡写真である(左:3000倍、右:10000倍)。
図3図3は、シートサンプルの坪量と鉛当量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、硫酸バリウムによって繊維表面が被覆された複合繊維からシートを製造する技術に関する。本発明に係るシートは、複合繊維に含まれる硫酸バリウムによって優れたX線遮蔽効果を発現させており、例えば、検査用、手術用、診断用などの用途に好適に使用される。
【0010】
本発明に係る複合繊維は、単に繊維と硫酸バリウムが混在しているのではなく、水素結合などによって繊維と硫酸バリウムが結着しているので、離解処理によっても硫酸バリウムが繊維から脱落することが少ないため、種々の形状に加工することが容易である。
【0011】
なお、複合繊維における繊維と硫酸バリウムの結着の強さは、例えば、灰分歩留(%、すなわち、シートの灰分÷離解前の複合繊維の灰分×100)といった数値によって評価することができる。具体的には、複合繊維を水に分散させて固形分濃度0.2%に調整してJIS P 8220-1:2012に規定される標準離解機で5分間離解後、JIS P 8222:1998に従って150メッシュのワイヤーを用いてシート化した際の灰分歩留を評価に用いることができ、好ましい態様において灰分歩留は20質量%以上であり、より好ましい態様において灰分歩留は50質量%以上である。
【0012】
本発明に係る複合繊維は、種々の形態に加工することができるが、本発明においては複合繊維からシートを製造する。シート形状に成形する場合、例えば、単層のシートにすることはもちろん、得られたシートを貼り合せて多層シートとすることもできる。シートの坪量は、目的に応じて適宜調整できるが、40~1200g/mとすると遮蔽効果が高く、また、製造時の乾燥負荷が低いため良好である。シートの坪量は、100~1100g/mや200~1000g/mとすることもでき、300~900g/mや650~850g/mとしてもよい。
【0013】
本発明に係るシートは、坪量が4500g/mのシートにした際の鉛当量が0.24mmPb以上であることが好ましく、0.25mmPb以上であってもよい。鉛当量の上限は特に制限されないが、坪量が4500g/mのシートにした際の鉛当量を0.50mmPb以下としてもよく、0.40mmPb以下や0.30mmPb以下としてもよい。
【0014】
シート製造に用いる装置は特に制限されないが、例えば、長網抄紙機、丸網抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、これらの抄紙機の抄紙方式を組合せた公知の装置などが挙げられる。抄紙機におけるプレス線圧、後段でカレンダー処理を行う場合のカレンダー線圧は、いずれも操業性やシートの性能に支障を来さない範囲内で定めることができる。また、形成されたシートに対して含浸や塗布により澱粉や各種ポリマー、顔料およびそれらの混合物を付与しても良い。
【0015】
本発明においては、シート化の際に紙力剤(紙力増強剤)を添加する。これにより、シートの強度を向上させることができる。紙力剤としては、湿潤紙力剤や乾燥紙力剤などを制限なく使用することができ、例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂、植物性ガム、ラテックス、ポリエチレンイミン、グリオキサール、ガム、マンノガラクタンポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール等の樹脂;上記樹脂から選ばれる2種以上からなる複合ポリマー又は共重合ポリマー;澱粉及び加工澱粉;カルボキシメチルセルロース、グアーガム、尿素樹脂等が挙げられる。紙力剤の添加量は特に限定されないが、例えば、紙料スラリーの固形分に対して0.01~5.0重量%としたり、0.02~3.3重量%や0.05~2.5重量%としてもよい。紙力剤の添加量をこの範囲にすることで、濾水時間が短く、強度が高いため、シート製造時の操業性に優れる。
【0016】
また、シートに加工する際、填料の繊維への定着を促したり、填料や繊維の歩留りを向上させたりするために、高分子ポリマーや無機物を添加することもできる。例えば凝結剤として、ポリエチレンイミンおよび第三級および/または四級アンモニウム基を含む改質ポリエチレンイミン、ポリアルキレンイミン、ジシアンジアミドポリマー、ポリアミン、ポリアミン/エピクロヒドリン重合体、並びにジアルキルジアリル第四級アンモニウムモノマー、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド及びジアルキルアミノアルキルメタクリルアミドとアクリルアミドの重合体、モノアミン類とエピハロヒドリンからなる重合体、ポリビニルアミン及びビニルアミン部を持つ重合体やこれらの混合物などのカチオン性のポリマーに加え、前記ポリマーの分子内にカルボキシル基やスルホン基などのアニオン基を共重合したカチオンリッチな両イオン性ポリマー、カチオン性ポリマーとアニオン性または両イオン性ポリマーとの混合物などを用いることができる。また歩留剤として、カチオン性またはアニオン性、両性ポリアクリルアミド系物質を用いることができる。また、これらに加えて少なくとも一種以上のカチオンやアニオン性のポリマーを併用する、いわゆるデュアルポリマーと呼ばれる歩留りシステムを適用することもでき、少なくとも一種類以上のアニオン性のベントナイトやコロイダルシリカ、ポリ珪酸、ポリ珪酸もしくはポリ珪酸塩ミクロゲルおよびこれらのアルミニウム改質物などの無機微粒子や、アクリルアミドが架橋重合したいわゆるマイクロポリマーといわれる粒径100μm以下の有機系の微粒子を一種以上併用する多成分歩留りシステムであってもよい。特に単独または組合せで使用するポリアクリルアミド系物質が、極限粘度法による重量平均分子量が200万ダルトン以上である場合、良好な歩留りを得ることができ、好ましくは、500万ダルトン以上であり、更に好ましくは1000万ダルトン以上3000万ダルトン未満の上記アクリルアミド系物質である場合に非常に高い歩留りを得ることが出来る。このポリアクリルアミド系物質の形態はエマルジョン型でも溶液型であっても構わない。この具体的な組成としては、該物質中にアクリルアミドモノマーユニットを構造単位として含むものであれば特に限定はないが、例えば、アクリル酸エステルの4級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合物、あるいはアクリルアミドとアクリル酸エステルを共重合させた後、4級化したアンモニウム塩が挙げられる。該カチオン性ポリアクリルアミド系物質のカチオン電荷密度は特には限定されない。
【0017】
その他、目的に応じて、濾水性向上剤、内添サイズ剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、嵩高剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカなどの無機粒子(いわゆる填料)等が挙げられる。各添加材の使用量は特に限定されない。
【0018】
また、複合繊維のシートに後からポリマーなどの各種有機物や顔料などの各種無機物を付与してもよい。
繊維
本発明に係るシートは、繊維と硫酸バリウムとの複合繊維を含んでなる。複合繊維を構成する繊維は、セルロース繊維などの天然繊維であることが好ましいが、例えば、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維(半合成繊維)や合成繊維などを制限なく使用することができる。セルロース繊維の原料としては、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、セルロースナノファイバー、バクテリアセルロース、ホヤなどの動物由来セルロース、藻類などが例示される。木材パルプは、木材原料(木質原料)をパルプ化して製造すればよいが、木材原料としては、例えば、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹、さらには、これらの混合材などが例示される。
【0019】
木材原料などの天然材料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。
【0020】
非木材由来のパルプとしては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、楮(こうぞ)、みつまた等が例示される。
【0021】
パルプ繊維は、未叩解及び叩解のいずれでもよく、シートなどの物性に応じて選択すればよいが、叩解を行う方が好ましい。これにより、無機粒子の定着促進や、シートなどに加工した場合の強度向上が期待できる。
【0022】
合成繊維とセルロース繊維との複合繊維も本発明において使用することができ、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維などとセルロース繊維との複合繊維も使用することができる。
【0023】
また、これらセルロース原料はさらに処理を施すことで粉末セルロース、酸化セルロースなどの化学変性セルロース、およびセルロースナノファイバー:CNF(ミクロフィブリル化セルロース:MFC、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、カルボキシメチル化CNF、機械粉砕CNFなど)として使用することもできる。本発明で用いる粉末セルロースとしては、例えば、精選パルプを酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製・乾燥し、粉砕・篩い分けするといった方法により製造される棒軸状である一定の粒径分布を有する結晶性セルロース粉末を用いてもよいし、KCフロック(日本製紙製)、セオラス(旭化成ケミカルズ製)、アビセル(FMC社製)などの市販品を用いてもよい。粉末セルロースにおけるセルロースの重合度は好ましくは100~1500程度であり、X線回折法による粉末セルロースの結晶化度は好ましくは70~90%であり、レーザー回折式粒度分布測定装置による体積平均粒子径は好ましくは1μm以上100μm以下である。本発明で用いる酸化セルロースは、例えばN-オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することで得ることができる。セルロースナノファイバーとしては、上記セルロース原料を解繊する方法が用いられる。解繊方法としては、例えばセルロースや酸化セルロース等の化学変性セルロースの水懸濁液等を、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸または多軸混練機、ビーズミル等による機械的な磨砕、ないし叩解することにより解繊する方法を使用することができる。上記方法を1種または複数種類組み合わせてセルロースナノファイバーを製造してもよい。製造したセルロースナノファイバーの繊維径は電子顕微鏡観察などで確認することができ、例えば5nm~1000nm、好ましくは5nm~500nm、より好ましくは5nm~300nmの範囲にある。このセルロースナノファイバーを製造する際、セルロースを解繊及び/又は微細化する前及び/又は後に、任意の化合物をさらに添加してセルロースナノファイバーと反応させ、水酸基が修飾されたものにすることもできる。修飾する官能基としては、アセチル基、エステル基、エーテル基、ケトン基、ホルミル基、ベンゾイル基、アセタール、ヘミアセタール、オキシム、イソニトリル、アレン、チオール基、ウレア基、シアノ基、ニトロ基、アゾ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アミド基、イミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2-ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2-プロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、オキシル基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの置換基の中の水素が水酸基、カルボキシ基等の官能基で置換されても構わない。また、アルキル基の一部が不飽和結合になっていても構わない。これらの官能基を導入するために使用する化合物としては特に限定されず、例えば、リン酸由来の基を有する化合物、カルボン酸由来の基を有する化合物、硫酸由来の基を有する化合物、スルホン酸由来の基を有する化合物、アルキル基を有する化合物、アミン由来の基を有する化合物等が挙げられる。リン酸基を有する化合物としては特に限定されないが、リン酸、リン酸のリチウム塩であるリン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウムが挙げられる。更にリン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが挙げられる。更にリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウムが挙げられる。更にリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましいが、特に限定されない。カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸などトリカルボン酸化合物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。上記カルボン酸由来の基を有する化合物のうち、工業的に適用しやすく、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましいが、特に限定されない。また、化学的に結合させなくても、修飾する化合物がセルロースナノファイバーに物理的に吸着する形でセルロースナノファイバーを修飾してもよい。物理的に吸着する化合物としては界面活性剤等が挙げられ、アニオン性、カチオン性、ノニオン性いずれを用いてもよい。セルロースを解繊及び/又は粉砕する前に上記の修飾を行った場合、解繊及び/又は粉砕後にこれらの官能基を脱離させ、元の水酸基に戻すこともできる。以上のような修飾を施すことで、セルロースナノファイバーの解繊を促進したり、セルロースナノファイバーを使用する際に種々の物質と混合しやすくしたりすることができる。
【0024】
以上に示した繊維は単独で用いても良いし、複数を混合しても良い。中でも、木材パルプを含むか、若しくは、木材パルプと非木材パルプ及び/又は合成繊維との組み合わせを含むことが好ましく、木材パルプのみであることがより好ましい。
【0025】
好ましい態様において、本発明の複合繊維を構成する繊維はパルプ繊維である。また、例えば、製紙工場の排水から回収された繊維状物質を供給して複合繊維を製造してもよい。このような物質を反応槽に供給することにより、種々の複合粒子を合成することができ、また、形状的にも繊維状粒子などを合成することができる。
【0026】
本発明においては、繊維の他にも、生成物である無機粒子に取り込まれて複合粒子を生成するような物質を用いることができる。本発明にいては、パルプ繊維を始めとする繊維を使用するが、それ以外にも無機粒子、有機粒子、ポリマーなどを含む溶液中で硫酸バリウムを合成することによって、さらにこれらの物質が取り込まれた複合粒子を製造することが可能である。
【0027】
複合化する繊維の繊維長は特に制限されないが、例えば、平均繊維長が0.1μm~15mm程度とすることができ、1μm~12mm、100μm~10mm、500μm~8mmなどとしてもよい。
【0028】
複合化する繊維は、繊維表面の15%以上が硫酸バリウムで被覆されるような量で使用することが好ましいが、例えば、繊維と硫酸バリウムの重量比を、5/95~95/5とすることができ、10/90~90/10、20/80~80/20、30/70~70/30、40/60~60/40としてもよい。
【0029】
本発明に係る複合繊維は、繊維表面の15%以上が硫酸バリウムで被覆されており、このような面積率でセルロース繊維表面が被覆されていると硫酸バリウムに起因する特徴が大きく生じるようになる一方、繊維表面に起因する特徴が小さくなる。複合繊維の被覆率は、例えば、30%以上、50%以上、70%以上としてもよい。
【0030】
硫酸バリウム
本発明において、セルロース繊維などの繊維と複合化する硫酸バリウムは特に制限されないが、公知の方法で合成することができる。硫酸バリウムの合成を水系で行う場合があり、また、複合繊維を水系で使用することもある。
【0031】
硫酸バリウム(BaSO)は、バリウムイオンと硫酸イオンからなるイオン結晶性の化合物であり、板状あるいは柱状の形態であることが多く、水には難溶性である。純粋な硫酸バリウムは無色の結晶であるが、鉄、マンガン、ストロンチウム、カルシウムなどの不純物を含むと黄褐色または黒灰色を呈し、半透明となる。天然の鉱物としても得られるが、化学反応によって合成することもできる。
【0032】
本発明においては、繊維の存在下で、溶液中で硫酸バリウムを合成することによって、硫酸バリウムと繊維の複合繊維を製造することができる。例えば、酸(硫酸など)と塩基を中和によって反応させたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化バリウムと硫酸もしくは硫酸アルミニウムを反応させることで硫酸バリウムを合成したり、硫酸塩の含まれる水溶液中に塩化バリウムを加えて硫酸バリウムを沈殿させたりすることができる。
【0033】
本発明に係る複合繊維は、一つの好ましい態様において、セルロース繊維などの繊維の存在下で硫酸バリウムを合成することによって得ることができる。繊維表面が、硫酸バリウムの析出における好適な場となるため、硫酸バリウムとセルロース繊維との複合繊維を合成しやすいためである。
【0034】
一つの好ましい態様として、本発明の複合繊維における硫酸バリウムの平均一次粒子径を、例えば、1500nm以下とすることができるが、平均一次粒子径を1200nm以下や1000nm以下にすることもでき、さらには平均一次粒子径を700nm以下や400nm以下にすることもできる。また、硫酸バリウムの平均一次粒子径を、例えば、120nm以上とすることが可能であり、150nm以上や180nm以上としてもよい。なお、平均一次粒子径は電子顕微鏡写真で測定することができる。
【0035】
また、本発明に係る複合繊維における硫酸バリウムは、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、熟成工程によって用途に応じた二次粒子を生成させることができるし、粉砕によって凝集塊を細かくすることもできる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
【0036】
本発明に係る複合繊維は、シートの形態に加工する前に、乾燥して粉体にしてもよい。粉体にする場合の乾燥機について特に制限はないが、例えば、気流乾燥機、バンド乾燥機、噴霧乾燥機などを好適に使用することができる。
【0037】
本発明に係る複合繊維をシートに加工する場合、シートの用途は特に制限されないが、例えば、印刷用紙、新聞紙、インクジェット用紙、PPC用紙、クラフト紙、上質紙、コート紙、微塗工紙、包装紙、薄葉紙、色上質紙、キャストコート紙、ノンカーボン紙、ラベル用紙、感熱紙、各種ファンシーペーパー、水溶紙、剥離紙、工程紙、壁紙用原紙、不燃紙、難燃紙、積層板原紙、プリンテッドエレクトロニクス用紙、バッテリー用セパレータ、クッション紙、トレーシングペーパー、含浸紙、ODP用紙、建材用紙、化粧材用紙、封筒用紙、テープ用紙、熱交換用紙、化繊紙、減菌紙、耐水紙、耐油紙、耐熱紙、光触媒紙、化粧紙(脂取り紙など)、各種衛生紙(トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ワイパー、おむつ、生理用品等)、たばこ用紙、板紙(ライナー、中芯原紙、白板紙など)、紙皿原紙、カップ原紙、ベーキング用紙、研磨紙、合成紙などが挙げられる。
【0038】
好ましい態様において本発明に係る複合繊維は、一次粒子径が小さくかつ粒度分布の狭い無機粒子が繊維表面に定着した複合繊維とすることができるため、単に無機粒子を繊維に単に配合した場合と異なり、シートなどの加工した場合に無機粒子が歩留り易いだけでなく、凝集せずに均一に分散させることができる。本発明における無機粒子は、好ましい態様において、繊維の外表面・ルーメンの内側に定着するだけでなく、ミクロフィブリルの内側にも生成することが電子顕微鏡観察の結果から明らかとなっている。
【0039】
本発明に係る複合繊維を用いてシートなどを製造する際には、一般に無機填料及び有機填料と呼ばれる粒子や、各種繊維を併用することができる。例えば、無機填料として、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー(カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン)、タルク、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、二酸化チタン、ケイ酸ナトリウムと鉱酸から製造されるシリカ(ホワイトカーボン、シリカ/炭酸カルシウム複合体、シリカ/二酸化チタン複合体)、白土、ベントナイト、珪藻土、硫酸カルシウム、ゼオライト、脱墨工程から得られる灰分を再生して利用する無機填料および再生する過程でシリカや炭酸カルシウムと複合体を形成した無機填料などが挙げられる。炭酸カルシウム-シリカ複合物としては、炭酸カルシウムおよび/または軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物以外に、ホワイトカーボンのような非晶質シリカを併用しても良い。有機填料としては、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子、アクリルアミド複合体、木材由来の物質(微細繊維、ミクロフィブリル繊維、粉体ケナフ)、変性不溶化デンプン、未糊化デンプンなどが挙げられる。繊維としては、セルロースなどの天然繊維はもちろん、石油などの原料から人工的に合成される合成繊維、さらには、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維(半合成繊維)、さらには無機繊維などを制限なく使用することができる。天然繊維としては上記の他にウールや絹糸やコラーゲン繊維等の蛋白系繊維、キチン・キトサン繊維やアルギン酸繊維等の複合糖鎖系繊維等が挙げられる。セルロース系の原料としては、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、バクテリアセルロース、ホヤなどの動物由来セルロース、藻類などが例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。以上について、これらは単独でも2種類以上の組み合わせで用いても構わない。
【0040】
本発明に係る複合繊維を構成する硫酸バリウムの平均粒子径や形状等は、電子顕微鏡による観察により確認することができる。さらに、硫酸バリウムを合成する際の条件を調整することによって、種々の大きさや形状を有する硫酸バリウムを繊維と複合体化することができる。
【0041】
本発明に係る複合繊維を製造するため、例えば、水酸化バリウムに代表されるアルカリ性の硫酸バリウム前駆体を原料に用いる場合、あらかじめ繊維を硫酸バリウム前駆体の溶液に分散させておくことで繊維を膨潤させることができ、それにより、効率よく硫酸バリウムと繊維の複合繊維を得ることができる。これらを混合後15分以上撹拌することで繊維の膨潤を促進してから反応を開始することもできるが、混合後すぐに反応を開始してもよい。複合繊維を得る上での反応槽の形態や撹拌条件に特に制限はなく、例えば、繊維と硫酸バリウムの前駆体を含む溶液を開放型の反応槽中で撹拌、混合して複合繊維を合成しても良いし、繊維と硫酸バリウムの前駆体を含む水性懸濁液を反応容器内に噴射することによって合成してもよい。後述するが、硫酸バリウムの前駆体の水性懸濁液を反応容器内に噴射する際に、キャビテーション気泡を発生させ、その存在下で硫酸バリウムを合成してもよい。
【0042】
本発明においては、反応容器内にキャビテーション気泡を生じさせるような条件で液体を噴射してもよいし、キャビテーション気泡を生じさせないような条件で噴射してもよい。また、反応容器はいずれの場合においても圧力容器であることが好ましい。なお、本発明における圧力容器とは0.005MPa以上の圧力をかけることのできる容器のことである。キャビテーション気泡を生じさせないような条件の場合、圧力容器内の圧力は、静圧で0.005MPa以上0.9MPa以下であることが好ましい。
【0043】
本発明に係る複合繊維を製造する場合、反応溶液の固形分濃度は30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下がより好ましく、また、固形分濃度が0.1重量%以上であることが好ましい。
【0044】
本発明に係る複合繊維を製造する場合、反応液のpHが反応の進行にしたがって変化するようであれば、反応液のpHをモニターすることによって反応を制御することができる。
【0045】
本発明では、液体の噴射圧力を高めることで、噴射液の流速が増大し、これに伴って圧力が低下し、より強力なキャビテーションが発生させることができる。また、反応容器内の圧力を加圧することで、キャビテーション気泡が崩壊する領域の圧力が高くなり、気泡と周囲の圧力差が大きくなるため気泡は激しく崩壊し衝撃力を大きくすることができる。反応温度は0℃以上90℃以下であることが好ましく、特に10℃以上60℃以下であることが好ましい。一般には、融点と沸点の中間点で衝撃力が最大となると考えられることから、水性溶液の場合、50℃前後が好適であるが、それ以下の温度であっても、蒸気圧の影響を受けないため、上記の範囲であれば高い効果が得られる。
【0046】
本発明においては、界面活性剤を添加することでキャビテーションを発生させるために必要なエネルギーを低減することができる。使用する界面活性剤としては、公知または新規の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらの単一成分からなるものでも、2種以上の成分の混合物でも良い。添加量は噴射液及び/または被噴射液の表面張力を低下させるために必要な量であればよい。
【0047】
本発明に係る複合繊維は、一つの態様において、繊維を含む溶液中で硫酸バリウムを合成することによって得られるが、硫酸バリウムの合成方法は、公知の方法によることができる。
【0048】
本発明においては、懸濁液の調製などに水を使用するが、この水としては、通常の水道水、工業用水、地下水、井戸水などを用いることができる他、イオン交換水や蒸留水、超純水、工業廃水、反応液を分離・脱水する際に得られる水を好適に用いることできる。
【0049】
また本発明においては、反応槽の反応液を循環させて使用することができる。このように反応液を循環させて、溶液の撹拌を促すことにより、反応効率を上げ、所望の硫酸バリウムと繊維の複合繊維を得ることが容易になる。
【0050】
本発明の複合繊維を製造する際には、さらに公知の各種助剤を添加することができる。例えば、キレート剤を添加することができ、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などのポリヒドロキシカルボン酸、シュウ酸などのジカルボン酸、グルコン酸などの糖酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸などのアミノポリカルボン酸およびそれらのアルカリ金属塩、ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸などのポリリン酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸およびこれらのアルカリ金属塩、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリルなどのケトン類、ショ糖などの糖類、ソルビトールなどのポリオールが挙げられる。また、表面処理剤としてパルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、アビエチン酸等の樹脂酸、それらの塩やエステルおよびエーテル、アルコール系活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系やアミン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩、アミノカルボン酸、ホスホン酸、多価カルボン酸、縮合リン酸などを添加することができる。また、必要に応じ分散剤を用いることもできる。この分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アクリル酸-マレイン酸共重合体アンモニウム塩、メタクリル酸-ナフトキシポリエチレングリコールアクリレート共重合体、メタクリル酸-ポリエチレングリコールモノメタクリレート共重合体アンモニウム塩、ポリエチレングリコールモノアクリレートなどがある。これらを単独または複数組み合わせて使用することができる。また、添加のタイミングは合成反応の前でも後でも良い。このような添加剤は、無機粒子に対して、好ましくは0.001~20%、より好ましくは0.1~10%の量で添加することができる。
【0051】
本発明において複合繊維を合成する場合、反応条件は特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、合成反応の温度は0~90℃とすることができ、10~70℃とすることが好ましい。反応温度は、反応液の温度を温度調節装置によって制御することができ、温度が低いと反応効率が低下しコストが高くなる一方、90℃を超えると粗大な硫酸バリウムが多くなる傾向がある。
【0052】
また、本発明において反応はバッチ反応とすることもでき、連続反応とすることもできる。一般に、反応後の残存物を排出する便利さから、バッチ反応工程を行うことが好ましい。反応のスケールは特に制限されないが、100L以下のスケールで反応させてもよいし、100L超のスケールで反応させてもよい。反応容器の大きさは、例えば、10L~100L程度とすることもできるし、100L~1000L程度としてもよい。
【0053】
また、反応液の電導度や反応時間によって反応を制御することができ、具体的には、反応物が反応槽に滞留する時間を調整して制御することができる。その他、本発明においては、反応槽の反応液を攪拌したり、反応を多段反応としたりすることによって反応を制御することもできる。
【0054】
反応生成物である複合繊維が懸濁液として得られる場合、必要に応じて、貯蔵、濃縮、脱水、粉砕、分級、熟成、分散などの処理を行うことができる。これらは公知の工程によることができ、用途やエネルギー効率などを考慮して適宜決定すればよい。例えば、濃縮・脱水処理は、遠心脱水機、沈降濃縮機などを用いて行われる。この遠心脱水機の例としては、デカンター、スクリューデカンターなどが挙げられる。濾過機や脱水機を用いる場合についてもその種類に特に制限はなく、一般的なものを使用することができるが、例えば、フィルタープレス、ドラムフィルター、ベルトプレス、チューブプレス等の加圧型脱水機、オリバーフィルター等の真空ドラム脱水機などを好適に用いて炭酸カルシウムケーキとすることができる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。分級の方法としては、メッシュ等の篩、アウトワード型もしくはインワード型のスリットもしくは丸穴スクリーン、振動スクリーン、重量異物クリーナー、軽量異物クリーナー、リバースクリーナー、篩分け試験機等が挙げられる。分散の方法としては、高速ディスパーザー、低速ニーダーなどが挙げられる。
【0055】
本発明に係る複合繊維は、完全に脱水せずに懸濁液の状態で填料や顔料に配合することもできるが、乾燥して粉体とすることもできる。この場合の乾燥機についても特に制限はないが、例えば、気流乾燥機、バンド乾燥機、噴霧乾燥機などを好適に使用することができる。
【0056】
本発明に係る複合繊維は、公知の方法によって改質することが可能である。例えば、ある態様においては、その表面を疎水化し、樹脂などとの混和性を高めたりすることが可能である。
【実施例0057】
具体的な実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度や部などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0058】
実験1:複合繊維の合成と評価
1-1.複合繊維の合成
(1)複合繊維1
反応容器(マシンチェスト、容積:12m)において、2%のパルプスラリー(NBKP、CSF:500mL、平均繊維長:約1.3mm、固形分:210kg)と水酸化バリウム八水和物(日本化学工業、475kg)を混合後、ペリスターポンプを用いて硫酸水溶液(櫻井化学、濃度:10%、712kg)を約7L/minで滴下した。滴下終了後、そのまま30分間撹拌を継続して複合繊維1を得た。
(2)複合繊維2
NBKPの代わりに、NBKP/LBKP=9/1のパルプスラリーを用いた他は、複合繊維1と同様にして複合繊維を合成した。
(3)複合繊維3(比較例)
硫酸の代わりに、硫酸アルミニウム(硫酸バンド、620kg)を用いた他は、複合繊維1と同様にして複合繊維を合成した。複合繊維の繊維上に硫酸バリウムと水酸化アルミニウムが定着しており、硫酸バリウムと水酸化アルミニウムの重量比は約9:1であった。
【0059】
1-2.複合繊維の評価
得られた複合繊維を含む水性スラリー300mL(固形分換算で3g)について、ろ紙(ADVANTEC、No.5B、90mm)を用いて吸引濾過した後、残渣をオーブンで乾燥してから(105℃、2時間)、JIS P 8251:2003に基づいて灰分を測定し、複合繊維の繊維/無機粒子の重量比を測定した。また、吸引ろ過時の濾水時間についても測定した。濾水時間が短いと、シート製造時の操業性に優れているものと考えられる。
【0060】
また、それぞれのサンプルをエタノールで洗浄後、電子顕微鏡によって複合繊維の観察をした(図1:複合繊維1、図2:複合繊維3)。その結果、いずれのサンプルにおいても繊維表面を無機物質が覆い、自己定着している様子が観察された。繊維に定着している硫酸バリウムの多くは板状であり、サイズが小さいものは不定形の粒子として観察された。繊維表面のうち無機粒子によって被覆されている部分の面積率(被覆率)、無機粒子の一次粒子径と平均一次粒子径については、電子顕微鏡観察の結果より目視で評価した。
【0061】
【表1】
【0062】
実験2:シートの製造と評価
2-1.シートの製造
(1)シート1~5(複合繊維1)
複合繊維1を含む水性スラリー(固形分濃度:1%)に、カチオン性歩留剤(ND300、ハイモ)と乾燥紙力剤(TA100、ハリマ化成)を添加して紙料スラリーを調製した。次いで、長網抄紙機を用いて、抄速7.5m/minの条件でこの紙料スラリーからシートを製造した(坪量:約700g/m)。なお、カチオン性歩留剤の添加量は対固形分で800ppm、乾燥紙力剤の添加量は下表に示すとおりである。
(2)シート6(複合繊維2)
複合繊維2を用いた以外は、シート3と同様にしてシートを製造した。
(3)シート7(複合繊維3)
複合繊維3を用いた以外は、シート1と同様にしてシートを製造した。
【0063】
2-2.シートの評価
(1)紙質評価
複合繊維シートについて、引張強度をJIS P 8113:2006に基づいて測定した。また、複合繊維シートの無機粒子の重量割合(灰分)をJIS P 8251:2003に基づいて測定した。
(2)濾水時間
シートを作成した際に調製した紙料スラリーについて、JIS P 8222:2015の手すき試験において紙料スラリー22Lの脱水にかかる時間を測定した。
【0064】
【表2】
【0065】
(3)放射線遮蔽能力
サンプル3、6、7のシートについて、シートを1~14枚重ねてJIS Z 4501「X線防護用品の鉛当量試験方法」に基づいて鉛当量を測定し、放射線(X線)遮蔽能力を評価した。また、測定した鉛当量の値から検量線を作成し、坪量が4500g/mの場合の鉛当量を算出した(図3)。なお、坪量をJIS P 8124:1998、厚さをJIS P 8118:1998で測定した上で、厚さおよび坪量の測定値よりシート密度を算出した。
(測定条件)
・X線装置:エクスロン・インターナショナル社 MG-452型
・X線管電圧及び管電流:100kV,12.5mA
・試料-測定器間距離:50mm
・比較用試料:ADVANTEC厚ろ紙(No.26,坪量:310g/m
・測定場所:東京都立産業技術研究センター
【0066】
【表3】
【0067】
表に示すように、シート7と比較して、本発明に係るシートは15%程度のX線遮蔽能力の向上が確認できた。また、シートの坪量と鉛当量の関係を図3に示すが、同一の鉛当量とした場合に、本発明によればシートの坪量を15%程度削減でき、シートを軽量化することができる。
【0068】
また、シートの引張強度について確認したところ、シート7と比較して、本発明に係るシートは引張強度が2倍程度大きかった。
図1
図2
図3