(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093275
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ディスクタンブラ錠装置
(51)【国際特許分類】
E05B 29/04 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
E05B29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209544
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 志朗
(57)【要約】
【課題】既存の特定の錠とキーの互換性があり、しかもより保安性が向上したディスクタンブラ錠装置を提供する。
【解決手段】ディスクタンブラ錠装置1のキー3は、特定ディスクタンブラ錠装置101のキーウェイ106に挿入可能なキー断面形状で、一側縁に特定ディスクタンブラ錠装置101のディスクタンブラ105群を解錠位置に配置する第1のコード部5aを有し、他側縁部に第2のコード部5bを有する。キーウェイ7は、特定ディスクタンブラ錠装置101のキー103の挿入を阻止する空間断面形状を有する。特定ディスクタンブラ105群と同等の第1群のディスクタンブラ51と別の第2群のディスクタンブラ52とを有する。第1群のディスクタンブラ51は、キー3の第1のコード部3aで解錠位置に配置され、第2群のディスクタンブラ52は、キー3の第2のコード部3bで解錠位置に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、当該ロータに組み込まれる複数のディスクタンブラと、前記ロータのキーウェイに挿入されることによって側縁のコード部により前記ディスクタンブラを解錠位置に整列させるキーとを具備するディスクタンブラ錠装置であって、
前記キーは、既存の特定ディスクタンブラ錠装置の特定キーウェイに挿入可能なキー断面形状を有し、かつ一側縁に前記特定ディスクタンブラ錠装置の特定ディスクタンブラ群を解錠位置に配置可能な第1のコード部を有すると共に、他側縁部に第2のコード部を有し、
前記キーウェイは、前記特定ディスクタンブラ錠装置の特定キーの挿入を阻止する空間断面形状を有し、
前記複数のディスクタンブラは、前記ロータの半径方向一方に出没する複数のディスクタンブラであって、前記キーの第1のコード部によって解錠位置に配置される前記特定ディスクタンブラ群と同等の第1群のディスクタンブラと、前記ロータの半径方向他方に出没する複数のディスクタンブラであって、前記キーの第2のコード部によって解錠位置に配置される第2群のディスクタンブラとで構成されることを特徴とするディスクタンブラ錠装置。
【請求項2】
前記特定キーは、厚さ方向を横方向、幅方向を縦方向として、ほぼ同一厚さで縦方向に連続してコ字状、逆コ字状に直角に屈折する第1、第2の屈折部と、当該第2の屈折部の端部に直角に連続して縦方向に延びる直線部とを有する断面形状からなり、
前記特定キーウェイは、前記特定キーの第1、第2の屈折部及び直線部に対応する第1、第2の屈折部及び直線部を有する、当該特定キーの断面形状と相似形でやや幅の広い空間断面形状からなり、
前記キーは、前記特定キーの第2の屈折部と直線部とに相似形の屈折部と直線部及び当該屈折部の横方向の一辺から直角に縦方向に直線状に延びる延出部とを有する断面形状からなり、
前記キーの延出部は、前記特定キーウェイの第1の屈折部における縦方向空間を通過可能に構成され、
前記キーウェイは、前記キーの屈折部、直線部、延出部に対応する屈折部、直線部、延出部を有する、当該キーの断面形状と相似形のやや幅の広い空間断面形状からなり、
前記キーウェイの延出部は、前記特定キーの第1の屈折部が通過不能に構成されることを特徴とする請求項1に記載のディスクタンブラ錠装置。
【請求項3】
前記キーウェイは、前記複数のディスクタンブラの間に介設されるキーウェイプレートのキーウェイ開口からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスクタンブラ錠装置。
【請求項4】
前記キーウェイプレートは、相互間隔を置いて複数設けられることを特徴とする請求項3に記載のディスクタンブラ錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクタンブラ錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータと、当該ロータに組み込まれる複数のディスクタンブラと、ロータのキーウェイに挿入されることによって、側縁に形成されたコード部によりディスクタンブラを解錠位置に整列させるキーとを具備するディスクタンブラ錠装置が広く知られている。
ディスクタンブラ錠装置においては、ロータが固定外筒内に軸方向に移動不能に収容される。ロータの軸方向にはキーウェイが形成され、これと交差するようにロータの直径方向のタンブラ格納孔が設けられる。タンブラ格納孔は、ロータの軸方向に相互間隔を置いて複数設けられ、これにディスクタンブラがロータの直径方向に移動可能に格納される。ディスクタンブラは、固定外筒の内周面のタンブラ係脱溝に先端部が係合するようにばねで移動付勢される。キーがキーウェイに挿入され、側縁部に形成された連続凹凸形状のキーコード部がディスクタンブラのキー通し開口の縁面に接触すると、ディスクタンブラの先端部がタンブラ係脱溝から脱出してディスクタンブラの全体がタンブラ格納孔に退没して、ロータの解錠方向の回転が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気関連設備等の錠としては、設備の保守点検者の便を考慮して、共通キーで施解錠できる簡易型の特定のディスクタンブラ錠が採用される傾向がある。このような場合、「鍵」としての安全性が薄れ、不正解錠などの事故が生じやすい。しかし、保安上、より安全性の高い錠を新たな設備に採用していく場合、保守点検者が多種類のキーを携帯しなければならない不都合が生じる。
したがって、本発明は、多数の設備に共通に使用されている特定の錠とキーの互換性があり、しかもより保安性が向上したディスクタンブラ錠装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の説明において添付図面の符号を参照するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明のディスクタンブラ錠装置1は、ロータ2と、当該ロータ2に組み込まれる複数のディスクタンブラ5と、ロータ2のキーウェイ7に挿入されることによって側縁のコード部3a,3bによりディスクタンブラ5を解錠位置に整列させるキー3とを具備する従来のものと基本構造が同じディスクタンブラ錠装置であるが、キー3は、既存の特定ディスクタンブラ錠装置101の特定キーウェイ106に挿入可能なキー断面形状を有し、かつ一側縁に特定ディスクタンブラ錠装置101の特定ディスクタンブラ5群を解錠位置に配置可能な第1のコード部5aを有すると共に、他側縁部に第2のコード部5bを有する。キーウェイ7は、特定ディスクタンブラ錠装置101の特定キー103の挿入を阻止する空間断面形状を有する。ディスクタンブラ5は、ロータ2の半径方向の一方に出没する第1群のディスクタンブラ51と、半径方向他方に出没する第2群のディスクタンブラ52とからなる。第1群のディスクタンブラ51は、特定ディスクタンブラ105群と同等で、キー3の第1のコード部3aによって解錠位置に配置される。第2群のディスクタンブラ52は、キー3の第2のコード部3bによって解錠位置に配置されるように設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、多数の設備に使用されている特定ディスクタンブラ錠に対してキーの一方的適合性があり、しかもより保安性が向上したディスクタンブラ錠装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ディスクタンブラ錠装置のキーの適合性の関係を示す説明図であり、(A-1)は特定ディスクタンブラ錠装置のキーウェイ空間の断面形状、(A-2)は特定ディスクタンブラ錠装置のキーの断面図、(B-1)は本発明のディスクタンブラ錠装置のキーウェイ空間の断面形状、(B-2)は本発明のディスクタンブラ錠装置のキーの断面形状を示す。
【
図2】特定ディスクタンブラ錠装置のロータの分解斜視図である。
【
図3】特定ディスクタンブラ錠装置のロータを示し、(A)は正面図、(B)はb-b断面図、(C)はc-c断面図、(D)はd-d断面図である。
【
図4】本発明のディスクタンブラ錠装置のロータの分解斜視図である。
【
図5】本発明のディスクタンブラ錠装置のロータを示し、(A)は正面図、(B)はb-b断面図、(C)はc-c断面図、(D)はd-d断面図である。
【
図6】(A)は特定ディスクタンブラ錠装置のロータに特定キーを挿入した状態、(B)は特定ディスクタンブラ錠装置のロータに本発明のキーを挿入した状態、(C)は本発明のディスクタンブラ錠装置のロータにキーを挿入した状態をそれぞれ示す断面図である。
【
図7】(A)は本発明のディスクタンブラ錠装置のキーの他の実施形態を示す断面図であり、特定キーウェイ106との適合性を示し、(B)は本発明のディスクタンブラ錠装置のキーウェイプレートの他の実施形態を示す正面図であり、特定キー103との非適合性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、特定のディスクタンブラ錠装置(区別のために「特定ディスクタンブラ錠装置」という。)に対してキーの一方的適合性がある、保安性が向上したディスクタンブラ錠装置である。
【0009】
<特定ディスクタンブラ錠装置について>
図2ないし
図4において、本発明のディスクタンブラ錠装置1のキー3が適合性を有する特定ディスクタンブラ錠装置101について説明する。
【0010】
なお、本明細書におけるキーの断面形状については、厚さ方向を横方向、幅方向を縦方向として説明する。
【0011】
特定ディスクタンブラ錠装置101は、ロータ102と、これを施解錠操作するためのキー(区別のために「特定キー」ということがある。)103とを含む。ロータ102は、金属で一体成形された概略円筒状のロータ本体104と、これに組み込まれる複数のディスクタンブラ(区別のために「特定ディスクタンブラ群」と総称することがある。)105とを含む。
【0012】
ロータ本体104の軸方向には、キー103の挿入を許容するための空間であるキーウェイ(区別のために「特定キーウェイ」ということがある。)106が形成される。キーウェイ106と交差するように、ロータ本体104の直径方向にタンブラ格納孔107が設けられる。タンブラ格納孔107は、ロータ本体104の軸方向に相互間隔を置いて複数設けられ、これにディスクタンブラ105がロータ本体104の直径方向に移動可能に格納される。ディスクタンブラ105は、キー103が挿入されない状態では、先端部がロータ本体104から突出し、図示しない固定外筒の内周面のタンブラ係脱溝に係合するように、ばね108で突出方向に移動付勢される。ディスクタンブラ105の先端部がロータ本体104から突出した状態が施錠状体で、ロータ102は固定外筒に対して軸周りに回転することができない。
【0013】
図6(A)に示すように、キー103がキーウェイ106に挿入され、側縁部に形成された連続凹凸形状のコード部103aがディスクタンブラ105のキー通し開口105a(
図2)の下縁面を押し下げると、ディスクタンブラ105の先端部がタンブラ係脱溝から脱出してディスクタンブラ5の全体がタンブラ格納孔107に退没し、ロータ102は解錠方向に軸周り回転が可能となる。
【0014】
キーウェイ106の空間断面形状は、
図3(D)に示すように、キーウェイ106の入り口部分106aにより画定される。キーウェイ106の空間断面形状により、挿入できる特定キー103の断面形状が制限される。
【0015】
キー103の断面形状は、
図1(A-2)に示すように、ほぼ同一厚さで縦方向に連続してコ字状、逆コ字状に直角に屈折する第1、第2の屈折部103b、103cと、第2の屈折部103cの端部に直角に連続して縦方向に延びる直線部103dとを有する断面形状である。
【0016】
これに対して、キーウェイ106は、
図1(A-1)に示すように、キー103の第1、第2の屈折部103b、103c及び直線部103dに対応する第1、第2の屈折部106b、106c及び直線部106dを有し、キー103の断面形状と相似形でやや幅の広い空間断面形状である。
【0017】
<本発明のディスクタンブラ錠装置について>
図4ないし
図6について本発明の実施形態に係るディスクタンブラ錠装置1について説明する。
【0018】
図4において、ディスクタンブラ錠装置1は、ロータ2と、これを施解錠操作するためのキー3とを含む。ロータ2は、金属で一体成形された概略円筒状のロータ本体4と、これに組み込まれる複数のディスクタンブラ5及びディスクタンブラ5の相互間に介設される複数のキーウェイプレート6とを含む。
【0019】
ロータ本体4の軸方向には、キー3の挿入を許容するための空間であるキーウェイ7が形成される。キーウェイ7は、キーウェイプレート6の開口6aにより形成される。
【0020】
キーウェイ7と交差するように、ロータ本体4を直径方向に貫通してタンブラ格納孔8が設けられる。タンブラ格納孔8は、ロータ本体4の軸方向に相互間隔を置いて複数設けられ、これに2枚一組のディスクタンブラ5がロータ本体4の直径方向に移動可能に格納される。ディスクタンブラ5は、ロータ本体4から突出した先端部が、図示しない固定外筒の内周面のタンブラ係脱溝に係合するように、ばね9で突出方向に移動付勢される。一組のディスクタンブラ51,52は互いに突出方向が逆方向になるようにばね9で付勢される。ディスクタンブラ51,52の先端部がロータ本体4から突出した状態が施錠状体で、ロータ2は固定外筒に対して軸周りに回転することができない。
【0021】
図4、
図6(C)を参照して、キー3がキーウェイ7に挿入され、側縁部に形成された連続凹凸形状のコード部3a,3bが,それぞれディスクタンブラ51,52のキー通し開口51a,52aの上縁面又は下縁面を押し上げ又は押し下げると、ディスクタンブラ5の先端部がタンブラ係脱溝から脱出してディスクタンブラ5の全体がタンブラ格納孔8内に退没し、ロータ2は解錠方向に軸周り回転が可能となる。なお、第1群の3つのディスクタンブラ51が、特定ディスクタンブラ錠装置101における3つのディスクタンブラ105に対応する。また、キー3のコード部3aが、特定キー103のコード部103aに対応する。
【0022】
キーウェイ7の空間断面形状は、
図5(D)に示すように、キーウェイプレート6の開口6aにより画定される。キーウェイ7の空間断面形状により、挿入できるキー3の断面形状が制限される。
【0023】
図1(B-2)によく示すように、キー3の断面形状は、特定ディスクタンブラ錠装置101における特定キー103の第2の屈折部103cと相似形の屈折部3cと、直線部106dと相似形の直線部3d及び当該屈折部3cの横方向の一辺3eの中間部から直角に縦方向に直線状に延びる延出部3fとを有する形状である。
【0024】
したがって、
図1(A-1)の仮想線、
図1(B-2)を参照して、屈折部3cと直線部3dは、それぞれ特定キーウェイ106の屈折部106cと直線部106dを通過し、また延出部3fは、特定キーウェイ106の屈折部106bの縦空間106fを通過することができ、
図6(B)に示すように、特定ディスクタンブラ錠101の特定ロータ104に挿入可能である。
【0025】
図6(A),(B)に示すように、キー3の一方のコード部3aは、特定キー103のコード部103aと共通仕様に形成されている。したがって、特定ディスクタンブラ錠101の特定ロータ104にキー3を挿入すれば、特定ディスクタンブラ錠装置101を解錠することができる。
【0026】
一方、本発明の実施形態に係るディスクタンブラ錠装置1のキーウェイ7は、
図1(B)に示すように、キー3の屈折部3c、直線部3d、延出部3fにそれぞれ対応する屈折部7c、直線部7d、延出部7fを有し、キー3の断面形状と相似形でやや幅の広い空間断面形状である。
【0027】
キーウェイ7は、特定キー103に対しては、第1の屈折部103bがキーウェイ7の延出部7fに干渉することによって、ロータ4への挿入を阻止する。
【0028】
キー3及びキーウェイプレート6の他の実施形態を
図7に示す。この実施形態のキー3は、
図7(A)に示すように、延出部3fが、屈折部3cの一辺3eの末端までの幅を持った断面形状で、キーウェイプレート6は、
図7(B)に示すように、キー3の断面形状と相似形のキーウェイ7を形成するように設けられる。キー3は、この断面形状でも、特定ディスクタンブラ錠装置101のキーウェイ106を通過することができる。
【0029】
以上のように、本発明のディスクタンブラ錠装置1は、多数の設備に使用されている共通錠としての特定ディスクタンブラ錠101に対して、キー3を共通に使用することができる。また追加的な第2群のディスクタンブラ52により、特定ディスクタンブラ錠101より高い保安性能が追加される。利用者が、新たな設備に高い保安性能を有する本発明のディスクタンブラ錠装置1を採用しても、なお既存の多数の設備に装備されている特定ディスクタンブラ錠装置101をキー3で施解錠操作できる利便性がある。一方、数多く業界に出回っている特定ディスクタンブラ錠装置101のキー103では本発明のディスクタンブラ錠装置1を施解錠操作することができない。
【符号の説明】
【0030】
1 ディスクタンブラ錠装置
2 ロータ
3 キー
3a コード部
3b コード部
3c 屈折部
3d 直線部
3e 横方向の一辺
3f 延出部
4 ロータ本体
5 ディスクタンブラ
51 第1群のディスクタンブラ
52 第2群のディスクタンブラ
6 キーウェイプレート
6a 開口
7 キーウェイ
7b 屈折部
7d 直線部
7f 延出部
8 タンブラ格納孔
9 ばね
101 特定ディスクタンブラ錠装置
102 特定ロータ
103 特定キー
103a コード部
103b 第1の屈折部
103c 第2の屈折部
103d 直線部
103e 横方向の一辺
103f 延出部
104 特定ロータ本体
105 特定ディスクタンブラ
105a 通し孔
106 特定キーウェイ
106a 開口
106b 第1の屈折部
106c 第2の屈折部
106d 直線部
106f 延出部
107 タンブラ格納孔
108 ばね