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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093277
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】吸音材及び吸音パネル
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20240702BHJP
   D04H 5/00 20120101ALI20240702BHJP
   D04H 1/4382 20120101ALI20240702BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20240702BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20240702BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B32B5/26
D04H5/00
D04H1/4382
D04H3/16
G10K11/168
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209550
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】515113042
【氏名又は名称】株式会社ビーエステクノ
(71)【出願人】
【識別番号】523419521
【氏名又は名称】エム・エーライフマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小幡 仁寿
(72)【発明者】
【氏名】市川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】関岡 裕佑
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 秀憲
【テーマコード(参考)】
4F100
4L047
5D061
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK42
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA42B
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG15
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100JA06
4F100JB16B
4F100JH01
4F100JH01A
4F100JH01B
4F100JL16
4F100JL16A
4F100JL16B
4F100YY00A
4F100YY00B
4L047AA14
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB04
4L047AB07
4L047AB09
4L047BA08
4L047BA09
4L047BB06
4L047CA02
4L047CA05
4L047CA19
4L047CB01
4L047CB02
4L047CB03
5D061AA07
5D061AA22
5D061BB21
(57)【要約】
【課題】製造時等の二酸化炭素排出量が少なく、吸音率が高い吸音材及び吸音パネルを提供する。
【解決手段】吸音材が、中綿、及び該中綿を内包する表皮材からなり、この中綿が2種以上の熱可塑性樹脂繊維を含む不織布であり、この熱可塑性樹脂繊維同士の繊維径は異なり、この中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積総和が150~270m2/m2、好ましくは200~270m2/m2であり、この表皮材はポリプロピレン系樹脂繊維を含む不織布である。吸音パネルが、この吸音材を収納するフレームを備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中綿、及び該中綿を内包する表皮材からなる吸音材であって、
該中綿が2種以上の熱可塑性樹脂繊維を含む不織布であり、
該熱可塑性樹脂繊維同士の繊維径は異なり、
該中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積総和が150~270m2/m2であり、
該表皮材はポリプロピレン系樹脂繊維を含む不織布である吸音材。
【請求項2】
請求項1に記載された吸音材において、前記中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積総和が200~270m2/m2である吸音材。
【請求項3】
請求項1に記載された吸音材において、前記中綿が、繊維径10μm以上20μm未満の細繊維と、繊維径20~30μmの中太繊維、及び繊維径40~50μmの極太繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの熱可塑性樹脂繊維とを含む不織布である吸音材。
【請求項4】
請求項3に記載された吸音材において、前記中綿が、前記中太繊維、及び前記極太繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの熱可塑性樹脂繊維が中空繊維を含む吸音材。
【請求項5】
請求項1に記載された吸音材において、前記中綿が熱可塑性樹脂中空繊維を含有し、前記中綿中の該熱可塑性樹脂中空繊維の含有量が30質量%以上である吸音材。
【請求項6】
請求項3に記載された吸音材において、前記中綿中の前記細繊維の含有量が50質量%以上である吸音材。
【請求項7】
請求項1に記載された吸音材において、前記表皮材が第1のスパンボンド不織布と、該第1のスパンボンド不織布に隣接するメルトブローン不織布と、該メルトブローン不織布に隣接する第2のスパンボンド不織布とを含む表皮材、または、前記表皮材が第1のスパンボンド不織布と、該第1のスパンボンド不織布に隣接するメルトブローン不織布と、該メルトブローン不織布に隣接する第2のスパンボンド不織布と、第2のスパンボンド不織布に隣接する第3のスパンボンド不織布とを含む表皮材、であることを特徴とする吸音材。
【請求項8】
請求項7に記載された吸音材において、前記第1のスパンボンド不織布、及び第2のスパンボンド不織布、及び第3のスパンボンド不織布からなる群から選ばれる少なくとも1つは、25~50μmの範囲の平均繊維径を備える繊維を含む吸音材。
【請求項9】
請求項7に記載された吸音材において、前記メルトブローン不織布は、0.5~5μmの範囲の平均繊維径を備える繊維を含む吸音材。
【請求項10】
請求項7に記載された吸音材において、前記第1のスパンボンド不織布、第2のスパンボンド不織布、及び第3のスパンボンド不織布からなる群から選ばれる少なくとも1つは、中空繊維を含む吸音材。
【請求項11】
請求項1に記載された吸音材において、前記中綿の、以下の試験方法による垂れ下がり量が75mm以下である吸音材。
幅500mm×長さ1000mm×厚み50mmの前記中綿を、水平な床の上に載置した幅500mm以上×長さ1000mm以上の机の天板上に、前記中綿の長さ方向と机の長さ方向が平行で、前記中綿が机の幅方向に収まり、かつ前記中綿が机の長さ方向の一方から600mmはみ出すように載置し、床から机の天板までの距離、及び床から中綿サンプルの先端部底面までの距離を測定する。
垂れ下がり量=床から机の天板までの距離-床から中綿サンプルの先端部底面までの距離
【請求項12】
請求項1に記載された吸音材において、環境省廃棄物・リサイクル対策部企画課循環型社会推進室により報告された3R 原単位の算出方法に準じて算出した、前記表皮及び前記中綿の二酸化炭素排出量が8.0kg/m2以下である吸音材。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載された吸音材と、前記吸音材を収納するフレームを備える吸音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材及び吸音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくともポリエステル系樹脂からなる繊維を含む中綿と、該中綿を内包する表皮材とからなり、該表皮はポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む不織布からなる吸音材が知られている(例えば、特許文献1参照)。前記吸音材は、水分が多い環境下でもその吸音率が低下し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/251279号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、原油採取から製品廃棄までの二酸化炭素排出量(以下、製造時等の二酸化炭素排出量ともいう。本発明の場合、製造時等の二酸化炭素排出量とは、原油採取から吸音材製造までの製造時の二酸化炭素排出量と吸音材廃棄時の二酸化炭素排出量の総和を意味する。)が少なく、吸音率が高い吸音材が希求されている。製造時等の二酸化炭素排出量を減らすためには、吸音材として使用する樹脂量を減らすことが有用であるが、単純に使用する樹脂量を減らすと吸音性能は低下する傾向にある。また、使用する樹脂量を減らすと、一般に吸音材の剛性は低下する傾向にあり、外部からの圧力により吸音材が潰れたり、又は、製造時に均一に配置してもその後に自重により均一配置が保たれず、重力方向に樹脂(中綿)が偏在したりするなどの問題が生じ、その結果として吸音率が低下する傾向にあることがわかった。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、製造時等の二酸化炭素排出量が少なく、吸音率が高い吸音材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑み検討を重ね、2種以上の熱可塑性樹脂繊維を含む特定の不織布を含む中綿と、該中綿を内包する表皮材からなる吸音材は、製造時等の二酸化炭素排出量が少なく、高い吸音性を示すことを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0007】
本発明は、中綿、及び該中綿を内包する表皮材からなる吸音材であって、該中綿が2種以上の熱可塑性樹脂繊維を含む不織布であり、該熱可塑性樹脂繊維同士の繊維径は異なり、該中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積総和が150~270m2/m2であり、該表皮材はポリプロピレン系樹脂繊維を含む不織布である吸音材に関する。
前記中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積総和は、好ましくは200~270m2/m2である。
前記中綿は、好ましくは、繊維径10μm以上20μm未満の細繊維と、繊維径20~30μmの中太繊維、及び繊維径40~50μmの極太繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの熱可塑性樹脂繊維とを含む。
前記中綿は、より好ましくは、前記中太繊維、及び前記極太繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの熱可塑性樹脂繊維が中空繊維を含む。
前記中綿は、好ましくは熱可塑性樹脂中空繊維を含有し、前記中綿中の該熱可塑性樹脂中空繊維の含有量は、好ましくは30質量%以上である。
前記中綿中の前記細繊維の含有量は、好ましくは50質量%以上である。
前記表皮材は、好ましくは、第1のスパンボンド不織布と、該第1のスパンボンド不織布に隣接するメルトブローン不織布と、該メルトブローン不織布に隣接する第2のスパンボンド不織布とを含む。また別態様として、前記表皮材は、好ましくは、第1のスパンボンド不織布と、該第1のスパンボンド不織布に隣接するメルトブローン不織布と、該メルトブローン不織布に隣接する第2のスパンボンド不織布と、第2のスパンボンド不織布に隣接する第3のスパンボンド不織布とを含む。
前記第1のスパンボンド不織布、第2のスパンボンド不織布、及び第3のスパンボンド不織布からなる群から選ばれる少なくとも1つは、好ましくは、25~50μmの範囲の平均繊維径を備える繊維を含む。
前記メルトブローン不織布は、好ましくは、0.5~5μmの範囲の平均繊維径を備える繊維を含む。
前記第1のスパンボンド不織布、第2のスパンボンド不織布、及び第3のスパンボンド不織布からなる群から選ばれる少なくとも1つは、好ましくは、中空繊維を含む。
前記中綿の、以下の試験方法による垂れ下がり量は、好ましくは75mm以下である。
幅500mm×長さ1000mm×厚み50mmの前記中綿を、水平な床の上に載置した幅500mm以上×長さ1000mm以上の机の天板上に、前記中綿の長さ方向と机の長さ方向が平行で、前記中綿が机の幅方向に収まり、かつ前記中綿が机の長さ方向の一方から600mmはみ出すように載置し、床から机の天板までの距離、及び床から中綿サンプルの先端部底面までの距離を測定する。
垂れ下がり量=床から机の天板までの距離-床から中綿サンプルの先端部底面までの距離
環境省廃棄物・リサイクル対策部企画課循環型社会推進室により報告された3R 原単位の算出方法に準じて算出した、前記表皮及び前記中綿の二酸化炭素排出量は、好ましくは8.0kg/m2以下である。
【0008】
さらに本発明は、前記吸音材と、前記吸音材を収納するフレームを備える吸音パネルに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸音材は、製造時等の二酸化炭素排出量が少なく、高い吸音性を示す吸音材を提供する。また、本発明の吸音パネルは、前記吸音材を備える吸音パネルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】吸音材の第1の実施形態の断面図。
図2】吸音材の第2の実施形態の断面図。
図3】吸音パネルの1つの実施形態の断面図。
図4】本発明に係る中空スパンボンド不織布の成形機のノズル孔形状の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について更に詳細に説明する。
なお、数値範囲の「~」は、断りがなければ、以上から以下を表し、両端の数値をいずれも含む。また、数値範囲を示したときは、上限値および下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示したものとする。
さらに図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
図1は、本発明の吸音材の第1の実施形態の断面図である。本実施形態の吸音材1は中綿2と、中綿2の表裏両面(上層及び下層)に備えられ、中綿2を内包する1枚の表皮材3とからなる。中綿2は、2つに折りたたまれた表皮材3に挟まれており、表皮材3は、周縁部の3方にシール部4を備えている。この結果、中綿2は、表皮材3の折りたたみ部とシール部4により取り囲まれて、表皮材3に内包されている。
【0013】
なお、中綿2は表皮材3により内包されていればよく、中綿2を表皮材3により内包する構成は、図1に示す構成に限定されるものではない。
【0014】
例えば、図2に示す本発明の吸音材の第2の実施形態のように、中綿2と、中綿2の表裏両面(上層及び下層)に備えられ、中綿2を内包する2枚の表皮材3、3とからなり、表皮材3、3が周縁部に中綿2を取り囲むシール部4を備える構成であってもよい。
【0015】
吸音材1の目付は、主に100~2000Hzの領域における吸音率をより向上させる観点、吸音材の重量増による作業性の低下を防止する観点から、500~3000g/m2の範囲であることが好ましく、1000~2500g/m2の範囲であることがより好ましく、1300~2200g/m2の範囲であることが更に好ましい。二酸化炭素排出量を少なくする観点からは、吸音材1の目付は1300~1800g/m2の範囲であることが特に好ましい。さらには吸音材を支持する構造体の強度を確保する観点からは、吸音材1の目付は1300~1700g/m2の範囲であることが最も好ましい。
【0016】
吸音材1の厚みは、低音領域、特に100~1000Hzの領域の吸音率をより向上させる観点、構造物等に据え付ける際に効率的な空間を確保する観点から10~100mmの範囲であることが好ましく、20~70mmの範囲であることがより好ましい。
【0017】
<中綿>
本発明の吸音材は、中綿を備える。前記中綿は2種以上の熱可塑性樹脂繊維を含む不織布であり、該熱可塑性樹脂繊維同士の繊維径は異なる。
【0018】
前記熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂は特定の熱可塑性樹脂に限定されない。前記熱可塑性樹脂として、例えば以下の熱可塑性樹脂が挙げられる。
(1)ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート、セルロースアセテート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート-co-アジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート等の生分解性樹脂、
(2)低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びそれらの共重合体などの各種のポリオレフィン系樹脂、
(3)ポリ塩化ビニル(PVC)やポリ塩化ビニリデン(PVdC)などの塩素含有樹脂、
(4)テトラフルオロエチレン樹脂、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合樹脂、パーフルオロエチレンプロペン共重合樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂などのフッ素含有樹脂、
(5)エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の、(1)~(4)に示される付加系熱可塑性樹脂以外の付加系熱可塑性樹脂、
(6)ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン11、メタキシリレンアジパミド(mXD6)、ヘキサメチレンテレフタラミド(6T)、及びそれらの共重合体などの各種のポリアミド系樹脂、
(7)ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン-2,6-ナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリブチレンイソフタレート(PBI)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT)、ポリヘキサメチレンイソフタレート(PHI)、ポリヘキサメチレンナフタレート(PHN)ポリメチレンテレフタレート(PMT)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレン-p-オキシベンゾエート(PEOB)、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、及び共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル(生分解性ポリエステルを除く)、液晶ポリエステルなどの各種のポリエステル系樹脂、
(8)ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂等の、(6)及び(7)に示される縮合系熱可塑性樹脂以外の縮合系熱可塑性樹脂。
【0019】
前記中綿としては、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂繊維と、ポリプロピレン系樹脂繊維とを含む不織布成形体を用いることができる。
【0020】
前記中綿の目付は、主に100~2000Hzの領域における吸音率をより向上させる観点、吸音材の重量増による作業性の低下を防止する観点から、400~2900g/m2の範囲であることが好ましく、900~2400g/m2の範囲であることがより好ましく、1200~2100g/m2の範囲であることが更に好ましい。二酸化炭素排出量を少なくする観点からは、前記中綿の目付は1200~1800g/m2の範囲であることが特に好ましい。さらには吸音材を支持する中綿構造体の強度を確保する観点からは、前記中綿の目付は1200~1400g/m2の範囲であることが最も好ましい。前記中綿の目付が小さくなると中綿の自重により中綿(樹脂)が偏在しやすくなるから、後述する単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積総和を所定の範囲に定めることが特に重要となる。
【0021】
前記ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂繊維と、前記ポリプロピレン系樹脂繊維とは、公知の溶融紡糸法により製造されたものであってもよく、市販のものを購入したものであってもよい。前記ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂繊維は、例えば、平均繊維長さが10~100mmの範囲、平均繊維径が10~70μmの範囲のものを用いることができ、前記ポリプロピレン系樹脂繊維は、例えば、平均繊維長さが10~100mmの範囲、平均繊維径が10~50μmの範囲のものを用いることができる。なお、前記ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂繊維と前記ポリプロピレン系樹脂繊維の繊維径は異なる。
【0022】
前記不織布成形体におけるポリエステル系樹脂繊維と、ポリプロピレン系樹脂繊維との割合は、吸音率をより向上させる観点から、質量基準で、ポリエステル系樹脂繊維:ポリプロピレン系樹脂繊維が99:1~5:95の範囲であることが好ましく、95:5~10:90の範囲であることがより好ましく、80:20~20:80の範囲であることが更に好ましい。
【0023】
前記不織布成形体は、例えば、1~95質量%、例えば20質量%の前記ポリプロピレン系樹脂繊維と、99~5質量%、例えば30質量%のバインダー樹脂を用いたポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)バインダー繊維と、99~5質量%、例えば50質量%のバインダー樹脂以外の樹脂を用いたポリエステル繊維とを混合し、開繊機、次いでカード機にてウェブを形成した後、得られたウェブをクロスレイヤー機にて多層積層し、所定のギャップ間距離に設定された熱風エアー処理機で処理し、該ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系バインダー繊維と、該ポリプロピレン系樹脂繊維とを融着処理することにより得ることができる。
【0024】
前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと共重合可能な他のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。前記α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2以上、好ましくは2~8のα-オレフィンを挙げることができる。前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体である場合、前記α-オレフィンから選択される1種又は2種以上のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。前記ポリプロピレン系樹脂は、MFR(メルトフローレート)が、例えば1~500g/分の範囲のものを用いることができる。
【0025】
前記ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系バインダー繊維として、例えば、芯部にポリエチレンテレフタレート、鞘部にバインダー成分を備えるものを用いることができる。前記バインダー成分としては、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体、イソフタル酸又はそのエステル形成性誘導体、低級アルコール、ポリアルキレングリコール又はそのモノエーテルからなる共重合ポリエステルを挙げることができる。
【0026】
本発明の効果を奏するには、前記中綿に用いる複数繊維を組合せるにあたり、中綿に使用する複数繊維の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積総和を特定範囲とする。前記中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積総和は150~270m2/m2、好ましくは200~270m2/m2である。前記表面積総和が150m2/m2未満である場合、吸音材の吸音性が小さくなる。一方、前記表面積総和が270m2/m2より大きい場合、吸音材製造時等の二酸化炭素排出量が多くなる。主に100~2000Hzの領域における吸音率をより向上させつつ、二酸化炭素排出量を少なくするためには、前記数値範囲を備えることが重要である。
【0027】
前記表面積総和は、例えば以下のようにして算出される。中綿を構成する各繊維について、下記式(1)に従って中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積を求め、すべての繊維の合計を表面積総和とする。なお、中空繊維については、電子顕微鏡にて繊維断面の外径(n=10)を測定し、平均値を求める。デニールについては、繊維商品仕様書に記載のデニール値を使用する。
中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積(m2/m2)=繊維径(外径μm)/106×3.14×9000(m)/デニール(g)×目付(g/m2)×含有量(質量%)/100・・・(1)
【0028】
二酸化炭素排出量の少ない中綿においては、特定の繊維径を有する複数繊維を組合せがよりよい効果を生じる。前記中綿は、好ましくは、繊維径10μm以上20μm未満の細繊維と、繊維径20~30μmの中太繊維、及び繊維径40~50μmの極太繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの熱可塑性樹脂繊維とを含む不織布である。本発明者らは、前記細繊維に加えて、前記中太繊維、及び前記極太繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つを組合せた中綿は、前記細繊維のみが使用された中綿より、中綿(樹脂)の偏在をより防げることを見出した。特定の繊維径を有する複数の繊維を組み合わせることが、二酸化炭素排出量の少ない中綿にて良好な吸音性能を得る上で有用となる。
前記中太繊維、及び前記極太繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの熱可塑性樹脂繊維は、より好ましくは中空繊維を含む。中空繊維は繊維の配向度が高い傾向にあり繊維強度が高くなることから、吸音材または中綿の目付を下げるに際し、中空繊維は吸音材を支持する中綿構造体の強度の確保に寄与する。本発明者らは、中でも、前記中太繊維、又は前記極太繊維の一部を中空繊維とすることが好ましいことを見出した。
【0029】
前記中綿は、好ましくは熱可塑性樹脂中空繊維を含有し、前記中綿中の該熱可塑性樹脂中空繊維の含有量は30質量%以上である。前記中綿中の該熱可塑性樹脂中空繊維の含有量が前記範囲であると、吸音材の樹脂使用量が少なくなる。また、吸音材または中綿の目付を下げた場合でも、吸音材を支持する中綿構造体の強度を確保することもできる。
【0030】
前記中太繊維及び前記極太繊維の含有量(合計)は、25質量%以上であることが好ましい。これにより吸音材を支持する中綿構造体の強度を確保することができ、中綿の偏在を防ぐことができる。上限は求められる性能に応じて適宜設定可能だが、吸音率をより向上させる観点からは、60質量%未満とすることが好ましく、50質量%以下とすることがより好ましい。
さらに前記中綿中の前記細繊維の含有量は、好ましくは50質量%以上80%以下である。前記中綿中の前記細繊維の含有量が前記範囲であると、主に100~2000Hzの領域における吸音率をより向上させる観点、吸音材の重量増による作業性の低下を防止する観点、二酸化炭素排出量を少なくする観点、更に吸音材を支持する中綿構造体及び、吸音材の強度を確保する観点の全てが満たされる。これらの観点から、前記中綿中の前記細繊維の含有量は、55質量%以上75%以下であることがより好ましい。
【0031】
前記中綿は、複合繊維、異型繊維、捲縮繊維、分割繊維等の形態を含んでいてもよい。また、前記中綿は、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、難燃剤、撥水剤、油剤、帯電防止剤、着色剤、無機物等を含んでいてもよい。
【0032】
<表皮材>
前記表皮材は、熱可塑性樹脂からなる繊維を含む不織布からなる。前記表皮材は、前記中綿と水との接触をより妨げる観点から、200~2000mmH2Oの範囲の耐水圧を備えることが好ましく、200~500mmH2Oの範囲の耐水圧を備えることがより好ましく、250~450mmH2Oの範囲の耐水圧を備えることが更に好ましく、280~400mmH2Oの範囲の耐水圧を備えることが特に好ましい。前記表皮材の耐水圧は、例えば、前記表皮材を構成する繊維の平均繊維径をより小さくすること、前記表皮材の密度を上げること、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維を使用すること、および、前記表皮材の目付を上げることからなる群から選ばれる少なくとも1つの手法などの手法により、より上昇させられる。
【0033】
前記表皮材の通気度は、耐水圧をより向上させて前記中綿と水の接触をより防止する観点、及び前記中綿側に音波を適度に伝えて吸音率を良好に保つ観点から、5~200cm3/cm2/秒の範囲であることが好ましく、7~150cm3/cm2/秒の範囲であることがより好ましく、10~50cm3/cm2/秒の範囲であることが更に好ましい。
【0034】
前記表皮材の厚みは、耐水圧をより向上させて前記中綿と水の接触をより防止する観点、ショットブラスト耐性などの強度を維持する観点、厚すぎて中綿側に音波が伝わりにくくなることを防止する観点、及び厚すぎて超音波シール等の作業性が低下するのを防止する観点から、0.1~1.5mmの範囲であることが好ましく、0.3~1.0mmの範囲であることがより好ましい。
【0035】
前記表皮材の表面付近に位置する繊維の平均繊維径(以下、表面繊維径ということがある)は、吸音材を支持する構造体の強度を確保する観点から、10~100μmの範囲にあることが好ましく、ショットブラスト耐性をより向上させる観点、及び通気度を適度な範囲に制御する観点から、20~100μmの範囲にあることが好ましく、25~50μmの範囲にあることがより好ましい。また、ショットブラスト耐性をより向上させる観点から、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維において表面繊維径を上記範囲とすることが特に好ましい。
【0036】
前記表皮材を構成する前記不織布に用いられる前記ポリプロピレン系樹脂は、前記中綿に用いられるポリプロピレン系樹脂と同様に、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと共重合可能な他のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。前記α-オレフィンとしては、前記中綿に用いられるポリプロピレン系樹脂の場合と同様にα-オレフィンの1種又は2種以上が用いられる。
【0037】
前記表皮材を構成する繊維は、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、難燃剤、撥水剤、油剤、帯電防止剤、着色剤、無機物等を含んでいてもよい。
【0038】
前記表皮材を構成する前記不織布に用いられる前記ポリプロピレン系樹脂としては、MFR(メルトフローレート)が、例えば10~100g/分の範囲にあるものを用いることができる。前記吸音材1では、前記表皮材3が前記範囲の耐水圧を備え、シール部4で内部がシールされていることにより、前記中綿2が水と接触することがなく、水分が多い環境下でも吸音率が低下し難い。
【0039】
前記表皮材は、単層の不織布であってもよく、複数の不織布が積層された積層不織布であってもよい。前記表皮材3を構成する不織布は、特定の不織布に制限されず、スパンボンド不織布およびメルトブローン不織布からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。前記表皮材は、吸音材としてのショットブラスト耐性などの強度をより向上させる観点から、少なくともスパンボンド不織布を1層以上含むことが好ましい。また、耐水圧及び通気度を好ましい範囲に制御する観点から、少なくともメルトブローン不織布を1層以上含むことが好ましい。なお、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布は、平均繊維径により区別される。本明細書における実施態様において、スパンボンド不織布の平均繊維径は10~100μmの範囲であり、メルトブローン不織布の平均繊維径は0.5~5μmの範囲である場合がある。
【0040】
前記表皮材が含む不織布を構成する繊維の平均繊維径が小さい(細い)ほど、前記標記材は緻密であり、その耐水圧は優れている。一方で雹、霰、小石等の固体の衝突に対する耐摩耗性(耐ショットブラスト性)の見地から、前記繊維の平均繊維径は大きい(太い)ことが望ましい。また、スパンボンド不織布に含まれる繊維の平均繊維径は、メルトブローン不織布に含まれる繊維の平均繊維径より大きい。
【0041】
そこで、前記表皮材は、例えば、10~50μmの範囲の平均繊維径を備えるポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む第1のスパンボンド不織布と、第1のスパンボンド不織布の上に位置する0.5~5μmの範囲の平均繊維径を備えるポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含むメルトブローン不織布と、該メルトブローン不織布の上に位置する10~50μmの範囲の平均繊維径を備えるポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む第2のスパンボンド不織布との少なくとも3層の構造(以下、3層の構造をSMS構造又はPP-SMS構造ということがある)を備えていてよい。また、前記表皮材は、25~50μmの範囲の平均繊維径を備えるポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む第3のスパンボンド不織布を更に含むものであってもよい。もしくは、第1乃至第3のスパンボンド不織布のいずれかのスパンボンド不織布層のみからなるものであってもよい。ここで、「スパンボンド不織布層のみからなる」とは、メルトブローン不織布などの他の製造方法によって製造した不織布を含まないことを意味し、同一または異なるスパンボンド不織布を複数含むことを除外しない。
【0042】
表皮材3が、前記の少なくとも3層の構造を備える場合、内層となる前記メルトブローン不織布の平均繊維径が細いため緻密になることにより前記範囲の耐水圧を確保できる。その一方で、前記メルトブローン不織布は、含有する繊維の平均繊維径が小さいため、毛羽立ちやすく、ショットブラスト耐性に劣る場合があるので、前記第1又は第2のスパンボンド不織布を外層とすることにより該メルトブローン不織布を保護でき、ショットブラスト耐性がより優れる傾向にある。
【0043】
さらに、表皮材3は、前記第2のスパンボンド不織布の上に位置する10~100μmの範囲の平均繊維径を備える繊維を含む第3のスパンボンド不織布を備える、少なくとも4層の構造(以下、4層の構造をSSMS構造又はPP-SMSS構造ということがある)を備えていてもよい。表皮材3は、前記第3のスパンボンド不織布を最表面に備えることにより、より優れたショットブラスト耐性を得ることができる。前記第3のスパンボンド不織布は、例えば、平均繊維径が25~50μmの範囲にあり、目付が70~150g/m2の範囲にあることが好ましい。また、主に100~2000Hzの領域における吸音率をより向上させる観点、吸音材の重量増による作業性の低下を防止する観点、二酸化炭素排出量を少なくする観点、更に吸音材を支持する中綿構造体及び、吸音材の強度を確保する観点の全ての観点からは、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維を使用する前記範囲の第3のスパンボンド不織布を用いることが好ましい。
【0044】
また、表皮材3が、スパンボンド不織布層のみからなる場合、例えば、平均繊維径が10~100μmの範囲、目付が70~200g/m2の範囲にある前記第1~第3のスパンボンド不織布のいずれかを含むことにより、前記範囲の耐水圧と前記吸音率とを兼ね備えることができる。前記スパンボンド不織布層は、前記第3のスパンボンド不織布単層又は複数層からなるものでもよく、該第3のスパンボンド不織布に他のスパンボンド不織布が積層されていてもよい。
【0045】
また、表皮材3は、スパンボンド不織布層のみからなる場合、表面付近に位置する繊維の平均繊維径(以下、表面繊維径ということがある)が20~100μmの範囲、例えば30μm超50μm以下の範囲にあることにより、優れたショットブラスト耐性を得ることができる傾向がある。前記スパンボンド不織布層では、例えば、エンボスロールを140~170℃の範囲の温度、ミラーロールを140~170℃の範囲の温度に設定してエンボス加工(熱圧着加工)を施して溶着面積比率を15%以上とすることにより、表面繊維径を前記範囲とすることができ、非エンボス部における繊維間の融着が促進されることにより見かけ上の繊維径が太くなる。また、同様の理由で、エンボス加工時の溶着面積比率を20%以上としたり、同じ溶着面積比率でもエンボス柄を0.7mm角大以上の大きな柄を採用したりすることで、ショットブラスト耐性を向上させることができる。
【0046】
前記スパンボンド不織布は、公知のスパンボンド不織布成型機を用いて製造され得る。より具体的には、スパンボンド不織布は、例えば、原料となるポリプロピレン系樹脂を、押出機を用い溶融し、溶融した組成物を、複数の紡糸口金から吐出し、繊維状の樹脂を必要に応じて冷却し延伸させた後、捕集面上に堆積させ、エンボスロールで加熱加圧処理することによって製造され得る。
【0047】
また、前記メルトブローン不織布は、公知のメルトブローン不織布成型機を用いて製造され得る。より具体的には、メルトブローン不織布は、例えば、原料となるポリプロピレン系樹脂が溶融され、紡糸ノズルから吐出されるとともに、高温高圧ガスにより牽引して繊維化されたポリプロピレンメルトブローン繊維が多孔ベルト又は多孔ドラムなどのコレクターに捕集され、堆積されることによって製造され得る。
【0048】
シール部4は、熱圧着又は超音波シールにより形成され得る。シール部4は、表皮材3、3の周縁部に中綿2を取り囲むように連続して形成されていてもよく、断続的に形成されていてもよい。シール部4は、断続的に形成される場合、平行な複数のシール部4が1つのシール部4の不連続部を他のシール部4の連続部で補完するように形成されていることが好ましい。
【0049】
シール部4の耐水圧は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、水の侵入をより抑制する観点から、100mmH2O以上が好ましく、150mmH2O以上がより好ましく、200mmH2O以上が更に好ましく、250mmH2O以上が特に好ましく、300mmH2O以上が最も好ましい。シール部4の耐水圧の上限値は特に制限されないが、例えば2000mmH2O以下、1000mmH2O以下、または500mmH2O以下とできる。
【0050】
シール条件は特に限定されないが、超音波シールの場合、シール時の圧力、出力電圧、シール時間、シールパターンなどにより任意に調整可能である。シールが強すぎる場合、上記耐水圧が低下する傾向があるので、前記要因を適度に調整することにより、上記耐水圧を良好に保つことが可能である。
【0051】
シール部4の幅は、特に制限されないが、シール部の耐水圧をより向上させつつ、破れを抑制する観点から、0.1~5.0mmの範囲であることが好ましい。シール部4の幅は、例えば0.3mmとできる。
【0052】
前記吸音材において、前記中綿の、以下の試験方法による垂れ下がり量が75mm以下であることが、二酸化炭素排出量を低減しつつ、吸音性能を維持する観点から好ましい。中綿がある程度剛性を有することは、外部からの圧力による吸音材の変形を防ぎ、吸音性能を維持するために有用である。前記垂れ下がり量が20mm以上75mm以下であることがより好ましく、40mm以上75mm以下であることがより好ましい。本発明者らは、前記垂れ下がり量が上記範囲を備える場合、前記吸音材の中綿が自重により偏在せずに長期保管できることを見出した。
【0053】
前記吸音材において、環境省廃棄物・リサイクル対策部企画課循環型社会推進室により報告された3R 原単位の算出方法に準じて算出した、前記表皮及び前記中綿の二酸化炭素排出量が5.0以上8.0kg/m2以下である吸音材であることが、二酸化炭素排出量を低減しつつ、吸音性能を維持する観点から好ましい。
【0054】
<吸音パネル>
次に、図3を参照して、本発明の吸音パネルの1つの実施形態について説明する。
図3に示すように、本実施形態の吸音パネル11は、吸音材1と、吸音材1を収容するフレーム14とを備える。フレーム14は、底部を形成する矩形状の遮蔽板12と遮蔽板12の四辺から立ち上がる側壁13とからなり、上方に開放端部を備える箱状体であり、吸音材1がフレーム14に収容されたときにフレーム14の開放端部に配置される保護パネル15と、フレーム14の裏面に配置され吸音パネル11を建造物等に取り付ける場合に吸音パネル11を支持する支持部16とを備える。
【0055】
フレーム14は、遮蔽板12、側壁13、支持部16が一体として形成されていてもよく、別々の部材を接続して形成されていてもよい。フレーム14の材質は、天候、水分等に対する耐久性を備える材料であれば特に制限されず、金属製又は樹脂製とできる。金属としては、アルミニウム、ステンレス等の軽量な金属が好ましく用いられる。
【0056】
保護パネル15は、吸音材1を雹、霰、小石等の固体から保護しつつ、音波の侵入を容易にするものであることが好ましい。そのため、本実施形態において、保護パネル15は表面に多数の貫通孔15aが配置されているパンチングプレートが好ましく用いられるが、吸音材1を保護しつつ、音波の侵入を容易にするものであればよく、パンチングプレートに限定されるものではない。保護パネル15の表面の全面積に対する、貫通孔15aの合計の面積は、特に制限されないが、例えば、20%~80%の範囲である。
【0057】
保護パネル15の材質は、吸音材1の保護、音波の侵入、天候、水分等に対する耐久性を両立できれば特に制限されず、金属製又は樹脂製とできる。金属としては、アルミ、ステンレスなどの軽量な金属が好ましく用いられる。
【0058】
<吸音材の製造方法>
次に、図1又は図2に示す本実施形態の吸音材1の製造方法について説明する。
端部を融着する方法は、例えば、アイロンなどの熱源をあてて加熱して樹脂を溶融させて圧着する方法、超音波を付与して樹脂を溶融させつつ圧着する超音波シール法、レーザー融着法、振動溶着法、高周波溶着法、および熱板溶着法が挙げられる。これらの中でも、端部の融着は超音波シール法で行うことが好ましい。
【0059】
融着温度は、表皮材3の樹脂を融着できる温度であれば特に制限されないが、耐水圧の更なる向上と融着部の剥がれを抑制する観点から、130~160℃の範囲であることが好ましく、140~155℃の範囲であることがより好ましい。
【0060】
前記融着工程を超音波シール法で行う場合における超音波シール装置の出力は、表皮材3の樹脂を融着できれば特に制限されないが、耐水圧の更なる向上と融着部(シール部4)の剥がれを抑制する観点から、1~5Vの範囲であることが好ましい。また、圧着における圧力は、表皮材3の樹脂を融着できれば特に制限されないが、耐水圧の更なる向上と融着部の剥がれを抑制する観点から、0.1~5MPaの範囲であることが好ましい。また、融着部を形成する速度は、融着部の剥がれを抑制しつつ、作業効率を向上させる観点から、1~30m/分が好ましい。
【実施例0061】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
実施例及び比較例において、各種物性は以下のとおりに測定ないし算出された。
(1)目付
吸音材から側周面を含まないように10cm角の試料を5点採取した。そして、各試料(吸音材、中綿)の質量を測定し、合計の質量を合計の面積で除して目付(g/m2)を算出した。
【0063】
(2)平均繊維径
スパンボンド不織布については、10mm×10mmの試験片を10点採取し、顕微鏡(株式会社ニコン製、商品名:ECLIPSE E400)を用い、倍率50倍で、1試験片毎に任意の20箇所の径をμm単位で小数点第1位まで読み取り、その平均値を平均繊維径とした。メルトブローン不織布については、採取した試料片の構成繊維30本の繊維径(μm)を、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、型式名:SU3500形)を用いて、倍率500倍又は1000倍で測定し、その平均値を平均繊維径とした。
【0064】
(3)中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積総和
中綿を構成する各繊維について、下記式(1)に従って中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積を求め、すべての繊維の合計を表面積総和とした。中空繊維については、電子顕微鏡にて繊維断面の外径(n=10)を測定し、平均値を求めた。デニールについては、繊維商品仕様書に記載のデニール値を使用した。
中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積(m2/m2)=繊維径(外径μm)/106×3.14×9000(m)/デニール(g)×目付(g/m2)×含有量(質量%)/100・・・(1)
【0065】
(4)吸音率
JIS A 1405-2(伝達関数法)に準じて、太管として内径100mmの音響管を用い、細管として内径29mmの音響管を用い、垂直入射吸音率を測定した。前記所定の大きさにカットした中綿の表裏両面に、SMS構造不織布又は、SSMS構造不織布(この場合、第3のスパンボンド不織布側が最表面となる向きで積層したSSMS構造不織布)を、配置して測定した。なお、1/3オクターブバンド中心周波数125~1000Hzの吸音率は太管での測定結果であり、1250~6300Hzの吸音率は細管での測定結果である。
【0066】
(5)二酸化炭素排出量
環境省廃棄物・リサイクル対策部企画課循環型社会推進室により報告された3R 原単位の算出方法に準じて算出した(https://www.env.go.jp/press/files/jp/19747.pdfを参照)。ここで、本発明におけるリサイクル繊維とは、リユースされた繊維を包含する概念として扱われ、リサイクル繊維の原油採取から樹脂製造までの二酸化炭素排出量をゼロとして算出した。また、二酸化炭素排出量の削減率を精緻に評価する観点から、樹脂~吸音材製造までの二酸化炭素排出量として、ポリプロピレン系樹脂繊維を含む不織布およびポリオレフィン繊維、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系繊維は、それぞれ「カーボンフットプリント制度試行事業CO2換算量共通原単位データベースver.4.01(国内データ)」の公開用整理番号JP212022、およびJP212024のデータを使用して算出した。また、吸音材を製造する工程で生じうる二酸化炭素排出量は考慮せず、ゼロとした。
ポリプロピレン系樹脂繊維を含む不織布およびポリオレフィン繊維1kgあたりの原油採取から樹脂製造までの二酸化炭素排出量は、1.49kgの値を用い、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系繊維1kgあたりの原油採取から樹脂製造までの二酸化炭素排出量は、1.59kgの値を用いた。また、吸音材廃棄は焼却による廃棄とし、ポリプロピレン系樹脂繊維を含む不織布およびポリオレフィン繊維1kgあたりの焼却時の二酸化炭素排出量は、3.14kg、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系繊維1kgあたりの焼却時の二酸化炭素排出量は、2.29kgの値を用いた。
なお、GHG(Greenhouse Gas)排出量を二酸化炭素排出量として算出した。
「環境省廃棄物・リサイクル対策部企画課循環型社会推進室により報告された3R 原単位の算出方法に準じて算出した」とは、これらの前提条件を含んで算出した。二酸化炭素排出量の算出例を後述する。
【0067】
(6)中綿の垂れ下がり量
幅500mm×長さ1000mm×厚み50mmの中綿を、水平な床の上に載置した幅500mm以上×長さ1000mm以上の机の天板上に、該中綿の長さ方向と机の長さ方向が平行で、該中綿が机の幅方向に収まり、かつ該中綿が机の長さ方向の一方から600mmはみ出すように載置し、床から机の天板までの距離、及び床から中綿サンプルの先端部底面までの距離を測定し、下記式(2)により該中綿の垂れ下がり量を算出した。
垂れ下がり量=
床から机の天板までの距離-床から中綿サンプルの先端部底面までの距離・・・(2)
【0068】
(7)中綿の偏在
幅250mm×長さ250mm×厚み50mmの吸音材を用意し、60mm間隔の壁面間に鉛直方向に設置した。この状態で目視により、天面の形状が四角面を形成せず山形になった場合に、中綿が偏在したと判断した。
【0069】
(8)スパンボンド不織布における中空繊維の中空率
スパンボンド不織布の中空繊維をエポキシ樹脂にて包埋して、次いでミクロトームで切断し、試料片を得る。これを電子顕微鏡で(株式会社日立製作所製、型式名:SU3500形)観察し、得られた断面画像より観察された繊維断面画像における繊維全体の断面積と中区部断面積を求め、以下の式により算出した。
中空率[%]=(中空部の断面積/繊維全体の断面積)×100・・・(2)
中空率の値は繊維100本を測定した平均値とした。
【0070】
中綿を構成する繊維は以下の通りである。
繊維1:プロピレン系重合体の中実短繊維(宇部エクシモ株式会社製、商品名:UCファイバー、平均繊維径21μm、2デニール、平均繊維長51mm)
繊維2:バインダー繊維であるポリエチレンテレフタレート系樹脂の中実短繊維(ユニチカ株式会社製、商品名:メルティ4080、2デニール、平均繊維径14μm、平均繊維長51mm)
繊維3:ポリエチレンテレフタレート系樹脂の中実短繊維(平均繊維径14μm、2デニール、平均繊維長51mm)
繊維4-1:ポリエチレンテレフタレート系樹脂の中実短繊維(平均繊維径14μm、2デニール、平均繊維長51mm)
繊維4-2:ポリエチレンテレフタレート系樹脂の中実短繊維(平均繊維径14μm、2デニール、リサイクル繊維、平均繊維長51mm)
繊維5:ポリエチレンテレフタレート系樹脂の中実短繊維(平均繊維径25μm、6デニール、平均繊維長51mm)
繊維6:ポリエチレンテレフタレート系樹脂の中空短繊維(平均繊維径21μm、6デニール、中空率28%、平均繊維長51mm)
繊維7:ポリエチレンテレフタレート系樹脂の中空短繊維(平均繊維径45μm、14デニール、中空率28%、リサイクル繊維、平均繊維長51mm)
繊維8:ポリエチレンテレフタレート系樹脂のリサイクル中実短繊維(平均繊維径45μm、20デニール、平均繊維長51mm)
【0071】
[実施例1]
<表皮材の調製>
MFRが60g/10分のプロピレン単独重合体を用い、直径0.6mmの紡糸口金を有するスパンボンド不織布成形機で、230℃にて常法のスパンボンド法による溶融紡糸を行い、紡糸により得られた繊維を補集面上に堆積させ、平均繊維径が13μm、目付が10g/m2の第1のスパンボンド不織布を得た。
次に、MFRが400g/10分のプロピレン単独重合体を、押出機を用いて280℃にて溶融し、得られた溶融物を、紡糸口金から吐出するとともに、280℃の加熱空気を吹付ける常法のメルトブローン法によって平均繊維径3μmの繊維を、第1のスパンボンド不織布上に堆積させ、目付が5g/m2のメルトブローン不織布を形成した。
次に、メルトブローン不織布の上に、スパンボンド不織布と同一にして繊維を堆積させ、平均繊維径が13μm、目付が10g/m2の第2のスパンボンド不織布を形成した。
次に、第1のスパンボンド不織布、メルトブローン不織布、及び第2のスパンボンド不織布がこの順で積層した積層体を、温度をエンボスロール145℃、ミラーロール150℃に設定した刻印面積率18%の熱エンボスロールにて一体化し、メルトブローン不織布の表裏両面に第1のスパンボンド不織布と第2のスパンボンド不織布とが積層された3層構造(SMS構造)不織布を得た。得られたSMS構造不織布の目付は25g/m2であった。
次に、MFRが60g/10分のプロピレン単独重合体を用い、直径1.3mmの紡糸口金を有するスパンボンド不織布成形機で、230℃にて常法のスパンボンド法による溶融紡糸を行い、紡糸により得られた繊維を前記SMS構造不織布の上に堆積させ、平均繊維径が35μm、目付が100g/m2の第3のスパンボンド不織布を形成した。
次に、前記SMS構造不織布と、前記SMS構造不織布の前記第2のスパンボンド不織布側に接するスパンボンド不織布との積層体を、温度をエンボスロール155℃、ミラーロール160℃に設定した刻印面積率18%の熱エンボスロール(エンボス柄0.9mm角)にて一体化し、表皮材として、前記SMS構造不織布の上に、前記スパンボンド不織布が積層された4層構造(SSMS構造)不織布を得た。前記SSMS構造不織布の目付は125g/m2、二酸化炭素排出量は0.7kg/m2であった。なお、前
記SSMS構造不織布の二酸化炭素排出量は、前記ポリプロピレン系樹脂繊維を含む不織布およびポリオレフィン繊維1kgあたりの原油採取から樹脂製造までの二酸化炭素排出量、ポリプロピレン系樹脂繊維を含む不織布1kgあたりの焼却時の二酸化炭素排出量、「カーボンフットプリント制度試行事業CO2換算量共通原単位データベースver.4.01(国内データ)」の公開用整理番号JP212022に基づいて下記の通りに算出した。
【0072】
<ポリプロピレン系繊維を使用した表皮材の二酸化炭素排出量の算出>
ポリプロピレン系繊維を使用した表皮材の二酸化炭素排出量は、以下のとおり算出した。
(ポリプロピレン系繊維を使用した表皮材の二酸化炭素排出量)=[(前記ポリプロピレン系樹脂繊維を含む不織布1kgあたりの原油採取から樹脂製造までの二酸化炭素排出量)+(前記ポリプロピレン系樹脂繊維を含む不織布1kgあたりの焼却時の二酸化炭素排出量)+(「カーボンフットプリント制度試行事業CO2換算量共通原単位データベースver.4.01(国内データ)」の公開用整理番号JP212022に基づいた二酸化炭素排出量)]×目付/1000・・・(3)
【0073】
<中綿の作製>
5質量部の繊維1、30質量部の繊維6、30質量部の繊維8、及び35質量部の繊維3を混合し、開繊機、次いでカード機にてウェブを形成したのち、クロスレイヤー機にて多層積層し、約50mmのギャップ間距離に設定された熱風エアー処理機にて処理し、プロピレン系重合体の短繊維とポリエチレンテレフタレート系樹脂の短繊維とを含む約50mm厚のシート状不織布成形体を得た。
【0074】
<吸音材の作製>
前記中綿を250mm(縦)×250mm(横)×49mm(厚み)にカットした。次に、カットした前記中綿の表裏両面に、前記SSMS構造不織布を、前記第3のスパンボンド不織布側が最表面になるようにして配置し、前記中綿の周囲の前記SSMS構造不織布の周縁部を、超音波シール機(精電舎電子工業株式会社製、商品名:JII430SA)にて出力2.0V、圧力0.3MPa、速度5m/分の条件で融着して0.3mm幅の連続したシール部を形成し、前記中綿が前記SSMS構造不織布に内包された吸音材を得た。前記シール部の外周の余った部分は裁断して削除した。
【0075】
前記吸音材の物性及び性能を測定ないし算出した。結果を表1に示す。なお、表1中の「中綿のCO2排出量」は、前記ポリプロピレン系樹脂繊維1kgあたりの原油採取から樹脂製造までの二酸化炭素排出量、前記ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂繊維1kgあたりの原油採取から樹脂製造までの二酸化炭素排出量、前記ポリプロピレン系樹脂繊維1kgあたりの焼却時の二酸化炭素排出量、前記ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂繊維1kgあたりの原油採取から樹脂製造までの二酸化炭素排出量、「カーボンフットプリント制度試行事業CO2換算量共通原単位データベースver.4.01(国内データ)」の公開用整理番号JP212022及びJP212024に基づいて下記の通りに算出した。
【0076】
<ポリプロピレン系繊維及びポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂繊維を使用した中綿の二酸化炭素排出量の算出>
ポリプロピレン系繊維及びポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂繊維を使用した中綿の二酸化炭素排出量は、以下のとおり算出した。
(ポリプロピレン系繊維及びポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂繊維を使用した中綿の二酸化炭素排出量)=[(前記ポリプロピレン系樹脂繊維1kgあたりの原油採取から樹脂製造までの二酸化炭素排出量)+(前記ポリプロピレン系樹脂繊維1kgあたりの焼却時の二酸化炭素排出量)+(「カーボンフットプリント制度試行事業CO2換算量共通原単位データベースver.4.01(国内データ)」の公開用整理番号JP212022に基づいた二酸化炭素排出量)]×中綿の目付×[ポリプロピレン系樹脂繊維の中綿中の含有量(質量%)]/1000+[(前記ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂繊維1kgあたりの原油採取から樹脂製造までの二酸化炭素排出量)+(前記ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂繊維1kgあたりの焼却時の二酸化炭素排出量)+(「カーボンフットプリント制度試行事業CO2換算量共通原単位データベースver.4.01(国内データ)」の公開用整理番号JP212024に基づいた二酸化炭素排出量)]×中綿の目付×[ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂繊維の中綿中の含有量(質量%)]/1000・・・(4)
【0077】
[実施例2~12]及び[比較例1~5]
中綿の作製で使用する繊維を表1~3に示す通りに変更する以外、実施例1と同様にして吸音材を作成し、当該吸音材の物性及び性能を測定ないし算出した。結果を表1~3に示す。
【0078】
[実施例13]
<表皮材の調製>
MFRが60g/10分のプロピレン単独重合体を用い、直径0.6mmの紡糸口金を有するスパンボンド不織布成形機で、230℃にて常法のスパンボンド法による溶融紡糸を行い、紡糸により得られた繊維を補集面上に堆積させ、平均繊維径が13μm、目付が10g/m2の第1のスパンボンド不織布を得た。
次に、MFRが400g/10分のプロピレン単独重合体を、押出機を用いて280℃にて溶融し、得られた溶融物を、紡糸口金から吐出するとともに、280℃の加熱空気を吹付ける常法のメルトブローン法によって平均繊維径3μmの繊維を、第1のスパンボンド不織布上に堆積させ、目付が5g/m2のメルトブローン不織布を形成した。
次に、メルトブローン不織布の上に、スパンボンド不織布と同一にして繊維を堆積させ、平均繊維径が13μm、目付が10g/m2の第2のスパンボンド不織布を形成した。
次に、第1のスパンボンド不織布、メルトブローン不織布、及び第2のスパンボンド不織布がこの順で積層した積層体を、温度をエンボスロール145℃、ミラーロール150℃に設定した刻印面積率18%の熱エンボスロールにて一体化し、メルトブローン不織布の表裏両面に第1のスパンボンド不織布と第2のスパンボンド不織布とが積層された3層構造(SMS構造)不織布を得た。得られたSMS構造不織布の目付は25g/m2であった。
次に、MFRが60g/10分のプロピレン単独重合体を用い、図4に示すような孔形状を有し、断面が略円状の中空形状となる紡糸口金を有するスパンボンド不織布成形機で、230℃にて常法のスパンボンド法による溶融紡糸を行い、紡糸により得られた繊維を前記SMS構造不織布の上に堆積させ、平均繊維径が40μm、中空率16%、目付が100g/m2の第3のスパンボンド不織布を形成した。
次に、前記SMS構造不織布と、前記SMS構造不織布の前記第2のスパンボンド不織布側に接するスパンボンド不織布との積層体を、温度をエンボスロール155℃、ミラーロール160℃に設定した刻印面積率18%の熱エンボスロール(エンボス柄0.9mm角)にて一体化し、表皮材として、前記SMS構造不織布の上に、前記スパンボンド不織布が積層された4層構造(SSMS構造)不織布を得た。前記SSMS構造不織布の目付は125g/m2、二酸化炭素排出量は0.7kg/m2であった。なお、前
記SSMS構造不織布の二酸化炭素排出量は、前記ポリプロピレン系樹脂繊維を含む不織布およびポリオレフィン繊維1kgあたりの原油採取から樹脂製造までの二酸化炭素排出量、ポリプロピレン系樹脂繊維を含む不織布1kgあたりの焼却時の二酸化炭素排出量、「カーボンフットプリント制度試行事業CO2換算量共通原単位データベースver.4.01(国内データ)」の公開用整理番号JP212022に基づいて下記の通りに算出した。
前記表皮および中綿の作製で使用する繊維を表2に示す通りに変更する以外、実施例1と同様にして吸音材を作成し、当該吸音材の物性及び性能を測定ないし算出した。結果を表2に示す。
【0079】
[実施例14]
中綿の作製で使用する繊維を表2に示す通りに変更する以外、実施例13と同様にして吸音材を作成し、当該吸音材の物性及び性能を測定ないし算出した。結果を表2に示す。
【0080】
[実施例15]
実施例13の第3のスパンボンド不織布の目付を80g/m2、中綿の作製で使用する繊維を表3に示す通りに変更する以外、実施例13と同様にして吸音材を作成し、当該吸音材の物性及び性能を測定ないし算出した。結果を表3に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積総和が小さすぎる比較例1~3の吸音パネルの吸音率は低かった。また、中綿の単位面積当たりの中綿繊維外径の表面積総和が大きすぎる比較例4及び5の吸音パネルの吸音率は非常に低く、これらの中綿は偏在し、これらの二酸化炭素排出量は多かった。一方、実施例1~15の吸音パネルの吸音率は高く、これらの吸音パネルを構成する樹脂の二酸化炭素排出量は少なく、これらが備える中綿は偏在しなかった。
【符号の説明】
【0085】
1 吸音材、2 中綿、3 表皮材、4 シール部、11 吸音パネル、12 遮蔽板、
13 側壁、14 フレーム、15 保護パネル、16 支持部。
図1
図2
図3
図4