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  • 特開-ボールペン用キャップ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093278
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ボールペン用キャップ
(51)【国際特許分類】
   B43K 23/12 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B43K23/12 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209553
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】阿部 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】織戸 一豪
(72)【発明者】
【氏名】中村 栄
(57)【要約】
【課題】本発明は、キャップのクラックが抑制できる新規なシールゴムを有するボールペン用キャップを提供する。
【解決手段】本発明のボールペン用キャップは、筒状のキャップ本体10、クリップ部材20、及びシールゴム30
を有しており、
シールゴム近傍領域A’に対向する前記シールゴム挿入部の外周側の領域B’において、前記キャップ本体と前記クリップ部材とが係合しており、前記シールゴム近傍領域A”が、前記シールゴム接触領域Aの両端を軸線方向に2mm拡張した領域であり、かつ
前記シールゴム30が、シールゴムが、ゴム母材、及び可塑剤を含有しており、前記可塑剤が、シクロヘキサンジカルボン酸エステル、又はテレフタル酸ジオクチルである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の両端部が開いている、筒状のキャップ本体、
クリップ部、天冠部、及びシールゴム挿入部を有する、クリップ部材、及び
前記シールゴム挿入部の内部に挿入されているシールゴム
を有しており、
前記シールゴムが、前記シールゴム挿入部の内周側のシールゴム接触領域Aにおいて、前記シールゴム挿入部と接触しており、
前記シールゴム挿入部が前記キャップ本体の一方の端部に挿入されて、前記天冠部が前記一方の端部を少なくとも部分的に閉塞しており、かつ前記シールゴム挿入部の外周側と前記キャップ本体の内周側とが係合しており、
シールゴム近傍領域A’に対向する前記シールゴム挿入部の外周側の領域B’において、前記キャップ本体と前記クリップ部材とが係合しており、前記シールゴム近傍領域A”が、前記シールゴム接触領域Aの両端を軸線方向に2mm拡張した領域であり、
かつ
前記シールゴムが、ゴム母材、及び可塑剤を含有しており、前記可塑剤が、シクロヘキサンジカルボン酸エステル、又はテレフタル酸ジオクチルである、
ボールペン用キャップ。
【請求項2】
前記シクロヘキサンジカルボン酸エステルが、1,2-シクロエキサンジカルボン酸ジイソニルエステルである、請求項1に記載のボールペン用キャップ。
【請求項3】
前記シクロヘキサンジカルボン酸エステル又はテレフタル酸ジオクチルの含有率が、前記シールゴムの質量に対して、1~15質量%である、請求項1又は2に記載のボールペン用キャップ。
【請求項4】
前記ゴム母材が、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、シリコンゴムからなる群より選択される少なくとも一種で構成されている、請求項1又は2に記載のボールペン用キャップ。
【請求項5】
前記クリップ部材が、ポリカーボネート、及びABS樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含有している、請求項1又は2に記載のボールペン用キャップ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のボールペン用キャップを有する、ボールペン。
【請求項7】
軸と垂直の方向における前記シールゴムの直径の、前記ボールペンのボールの直径に対する比が、5~13である、請求項6に記載のボールペン。
【請求項8】
JIS K6253-3:2012に準拠して、タイプAデュロメータを用いて測定した、前記シールゴムの硬度が、25~55である、請求項1又は2に記載のボールペン用キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペン用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、キャップ式のボールペン、特にキャップ式の揮発性油性インキボールペン及び水性ボールペンにおいては、キャップを装着している際のインクの揮発や乾燥を抑制する目的で、キャップの内部にシール部材が設けられており、ボールペンの先端に押し当てられるようにされているシール部材を有するキャップが用いられている。このようなキャップは、既に数多くの構造のものが知られている。
【0003】
特許文献1では、少なくとも、揮発性油性インキを充填してなるボールペン本体と、該ボールペン本体のチップ側に着脱自在となり、内部にシール部材を有するキャップ本体とを備える油性ボールペンが開示されている。キャップ本体をボールペン本体のチップ側に装着した際には、キャップ本体のシール部材がチップ先端を覆うようにされている。キャップ本体のシール部材は、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)の中から選ばれるゴムから構成されている。
【0004】
引用文献2では、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップのチップ先端部を密閉する弾性体を配設してなるボールペンのキャップにおいて、前記弾性体が、チップ先端部に当接する部分側に突出した、縦断面が略U字状とするとともに、少なくともチップ先端部に当接する面が円弧形状であることを特徴とするボールペンのキャップが開示されている。
【0005】
特許文献3では、内部に装填された軟弾性体にボールペンのペン体先端が埋没してシールされるボールペン用キャップにおいて、天側に開口を有するとともに天側近傍内部にテーパー状の受け部が形成されたキャップ本体と、内部に筒状の嵌入部を有し、該キャップ本体の天側開口に該嵌入部が嵌入されてキャップ本体の天側開口を覆う天冠と、球状の軟弾性体からなり、前記軟弾性体がキャップ本体の天側開口から受け部に装填され、軟弾性体が、キャップ本体の天側開口に嵌入された天冠の嵌入部とキャップ本体の受け部により挟圧保持されたことを特徴とするボールペン用キャップが開示されている。
【0006】
特許文献3では、内部に装填された軟弾性体にボールペンのペン体先端が埋没してシールされるボールペン用キャップにおいて、キャップ本体と、天冠と、球状の軟弾性体からなる、ボールペン用キャップが開示されている。キャップ本体は、天側に開口を有するとともに天側近傍内部にテーパー状の受け部が形成されている。天冠は、内部に筒状の嵌入部を有し、該キャップ本体の天側開口に該嵌入部が嵌入されてキャップ本体の天側開口を覆っている。軟弾性体は、キャップ本体の天側開口から受け部に装填されており、かつキャップ本体の天側開口に嵌入された天冠の嵌入部とキャップ本体の受け部により挟圧保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-104139号公報
【特許文献2】特開2004-338315号公報
【特許文献3】特開平11-48682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
化学規制等により、シールゴムの可塑剤として、従来用いられているフタル酸系可塑剤以外の可塑剤を用いる方向にシフトしている。しかしながら、本発明者らは、使用する可塑剤の種類及びこの可塑剤を含有するシールゴムの特定の使用態様の組合せによっては、キャップにクラックが生じることを見いだした。
【0009】
そこで、本発明は、キャップのクラックが抑制できる新規なシールゴムを有するボールペン用キャップを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉軸線方向の両端部が開いている、筒状のキャップ本体、
クリップ部、天冠部、及びシールゴム挿入部を有する、クリップ部材、及び
前記シールゴム挿入部の内部に挿入されているシールゴム
を有しており、
前記シールゴムが、前記シールゴム挿入部の内周側のシールゴム接触領域Aにおいて、前記シールゴム挿入部と接触しており、
前記シールゴム挿入部が前記キャップ本体の一方の端部に挿入されて、前記天冠部が前記一方の端部を少なくとも部分的に閉塞しており、かつ前記シールゴム挿入部の外周側と前記キャップ本体の内周側とが係合しており、
シールゴム近傍領域A’に対向する前記シールゴム挿入部の外周側の領域B’において、前記キャップ本体と前記クリップ部材とが係合しており、前記シールゴム近傍領域A”が、前記シールゴム接触領域Aの両端を軸線方向に2mm拡張した領域であり、
かつ
前記シールゴムが、ゴム母材、及び可塑剤を含有しており、前記可塑剤が、シクロヘキサンジカルボン酸エステル、又はテレフタル酸ジオクチルである、
ボールペン用キャップ。
〈態様2〉前記シクロヘキサンジカルボン酸エステルが、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソニルエステルである、態様1に記載のボールペン用キャップ。
〈態様3〉前記シクロヘキサンジカルボン酸エステル又はテレフタル酸ジオクチルの含有率が、前記シールゴムの質量に対して、1~15質量%である、態様1又は2に記載のボールペン用キャップ。
〈態様4〉前記ゴム母材が、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、シリコンゴムからなる群より選択される少なくとも一種で構成されている、態様1~3のいずれか一項に記載のボールペン用キャップ。
〈態様5〉前記クリップ部材が、ポリカーボネート、及びABS樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含有している、態様1~4のいずれか一項に記載のボールペン用キャップ。
〈態様6〉態様1~5のいずれか一項に記載のボールペン用キャップを有する、ボールペン。
〈態様7〉軸と垂直の方向における前記シールゴムの直径の、前記ボールペンのボールの直径に対する比が、5~13である、態様6に記載のボールペン。
〈態様8〉JIS K6253-3:2012に準拠して、タイプAデュロメータを用いて測定した、前記シールゴムの硬度が、25~55である、態様1~7のいずれか一項に記載のボールペン用キャップ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャップのクラックが抑制できる新規なシールゴムを有するボールペン用キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(a)は、本発明のボールペン用キャップの側面断面図である。図1(b)は、図1(a)の枠Pに示す部分の拡大側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《ボールペン用キャップ》
図1(a)及び(b)に示すように、本発明のボールペン用キャップは、
軸線方向の両端部が開いている、筒状のキャップ本体10、
クリップ部22、天冠部24、及びシールゴム挿入部26を有する、クリップ部材20、及び
前記シールゴム挿入部26の内部に挿入されているシールゴム30
を有しており、
前記シールゴムが、前記シールゴム挿入部の内周側のシールゴム接触領域Aにおいて、前記シールゴム挿入部と接触しており、
前記シールゴム挿入部26が前記キャップ本体10の一方の端部に挿入されて、前記天冠部24が前記一方の端部を少なくとも部分的に閉塞しており、かつ前記シールゴム挿入部26の外周側と前記キャップ本体10の内周側とが係合しており、
シールゴム近傍領域A’に対向する前記シールゴム挿入部の外周側の領域B’において、前記キャップ本体と前記クリップ部材とが係合しており、前記シールゴム近傍領域A”が、前記シールゴム接触領域Aの両端を軸線方向に2mm拡張した領域であり、かつ
前記シールゴム30が、シールゴムが、ゴム母材、及び可塑剤を含有しており、前記可塑剤が、シクロヘキサンジカルボン酸エステル、又はテレフタル酸ジオクチルである。
【0014】
本発明において、「シールゴム接触領域」は、シールゴム挿入部の内周側の領域である。「シールゴム近傍領域」は、前記シールゴム接触領域Aの両端を軸線方向に2mm拡張した領域である。
【0015】
一般に、図1(b)に示すように、シールゴム近傍領域A’に対向するシールゴム挿入部の外周側の領域B’の範囲内において、キャップ本体10の第一の係合部10aと、シールゴム挿入部26の係合部26aとが係合している。この係合している位置は、当然に、シールゴム接触領域Aに対応するシールゴム挿入部の外周側の領域Bの範囲内にあってもよい。
【0016】
シールゴムの可塑剤としてフタル酸系可塑剤以外のものを用いた場合には、クリップ部材にクラックが生じることがあった。このクラックの原因は、キャップ本体とクリップ部材とが係合している箇所には、常に係合による引張応力が生じていること、及びシールゴムの可塑剤がシールゴム挿入部に浸透し、シールゴム挿入部を構成する材料を僅かに脆化させることであると、本発明者らは見出した。この状態で、長期にわたってボールペンを保存すると、クリップ部材がこの引張応力に耐久できないこととなり、破断が生じることがあった。
【0017】
これに対し、本発明者らは、可塑剤として上記の物質を用いることにより、クリップ部材を構成する材料の脆化を抑制し、その結果、クラックを抑制できることを見出した。
【0018】
また、可塑剤として上記の物質を用いることにより、シールゴムの潤滑性を良好にすることができる。これによれば、キャップ本体又はシールゴムの成分において、潤滑のための添加剤を用いることなく、容易にキャップを製造することができる。この潤滑性によれば、特にキャップの自動製造において、パーツフィーダーでのシールゴムの搬送性への悪影響が抑制されるとともに、シールゴムの挿入の際の挿入不良が抑制されることとなる。その結果、自動製造の稼働率を高めつつ、不良品を抑制することが可能となる。
【0019】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0020】
〈キャップ本体〉
キャップ本体は、軸線方向の両端部が開いている、筒状、特に円筒状のキャップ本体である。
【0021】
図1(b)に示すように、キャップ本体10は、クリップ部材と係合するための第一の係合部10aを有していてよい。第一の係合部10aの形状は、シールゴム挿入部の係合部26aの形状と対応する形状であってよく、例えば、シールゴム挿入部の係合部26aが係合凹部である場合には、第一の係合部10aは、係合凸部であってよい。
【0022】
また、図示しないが、キャップ本体は、ボールペンの保持部と係合するための第二の係合部を有していてよい。
【0023】
〈クリップ部材〉
クリップ部材は、クリップ部、天冠部、及びシールゴム挿入部を有する。
【0024】
クリップ部材は、ポリカーボネート、ABS樹脂、及びポリプロピレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含有しており、特にこれらから構成されている。
【0025】
クリップ部は、クリップとキャップ本体との間に紙又は衣服等を挟持することができる部分である。天冠部は、シールゴム挿入部がキャップ本体の一方の端部に挿入されたときに、この一方の端部を少なくとも部分的に閉塞できる部分である。これらの部分の態様については、公知の態様であってよい。
【0026】
シールゴム挿入部は、キャップ本体の一方の端部に挿入されており、かつ内部にシールゴムを挿入することができる部分である。図1(b)に示すように、シールゴム挿入部26は、キャップ本体10と係合するための係合部26aを有していてよい。この係合部26aの形状は、キャップ本体10の第一の係合部10aと対応する形状であってよく、例えば、第一の係合部10aが係合凸部である場合には、この係合部26aは、係合凹部であってよい。
【0027】
〈シールゴム〉
シールゴムは、シールゴム挿入部の内部に挿入されており、かつ、ゴム母材、及び可塑剤を含有している。
【0028】
シールゴムは、随意の他の成分を含有していてよい。他の成分としては、ゴム充填剤、補強剤、加硫剤、加硫促進剤、防腐剤等を用いることができる。
【0029】
シールゴムの形状は、球状であってもよく、又は板状であってもよい。
【0030】
シールゴムの寸法は、ボールペン用キャップのサイズ、及びボールペンのボールの直径に応じて決定することができる。例えば、シールゴムの軸と垂直の方向におけるシールゴムの直径は、2.0mm以上、2.5mm以上、3.0mm以上、3.3mm以上、3.5mm以上、4.0mm以上、4.5mm以上、又は4.7mm以上であってよく、また10.0mm以下、9.5mm以下、9.0mm以下、8.5mm以下、8.0mm以下、7.5mm以下、7.0mm以下、6.5mm以下、6.0mm以下、5.5mm以下、5.0mm以下、4.5mm以下、4.0mm以下、又は3.7mm以下であってよい。この直径とボールペンのボールの直径との関係に関しては、ボールペンに関して言及する。
【0031】
JIS K6253-3:2012に準拠して、タイプAデュロメータを用いて測定した、シールゴムの硬度は、25以上、30以上、又は35以上であってよく、また55以下、50以下、45以下、40以下、35以下、又は30以下であってよい。この硬度の測定は、シールゴムを構成する組成物を12mm×12mm×6mmの平板状に成形したものを用いて行うことができる。この硬度とボールペンのボールの直径との関係に関しては、ボールペンに関して言及する。
【0032】
シールゴムは、シールゴムを構成する材料を混錬させ、次いで成形することにより得ることができる。成形手段としては、公知の押出成形等を用いることができる。
【0033】
(ゴム母材)
ゴム母材は、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体等のニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、シリコンゴムからなる群より選択される少なくとも一種で構成されていてよい。
【0034】
ゴム母材の含有率は、シールゴムの質量に対して、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、又は55質量%以上であってよく、また75質量%以下、70質量%以下、又は65質量%以下であってよい。
【0035】
(可塑剤)
可塑剤としては、シクロヘキサンジカルボン酸エステル、例えば1,2-シクロエキサンジカルボン酸ジイソニルエステル、又はテレフタル酸ジオクチルを用いることができる。
【0036】
可塑剤の含有率は、シールゴムの質量に対して、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、又は12質量%以上であってよく、また30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、又は17質量%以下であってよい。
【0037】
(ゴム充填剤)
ゴム充填剤としては、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ等を用いることができる。
【0038】
ゴム充填剤の含有率は、シールゴムの質量に対して、15質量%以上、17質量%以上、20質量%以上、又は22質量%以上であってよく、また35質量%以下、33質量%以下、30質量%以下、又は28質量%以下であってよい。
【0039】
《ボールペン》
本発明のボールペンは、上記のボールペン用キャップを有する。本発明のボールペンは、筆記部、インク貯蔵部、及び保持部を具備していてよい。
【0040】
本発明のボールペンにおいて、シールゴムの直径の、ボールペンのボールの直径に対する比は、5以上、6以上、7以上、又は8以上であり、かつ13以下、12以下、11以下、又は10以下であることが、キャップ装着時のボールペンの潜り込み深さを適正なものにし、それによってシール性を確保する観点から好ましい。
【0041】
特に、ボールの直径が0.28~0.7mmである場合には、シールゴムの径は、2.0mm以上、2.5mm以上、3.0mm以上、又は3.3mm以上であり、かつ6.0mm以下、5.5mm以下、5.0mm以下、4.5mm以下、4.0mm以下、又は3.7mm以下であることが好ましい。
【0042】
また、ボールの直径が0.7mm超である場合には、シールゴムの径は、3.5mm以上、4.0mm以上、4.5mm以上、又は4.7mm以上であり、かつ10.0mm以下、9.5mm以下、9.0mm以下、8.5mm以下、8.0mm以下、7.5mm以下、7.0mm以下、6.5mm以下、6.0mm以下、5.5mm以下、又は5.0mm以下であることが好ましい。
【0043】
ボールペンのボールとして大きいものを採用する場合、シールゴムの強度を弱くすることが好ましい。より具体的には、JIS K6253-3:2012に準拠して、タイプAデュロメータを用いて測定した、シールゴムの硬度は、25以上、30以上、又は35以上であることが、シールゴムの劣化を抑制し、それによって、長期間シール性を維持する観点から好ましい。この硬度は、55以下、50以下、45以下、40以下、35以下、又は30以下であることが、シールゴムの反発力を過剰に高くせず、それによって、キャップの外れや緩みを抑制する観点から好ましい。
【0044】
この硬度は、シクロヘキサンジカルボン酸エステル、又はテレフタル酸ジオクチルの含有率を多くするか、又はゴム充填剤の含有率を少なくすることにより低減させることができ、逆も同様である。
【0045】
特に、ボールの直径が0.28~0.7mmである場合には、シールゴムの硬度は、35以上であり、かつ55以下、50以下、45以下、又は40以下であることが、上記の観点から好ましい。
【0046】
また、ボールの直径が0.7mm超である場合には、シールゴムの硬度は、25以上、30以上、又は35以上であり、かつ45以下、又は40以下であることが、上記の観点から好ましい。
【0047】
〈インク貯蔵部〉
インク貯蔵部には、インクが貯蔵されていてよい。インクは、水性インクであってもよく、又は油性インクであってもよく、また、水性インクは、ゲルインクであってもよい。
【0048】
ここで、水性インクは、概して、水及び着色材を少なくとも含有しているインクを指し、油性インクは、有機溶剤及び着色材を少なくとも含有しているインクを指し、ゲルインクは、粘度調整剤を更に含有している水性インクを意味するものである。
【0049】
インク貯蔵部は、インクを貯蔵し、かつ筆記部にインクを供給することができる物であれば、任意の物を用いることができ、コレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式であってもよく、又は中綿式のインク貯蔵部であってもよい。
【0050】
また、インク貯蔵部は、筆記部と一体となっていてもよく、特にボールペン用リフィールであってよい。
【0051】
〈筆記部〉
筆記部は、ボールペンチップを先端部に有する筆記部であることができる。
【0052】
ボールペンチップは、ボール、及びボールを回転自在に抱持しているホルダーで構成されていてよい。ボールは、ボールペンのボールに用いられる随意の材料で構成されていてよく、例えばステンレス鋼、超硬合金、セラミックス等で構成されていてよい。またボールペンチップの形状は特に限定されず、例えば砲弾形状、ニードル形状などであってよい。
【0053】
ボールペンチップのボールの直径は、0.28mm以上、0.30mm以上、0.40mm以上、0.50mm以上、又は0.60mm以上であってよく、また1.20mm以下、1.10mm以下、1.00mm以下、0.90mm以下、0.80mm以下、又は0.70mm以下であってよい。
【0054】
〈保持部〉
保持部は、本発明のボールペンを手で保持することを可能とする部分であってよく、インク貯蔵部を収納できる中空構造を有していてよい。保持部は、ボールペン用キャップのキャップ本体と対応した形状、例えば円筒状、多角筒状等の形状を有していてよい。また、保持部は、ボールペン用キャップのキャップ本体と嵌合するための嵌合部を有していてよい。
【実施例0055】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0056】
《ボールペン用キャップの作製》
表1に示す物質を、表1に示す含有率となるようにして混錬し、シールゴム用組成物を作製した。
【0057】
得たシールゴム組成物を、12mm×12mm×6mmの平板状に成形し、タイプAデュロメータを用いて、得たシールゴム用組成物の硬度を測定した。
【0058】
次いで、三菱鉛筆株式会社から商業的に入手可能な表1に示す型番のボールペンのキャップの形に合わせて、得られたシールゴム用組成物を、表1に示す形状で成形することにより、シールゴムを得た。
【0059】
作製したいずれのボールペンについても、シールゴムが接しているシールゴム挿入部の内周側の部分に対応する外周側の部分の両端を軸線方向に2mm拡張した部分において、キャップ本体と前記クリップ部材とが係合していた。
【0060】
《評価》
〈シールゴム挿入時の潤滑性〉
上記で得られた各シールゴムを、表1に示す各型番のボールペンのキャップのシールゴム挿入部に、荷重1.0Nで挿入した場合のシールゴムの潤滑性を以下の基準で評価した。尚、正常に挿入できるとは、挿入時にシールゴムの歪み等が発生しない状態で挿入できたことを意味する。
A:引っ掛かりがなく、正常に挿入できた。
B:若干の引っ掛りがあるが、正常に挿入できた。
C:引っ掛かりがあり、正常に挿入できなかった。
【0061】
〈クラック試験〉
作製したボールペンを、温度35℃の環境で4週間放置した。次いで、シールゴム挿入部からシールゴムを除去して、シールゴム挿入部における外観を目視により確認した。評価基準は以下のとおりである。
A:外観に変化が見られなかった。
B:シールゴムが接していた位置において微細なクラックが生じていた。
C:放置している間にキャップがクラックにより破損した。
【0062】
〈化学規制〉
表1では、化学規制の評価に関し、以下の評価基準で言及している。
A:化学規制に照らして、問題がない。
B:化学規制に照らして、問題があるか、又は近い将来生じる可能性がある。
【0063】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1から、シクロヘキサンジカルボン酸エステル、又はテレフタル酸ジオクチルを含有しているシールゴムを用いた実施例のボールペン用キャップは、製造時のキャップへのシールゴム挿入時の潤滑性及びクラック試験の評価がいずれも良好であったことが理解できよう。
【符号の説明】
【0066】
10 キャップ本体
10a キャップ本体の第一の係合部
20 クリップ部材
22 クリップ部
24 天冠部
26 シールゴム挿入部
26a シールゴム挿入部の係合部
30 シールゴム
100 ボールペン用キャップ
A シールゴム挿入部のシールゴム接触領域
A’ シールゴム近傍領域
B Aに対向するシールゴム挿入部の外周側の領域
B’ A’に対向するシールゴム挿入部の外周側の領域
図1