(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093284
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】光通信照明装置および光通信照明システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/116 20130101AFI20240702BHJP
H04B 10/516 20130101ALI20240702BHJP
【FI】
H04B10/116
H04B10/516
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209566
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 賢二
(72)【発明者】
【氏名】片山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲二
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA21
5K102AC00
5K102AH26
5K102AL23
5K102PB02
5K102PH31
(57)【要約】
【課題】信号の強度を容易に大きくすることができる光通信照明装置を提供する。
【解決手段】光通信照明装置1は、光源20と、光源20に電流を供給する光源用電源10と、外部の端末へ送信する信号を生成する信号生成回路36と、光源20に供給する電流に、信号生成回路36で生成した信号を重畳させる重畳回路30と、重畳回路30に電流を供給する重畳用電源33とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から光を投光して光通信を行う光通信照明装置であって、
前記光源に電流を供給する光源用電源と、
外部の端末へ送信する信号を生成する信号生成回路と、
前記光源に供給する電流に、前記信号生成回路で生成した信号を重畳させる重畳回路と、
前記重畳回路に電流を供給する重畳用電源とを備えること
を特徴とする光通信照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光通信照明装置であって、
外部の端末へ送信する信号を重畳した期間の電流の平均値は、前記信号を重畳しない場合における前記光源用電源が供給する電流の平均値と一致すること
を特徴とする光通信照明装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光通信照明装置であって、
前記重畳回路は、
前記光源と前記光源用電源との間に設けられたトランスと、
前記トランスの1次巻線の一端に接続された第1スイッチング素子と、
前記トランスの1次巻線の他端に接続された第2スイッチング素子とを有し、
前記重畳用電源は、前記トランスの1次巻線の中途に接続されていること
を特徴とする光通信照明装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光通信照明装置であって、
前記トランスの1次巻線において、前記光源に供給する電流を増加させる側の方が、前記光源に供給する電流を減少させる側よりも巻き数が多くなるように、前記重畳用電源が接続されていること
を特徴とする光通信照明装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光通信照明装置を複数備えた光通信照明システムであって、
前記光通信照明装置は、前記光源から送信された信号を受信する受信部を有すること
を特徴とする光通信照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光源から光を投光して光通信を行う光通信照明装置および光通信照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明器具は、様々な場所に設置されている。近年では、可視光を通信媒体として用いる光通信が開発されており、照明光を変調することにより光通信を行う光通信装置が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-59032号公報
【特許文献2】特開2019-193111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の空間光通信投光装置は、投光器にLEDを設け、LED駆動回路によりLEDを駆動して、情報高周波信号を重畳した空間光をLEDから投光し、空間光通信を行う。LED駆動回路には、LEDに直流電流を供給する直流電源と、情報高周波信号をLEDに印加するトランスとが接続されている。トランスの二次側に接続されたLEDのアノードおよびカソードは、リアクトルを介して直流電源またはグランドに接続されており、LEDは、高周波的にフローティングした状態で接続されている。
【0005】
上述した空間光通信投光装置では、LEDに印加する電圧を変調させることで情報高周波信号を重畳させている。ところで、信号を重畳する方法については、電圧の変調だけに限らないので、異なる方法を開発することが求められている。
【0006】
また、従来の照明光通信装置は、照明光を発する光源と、通信信号を発生する信号源と、通信信号に従って光源を流れる電流を断続することにより照明光を変調する変調回路と、一定の調光率の下で出力電流の平均を一定に保つ電源回路と、光源を流れる電流に直流電流を重畳する電流重畳回路とを備える。
【0007】
上述した照明光通信装置では、光源を流れる電流を断続させることで通信信号を発生させており、電流ピーク値の増大を抑えようとしている。ところで、照明器具について、設置される環境においては、周囲の光や照射部の汚れなどの影響により光量が不足し、信号の伝達を阻害される虞がある。
【0008】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、信号の強度を容易に大きくすることができる光通信照明装置および光通信照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る光通信照明装置は、光源から光を投光して光通信を行う光通信照明装置であって、前記光源に電流を供給する光源用電源と、外部の端末へ送信する信号を生成する信号生成回路と、前記光源に供給する電流に、前記信号生成回路で生成した信号を重畳させる重畳回路と、前記重畳回路に電流を供給する重畳用電源とを備える構成としてもよい。
【0010】
本開示に係る光通信照明装置では、外部の端末へ送信する信号を重畳した期間の電流の平均値は、前記信号を重畳しない場合における前記光源用電源が供給する電流の平均値と一致する構成としてもよい。
【0011】
本開示に係る光通信照明装置では、前記重畳回路は、前記光源と前記光源用電源との間に設けられたトランスと、前記トランスの1次巻線の一端に接続された第1スイッチング素子と、前記トランスの1次巻線の他端に接続された第2スイッチング素子とを有し、前記重畳用電源は、前記トランスの1次巻線の中途に接続されている構成としてもよい。
【0012】
本開示に係る光通信照明装置では、前記トランスの1次巻線において、前記光源に供給する電流を増加させる側の方が、前記光源に供給する電流を減少させる側よりも巻き数が多くなるように、前記重畳用電源が接続されている構成としてもよい。
【0013】
本開示に係る光通信照明システムは、本開示に係る光通信照明装置を複数備え、前記光通信照明装置は、前記光源から送信された信号を受信する受信部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本開示によると、光源用電源とは別にして重畳用電源が設けられているので、重畳させる信号の電流を自在に変化させることができ、光量を高くして信号の強度を容易に大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施の形態に係る光通信照明装置の構成例を示す回路図である。
【
図2】光源に供給される電流と、それに重畳させた信号との関係を示す説明図である。
【
図3】信号を重畳させた電流の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態に係る光通信照明装置について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本開示の実施の形態に係る光通信照明装置の構成例を示す回路図である。
【0018】
本開示の実施の形態に係る光通信照明装置1は、光源20と、光源20に電流を供給する光源用電源10と、外部の端末へ送信する信号を生成する信号生成回路36と、光源20に供給する電流に、信号生成回路36で生成した信号を重畳させる重畳回路30と、重畳回路30に電流を供給する重畳用電源33とを備える。
【0019】
光源20は、複数の発光素子を備えるLEDとされており、光源用電源10から供給される電流によって調光率を変化させることができる。光源20は、照明光通信を行っており、通信仕様については、データ形式が「JEITA CP-1222準拠」とされ、送信変調方式が「サブキャリア 28.8kbps」とされ、通信速度が「4.8kbps」とされている。なお、光源10からは可視光が照射されており、可視光通信を行っている。
【0020】
信号生成回路36は、CPUやFPGAなどが搭載されており、光通信で送信する信号波形を生成し重畳回路30に出力する。
【0021】
光源20と光源用電源10との間には、重畳回路30のトランスにおける2次巻線31が設けられている。トランスの1次巻線の一端には、第1スイッチング素子34が接続され、トランスの1次巻線の他端には、第2スイッチング素子35が接続され、トランスの1次巻線の中途には、重畳用電源33が接続されている。以下では説明のため、トランスの1次巻線のうち、重畳用電源33との接続箇所から一端までの間を第1巻線部32aと呼び、重畳用電源33との接続箇所から他端までの間を第2巻線部32bと呼ぶ。
【0022】
第1スイッチング素子34および第2スイッチング素子35は、信号生成回路36からの指示によって、一方をオンにし、他方をオフにするように制御されている。第1スイッチング素子34がオンの場合、重畳用電源33から供給されて第1巻線部32aに電流が流れ、2次巻線31に生じた電流が、光源用電源10から光源20に供給された電流に重畳される。同様に、第2スイッチング素子35がオンの場合、重畳用電源33から供給されて第2巻線部32bに電流が流れ、2次巻線31に生じた電流が、光源用電源10から光源20に供給された電流に重畳される。第1スイッチング素子34をオンにした場合と、第2スイッチング素子35をオンにした場合とでは、2次巻線31に生じる電流の向きが、互いに反対になっており、本実施の形態において、第1巻線部32aに電流が流れると、光源20に供給される電流を減少させ、第2巻線部32bに電流が流れると、光源20に供給される電流を増加させるように構成されている。また、トランスの1次巻線において、第2巻線部32bが第1巻線部32aよりも巻き数が多くなるように、重畳用電源33が接続されている。
【0023】
上述したように、光源用電源10とは別にして重畳用電源33が設けられているので、重畳させる信号の電流を自在に変化させることができ、光量を高くして信号の強度を容易に大きくすることができる。また、トランスと2つのスイッチング素子とを組み合わせた重畳回路30とすることで、電流値を増減させて容易に信号を重畳することができる。
【0024】
次に、光源20に供給される電流と、光源20から送信される信号との関係について、
図2を参照して説明する。
【0025】
図2は、光源に供給される電流と、それに重畳させた信号との関係を示す説明図である。
【0026】
矢符Aで示すグラフは、光源用電源10から供給される電流を示している。光源用電源10からは、調光率に基づいて、一定の電流が供給されており、調光率に応じて、適宜電流値を変化させればよい。
【0027】
矢符Bで示すグラフは、信号生成回路36で生成した信号を示しており、信号は矩形波とされている。なお、
図2では、周期的に変動する信号を一例として示しているが、これに限定されず、信号の内容に応じて、値を増減させるタイミングをずらしてもよい。
【0028】
矢符Cで示すグラフは、光源用電源10から供給された電流(矢符Aで示すグラフ)に、信号生成回路36で生成した信号(矢符Bで示すグラフ)を重畳した電流を示している。
図2において、信号を重畳して光源20に流れる電流を実効電流線PL(実線)として示しており、信号を重畳した期間の電流の平均値を平均電流線AL(破線)として示している。ここで、平均電流線ALの値は、矢符Aで示すグラフの電流値と一致するように設定されている。つまり、信号を重畳した期間(重畳時)の電流の平均値は、信号を重畳しない場合(未重畳時)の電流の平均値と一致するように設定されており、重畳動作の有無によらず、電流の平均値が同じ値とされているので、人間には、明るさが変化していないように感じさせることができる。
【0029】
本実施の形態において、信号の周波数は、約128kHz程度とされている。これに対し、人間の目で感知できる光の変化の周波数は、約120~180Hzと言われており、周波数の高い光の変化を感知することができない。そのため、信号を重畳して、高い周波数で光の明るさを変動させていても、人間の目には、光源20が同じ明るさで光っているように感じられる。
【0030】
図3は、信号を重畳させた電流の一例を示す説明図である。
【0031】
図3では、調光率を低くした場合を示しており、電流値(平均電流線AL)が低くなっている。
図3では、実効電流線PLにおける最大値と、平均電流線ALとの差を第1変化量Δ1として示し、実効電流線PLにおける最小値と、平均電流線ALとの差を第2変化量Δ2として示しており、最大値の電流が印加されている時間を信号幅Tとして示している。電流値については、第1変化量Δ1、第2変化量Δ2、および信号幅Tを調整することで、実効電流線PLの平均値を、平均電流線ALと一致させることができる。
【0032】
調光率が低い場合には、減少させる電流値の限度があるため、第2変化量Δ2を大きくすることができない。しかしながら、本実施の形態では、増加させる電流値と減少させる電流値とを別々に設定することができるので、第2変化量Δ2に拘わらず、第1変化量Δ1を大きくすることができる。また、第2巻線部32bは、第1巻線部32aよりも巻き数が多くなっており、巻き数の比を調整することで、光源20に供給する電流を増加し易くなる。
【0033】
光通信照明装置1については、例えば、トンネルなどに設置される。屋外に設置すると、様々な要因により、光源20の照射部が汚れたりして、設定値よりも照射される光量が低くなることがある。そこで、電流を増加させて光源20からの光を明るくすることで、受光するセンサでの読み取り精度を向上させることができる。
【0034】
また、光通信照明装置1については、複数組み合わせて光通信照明システムを構成してもよい。この際、それぞれの光通信照明装置1には、光源20から送信された信号を受信する受信部が設けられている。例えば、トンネルに複数の光通信照明装置1を設置して、光通信照明システムとして運用する場合、光通信照明装置1を並べた順番などに応じて、それぞれの光通信照明装置1に対応する管理番号を割り当てる。光通信照明装置1から送信する信号では、送信先とする光通信照明装置1の管理番号を指定すればよい。信号を受信した光通信照明装置1では、次に送信先とする光通信照明装置1の管理番号を指定して、信号を送信する。このように、順次、信号を伝達することで、混信を回避することができる。
【0035】
光通信照明装置1では、信号を送信するときのみ重畳動作を行うようにすればよく、管理番号を指定して信号を送信することで、混信を回避し、各光通信照明装置1での重畳動作を行うタイミングを制御できる。
【0036】
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 光通信照明装置
10 光源用電源
20 光源
30 重畳回路
31 2次巻線
32a 第1巻線部(1次巻線の一部)
32b 第2巻線部(1次巻線の一部)
33 重畳用電源
34 第1スイッチング素子
35 第2スイッチング素子
36 信号生成回路