(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093293
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】面材の製造型および面材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 7/16 20060101AFI20240702BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240702BHJP
B28B 7/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B28B7/16 Z
F16J15/10 P
F16J15/10 T
B28B7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209582
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】小濱 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】白井 真彦
【テーマコード(参考)】
3J040
4G053
【Fターム(参考)】
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA16
3J040FA05
3J040HA04
3J040HA05
3J040HA30
4G053BD19
4G053EA02
4G053EA50
4G053EB05
4G053EB16
(57)【要約】
【課題】面材の周面部に溝部を形成することおよびこの溝部にガスケットを嵌め込む作業を不要にでき、作業時間の長時間化および止水性能の低下を抑制できる面材の製造型および面材の製造方法を提供する。
【解決手段】時間経過で硬化して外壁面材となる硬化流動体Sが投入される製造型1である。この製造型1は、投入される上記硬化流動体Sを受け止めて外壁面材Pの周面部を形成する外枠部2を備えており、この外枠部2の上記硬化流動体Sを受け止める内面部には、シール部51と当該シール部51を支持する支持部52とを有するガスケット5の上記シール部51が収容される収容凹部21が形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間経過で硬化して面材となる硬化流動体が投入される製造型であって、投入される上記硬化流動体を受け止めて上記面材の周面部を形成する外枠部を備えており、この外枠部の上記硬化流動体を受け止める内面部には、シール部と当該シール部を支持する支持部とを有するガスケットの上記シール部が収容される収容凹部が形成されていることを特徴とする面材の製造型。
【請求項2】
請求項1に記載の面材の製造型において、上記収容凹部は、当該収容凹部の開口の幅が当該収容凹部の奥部幅または中間部幅よりも狭くされた形状を有することを特徴とする面材の製造型。
【請求項3】
請求項1に記載の面材の製造型において、上記収容凹部は、当該収容凹部の開口に当該開口の幅を狭くする係止突起を備えることを特徴とする面材の製造型。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の面材の製造型を用いる面材の製造方法であって、上記製造型の上記収容凹部内に、上記ガスケットの上記シール部を収容する工程と、上記ガスケットの上記シール部が収容された後の上記製造型内に、上記硬化流動体を投入して、この硬化流動体を硬化させる工程と、を含むことを特徴とする面材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の面材の製造方法において、上記面材の角部が形成される箇所では、当該角部を境に分断される上記ガスケットの各々の先端部の上記支持部を欠損させて当該ガスケットを上記収容凹部内に収容し、上記角部を境にして隣り合う上記ガスケットの各々の先端部を、上記支持部間では互いに隙間をあけて、突き合わせることを特徴とする面材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外壁面材や床面材等の面材の製造型および上記面材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガラス繊維補強コンクリート(GRC)の成形品からなる外壁面材の外面にタイル等の化粧面材を備えることが開示されている。そして、この外壁面材の周面部には、溝部が形成されており、この溝部にはガスケットが嵌め込まれている。このガスケットは、止水性能や気密性能に優れたシール部と当該シール部を支持する支持部とを有する。一般に、上記シール部は、柔軟性があって変形が容易であるが、上記支持部は、幾分硬いものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-17477号
【特許文献2】特許第7154811号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される外壁面材は、その工場出荷段階等において、上記周面部に形成された上記溝部に上記の硬い支持部を人の手で嵌め込む作業が必要となり、作業時間が長くなる欠点があった。また、上記支持部の嵌め込み不良に起因して止水性能が低下するおそれもあった。さらに、上記周面部にガスケットを接着剤で取り付ける構造も知られているが、このような接着構造では、接着不良、接着位置ずれ、接着強度不足等で止水性能が低下するおそれがある。
【0005】
なお、特許文献2には、型枠にシート部材を一端が上記型枠の内部に位置し、他端が上記型枠の外部に位置するように配置する工程と、水和反応によって固結するセメント系組成物を上記型枠に打ち込む工程と、上記セメント系組成物が固結した後、上記型枠を脱型する脱型工程と、を有する目地構造用部材の製造方法が開示されている。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑み、面材の周面部に溝部を形成することおよびこの溝部にガスケットを嵌め込む作業、或いはガスケットを面材の周面部に接着する作業を不要にでき、作業時間の長時間化および止水性能の低下を抑制できる面材の製造型および面材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の面材の製造型は、時間経過で硬化して面材となる硬化流動体が投入される製造型であって、投入される上記硬化流動体を受け止めて上記面材の周面部を形成する外枠部を備えており、この外枠部の上記硬化流動体を受け止める内面部には、シール部と当該シール部を支持する支持部とを有するガスケットの上記シール部が収容される収容凹部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成であれば、当該製造型の上記収容凹部に、上記ガスケットの上記シール部を収容し、当該ガスケットの上記支持部を製造型内に突出させた状態で、当該製造型内に硬化流動体を投入して硬化させることにより、ガスケットが一体化されたガスケット付き面材が作製されることになる。これにより、面材の周面部に溝部を形成する製造工程およびこの溝部にガスケットを人が手で嵌め込む作業、或いはガスケットを面材の周面部に接着する作業を不要にでき、面材製作の長時間化および止水性能や気密性能の低下を抑制できる。なお、ガスケットの支持部が硬い場合においては、この支持部を従来のように溝部に嵌め込む作業に比べれば、当該製造型の上記収容凹部に上記ガスケットの柔軟なシール部を収容する作業の方が容易である。
【0009】
上記の製造型において、上記収容凹部は、当該収容凹部の開口の幅が当該収容凹部の奥部幅または中間部幅よりも狭くされた形状を有してもよい。これによれば、上記収容凹部に一旦入れられた上記シール部は、上記形状によって抜け難くなるので、製造型内に硬化流動体が投入される際に、この硬化流動体がガスケットの支持部に当たって当該ガスケットが製造型内に抜け落ちるのを抑止することができる。
【0010】
上記の製造型において、上記収容凹部は、当該収容凹部の開口に当該開口の幅を狭くする係止突起を有してもよい。これによれば、上記収容凹部に一旦入れられた上記シール部は、上記係止突起によって抜け難くなるので、製造型内に硬化流動体が投入される際に、この硬化流動体がガスケットの支持部に当たって当該ガスケットが製造型内に抜け落ちるのを抑止することができる。
【0011】
また、この発明の面材の製造方法は、上記面材の製造型を用いる面材の製造方法であって、上記製造型の上記収容凹部内に、上記ガスケットの上記シール部を収容する工程と、上記ガスケットの上記シール部が収容された後の上記製造型内に、上記硬化流動体を投入して、この硬化流動体を硬化させる工程と、を含むことを特徴とする。かかる方法により、ガスケット付きの面材を簡単に作製できる。
【0012】
上記製造方法において、上記面材の角部が形成される箇所では、当該角部を境に分断される上記ガスケットの各々の先端部の上記支持部を欠損させて当該ガスケットを上記収容凹部内に収容し、上記角部を境にして隣り合う上記ガスケットの各々の先端部を、上記支持部間では互いに隙間をあけて、突き合わせてもよい。かかる方法であれば、上記硬化流動体の硬化時の熱や蒸気養生時の熱で上記ガスケットの上記支持部が伸びた場合でも、この伸びが許容されることで、当該ガスケットの支持部の浮き上がりが抑制されるので、上記面材の角部の止水性能や気密性能の低下を回避することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明であれば、面材の周面部に溝部を形成することおよびこの溝部にガスケットを人の手で嵌め込む作業を不要にでき、作業時間の長時間化および止水性能や気密性能の低下を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態にかかる外壁面材の製造型を示した斜視説明図である。
【
図2】
図1の製造型を用いて作製された外壁面材を示した斜視説明図である。
【
図3】ガスケットの一例を示した斜視説明図である。
【
図4】
図1の製造型の一部を示した部分断面図である。
【
図5】
図1の製造型を用いて外壁面材を作製する工程を示した説明図である。
【
図6】
図1の製造型を用いて外壁面材を作製する工程を示した斜視説明図である。
【
図7】
図1の製造型を用いて作製された外壁面材の一部を拡大して示した斜視説明図である。
【
図8】同図(A)および(B)は、それぞれ他の実施形態にかかる製造型の収容凹部例を示した説明図である。
【
図9】同図(A)および(B)は、それぞれ実施形態にかかる製造方法の一工程である製造型の収容凹部へのガスケットの収容例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、この実施形態にかかる面材の製造型1は、時間経過で硬化して略四角板状の外壁面材Pとなる硬化流動体S(生コンクリート等)が投入される型であり、例えば、金属製の外枠部2と、この外枠部2の底側を形成する金属製の底板部3と、を備えており、ガスケット5が一体化されたガスケット付きの外壁面材Pを作製することができる。上記ガスケット5は、例えば、
図3に示すように、略円筒形状で止水性や気密性に優れたスポンジ状のシール部51と当該シール部51を支持する略角柱形状の支持部52とを有しており、ゴム材料等により作製されている。
【0016】
外枠部2は、投入される硬化流動体Sを受け止めて外壁面材Pの周面部(上面部、下面部、左右側面部)を形成する部位をなす。外枠部2の上記硬化流動体Sを受け止める4つの内面部には、
図4にも示すように、収容凹部21が形成されている。この収容凹部21には、ガスケット5のシール部51を収容することができる。
【0017】
製造型1を用いる外壁面材Pの製造方法は、
図5および
図6に示すように、製造型1内への硬化流動体Sの投入前に、収容凹部21にガスケット5のシール部51を押し込んで収容する。シール部51が収容凹部21へ収容された状態では、ガスケット5の支持部52は、製造型1内に突出する。
【0018】
なお、一般に、シール部51は、支持部52に比べて柔軟であるため、シール部51の収容凹部21への収容は比較的容易である。また、一例として、長尺のガスケット5を適宜の長さに分断することで、外壁面材Pの短辺箇所用に2本のガスケット5と、外壁面材Pの長辺箇所用に2本のガスケット5を用意し、これら4本のガスケット5を収容凹部21に収容する。また、4本のガスケット5の先端部同士を、例えば、外壁面材Pの角部が形成される上記収容凹部21の角箇所で突き合わせてもよく、さらに、このように上記角箇所で突き合わされるガスケット5の先端部同士を互いに溶着してもよい。
【0019】
次に、上記のようにガスケット5のシール部51を収容凹部21に収容させた後の製造型1内に、硬化流動体Sを投入して、この硬化流動体Sを硬化させる。そして、この硬化後の硬化流動体Sを脱型することで、
図2に示したようなガスケット5付きの外壁面材Pが作製される。
図7には、上記方法により作製されたガスケット5付きの外壁面材Pの一部を拡大して示している。上記脱型により、シール部51は、収容凹部21の拘束を解かれて所定形状に膨らむことになる。
【0020】
上記製造型1を用いると、上記のように、収容凹部21にガスケット5のシール部51を収容して当該製造型1内に硬化流動体Sを投入することにより、ガスケット5が一体化されたガスケット付き外壁面材Pが作製されるので、従来のように外壁面材の周面部に溝部を形成する製造工程およびこの溝部にガスケットを人が手で嵌め込む作業を不要にすることができ、外壁面材製作の長時間化および止水性能等の低下を抑制できる。なお、ガスケット5の支持部52が硬い場合、この支持部52を従来のように上記溝部に嵌め込むことや、ガスケット5の先端部同士を溶着することと比べれば、当該製造型1の収容凹部21にガスケット5の柔軟なシール部51を収容する作業、さらにはガスケット5の先端部同士を溶着する作業は容易である。
【0021】
この実施形態では、収容凹部21は、当該収容凹部21の開口の幅(高さ)が当該収容凹部21の奥部幅(高さ)に対して、狭くされたテーパ形状を有する。このため、収容凹部21に一旦入れられたシール部51は、上記テーパ形状によって抜け難くなるので、製造型1内に硬化流動体Sが投入される際に、この硬化流動体Sがガスケット5の支持部52に当たって当該ガスケット5が製造型1内に抜け落ちるのを抑止することができる。なお、上記テーパ形状の各傾斜面の勾配は、例えば、1/10前後とすることができる。
【0022】
上記テーパ形状の収容凹部21に替えて、例えば、
図8(A)に示す収容凹部21Aを用いてもよい。この収容凹部21Aは、当該収容凹部21Aの開口の幅(高さ)が当該収容凹部21Aの中間部幅(高さ)よりも狭くされた断面略円形状等を有する。或いは、
図8(B)に示す収容凹部21Bとしてもよい。この収容凹部21Bは、断面形状が直方形であり、その開口に、当該開口の幅(高さ)を狭くする係止突起22を備えている。なお、この係止突起22は、点在で配置されていてもよい。
【0023】
また、ガスケット付きの外壁面材Pの作製において、この外壁面材Pの角部が形成される製造型1の箇所では、
図9(A)に示すように、当該角部を境に分断される上記ガスケット5を収容凹部21(21A,21B)内に収容し、上記角部を境にして隣り合う上記ガスケット5の各々の先端部を突き合わせてもよい。
【0024】
望ましくは、外壁面材Pの角部が形成される製造型1の箇所では、
図9(B)に示すように、当該角部を境に分断される上記ガスケット5の各々の先端部の支持部52を欠損させて当該ガスケット5を収容凹部21(21A,21B)内に収容し、上記角部を境にして隣り合う上記ガスケット5の各々の先端部を、支持部52間では互いに隙間Gをあけて、突き合わせてもよい。このような方法であれば、硬化流動体Sが硬化時に発生する熱(コンクリートの水和熱)や蒸気養生時の熱でガスケット5が伸びた場合でも、この伸びが許容されることで、当該ガスケット5の支持部52の浮き上がりが抑制されるので、外壁面材Pの角部の止水性等の低下を回避することができる。
【0025】
以上の実施形態では、面材として外壁面材を示したが、このような外壁面材に限らない。面材がバルコニー等で用いられる床面材である場合でも、この実施形態で示したのと同様の製造型および製造方法を用いることができる。
【0026】
また、面材が1次防水部および2次防水部を有する構造において、1次防水部および2次防水部の両方についてガスケット付きとなる面材を作製できる製造型(収容凹部を2列有する)および製造方法であってもよいし、1次防水部と2次防水部の一方についてガスケット付きとなる面材を作製できる製造型および製造方法であってもよい。
【0027】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 :製造型
2 :外枠部
3 :底板部
5 :ガスケット
21 :収容凹部
21A :収容凹部
21B :収容凹部
22 :突起部
51 :シール部
52 :支持部
G :隙間
P :外壁面材
S :硬化流動体