(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093296
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】位置決め装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20240702BHJP
B23Q 3/18 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B23Q3/06 304F
B23Q3/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209585
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】土田 武司
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016CA07
3C016CE05
3C016EA01
3C016HA01
3C016HA05
(57)【要約】
【課題】圧縮空気などの圧力流体を駆動に必要とせず、且つ、ハウジングの内面に駆動部材の一部分を当接(衝突)させなくても位置決めロッドを確実に復帰動させることができる位置決め装置を提供すること。
【解決手段】位置決め装置は、駆動部材本体部18(駆動部材17)を上下方向の一方へリリース駆動する押部材23と、筒孔20の内部に配置され、駆動部材17を上下方向の他方へロック駆動する付勢手段24と、を備える。押部材23は、位置決め対象物Wの孔8に挿入された支柱7と位置決めロッド11とによって位置決め対象物Wが位置決めされたロック状態のとき、上下方向に対して直交する方向において、カム面15とカム部14との接触点から押部16側へ離れた位置にあるように設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方へ突出された挿入部(7)を有するハウジング(2)と、
前記ハウジング(2)の上孔(9)に上下方向かつ半径方向へ移動可能に挿入されると共に前記挿入部(7)に対面された位置決めロッド(11)であって、前記挿入部(7)と共に位置決め対象物(W)の孔(8)に挿入可能な位置決めロッド(11)と、
前記ハウジング(2)と前記位置決めロッド(11)との両部材のうちの一方の部材から他方の部材に向けて突出するように前記一方の部材に設けられたカム部(14)と、
前記カム部(14)と係合するように前記他方の部材に上下方向に設けたカム面(15)と、
前記カム部(14)および前記カム面(15)とは反対側の位置で前記位置決めロッド(11)の外周部に設けられた押部(16)であって、前記孔(8)の内周に対面可能な押部(16)と、
前記位置決めロッド(11)から延びる駆動部材(17、25)であって、前記位置決めロッド(11)を上下方向へ駆動する駆動部材(17、25)と、
前記ハウジング(2)に形成された筒孔(20)であって、前記駆動部材(17、25)が上下方向に移動可能となるように挿入される筒孔(20)と、
前記駆動部材(17、25)に設けられた押部材(23、25a)であって、前記駆動部材(17、25)を上下方向の一方へリリース駆動する押部材(23、25a)と、
前記筒孔(20)の内部に配置され、前記駆動部材(17、25)を上下方向の他方へロック駆動する付勢手段(24)と、
を備え、
前記押部材(23、25a)は、前記孔(8)に挿入された前記挿入部(7)と前記位置決めロッド(11)とによって前記位置決め対象物(W)が位置決めされたロック状態のとき、上下方向に対して直交する方向において、前記カム面(15)と前記カム部(14)との接触点から前記押部(16)側へ離れた位置にあるように設けられており、
前記駆動部材(17、25)が前記押部材(23、25a)によって前記リリース駆動されることで、前記位置決めロッド(11)の上部が前記挿入部(7)に近づく方向に復帰動される、
位置決め装置。
【請求項2】
請求項1の位置決め装置において、
前記駆動部材(17)は、
前記位置決めロッド(11)から延びる駆動部材本体部(18)と、
前記駆動部材本体部(18)の基端部(18a)を収容する有底の円筒部(19b)が先端に形成された操作部材(19)と、を備え、
前記押部材(23)は、前記駆動部材本体部(18)を上下方向の一方へリリース駆動するものであって、前記駆動部材本体部(18)の基端側端面に設けられている、
位置決め装置。
【請求項3】
請求項2のクランプ装置において、
前記駆動部材本体部(18)の基端側端面に凹部(22)が形成されており、
前記凹部(22)に前記押部材(23)が回転可能な状態で収容されている、
位置決め装置。
【請求項4】
請求項2または3のクランプ装置において、
前記押部材(23)は球体である、
位置決め装置。
【請求項5】
請求項2または3のクランプ装置において、
前記操作部材(19)の基端側端面中央に、前記ハウジング(2)から突出する操作部(19a)が設けられている、
位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク、ワークパレット、または金型などの位置決め対象物を位置決めする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、下記の特許文献1に記載されたものがある。従来技術に係るその装置(位置決め装置)は、次のように構成されている。
【0003】
位置決め装置は、上方へ突出された挿入部を有するハウジング、位置決めロッド、および駆動部材などから構成される。ハウジングには、圧縮空気が給排されるリリース室が設けられている。駆動部材を上方へリリース駆動すると、当該駆動部材に設けられた係止部が、ハウジングの内面に設けられた受止め部に当接して、位置決めロッドが時計回りの方向に復帰揺動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の位置決め装置では、リリース駆動のたびにリリース室に圧縮空気を供給する必要がある。そのため、位置決め装置を動作させるには、圧縮空気の供給設備が必要である。ここで、規模が大きな圧縮空気の供給設備は、省エネルギーおよび環境対策の点から好ましいとは言えない。そのため、位置決め装置の駆動源として圧縮空気は不要であることが望ましい。
【0006】
また、上記の位置決め装置では、係止部と受止め部との間の摩擦力が大きいと、位置決めロッドが復帰揺動しにくい場合があり得る。
【0007】
本発明の目的は、圧縮空気などの圧力流体を駆動に必要とせず、且つ、ハウジングの内面に駆動部材の一部分を当接(衝突)させなくても位置決めロッドを確実に復帰動させることができる位置決め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る位置決め装置は、例えば、
図1から
図5に示すように、次のように構成される。
【0009】
(1)本願で開示する位置決め装置は、上方へ突出された挿入部7を有するハウジング2と、前記ハウジング2の上孔9に上下方向かつ半径方向へ移動可能に挿入されると共に前記挿入部7に対面された位置決めロッド11であって、前記挿入部7と共に位置決め対象物Wの孔8に挿入可能な位置決めロッド11と、前記ハウジング2と前記位置決めロッド11との両部材のうちの一方の部材から他方の部材に向けて突出するように前記一方の部材に設けられたカム部14と、前記カム部14と係合するように前記他方の部材に上下方向に設けたカム面15と、前記カム部14および前記カム面15とは反対側の位置で前記位置決めロッド11の外周部に設けられた押部16であって、前記孔8の内周に対面可能な押部16と、前記位置決めロッド11から延びる駆動部材17、25であって、前記位置決めロッド11を上下方向へ駆動する駆動部材17、25と、前記ハウジング2に形成された筒孔20であって、前記駆動部材17、25が上下方向に移動可能となるように挿入される筒孔20と、前記駆動部材17、25に設けられた押部材23、25aであって、前記駆動部材17、25を上下方向の一方へリリース駆動する押部材23、25aと、前記筒孔20の内部に配置され、前記駆動部材17、25を上下方向の他方へロック駆動する付勢手段24と、を備える。前記押部材23、25aは、前記孔8に挿入された前記挿入部7と前記位置決めロッド11とによって前記位置決め対象物Wが位置決めされたロック状態のとき、上下方向に対して直交する方向において、前記カム面15と前記カム部14との接触点から前記押部16側へ離れた位置にあるように設けられている。前記駆動部材17、25が前記押部材23、25aによって前記リリース駆動されることで、前記位置決めロッド11の上部が前記挿入部7に近づく方向に復帰動される。
【0010】
本願で開示する位置決め装置は次の作用効果を奏する。当該位置決め装置は、従来の位置決め装置が備えるリリース室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。当該位置決め装置では、直接的または間接的に上記の押部材に外力が作用することで、上下方向の一方へ位置決めロッドはリリース駆動される。上下方向のうちの他方へは、上記の付勢手段によって位置決めロッドはロック駆動される。したがって、当該位置決め装置は、圧縮空気などの圧力流体を駆動に必要としない。
【0011】
また、押部材が、上記のとおり、カム面とカム部との接触点から押部側へ離れた位置にあるように駆動部材に設けられることで、リリース駆動時、位置決めロッドの上部が上記挿入部に近づく方向に復帰動される。すなわち、当該位置決め装置によると、ハウジングの内面に駆動部材の一部分を当接(衝突)させなくても位置決めロッドを確実に復帰動させることができる。
【0012】
(2)上記(1)の位置決め装置において、例えば、
図2および
図3に示すように、前記駆動部材17は、前記位置決めロッド11から延びる駆動部材本体部18と、前記駆動部材本体部18の基端部18aを収容する有底の円筒部19bが先端に形成された操作部材19と、を備え、前記押部材23は、前記駆動部材本体部18を上下方向の一方へリリース駆動するものであって、前記駆動部材本体部18の基端側端面に設けられてもよい。
【0013】
この構成によると、駆動部材本体部と操作部材とに駆動部材が分かれていることで、位置決めロッドがリリース駆動される際に上下方向に対して斜め方向の外力が操作部材に作用しても、この斜め方向の外力は位置決めロッドに直接作用しない。そのため、位置決めロッドをより確実に復帰動させることができる。
【0014】
(3)上記(2)の位置決め装置において、前記駆動部材本体部18の基端側端面に凹部22が形成されており、前記凹部22に前記押部材23が回転可能な状態で収容されてもよい。
【0015】
この構成によると、位置決めロッドが半径方向へ移動しやすくなる。
【0016】
(4)上記(2)または(3)の位置決め装置において、前記押部材23は球体とされてもよい。
【0017】
この構成によると、位置決めロッドが半径方向へより移動しやすくなる。
【0018】
(5)上記(2)から(4)のいずれかの位置決め装置において、前記操作部材19の基端側端面中央に、前記ハウジング2から突出する操作部19aが設けられてもよい。
【0019】
この構成によると、ハウジングの中へ指、部材などを押し入れることなく位置決めロッドを復帰動させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、圧縮空気などの圧力流体を駆動に必要とせず、且つ、ハウジングの内面に駆動部材の一部分を当接(衝突)させなくても位置決めロッドを確実に復帰動させることができる位置決め装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本願で開示する位置決め装置の使用例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態を示し、位置決め装置のロック状態における側面視の断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す位置決め装置のリリース状態における側面視の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態を示し、位置決め装置のロック状態における側面視の断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す位置決め装置のリリース状態における側面視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態の説明では、ベース部材としてのワークパレットWPに、位置決め対象物であるワークWを位置決めするという、位置決め装置の使用例を例示している。
【0023】
図1に示すように、位置決め装置101が固定されたワークパレットWPは、所定の間隔をあけて配置された2本のレール50の上を走行するように構成されている。レール50同士の間に、当該レール50と同じ方向に延びる長い板状の静止カム部材51が配置されている。静止カム部材51は静止カム部52を有する。
図2などに示すように、静止カム部52は、側面視において上方へ凸の台形形状とされている。ワークWが載せられる載置台53がワークパレットWPの上に設けられている。
【0024】
図2および
図3は、本発明の第1実施形態を示す。
図2および
図3に基づいて、第1実施形態の位置決め装置101の構成を説明する。なお、
図2は、位置決め装置101のロック状態(ワークWが位置決めされた状態)を示す図であるとともに、
図1のX-X断面図である。
【0025】
ワークパレットWPに装着孔1が上下方向に形成される。その装着孔1に、ハウジング2の本体部分としての内筒3が挿入される。その内筒3の外周と装着孔1の内周との間にハウジング2の外筒4が挿入されると共に、装着孔1に外筒4が封止具5を介して保密状にネジ嵌合される。また、内筒3と外筒4との間に封止具6が装着される。内筒3の外周面の下部には、下方に向かうにつれて外径が大きくなるテーパ面3aが設けられる。外筒4の下部には、下方に向かうにつれて内径が大きくなるテーパ面4aが設けられる。内筒3の上方から外筒4を挿入すると、双方のテーパ面3a、4aが係合されて、内筒3は装着孔1の中心軸に対して中心合わせされる。これにより、ハウジング2は、装着孔1の所定位置に保密状に固定される。
【0026】
内筒3から挿入部としての支柱7が内筒3と同軸状で上方へ一体に突出される。支柱7はワークWに形成された円形孔8に挿入される。支柱7は平面視でほぼ円形である。
図1に示すように、支柱7の外周面に位置決め用の2つの突起部7aが間隔をあけて設けられている。
【0027】
内筒3の上部に上孔9が上下方向に形成される。上孔9は、支柱7の中心軸に対して左側に偏心した孔軸Yを有する。支柱7の周壁のうちの上孔9側に開口部10が横向きに形成される。上孔9に、位置決めロッド11が上下方向かつ半径方向へ移動可能に挿入される。なお、本実施形態では、位置決めロッド11の上側を覆う上壁12が支柱7に設けられているが、上壁12は省略されてもよい。
【0028】
支柱7の開口部10の側面に形成された支持穴13に、カム部として機能するボール14が嵌合される。ボール14は、位置決めロッド11の側面に向けて突出される。
【0029】
位置決めロッド11の先端部の周壁には、ボール14に係合するカム面15が上下方向に形成される。カム面15は、上下方向に対して直交する方向の断面(平断面)が円弧状であり、位置決めロッド11の基端部へ向かうにつれて位置決めロッド11の軸心に近づくように形成される。また、位置決めロッド11の先端部の周壁のうちの、上記ボール14およびカム面15とは反対側の位置に、ワークWの円形孔8の内周に対面する押部16が設けられる。
【0030】
位置決めロッド11を上下方向へ駆動する駆動部材17は、次のように構成される。
【0031】
本実施形態の駆動部材17は、駆動部材本体部18と、操作部材19とに分かれている。駆動部材本体部18は、位置決めロッド11から延びる部分であり、位置決めロッド11と一体に形成される。
【0032】
ハウジング2を構成する内筒3には、上孔9と連通する筒孔20が形成される。この筒孔20に、駆動部材本体部18および操作部材19(駆動部材17)が上下方向に移動可能となるように挿入される。駆動部材本体部18は、筒孔20に、上下方向かつ半径方向へ移動可能に挿入される。
【0033】
筒孔20は、基端側から順に大径孔20aと小径孔20bとを有する。小径孔20bは、上孔9と大径孔20aとの間に位置し、上孔9と連通する。この大径孔20aに、操作部材19が摺動可能に挿入される。操作部材19は上下方向のみに移動可能であり半径方向へは移動しない。大径孔20aと小径孔20bとの間の段差部20cは、操作部材19の、駆動部材本体部18側への移動のストッパとして設けられている。内筒3の基端部に止め輪21が取り付けられており、この止め輪21は、上記とは反対方向への操作部材19の移動のストッパ(抜け止め)として機能する。
【0034】
操作部材19の基端側端面中央に、内筒3から突出する操作部19aが設けられている。操作部19aは操作部材19の基端側端面中央からずれた位置に設けられてもよい。操作部19aは省略されてもよい。
【0035】
操作部材19の先端は、有底の円筒部19bに形成されており、この円筒部19bに、駆動部材本体部18の基端部18aが収容される。円筒部19bの内径と、小径孔20bの径とは等しい。上記基端部18aの端面に形成された凹部22(支持穴)に、押部材としてのボール23(球体)が回転可能な状態で収容される。ボール23の一部は凹部22から突出している。なお、押部材としてボール23に代えてローラ(不図示)などの回転体を用いることも可能である。
【0036】
また、押部材(ボール23)は、駆動部材本体部18の基端側端面(基端部18aの端面)から突出するように当該基端側端面に設けられればよく、基端部18aと一体に形成されてもよい。すなわち、押部材はボール23のような回転体でなくてもよい。ボール23は、駆動部材本体部18を上下方向の一方へリリース駆動するものである。
【0037】
ここで、
図2に示すように、ボール23は、前記支柱7と位置決めロッド11とによってワークWが位置決めされたロック状態のとき、上下方向に対して直交する方向において、前記カム面15とボール14(カム部)との接触点P1から前記押部16側へ離れた位置にあるように配置される。
図2では、上下方向に対して直交する方向において、ボール23の中心と、上記接触点P1との間の距離がD1とされている。
【0038】
また、本実施形態では、位置決め装置101のリリース状態である
図3に示すように、ボール23は、リリース状態においても、上下方向に対して直交する方向において、前記カム面15とボール14(カム部)との接触点P2から前記押部16側へ離れた位置にあるように配置されている。
図3では、上下方向に対して直交する方向において、ボール23の中心と、上記接触点P2との間の距離がD2とされている(D1>D2)。なお、リリース状態においては、上下方向に対して直交する方向において、ボール23は、前記カム面15とボール14(カム部)との接触点P2から前記押部16側へ離れた位置にある必要は必ずしもない。
【0039】
筒孔20の小径孔20bの内部には、駆動部材本体部18(駆動部材17)を上下方向の他方へロック駆動する付勢手段としてのバネ24が配置される。バネ24は圧縮コイルバネである。駆動部材本体部18の基端部18aは、フランジ形状とされており、バネ24の端を受け止めるバネ受けとして機能する。
【0040】
上記構成の位置決め装置101は次のように動作する。
【0041】
図2に示すロック状態では、バネ24の付勢力によって、駆動部材本体部18・操作部材19(駆動部材17)および位置決めロッド11が下降され、カム部として機能するボール14がカム面15を左側へ押し出し、押部16がワークWの円形孔8の内周に向けて進出されている。これにより、押部16、および支柱7の外周面に設けられた2つの突起部7aが、円形孔8を介してワークWを、支柱7の略軸心に円形孔8の軸心が一致する位置に位置決めした状態となっている。
【0042】
図2に示すロック状態から
図3に示すリリース状態へ切換えるときは、ワークパレットWPをレール50の上を走行させることで、静止カム部材51の静止カム部52に操作部材19の操作部19aを当て静止カム部52の上に操作部19aを乗り上げさせる。これにより、操作部材19が、バネ24の付勢力に抗してボール23を介して駆動部材本体部18を上方へ押して、位置決めロッド11は上昇する。
【0043】
ボール23は、前記のとおり、支柱7と位置決めロッド11とによってワークWが位置決めされたロック状態のとき、上下方向に対して直交する方向において、カム面15とボール14(カム部)との接触点P1から押部16側へ離れた位置にある。そのため、リリース駆動時、位置決めロッド11の上部は支柱7に近づく方向に復帰動される。これにより、位置決めロッド11を確実に復帰動させることができる。
【0044】
また、位置決め装置101は、従来の位置決め装置が備えるリリース室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。本実施形態の位置決め装置101では、押部材としてのボール23に間接的に外力が作用することで、上下方向の一方へ位置決めロッド11はリリース駆動される。上下方向のうちの他方へは、バネ24によって位置決めロッド11はロック駆動される。したがって、当該位置決め装置101は、圧縮空気などの圧力流体を駆動に必要としない。なお、操作部19aを人の手(手動)で押して動かしてもよい。
【0045】
また本実施形態では、駆動部材本体部18と操作部材19とに駆動部材17が分かれていることで、位置決めロッド11がリリース駆動される際に上下方向に対して斜め方向の外力が操作部材19に作用しても、この斜め方向の外力は位置決めロッド11に直接作用しない。そのため、位置決めロッド11をより確実に復帰動させることができる。
【0046】
なお、操作部材19に形成された円筒部19bは、操作部材19と段差部20cとの間に駆動部材本体部18の基端部18aが挟まり込まないようにするための半径方向のストッパとして機能する。
【0047】
図4および
図5は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態の位置決め装置を構成する駆動部材25は、駆動部材本体部と操作部材とが一体とされている。この点が、第1実施形態の位置決め装置と第2実施形態の位置決め装置との主な相違点である。なお、第2実施形態の位置決め装置を構成する各部材について、第1実施形態の位置決め装置を構成する各部材と同様の部材については、同じ符号を付している。
【0048】
駆動部材本体部と操作部材とが一体とされた第2実施形態における駆動部材25は、次のように構成される。駆動部材25の基端側端面に押部材25aが設けられる。押部材25aは内筒3から突出する。本実施形態の押部材25aは円柱形状である。押部材25aは、支柱7と位置決めロッド11とによってワークWが位置決めされたロック状態のとき、上下方向に対して直交する方向において、カム面15とボール14(カム部)との接触点P1から押部16側へ離れた位置にあるように設けられる。
図4では、上下方向に対して直交する方向において、押部材25aの軸心と、上記接触点P1との間の距離がD1とされている。
【0049】
また、本実施形態では、位置決め装置のリリース状態である
図5に示すように、押部材25aは、リリース状態においても、上下方向に対して直交する方向において、カム面15とボール14(カム部)との接触点P2から押部16側へ離れた位置にあるように設けられる。
図5では、上下方向に対して直交する方向において、押部材25aの軸心と、上記接触点P2との間の距離がD2とされている(D1>D2)。なお、リリース状態においては、上下方向に対して直交する方向において、押部材25aは、カム面15とボール14(カム部)との接触点P2から押部16側へ離れた位置にある必要は必ずしもない。
【0050】
駆動部材25の外周に形成された環状溝25bにリング状の摺動部材26が装着される。内筒3に形成された上孔9にダストシール27が装着され、異物が上孔9から内筒3内に入ることが防止される。
【0051】
上記構成の位置決め装置は次のように動作する。
【0052】
図4に示すロック状態では、バネ24の付勢力によって、駆動部材25および位置決めロッド11が下降され、カム部として機能するボール14がカム面15を左側へ押し出し、押部16がワークWの円形孔8の内周に向けて進出されている。これにより、ワークパレットWPに対してワークWを位置決めした状態となっている。
【0053】
図4に示すロック状態から
図5に示すリリース状態へ切換えるときは、部材54で下方から押部材25aを押す。これにより、バネ24の付勢力に抗して駆動部材25および位置決めロッド11は上昇する。
【0054】
押部材25aは、前記のとおり、支柱7と位置決めロッド11とによってワークWが位置決めされたロック状態のとき、上下方向に対して直交する方向において、カム面15とボール14(カム部)との接触点P1から押部16側へ離れた位置にある。そのため、リリース駆動時、位置決めロッド11の上部は支柱7に近づく方向に復帰動される。これにより、位置決めロッド11を確実に復帰動させることができる。
【0055】
また、位置決め装置は、従来の位置決め装置が備えるリリース室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。本実施形態の位置決め装置では、押部材25aに直接的に外力が作用することで、上下方向の一方へ位置決めロッド11はリリース駆動される。上下方向のうちの他方へは、バネ24によって位置決めロッド11はロック駆動される。したがって、当該位置決め装置は、圧縮空気などの圧力流体を駆動に必要としない。なお、押部材25aを人の手(手動)で押して動かしてもよい。
【0056】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記実施形態の要素を適宜組み合わせたり、上記実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。
【0057】
例えば、上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0058】
円形孔8は円形でなくてもよい。すなわち、支柱7および位置決めロッド11が挿入されるワークWの孔は、楕円などであってもよい。支柱7の形状についても同様であり、支柱7の平面視の形状は、楕円などであってもよい。
【0059】
上記第1実施形態において静止カム部材51は固定されているが、静止カム部材51を動かすことで、その静止カム部52で操作部19aを押して動かしてもよい。また、第2実施形態のように、部材54で下方から操作部19aを押して動かしてもよい。第2実施形態の位置決め装置においては、軽い力であれば、第1実施形態における静止カム部材51を用いた動作のように、左右方向から押部材25aに外力が作用してもよい。
【0060】
位置決め装置の姿勢は、例示した上下姿勢に対して、上下逆にされたり、斜め向きにされたりしてもよい。
【0061】
前記カム部は、例示したボール14に代えて、円柱状のものであってもよい。この場合、前記カム面15は、横断面視で円弧状に形成することに代えて、平面で形成してもよい。なお、ボール14を位置決めロッド11に設けると共に、カム面15を内筒3(ハウジング2)に設けてもよい。また、ボール14などのカム部は、ハウジング2(または位置決めロッド11)と一体に形成してもよい。
【0062】
支柱7の外周面に設けられる位置決め用の突起部7aは、2つではなく1つであってもよい。突起部7aを1つ備える場合、押部16と突起部7aとが支柱7の軸心を中心として対称となる位置に突起部7aは配置される。さらには、突起部7aは無くてもよい。この場合、位置決め装置がワークWを載置台53の壁面に押し当てることで、その壁面に当接された位置にワークWを位置決めすることになる。
【符号の説明】
【0063】
2:ハウジング、7:支柱(挿入部)、8:円形孔(孔)、9:上孔、11:位置決めロッド、14:ボール(カム部)、15:カム面、16:押部、17:駆動部材、18:駆動部材本体部、18a:基端部、19:操作部材、19a:操作部、19b:円筒部、20:筒孔、22:凹部、23:ボール(押部材)、24:バネ(付勢手段)、25:駆動部材、25a:押部材、101:位置決め装置、W:ワーク(位置決め対象物)