(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093297
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】グラフェン製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3581 20140101AFI20240702BHJP
【FI】
G01N21/3581
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209586
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】全 哲洙
(72)【発明者】
【氏名】中西 篤司
(72)【発明者】
【氏名】木根 悠太
(72)【発明者】
【氏名】渡利 威士
(72)【発明者】
【氏名】栗田 隆史
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB09
2G059BB12
2G059CC12
2G059CC16
2G059DD01
2G059DD11
2G059EE02
2G059GG01
2G059HH01
2G059HH05
2G059JJ13
2G059JJ17
2G059KK01
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】高品質なグラフェンの製造の実現を可能にするグラフェン製造方法を提供する。
【解決手段】グラフェン製造方法は、樹脂材料からなる母材及び母材に分散されている植物粉を含む被加工部材を用意するステップS1と、被加工部材の表面に対してテラヘルツ波及び評価用レーザ光を照射すると共に表面からのテラヘルツ波を検出するステップS2と、表面のうちの被加工領域に対して加工用レーザ光を照射することで、被加工領域にグラフェンを形成するステップS3と、被加工領域に対してテラヘルツ波及び評価用レーザ光を照射すると共に被加工領域からのテラヘルツ波を検出するステップS4と、ステップS4で検出されたテラヘルツ波とステップS2で検出されたテラヘルツ波との強度差に基づいて、被加工領域におけるグラフェンの品質を評価するステップS5と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料からなる母材及び前記母材に分散されている植物粉を含む被加工部材を用意する第1工程と、
前記被加工部材の表面に対してテラヘルツ波及び評価用レーザ光を照射すると共に前記表面からの前記テラヘルツ波を検出する第2工程と、
前記表面のうちの被加工領域に対して加工用レーザ光を照射することで、前記被加工領域にグラフェンを形成する第3工程と、
前記被加工領域に対して前記テラヘルツ波及び前記評価用レーザ光を照射すると共に前記被加工領域からの前記テラヘルツ波を検出する第4工程と、
前記第4工程で検出された前記テラヘルツ波と前記第2工程で検出された前記テラヘルツ波との強度差に基づいて、前記被加工領域における前記グラフェンの品質を評価する第5工程と、を備える、グラフェン製造方法。
【請求項2】
前記第5工程では、前記強度差が大きいほど、前記グラフェンの品質が高いと評価する、請求項1に記載のグラフェン製造方法。
【請求項3】
前記第5工程の評価結果に基づいて、前記被加工領域に対する前記加工用レーザ光の照射条件を調整する第6工程を更に備える、請求項1に記載のグラフェン製造方法。
【請求項4】
前記第6工程では、前記強度差が所定値よりも小さい場合に、前記被加工領域に入射する前記加工用レーザ光のエネルギを大きくする、請求項3に記載のグラフェン製造方法。
【請求項5】
前記第3工程及び前記第4工程は、同時に実行される、請求項1に記載のグラフェン製造方法。
【請求項6】
前記加工用レーザ光及び前記評価用レーザ光は、同一のレーザ光源から出射される、請求項1に記載のグラフェン製造方法。
【請求項7】
前記加工用レーザ光及び前記評価用レーザ光のそれぞれは、フェムト秒レーザ光である、請求項1に記載のグラフェン製造方法。
【請求項8】
前記被加工領域における前記加工用レーザ光の照射位置と前記評価用レーザ光の照射位置とは、互いに重なっている、請求項1に記載のグラフェン製造方法。
【請求項9】
前記被加工領域における前記加工用レーザ光の照射位置と前記評価用レーザ光の照射位置とは、互いに離れている、請求項1に記載のグラフェン製造方法。
【請求項10】
前記被加工領域に入射する前記評価用レーザ光の強度は、前記被加工領域に入射する前記加工用レーザ光の強度よりも小さい、請求項1に記載のグラフェン製造方法。
【請求項11】
前記被加工領域に入射する前記加工用レーザ光の波長と前記被加工領域に入射する前記評価用レーザ光の波長とは、互いに異なっている、請求項1に記載のグラフェン製造方法。
【請求項12】
前記評価用レーザ光の波長は、前記加工用レーザ光の波長よりも大きい、請求項11に記載のグラフェン製造方法。
【請求項13】
前記加工用レーザ光の波長と前記評価用レーザ光の波長とは、互いに同じである、請求項1に記載のグラフェン製造方法。
【請求項14】
前記加工用レーザ光及び前記評価用レーザ光のそれぞれは、紫外光である、請求項13に記載のグラフェン製造方法。
【請求項15】
前記第4工程では、前記評価用レーザ光として前記加工用レーザ光を用いる、請求項13に記載のグラフェン製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラフェンの製造に関する技術が知られている(例えば非特許文献1参照)。非特許文献1に記載の技術では、被加工部材(例えば植物等)の表面に対して加工用レーザ光を照射することでグラフェンを形成している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Truong-Son Dinh Le、他9名、“Green FlexibleGraphene-Inorganic-Hybrid Micro-Supercapacitors Made of Fallen Leaves Enabledby Ultrafast Laser Pulses”、Adv.Funct. Mater. 2021, 2107768
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術では、グラフェンの品質は、例えば加工用レーザ光の照射条件等に依存する場合がある。所定の被加工部材の表面にグラフェンを形成する際に、加工用レーザ光の照射条件が適切に設定されていないと、高品質なグラフェンの製造が困難になるおそれがある。
【0005】
本発明は、高品質なグラフェンの製造の実現を可能にするグラフェン製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のグラフェン製造方法は、[1]「樹脂材料からなる母材及び前記母材に分散されている植物粉を含む被加工部材を用意する第1工程と、前記被加工部材の表面に対してテラヘルツ波及び評価用レーザ光を照射すると共に前記表面からの前記テラヘルツ波を検出する第2工程と、前記表面のうちの被加工領域に対して加工用レーザ光を照射することで、前記被加工領域にグラフェンを形成する第3工程と、前記被加工領域に対して前記テラヘルツ波及び前記評価用レーザ光を照射すると共に前記被加工領域からの前記テラヘルツ波を検出する第4工程と、前記第4工程で検出された前記テラヘルツ波と前記第2工程で検出された前記テラヘルツ波との強度差に基づいて、前記被加工領域における前記グラフェンの品質を評価する第5工程と、を備える、グラフェン製造方法。」である。
【0007】
上記[1]に記載のグラフェン製造方法の第5工程では、第4工程で検出されたテラヘルツ波と第2工程で検出されたテラヘルツ波との強度差に基づいて、被加工領域におけるグラフェンの品質を評価している。つまり、第5工程では、例えば可視光又は赤外光に比べて長い波長を有するテラヘルツ波を用いてグラフェンの品質を評価している。これにより、例えば被加工領域に凹凸等が存在する場合においても、当該凹凸に起因するノイズが低減されるため、グラフェンの品質を高精度に評価することができる。しかも、第4工程では、テラヘルツ波に加えて評価用レーザ光を被加工領域に対して照射している。これにより、被加工領域にグラフェンが形成されている場合にテラヘルツ波が評価用レーザ光によって増強されるため、グラフェンの品質をより一層高精度に評価することができる。したがって、グラフェンの品質の高精度な評価結果に基づいて、加工用レーザ光の照射条件の高精度な設定を実現することが可能になる。よって、このグラフェン製造方法によれば、高品質なグラフェンの製造を実現することが可能になる。
【0008】
本発明のグラフェン製造方法は、[2]「前記第5工程では、前記強度差が大きいほど、前記グラフェンの品質が高いと評価する、上記[1]に記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、加工用レーザ光の照射条件の高精度な設定を実現することが可能になり、高品質なグラフェンの製造を実現することが可能になる。
【0009】
本発明のグラフェン製造方法は、[3]「前記第5工程の評価結果に基づいて、前記被加工領域に対する前記加工用レーザ光の照射条件を調整する第6工程を更に備える、上記[1]又は[2]に記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、加工用レーザ光の照射条件を高精度に設定することができ、高品質なグラフェンを製造することができる。
【0010】
本発明のグラフェン製造方法は、[4]「前記第6工程では、前記強度差が所定値よりも小さい場合に、前記被加工領域に入射する前記加工用レーザ光のエネルギを大きくする、上記[3]に記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。強度差が所定値よりも小さい場合には、グラフェンの品質が所定の条件に満たない場合がある。この方法によれば、強度差が所定値よりも小さい場合に、加工用レーザ光のエネルギを大きくすることで、グラフェンの品質を向上させることができる。
【0011】
本発明グラフェン製造方法は、[5]「前記第3工程及び前記第4工程は、同時に実行される、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、グラフェンの製造効率の向上を実現することが可能になる。
【0012】
本発明のグラフェン製造方法は、[6]「前記加工用レーザ光及び前記評価用レーザ光は、同一のレーザ光源から出射される、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、簡単な構成によるグラフェンの製造を実現することが可能になる。
【0013】
本発明のグラフェン製造方法は、[7]「前記加工用レーザ光及び前記評価用レーザ光のそれぞれは、フェムト秒レーザ光である、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、簡単な構成によるグラフェンの製造を実現することが可能になる。
【0014】
本発明のグラフェン製造方法は、[8]「前記被加工領域における前記加工用レーザ光の照射位置と前記評価用レーザ光の照射位置とは、互いに重なっている、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、グラフェンの製造及びグラフェンの品質評価を同時に実行することができ、グラフェンの製造効率の向上を実現することが可能になる。
【0015】
本発明のグラフェン製造方法は、[9]「前記被加工領域における前記加工用レーザ光の照射位置と前記評価用レーザ光の照射位置とは、互いに離れている、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、グラフェンの製造及びグラフェンの品質評価が互いに影響されにくいため、グラフェンの製造及びグラフェンの品質評価のそれぞれの精度を向上させることができる。
【0016】
本発明のグラフェン製造方法は、[10]「前記被加工領域に入射する前記評価用レーザ光の強度は、前記被加工領域に入射する前記加工用レーザ光の強度よりも小さい、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、評価用レーザ光の照射に起因するグラフェンの品質の変化を抑制することができる。
【0017】
本発明のグラフェン製造方法は、[11]「前記被加工領域に入射する前記加工用レーザ光の波長と前記被加工領域に入射する前記評価用レーザ光の波長とは、互いに異なっている、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、グラフェンの製造及びグラフェンの品質評価のそれぞれに適した波長を有するレーザ光を用いることができ、グラフェンの製造及びグラフェンの品質評価のそれぞれの精度を向上させることができる。
【0018】
本発明のグラフェン製造方法は、[12]「前記評価用レーザ光の波長は、前記加工用レーザ光の波長よりも大きい、上記[11]に記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、グラフェンの製造及びグラフェンの品質評価のそれぞれに適した波長を有するレーザ光を用いることができ、グラフェンの製造及びグラフェンの品質評価のそれぞれの精度を向上させることができる。
【0019】
本発明のグラフェン製造方法は、[13]「前記加工用レーザ光の波長と前記評価用レーザ光の波長とは、互いに同じである、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、簡単な構成によるグラフェンの製造を実現することが可能になる。
【0020】
本発明のグラフェン製造方法は、[14]「前記加工用レーザ光及び前記評価用レーザ光のそれぞれは、紫外光である、上記[13]に記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、簡単な構成によるグラフェンの製造を実現することが可能になる。
【0021】
本発明のグラフェン製造方法は、[15]「前記第4工程では、前記評価用レーザ光として前記加工用レーザ光を用いる、上記[13]又は[14]に記載のグラフェン製造方法。」であってもよい。これにより、簡単な構成によるグラフェンの製造を実現することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高品質なグラフェンの製造の実現を可能にするグラフェン製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
【
図2】
図1に示される被加工部材の表面の平面図である。
【
図3】
図1に示されるグラフェン製造装置を用いたグラフェン製造方法のフローチャートである。
【
図4】第2実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
【
図5】第3実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
【
図6】第4実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
【
図7】第5実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
【
図8】第6実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
【
図9】第7実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
【
図10】第8実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
【
図11】第9実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
【
図12】変形例のグラフェン製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
図1に示されるように、第1実施形態のグラフェン製造装置1Aは、被加工部材Sの表面Saの被加工領域SbにグラフェンScを形成するための装置である。グラフェンScは、例えば、透明電極、配線、又はキャパシタ電極材料として機能する。このように機能するグラフェンScを有する被加工部材Sは、例えば電子デバイスとして利用される。
【0026】
被加工部材Sは、母材S1と植物粉S2とを含んでいる。母材S1は、樹脂材料からなる。母材S1は、例えば熱可塑性樹脂等である。母材S1は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ナイロン6(PA6)、アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)のうちの少なくとも一つを含んでいる。植物粉S2は、母材S1に分散されている。植物粉S2は、例えば母材S1に均一に分散されている。植物粉S2は、例えば、木粉及び竹粉の少なくとも一方を含んでいる。植物粉S2は、例えばセルロース又はリグニンを含んでいる。被加工部材Sのうちの植物粉S2の含有率は、例えば30重量%以上である。被加工部材Sのうちの植物粉S2の含有率は、例えば30重量%よりも小さくてもよい。被加工部材Sは、混和剤等を含んでいてもよい。被加工部材Sは、押出成形又は射出成形等によって作製されている。被加工部材Sは、例えば板状を呈している。
【0027】
被加工部材Sは、例えばいわゆる木質プラスチック(WPC:Woodfiber-Plastic Composites)等である。木質プラスチックは、木粉と熱可塑性プラスチックとの複合体である。木粉は、例えば、未利用のバイオマス(例えば間伐材等)から製造される。そのため、木質プラスチックの使用は、環境にやさしい。また、木質プラスチックは、木材に比べて耐久性に優れている。木質プラスチックの外観は、木材の外観に似ている。そのため、木質プラスチックは、木材の用途に利用されても抵抗感なく受け入れられやすい。
【0028】
グラフェン製造装置1Aは、レーザ光源2と、テラヘルツ光源3と、光検出器4と、光学素子5と、を備えている。レーザ光源2は、レーザ光Lを出射する。本実施形態では、レーザ光源2は、表面Saに垂直な方向に沿ってレーザ光Lを出射する。レーザ光源2は、被加工部材Sの表面Saのうちの被加工領域Sbに対してレーザ光Lを照射する。レーザ光Lは、例えばフェムト秒レーザ光である。レーザ光Lの波長は、例えば数百nm程度である。
【0029】
テラヘルツ光源3は、テラヘルツ波Tを出射する。本実施形態では、テラヘルツ光源3は、表面Saに対して傾斜する方向に沿ってテラヘルツ波Tを出射する。テラヘルツ光源3は、被加工領域Sbに対してテラヘルツ波Tを照射する。テラヘルツ波Tは、被加工領域Sbで反射される。テラヘルツ波Tは、光波と電波との間の中間的な性質を有している。テラヘルツ波Tは、光波と電波との中間領域に相当する周波数を有する電磁波である。テラヘルツ波Tの周波数は、0.01THz~100THz程度である。
【0030】
光検出器4は、被加工部材Sからのテラヘルツ波Tを検出する。本実施形態では、光検出器4は、被加工領域Sbで反射されたテラヘルツ波Tを検出する。光検出器4は、テラヘルツ波Tの検出結果を制御装置へ送信する。
【0031】
光学素子5は、レーザ光源2と被加工部材Sとの間に配置されている。光学素子5は、レーザ光源2から出射されるレーザ光Lの光路に配置されている。光学素子5は、レーザ光源2から出射されたレーザ光Lの一部を加工用レーザ光L1へ変換する。光学素子5から出射された加工用レーザ光L1は、表面Saに垂直な方向に沿って被加工領域Sbに入射する。
【0032】
光学素子5は、レーザ光源2から出射されたレーザ光Lの他の一部を透過させる。光学素子5を透過したレーザ光Lは、評価用レーザ光L2として、表面Saに垂直な方向に沿って被加工領域Sbに入射する。光学素子5は、例えば波長変換素子等である。光学素子5は、例えば非線形光学結晶によって構成されている。非線形光学結晶は、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO3)等である。
【0033】
上述したように、加工用レーザ光L1及び評価用レーザ光L2は、同一のレーザ光源(レーザ光源2)から出射される。加工用レーザ光L1及び評価用レーザ光L2のそれぞれは、例えばフェムト秒レーザ光である。加工用レーザ光L1の波長と評価用レーザ光L2の波長とは、互いに異なっている。加工用レーザ光L1は、例えば紫外光である。加工用レーザ光L1の波長は、例えば数百nm程度である。評価用レーザ光L2の波長は、加工用レーザ光L1の波長よりも大きい。評価用レーザ光L2の波長は、レーザ光Lの波長と同じである。
【0034】
図2に示されるように、加工用レーザ光L1は、被加工領域Sbの全体に亘って走査される。具体的には、加工用レーザ光L1は、照射範囲Mの中心が経路Rに沿って移動するように、被加工領域Sbに照射される。経路Rは、例えば蛇行状を呈している。加工用レーザ光L1は、加工ピッチXp毎に断続的に照射される。すなわち、加工用レーザ光L1は、第1位置に照射された後、第1位置から加工ピッチXp離れた第2位置に再び照射される。加工ピッチXpは、隣り合う照射範囲Mの中心間の距離である。これにより、被加工領域SbにグラフェンSc(
図1参照)が形成される。つまり、被加工領域SbがグラフェンScに改質される。
【0035】
本実施形態では、被加工領域Sbにおけるテラヘルツ波Tの照射位置は、被加工領域Sbにおける加工用レーザ光L1の照射位置と重なっている。テラヘルツ波Tは、加工用レーザ光L1と同時に且つ同位置に照射される。テラヘルツ波Tは、加工用レーザ光L1と同様に、被加工領域Sbの全体に亘って走査される。テラヘルツ波Tは、加工用レーザ光L1と同様に、加工ピッチXp毎に断続的に照射される。
【0036】
被加工領域Sbにおける評価用レーザ光L2の照射位置は、被加工領域Sbにおけるテラヘルツ波Tの照射位置と重なっている。本実施形態では、被加工領域Sbにおける評価用レーザ光L2の照射位置は、被加工領域Sbにおける加工用レーザ光L1の照射位置と重なっている。評価用レーザ光L2は、テラヘルツ波Tと同時に且つ同位置に照射される。本実施形態では、評価用レーザ光L2は、加工用レーザ光L1と同時に且つ同位置に照射される。
【0037】
評価用レーザ光L2は、テラヘルツ波Tと同様に、被加工領域Sbの全体に亘って走査される。評価用レーザ光L2は、テラヘルツ波Tと同様に、加工ピッチXp毎に断続的に照射される。評価用レーザ光L2は、被加工領域Sbへ入射するテラヘルツ波T又は被加工領域Sbで反射されたテラヘルツ波Tを増強させる。具体的には、評価用レーザ光L2がグラフェンScに照射されると、電場が形成される。テラヘルツ波Tは、当該電場によって増強される。
【0038】
次に、第1実施形態のグラフェン製造方法について説明する。グラフェン製造方法は、被加工部材Sの表面SaにグラフェンScを形成する方法である。
図3に示されるように、ステップS1では、被加工部材Sが用意される。ステップS1が第1工程に相当する。
【0039】
ステップS2では、表面Saに対してテラヘルツ波T及び評価用レーザ光L2が照射れると共に表面Saからのテラヘルツ波Tが検出される。これにより、グラフェンScの形成前のリファレンス値が取得される。ステップS2では、被加工領域Sbにおける一つの位置のみにテラヘルツ波T及び評価用レーザ光L2が照射されてもよい。ステップS2が第2工程に相当する。
【0040】
ステップS3では、被加工領域Sbに対して加工用レーザ光L1が照射される。ステップS3では、上述したように、加工用レーザ光L1が被加工領域Sbの全体に亘って走査される。これにより、被加工領域SbにグラフェンScが形成される。ステップS3が第3工程に相当する。
【0041】
ステップS4では、被加工領域Sbに対してテラヘルツ波T及び評価用レーザ光L2が照射されると共に、被加工領域Sbからのテラヘルツ波Tが検出される。本実施形態では、ステップS4で照射されるテラヘルツ波Tの波長は、ステップS2で照射されるテラヘルツ波Tの波長と同じである。本実施形態では、ステップS4で照射される評価用レーザ光L2の波長は、ステップS2で照射される評価用レーザ光L2の波長と同じである。ステップS4では、上述したように、テラヘルツ波T及び評価用レーザ光L2が被加工領域Sbの全体に亘って走査される。ステップS4では、上述したように、テラヘルツ波T及び評価用レーザ光L2が同時に且つ同位置に照射される。ステップS4が第4工程に相当する。
【0042】
ステップS5では、ステップS4で検出されたテラヘルツ波TとステップS2で検出されたテラヘルツ波Tとの強度差(以下、「強度差」という)に基づいて、被加工領域SbにおけるグラフェンScの品質が評価される。グラフェンの品質とは、グラフェンの形成度合いのことをいう。例えば、グラフェンが形成されている場合には、グラフェンが形成されていない場合に比べて、グラフェンの品質が高い。例えば、グラフェンの格子構造が均一に分布しているほど、グラフェンの品質が高い。例えば、グラフェンの格子構造の欠陥が少ないほど、グラフェンの品質が高い。グラフェンの品質が高いほど、電子移動度が向上する結果、電子材料としての価値が高まる。
【0043】
ステップS5では、例えば強度差が所定値以上である場合には、グラフェンScの品質が高いと評価される。ステップS5では、例えば強度差が所定値よりも小さい場合には、グラフェンScの品質が低いと評価される。所定値は、グラフェンScの品質を評価するために予め定められた閾値である。所定値は、例えば被加工部材Sの種類ごとに定められる。ステップS5では、強度差が大きいほどグラフェンScの品質が高いと評価される。ステップS5では、グラフェンScの品質と基準品質(所望の品質)との差が評価されてもよい。ステップS5が第5工程に相当する。ステップS3及びステップS4は、同時に実行される。つまり、グラフェンScが製造されながら、グラフェンScの品質がリアルタイムに評価される。
【0044】
ステップS6では、ステップS5の評価結果に基づいて、被加工領域Sbに対する加工用レーザ光L1の照射条件が調整される。加工用レーザ光L1の照射条件は、例えば、加工用レーザ光L1の平均出力、パルスエネルギ、強度、フルーエンス、照射時間、パルス幅、波長、ビーム径、又は加工ピッチ等である。ステップS6では、加工用レーザ光L1のこれらの照射条件の少なくとも一つが変更される。
【0045】
ステップS6では、例えば強度差が所定値よりも小さい場合に、つまり、ステップS5でグラフェンScの品質が低いと評価された場合に、被加工領域Sbに入射する加工用レーザ光L1のエネルギが大きくされる。ステップS6では、例えば、加工用レーザ光L1の平均出力、パルスエネルギ、強度、フルーエンス、照射時間及び加工ピッチのうちの少なくとも一つが大きくされる。ステップS6では、例えば、加工用レーザ光L1のパルス幅、波長及び加工ピッチのうちの少なくとも一つが小さくされる。ステップS6が第6工程に相当する。
【0046】
以上説明したように、グラフェン製造方法のステップS5(第5工程)では、ステップS4で検出されたテラヘルツ波とステップS2で検出されたテラヘルツ波との強度差に基づいて、被加工領域SbにおけるグラフェンScの品質を評価している。つまり、ステップS5では、例えば可視光又は赤外光に比べて長い波長を有するテラヘルツ波Tを用いてグラフェンScの品質を評価している。これにより、例えば被加工領域Sbに凹凸等が存在する場合においても、当該凹凸に起因するノイズが低減されるため、グラフェンScの品質を高精度に評価することができる。しかも、ステップS4(第4工程)では、テラヘルツ波Tに加えて評価用レーザ光L2を被加工領域Sbに対して照射している。これにより、被加工領域SbにグラフェンScが形成されている場合にテラヘルツ波Tが増強されるため、グラフェンScの品質をより一層高精度に評価することができる。したがって、グラフェンScの品質の高精度な評価結果に基づいて、加工用レーザ光L1の照射条件の高精度な設定を実現することが可能になる。よって、このグラフェン製造方法によれば、高品質なグラフェンScの製造を実現することが可能になる。
【0047】
上記のラフェン製造方法のステップS5(第5工程)では、テラヘルツ波Tの強度差が大きいほど、グラフェンScの品質が高いと評価している。これにより、加工用レーザ光L1の照射条件の高精度な設定を実現することが可能になり、高品質なグラフェンScの製造を実現することが可能になる。
【0048】
上記のグラフェン製造方法のステップS6(第6工程)では、ステップS5の評価結果に基づいて、被加工領域Sbに対する加工用レーザ光L1の照射条件を調整している。これにより、加工用レーザ光L1の照射条件を高精度に設定することができ、高品質なグラフェンScを製造することができる。
【0049】
上記のグラフェン製造方法のステップS6では、テラヘルツ波Tの強度差が所定値よりも小さい場合に、被加工領域Sbに入射する加工用レーザ光L1のエネルギを大きくしている。強度差が所定値よりも小さい場合には、グラフェンScの品質が所定の条件に満たない場合がある。この方法によれば、強度差が所定値よりも小さい場合に、加工用レーザ光L1のエネルギを大きくすることで、グラフェンScの品質を向上させることができる。
【0050】
上記のグラフェン製造方法のステップS3及びステップS4は、同時に実行される。これにより、グラフェンScを製造しながらグラフェンScの品質をリアルタイムに評価することができる。そのため、高品質なグラフェンScの製造効率の向上を実現することが可能になる。また、最適な加工用レーザ光L1の照射条件を効率良く探索することができる。
【0051】
加工用レーザ光L1及び評価用レーザ光L2は、同一のレーザ光源(レーザ光源2)から出射される。これにより、例えば加工用レーザ光L1及び評価用レーザ光L2のそれぞれが異なるレーザ光源から出射される場合に比べ、簡単な構成によるグラフェンScの製造を実現することが可能になる。
【0052】
加工用レーザ光L1及び評価用レーザ光L2のそれぞれは、フェムト秒レーザ光である。これにより、簡単な構成によるグラフェンScの製造を実現することが可能になる。
【0053】
被加工領域Sbにおける加工用レーザ光L1の照射位置と評価用レーザ光L2の照射位置とは、互いに重なっている。これにより、グラフェンScの製造及びグラフェンScの品質評価を同時に実行することができ、グラフェンScの製造効率の向上を実現することが可能になる。
【0054】
被加工領域Sbに入射する加工用レーザ光L1の波長と被加工領域Sbに入射する評価用レーザ光L2の波長とは、互いに異なっている。これにより、グラフェンScの製造及びグラフェンScの品質評価のそれぞれに適した波長を有するレーザ光を用いることができ、グラフェンScの製造及びグラフェンScの品質評価のそれぞれの精度を向上させることができる。
【0055】
評価用レーザ光L2の波長は、加工用レーザ光L1の波長よりも大きい。これにより、グラフェンScの製造及びグラフェンScの品質評価のそれぞれに適した波長を有するレーザ光を用いることができ、グラフェンScの製造及びグラフェンScの品質評価のそれぞれの精度を向上させることができる。
【0056】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
図4に示されるように、第2実施形態のグラフェン製造装置1Bは、プリズム6を更に備える点で、第1実施形態のグラフェン製造装置1Aと主に相違している。
【0057】
プリズム6は、光学素子5と被加工部材Sとの間に配置されている。プリズム6の断面は、例えば三角形状を呈している。プリズム6は、入射面6a、反射面6b、反射面6c及び貫通孔6dを含んでいる。入射面6aは、光学素子5を介してレーザ光源2に向いている。入射面6aは、被加工部材Sの表面Saに平行である。
【0058】
反射面6bは、テラヘルツ光源3と被加工部材Sとの間に向いている。反射面6bは、被加工部材Sの表面Saに対して傾斜している。本実施形態では、テラヘルツ光源3は、表面Saに平行な方向に沿ってテラヘルツ波Tを出射する。
【0059】
反射面6cは、光検出器4と被加工部材Sとの間に向いている。反射面6cは、被加工部材Sの表面Saに対して傾斜している。反射面6cと反射面6bとの間の幅は、レーザ光源2から被加工部材Sに向かうに従って漸減する。貫通孔6dは、入射面6aに垂直な方向においてプリズム6を貫通している。
【0060】
光学素子5から出射された加工用レーザ光L1及び光学素子5を透過した評価用レーザ光L2は、貫通孔6dを通過した後、被加工部材Sの表面Saのうちの被加工領域Sbに入射する。テラヘルツ光源3から出射されたテラヘルツ波Tは、反射面6bで反射された後、被加工領域Sbに入射する。被加工領域Sbで反射されたテラヘルツ波Tは、反射面6cで反射された後、光検出器4に入射する。
【0061】
第2実施形態のグラフェン製造装置1Bを用いたグラフェン製造方法によれば、上述した第1実施形態のグラフェン製造装置1Aを用いたグラフェン製造方法と同様に、高品質なグラフェンScの製造を実現することが可能になる。また、グラフェン製造装置1Bによれば、プリズム6が配置されているため、テラヘルツ光源3及び光検出器4の配置の自由度が向上する。
【0062】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
図5に示されるように、第3実施形態のグラフェン製造装置1Cは、光学素子5を備えていない点で、第1実施形態のグラフェン製造装置1Aと主に相違している。
【0063】
本実施形態では、レーザ光源2から出射されたレーザ光Lは、被加工領域Sbに入射する。レーザ光Lは、波長が変換されないまま被加工領域Sbに入射する。つまり、本実施形態では、レーザ光Lが加工用レーザ光及び評価用レーザ光を兼ねる。レーザ光Lは、加工用レーザ光及び評価用レーザ光のそれぞれとして機能する。本実施形態のステップS2では、評価用レーザ光としてレーザ光Lが用いられる。本実施形態のステップS3(第3工程)では、加工用レーザ光としてレーザ光Lが用いられる。本実施形態のステップS4(第4工程)では、評価用レーザ光としてレーザ光Lが用いられる。つまり、本実施形態のステップS4では、評価用レーザ光として加工用レーザ光が用いられる。本実施形態では、レーザ光Lは、紫外光である。つまり、本実施形態では、加工用レーザ光及び評価用レーザ光のそれぞれは、紫外光である。加工用レーザ光の波長と評価用レーザ光の波長とは、互いに同じである。
【0064】
第3実施形態のグラフェン製造装置1Cを用いたグラフェン製造方法によれば、上述した第1実施形態のグラフェン製造装置1Aを用いたグラフェン製造方法と同様に、高品質なグラフェンScの製造を実現することが可能になる。また、第3実施形態のグラフェン製造装置1Cを用いたグラフェン製造方法によれば、簡単な構成によるグラフェンScの製造を実現することが可能になる。
【0065】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
図6に示されるように、第4実施形態のグラフェン製造装置1Dは、プリズム6を更に備える点で、第3実施形態のグラフェン製造装置1Cと主に相違している。グラフェン製造装置1Dは、光学素子5を備えていない点で、第2実施形態のグラフェン製造装置1Bと主に相違している。
【0066】
プリズム6は、レーザ光源2と被加工部材Sとの間に配置されている。レーザ光源2から出射されたレーザ光Lは、プリズム6の貫通孔6dを通過した後、被加工部材Sの表面Saのうちの被加工領域Sbに入射する。テラヘルツ光源3から出射されたテラヘルツ波Tは、反射面6bで反射された後、被加工領域Sbに入射する。被加工領域Sbで反射されたテラヘルツ波Tは、反射面6cで反射された後、光検出器4に入射する。
【0067】
第4実施形態のグラフェン製造装置1Dを用いたグラフェン製造方法によれば、上述した第1実施形態のグラフェン製造装置1Aを用いたグラフェン製造方法と同様に、高品質なグラフェンScの製造を実現することが可能になる。また、グラフェン製造装置1Dを用いたグラフェン製造方法によれば、プリズム6が配置されているため、テラヘルツ光源3及び光検出器4の配置の自由度が向上する。
【0068】
[第5実施形態]
図7は、第5実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
図7に示されるように、第5実施形態のグラフェン製造装置1Eは、ミラー81,82を更に備える点で、第3実施形態のグラフェン製造装置1Cと主に相違している。
【0069】
レーザ光源2は、被加工部材Sの表面Saに対して傾斜する方向に沿ってレーザ光Lを出射する。ミラー81,82は、テラヘルツ光源3と光検出器4との間に配置されている。テラヘルツ光源3は、表面Saに平行な方向に沿ってテラヘルツ波Tを出射する。テラヘルツ光源3から出射されたテラヘルツ波Tは、ミラー81で反射された後、被加工部材Sの表面Saのうちの被加工領域Sbに入射する。被加工領域Sbで反射されたテラヘルツ波Tは、ミラー82で反射された後、光検出器4に入射する。
【0070】
第5実施形態のグラフェン製造装置1Eを用いたグラフェン製造方法によれば、上述した第1実施形態のグラフェン製造装置1Aを用いたグラフェン製造方法と同様に、高品質なグラフェンScの製造を実現することが可能になる。また、グラフェン製造装置1Eを用いたグラフェン製造方法によれば、ミラー81,82が配置されているため、レーザ光源2、テラヘルツ光源3及び光検出器4の配置の自由度が向上する。
【0071】
[第6実施形態]
図8は、第6実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
図8に示されるように、第6実施形態のグラフェン製造装置1Fは、テラヘルツ光源3、光検出器4及びミラー81,82に代えてテラヘルツ検出器30を備える点で、第5実施形態のグラフェン製造装置1Eと主に相違している。
【0072】
テラヘルツ検出器30は、テラヘルツ波Tの出射及びテラヘルツ波Tの検出の両方の機能を有している。テラヘルツ検出器30は、表面Saに垂直な方向に沿ってテラヘルツ波Tを出射する。テラヘルツ検出器30から出射されたテラヘルツ波Tは、表面Saで反射された後、テラヘルツ検出器30に入射する。
【0073】
第6実施形態のグラフェン製造装置1Fを用いたグラフェン製造方法によれば、上述した第1実施形態のグラフェン製造装置1Aを用いたグラフェン製造方法と同様に、高品質なグラフェンScの製造を実現することが可能になる。また、グラフェン製造装置1Fを用いたグラフェン製造方法によれば、簡単な構成によるグラフェンScの製造を実現することが可能になる。
【0074】
[第7実施形態]
図9は、第7実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
図9に示されるように、第7実施形態のグラフェン製造装置1Gは、ビームスプリッタ71,72、ミラー81,82及び減衰器9を更に備える点で、第3実施形態のグラフェン製造装置1Cと主に相違している。
【0075】
ビームスプリッタ71は、レーザ光源2と被加工部材Sとの間に配置されている。ビームスプリッタ72は、ビームスプリッタ71と被加工部材Sとの間に配置されている。ミラー81は、ビームスプリッタ71に対して被加工部材Sの表面Saに平行な方向における一方側に配置されている。ミラー82は、ビームスプリッタ72に対して被加工部材Sの表面Saに平行な方向における一方側に配置されている。減衰器9は、ミラー82とビームスプリッタ72との間に配置されている。減衰器9は、減衰器9を通過するレーザ光を減衰させる。減衰器9は、例えばレーザ光の強度(光量)を小さくする。
【0076】
レーザ光源2から出射されたレーザ光Lの一部は、加工用レーザ光L1としてビームスプリッタ71を透過する。レーザ光源2から出射されたレーザ光Lの他の一部は、評価用レーザ光L2としてビームスプリッタ71で反射される。ビームスプリッタ71を透過した加工用レーザ光L1は、ビームスプリッタ72を透過した後、被加工部材Sの表面のうちの被加工領域Sbに入射する。ビームスプリッタ71で反射された評価用レーザ光L2は、ミラー81,82で順次反射された後、減衰器9に入射する。減衰器9に入射した評価用レーザ光L2は、減衰された後、減衰器9から出射される。減衰器9から出射された評価用レーザ光L2は、ビームスプリッタ72で反射された後、被加工領域Sbに入射する。
【0077】
本実施形態では、評価用レーザ光L2の光路長が加工用レーザ光L1の光路長よりも大きいため、評価用レーザ光L2は加工用レーザ光L1よりも遅れて加工用レーザ光L1と同位置に入射する。本実施形態では、被加工領域Sbに入射する加工用レーザ光L1の波長と被加工領域Sbに入射する評価用レーザ光L2の波長とは、互いに同じである。加工用レーザ光L1の波長及び評価用レーザ光L2の波長のそれぞれは、レーザ光Lの波長と同じである。本実施形態では、評価用レーザ光L2が減衰器9によって減衰されるため、被加工領域Sbに入射する評価用レーザ光L2の強度は、被加工領域に入射する加工用レーザ光L1の強度よりも小さい。
【0078】
第7実施形態のグラフェン製造装置1Gを用いたグラフェン製造方法によれば、上述した第1実施形態のグラフェン製造装置1Aを用いたグラフェン製造方法と同様に、高品質なグラフェンScの製造を実現することが可能になる。また、被加工領域Sbに入射する評価用レーザ光L2の強度は、被加工領域Sbに入射する加工用レーザ光L1の強度よりも小さい。これにより、評価用レーザ光L2の照射に起因するグラフェンScの品質の変化を抑制することができる。したがって、グラフェンScの品質をより高精度に評価することができる。
【0079】
[第8実施形態]
図10は、第8実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
図10に示されるように、第8実施形態のグラフェン製造装置1Hは、ビームスプリッタ71,72及びミラー81,82を更に備える点で、第4実施形態のグラフェン製造装置1Dと主に相違している。グラフェン製造装置1Hは、減衰器9を備えていない点及びプリズム6を更に備えている点で、第7実施形態のグラフェン製造装置1Gと主に相違している。
【0080】
プリズム6は、ビームスプリッタ72と被加工部材Sとの間に配置されている。ミラー81,82で順次反射された評価用レーザ光L2は、減衰されずにビームスプリッタ72に入射する。ビームスプリッタ72を透過した加工用レーザ光L1及びビームスプリッタ72で反射された評価用レーザ光L2は、プリズム6の貫通孔6dを通過した後、被加工部材Sの表面Saのうちの被加工領域Sbに入射する。テラヘルツ光源3から出射されたテラヘルツ波Tは、プリズム6の反射面6bで反射された後、被加工領域Sbに入射する。被加工領域Sbで反射されたテラヘルツ波Tは、プリズム6の反射面6cで反射された後、光検出器4に入射する。
【0081】
第8実施形態のグラフェン製造装置1Hを用いたグラフェン製造方法によれば、上述した第1実施形態のグラフェン製造装置1Aを用いたグラフェン製造方法と同様に、高品質なグラフェンScの製造を実現することが可能になる。
【0082】
[第9実施形態]
図11は、第9実施形態のグラフェン製造装置の構成図である。
図11に示されるように、第9実施形態のグラフェン製造装置1Jは、レーザ光源2に代えてレーザ光源21,22を備える点で、第6実施形態のグラフェン製造装置1Fと主に相違している。
【0083】
レーザ光源21は、表面Saに対して傾斜する方向に沿って加工用レーザ光L1を出射する。レーザ光源22は、表面Saに対して傾斜する方向に沿って評価用レーザ光L2を出射する。本実施形態では、加工用レーザ光L1の波長と評価用レーザ光L2の波長とは、互いに同じである。
【0084】
第9実施形態のグラフェン製造装置1Jを用いたグラフェン製造方法によれば、上述した第1実施形態のグラフェン製造装置1Aを用いたグラフェン製造方法と同様に、高品質なグラフェンScの製造を実現することが可能になる。
【0085】
[変形例]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0086】
各実施形態において、被加工領域Sbにおけるテラヘルツ波Tの照射位置が、被加工領域Sbにおける加工用レーザ光L1の照射位置と重なっている例を示したが、
図12に示されるように、被加工領域Sbにおけるテラヘルツ波Tの照射位置は、被加工領域Sbにおける加工用レーザ光L1の照射位置から離れていてもよい。この場合、テラヘルツ波Tの照射範囲の中心は、加工用レーザ光L1の照射範囲の中心から離れている。テラヘルツ波Tの照射範囲は、加工用レーザ光L1の照射範囲から離れている。テラヘルツ波Tの照射範囲は、加工用レーザ光L1の照射範囲と部分的に重なっていてもよい。テラヘルツ波Tは、経路Rにおける加工用レーザ光L1の後流側に照射される。テラヘルツ波Tは、加工用レーザ光L1が照射された後の位置に照射される。
【0087】
被加工領域Sbにおける評価用レーザ光L2の照射位置は、被加工領域Sbにおけるテラヘルツ波Tの照射位置と重なっている。つまり、被加工領域Sbにおける評価用レーザ光L2の照射位置は、被加工領域Sbにおける加工用レーザ光L1の照射位置から離れている。評価用レーザ光L2の照射範囲の中心は、加工用レーザ光L1の照射範囲の中心から離れている。評価用レーザ光L2の照射範囲は、加工用レーザ光L1の照射範囲から離れている。評価用レーザ光L2の照射範囲は、加工用レーザ光L1の照射範囲と部分的に重なっていてもよい。評価用レーザ光L2は、テラヘルツ波Tと同様に、経路Rにおける加工用レーザ光L1の後流側に照射される。評価用レーザ光L2は、テラヘルツ波Tと同様に、加工用レーザ光L1が照射された後の位置に照射される。
【0088】
このような場合には、グラフェンScの製造及びグラフェンScの品質評価が互いに影響されにくいため、グラフェンScの製造及びグラフェンScの品質評価のそれぞれの精度を向上させることができる。
【0089】
各実施形態において、テラヘルツ波Tが被加工領域Sbで反射される例を示したが、第6実施形態(
図8参照)及び第9実施形態(
図11参照)を除く各実施形態では、テラヘルツ波Tは、被加工部材Sを透過してもよい。この場合、光検出器4は、被加工部材Sを透過したテラヘルツ波Tを検出する。
【0090】
各実施形態において、グラフェンScの品質が低いと評価された場合に、被加工領域Sbに入射する加工用レーザ光L1のエネルギが大きくされる例を示したが、グラフェンScの品質が適切ではないと評価された場合に、被加工領域Sbに入射する加工用レーザ光L1のエネルギが小さくされてもよい。各実施形態では、グラフェンScの品質が目標品質に到達するまで、加工用レーザ光L1のエネルギを調整してもよい。
【0091】
第7実施形態(
図9参照)のグラフェン製造装置1Gは、減衰器9を備えていなくてもよい。
【0092】
第9実施形態(
図11参照)において、加工用レーザ光L1の波長と評価用レーザ光L2の波長とが互いに同じである例を示したが、加工用レーザ光L1の波長と評価用レーザ光L2の波長とは、互いに異なっていてもよい。評価用レーザ光L2の波長は、加工用レーザ光L1の波長よりも大きくてもよい。
【0093】
各実施形態において、評価用レーザ光L2が、テラヘルツ波Tと同時に且つ同位置に照射される例を示したが、評価用レーザ光L2の照射位置は、テラヘルツ波Tの照射位置と完全に一致しなくてもよい。評価用レーザ光L2の照射位置は、テラヘルツ波Tの照射位置と異なっていてもよい。評価用レーザ光L2の照射位置(照射範囲)は、例えば、テラヘルツ波Tの照射位置(照射範囲)と部分的に重なっていてもよい。評価用レーザ光L2の照射位置(照射範囲)は、例えば、テラヘルツ波Tの照射位置(照射範囲)から離れていてもよい。評価用レーザ光L2の照射のタイミングは、テラヘルツ波Tの照射のタイミングと完全に一致しなくてもよい。評価用レーザ光L2の照射のタイミングは、テラヘルツ波Tの照射のタイミングと異なっていてもよい。評価用レーザ光L2は、テラヘルツ波Tを増強させればよい。テラヘルツ波Tは、評価用レーザ光L2の照射によって形成された電場の範囲内に照射されればよい。
【0094】
各実施形態において、テラヘルツ波T及び評価用レーザ光L2が被加工領域Sbの全体に亘って走査される例を示したが、テラヘルツ波T及び評価用レーザ光L2は、被加工領域Sbの一部のみに照射されてもよい。この場合、被加工領域Sbの当該一部のみからのテラヘルツ波Tの検出結果に基づいて(当該検出結果を代表値として)、被加工領域SbにおけるグラフェンScの品質を評価してもよい。
【符号の説明】
【0095】
L1…加工用レーザ光、L2…評価用レーザ光、S…被加工部材、S1…母材、S2…植物粉、Sa…表面、Sb…被加工領域、Sc…グラフェン、T…テラヘルツ波。