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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093299
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/45 20180101AFI20240702BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20240702BHJP
【FI】
H04W76/45
H04W84/10 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209589
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】石山 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 徳穂
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067BB04
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】ユーザにとって操作性が良好である、SCPC方式の無線通信システムを得る。
【解決手段】複数の無線端末10と基地局20との間で無線通信が行われる。この無線通信においては、SCPC方式が用いられる。無線通信システム1においては、各無線端末10に対して、携帯端末30が接続されている。ユーザUは直接無線端末10を操作する代わりに、対応する携帯端末30を操作する。ユーザUが携帯端末30に向けて音声を発すれば、携帯端末30は、対応する無線端末10に対して、このユーザUがこの無線端末10の送信ボタンを押下したと擬制する指示をすると同時に、この音声信号を基地局20側に送信させる。ユーザUは、携帯端末30で通常の通話を行う場合と同様の感覚で、この無線通信システム1を用いることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、当該基地局とSCPC(Single Channel Per Carrier)方式の無線通信を行う無線端末と、を具備する無線通信システムであって、
前記無線通信とは異なる近距離無線通信で前記無線端末と通信を行う携帯端末を具備し、
前記携帯端末は、
自身に入力した音声の信号強度を認識し、当該信号強度が一定値以上である場合に、前記音声を音声信号として認識する音声入力認識部と、
認識された前記音声信号を前記近距離無線通信によって、前記無線端末に送信させる音声信号送信制御部と、
を具備し、
前記無線端末は、
前記基地局との間の前記無線通信と、前記携帯端末との間の前記近距離無線通信とを制御し、前記携帯端末から前記音声信号を受信すると、当該音声信号を前記無線通信で前記基地局に送信させる通信制御部を具備する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記携帯端末は、
前記無線通信及び前記近距離無線通信に関わる情報を表示する表示部と、
前記表示部に表示させる内容を設定して表示させる表示制御部と、
を具備し、
前記無線端末において、前記通信制御部は、前記音声信号の前記基地局への送信ができない状態である場合に、送信ができない状態である旨を前記近距離無線通信によって前記携帯端末に送信させ、
前記携帯端末において、前記表示制御部は、前記送信ができない状態である旨を受信した場合に、前記送信ができない状態である旨を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線端末において、前記通信制御部は、前記無線端末が前記基地局から受信中である場合に、前記音声信号の前記基地局への送信ができない状態であると判断することを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記携帯端末において、前記送信ができない状態である旨を受信した場合に、振動又は警報が発せられることを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
文字情報で構成されるショートメッセージが、前記携帯端末から前記無線端末に前記近距離無線通信によって送信されることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末が用いられ、業務用無線等に用いられる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
公共業務(警察、消防等)等に用いられる無線通信システムにおいては、その目的のために、携帯電話等が用いられる一般的な公衆用の無線通信システムとは異なる特性が要求される。この特性としては、例えば、基地局側から全ての無線端末側に対して共通の内容を一斉又は段階的に送信して情報を共有する動作が行えること、緊急を要する場合を考慮し、即時の接続が可能であること、輻輳が特に少ないこと、操作が簡便であること、等がある。
【0003】
特許文献1には、このような無線通信システムの一例が記載されている。この無線通信システムにおいては、上記のような要求を考慮して、SCPC(Single Channel Per Carrier)方式が用いられる。SCPC方式においては、基本的には同時には一方向のみの通信しか行うことができないため、音声信号の送信側を適正に認識することが特に要求される。このため、送信側で送信ボタンが押されている状態のみが送信状態であると認識され、この状態で送信者が発した音声が音声信号として送信されるプレストーク通信が採用される場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-70223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレストーク通信の場合には、例えば、双方の通話者が同時に発言できない、送信ボタンを押さないと発信ができない、等の制限があるため、その操作は一般的な携帯電話の通信とは大きく異なった。また、送信ボタンを押し続ける動作は、通話者の状況によっては困難な場合もあった。このため、従来の無線通信システムの操作性は、一般的な携帯電話等の使用に習熟したユーザにとっては良好ではなかった。
【0006】
このため、ユーザにとって操作性が良好である、SCPC方式の無線通信システムが望まれた。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線通信システムは、基地局と、当該基地局とSCPC(Single Channel Per Carrier)方式の無線通信を行う無線端末と、を具備する無線通信システムであって、前記無線通信とは異なる近距離無線通信で前記無線端末と通信を行う携帯端末を具備し、前記携帯端末は、自身に入力した音声の信号強度を認識し、当該信号強度が一定値以上である場合に、前記音声を音声信号として認識する音声入力認識部と、認識された前記音声信号を前記近距離無線通信によって、前記無線端末に送信させる音声信号送信制御部と、を具備し、前記無線端末は、前記基地局との間の前記無線通信と、前記携帯端末との間の前記近距離無線通信とを制御し、前記携帯端末から前記音声信号を受信すると、当該音声信号を前記無線通信で前記基地局に送信させる通信制御部を具備する。
この際、前記携帯端末は、前記無線通信及び前記近距離無線通信に関わる情報を表示する表示部と、前記表示部に表示させる内容を設定して表示させる表示制御部と、を具備し、前記無線端末において、前記通信制御部は、前記音声信号の前記基地局への送信ができない状態である場合に、送信ができない状態である旨を前記近距離無線通信によって前記携帯端末に送信させ、前記携帯端末において、前記表示制御部は、前記送信ができない状態である旨を受信した場合に、前記送信ができない状態である旨を前記表示部に表示させてもよい。
また、前記無線端末において、前記通信制御部は、前記無線端末が前記基地局から受信中である場合に、前記音声信号の前記基地局への送信ができない状態であると判断してもよい。
また、前記携帯端末において、前記送信ができない状態である旨を受信した場合に、振動又は警報が発せられてもよい。
また、文字情報で構成されるショートメッセージが、前記携帯端末から前記無線端末に前記近距離無線通信によって送信されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ユーザにとって操作性が良好である、SCPC方式の無線通信システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来の無線通信システム(a)、本発明の実施の形態に係る無線通信システム(b)の構成を示す図である。
図2】実施の形態に係る無線通信システムにおける無線端末の構成を示す図である。
図3】実施の形態に係る無線通信システムにおける携帯端末の構成を示す図である。
図4】実施の形態に係る無線通信システムにおける音声信号の送信に関わる動作を示すフローチャートである。
図5】実施の形態に係る無線通信システムにおける音声信号の送信に関わる動作を示す簡易的なシーケンス図である。
図6】実施の形態に係る無線通信システムにおける音声信号の送信に関わる動作の際に表示される画面表示の例である。
図7】実施の形態に係る無線通信システムにおけるショートメッセージの送信に関わる動作を示す簡易的なシーケンス図である。
図8】実施の形態に係る無線通信システムにおけるショートメッセージの送信に関わる動作の際に表示される画面表示の例である。
【0011】
次に、本発明を実施するための形態となる無線通信システムについて説明する。この無線通信システムは、例えば公共業務(警察、消防等)において用いられ、基地局と複数の無線端末とが用いられる。この基地局と無線端末との間では、従来の無線通信システムと同様にSCPC方式が用いられる。
【0012】
図1(a)は、従来の無線通信システム9の構成を示し、図1(b)は本発明の実施の形態に係る無線通信システム1の構成を示す。どちらの場合にも、複数の無線端末10と基地局20との間で無線通信が行われる。この無線通信においては、SCPC方式が用いられ、この無線通信に関わる構成は、例えば特許文献1に記載されたものと変わるところがない。
【0013】
この無線通信システム1においては、各無線端末10に対して、携帯端末30が接続されている。携帯端末30は、例えばスマートフォンであり、少なくとも通話機能と、無線端末との間で近距離無線通信(例えばBluetooth:登録商標)を行う機能を有する。従来の無線通信システム9においては、各無線端末10側のユーザUは直接無線端末10を操作したのに対し、この無線通信システム1においては、少なくとも通話時においては、ユーザUは直接無線端末10を操作する代わりに、対応する携帯端末30を操作する。
【0014】
無線端末10においては、音声入力部(マイクロフォン)と送信ボタンとが設けられ、送信ボタンが押下されている間に発した音声が音声入力部に入力して、この音声信号が無線通信によって基地局20あるいは他の無線端末10に向けて送信される。このため、従来の無線通信システム9においては、ユーザUが送信ボタンを押下している場合においてのみ、自身からの送話が行える。
【0015】
これに対して、この無線通信システム1においては、ユーザUが携帯端末30に向けて音声を発すれば、携帯端末30は、対応する無線端末10に対して、このユーザUがこの無線端末10の送信ボタンを押下したと擬制する指示をすると同時に、この音声信号を基地局20側に送信させる。このため、ユーザUは、携帯端末30(スマートフォン)で通常の通話を行う場合と同様の感覚で、この無線通信システム1を用いることができる。
【0016】
以下に、無線端末10、携帯端末30の構成と、上記の動作の詳細について説明する。図2は、ここで用いられる無線端末10の構成を示すブロック図である。ここでは、本願発明と直接関係する構成要素のみが記載され、他の構成要素については省略されている。この無線端末10においては、無線端末10全体の制御を行う主制御部11が用いられる。また、基地局20との間のSCPC方式による無線通信を行うための無線通信部12が設けられる。ここでは、所望の信号(音声信号等)を所望の形式で符号化してアンテナから送信される高周波信号とする部分、受信した高周波信号から所望の信号を復調する部分等を含めて無線通信部12とする。無線通信部12自身の機能は、特許文献1等に記載された従来の無線端末において用いられるものと変わりがない。
【0017】
また、ユーザUによって直接操作される複数の操作ボタン(操作キー)で構成される操作部13と、ユーザUに対して各種の情報を表示するディスプレイである表示部14が設けられる。操作部13と表示部14が一体化されたタッチパネルディスプレイが用いられていてもよい。また、ユーザUが発した音声を電気的な信号である音声信号に変換するマイクロフォンを具備する音声入力部15と、逆に無線端末10側からユーザU側に向けて音声を出力するスピーカである音声出力部16が設けられる。また、図2において、動作において必要となる各種の情報や信号等を記憶する記憶部17も設けられる。記憶部17はハードディスクや不揮発性メモリで構成される。なお、記憶部17とは異なり揮発性メモリで構成され主制御部11の動作に際して用いられるメモリも設けられるが、ここではこのメモリは主制御部11の中に含まれるものとする。
【0018】
ここで、操作部13には、この無線端末10側から音声信号を基地局20や他の無線端末10側に送信するための送信ボタンが設けられる。主制御部11は、この送信ボタンが押下されている間のみ、音声入力部15から得られた音声信号を、無線通信部12を用いて送信させる。このため、ユーザUが送話を行う際には、この送信ボタンを押下し続けることが必要となる。この動作も、従来の無線通信システムにおけるものと変わりがない。
【0019】
ただし、この無線端末10は、基地局20等と通信を行う無線通信部12とは別に、携帯端末30と近距離無線通信を行う近距離無線通信部18を具備する。ここで用いられる通信方式としては、Bluetooth(登録商標)等の、通信可能距離が数十m以内(数m程度)であるものが用いられ、図1(b)において、無線端末10と携帯端末30を1対1に対応させて、ユーザUが携帯端末30を用いることができる。このため、主制御部11には、基地局20との間の無線通信と、携帯端末30との間の近距離無線通信とを制御する通信制御部111が設けられる。なお、この近距離無線通信としては、同様の動作が可能な限りにおいて、Bluetooth以外のものも適宜用いることができる。
【0020】
図3は、携帯端末30の構成を示すブロック図である。携帯端末30としては、前記の通り、一般的に使用されるスマートフォンを用いることができ、図3においては、本発明の実施の形態に係る無線通信システム1の動作に直接関わる部分のみが記載されている。携帯端末30においても、携帯端末30全体の制御を行う主制御部31、複数の操作ボタン(操作キー)で構成される操作部32、表示部33(ディスプレイ)、音声入力部34(マイクロフォン)、音声出力部35(スピーカ)、記憶部36(不揮発性メモリ)が同様に設けられる。操作部32と表示部33は実際にはタッチパネルディスプレイとして一体化されている。
【0021】
また、この携帯端末30は、無線端末10側の近距離無線通信部18と通信を行うための近距離無線通信部37を具備するが、無線端末10において基地局20とSCPC方式の無線通信を行うための無線通信部12に対応する構成要素は具備せず、代わりに、この携帯端末30を一般的な携帯電話として用いる際に携帯電話回線に接続するための携帯電話回線用無線通信部38を具備する。ただし、携帯電話回線用無線通信部38に関わる動作は本発明とは関係がない。このため、携帯端末30と基地局20との間の通信は、携帯端末30と無線端末10間では近距離無線通信部37と近距離無線通信部18による近距離無線通信、かつ無線端末10と基地局20間の無線通信部12を介した無線通信により行われる。
【0022】
前記のように、この携帯端末30は一般的に用いられるスマートフォンであり、携帯電話回線用無線通信部38を用いた通常の携帯電話として用いられる。このため、操作部32においては通話キーが設けられ、他の携帯端末30(あるいはこの無線通信システム1とは無関係の携帯端末)との間の通常の通話に際しては、ユーザUがこの通話キーを1回押下することによって通話を開始することができ、その後にこの通話キーを押下することによって、通話動作が終了する。周知のように、この動作においてはSCPC方式は用いられず、ユーザUはこの間の任意の時期に発した音声は通話先に伝わる。
【0023】
ここで、主制御部31には、音声入力部34から音声信号が入力された場合におけるその信号強度によって、音声信号の有無を認識する音声入力認識部311が設けられる。音声入力認識部311は、一定期間の間にこの信号強度が一定値以上であると認識された場合には、ユーザUが音声を発したと認識する。この判断を行うために、音声入力部34から入力された音声信号は、前記のメモリに一時記憶される。
【0024】
主制御部31には、音声入力認識部311によってこのようにユーザUが音声を発したと認識された場合に、この音声信号を近距離無線通信部37を介して無線端末10側に送信させる音声信号送信制御部312が設けられる。これによりこの音声信号を受信した無線端末10の主制御部11は、操作部13における送信ボタンが押下され、かつこの音声信号が音声入力部15から入力した場合と同様の動作を行わせる。すなわち、主制御部11は、この音声信号を無線通信部12を介して基地局20等に送信する。基地局20は、この音声信号を他の無線端末10に転送してこの無線端末10に対応した他の携帯端末30(他のユーザU)にも送信する。
【0025】
また、音声入力認識部311は、このように音声信号を送信する動作を開始した後において、音声入力部34から入力した音声信号の信号強度が、一定期間の間において一定値未満であると認識された場合には、ユーザUから音声を発する動作が終了したと認識する。この場合、音声信号送信制御部312は、無線通信部12から音声信号を送信する動作を終了させる。
【0026】
また、この無線通信システム1においては、ユーザUは携帯端末30における表示部33を見ることによって、各種の情報を認識する。この情報の中には、自身と無線端末10との間の近距離無線通信の状況だけでなく、無線端末10と基地局20との間の無線通信の状況も含まれる。このように表示部33に表示される内容を制御する表示制御部313が主制御部31に設けられる。
【0027】
また、ユーザUはこの携帯端末30から表示部33、音声出力部35から各種の情報を得ることができるが、特に重要な情報をリアルタイムでユーザUに対して認識させるために、この携帯端末30には警報部39が設けられる。警報部39は、例えばこの携帯端末30自身を振動させる、他の音声出力とは別に音声出力部35から警報音を出力させる、等の動作を行う。
【0028】
また、この携帯端末30においては、音声信号を無線端末10側に送信する代わりに、周知のショートメールと同様の、短文で構成されたショートメッセージを送信させることもできる。無線端末10は、このショートメッセージを受信すると、前記の音声信号の代わりにこれを基地局20側に送信する。この場合、このショートメッセージを前記の音声信号の代用とすることもできる。
【0029】
なお、図3の構成は、近距離無線通信を行うことができる通常のスマートフォンの構成と変わるところがない。このため、実際には、以下に示すような動作を行わせるためのソフトウェア(アプリケーション)をスマートフォンにインストールすることによってこの携帯端末30を実現することができる。
【0030】
このため、この無線通信システム1においては、ユーザUは、自身が所持する携帯端末30のみを用いて、基地局20側への送話を行うことができる。この場合における特に携帯端末30側からみた動作を示すフローチャートを図4に、この動作に対応した簡易的なシーケンス図を図5に、この動作に際しての携帯端末30における表示部33(タッチパネルディスプレイ)の表示画面の例を図6に、それぞれ示す。ここでは、前記の音声信号の送信に関わる動作についてのみ記載され、前記のショートメッセージの送信の動作については記載されていない。
【0031】
図4において、まず、携帯端末30の表示制御部313は、図6(a)に示される初期画面を表示部33に表示させる(S1)。図6(a)において、上記の動作に関わる初期画面であることを示すために、無線端末10を示す無線端末アイコンIC1、この無線端末10の識別番号及び接続状態を示す無線端末状態表示IC2、この携帯端末30を操作するユーザUを示すユーザアイコンIC3、Bluetooth接続を開始又は解除するための近距離無線接続キーIC4が表示されている。無線端末状態表示IC2において、無線端末10と携帯端末30の対応関係は予め定められているため、これらの間のペアリングは予め行われているものとする。
【0032】
次に、送話を行いたいユーザUによって、動作開始のために図6(a)における近距離無線接続キーIC4が操作される(S2)と、主制御部31(音声信号送信制御部312)は、近距離無線通信部37を制御し、対応する無線端末10(近距離無線通信部18)との間での相互接続のための動作を開始させる(S3)。この動作は、接続が完了する(S5)まで繰り返される(S4)。接続が完了したら、表示制御部313は、表示部33に図6(b)に示された主画面(送話動作がスタンバイ状態であることに対応する画面)を表示させる(S6)。ここでは、無線端末状態表示IC2において、接続済みである旨が表示される。この際、無線端末アイコンIC1における表示の色を変えることによってこの旨を表示させることが好ましい。
【0033】
この状態で近距離無線接続キーIC4が操作された場合にはBluetooth接続を解除する動作が行われ、その旨を示すように近距離無線接続キーIC4の表示は変更される。また、この状態では前記のショートメッセージ送信の動作を行わせるためのショートメッセージキーIC5も表示されるが、これに関わる動作については後述する。以上の動作の際には、無線端末10と基地局20との間の通信は全く行われない、あるいはこれらの間の通信が行われていてもこの通信は携帯端末30とは関係がない。
【0034】
次に、主制御部31(音声信号送信制御部312)は、無線端末10の主制御部11を介して、この時点における無線端末10と基地局20との間の通信回線が使用中でないか否かを確認する(S7)。ここではまだ無線端末10から基地局20への送信は行われていないため、ここでいう使用中とは、無線端末10が基地局20から受信中であることを意味する。使用(受信)中であった場合(S7:Yes)には、表示制御部313は、表示部33に図6(c)に示されるような、この旨を示す画面を表示させる。ここでは、現在の回線の状況を表示する回線状況表示IC6において、回線が使用中のため現在は送話ができない旨が表示され(S8)、一定時間の経過後に再び上記の確認(S7)が行われる。また、この状態をユーザUに対してよりわかりやすく示すために、図6(c)においては、無線端末10と基地局20との間の通信が現在行われている旨を示す通信マークIC7が表示されている。
【0035】
このように現在は送話ができない場合(S8)には、主制御部31は、その旨をユーザUに対して迅速かつ明確に知らせるために、上記の表示に加えて、警報部39を動作させることが好ましい。これによって、ユーザUは、携帯端末30の振動や警報音によってこの旨を認識することができる。
【0036】
回線が使用中でなかった場合(S7:No)には、表示制御部313は、表示部33に図6(d)に示されるような、送話が可能である旨を示す画面を表示させる(S9)。ここでは、回線状況表示IC6において、現在送話が可能である旨が表示される。
【0037】
この場合には、これ以降でユーザUから基地局20側に向けての送話が可能となる。このため、ユーザUは、携帯端末30(音声入力部34)に対して、送信すべき音声を発することができる。前記のように、音声入力認識部311(主制御部31)は、音声入力部34から得られた音声信号の強度が一定期間の間に一定値以上であると認識された場合には、ユーザUが音声を発したと認識する(S10:Yes)。
【0038】
図5においては、これ以降の動作が記載されている。ここでは、送話が行われる側の携帯端末A(携帯端末30)、無線端末A(無線端末10)、基地局20、送話内容が送信される対象となる携帯端末B(他の携帯端末30)、無線端末B(他の無線端末10)の間で行われる動作について記載され、基地局20を介して最終的に携帯端末Aとは別の携帯端末B(あるいは携帯端末Aを操作するユーザUとは別のユーザU)までこの送話内容が伝達されるものとする。
【0039】
ユーザUが音声を発したと認識された(S10:Yes)場合(図5におけるS101)、図5において、音声信号送信制御部312は、この音声信号を近距離無線通信部37を介して無線端末A(無線端末10)の近距離無線通信部18に送信する(S102)。これによって、無線端末A(無線端末10)の主制御部11は、自身と対応する携帯端末30から送話の要求がある旨を認識する。その後、通信制御部111は、このような送話の要求がある旨を基地局20に伝達する動作を行う(S103)。
【0040】
この際、無線端末Aと基地局20との間の通信に輻輳があるか否かを、無線端末Aあるいは基地局20側で確認することができる(S104)。基地局20側で輻輳があると認識された場合(S104:Yes)には、その旨が無線端末A側に伝達される。この場合、あるいは無線端末A側で輻輳があると認識された場合には、通信制御部111は、この旨を携帯端末A(携帯端末10)に近距離無線通信によって伝達する。これによって、携帯端末Aの主制御部31は、自身が音声信号を無線端末A側に送信しこれを無線端末Aが受信したが、現在は無線端末Aと基地局20との間は輻輳の状態であるために、この音声信号を基地局20側(あるいは更に無線端末B側)へ送信することができない状態であることを認識することができる。
【0041】
図4において、携帯端末Aの主制御部31は、このように、無線端末10と基地局20との間が現在輻輳状態であることを認識することができる(S11)。輻輳状態であれば(S11:No)、主制御部31は、表示部33に、図6(e)に示されたような、現在は輻輳状態である旨の表示を行わせる(図4におけるS12、図5におけるS107)。ここでは、図6(c)における通信マークIC7の代わりに、輻輳状態を示す輻輳状態マークIC8が表示され、図6(c)における近距離無線接続キーIC4、ショートメッセージキーIC5の代わりに、ユーザUがこの状態を確認した旨を入力するための確認キーIC9が表示される。この場合においても、受信中であったために送話ができなかった場合(S8)と同様に、主制御部31は、警報部39を動作させることが好ましい。ユーザUが確認キーIC9を操作すること(図4におけるS13)によって、表示制御部313は、主画面の表示(S6)を再び行わせる。
【0042】
輻輳状態とは認められなかった場合(図4におけるS11:Yes、図5におけるS104:Yes)には、基地局20は、携帯端末A(無線端末A)側からの送話要求に対して応えられる旨を無線端末Aに送信し(図5におけるS108)、無線端末Aはこの旨を携帯端末Aに送信する(図5におけるS109)。
【0043】
これにより、携帯端末A(携帯端末30)の主制御部31は、音声信号を無線端末10側に送信するための動作を開始する(図4におけるS14、図5におけるS110)。ここでは、前記のように、音声信号送信制御部312は、音声入力部34に入力した音声信号の信号強度が一定値以上であると認識された音声信号を近距離無線通信部37を介して無線端末10側に送信する(図5におけるS111)。これを受信した無線端末10の通信制御部111は、この音声信号を無線通信部12を介して基地局20に送信する(図5におけるS112)。
【0044】
この際、表示制御部313は、図6(f)に示されるような、送信中画面を表示部33に表示させる。ここでは、回線状況表示IC6において、現在送信中である旨が表示されると共に、現在無線端末10から基地局20への送信中である旨を示す通信マークIC7が表示される。これによって、ユーザ10は現在自身が発した音声が基地局20まで伝達されている旨を認識することができる。この際、図示されるように、ユーザアイコンIC3における顔に対応した部分を、口が開いているように表示してもよい。
【0045】
一方、図5において、この音声信号を受信した基地局20からは、この音声信号は、無線端末Aと同様の構成を具備する無線端末B(他の無線端末10)に送信され(図5におけるS113)、ここから携帯端末B(他の携帯端末30、あるいは他のユーザU)に送信される(図5におけるS114)。
【0046】
この場合、無線端末B、携帯端末Bの構成は無線端末A、携帯端末Aと同様であるため、この音声信号を最終的に受信した携帯端末Bにおいては、図6(c)に示された画面が表示される(S115)。これによって、携帯端末B側のユーザUは、音声信号を受信した旨を認識することができる。
【0047】
図4において、上記のような音声信号の送信及びこれに伴う動作は、携帯端末10(図5における携帯端末A)において一定期間において一定強度以上の音声信号が認識された間(S15:No)において継続される。すなわち、ユーザUが音声を発している間においてはこの音声信号が基地局20側に送信される。
【0048】
携帯端末A(携帯端末10)の音声入力部34に入力した音声信号が一定期間内にわたり一定強度未満となった場合には、音声入力認識部311は、ユーザUが音声を発する動作は終了したと認識する(図4におけるS15:Yes、図5におけるS116)。この場合、音声信号送信制御部312は、音声信号の近距離無線通信部37からの出力を終了させる(図4におけるS16、図5におけるS117)。これによって、無線端末A(無線端末10)側の主制御部11は、携帯端末A側からの送話が終了したことを認識することができ、その旨を基地局20側に送信することができる(図5におけるS118)。これを受信した基地局20は、この旨を無線端末B(他の無線端末10)に送信し(図5におけるS119)、更に携帯端末B(他の携帯端末10)に送信することができる(図5におけるS120)。これを受信した携帯端末Bでは、図6(c)の表示から図6(d)の表示が行われ、携帯端末B側からの送話が可能となる。
【0049】
以上の動作においては、携帯端末10側のユーザは、無線端末10を操作する代わりに、自身が音声を発することのみによって、この音声を基地局20あるいは他の携帯端末10に送信することができる。音声を発する動作を終了するだけで、この送話の終了も自動的に行われる。このため、この無線通信システム1の操作は非常に容易となる。この際、無線端末10と基地局20との間の通信は従来通りSCPC方式で行われる。
【0050】
次に、前記のショートメッセージ送信に関する動作について説明する。この無線通信システム1においては、前記のようにユーザUによる送話に関わる操作が簡易となるようにされるため、このショートメッセージ送信に関わる動作についても、同様に簡易となることが好ましい。この動作は、表示部33にショートメッセージキーIC5が表示された状態(図6(b)、(c)、(d)、(f))において開始させることができる。ここで、図6(b)は携帯端末10のスタンバイ状態、図6(c)は無線端末10が受信中である状態、図6(d)は送話のスタンバイ状態、図6(f)は送話中の状態、にそれぞれ対応する。一般的には携帯端末10(スマートフォン)においてショートメッセージ(ショートメール)の送受信は携帯電話回線を用いて行われるが、ここで用いられるショートメッセージは、このような一般的なショートメールとは異なり、音声信号と同様に近距離無線通信によって送受信される。
【0051】
図7は、このようなショートメッセージ送信に関わる携帯端末10の動作を示すフローチャートであり、図8は、この場合における表示部33における画面の例である。図7において、前記のように図6(b)、(c)、(d)、(f)の状態においてショートメッセージキーIC5が操作された場合(S21)にこの動作は開始する。
【0052】
これにより、表示制御部313は、表示部33に、図8(a)に示されるようなショートメッセージ初期画面を表示させる(S22)。ここでは、前記のような送話ではなくこのショートメッセージ送信のみに関わる情報のみが表示される。ここでは、まず、受信ショートメッセージ表示JC1においては、直近にこの携帯端末10が基地局20を介して受信したショートメッセージ(図中においては3つ)の内容が、これを発した無線端末10の識別情報と共に表示されている。
【0053】
その下側のメッセージ選択表示JC2においては、送信されるショートメッセージとして選択されるべき内容が複数種類表示されている。このショートメッセージに関わる機能は主に緊急時において利用されるため、この具体的な内容は、このような緊急時の連絡において高い頻度で用いられる単純な定型文であることが好ましい。ここでは、このような定型文として5種類が設定されている。ここでは、このうちの3種類のみについて、具体的に「現状報告をお願いします。」、「問題ありません。」、「了解しました。」がこの定型文として例示されている。ユーザUは、メッセージ選択表示JC2における所望の定型文にタッチすることによって、この内容を選択することができる(S23)。このうち、選択された定型文は、上側の送信ショートメッセージ表示JC3に表示され、この内容が送信されるべきものとして認識される。なお、図8(a)において、右上にはクローズボタンJC4が表示され、クローズボタンJC4が操作された場合には、図8(a)の画面が閉じ、その前の画面に戻り、ショートメッセージに関する動作は行われない。
【0054】
このため、次に、表示制御部313は、表示部33に図8(b)に示されるような確認画面を表示させる(S24)。ここでは、「はい」、「いいえ」が選択される確認要求表示JC5が表示され、この内容でショートメッセージを送信させるか否かが問われている。ここで「いいえ」が選択された場合(S25:No)には、表示制御部313は、表示部33にショートメッセージ画面(S22:図8(a))を表示させ、前記と同様の動作を再度行わせる。
【0055】
ここで「はい」が選択された場合(S25:Yes)には、音声信号送信制御部312は、音声信号の代わりに、このショートメッセージを例えばテキストファイルとして近距離無線通信によって無線端末10に送信する動作を行わせる(S26)。これを受信した無線端末10の主制御部11は、このショートメッセージを更に基地局20に無線通信部12を介して送信させる。音声信号と比べてこのショートメッセージのデータ容量は小さいため、より迅速にショートメッセージを送信することができる。このため、音声信号を送信できない場合(図4におけるS7:Yes、S11:No)においても、音声信号を再送するよりもより短時間でこのショートメッセージを送信することができる。また、前記のようなショートメッセージの内容の設定はメッセージ選択表示JC2の1回の操作のみで行われるため、特に迅速に行うことができる。
【0056】
無線端末10が、このショートメッセージが基地局20に送信されたことを確認した場合(S27:Yes)には、ショートメッセージ送信に関わる動作は終了する。一方、一定時間内にショートメッセージを基地局20に送信することができなかった場合(S27:No)には、無線端末10(主制御部11)は、その旨を近距離無線通信で携帯端末30(主制御部31)側に送信する。この場合、表示制御部313は、表示部33に、図8(c)に示される送信失敗画面を表示させる(S28)。ここでは、送信が失敗した旨が表示され、その確認をユーザUに要求する(S29)ための確認キーが表示された送信失敗表示JC6が表示される。送信の失敗が確認されたら(S29)、主制御部31は、表示部33に再びショートメッセージ初期画面を表示させ(S22)、これ以降の動作が再度行われる。
【0057】
このように、この無線通信システム1においては、緊急時には、音声ではなくショートメッセージをユーザU側から基地局20あるいは他のユーザU(無線端末10あるいは携帯端末30)側に向けて送信することもできる。
【0058】
また、図1(a)に示されるように、携帯端末30を用いない従来の無線通信システム9の一部としても、この無線端末10を用いることができる。この場合、ユーザUは、操作部13(送信ボタン)を操作しながら音声を発することによって、この音声信号を基地局20側に送信することができる。
【0059】
一方、これに携帯端末30を組み合わせるだけで、上記の無線通信システム1を実現することができる。この際、前記のように、携帯端末30としては、この無線通信システム1に専用のものではなく、一般的に用いられるスマートフォンを用いることができる。あるいは、各ユーザUが保有し携帯するスマートフォンを上記の携帯端末10として用いることができる。このため、この無線通信システム1を容易に実現することができる。
【0060】
この際、携帯端末30と無線端末10は近距離無線通信で接続可能な位置関係とすればよい。例えば、無線端末10は作業場における1箇所に固定され、近距離無線通信が可能な限りにおいて、ユーザUは携帯端末10を所持した状態でこの作業場内を移動してもよい。
【0061】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0062】
1、9 無線通信システム
10 無線端末
11、31 主制御部
12 無線通信部
13、32 操作部
14、33 表示部
15、34 音声入力部
16、35 音声出力部
17、36 記憶部
18、38 近距離無線通信部
20 基地局
30 携帯端末
37 携帯電話回線用無線通信部
39 警報部
111 通信制御部
311 音声入力認識部
312 音声信号送信制御部
313 表示制御部
IC1 無線端末アイコン
IC2 無線端末状態表示
IC3 ユーザアイコン
IC4 近距離無線接続キー
IC5 ショートメッセージキー
IC6 回線状況表示
IC7 通信マーク
IC8 輻輳状態マーク
IC9 確認キー
JC1 受信ショートメッセージ表示
JC2 メッセージ選択表示
JC3 送信ショートメッセージ表示
JC4 クローズボタン
JC5 確認要求表示
JC6 送信失敗表示
U ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8