(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093303
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】エネルギー供給支援装置、エネルギー供給支援方法、及びエネルギー供給支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/123 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G08G1/123 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209597
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】504050275
【氏名又は名称】株式会社 ミックウェア
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100157967
【弁理士】
【氏名又は名称】管田 洋明
(72)【発明者】
【氏名】永元 覚
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA05
5H181AA27
5H181BB04
5H181BB08
5H181BB13
5H181FF03
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181MA48
5H181MA50
5H181MB03
(57)【要約】
【課題】移動体へのエネルギー供給を他の適切な移動体に依頼する。
【解決手段】抽出部は、第1所定距離よりも短い距離だけ第1移動体から離れた位置に存在する1台又は複数台の移動体の中から、第2所定距離よりも長い距離だけ第1移動体から離れた位置に存在する第2移動体を抽出する。送信部は、第1移動体に対して移動のためのエネルギーを供給するように依頼する依頼情報を、第2移動体へ送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1所定距離よりも短い距離だけ第1移動体から離れた位置に存在する1台又は複数台の移動体の中から、第2所定距離よりも長い距離だけ前記第1移動体から離れた位置に存在する第2移動体を抽出する抽出部と、
前記第1移動体に対して移動のためのエネルギーを供給するように依頼する依頼情報を、前記第2移動体へ送信する送信部と、
を備えるエネルギー供給支援装置。
【請求項2】
前記抽出部は、前記1台又は複数台の移動体のうち、前記第2所定距離よりも長い距離だけ前記第1移動体から離れた位置に存在し、かつ、前記第1移動体の進行方向とは反対の方向に存在する移動体を、前記第2移動体として抽出する、請求項1記載のエネルギー供給支援装置。
【請求項3】
前記抽出部は、前記1台又は複数台の移動体のうち、前記第2所定距離よりも長い距離だけ前記第1移動体から離れた位置に存在し、かつ、前記第1移動体の進行方向とは反対の方向に存在し、かつ、前記第1移動体に近づいてくる移動体を、前記第2移動体として抽出する、請求項2記載のエネルギー供給支援装置。
【請求項4】
前記抽出部は、前記1台又は複数台の移動体のうち、前記第2所定距離よりも長い距離だけ前記第1移動体から離れた位置に存在し、かつ、前記第1移動体の進行方向とは反対の方向に存在し、かつ、前記第1移動体に近づいてくる移動体の中から、前記第1移動体の位置に到達すると推定される時刻が最も早い移動体を、前記第2移動体として抽出する、請求項3記載のエネルギー供給支援装置。
【請求項5】
前記抽出部は、前記1台又は複数台の移動体のうち、前記第2所定距離よりも長い距離だけ前記第1移動体から離れた位置に存在し、かつ、前記第1移動体が所定のエネルギー供給拠点まで移動するためのエネルギーを供給可能な移動体を、前記第2移動体として抽出する、請求項1乃至4の何れか1項に記載のエネルギー供給支援装置。
【請求項6】
コンピュータが、
第1所定距離よりも短い距離だけ第1移動体から離れた位置に存在する1台又は複数台の移動体の中から、第2所定距離よりも長い距離だけ前記第1移動体から離れた位置に存在する第2移動体を抽出し、
前記第1移動体に対して移動のためのエネルギーを供給するように依頼する依頼情報を、前記第2移動体へ送信する、
処理を実行するエネルギー供給支援方法。
【請求項7】
第1所定距離よりも短い距離だけ第1移動体から離れた位置に存在する1台又は複数台の移動体の中から、第2所定距離よりも長い距離だけ前記第1移動体から離れた位置に存在する第2移動体を抽出し、
前記第1移動体に対して移動のためのエネルギーを供給するように依頼する依頼情報を、前記第2移動体へ送信する、
処理をコンピュータに実行させるためのエネルギー供給支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー供給支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池(蓄電池)、燃料電池等を搭載し、これらの電池から出力される電力で電動モータを駆動させて移動する車両が普及している。二次電池、燃料電池等から出力される電力の消費量は、車両の移動量だけでなく、環境によっても大きく変動する。このため、ガソリン車に慣れたユーザが電力で駆動する車両を運転すると、予想よりも早く電力を消費してしまい、電力不足によって移動が困難な状態に陥る可能性がある。
【0003】
電力で駆動する車両に関連して、充電ステーションまで走行しなくても蓄電装置を充電可能な移動体の救助システムが知られている(例えば、特許文献1~特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-086840号公報
【特許文献2】特開2019-086841号公報
【特許文献3】特開2019-088040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~特許文献3の救助システムでは、電欠状態になった電欠車両からの要請に基づいて、電欠車両に最も近い位置に存在する車両が、第1優先の救助車両候補として選択され、救助車両候補に対して救助依頼が通知される。電欠状態は、電力が不足している状態である。
【0006】
救助車両候補は、走行中に救助依頼を受信することが想定され、救助依頼を受信した時点で、救助車両候補の10m先に電欠車両が停止している可能性もある。この場合、救助車両候補は、電欠車両に給電するために急ブレーキをかけて停止することになるため、救助活動が事故の原因になる可能性が高くなる。
【0007】
なお、かかる問題は、電力で駆動する車両に給電する場合に限らず、様々な形態のエネルギーを用いて駆動する様々な移動体にエネルギーを供給する場合において生ずるものである。
【0008】
1つの側面において、本発明は、移動体へのエネルギー供給を他の適切な移動体に依頼することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施形態によれば、エネルギー供給支援装置は、抽出部及び送信部を含む。抽出部は、第1所定距離よりも短い距離だけ第1移動体から離れた位置に存在する1台又は複数台の移動体の中から、第2所定距離よりも長い距離だけ第1移動体から離れた位置に存在する第2移動体を抽出する。送信部は、第1移動体に対して移動のためのエネルギーを供給するように依頼する依頼情報を、第2移動体へ送信する。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面において、移動体へのエネルギー供給を他の適切な移動体に依頼することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】エネルギー供給支援装置の機能的構成図である。
【
図2】第1のエネルギー供給支援処理のフローチャートである。
【
図3】エネルギー供給支援システムの構成図である。
【
図5】救助車両候補の第1の抽出結果を示す図である。
【
図6】救助車両候補の第2の抽出結果を示す図である。
【
図7】救助車両候補の第3の抽出結果を示す図である。
【
図8】救助車両候補の第4の抽出結果を示す図である。
【
図10A】第2のエネルギー供給支援処理のフローチャート(その1)である。
【
図10B】第2のエネルギー供給支援処理のフローチャート(その2)である。
【
図11】情報処理装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、実施形態のエネルギー供給支援装置の機能的構成例を示している。
図1のエネルギー供給支援装置101は、抽出部111及び送信部112を含む。
【0014】
図2は、
図1のエネルギー供給支援装置101が行う第1のエネルギー供給支援処理の例を示すフローチャートである。なお、以後の説明に用いる各フローチャートに示す「S」は、ステップを示す。まず、抽出部111は、第1所定距離よりも短い距離だけ第1移動体から離れた位置に存在する1台又は複数台の移動体の中から、第2所定距離よりも長い距離だけ第1移動体から離れた位置に存在する第2移動体を抽出する(S201)。次に、送信部112は、第1移動体に対して移動のためのエネルギーを供給するように依頼する依頼情報を、第2移動体へ送信する(S202)。
【0015】
図1のエネルギー供給支援装置101によれば、移動体へのエネルギー供給を他の適切な移動体に依頼することができる。
【0016】
図3は、
図1のエネルギー供給支援装置101を含むエネルギー供給支援システムの構成例を示している。
図3のエネルギー供給支援システムは、サーバ301及び車両302-1~車両302-N(Nは2以上の整数)を含む。サーバ301は、
図1のエネルギー供給支援装置101に対応し、各車両302-i(i=1~N)は、移動体に対応する。
【0017】
各車両302-iは、二次電池を搭載し、二次電池から出力される電力で電動モータを駆動させて走行する。各車両302-iには、車載装置311-iが搭載されている。サーバ301は、無線通信ネットワーク303を介して、各車両302-iの車載装置311-iと通信する。車載装置311-iは、経路案内を行うナビゲーション装置であってもよい。
【0018】
サーバ301は、エネルギー供給支援サービスを提供する運営会社の情報処理装置(コンピュータ)であり、車両302-1~車両302-Nは、エネルギー供給支援サービスに登録されているユーザの車両である。ユーザは、運営会社に対して、サービス登録料及びサービス利用料を支払う。
【0019】
何れかの車両302-iが走行中に電欠状態になった場合、その車両302-iの車載装置311-iは、救助要請をサーバ301へ送信する。以下では、電欠状態になった車両302-iを、救助要請車両302-iと記載することがある。
【0020】
サーバ301は、救助要請車両302-iから救助要請を受信すると、車両302-1~車両302-Nの中から救助車両候補を抽出し、救助要請車両302-iに対して電力の供給を依頼する救助依頼を、救助車両候補の車載装置311-iへ送信する。救助車両候補のユーザである運転者が救助依頼を受諾した場合、救助車両候補の車載装置311-iは、依頼受諾を示す応答をサーバ301へ送信する。
【0021】
サーバ301は、救助車両候補から依頼受諾を示す応答を受信すると、救助要請車両302-iに関する救助情報を、救助車両候補の車載装置311-iへ送信する。救助車両候補は、サーバ301から受信した救助情報に基づいて、救助要請車両302-iが停車している場所へ移動し、救助要請車両302-iに電力を供給する救助活動を行う。運営会社は、電力を供給した救助車両候補のユーザに対して、救助活動に対する謝礼金を支払う。
【0022】
救助要請車両302-iは、第1移動体に対応し、救助車両候補は、第2移動体に対応する。電力は、移動のためのエネルギーに対応し、救助依頼は、第1移動体に対して移動のためのエネルギーを供給するように依頼する依頼情報に対応する。
【0023】
図4は、
図3のサーバ301の機能的構成例を示している。
図4のサーバ301は、取得部411、探索部412、抽出部413、通信部414、及び記憶部415を含む。抽出部413及び通信部414は、
図1の抽出部111及び送信部112にそれぞれ対応する。
【0024】
記憶部415は、各車両302-iの車両情報421、充電スタンド情報422、及び地図情報423を記憶する。車両情報421は、車両302-iの車種及び自動車登録番号を含む。充電スタンド情報422は、全国の充電スタンドの設置位置を示す位置情報を含む。地図情報423は、全国の道路地図に関する情報を含む。
【0025】
通信部414は、無線通信ネットワーク303を介して、各車両302-iの車載装置311-iと通信する。通信部414は、無線通信ネットワーク303又は別の通信ネットワークを介して、他のサーバと通信することもできる。
【0026】
各車両302-iの車載装置311-iは、走行中において、車両302-iの走行状況に関する状況情報を、定期的にサーバ301へ送信する。状況情報は、車両302-iの現在位置を示す位置情報、車両302-iの二次電池の残量及び劣化状況、車両302-iに乗車している人の人数、車両302-iが走行している場所の天候及び気温等を含む。
【0027】
取得部411は、通信部414を介して、各車両302-iの車載装置311-iから状況情報を受信することで、各車両302-iの状況情報を取得する。そして、取得部411は、取得した状況情報を抽出部413へ出力する。取得部411は、各車両302-iの状況情報の一部又は全部を、通信部414を介して、他のサーバから取得してもよい。
【0028】
救助要請車両302-iの車載装置311-iから救助要請が送信された場合、取得部411は、通信部414を介して救助要請を受信し、受信した救助要請を抽出部413へ出力する。
【0029】
抽出部413は、各車両302-iの状況情報に含まれる位置情報から、各車両302-iの現在位置を取得し、各車両302-iの現在位置に基づいて、車両302-1~車両302-Nの中から救助車両候補を抽出する。そして、抽出部413は、通信部414を介して、救助車両候補の車載装置311-iへ救助依頼を送信する。救助車両候補は、駐車中の車両302-iであってもよい。
【0030】
救助車両候補を抽出する際、抽出部413は、充電スタンド情報422に含まれる位置情報から、救助要請車両302-iに最も近い充電スタンドを特定する。最も近い充電スタンドとしては、例えば、救助要請車両302-iの現在位置から直線距離で最短の位置に設置されている充電スタンドが特定される。最も近い充電スタンドは、所定のエネルギー供給拠点の一例である。
【0031】
次に、抽出部413は、救助要請車両302-iの現在位置を出発地とし、特定された充電スタンドの位置を目的地とする経路探索を、探索部412に指示する。探索部412は、地図情報423を用いて、救助要請車両302-iの現在位置から特定された充電スタンドまでの経路を探索し、探索された経路を示す経路情報を抽出部413へ出力する。
【0032】
抽出部413は、探索部412から出力される経路情報に基づいて、救助要請車両302-iの現在位置から特定された充電スタンドまでの経路の走行距離を計算する。そして、抽出部413は、計算された走行距離に基づいて、救助要請車両302-iが特定された充電スタンドまで走行するために不足する電力量Pを計算する。
【0033】
一例として、電力量Pの計算には、走行距離と、救助要請車両302-iの状況情報に含まれる二次電池の残量及び劣化状況、乗車している人の人数、天候、及び気温と、救助要請車両302-iの車両情報421に含まれる車種とが用いられる。
【0034】
電力量Pは、走行距離が長いほど多くなり、二次電池の残量が多いほど少なくなり、二次電池の劣化が大きいほど多くなる。また、電力量Pは、人数が多いほど多くなり、天候が悪いほど多くなる。気温が上限値よりも高くなるほど、冷房機器の稼働率が上昇するため、電力量Pは多くなり、気温が下限値よりも低くなるほど、暖房機器の稼働率が上昇するため、電力量Pは多くなる。電力量Pは、車種によって増減することもある。
【0035】
次に、抽出部413は、電力量Pと、救助要請車両302-iの状況情報に含まれる二次電池の劣化状況及び気温とに基づいて、電力量Pの充電にかかる充電時間を計算する。充電時間は、電力量Pが多いほど長くなり、二次電池の劣化が大きいほど長くなり、気温が高いほど短くなる。
【0036】
抽出部413は、車両302-1~車両302-Nのうち、救助要請車両302-i以外の車両302-iの状況情報から、二次電池の残量を取得する。そして、抽出部413は、二次電池の残量から電力量Pを減算して差分を求め、所定値以上の差分を有する車両302-iを、電力に余裕がある車両302-iとして選択する。電力に余裕がある車両302-iは、第1移動体が所定のエネルギー供給拠点まで移動するためのエネルギーを供給可能な移動体の一例である。
【0037】
救助要請車両302-i以外の車両302-iの中から、電力に余裕がある車両302-iを選択することで、電力に余裕がない車両302-iを救助車両候補から除外することができる。
【0038】
次に、抽出部413は、救助要請車両302-iと電力に余裕がある各車両302-iとの間の距離を計算し、計算された距離がD1よりも短く、かつ、D2よりも長い車両302-iを、救助車両候補として抽出する。車両302-i間の距離としては、例えば、直線距離が用いられる。D2は、D1よりも短い距離に設定される。D1及びD2は、第1所定距離及び第2所定距離にそれぞれ対応する。
【0039】
図5は、救助車両候補の第1の抽出結果の例を示している。車両511は、救助要請車両302-iに対応し、車線501上に停車している。
図5に示す車両511の進行方向とは、車線501の進行方向と一致し、左から右へ向かう方向のことである。
【0040】
車両521~車両525は、車線501上を車両511の進行方向と同じ方向へ走行している。車両531~車両533は、車線501と対向する車線502上を、車両511の進行方向とは反対の方向へ走行している。
図5において、反対の方向とは、右から左へ向かう方向である。車両541及び車両542は、車線501と直交する車線503上を、車両511の進行方向と直交する方向へ走行している。
【0041】
領域551は、車両511を中心とする半径D1の円を模式的に表している。領域551内に存在する車両521~車両525、車両531~車両533、車両541、及び車両542は、車両511までの距離がD1よりも短い車両302-iに対応する。このうち、車両522及び車両523は、二次電池の残量と電力量Pとの差分が所定値未満であるため、救助車両候補から除外される。
【0042】
図6は、救助車両候補の第2の抽出結果の例を示している。領域601は、車両511を中心とする半径D2の円を表している。領域601内に存在する車両524及び車両532は、車両511までの距離がD2以下の車両302-iであるため、救助車両候補から除外される。したがって、車両521、車両525、車両531、車両533、車両541、及び車両542が救助車両候補として抽出される。
【0043】
この場合、サーバ301は、車両511から十分に離れた場所を走行している適切な車両に対して、救助依頼を送信することができる。領域601内の車両524又は車両532へ救助依頼が送信されることはないため、これらの車両が急ブレーキをかけて停止する必要がなくなり、救助活動が事故の原因になる可能性が低下する。
【0044】
しかし、対向する車線502上を走行している車両531及び車両533は、車両511の位置まで移動するためにUターンを行うことになる。このため、これらの車両の運転者は、救助依頼を受諾しない可能性が高い。
【0045】
そこで、抽出部413は、救助要請車両302-iの進行方向とは反対の方向に存在し、かつ、救助要請車両302-iに近づいてくる車両302-iを、救助車両候補として抽出する。この場合、抽出部413は、各車両302-iの位置情報から、救助要請車両302-iまでの距離の時間変化を求めることで、救助要請車両302-iに近づいているか否かを判定する。
【0046】
図7は、救助車両候補の第3の抽出結果の例を示している。
図6の抽出結果に含まれる車両のうち、領域701内に存在する車両525及び車両533は、車両511の進行方向に存在するため、救助車両候補から除外される。一方、領域702内に存在する車両521、車両531、車両541、及び車両542は、車両511の進行方向とは反対の方向に存在するため、救助車両候補として抽出される。
【0047】
図8は、救助車両候補の第4の抽出結果の例を示している。
図7の抽出結果に含まれる車両のうち、車両531は、矢印801が示すように、車両511から遠ざかる方向へ走行しており、車両542は、矢印802が示すように、車両511から遠ざかる方向へ走行している。このため、車両531及び車両542は救助車両候補から除外され、車両521及び車両541が救助車両候補として抽出される。
【0048】
図8の抽出結果には、車線502上を走行している車両531及び車両533が含まれていないため、これらの車両へ救助依頼が送信されることはない。したがって、これらの車両の運転者が救助依頼を受諾してUターンを行う必要がなくなる。
【0049】
抽出部413は、抽出された救助車両候補に対して、救助要請車両302-iの位置に到達すると推定される時刻が最も早い救助車両候補から順に、優先順位を付与する。
【0050】
この場合、抽出部413は、各救助車両候補の現在位置を出発地とし、救助要請車両302-iの現在位置を目的地とする経路探索を、探索部412に指示する。探索部412は、地図情報423を用いて、救助車両候補の現在位置から救助要請車両302-iの現在位置までの経路を探索し、探索された経路を示す経路情報を抽出部413へ出力する。
【0051】
抽出部413は、探索部412から出力される経路情報から、救助車両候補の現在位置から救助要請車両302-iの現在位置までの経路の走行距離、走行時間、渋滞の有無、有料道路の有無及び通行料金を取得する。そして、抽出部413は、取得した情報に基づいて、救助車両候補に優先順位を付与する。
【0052】
一例として、抽出部413は、複数の救助車両候補に対して、走行時間の短い順に高い優先順位を付与する処理R1を行う。走行時間の短い順に高い優先順位を付与することで、救助要請車両302-iが停車している場所まで最も早く移動する可能性が高い救助車両候補に対して、救助依頼を送信することができる。
【0053】
抽出部413は、処理R1によって同じ優先順位を付与された複数の救助車両候補のうち、渋滞を含まない経路を有する救助車両候補に対して、渋滞を含む経路を有する救助車両候補よりも高い優先順位を付与する処理R2を行ってもよい。抽出部413は、処理R2によって同じ優先順位を付与された複数の救助車両候補に対して、走行距離の短い順に高い優先順位を付与する処理R3を行ってもよい。
【0054】
抽出部413は、処理R3によって同じ優先順位を付与された複数の救助車両候補のうち、有料道路を含まない経路を有する救助車両候補に対して、有料道路を含む経路を有する救助車両候補よりも高い優先順位を付与する処理R4を行ってもよい。抽出部413は、処理R4において、有料道路を含む経路を有する複数の救助車両候補に対して、通行料金の安い順に高い優先順位を付与してもよい。
【0055】
図9は、救助車両候補の経路の例を示している。経路901は、車両521から車両511までの経路を表し、経路902は、車両541から車両511までの経路を表す。ここで、経路901及び経路902の走行距離、走行時間、及び渋滞の有無として、次のような情報が取得された場合を想定する。
【0056】
経路901: 走行距離5km 走行時間30分 渋滞あり
経路902: 走行距離15km 走行時間15分 渋滞なし
【0057】
この場合、経路901よりも短い走行時間の経路902を有する車両541に対して、第1優先順位が付与され、経路901を有する車両521に対して第2優先順位が付与される。
【0058】
抽出部413は、高い優先順位を有する救助車両候補から順に、通信部414を介して、救助依頼を送信する。救助依頼は、例えば、救助車両候補の現在位置から救助要請車両302-iの現在位置までの経路の走行距離、走行時間、有料道路の有無及び通行料金と、充電時間とを含む。
【0059】
抽出部413は、通信部414を介して、救助依頼を受信した救助車両候補から、救助依頼に対する応答を受信する。受信した応答が依頼受諾を示している場合、抽出部413は、通信部414を介して、救助要請車両302-iに関する救助情報を、その応答を送信した救助車両候補へ送信する。
【0060】
救助情報は、例えば、救助要請車両302-iの現在位置を示す位置情報、救助要請車両302-iまでの経路を示す案内情報、救助要請車両302-iの車種、及び救助要請車両302-iの自動車登録番号を含む。
【0061】
救助車両候補の車載装置311-iは、サーバ301から受信した救助情報を画面上に表示する。救助車両候補の運転者は、表示された救助情報に基づいて、救助要請車両302-iが停車している場所へ移動し、救助要請車両302-iに電力を供給する。
【0062】
図10A及び
図10Bは、
図4のサーバ301が行う第2のエネルギー供給支援処理の例を示すフローチャートである。まず、取得部411は、通信部414を介して、救助要請車両302-iの車載装置311-iから救助要請を受信する(S1001)。
【0063】
次に、抽出部413は、救助要請車両302-iが最も近い充電スタンドまで走行するために不足する電力量Pを計算する(S1002)。そして、抽出部413は、電力量Pを用いて、電力に余裕がある車両302-iが存在するか否かをチェックする(S1003)。
【0064】
電力に余裕がある車両302-iが存在する場合(S1003,YES)、抽出部413は、電力に余裕がある車両302-iの中から、救助要請車両302-iまでの距離がD1よりも短い車両302-iを抽出する(S1004)。そして、抽出部413は、D1よりも短い距離を有する車両302-iが抽出されたか否かをチェックする(S1005)。
【0065】
D1よりも短い距離を有する車両302-iが抽出されない場合(S1005,NO)、抽出部413は、D1を所定値だけ大きくして(S1010)、S1004以降の処理を繰り返す。
【0066】
D1よりも短い距離を有する車両302-iが抽出された場合(S1005,YES)、抽出部413は、S1006の処理を行う。S1006において、抽出部413は、D1よりも短い距離を有する車両302-iの中から、救助要請車両302-iまでの距離がD2よりも長い車両302-iを抽出する。そして、抽出部413は、D2よりも長い距離を有する車両302-iが抽出されたか否かをチェックする(S1007)。
【0067】
D2よりも長い距離を有する車両302-iが抽出されない場合(S1007,NO)、抽出部413は、D2を所定値だけ小さくして(S1011)、S1006以降の処理を繰り返す。
【0068】
D2よりも長い距離を有する車両302-iが抽出された場合(S1007,YES)、抽出部413は、S1008の処理を行う。S1008において、抽出部413は、D2よりも長い距離を有する車両302-iの中から、救助要請車両302-iの進行方向とは反対の方向に存在する車両302-iを抽出する。そして、抽出部413は、反対の方向に存在する車両302-iが抽出されたか否かをチェックする(S1009)。
【0069】
反対の方向に存在する車両302-iが抽出された場合(S1009,YES)、抽出部413は、S1013の処理を行う。S1013において、抽出部413は、反対の方向に存在する車両302-iの中から、救助要請車両302-iに近づいてくる車両302-iを抽出する。そして、抽出部413は、近づいてくる車両302-iが抽出されたか否かをチェックする(S1014)。
【0070】
反対の方向に存在する車両302-iが抽出されない場合(S1009,NO)、抽出部413は、S1008の絞り込みを中止して(S1012)、S1013以降の処理を行う。この場合、S1013において、抽出部413は、D2よりも長い距離を有する車両302-iの中から、救助要請車両302-iに近づいてくる車両302-iを抽出する。
【0071】
近づいてくる車両302-iが抽出されない場合(S1014,NO)、抽出部413は、D2を所定値だけ小さくして(S1019)、S1013以降の処理を繰り返す。この場合、S1013において、抽出部413は、変更後のD2よりも長い距離を有し、かつ、反対の方向に存在する車両302-iの中から、救助要請車両302-iに近づいてくる車両302-iを抽出する。
【0072】
近づいてくる車両302-iが抽出された場合(S1014,YES)、抽出部413は、S1015の処理を行う。S1015において、抽出部413は、近づいてくる車両302-iを救助車両候補として、救助要請車両302-iの位置に到達すると推定される時刻が最も早い救助車両候補から順に、救助車両候補に優先順位を付与する。
【0073】
抽出部413は、高い優先順位を有する救助車両候補から順に選択し、通信部414を介して、選択された救助車両候補の車載装置311-iへ救助依頼を送信する(S1016)。そして、抽出部413は、救助車両候補の車載装置311-iから受信した応答が、依頼受諾を示しているか否かをチェックする(S1017)。
【0074】
応答が依頼受諾を示している場合(S1017,YES)、抽出部413は、通信部414を介して、救助要請車両302-iに関する救助情報を、救助車両候補の車載装置311-iへ送信する(S1018)。
【0075】
応答が依頼拒絶を示している場合(S1017,NO)、抽出部413は、次の優先順位の救助車両候補が存在するか否かをチェックする(S1020)。次の優先順位の救助車両候補が存在する場合(S1020,YES)、抽出部413は、次の優先順位の救助車両候補について、S1016以降の処理を繰り返す。
【0076】
電力に余裕がある車両302-iが存在しない場合(S1003,NO)、又は次の優先順位の救助車両候補が存在しない場合(S1020,NO)、抽出部413は、S1021の処理を行う。S1021において、抽出部413は、日本自動車連盟等によるロードサービスを受けるためのサービス情報を、救助要請車両302-iの車載装置311-iへ送信する。
【0077】
なお、電力に余裕がある車両302-iが存在しない場合(S1003,NO)、又は次の優先順位の救助車両候補が存在しない場合(S1020,NO)、抽出部413は、所定時間が経過するまで待機してもよい。この場合、抽出部413は、待機終了後に、S1003以降の処理を繰り返す。
【0078】
待機終了後に、S1003において、電力に余裕がある車両302-iが存在するにもかかわらず、S1004~S1013において、救助車両候補が抽出されない可能性もある。また、待機終了後に、S1003において、電力に余裕がある車両302-iが存在するにもかかわらず、S1017において、依頼受諾を示す応答を送信する救助車両候補が現れない可能性もある。
【0079】
このような場合、抽出部413は、電力に余裕があり、かつ、S1004~S1013において抽出されなかった車両302-iを、救助車両候補として選択し、選択された救助車両候補に対して救助依頼を送信してもよい。
【0080】
エネルギー供給支援処理を簡略化するために、抽出部413は、S1008、S1009、及びS1012の処理を省略してもよい。抽出部413は、S1013、S1014、及びS1019の処理を省略してもよい。
【0081】
図3のエネルギー供給支援システムにおいて、各車両302-iの運転者は、車載装置311-iの代わりに携帯端末装置を用いて、救助要請又は応答をサーバ301へ送信してもよい。サーバ301は、運転者の携帯端末装置へ救助依頼又は救助情報を送信してもよい。運転者の携帯端末装置は、スマートフォン、タブレット、又はノート型パーソナルコンピュータであってもよい。
【0082】
各車両302-iは、二次電池の代わりに燃料電池を搭載していてもよい。この場合、救助車両候補は、電力の代わりに水素を救助要請車両302-iに供給する。各車両302-iを駆動するエネルギーは、電力に限られず、他のエネルギーであってもよい。例えば、車両302-iがガソリン車である場合、救助車両候補は、電力の代わりにガソリンを救助要請車両302-iに供給する。
【0083】
図1のエネルギー供給支援装置101の構成は一例に過ぎず、エネルギー供給支援装置101の用途又は条件に応じて、一部の構成要素を省略又は変更してもよい。
【0084】
図3のエネルギー供給支援システムの構成は一例に過ぎず、エネルギー供給支援システムの用途又は条件に応じて、一部の構成要素を省略又は変更してもよい。例えば、エネルギー供給支援システムは、車両302-iの代わりに、二輪車、無人車両、自走式ロボット等の他の移動体を含んでいてもよい。
【0085】
図4のサーバ301の構成は一例に過ぎず、エネルギー供給支援システムの用途又は条件に応じて、一部の構成要素を省略又は変更してもよい。
【0086】
図2、
図10A、及び
図10Bに示したフローチャートは一例に過ぎず、エネルギー供給支援装置101又はエネルギー供給支援システムの構成又は条件に応じて、一部の処理を省略又は変更してもよい。
【0087】
図5~
図9に示した救助車両候補の抽出結果は一例に過ぎず、救助車両候補の抽出結果は、車両302-1~車両302-Nの状況情報に応じて変化する。
【0088】
図11は、
図1のエネルギー供給支援装置101及び
図4のサーバ301として用いられる情報処理装置のハードウェア構成例を示している。
図11の情報処理装置は、CPU(Central Processing Unit)1101、メモリ1102、入力装置1103、出力装置1104、補助記憶装置1105、媒体駆動装置1106、及びネットワーク接続装置1107を含む。これらの構成要素はハードウェアであり、バス1108により互いに接続されている。
【0089】
メモリ1102は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリであり、処理に用いられるプログラム及びデータを記憶する。メモリ1102は、
図4の記憶部415として動作してもよい。
【0090】
CPU1101(プロセッサ)は、例えば、メモリ1102を利用してプログラムを実行することにより、
図1の抽出部111として動作する。CPU1101は、メモリ1102を利用してプログラムを実行することにより、
図4の取得部411、探索部412、及び抽出部413としても動作する。
【0091】
入力装置1103は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス等であり、オペレータからの指示又は情報の入力に用いられる。出力装置1104は、例えば、表示装置、プリンタ、スピーカ等であり、オペレータへの問い合わせ又は指示、及び処理結果の出力に用いられる。処理結果は、救助車両候補の抽出結果であってもよい。
【0092】
補助記憶装置1105は、例えば、磁気ディスク装置、光ディスク装置、光磁気ディスク装置、テープ装置等である。補助記憶装置1105は、ハードディスクドライブ又はSSD(Solid State Drive)であってもよい。情報処理装置は、補助記憶装置1105にプログラム及びデータを格納しておき、それらをメモリ1102にロードして使用することができる。補助記憶装置1105は、
図4の記憶部415として動作してもよい。
【0093】
媒体駆動装置1106は、可搬型記録媒体1109を駆動し、その記録内容にアクセスする。可搬型記録媒体1109は、メモリデバイス、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク等である。可搬型記録媒体1109は、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等であってもよい。オペレータは、可搬型記録媒体1109にプログラム及びデータを格納しておき、それらをメモリ1102にロードして使用することができる。
【0094】
このように、処理に用いられるプログラム及びデータを格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、メモリ1102、補助記憶装置1105、又は可搬型記録媒体1109のような、物理的な(非一時的な)記録媒体である。
【0095】
ネットワーク接続装置1107は、無線通信ネットワーク303に接続され、通信に伴うデータ変換を行う通信インタフェース回路である。情報処理装置は、プログラム及びデータを外部の装置からネットワーク接続装置1107を介して受信し、それらをメモリ1102にロードして使用することができる。ネットワーク接続装置1107は、
図1の送信部112又は
図4の通信部414として動作してもよい。
【0096】
図3の車載装置311-iとしては、
図11と同様の情報処理装置を用いることができる。
【0097】
なお、情報処理装置が
図11のすべての構成要素を含む必要はなく、用途又は条件に応じて一部の構成要素を省略することも可能である。例えば、オペレータとのインタフェースが不要な場合は、入力装置1103及び出力装置1104を省略してもよい。可搬型記録媒体1109を使用しない場合は、媒体駆動装置1106を省略してもよい。
【0098】
開示の実施形態とその利点について詳しく説明したが、当業者は、特許請求の範囲に明確に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、追加、省略をすることができるであろう。
【符号の説明】
【0099】
101 エネルギー供給支援装置
111、413 抽出部
112 送信部
301 サーバ
302-1~302-N、511、521~525、531~533、541、542 車両
303 無線通信ネットワーク
311-1~311-N 車載装置
411 取得部
412 探索部
414 通信部
415 記憶部
421 車両情報
422 充電スタンド情報
423 地図情報
501、502、503 車線
551、601、701、702 領域
801、802 矢印
901、902 経路
1101 CPU
1102 メモリ
1103 入力装置
1104 出力装置
1105 補助記憶装置
1106 媒体駆動装置
1107 ネットワーク接続装置
1108 バス
1109 可搬型記録媒体