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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093314
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
H02K3/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209613
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】磯部 啓介
(72)【発明者】
【氏名】安谷屋 拓
(72)【発明者】
【氏名】滝本 修二
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604DA14
5H604DB01
5H604PB03
5H604PB04
5H604QA01
5H604QB17
(57)【要約】
【課題】電動圧縮機の信頼性の向上を図ること。
【解決手段】各突起部65を、各U相貫通溝62Uの底面632Uに設けた。これによれば、例えば、各突起部65がインシュレータ50におけるステータコア23とは反対側の端部に設けられている場合に比べると、各突起部65における各被挿入部71に対する係り代が確保され易くなる。その結果、各突起部65が各被挿入部71に安定的に係止されるため、カバー70におけるインシュレータ50に対する取り付けが安定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動するモータと、
前記モータを収容する筒状のハウジングと、を備え、
前記モータは、ステータを備え、
前記ステータは、
前記ハウジングに固定される筒状のステータコアと、
前記ステータコアの端面に当接する筒状のインシュレータと、
前記ステータコアに集中巻きで巻回されることで複数のコイルを形成する巻線と、を備え、
前記巻線は、前記ステータコアの周方向で前記コイル同士を繋ぐ渡り線を含み、
前記インシュレータは、
前記インシュレータの外周面に形成されるとともに前記インシュレータの周方向に延び、前記渡り線を前記インシュレータの周方向へ案内する案内溝と、
前記インシュレータの径方向に貫通するとともに前記インシュレータにおける前記ステータコアとは反対側の端面に開口することで、前記インシュレータの周方向において対向する一対の側面と、対向する一対の前記側面を繋ぐ底面と、を備え、前記コイルから引き出された前記渡り線を前記案内溝へ案内する貫通溝と、を有し、
前記インシュレータの外周面を囲繞することにより前記渡り線と前記ハウジングとの間に介在される絶縁性の筒状のカバーを備え、
前記インシュレータは、係止部を有し、
前記カバーは、前記係止部が係止される被係止部を有し、
前記係止部が前記被係止部に係止されることにより、前記カバーが前記インシュレータに取り付けられている電動圧縮機であって、
前記係止部は、前記底面に設けられていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記複数のコイルは、U相コイル、V相コイル、及びW相コイルを含み、
前記巻線は、前記U相コイルを形成するU相巻線、前記V相コイルを形成するV相巻線、及び前記W相コイルを形成するW相巻線を含み、
前記渡り線は、前記ステータコアの周方向で前記U相コイル同士を繋ぐ渡り線であるU相渡り線、前記ステータコアの周方向で前記V相コイル同士を繋ぐ渡り線であるV相渡り線、及び前記ステータコアの周方向で前記W相コイル同士を繋ぐ渡り線であるW相渡り線を含み、
前記案内溝は、前記U相渡り線を前記インシュレータの周方向へ案内するU相案内溝、前記V相渡り線を前記インシュレータの周方向へ案内するV相案内溝、及び前記W相渡り線を前記インシュレータの周方向へ案内するW相案内溝を含み、
前記U相案内溝、前記V相案内溝、及び前記W相案内溝は、前記インシュレータの軸方向で並んで配置されており、
前記貫通溝は、前記U相コイルから引き出された前記U相渡り線を前記U相案内溝へ案内するU相貫通溝、前記V相コイルから引き出された前記V相渡り線を前記V相案内溝へ案内するV相貫通溝、及び前記W相コイルから引き出された前記W相渡り線を前記W相案内溝へ案内するW相貫通溝を含み、
前記係止部は、前記U相貫通溝、前記V相貫通溝、及び前記W相貫通溝のうち、前記インシュレータにおける前記ステータコアとは反対側に位置する開口から前記底面までの距離が最も長い貫通溝の前記底面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記係止部は、前記底面から突出する突起部であり、
前記被係止部は、前記カバーに形成されるとともに前記突起部が挿入される被挿入部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、圧縮部と、モータと、ハウジングと、を備えている。圧縮部は、流体を圧縮する。モータは、圧縮部を駆動する。ハウジングは、筒状である。ハウジングは、モータを収容する。モータは、ステータを有している。ステータは、筒状のステータコアと、筒状のインシュレータと、複数のコイルを形成する巻線と、を備えている。ステータコアは、ハウジングに固定されている。インシュレータは、ステータコアの端面に当接している。巻線は、ステータコアに集中巻きで巻回されている。巻線は、ステータコアの周方向でコイル同士を繋ぐ渡り線を含む。
【0003】
例えば特許文献1に開示されているように、インシュレータは、案内溝と、貫通溝と、を有している。案内溝は、インシュレータの外周面に形成されている。案内溝は、インシュレータの周方向に延びている。そして、案内溝は、渡り線をインシュレータの周方向へ案内する。貫通溝は、インシュレータの径方向に貫通している。貫通溝は、インシュレータにおけるステータコアとは反対側の端面に開口することで、インシュレータの周方向において対向する一対の側面と、対向する一対の側面を繋ぐ底面と、を備えている。貫通溝は、コイルから引き出された渡り線を案内溝へ案内する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-109045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような電動圧縮機においては、渡り線とハウジングとの間の絶縁を確保するために、筒状のカバーを備えている場合がある。カバーは、インシュレータの外周面を囲繞することにより渡り線とハウジングとの間に介在されている。インシュレータは、係止部を有している。カバーは、係止部が係止される被係止部を有している。そして、係止部が被係止部に係止されることにより、カバーがインシュレータに取り付けられている。
【0006】
ここで、インシュレータは、インシュレータに渡り線のテンションが加わることにより、インシュレータにおけるステータコア側の端部を基点として、インシュレータの径方向内側へ撓むように変形する。したがって、インシュレータにおける径方向内側への変位量は、インシュレータにおけるステータコアとは反対側の端部が最も大きくなる。このとき、例えば、係止部がインシュレータにおけるステータコアとは反対側の端部に設けられていると、係止部におけるカバーの被係止部に対する係り代が確保され難くなってしまう。すると、係止部が被係止部に係止され難くなってしまうため、カバーにおけるインシュレータに対する取り付けが不安定になってしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、前記モータを収容する筒状のハウジングと、を備え、前記モータは、ステータを備え、前記ステータは、前記ハウジングに固定される筒状のステータコアと、前記ステータコアの端面に当接する筒状のインシュレータと、前記ステータコアに集中巻きで巻回されることで複数のコイルを形成する巻線と、を備え、前記巻線は、前記ステータコアの周方向で前記コイル同士を繋ぐ渡り線を含み、前記インシュレータは、前記インシュレータの外周面に形成されるとともに前記インシュレータの周方向に延び、前記渡り線を前記インシュレータの周方向へ案内する案内溝と、前記インシュレータの径方向に貫通するとともに前記インシュレータにおける前記ステータコアとは反対側の端面に開口することで、前記インシュレータの周方向において対向する一対の側面と、対向する一対の前記側面を繋ぐ底面と、を備え、前記コイルから引き出された前記渡り線を前記案内溝へ案内する貫通溝と、を有し、前記インシュレータの外周面を囲繞することにより前記渡り線と前記ハウジングとの間に介在される絶縁性の筒状のカバーを備え、前記インシュレータは、係止部を有し、前記カバーは、前記係止部が係止される被係止部を有し、前記係止部が前記被係止部に係止されることにより、前記カバーが前記インシュレータに取り付けられている電動圧縮機であって、前記係止部は、前記底面に設けられている。
【0008】
インシュレータに渡り線のテンションが加わることにより生じるインシュレータにおける径方向内側への変位量は、インシュレータにおけるステータコアとは反対側の端部よりも、貫通溝の底面の方が小さい。そこで、係止部を、貫通溝の底面に設けた。これによれば、例えば、係止部がインシュレータにおけるステータコアとは反対側の端部に設けられている場合に比べると、係止部における被係止部に対する係り代が確保され易くなる。その結果、係止部が被係止部に安定的に係止されるため、カバーにおけるインシュレータに対する取り付けが安定する。よって、電動圧縮機の信頼性の向上を図ることができる。
【0009】
上記電動圧縮機において、前記複数のコイルは、U相コイル、V相コイル、及びW相コイルを含み、前記巻線は、前記U相コイルを形成するU相巻線、前記V相コイルを形成するV相巻線、及び前記W相コイルを形成するW相巻線を含み、前記渡り線は、前記ステータコアの周方向で前記U相コイル同士を繋ぐ渡り線であるU相渡り線、前記ステータコアの周方向で前記V相コイル同士を繋ぐ渡り線であるV相渡り線、及び前記ステータコアの周方向で前記W相コイル同士を繋ぐ渡り線であるW相渡り線を含み、前記案内溝は、前記U相渡り線を前記インシュレータの周方向へ案内するU相案内溝、前記V相渡り線を前記インシュレータの周方向へ案内するV相案内溝、及び前記W相渡り線を前記インシュレータの周方向へ案内するW相案内溝を含み、前記U相案内溝、前記V相案内溝、及び前記W相案内溝は、前記インシュレータの軸方向で並んで配置されており、前記貫通溝は、前記U相コイルから引き出された前記U相渡り線を前記U相案内溝へ案内するU相貫通溝、前記V相コイルから引き出された前記V相渡り線を前記V相案内溝へ案内するV相貫通溝、及び前記W相コイルから引き出された前記W相渡り線を前記W相案内溝へ案内するW相貫通溝を含み、前記係止部は、前記U相貫通溝、前記V相貫通溝、及び前記W相貫通溝のうち、前記インシュレータにおける前記ステータコアとは反対側に位置する開口から前記底面までの距離が最も長い貫通溝の前記底面に設けられているとよい。
【0010】
インシュレータにおける径方向内側への変位量は、U相貫通溝、V相貫通溝、及びW相貫通溝のうち、インシュレータにおけるステータコアとは反対側に位置する開口から底面までの距離が最も長い貫通溝の底面が最も小さい。そこで、係止部を、U相貫通溝、V相貫通溝、及びW相貫通溝のうち、インシュレータにおけるステータコアとは反対側に位置する開口から底面までの距離が最も長い貫通溝の底面に設けた。これによれば、係止部における被係止部に対する係り代がさらに確保され易くなる。その結果、係止部が被係止部にさらに安定的に係止されるため、カバーにおけるインシュレータに対する取り付けがさらに安定する。よって、電動圧縮機の信頼性の向上をさらに図ることができる。
【0011】
上記電動圧縮機において、前記係止部は、前記底面から突出する突起部であり、前記被係止部は、前記カバーに形成されるとともに前記突起部が挿入される被挿入部であるとよい。
【0012】
係止部が、貫通溝の底面から突出する突起部であるインシュレータは、製造が容易である。したがって、電動圧縮機の製造を容易なものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、電動圧縮機の信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における電動圧縮機を示す断面図である。
図2】モータの断面図である。
図3】ステータコア及び2つのインシュレータを示す分解斜視図である。
図4】ステータの斜視図である。
図5】係止部を拡大して示す斜視図である。
図6】カバーがインシュレータに取り付けられる前の状態を示すステータの分解斜視図である。
図7】カバーがインシュレータに取り付けられた状態を示すステータの斜視図である。
図8】係止部と被係止部との関係を拡大して示す斜視図である。
図9】別の実施形態における係止部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を図1図8にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
<電動圧縮機の基本構成>
図1に示すように、電動圧縮機10は、筒状のハウジング11を備えている。ハウジング11は、吐出ハウジング12と、モータハウジング13と、インバータケース14と、を有している。吐出ハウジング12、モータハウジング13、及びインバータケース14は、金属材料製である。吐出ハウジング12、モータハウジング13、及びインバータケース14は、例えば、アルミニウム製である。
【0016】
モータハウジング13は、端壁13aと、周壁13bと、を有している。端壁13aは、板状である。周壁13bは、端壁13aの外周部から筒状に延びている。吐出ハウジング12は、筒状である。吐出ハウジング12は、モータハウジング13の周壁13bにおける端壁13aとは反対側の端部に連結されている。インバータケース14は、筒状である。インバータケース14は、モータハウジング13の端壁13aに連結されている。そして、モータハウジング13の端壁13aとインバータケース14とによってインバータ室S1が区画されている。
【0017】
モータハウジング13は、ボス部13cを有している。ボス部13cは、円筒状である。ボス部13cは、モータハウジング13の端壁13aにおける周壁13b側の端面の中央部から突出している。ボス部13cの軸線は、モータハウジング13の周壁13bの軸線に一致している。また、モータハウジング13の端壁13aには、貫通孔13hが形成されている。貫通孔13hは、モータハウジング13の端壁13aを厚み方向に貫通している。貫通孔13hは、ボス部13cよりも周壁13b寄りに位置している。
【0018】
電動圧縮機10は、回転軸15と、圧縮部16と、インバータ17と、モータ20と、を備えている。回転軸15、圧縮部16、及びモータ20は、モータハウジング13内に収容されている。したがって、ハウジング11は、モータ20を収容する。回転軸15は、回転軸15の軸線がモータハウジング13の周壁13bの軸線に一致した状態で、モータハウジング13内に配置されている。インバータ17は、インバータ室S1に収容されている。
【0019】
圧縮部16及びモータ20は、回転軸15の軸線が延びる方向である軸方向に並んで配置されている。モータ20は、圧縮部16よりもモータハウジング13の端壁13a寄りに配置されている。圧縮部16、モータ20、及びインバータ17は、回転軸15の軸方向でこの順に並んで配置されている。
【0020】
電動圧縮機10は、軸支部材18を備えている。軸支部材18は、圧縮部16とモータ20との間に配置されている。したがって、軸支部材18は、モータ20と圧縮部16との間の隔壁となっている。
【0021】
軸支部材18は、挿通孔18hを有している。挿通孔18hは、軸支部材18の中央部に形成されている。挿通孔18hの軸線は、ボス部13cの軸線に一致している。挿通孔18hには、回転軸15の第1端部が挿通されている。挿通孔18hと回転軸15の第1端部との間には、ラジアルベアリング19aが設けられている。回転軸15の第1端部は、ラジアルベアリング19aを介して軸支部材18に回転可能に支持されている。また、回転軸15の第2端部は、ボス部13cの内側に挿入されている。ボス部13cと回転軸15の第2端部との間には、ラジアルベアリング19bが設けられている。回転軸15の第2端部は、ラジアルベアリング19bを介してボス部13cに回転可能に支持されている。
【0022】
圧縮部16は、固定スクロール16aと、旋回スクロール16bと、を備えている。固定スクロール16aは、モータハウジング13に固定されている。旋回スクロール16bは、固定スクロール16aに対向配置されている。圧縮部16は、回転軸15が回転することによって駆動する。圧縮部16は、流体としての冷媒を圧縮する。固定スクロール16aと旋回スクロール16bとの間には容積変更可能な圧縮室S2が区画されている。固定スクロール16aと吐出ハウジング12との間には、吐出室S3が区画されている。そして、圧縮室S2の容積変更により圧縮された冷媒は、吐出室S3に吐出される。モータ20は、回転軸15を回転させることにより、圧縮部16を駆動する。
【0023】
<モータの基本構成>
モータ20は、ロータ21と、ステータ22と、を備えている。ステータ22は、筒状である。ロータ21は、ステータ22の内側に配置されている。ロータ21は、円筒形状のロータコア21aと、ロータコア21aに埋設される図示しない複数の永久磁石と、を有している。ロータコア21aは、回転軸15に固定されている。ロータコア21aは、回転軸15と一体的に回転可能に構成されている。
【0024】
ステータ22は、筒状のステータコア23を備えている。ステータコア23は、モータハウジング13の周壁13bの内周面に固定されている。したがって、ステータコア23は、ハウジング11に固定されている。ステータ22は、例えば、焼き嵌めによってステータコア23をモータハウジング13の周壁13bの内周面に嵌め込むことにより、ハウジング11に組み付けられている。
【0025】
ステータコア23は、第1端面23aと、第2端面23bと、を有している。第1端面23aは、ステータコア23の軸方向の一方に位置する端面である。第2端面23bは、ステータコア23の軸方向の他方に位置する端面である。ステータコア23は、第1端面23aが回転軸15の軸方向で軸支部材18に対向するとともに、第2端面23bが回転軸15の軸方向でモータハウジング13の端壁13aと対向するように、モータハウジング13内に配置されている。
【0026】
図2及び図3に示すように、ステータコア23は、ヨーク24と、複数のティース25と、を有している。ヨーク24は、円筒状である。ステータコア23は、ヨーク24の外周面がモータハウジング13の周壁13bの内周面に嵌め込まれることにより、モータハウジング13に固定されている。
【0027】
複数のティース25は、ヨーク24の内周面24aからヨーク24の径方向に延びている。複数のティース25は、ヨーク24の周方向に間隔を置いて配置されている。複数のティース25は、ヨーク24の周方向に等間隔置きに配置されている。なお、ヨーク24の周方向は、ステータコア23の周方向でもある。各ティース25は、ヨーク24の内周面24aからステータコア23の軸線に向けて延びている。本実施形態では、ステータコア23は、15本のティース25を有している。
【0028】
各ティース25は、ティース延在部26と、ティース鍔部27と、を有している。ティース延在部26は、ヨーク24の内周面24aから延びる薄板状である。ティース延在部26は、ステータコア23の第1端面23aから第2端面23bにかけて延びている。ティース鍔部27は、ティース延在部26におけるヨーク24とは反対側の端部からステータコア23の周方向両側に突出している。
【0029】
図2に示すように、ステータ22は、コイルであるU相コイル28U、V相コイル28V、及びW相コイル28Wをそれぞれ複数備えている。したがって、ステータ22は、複数のコイルを備えている。複数のコイルは、U相コイル28U、V相コイル28V、及びW相コイル28Wを含む。
【0030】
<巻線>
ステータ22は、ステータコア23に集中巻きで巻回されることで複数のU相コイル28Uを形成する巻線であるU相巻線29Uを備えている。ステータ22は、ステータコア23に集中巻きで巻回されることで複数のV相コイル28Vを形成する巻線であるV相巻線29Vを備えている。ステータ22は、ステータコア23に集中巻きで巻回されることで複数のW相コイル28Wを形成する巻線であるW相巻線29Wを備えている。したがって、ステータ22は、複数のコイルを形成する巻線を備えている。巻線は、U相巻線29U、V相巻線29V、及びW相巻線29Wを含む。U相コイル28U、V相コイル28V、及びW相コイル28Wそれぞれの一部分は、ステータコア23の周方向で隣り合うティース25の間に形成された空間であるスロット30をそれぞれ通過している。なお、各スロット30を通過するU相コイル28U、V相コイル28V、及びW相コイル28Wそれぞれの一部分とステータコア23とは、スロット絶縁シート31によって絶縁されている。
【0031】
<気密端子>
図1に示すように、電動圧縮機10は、気密端子40を備えている。気密端子40は、U相コイル28U、V相コイル28V、及びW相コイル28Wに対応する3つの導電部材41を有している。なお、図1では、1つの導電部材41のみを図示している。各導電部材41は、直線状に延びる円柱状の金属端子である。各導電部材41の第1端は、インバータ室S1内においてインバータ17と電気的に接続されている。各導電部材41の第2端は、貫通孔13hを介してインバータ室S1からモータハウジング13内に突出している。また、気密端子40は、支持プレート42を有している。支持プレート42は、3つの導電部材41を互いに絶縁した状態で支持している。支持プレート42は、インバータ室S1内において、モータハウジング13の端壁13aの外面における貫通孔13hの周囲に固定されている。
【0032】
電動圧縮機10は、モータ配線43を備えている。モータ配線43は、モータ20から引き出されている。モータ配線43は、U相コイル28U、V相コイル28V、及びW相コイル28Wにおけるステータコア23の第2端面23b側の部位から引き出されている。モータ配線43は、各相に対応して1つずつモータ20から引き出されている。したがって、モータ20からはモータ配線43が3つ引き出されている。なお、図1では、1つのモータ配線43のみを図示している。
【0033】
モータハウジング13内には、コネクタ44が収容されている。コネクタ44は、ステータコア23の第2端面23bとモータハウジング13の端壁13aとの間に配置されている。コネクタ44は、U相コイル28U、V相コイル28V、及びW相コイル28Wに対応する3つの接続端子45と、3つの接続端子45を収容する絶縁性のクラスタブロック46と、を備えている。
【0034】
クラスタブロック46は、3つの導電部材挿通孔47と、3つのモータ配線挿通孔48と、を有している。なお、図1では、導電部材挿通孔47を1つのみ図示するとともに、モータ配線挿通孔48を1つのみ図示している。各導電部材挿通孔47には、導電部材41がそれぞれ挿入される。各モータ配線挿通孔48には、モータ配線43がそれぞれ挿入される。そして、各接続端子45は、各導電部材41と各モータ配線43とを電気的に接続する。クラスタブロック46は、導電部材挿通孔47が回転軸15の軸線方向に延びるようにモータハウジング13内に配置されている。
【0035】
インバータ17からの電力は、各導電部材41、各接続端子45、及び各モータ配線43を介してモータ20に供給される。これにより、モータ20が駆動する。したがって、インバータ17は、モータ20を駆動する。そして、モータ20の駆動により、圧縮部16が駆動して、圧縮部16が冷媒を圧縮する。
【0036】
<インシュレータ>
図1に示すように、ステータ22は、インシュレータ50を2つ備えている。各インシュレータ50は、筒状である。各インシュレータ50は、例えば、樹脂材料製である。各インシュレータ50は、U相コイル28U、V相コイル28V、及びW相コイル28Wとステータコア23とを絶縁する。
【0037】
図3に示すように、各インシュレータ50は、インシュレータ基部51と、複数のインシュレータティース部52と、を有している。インシュレータ基部51は、円筒状である。各インシュレータ50は、各インシュレータ基部51の軸線がヨーク24の軸線に一致した状態で、ステータコア23に対して配置されている。2つのインシュレータ50の一方は、インシュレータ基部51がステータコア23の第1端面23aに当接した状態で、ステータコア23に対して配置されている。2つのインシュレータ50の他方は、インシュレータ基部51がステータコア23の第2端面23bに当接した状態で、ステータコア23に対して配置されている。したがって、各インシュレータ50は、ステータコア23の端面に当接している。インシュレータ基部51の外径は、ヨーク24の外径よりも小さい。インシュレータ基部51の内径は、ヨーク24の内径と同じである。
【0038】
各インシュレータティース部52は、各インシュレータ基部51の内周面51aからインシュレータ基部51の径方向に延びている。複数のインシュレータティース部52は、インシュレータ基部51の周方向に間隔を置いて配置されている。複数のインシュレータティース部52は、インシュレータ基部51の周方向に等間隔置きに配置されている。各インシュレータティース部52は、インシュレータ基部51の内周面51aからインシュレータ基部51の軸線に向けて延びている。本実施形態では、インシュレータ50は、15本のインシュレータティース部52を有している。インシュレータティース部52の数は、ステータコア23が有するティース25の数と同じである。
【0039】
各インシュレータティース部52は、インシュレータ延在部53と、インシュレータ鍔部54と、を有している。インシュレータ延在部53は、インシュレータ基部51の内周面51aから延びる柱状である。各インシュレータ延在部53におけるインシュレータ基部51の周方向の幅は、各ティース延在部26におけるステータコア23の周方向の幅と同じである。各インシュレータ延在部53は、各ティース25に接触している。インシュレータ鍔部54は、インシュレータ延在部53におけるインシュレータ基部51とは反対側の端部からインシュレータ基部51に沿って突出している。
【0040】
<案内溝>
2つのインシュレータ50のうち、ステータコア23の第1端面23aに当接するインシュレータ50は、U相案内溝61U、V相案内溝61V、及びW相案内溝61Wを有している。U相案内溝61U、V相案内溝61V、及びW相案内溝61Wは、インシュレータ50の軸方向で並んで配置されている。U相案内溝61U、V相案内溝61V、及びW相案内溝61Wは、インシュレータ基部51の外周面に形成されている。したがって、U相案内溝61U、V相案内溝61V、及びW相案内溝61Wは、インシュレータ50の外周面に形成されている。U相案内溝61U、V相案内溝61V、及びW相案内溝61Wは、インシュレータ50の周方向に延びている。U相案内溝61U、V相案内溝61V、及びW相案内溝61Wは、インシュレータ基部51に対して非貫通である。
【0041】
U相案内溝61Uは、V相案内溝61V及びW相案内溝61Wよりも、インシュレータ50の軸方向でインシュレータ50におけるステータコア23とは反対側の端面50eから離間した位置に配置されている。V相案内溝61Vは、W相案内溝61Wよりも、インシュレータ50の軸方向でインシュレータ50におけるステータコア23とは反対側の端面50eから離間した位置に配置されている。よって、U相案内溝61U、V相案内溝61V、及びW相案内溝61Wのうち、U相案内溝61Uは、インシュレータ50の軸方向でインシュレータ50におけるステータコア23とは反対側の端面50eから最も離間した位置に配置されている。
【0042】
<貫通溝>
図3及び図4に示すように、2つのインシュレータ50のうち、ステータコア23の第1端面23aに当接するインシュレータ50は、U相貫通溝62U、V相貫通溝62V、及びW相貫通溝62Wを5つずつ有している。各U相貫通溝62U、各V相貫通溝62V、及び各W相貫通溝62Wは、インシュレータ50の径方向に貫通している。
【0043】
図5に示すように、各U相貫通溝62Uは、インシュレータ50におけるステータコア23とは反対側の端面50eに開口することで、一対の側面631Uと、底面632Uと、を備えている。一対の側面631Uは、インシュレータ50の周方向において対向する。底面632Uは、対向する一対の側面631Uを繋ぐ。U相貫通溝62Uの底面632Uは、U相案内溝61Uに面一で連続している。
【0044】
なお、図5のように拡大して示すことは省略するが、各V相貫通溝62V及び各W相貫通溝62WもU相貫通溝62Uと同様に、一対の側面と、底面と、を備えている。V相貫通溝62Vの底面は、V相案内溝61Vに面一で連続している。W相貫通溝62Wの底面は、W相案内溝61Wに面一で連続している。よって、各U相貫通溝62Uは、U相貫通溝62U、V相貫通溝62V、及びW相貫通溝62Wのうち、インシュレータ50におけるステータコア23とは反対側に位置する開口から底面632Uまでの距離が最も長い貫通溝である。
【0045】
<コイル>
図4に示すように、U相コイル28U、V相コイル28V、及びW相コイル28Wは、直列巻きによって形成されている。直列巻きでは、まず、U相巻線29U、V相巻線29V、及びW相巻線29Wを各ティース延在部26及び各インシュレータ50のインシュレータ延在部53に対して巻き始める。そして、ステータコア23の周方向で2つ置きに配置されるティース延在部26及び各インシュレータ50のインシュレータ延在部53に対してU相巻線29U、V相巻線29V、及びW相巻線29Wをそれぞれ集中巻きで順に巻回していく。したがって、U相コイル28U、V相コイル28V、及びW相コイル28Wは、ステータコア23の周方向で2つ置きにそれぞれ配置されている。本実施形態において、U相コイル28U、V相コイル28V、及びW相コイル28Wは、それぞれ5つずつ配置されている。U相コイル28U、V相コイル28V、及びW相コイル28Wは、各スロット30において、互いに異なる相がステータコア23の周方向で隣り合うように配置されている。
【0046】
<渡り線>
U相巻線29Uは、ステータコア23の周方向でU相コイル28U同士を繋ぐ渡り線であるU相渡り線64Uを含む。U相渡り線64Uは、U相コイル28Uにおけるステータコア23の第1端面23a側の部位から引き出されてU相貫通溝62Uを介してU相案内溝61Uに案内されている。したがって、U相案内溝61Uは、U相渡り線64Uをインシュレータ50の周方向へ案内する案内溝である。U相貫通溝62Uは、U相コイル28Uから引き出されたU相渡り線64UをU相案内溝61Uへ案内する貫通溝である。
【0047】
V相巻線29Vは、ステータコア23の周方向でV相コイル28V同士を繋ぐ渡り線であるV相渡り線64Vを含む。V相渡り線64Vは、V相コイル28Vにおけるステータコア23の第1端面23a側の部位から引き出されてV相貫通溝62Vを介してV相案内溝61Vに案内されている。したがって、V相案内溝61Vは、V相渡り線64Vをインシュレータ50の周方向へ案内する案内溝である。V相貫通溝62Vは、V相コイル28Vから引き出されたV相渡り線64VをV相案内溝61Vへ案内する貫通溝である。
【0048】
W相巻線29Wは、ステータコア23の周方向でW相コイル28W同士を繋ぐ渡り線であるW相渡り線64Wを含む。W相渡り線64Wは、W相コイル28Wにおけるステータコア23の第1端面23a側の部位から引き出されてW相貫通溝62Wを介してW相案内溝61Wに案内されている。したがって、W相案内溝61Wは、W相渡り線64Wをインシュレータ50の周方向へ案内する案内溝である。W相貫通溝62Wは、W相コイル28Wから引き出されたW相渡り線64WをW相案内溝61Wへ案内する貫通溝である。
【0049】
このように、巻線は、ステータコア23の周方向でコイル同士を繋ぐ渡り線を含む。渡り線は、U相渡り線64U、V相渡り線64V、及びW相渡り線64Wを含む。インシュレータ50は、渡り線をインシュレータ50の周方向へ案内する案内溝を有している。案内溝は、U相案内溝61U、V相案内溝61V、及びW相案内溝61Wを含む。インシュレータ50は、コイルから引き出された渡り線を案内溝へ案内する貫通溝を有している。貫通溝は、U相貫通溝62U、V相貫通溝62V、及びW相貫通溝62Wを含む。
【0050】
U相渡り線64U、V相渡り線64V、及びW相渡り線64Wは、ステータコア23を挟んで各モータ配線43とは反対側に位置している。そして、U相案内溝61U、V相案内溝61V、及びW相案内溝61Wは、ステータコア23を挟んで各モータ配線43とは反対側で、U相渡り線64U、V相渡り線64V、及びW相渡り線64Wをインシュレータ50の周方向へ案内する。
【0051】
<係止部>
図5に示すように、2つのインシュレータ50のうち、ステータコア23の第1端面23aに当接するインシュレータ50は、係止部としての突起部65を複数有している。各突起部65は、各U相貫通溝62Uの底面632Uにそれぞれ設けられている。したがって、各突起部65は、U相貫通溝62U、V相貫通溝62V、及びW相貫通溝62Wのうち、インシュレータ50におけるステータコア23とは反対側に位置する開口から底面までの距離が最も長い貫通溝の底面に設けられている。このように、各突起部65は、貫通溝の底面に設けられている。
【0052】
各突起部65は、各U相貫通溝62Uの底面632Uから突出している。したがって、本実施形態において、係止部は、各U相貫通溝62Uの底面632Uから突出する突起部65である。各突起部65は、各U相貫通溝62Uの底面632Uからインシュレータ50の径方向外側へ突出している。各突起部65は、インシュレータ基部51の外周面よりもインシュレータ50の径方向外側へ突出している。各突起部65は、四角柱状である。各突起部65の先端部におけるステータコア23とは反対側に位置する面は、各突起部65の先端に向かうにつれてステータコア23側へ徐々に傾斜するテーパ面65aになっている。
【0053】
<カバー>
図6及び図7に示すように、電動圧縮機10は、カバー70を備えている。カバー70は、円筒状である。カバー70は、絶縁性を有している。カバー70は、例えば、樹脂材料製である。カバー70の内径は、インシュレータ基部51の外径よりも大きい。図1に示すように、カバー70は、2つのインシュレータ50のうち、ステータコア23の第1端面23aに当接するインシュレータ50の外周面を囲繞する。これにより、カバー70は、U相渡り線64U、V相渡り線64V、及びW相渡り線64Wとモータハウジング13の周壁13bとの間に介在されている。カバー70は、U相渡り線64U、V相渡り線64V、及びW相渡り線64Wとモータハウジング13との間の絶縁を確保している。
【0054】
<被係止部>
図6及び図7に示すように、カバー70は、被係止部としての被挿入部71を複数有している。被挿入部71は、カバー70を貫通する孔である。被挿入部71には、各突起部65が挿入可能である。したがって、本実施形態において、被係止部は、カバー70に形成されるとともに各突起部65が挿入される被挿入部71である。複数の被挿入部71は、カバー70に対して、各突起部65に対応する位置に配置されている。
【0055】
図8に示すように、被挿入部71は、四角孔形状である。そして、被挿入部71に突起部65が挿入されることにより、突起部65が被挿入部71に係止される。したがって、被挿入部71には、突起部65が係止される。そして、各突起部65が各被挿入部71に係止されることにより、カバー70がインシュレータ50に取り付けられている。各突起部65と各被挿入部71との接触により、カバー70におけるインシュレータ50に対するインシュレータ50の軸方向への移動、及びカバー70におけるインシュレータ50に対するインシュレータ50の周方向への移動が規制されている。
【0056】
カバー70をインシュレータ50に取り付ける際には、まず、カバー70の内周縁を各突起部65のテーパ面65aに当接させる。そして、カバー70をインシュレータ50に対してステータコア23の第1端面23aに向けて強制的に押し込む。このとき、各突起部65のテーパ面65aは、カバー70の内周縁と各突起部65の先端部との干渉を緩和する。そして、各突起部65が各被挿入部71に挿入されることにより、カバー70がインシュレータ50に取り付けられる。
【0057】
[実施形態の作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
インシュレータ50には、U相渡り線64U、V相渡り線64V、及びW相渡り線64Wのテンションが加わる。すると、インシュレータ50は、インシュレータ50におけるステータコア23側の端部を基点として、インシュレータ50の径方向内側へ撓むように変形する。したがって、インシュレータ50における径方向内側への変位量は、インシュレータ50におけるステータコア23とは反対側の端部が最も大きくなる。
【0058】
インシュレータ50における径方向内側への変位量は、インシュレータ50におけるステータコア23とは反対側の端部よりも、U相貫通溝62Uの底面632Uの方が小さい。当該変位量は、U相貫通溝62U、V相貫通溝62V、及びW相貫通溝62Wのうち、インシュレータ50におけるステータコア23とは反対側に位置する開口から底面までの距離が最も長いU相貫通溝62Uの底面632Uが最も小さい。
【0059】
そこで、各突起部65を、各U相貫通溝62Uの底面632Uに設けた。これによれば、例えば、突起部65がインシュレータ50におけるステータコア23とは反対側の端部に設けられている場合に比べると、各突起部65における各被挿入部71に対する係り代が確保され易くなる。その結果、各突起部65が各被挿入部71に安定的に係止されるため、カバー70におけるインシュレータ50に対する取り付けが安定する。
【0060】
[実施形態の効果]
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)各突起部65を、各U相貫通溝62Uの底面632Uに設けた。これによれば、例えば、各突起部65がインシュレータ50におけるステータコア23とは反対側の端部に設けられている場合に比べると、各突起部65における各被挿入部71に対する係り代が確保され易くなる。その結果、各突起部65が各被挿入部71に安定的に係止されるため、カバー70におけるインシュレータ50に対する取り付けが安定する。よって、電動圧縮機10の信頼性の向上を図ることができる。
【0061】
(2)各突起部65をU相貫通溝62U、V相貫通溝62V、及びW相貫通溝62Wのうち、インシュレータ50におけるステータコア23とは反対側に位置する開口から底面までの距離が最も長いU相貫通溝62Uの底面632Uに設けた。これによれば、各突起部65における各被挿入部71に対する係り代がさらに確保され易くなる。その結果、各突起部65が被挿入部71にさらに安定的に係止されるため、カバー70におけるインシュレータ50に対する取り付けがさらに安定する。よって、電動圧縮機10の信頼性の向上をさらに図ることができる。
【0062】
(3)係止部が、U相貫通溝62Uの底面632Uから突出する突起部65であるインシュレータ50は、製造が容易である。したがって、電動圧縮機10の製造を容易なものとすることができる。
【0063】
(4)各突起部65は、各U相貫通溝62Uの底面632Uに設けられている。したがって、例えば、U相渡り線64Uが案内されるU相案内溝61Uを形成する壁部に突起部65を設ける場合に比べると、被挿入部71を介したU相渡り線64Uとハウジング11との絶縁距離を確保し易くすることができる。
【0064】
(5)各突起部65は、各U相貫通溝62Uの底面632Uに設けられている。したがって、例えば、インシュレータ基部51におけるU相案内溝61Uとステータコア23との間の部分に突起部65を設ける必要が無い。よって、インシュレータ基部51におけるU相案内溝61Uとステータコア23との間の部分に突起部65を設けるためのスペースを確保する必要が無いため、インシュレータ50の小型化を図ることが可能となる。その結果、電動圧縮機10の小型化を図ることができる。
【0065】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0066】
図9に示すように、例えば、U相貫通溝62Uの底面632Uが、U相案内溝61Uに面一で連続しておらず、U相貫通溝62Uの底面632UとU相案内溝61Uとの間に段差があってもよい。U相貫通溝62Uの底面632Uは、一対の側面631Uの一部分を介してU相案内溝61Uに連続している。U相貫通溝62Uの底面632Uは、U相案内溝61Uよりもステータコア23寄りに位置している。
【0067】
図9に示す実施形態において、突起部65が、一対の側面631Uの一方の一部分及び底面632Uの両方に接した状態で、インシュレータ50に設けられていてもよい。
○ 実施形態において、例えば、突起部65が、V相貫通溝62Vの底面に設けられていてもよいし、W相貫通溝62Wの底面に設けられていてもよい。この場合、カバー70に対する被挿入部71の位置は、突起部65の位置に合わせて適宜変更する必要がある。
【0068】
○ 実施形態において、被挿入部71は、カバー70を貫通しない凹部であってもよい。要は、被挿入部71は、カバー70に形成されるとともに突起部65が挿入されることにより、突起部65が係止される被係止部であればよい。
【0069】
○ 実施形態において、例えば、各U相貫通溝62Uの底面632Uに、係止部としての孔部を設けるとともに、カバー70に、当該孔部に挿入される突起部を設けてもよい。要は、係止部と被係止部との凹凸の関係を逆にしてもよい。
【0070】
○ 実施形態において、U相案内溝61U、V相案内溝61V、及びW相案内溝61Wにおけるインシュレータ50の軸方向での並び順は適宜変更してもよい。
○ 実施形態において、各突起部65の先端部におけるステータコア23とは反対側に位置する面が、テーパ面65aになっていなくてもよい。
【0071】
○ 実施形態において、2つのインシュレータ50のうち、ステータコア23の第2端面23bに当接するインシュレータ50が、U相案内溝61U、V相案内溝61V、及びW相案内溝61Wを有していてもよい。この場合、2つのインシュレータ50のうち、ステータコア23の第2端面23bに当接するインシュレータ50が、U相貫通溝62U、V相貫通溝62V、及びW相貫通溝62Wを有している。そして、U相渡り線64U、V相渡り線64V、及びW相渡り線64Wが、ステータコア23に対して、各モータ配線43側に位置している。このように、U相案内溝61U、V相案内溝61V、及びW相案内溝61Wが、ステータコア23に対して、各モータ配線43側で、U相渡り線64U、V相渡り線64V、及びW相渡り線64Wをインシュレータ50の周方向へ案内していてもよい。この場合、カバー70は、2つのインシュレータ50のうち、ステータコア23の第2端面23bに当接するインシュレータ50の外周面を囲繞する。これにより、カバー70は、U相渡り線64U、V相渡り線64V、及びW相渡り線64Wとモータハウジング13の周壁13bとの間に介在されている。
【0072】
○ 実施形態において、圧縮部16は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置に用いられていたが、これに限らない。例えば、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部16により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、16…圧縮部、20…モータ、22…ステータ、23…ステータコア、23a…端面である第1端面、23b…端面である第2端面、28U…コイルであるU相コイル、28V…コイルであるV相コイル、28W…コイルであるW相コイル、29U…巻線であるU相巻線、29V…巻線であるV相巻線、29W…巻線であるW相巻線、50…インシュレータ、50e…端面、61U…案内溝であるU相案内溝、61V…案内溝であるV相案内溝、61W…案内溝であるW相案内溝、62U…貫通溝であるU相貫通溝、62V…貫通溝であるV相貫通溝、62W…貫通溝であるW相貫通溝、64U…渡り線であるU相渡り線、64V…渡り線であるV相渡り線、64W…渡り線であるW相渡り線、65…係止部としての突起部、70…カバー、71…被係止部としての被挿入部、631U…側面、632U…底面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9