(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093319
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】蓄光式標識
(51)【国際特許分類】
G09F 13/20 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G09F13/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209621
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000168115
【氏名又は名称】KTX株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517266779
【氏名又は名称】株式会社リンコー
(71)【出願人】
【識別番号】516240592
【氏名又は名称】林 弘美
(71)【出願人】
【識別番号】599012684
【氏名又は名称】唐沢 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 弘美
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 伸
【テーマコード(参考)】
5C096
【Fターム(参考)】
5C096AA21
5C096BA04
5C096CA03
5C096CB01
5C096CC37
5C096FA03
(57)【要約】
【課題】蓄光層の剥がれ落ちを少なく抑えつつ、製造時の作業性の向上をも実現することができる蓄光式標識を提供する。
【解決手段】平板矩形状の基板0110と、この基板0110の周縁に沿って配置された枠0120と、この枠0120内に配置される蓄光層0130を備えている。枠0120は、基板0110の表面0110Sに配置される両面テープ0140を介して基板0110に取り付けられており、蓄光層0130は、基板0110の表面0110Sに配置される両面テープ0140上に蓄光材料を流し込んで乾燥させることで形成されている。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板上に貼り付けられる両面テープと、
両面テープ上に流し込まれ乾燥した蓄光層と、
からなる蓄光式標識。
【請求項2】
蓄光層は、基板に設けられる枠内に配置される請求項1に記載の蓄光式標識。
【請求項3】
前記基板は、樹脂層と樹脂を挟み込む軽金属層とからなる請求項1または請求項2に記載の蓄光式標識。
【請求項4】
前記枠は、樹脂層と樹脂を挟み込む軽金属層とからなる請求項2に記載の蓄光式標識。
【請求項5】
前記両面テープは透明両面テープであり、前記基板における前記蓄光層の蓄光材料を前記透明両面テープを介して流し込む面には反射層が設けられている請求項3に記載の蓄光式標識。
【請求項6】
前記蓄光層上には、グラフィック層が設けられている請求項3に記載の蓄光式標識。
【請求項7】
前記両面テープの粘着面はシリコーン系樹脂を含む粘着層であり、前記蓄光層は、母材がシリコーン系樹脂である請求項3に記載の蓄光式標識。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に設置されて、主として安全のための注意を喚起したり、緊急時において脱出場所や安全な場所に誘導するための避難経路を標示したりする蓄光式標識に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における蓄光式標識としては、例えば、基板と、この基板上に蓄光材料を塗布して形成された蓄光層と、この蓄光層上に透明保護材料を塗布して形成された透明保護層を備えたものが知られている。
また、他の蓄光式標識としては、基板と、この基板上に接着剤を介して蓄光シートを貼り付けて形成された蓄光層と、この蓄光層上に接着剤を介して透明保護シートを貼り付けて形成された透明保護層を備えたものがある。
【0003】
これらの蓄光式標識のうち、蓄光材料及び透明保護材料を塗布することで蓄光層及び透明保護層を形成する前者の蓄光式標識では、蓄光材料及び透明保護材料の各塗布作業に多くの手間暇がかかってしまうという問題があった。
一方、接着剤で蓄光シート及び透明保護シートを貼り付けることで蓄光層及び透明保護層を形成する後者の蓄光式標識にあっても、接着剤の塗布作業を必要とするので、前者の蓄光式標識と同様に、接着剤の塗布作業に多くの手間暇がかかってしまうという問題があった。
【0004】
そこで、多くの手間暇を掛けずに製造し得る蓄光式標識として、例えば、特許文献1に記載された蓄光式標識が知られている。この蓄光式標識は、盆状の蓄光表示凹部が形成された基板と、この基板の蓄光表示凹部に液状の蓄光材料を流し込んで形成される蓄光層を有するものであり、蓄光層は、蓄光材料を流し込んだ蓄光表示凹部を所定時間静置した状態として蓄光材料を硬化させることで、蓄光表示凹部内に形成されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された蓄光式標識において、蓄光材料を塗布したり接着剤を塗布したりするといった煩雑な作業をしなくてもよいので、製造時の作業性を向上させることができるものの、基板の蓄光表示凹部内で液状の蓄光材料が硬化することで形成されている蓄光層が蓄光表示凹部から剥がれ落ちる可能性を否定できないという問題があり、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0007】
本発明は、上記した従来の課題に着目して成されたものであり、蓄光層の剥がれ落ちを少なく抑えつつ、製造時の作業性の向上をも実現することができる蓄光式標識を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目標を達成するために、本発明における第一の態様は、基板と、基板上に貼り付けられる両面テープと、両面テープ上に流し込まれ乾燥した蓄光層と、からなる蓄光式標識を提供する。
【0009】
また、第二の態様において、蓄光層は、基板に設けられる枠内に配置される蓄光式標識を提供する。
【0010】
さらに、第三の態様において、前記基板は、樹脂層と樹脂を挟み込む軽金属層とからなる蓄光式標識を提供する。
【0011】
さらにまた、第四の態様において、前記枠は、樹脂層と樹脂を挟み込む軽金属層とからなる蓄光式標識を提供する。
【0012】
さらにまた、第五の態様において、前記両面テープは透明両面テープであり、前記基板における前記蓄光層の蓄光材料を前記透明両面テープを介して流し込む面には反射層が設けられている蓄光式標識を提供する。
【0013】
さらにまた、第六の態様において、前記蓄光層上には、グラフィック層が設けられている蓄光式標識を提供する。
【0014】
さらにまた、第七の態様において、前記両面テープの粘着面はシリコーン系樹脂を含む粘着層であり、前記蓄光層は、母材がシリコーン系樹脂である蓄光式標識を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る蓄光式標識によれば、蓄光層を両面テープ上に流し込んで乾燥させる構成としているので、空気の入り込んでいない真空域が蓄光層と両面テープとの間にできることで蓄光層が両面テープに強吸着することとなり、その結果、蓄光層の剥がれ落ちを少なく抑えることができ、加えて、製造時の作業性の向上をも実現することが可能であるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1D】実施形態1の蓄光式標識の製造手順を示す一方のセパレータを剥がした両面テープを基板表面に貼る状況の斜視図
【
図1E】実施形態1の蓄光式標識の製造手順を示す基板表面に貼った両面テープの粘着層から他方のセパレータを剥がす状況の斜視図
【
図1F】実施形態1の蓄光式標識の製造手順を示す基板表面に貼った両面テープに枠を取り付ける状況の斜視図
【
図1G】実施形態1の蓄光式標識の製造手順を示す基板表面に貼った両面テープ上に蓄光材料を流し込んで枠内に蓄光層を形成する状況を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を説明する。実施形態と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施形態1は主に請求項1,請求項2,請求項6に関し、実施形態2は主に請求項3に関し、実施形態3は主に請求項4に関し、実施形態4は主に請求項5に関し、実施形態5は主に請求項7に関する。なお、本発明はこれら実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0018】
本発明に係る蓄光式標識の大きさは、標示内容や配置場所の状況等に応じて決定される。 例えば、震災発生時に津波から逃れる避難場所を標示する蓄光式標識の場合には、避難経路上の建築物外壁面や避難場所外壁面に配置した状態において遠方からでも避難者が視認可能とするべく、縦の長さ寸法が1000mm以上、横の長さ寸法が500mm以上とすることが望ましい。
<実施形態1>
【0019】
本実施形態は、主に請求項1,2,6に関する。ただし、各請求項の発明の構成要件は、この実施形態によって限定されるものではない。
<実施形態1 概要 主に請求項1,2,6に対応>
【0020】
本実施形態の蓄光式標識は、基板と、この基板の表面上に貼り付けられる両面テープと、基板に設けた枠内の両面テープ上に流し込まれて乾燥した蓄光層と、この蓄光層上に設けられるグラフィック層から構成されることを特徴としている。
このように、本実施形態の蓄光式標識では、蓄光層を基板の表面上に貼り付けられる両面テープ上に流し込んで乾燥させることで蓄光層を形成するようにしているので、蓄光層が両面テープに強吸着することとなり、その結果、蓄光層の剥がれ落ちを少なく抑えたうえで、製造時の作業性の向上をも実現することが可能である。
<実施形態1 構成 主に請求項1,2,6に対応>
【0021】
図1Aの全体斜視図に示すように、本実施形態の蓄光式標識0100は、平板矩形状の基板0110と、この基板0110の周縁に沿って配置された枠0120と、この枠0120内に配置される蓄光層0130を備えている。
図1Bの半割斜視図及び
図1Cの拡大断面図に示すように、枠0120は、基板0110の表面0110Sに配置される両面テープ0140(詳しくは両面テープ0140の粘着層0140C)を介して基板0110に取り付けられており、蓄光層0130は、基板0110の表面0110Sに配置される両面テープ0140上に蓄光材料を流し込んで乾燥させることで形成されている。
また、本実施形態に係る蓄光式標識0100は、蓄光層0130上に順次積層されたグラフィック層0150,透明層0160及びコーティング層0170を備えている。
なお、透明層0160及びコーティング層0170は、後述のごとく透明な層であるため、
図1Aの全体斜視図では蓄光層0130と区別がつかない状態で表している。また、
図1Bの半割斜視図では、グラフィック層0150の後述するピクトサインSを省略して示している。
<実施形態1 構成 主に請求項1,2,6に対応>
<実施形態1 構成 基板及び枠>
【0022】
平板矩形状の基板0110及び枠0120に用いられる素材には、アルミニウムやステンレスやニッケル合金等の金属を用いることができるほか、些か高価ではあるがチタニウム合金を用いることができるが、避難経路上の建築物外壁面や避難場所外壁面等の屋外壁面に配置される標識に要求される耐候性や剛性が得られる素材であれば特に限定しない。
【0023】
本実施形態において、
図1A,
図1Bに示すように、基板0110は、切削加工によって縦長さLが200~1300mm、横幅Wが200~1300mm、厚さtbが0.5~1.5mmの平板矩形状としたものである。
一方、基板0110の周縁に沿って設けられる枠0120は、その縦枠部分及び横枠部分の各幅寸法wが15~25mmで且つ各厚さts(高さ寸法)が1.5~2.5mmとなるようにして形成されており、このような外寸の枠0120を基板0110の表面0110Sに配置される両面テープ0140を介して基板0110に取り付けることで、基板0110上の枠0120に囲われた領域に枠厚さts分に相当する深さ1.5~2.5mmの蓄光層収容部分を形成するようにしている。
この枠0120の四隅及び縦枠部分の中央には、基板0110と枠0120との接合力を高めるビスねじ込み用の孔径4.5~5.5mmのねじ孔0121が設けられている。これらのねじ孔0121は、基板0110を貫通するようにして設けられており、蓄光式標識0100を屋外壁面に取り付ける際に釘等の金具を通すための金具挿通孔としても使用されるようになっている。
なお、上述した基板0110の外寸L,W,tbや枠0120の外寸w,tsやねじ孔0121の孔径等の値はいずれも一例であり、これらの値に限定されるものではない。
<実施形態1 構成 主に請求項1,2,6に対応>
<実施形態1 構成 蓄光層>
【0024】
蓄光層0130を構成する蓄光材には、母材をシリコーン系樹脂とする液体状のものが用いられ、この蓄光層0130は、液体状の蓄光材を基板0110の表面0110Sに貼り付けられる両面テープ0140上の枠0120に囲われた蓄光層収容部分に流し込んで乾燥させることで、基板0110の枠0120内に固定されるようになっている。この際、空気の入り込んでいない真空域が、蓄光層0130と両面テープ0140との間に形成されることで、蓄光層0130は、両面テープ0140に強吸着するようになっている。
<実施形態1 構成 主に請求項1,2,6に対応>
<実施形態1 構成 両面テープ>
【0025】
両面テープ0140には、基板0110の素材であるアルミニウムと、母材をシリコーン系樹脂とする蓄光材料とを強固に接着するために、例えば、基材の両面にシリコーン系樹脂を含む粘着層を備えた構成の両面テープを採用することができる。
ここで、両面テープの粘着層は、微細に観察すれば波打つように表面が形成されており、これによって両面テープと蓄光材料との接触面積が多くなってより強固に密着することとなり、蓄光層の剥離リスクが低減することとなる。また、粘着層はシリコーン系樹脂等の有機系の材料で構成されているので、同じく有機系の母材(シリコーン系樹脂)からなる蓄光材料とは相性がよく、この点からも剥離リスクを低減できる。これに対して、蓄光層と基板との接触面が蓄光層と金属との接触のように構成されている場合には、両者の接着力に関する相性が良くなく、剥離リスクが相対的に大きくなる。特に金属材料と、有機材料とは熱膨張係数に大きな差があるので、例えば日中に日照りが良好で夜間に急に冷え込むといったような天候の場合には、剥離リスクが相対的に高くなる。また真夏の日中など、高温になって金属の膨張が著しいケースでは温度差の問題でなく、熱膨張の大きさの違いから同じく相対的に剥離リスクが高くなる。なお、両面テープの一例として、基材の両面にシリコーン系樹脂を含む粘着層を備えた構成のものを挙げたが、これに限定されるものではない。また、両面テープの基材、すなわち支持体も紫外線耐性の観点からシリコーン系のプラスチック素材を利用したものであることが好ましい。これは後述する反射層の効果を紫外線による濁りによって損なわないようにすることに役立つ。
<実施形態1 構成 主に請求項1,2,6に対応>
<実施形態1 構成 グラフィック層>
【0026】
グラフィック層0150は、本実施形態において、ピクトサインSとして切り出した光反射シート(再帰反射シート)を蓄光層0130上に貼り付けることで形成されるようにしており、避難者に伝えるための情報の告知を明確に行えるようにしている。なお、他の構成として、例えば、蓄光層0130上にピクトサインSを印刷することでグラフィック層0150とする構成を採用するようにしてもよい。
グラフィック層0150におけるグラフィックの中で人がビルに駆け込む様子や、その人を追いかける波や、「津波避難ビル」などのグラフィックは、それぞれの形に有色の薄いプラスチックフィルムを切り抜いて構成してもよい。なお、紫外線耐性の観点から、このプラスチックフィルムはシリコーン系のものであることが好ましい。例えば、下側に配置されている「津波避難ビル」に関しては、透明なプラスチックシート上に「津波避難ビル」の文字を印刷して配置するように構成してもよい。なお、透明なプラスチックは、紫外線耐性を高めるためにシリコーン系のプラスチックであることが好ましい。なお、印刷に使用されるインクも、シリコーン系のプラスチックとの相性を高めるためにシリコーン系の材料を母材としたインクであることが好ましい。
<実施形態1 構成 主に請求項1,2,6に対応>
<実施形態1 構成 透明層及びコーティング層>
【0027】
透明層0160は、グラフィック層0150上にシリコーン透明素材を積層してなっており、コーティング層0170は、透明層0160の表面にシリコーン透明素材とは異なる屈折率の透明ガラスコーティング処理を施すことで形成されている。このように、透明層0160及びコーティング層0170をグラフィック層0150上に順次積層することで、基板0110上の枠0120とこの枠0120内に固定される蓄光層0130との間の隙間を封止して完全密封構造としつつ、蓄光層0130上のグラフィック層0150表面を保護することで、耐候性及び防汚性に優れたものとなるようにしている。
加えて、コーティング層0170を透明層0160のシリコーン透明素材とは異なる屈折率の透明ガラスコーティングで形成しているので、グラフィック層0150を通過する蓄光層0130からの光が、互いに屈折率の異なる透明層0160のシリコーン透明素材及びコーティング層0170の透明ガラスコーティング間において乱反射することとなり、その結果、輝度が高まることとなる。
<実施形態1 製造手順 主に請求項1,2,6に対応>
【0028】
本実施形態の蓄光式標識0100を製造する手順としては、
図1Dに示すように、まず、両面テープ0140の図示下側のセパレータ0140Lを剥がして、平板矩形状に形成した基板0110の表面0110S全体に貼り付ける。この際、基板0110の表面0110Sと両面テープ0140の粘着層0140Cとの間に気泡が残らないように貼り付ける。
【0029】
次いで、
図1Eに示すように、両面テープ0140の図示上側のセパレータ0140Uを粘着層0140Cから剥がすのに続いて、
図1Fに示すように、平板矩形状の基板0110の周縁に沿うようにして形成した枠0120を基板0110の表面全体に貼り付けた両面テープ0140の粘着層0140Cに取り付ける。
【0030】
次に、
図1Gに示すように、容器0180に収容した母材をシリコーン系樹脂とする液体状の蓄光材料0130Aを基板0110の表面に貼り付けられた両面テープ0140の粘着層0140C上の枠0120に囲われた蓄光層収容部分に流し込んで乾燥させることで、基板0110の枠0120内に蓄光層0130を形成する。
【0031】
そして、本実施形態では、図示はしないが、ピクトサインSとして切り出した光反射シートを乾燥後の蓄光層0130上に貼り付けることでグラフィック層0150を形成した後、このグラフィック層0150上に透明層0160及びコーティング層0170を順次積層することで、基板0110の枠0120とこの枠0120内に固定した蓄光層0130との間の隙間を封止して完全密封構造とする。なお、グラフィック層0150もずれ防止のために接着剤を用いて配置することも考えられるが、その場合には、接着剤はやはり紫外線耐性の観点からシリコーン系であることが好ましい。また、接着剤は単なるシリコーン系樹脂であってもよい。本件出願において、接着剤には本来の用途が接着でない部材を含める場合がある。シリコーン系の材料同士はそのままで相互に接着する力が生じるからである。
【0032】
このように、本実施形態の蓄光式標識0100では、蓄光層0130を基板0110の表面0110Sに貼り付けた両面テープ0140上に流し込んで乾燥させることで固定するようにしているので、空気の入り込んでいない真空域が蓄光層0130と両面テープ0140との間にできることとなって蓄光層0130が両面テープ0140に強吸着することとなり、その結果、蓄光層0130の剥がれ落ちを少なく抑え得ることとなる。
そして、この蓄光層0130の取り付けに際して、蓄光材料を基板0110の表面0110Sに塗布したり接着剤を塗布したりするといった煩雑な作業をしなくてもよいので、製造時の作業性の向上をも実現し得ることとなる。
【0033】
また、本実施形態の蓄光式標識0100では、基板0110の表面0110Sの全体に両面テープ0140を貼り付けるようにしているので、この両面テープ0140を介して蓄光層0130のみならず枠0120をも基板0110に取り付けて固定し得ることとなり、その結果、製造時における作業性のより一層の向上を実現し得ることとなる。
【0034】
さらに、本実施形態の蓄光式標識0100において、ピクトサインSとして切り出した光反射シートを蓄光層0130上に貼り付けることで形成されるグラフィック層0150を有しているので、情報の告知を明確に行い得ることとなる。
加えて、本実施形態の蓄光式標識0100において、液体材料の流し込みによって作られる透明層0160及び同じく液体材料の流し込みによって作られるコーティング層0170をグラフィック層0150上に順次積層することで、基板0110上の枠0120とこの枠0120内に固定される蓄光層0130との間の隙間を封止して完全密封構造としつつ、蓄光層0130上のグラフィック層0150表面を保護するようにしているので、蓄光層0130を含む蓄光式標識0100の表面全体が、傷や水濡れや埃から護られることとなる。
さらにまた、コーティング層0170を透明層0160のシリコーン透明素材とは異なる屈折率の透明ガラスコーティングで形成しているので、グラフィック層0150を通過する蓄光層0130からの光が、互いに屈折率の異なる透明層0160のシリコーン透明素材及びコーティング層0170の透明ガラスコーティング間において乱反射することとなり、その結果、輝度が高まることとなる。
【0035】
なお、本実施形態に係る蓄光式標識0100では、平板矩形状の基板0110及び枠0120を個々に製作して両面テープ0140を介して互いに張り合わせる構成としているが、他の構成として、基板素材に切削加工を施して基板及び枠を一体で形成する構成を採用してもよい。
【0036】
また、本実施形態の蓄光式標識0100において、基板0110及び枠0120が矩形状を成している場合を示したが、これに限定されるものではない。基板及び枠の形状は、すなわち、蓄光式標識の全体形状は、避難経路上の建築物外壁面や避難場所外壁面に配置した状態で遠方からでも避難者が視認することができる形状であればよく、したがって、矩形状のほかに、円形状や楕円形状や三角形状等の形状としてもよい。
<実施形態1 効果 主に請求項1,2,6に対応>
【0037】
上記したように、本実施形態の蓄光式標識では、蓄光層を基板の枠内における基板表面上に両面テープを介して貼り付けるようにしているので、すなわち、蓄光層を両面テープ上に流し込んで乾燥させるようにしているので、空気がほとんど入り込んでいない真空域が蓄光層と両面テープとの間にできることで蓄光層が両面テープに強吸着することとなり、その結果、蓄光層の剥がれ落ちを少なく抑えたうえで、製造時の作業性の向上をも実現することが可能である。また、基板の表面全体に貼り付けた両面テープを介して蓄光層のみならず枠をも基板に取り付けて固定するようにしているので、製造時における作業性のより一層の向上を実現することができる。
<実施形態2>
【0038】
本実施形態は、主に請求項3に関する。
<実施形態2 概要>
【0039】
本実施形態の蓄光式標識は、実施形態1の蓄光式標識を基本とし、基板が、樹脂層と樹脂を挟み込む軽金属層とから構成されることを特徴としている。
例えば、蓄光式標識の基板として、薄いアルミニウム板(軽金属層)で薄い発砲ポリエチレン樹脂(樹脂層)を挟み込む構成のものを採用すると、加工性及び耐衝撃性に優れた蓄光式標識を得ることができる。
<実施形態2 構成 主に請求項3に対応>
【0040】
図2Aの全体斜視図及び
図2Bの拡大断面図に示すように、本実施形態の蓄光式標識0200が、先の実施形態1の蓄光式標識と比較して特徴とするところは、基板0210が、樹脂層0211とこの樹脂層0211を挟み込む軽金属層0212とから構成されている点にあり、他の構成は先の実施形態1の蓄光式標識と同じである。
<実施形態2 構成 主に請求項3に対応>
<実施形態2 構成 基板>
【0041】
本実施形態に係る蓄光式標識0200の平板矩形状の基板0210は全体の厚さを0.6~1.2mmとしており、0.1~0.3mmの薄いアルミニウム板から成る軽金属層0212で、発砲ポリエチレン樹脂から成る厚さ0.4~0.6mmの樹脂層0211を挟み込む構成をなしている。そして、この基板0210の縦長さや横幅の外寸は、実施形態1の蓄光式標識の基板と同程度としている。
【0042】
そして、実施形態1に係る蓄光式標識の枠と同じ外寸の枠0220を基板0210の表面0210Sに配置される両面テープ0240を介して基板0210に取り付けることで、基板0210上の枠0220に囲われた領域に枠厚さ分に相当する深さ1.5~2.5mmの蓄光層0230の収容部分を形成するようにしている。
【0043】
このように、本実施形態の蓄光式標識0200では、実施形態1の蓄光式標識と同様に、蓄光層0230の剥がれ落ちを少なく抑えつつ、製造時の作業性の向上が図られることとなる。
加えて、本実施形態の蓄光式標識0200では、基板0210として、0.1~0.3mmの薄いアルミニウム板から成る軽金属層0212で、発砲ポリエチレン樹脂から成る厚さ0.4~0.6mmの樹脂層0211を挟み込む構成の複合板を採用しているので、耐衝撃性を確保したうえで、カッターナイフ等の手工具で切断等の加工を行い得る分だけ、基板0210を得る際の加工性にも優れたものとなる。
<実施形態2 効果 主に請求項3に対応>
【0044】
上記したように、本実施形態では、実施形態1の蓄光式標識と同じく、蓄光層の剥がれ落ちを少なく抑えたうえで、製造時の作業性の向上をも実現することが可能であり、加えて、加工性及び耐衝撃性に優れた蓄光式標識を得ることができる。
<実施形態3>
【0045】
本実施形態は、主に請求項4に関する。
<実施形態3 概要>
【0046】
本実施形態の蓄光式標識は、実施形態1,2の蓄光式標識を基本とし、枠が、樹脂層と樹脂を挟み込む軽金属層とから構成されることを特徴としている。
例えば、蓄光式標識の枠の素材として、薄いアルミニウム板(軽金属層)で薄い発砲ポリエチレン樹脂(樹脂層)を挟み込む構成の複合板を採用すると、カッターナイフ等の手工具を用いた加工を行い得るので、枠を得る際の加工性に優れた蓄光式標識を得ることができる。
<実施形態3 構成 主に請求項4に対応>
【0047】
図3Aの全体斜視図及び
図3Bの拡大断面図に示すように、本実施形態の蓄光式標識0300が、先の実施形態2の蓄光式標識と比較して特徴とするところは、枠0320が、樹脂層0321とこの樹脂層0321を挟み込む軽金属層0322とからなる複合板で形成されている点にあり、他の構成は基板0310を複合板から構成した先の実施形態2の蓄光式標識と同じである。なお、基板0310を構成する複合板と、枠0320を構成する複合板は、その断面構造や材料、サイズなどが同一のものであってもよい。
<実施形態3 構成 主に請求項4に対応>
<実施形態3 構成 枠>
【0048】
本実施形態に係る蓄光式標識0300の基板0310上に取り付けれる枠0320は、0.1~0.3mmの薄いアルミニウム板から成る軽金属層0312で、発砲ポリエチレン樹脂から成る厚さ1.3~2.0mmの樹脂層0311を挟み込む構成の複合板を素材としており、この複合板の厚さを1.5~2.6mmとしている。また、この複合板の縦長さや横幅の外寸は、実施形態1,2の蓄光式標識の基板と同程度としている。
つまり、枠0320内の壁面として蓄光層0330の配置側に露出する枠0320の基材は、大部分を発泡ポリエチレン樹脂が占めている。実施形態1で説明したように、蓄光層0330やグラフィック層0350の上に透明層0360やコーティング層0370を配置する際において、これらの層0360,0370は液状の材料を流し込むことによって配置されるが、枠0320の内壁面の大部分が発泡ポリエチレン樹脂で形成されていることから、内壁面の微小な泡状の凹部に液状の材料が流し込まれて透明層0360やコーティング層0370の固着をより強固にすることができる。さらに、コーティング層0370は原則有機材料を母材としているので、枠0320の内壁面の発泡ポリエチレン樹脂が有機材料であることとも相俟って、より強固に内壁面に対して固着するような作用が生じる。なお、透明層0360は、やはり紫外線耐性の観点からシリコーン系の素材を母材とするものであることが好ましい。
【0049】
本実施形態に係る蓄光式標識0300の枠0320は、その縦枠部分及び横枠部分の各幅寸法がいずれも15~25mmとなるようにして上記複合板の中央部分をくり抜くことで形成されており、このようにして形成される枠0320を基板0310の表面0310Sに配置される両面テープ0340を介して基板0310に取り付けることで、基板0310上の枠0320に囲われた領域に複合板の厚さに相当する深さ1.5~2.5mmの蓄光層0330の収容部分が形成されるようにしている。
【0050】
このように、本実施形態の蓄光式標識0300では、実施形態1,2の蓄光式標識と同様に、蓄光層0330の剥がれ落ちを少なく抑えつつ、製造時の作業性の向上が図られることとなる。
加えて、本実施形態の蓄光式標識0300では、枠0320の素材として、0.1~0.3mmの薄いアルミニウム板から成る軽金属層0312で、発砲ポリエチレン樹脂から成る厚さ1.3~2.0mmの樹脂層0311を挟み込む構成の複合板を採用しているので、耐衝撃性を確保したうえで、カッターナイフ等の手工具で切断等の加工を行い得る分だけ、加工性にも優れたものとなる。
さらに、蓄光層0330を囲む枠0320の内壁面の大部分を発泡ポリエチレン樹脂が占めているので、蓄光層0330やグラフィック層0350の上に透明層0360やコーティング層0370を配置するに際しては、内壁面の微小な泡状の凹部に透明層0360やコーティング層0370の素材である液状の材料(例えば、シリコーン透明素材及び透明ガラスコーティング素材)が流し込まれることで、透明層0360やコーティング層0370の固着がより一層強固なものとなる。
<実施形態3 効果 主に請求項4に対応>
【0051】
上記したように、本実施形態では、実施形態1,2の蓄光式標識と同じく、蓄光層の剥がれ落ちを少なく抑えたうえで、製造時の作業性の向上をも実現することが可能であり、加えて、加工性及び耐衝撃性に優れた蓄光式標識を得ることができる。
また、本実施形態のように、蓄光層やグラフィック層の上に透明層やコーティング層を配置する場合には、これらの透明層及びコーティング層を強固に固着させることができる。
<実施形態4>
【0052】
本実施形態は、主に請求項5に関する。
<実施形態4 概要>
【0053】
本実施形態の蓄光式標識は、実施形態1~3の蓄光式標識を基本とし、アルミニウム板から成る軽金属層で発砲ポリエチレン樹脂から成る樹脂層を挟み込んだ構成の基板上に配置される両面テープとして透明両面テープを採用し、基板における蓄光層の蓄光材料を流し込む面である軽金属層に反射層を設けた構成とすることを特徴としている。
本実施形態の蓄光式標識では、蓄光層及び透明両面テープを透過した光が、基板の反射層で反射して透明両面テープを介して再度蓄光層に届くので、蓄光層においてより多くの蓄光がなされることとなり、その結果、より視認性の高い蓄光式標識を得ることができる。
<実施形態4 構成 主に請求項5に対応>
【0054】
図4Aの半割斜視図に示すように、本実施形態の蓄光式標識0400が、先の実施形態3の蓄光式標識と比較して特徴とするところは、基板0410上に配置される両面テープとして透明両面テープ0440を採用した点と、
図4Bの拡大断面図に示すように、基板0410における蓄光層0430の蓄光材料が透明両面テープ0440を介して流し込まれる表面(軽金属層)0412上に反射層0413を設けた点にあり、他の構成は先の実施形態3の蓄光式標識と同じである。
本実施形態に係る蓄光式標識0400において、基板0410の蓄光層0430の蓄光材料が流し込まれる表面である軽金属層0412上に設けられる反射層0413には、高反射性の白色の酸化チタンが採用されている。なお、反射層0413に用いられる材料としては、低反射性のものでなければ特に限定しない。
【0055】
本実施形態に係る蓄光式標識0400において、複合板である基板0410の蓄光材料が流し込まれる軽金属層0412に反射層0413を設けるのに伴って、基板0410上に配置される両面テープとして透明両面テープ0440を採用している。
【0056】
このように、本実施形態の蓄光式標識0400では、実施形態1~3の蓄光式標識と同様に、蓄光層0430の剥がれ落ちを少なく抑えつつ、製造時の作業性の向上が図られることとなる。
加えて、本実施形態の蓄光式標識0400では、アルミニウム板から成る軽金属層0412で発砲ポリエチレン樹脂から成る樹脂層0411を挟み込んだ構成の基板0410上に配置される両面テープとして透明両面テープ0440を採用し、基板0410における蓄光層0430の蓄光材料を流し込む面である軽金属層0412上に反射層0413を設けた構成としているので、蓄光層0430及び透明両面テープ0440を透過した光が、基板0410の反射層0413で反射して透明両面テープ0440を介して再度蓄光層0430に届いて、蓄光層0430においてより多くの蓄光がなされることとなり、その結果、視認性の向上が図られることとなる。
<実施形態4 効果 主に請求項5に対応>
【0057】
上記したように、本実施形態では、実施形態1~3の蓄光式標識と同じく、蓄光層の剥がれ落ちを少なく抑えたうえで、製造時の作業性の向上をも実現することが可能であり、加えて、加工性及び耐衝撃性に優れた蓄光式標識を得ることができる。
また、より視認性の高い蓄光式標識を得ることができる。
<実施形態5>
【0058】
本実施形態は、主に請求項7に関する。
<実施形態5 概要>
【0059】
本実施形態は、実施形態1~4の蓄光式標識を基本とし、基板上に蓄光層を固定する両面テープの粘着面がシリコーン系樹脂を含む粘着層であり、蓄光層の蓄光材料として母材がシリコーン系樹脂であるものを採用したことを特徴としている。
本実施形態の蓄光式標識では、両面テープの粘着面が有機系の材料であるシリコーン系樹脂を含む粘着層で構成され、同じく蓄光層の蓄光材料として母材が有機系のシリコーン系樹脂であるものとしているので、両面テープの粘着層と蓄光層の蓄光材料とは相性がよく、蓄光層の剥離リスクを低減できる。
<実施形態5 構成 主に請求項7に対応>
本実施形態の蓄光式標識が、先の実施形態1~4の蓄光式標識と比較して特徴とするところは、基板上に配置される両面テープとして粘着面がシリコーン系樹脂を含む粘着層である両面テープを採用すると共に、蓄光層の蓄光材料として母材がシリコーン系樹脂であるものを採用した点にあり、他の構成は先の実施形態1~4の蓄光式標識と同じである。
【0060】
このように、本実施形態の蓄光式標識では、両面テープの粘着面が有機系の材料であるシリコーン系樹脂を含む粘着層で構成され、同じく蓄光層の蓄光材料として母材が有機系のシリコーン系樹脂であるものとしているので、両面テープの粘着層と蓄光層の蓄光材料とは相性がよく、その結果、蓄光層の剥がれ落ちのリスクが低減することとなる。
<実施形態5 効果 主に請求項7に対応>
【0061】
上記したように、本実施形態の蓄光式標識では、蓄光層の剥がれ落ちをより少なく抑えることができる。
【符号の説明】
【0062】
0100 蓄光式標識
0110 基板
0120 枠
0130 蓄光層
0140 両面テープ