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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093320
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】鍵盤楽器の鍵盤装置
(51)【国際特許分類】
   G10B 3/10 20060101AFI20240702BHJP
   G10B 3/12 20060101ALI20240702BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G10B3/10
G10B3/12 130
G10H1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209622
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179453
【弁理士】
【氏名又は名称】會田 悠介
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】石田 杏
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 勝彦
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478BD01
5D478BD05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生産性やメンテナンス性を向上させながら、グランドピアノのアクションと同様の動作を実現し、演奏時にグランドピアノと同等のタッチ感や演奏性を得る鍵盤楽器の鍵盤装置を提供する。
【解決手段】鍵盤装置1は、揺動自在の鍵2と、鍵2の押鍵に連動して動作するアクションユニット6と、ハンマーサポート4のハンマー支軸33を介して回動自在に支持されるとともに、ハンマー突出部46を介してアクションユニット6に載置されたハンマー5と、を備えている。アクションユニット6は、鍵の後端部に固定されたホルダ51と、これに回動自在に取り付けられたレペティションレバー52及びジャック53と、ハンマー突出部46からジャック53のハンマー突上げ部83を離脱させるジャック係止手段と、ジャック53のハンマー突上げ部83を、離脱前の位置に戻すジャック戻し手段55と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に所定長さ延び、長さ方向の中央付近を支点として揺動自在の鍵と、
この鍵の後部に設けられ、当該鍵の押鍵に連動して動作するアクションユニットと、
前記鍵の後側に配置されたハンマーサポートと、
前後方向に所定長さ延び、後端部において前記ハンマーサポートの左右方向に延びるハンマー支軸を介して回動自在に支持されるとともに、当該ハンマー支軸の直ぐ前側に下方に突出するように設けられた突出部を介して前記アクションユニットに載置され、前記鍵の押鍵に伴い、前記アクションユニットによって上方に駆動されるハンマーと、
を備え、
前記アクションユニットは、
前記鍵の後端部に固定されたホルダと、
上下方向に貫通しかつ前後方向に延びるジャック案内孔を有し、前記ホルダに回動自在に取り付けられ、上面の前記ジャック案内孔の付近に前記突出部を載置するとともに、前記鍵の押鍵に伴って上昇し、前記突出部を介して、前記ハンマーを押し上げ、上方に回動させるレペティションレバーと、
上下方向に延びるハンマー突上げ部を有し、前記ホルダに回動自在に取り付けられ、前記ハンマー突上げ部の上端部が前記レペティションレバーの前記ジャック案内孔に下方から挿入しかつ前後方向に移動自在に係合するとともに、前記鍵の押鍵に伴う前記レペティションレバーの上昇途中から、前記ハンマー突上げ部によって、前記突出部を介して前記ハンマーを突き上げ、上方に回動させるジャックと、
前記ジャックによる前記ハンマーの突き上げ途中に、前記ジャックを係止することにより、前記突出部から当該ジャックの前記ハンマー突上げ部を離脱させるジャック係止手段と、
押鍵された前記鍵が離鍵状態に戻る途中に、前記突出部から離脱した前記ジャックの前記ハンマー突上げ部を、離脱前の位置に戻すジャック戻し手段と、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器の鍵盤装置。
【請求項2】
前記ホルダは、合成樹脂から成る成形品で構成されており、
前記鍵に固定される鍵取付部と、
この鍵取付部の後方の所定位置に、側方に突出した状態に設けられ、前記レペティションレバー及び前記ジャックをそれぞれ回動自在に支持するレペティション支軸及びジャック支軸と、
を備えており、
前記レペティションレバーは、合成樹脂から成る成形品で構成され、前記レペティション支軸に回動自在に嵌合するレペティション嵌合孔を有しており、
前記ジャックは、合成樹脂から成る成形品で構成され、前記ジャック支軸に回動自在に嵌合するジャック嵌合孔を有していることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置。
【請求項3】
前記ジャックは、前記ジャック嵌合孔付近から後方に延びる後アームを有しており、
前記ジャック係止手段は、前記ハンマーサポートに設けられ、押鍵時に、前記後アームが下方から当接することにより、前記ジャックを係止するジャックストッパを有していることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置。
【請求項4】
前記ジャックは、前記ジャック嵌合孔付近から前方に延びる前アームを有しており、
前記ジャック戻し手段は、前記前アームを下方に付勢するばねで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置。
【請求項5】
前記ハンマーサポートは、押鍵時に前記ハンマーが上方に回動したときに当接し、それ以上の回動を阻止するためのハンマーストッパを有しており、
前記ハンマーは、その底面の所定位置から下方に突出するバックチェック係合部を有しており、
前記ホルダは、押鍵時に上方に回動しかつ前記ハンマーストッパに当接した前記ハンマーが、当該ハンマーストッパから跳ね返り、下方に回動したときに、前記バックチェック係合部が係合することにより、前記ハンマーを停止させるバックチェックを有していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の鍵盤楽器の鍵盤装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ピアノなどの鍵盤楽器の鍵盤装置に関し、特にグランドピアノと同様のアクションを実現する鍵盤楽器の鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アコースティックピアノであるグランドピアノでは、鍵の押鍵に伴って作動し、ハンマーを上方に回動させることにより、打弦を行わせるアクションが設けられている。このようなアクションの一例が、例えば本出願人がすでに出願した特許文献1に開示されている。このアクションは、鍵ごとに設けられており、回動自在に支持されかつ鍵の後部に載置されたウィッペンと、このウィッペンに回動自在に取り付けられたレペティションレバー及びジャックと、これらを所定方向に付勢するレペティションスプリングと、レペティションレバー及びジャックの回動をそれぞれ規制するレペティションスクリュー及びレギュレーティングボタンなどを備えている。
【0003】
上記のレペティションレバーには、上下方向に貫通するジャック案内孔が設けられており、このジャック案内孔の付近に、シャンクローラを介してハンマーが載置されている。また、上記のジャックは、側面形状がL字状に形成されており、上下方向に延びるハンマー突上げ部の先端部が、レペティションレバーのジャック案内孔に、下方から挿入されかつ前後方向に移動自在に係合するとともに、シャンクローラに対向している。
【0004】
このように構成されたアクションを備えたグランドピアノでは、鍵が押鍵されると、その鍵の後部で突き上げられたウィッペンが上方に回動し、これに伴い、レペティションレバー及びジャックも上方に移動する。これに伴いまず、レペティションレバーがシャンクローラを摺動させながら、これを介してハンマーを押し上げ、上方に回動させる。次いで、レペティションレバーがレペティションスクリューに当接することで係止されることにより、ジャックがシャンクローラを介してハンマーを突き上げる。その後、ハンマーが、上方に張られた弦を打弦する直前まで回動した時点で、ジャックが、レギュレーティングボタンに係合することによって、シャンクローラから抜ける(脱進)。このようなジャックの脱進により、ハンマーは、アクション及び鍵との連結を解かれ、自由回動の状態で、弦を打弦する。なお、ジャックの脱進の際に、鍵のタッチ重さ(静的荷重)の変化、具体的には、タッチ重さの急激な増加及びその直後の急激な減少によるクリック感が生じることにより、演奏者がピアノを弾くときのタッチ感において、いわゆるレットオフ感が得られる。
【0005】
その後、鍵が離鍵され、鍵盤深さの1/3程度まで戻されたタイミングで、レペティションレバーが作動し始め、レペティションスプリングのばね力で所定方向に復帰回動することによって、シャンクローラを摺動させながら押し上げる。これにより、ジャックが、レペティションスプリングのばね力で所定方向に復帰回動し、元の位置に戻ることによって、鍵が離鍵状態の位置まで完全に戻らなくても、次の打弦が行えるようになっている。
【0006】
一方、電子ピアノでは、鍵の押鍵時に、ハンマーを回動させるとともに、グランドピアノに近似したレットオフ感が得られる鍵盤装置として、例えば本出願人がすでに出願した特許文献2に開示したものが知られている。この電子ピアノの鍵盤装置は、前後方向に延び、長さ方向の中央付近に設けられたバランスピンを中心として揺動自在の鍵と、鍵の後側に設けられたアクションシャーシと、このアクションシャーシに回動自在に支持されかつ鍵の後端部に載置されたハンマーと、アクションシャーシに取り付けられ、ハンマーを介して、押鍵時の鍵にレットオフ感を付与するためのレットオフ部品などを備えている。
【0007】
この電子ピアノでは、鍵が押鍵されると、鍵の後端部が上昇し、それにより、ハンマーが押し上げられることで上方に回動する。このハンマーの回動途中に、ハンマーの係合部がレットオフ部品に一時的に係合する。この場合、ハンマーがレットオフ部品を圧縮するように係合することで、その反作用として、レットオフ部品からの反発力がハンマーに作用し、その際の回動抵抗によって、鍵のタッチ重さが急激に増加する。そして、ハンマーがさらに回動し、レットオフ部品に対する係合が解除されると、上記の回動抵抗が消失することで、鍵のタッチ重さが急激に減少する。以上のような鍵のタッチ重さの急激な増減により、鍵のタッチ感に、グランドピアノに近似したレットオフ感が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-167572号公報
【特許文献2】特開2010-262129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、グランドピアノでは、アクションやハンマーを構成する部品数が多く、また、回動する部品(以下、本欄において「回動部品」という)と、それを支持する部品(以下、本欄において「支持部品」という)とを、ピンを介して連結している。具体的には、支持部品において、回動部品を支持する部分が二股状に形成され、その内側に支持部品がセットされた状態で、両部品の連結孔にピンを挿入することで、回動部品が支持部品に回動自在に連結される。このように、グランドピアノでは、アクションやハンマーの構成部品が多く、しかも、製造時におけるそれらの組付け作業が煩雑であり、手間がかかってしまう。また、グランドピアノでは、アクションやハンマーを適正に作動させるために、アクションの各部品やハンマーなどの回動範囲を調整する必要があり、その調整作業が煩雑である。
【0010】
一方、電子ピアノでは、押鍵された鍵の後端部によって、ハンマーを上方に直接押上げて回動させるという、比較的単純な構造であるため、押鍵時における鍵の前端部の押下げ量に対する荷重変化や、鍵を押し切ったときの止まり感などのタッチ感が、グランドピアノのそれらと微妙に異なるものになっている。また、上記の電子ピアノでは、グランドピアノのアクションにおけるジャックの脱進によるレットオフ感を得るために、レットオフ部品を用いているが、グランドピアノのアクションのような機構でハンマーを駆動するものではない。そのため、この電子ピアノでは、弱打から強打の手応え感の変化や、連打、スタッカート、トリルなどのコントロール性が、グランドピアノの鍵盤とは異なっている。したがって、上記の電子ピアノでは、グランドピアノの性能の限界域で行うような高度な演奏時のコントロール性が十分に再現できているとは言い難く、改善の余地がある。
【0011】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、グランドピアノのアクションに比べて部品点数を低減するとともに調整箇所を削減することで、生産性やメンテナンス性を向上させながら、グランドピアノのアクションと同様の動作を実現することができ、それにより、演奏時にグランドピアノと同等のタッチ感や演奏性を得ることができる鍵盤楽器の鍵盤装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、前後方向に所定長さ延び、長さ方向の中央付近を支点として揺動自在の鍵と、この鍵の後部に設けられ、鍵の押鍵に連動して動作するアクションユニットと、鍵の後側に配置されたハンマーサポートと、前後方向に所定長さ延び、後端部においてハンマーサポートの左右方向に延びるハンマー支軸を介して回動自在に支持されるとともに、ハンマー支軸の直ぐ前側に下方に突出するように設けられた突出部を介してアクションユニットに載置され、鍵の押鍵に伴い、アクションユニットによって上方に駆動されるハンマーと、を備え、アクションユニットは、鍵の後端部に固定されたホルダと、上下方向に貫通しかつ前後方向に延びるジャック案内孔を有し、ホルダに回動自在に取り付けられ、上面のジャック案内孔の付近に突出部を載置するとともに、鍵の押鍵に伴って上昇し、突出部を介して、ハンマーを押し上げ、上方に回動させるレペティションレバーと、上下方向に延びるハンマー突上げ部を有し、ホルダに回動自在に取り付けられ、ハンマー突上げ部の上端部がレペティションレバーのジャック案内孔に下方から挿入しかつ前後方向に移動自在に係合するとともに、鍵の押鍵に伴うレペティションレバーの上昇途中から、ハンマー突上げ部によって、突出部を介してハンマーを突き上げ、上方に回動させるジャックと、ジャックによるハンマーの突き上げ途中に、ジャックを係止することにより、突出部からジャックのハンマー突上げ部を離脱させるジャック係止手段と、押鍵された鍵が離鍵状態に戻る途中に、突出部から離脱したジャックのハンマー突上げ部を、離脱前の位置に戻すジャック戻し手段と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、鍵の後部にアクションユニットが設けられるとともに、ハンマーサポートのハンマー支軸に後端部が回動自在に支持されたハンマーが、ハンマー支軸の直ぐ前側の突出部を介してアクションユニットに載置されている。このアクションユニットは、鍵の後端部に固定されたホルダと、このホルダに回動自在に取り付けられたレペティションレバー及びジャックとを備えている。レペティションレバーのジャック案内孔には、ジャックのハンマー突上げ部が下方から挿入しかつ前後方向に移動自在に係合するとともに、レペティションレバーの上面には、ジャック案内孔の付近に、ハンマーが突出部を介して載置されている。
【0014】
押鍵時に鍵の前端部が押し下げられると、鍵の後端部が上方に移動し、それに伴い、アクションユニットのレペティションレバーが上昇し、突出部を介して、ハンマーを押し上げ、上方に回動させる。また、このレペティションレバーの上昇途中から、ジャックのハンマー突上げ部が、突出部を介してハンマーを突き上げ、さらに上方に回動させる。そして、ジャックによるハンマーの突き上げ途中に、ジャック係止手段によってジャックを係止することにより、ハンマーの突出部からジャックのハンマー突上げ部を離脱させる。つまり、ジャックをハンマーから脱進させる。このようなジャックの脱進により、ハンマーは、アクションユニット及び鍵との連結を解かれ、自由回動の状態で、上方に回動する。このジャックの脱進の際には、鍵のタッチ重さの急激な増減によるクリック感が生じ、それにより、押鍵する演奏者のタッチ感において、レットオフ感が得られる。
【0015】
そして、ジャック戻し手段により、押鍵された鍵が離鍵状態に戻る途中に、ハンマーの突出部から離脱したジャックのハンマー突上げ部を、離脱前の位置に戻す。これにより、ジャックのハンマー突上げ部がハンマーの突出部の下側に回り込み、その結果、鍵が離鍵状態の位置まで完全に戻らなくても、アクションユニットによるハンマーの駆動が可能になる。
【0016】
以上のように、上記構成の鍵、アクションユニット及びハンマーを備えた鍵盤装置により、グランドピアノと同様の動作を実現することができ、それにより、演奏時にグランドピアノと同等のタッチ感や演奏性を得ることができる。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置において、ホルダは、合成樹脂から成る成形品で構成されており、鍵に固定される鍵取付部と、この鍵取付部の後方の所定位置に、側方に突出した状態に設けられ、レペティションレバー及びジャックをそれぞれ回動自在に支持するレペティション支軸及びジャック支軸と、を備えており、レペティションレバーは、合成樹脂から成る成形品で構成され、レペティション支軸に回動自在に嵌合するレペティション嵌合孔を有しており、ジャックは、合成樹脂から成る成形品で構成され、ジャック支軸に回動自在に嵌合するジャック嵌合孔を有していることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、アクションユニットを構成するホルダ、レペティションレバー及びジャックが、合成樹脂から成る成形品で構成されている。ホルダは、鍵取付部を介して鍵に固定され、その鍵取付部の後方の所定位置に、側方にそれぞれ突出するレペティション支軸及びジャック支軸を有している。また、レペティションレバー及びジャックはそれぞれ、レペティションレバー嵌合孔及びジャック嵌合孔を有しており、これらの嵌合孔を、ホルダのレペティション支軸及びジャック支軸に嵌合させるだけで、レペティションレバー及びジャックを、ホルダに回動自在の状態で簡単に取り付けることができる。
【0019】
このように、本発明の鍵盤装置におけるアクションユニットでは、グランドピアノのアクションに比べて、部品点数を低減できるとともに調整箇所を削減でき、それにより、生産性やメンテナンス性を向上させることができる。
【0020】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置において、ジャックは、ジャック嵌合孔付近から後方に延びる後アームを有しており、ジャック係止手段は、ハンマーサポートに設けられ、押鍵時に、後アームが下方から当接することにより、ジャックを係止するジャックストッパを有していることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、ジャックが、ジャック嵌合孔付近から後方に延びる後アームを有しており、その後アームが、ハンマーサポートのジャックストッパに下方から当接することにより、ジャックが係止される。このように、ジャックを係止するジャック係止手段としてのジャックストッパを、ハンマーサポートに設けることにより、ハンマーの突出部からジャックのハンマー突上げ部を離脱させるためのジャック係止手段を、比較的容易に構成することができる。
【0022】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置において、ジャックは、ジャック嵌合孔付近から前方に延びる前アームを有しており、ジャック戻し手段は、前アームを下方に付勢するばねで構成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、ジャックが、ジャック嵌合孔付近から前方に延びる前アームを有しており、その前アームが、ばねで下方に付勢されることにより、ジャックのハンマー突上げ部が、離脱前の位置に戻される。このように、ジャックのハンマー突上げ部を離脱前の位置に戻すジャック戻し手段を、ばねで構成することにより、ジャック戻し手段を、比較的容易に構成することができる。
【0024】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵盤装置において、ハンマーサポートは、押鍵時にハンマーが上方に回動したときに当接し、それ以上の回動を阻止するためのハンマーストッパを有しており、ハンマーは、その底面の所定位置から下方に突出するバックチェック係合部を有しており、ホルダは、押鍵時に上方に回動しかつハンマーストッパに当接したハンマーが、ハンマーストッパから跳ね返り、下方に回動したときに、バックチェック係合部が係合することにより、ハンマーを停止させるバックチェックを有していることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、押鍵時に上方に回動しかつハンマーストッパに当接したハンマーは、そのハンマーストッパから跳ね返り、下方に回動する。この場合、ハンマーの底面の所定位置から下方に突出するバックチェック係合部が、ホルダのバックチェックに係合する。この場合、ハンマーは、バックチェック係合部を介してバックチェックに係合することで、それ以上の下方への回動が阻止されて停止し、ハンマーのリバウンドや振動の発生を防止することができる。またこの場合、ハンマーの上記の跳ね返りによる荷重が鍵に伝わる。その結果、押鍵した演奏者は、鍵を押し切ったときの鍵の止まり感を、明確に感じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態による鍵盤装置を適用した電子ピアノの鍵盤装置の一部を示しており、(a)は斜視図、(b)は右側面図である。
図2】(a)は、鍵に組み付けられたアクションユニット及びその上側に載置されたハンマーを示す斜視図、(b)は、鍵、アクションユニット及びハンマーを分解して示す斜視図である。
図3】ハンマーサポートを示す斜視図であり、(a)は外観図、(b)は一部を切り欠いた状態で示す図である。
図4】ハンマーサポートを示す図であり、(a)は正面図、(b)はA-A線に沿う断面図である。
図5】ハンマー及びアクションユニットを拡大して示す斜視図であり、(a)はアクションユニットの各部品を組み合わせた状態、(b)はアクションユニットの各部品を分解した状態を示す。
図6】ハンマーを示す右側面図である。
図7】ホルダを示す右側面図である。
図8】レペティションレバーを示す右側面図である。
図9】ジャックを示す右側面図である。
図10】押鍵時におけるアクションユニット及びハンマーの動作を順に説明する説明図であり、(a)は離鍵状態を示し、(b)は押鍵時にレペティションレバーがレペティションストッパに当接した状態を示す。
図11図10に続く説明図であり、(a)はジャックがジャックストッパに当接した状態、(b)はジャックがハンマー突出部から抜けた状態を示す。
図12図11に続く説明図であり、(a)はハンマーがハンマーストッパに当接した状態、(b)はハンマーがハンマーストッパから跳ね返り、バックチェックに当接した状態を示す。
図13図12に続く説明図であり、(a)は押し下げられた鍵が若干戻されることで、ジャックがハンマー突出部の下方に回り込んだ状態、(b)は鍵が元の離鍵状態に戻った状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による鍵盤装置を適用した電子ピアノの鍵盤装置の一部を、離鍵状態において示しており、(a)は斜視図、(b)は右側面図である。
【0028】
同図に示すように、鍵盤装置1は、電子ピアノの左右方向に並んだ多数の鍵2(図1では白鍵を1つのみ図示)と、これらの鍵2を支持する鍵盤シャーシ3と、この鍵盤シャーシ3の後端部に連結されたハンマーサポート4と、鍵2ごとに設けられ、ハンマーサポート4に回動自在に支持されたハンマー5と、鍵2の後端部に設けられ、押鍵に伴い、ハンマー5を上方に駆動するアクションユニット6と、鍵2の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ7などを備えている。
【0029】
図1に示すように、鍵盤シャーシ3は、いずれも左右方向に延び、互いに前後方向(図1(b)の左右方向)に所定間隔を隔てて配置された前レール11、中レール12及び後レール13から成る3本の支持レール10と、前後方向に延び、互いに左右方向に所定間隔を隔てて配置された複数(例えば5本)の補強用リブ14(図1では1本のみ図示)とを、井桁状に組み立てたものである。これらの支持レール10及びリブ14は、例えばプレスによる打ち抜き及び折曲げ加工によって所定の形状に形成された鉄板で構成され、ねじ止めによって互いに連結されている。
【0030】
前レール11は、水平な天板部11aと、この天板部11aの前端部から下方に直角に屈曲する前板部11bと、この前板部11bの下端部から後方に直角に屈曲する底板部11cとを有している。天板部11aの下面には、筬前15がねじ止めなどによって固定されている。筬前15は、合成樹脂から成る肉厚の板状に形成され、前レール11の全体にわたって左右方向に延びている。この筬前15には、白鍵2及び黒鍵(図示せず)に対応する前後の位置に、多数のフロントピン16が、前レール11の天板部11aを貫通するとともに左右方向に並んだ状態で立設されている。
【0031】
中レール12は、水平な筬中載置部12aを有しており、その前端部及び後端部が上方に直角に屈曲されている。上記の筬中載置部12aには、筬中17が載置された状態で、ねじ止めなどによって固定されている。筬中17は、合成樹脂から成る肉厚の板状に形成され、中レール12の全体にわたって左右方向に延びている。この筬中17には、白鍵2及び黒鍵に対応する前後の位置に、多数のバランスピン18が、左右方向に並んだ状態で立設されている。
【0032】
後レール13は、上方に開放し、ハンマーサポート4の下部を収容した状態でこれに係合する収容凹部13aと、この収容凹部13aの前板部の上端部から直角に屈曲して前方に水平に延び、左右方向に延びるクッション19が載置された状態で取り付けられたクッション載置部13bと、このクッション載置部13bの前端部から下方に一段下がり、さらに前方に水平に延びる連結部13cとを有している。収容凹部13aの前板部には、前後方向に貫通する複数の取付孔が形成されており、これらの取付孔を介して、ハンマーサポート4の下端部が後レール13にねじ止めされている。また、収容凹部13a及び連結部13cは、各リブ14の後端部にねじ止めされている。
【0033】
図2(a)は、鍵2に組み付けられたアクションユニット6及びその上側に載置されたハンマー5を示しており、同図(b)は、鍵2、アクションユニット6及びハンマー5を分解して示している。同図に示すように、鍵2は、前後方向に所定長さ延びるとともに、矩形状の横断面を有する木製の鍵本体21と、その前半部の上面及び前面に接着された合成樹脂製の鍵カバー22とを有している。鍵本体21の長さ方向の中央付近には、上下方向に貫通するバランスピン孔23が形成されており、鍵2は、このバランスピン孔23を介して、筬中17に立設されたバランスピン18に揺動自在に支持されている。
【0034】
上記のバランスピン孔23は、鍵本体21の下面付近にほぼ円形の孔が形成されるとともに、その孔に連なる上部全体が、鍵本体21の長さ方向に延びる長孔状に形成されている。また、バランスピン孔23の左右の内面には、鍵2が揺動する際に、バランスピン18に対して円滑に摺動させるために、フェルト23aが設けられている。なお、鍵本体21の上面には、バランスピン孔23の後側に、クッション20が接着されており、このクッション20により、メンテナンス時などに、ハンマー5の前端部が鍵2に直接当たることが防止される。
【0035】
また、鍵本体21の前部の所定位置には、下方に開放するフロントピン孔24(図1(b)参照)が形成されており、このフロントピン孔24が、筬前15に立設されたフロントピン16に係合することによって、鍵2が揺動する際の左右方向のぶれが防止される。
【0036】
図3及び図4は、ハンマーサポート4を示している。両図に示すように、ハンマーサポート4は、合成樹脂から成る成形品で構成されており、例えば1オクターブ分の複数の成形品が互いに左右方向に連結された状態で、鍵盤シャーシ3の後レール13にねじ止めされている。ハンマーサポート4は、後レール13付近から直立するハンマー支持部31と、その上端部から前方に斜め上がりに延びるスイッチ取付部32などで構成されている。ハンマー支持部31の上端部には、各ハンマー5を回動自在に支持するためのハンマー支軸33が設けられている。
【0037】
また、ハンマーサポート4は、互いに左右方向に所定間隔を隔てた状態で、隣り合うハンマー5を仕切る複数の仕切壁34を有しており、隣り合う仕切壁34、34の間に、前記ハンマー支軸33が左右方向に延びている。このハンマー支軸33は、図4(b)において拡大して示すように、ハンマー支軸33の軸心を中心とする円の前後2箇所を切り欠いた、いわゆる小判形の断面形状を有している。
【0038】
具体的には、このハンマー支軸33の外周面は、上下一対の曲面部33a、33aと、これらの曲面部33a、33aの間に延びる前後一対の平面部33b、33bとで構成されている。このように構成されたハンマー支軸33では、上下の曲面部33a、33aが、長さL1の直径を有する円弧状に設定される一方、前後の平面部33b、33b間が、上記の長さL1よりも短い長さL2に設定されている。
【0039】
また、ハンマーサポート4のスイッチ取付部32には、図1に示すように、鍵スイッチ7が取り付けられている。この鍵スイッチ7は、プリント基板からなるスイッチ基板7aと、このスイッチ基板7aのハンマー5側に、鍵2ごとに取り付けられたゴムスイッチから成るスイッチ本体7bとで構成されている。
【0040】
また、図3及び図4に示すように、ハンマーサポート4の背面側には、ハンマー支軸33の後方斜め下に、アクションユニット6の後述するレペティションレバー52が押鍵時に当接し、これを係止するレペティションストッパ35が設けられている。さらに、ハンマーサポート4の背面側には、レペティションストッパ35の下方に、アクションユニット6の後述するジャック53が押鍵時に当接し、これを係止するジャックストッパ36(ジャック係止手段)が設けられている。なお、ジャックストッパ36の下面には、左右方向に延びるクッション37が取り付けられている。
【0041】
また、図1に示すように、ハンマーサポート4の前端上部には、ハンマー5が上方に回動した際に、そのハンマー5が下方から当接し、それ以上の回動を阻止するハンマーストッパ38が設けられている。
【0042】
図5は、ハンマー5及びアクションユニット6を示しており、(a)はアクションユニットの各部品を組み合わせた状態、(b)はアクションユニットの各部品を分解した状態を示している。また、図6は、ハンマー5を示す右側面図である。両図に示すように、ハンマー5は、前後方向に延びるアーム状のハンマー本体41と、その左右の側面の前端部に取り付けられた2つの錘板42、42とを有している。ハンマー本体41は、合成樹脂で構成され、錘板42は、比重が比較的大きな鉄などの金属材料で構成されている。
【0043】
ハンマー本体41の後端部には、ハンマーサポート4のハンマー支軸33に係合する係合部43が設けられている。この係合部43には、左右方向に貫通しかつ側面形状がC字状に形成された円弧状の軸穴44が形成されており、その開口部が外方に向かって広がるように形成されている。軸穴44は、ハンマー支軸33の上下の曲面部33a、33aによる直径(長さL1)よりも若干大きな直径を有するとともに、開口部の幅L3が、ハンマー支軸33の前後の平面部33b、33b間の長さL2よりも若干大きくかつ上記の長さL1よりも小さくなっている。そして、ハンマー5は、軸穴44の開口部を介して、ハンマーサポート4のハンマー支軸33に対して着脱可能になっており、軸穴44がハンマー支軸33に嵌合することによって、ハンマーサポート4に回動自在に支持されている。
【0044】
また、ハンマー5の後部には、軸穴44のすぐ前側の上下にそれぞれ、スイッチ押圧部45及びハンマー突出部46(突出部)が設けられている。スイッチ押圧部45は、上面が平らに形成されており、ハンマー5が上方に回動したときに、鍵スイッチ7のスイッチ本体7bを押圧し、それにより、ハンマー5に対応する鍵2の押鍵情報が検出される。一方、ハンマー突出部46は、下方に突出するとともに、下面が円弧状に形成されており、離鍵状態において、アクションユニット6の後述するレペティションレバー52のハンマー載置部74に載置される。
【0045】
さらに、ハンマー5の前部の所定位置には、下方に突出し、アクションユニット6の後述するバックチェック62に係合可能なバックチェック係合部47が設けられている。図6に示すように、バックチェック係合部47は、側面形状が縦長に形成され、前面が平坦に形成される一方、背面が緩やかな曲面になっている。
【0046】
次に、アクションユニット6について説明する。図5に示すように、アクションユニット6は、鍵2の後端部に固定されたホルダ51と、これに回動自在に取り付けられたレペティションレバー52及びジャック53と、これらをそれぞれ所定方向に回動するように付勢し、いずれもコイルばねから成るレペティションスプリング54及びジャックスプリング55(ジャック戻し手段)とを備えている。
【0047】
図7は、ホルダ51の右側面図を示している。同図及び図5に示すように、ホルダ51は、合成樹脂から成り、前後方向に延びるように形成された所定形状の成形品で構成されている。このホルダ51は、前部に設けられ、鍵2の後端部に固定される鍵取付部61と、その上方に設けられたバックチェック62と、前後方向の中央付近の上端部に設けられ、レペティションレバー52を回動自在に支持するレペティション支軸63と、後端部に設けられ、ジャック53を回動自在に支持するジャック支軸64とを備えている。
【0048】
鍵取付部61は、上壁61a、後壁61b及び下壁61cによって、側面形状がコ字状に形成され、これらの左端部が左側壁61dで連なるように形成されている。したがって、ホルダ51が鍵2の後端部に取り付けられた際には、上壁61a、後壁61b、下壁61c及び左側壁61dが、鍵2の後端部における上面、後面、下面及び左側面に接した状態で、接着により強固に固定される。
【0049】
バックチェック62は、上下方向に所定長さを有するとともに、前方斜め上に向いた状態で、緩やかな円弧状に形成されている。
【0050】
レペティション支軸63及びジャック支軸64はいずれも、右方に所定長さ突出し、所定の径を有する円筒状に形成されている。また、レペティション支軸63は、ジャック支軸64よりも高い所定位置に形成されている。
【0051】
また、ホルダ51には、バックチェック62とレペティション支軸63の間において、レペティション支軸63の前方の所定位置に、レペティションスプリング54の上端部を係止するレペティションスプリング係止部65が設けられている。さらに、ホルダ51には、レペティション支軸63とジャック支軸64の間において、ジャック支軸64の前方の所定位置に、ジャックスプリング55の上端部を係止するジャックスプリング係止部66が設けられている。また、ホルダ51の下面後部には、下方に若干突出する凸部67が設けられており、ホルダ51は、離鍵状態において、凸部67を介して後レール13上のクッション19に載置される。
【0052】
図8は、レペティションレバー52の右側面図を示している。同図及び図5に示すように、レペティションレバー52は、合成樹脂から成り、前後方向に延びるように形成された所定形状の成形品で構成されている。このレペティションレバー52は、左右方向に貫通し、ホルダ51のレペティション支軸63に回動自在に嵌合する嵌合孔71(レペティション嵌合孔)と、この嵌合孔71付近から前方に延びる前アーム72と、嵌合孔71付近から後方に延びるように形成され、ハンマー5が載置されるとともにジャック53が係合するハンマー載置アーム73とを備えている。
【0053】
レペティションレバー52のハンマー載置アーム73は、側面形状が嵌合孔71から後方斜め上に向かって所定長さ延びるハンマー載置部74と、このハンマー載置部74の後端部から後方斜め下に向かって延びかつさらに後方に延びる延設部75とを有している。また、ハンマー載置アーム73には、上下方向に貫通し、ハンマー載置部74と延設部75にわたって前後方向に延びるジャック案内孔73aが形成されている。なお、延設部75の後端部は、上方に若干突出するように形成され、その上面にクッション76が取り付けられている。
【0054】
図9は、ジャック53の右側面図を示している。同図及び図5に示すように、ジャック53は、合成樹脂から成り、所定形状の成形品で構成されている。このジャック53は、左右方向に貫通し、ホルダ51のジャック支軸64に回動自在に嵌合する嵌合孔81(ジャック嵌合孔)と、この嵌合孔81付近から前方に延びる前アーム82と、嵌合孔81付近から上方に所定長さ延びるハンマー突上げ部83と、嵌合孔81付近から後方に延びる後アーム84とを備えている。
【0055】
ハンマー突上げ部83は、前後方向にほぼ水平に延びる前アーム82及び後アーム84に対し、前方に所定角度、傾斜した状態で、斜め上前方に延びている。また、ハンマー突上げ部83の上端部は、それより下側部分よりも、前後方向の幅が小さく形成されている。また、後アーム84は、後端部が上方に若干突出するように形成されている。
【0056】
また、ジャック53では、前アーム82とハンマー突上げ部83の間、ハンマー突上げ部83と後アーム84の間、及び後アーム84と前アーム82の間にそれぞれ、板状の補強リブ85a、85b及び85cが設けられている。これらの補強リブ85a~85cなどにより、ジャック53の強度が高められている。
【0057】
以上のように形成されたアクションユニット6では、図5(a)に示すように、ジャック53のハンマー突上げ部83が、レペティションレバー52のジャック案内孔73aに下方から挿入した状態で係合している。また、同図に示すように、レペティションレバー52は、その前アーム72がレペティションスプリング54によって下方に付勢される一方、ジャック53は、その前アーム82がジャックスプリング55によって下方に付勢されている。これにより、レペティションレバー52及びジャック53はそれぞれ、レペティション支軸63及びジャック支軸64を中心として、図5(a)の反時計方向に付勢されている。なお、アクションユニット6のホルダ51には、レペティションレバー52の前アーム72の下側、及びジャック53の前アーム82の下側に、薄板状のクッション91及び92が取り付けられている。
【0058】
次に、図10図13を参照しながら、鍵2の押鍵時におけるアクションユニット6及びハンマー5の動作について説明する。
【0059】
図10(a)は、離鍵状態の鍵盤装置1を示している。この離鍵状態では、ハンマー5が、ハンマー突出部46を介して、レペティションレバー52のハンマー載置部74に載置され、ジャック53のハンマー突上げ部83の上端部が、ハンマー突出部46に隙間を存して対向している。また、離鍵状態では、ハンマー5のバックチェック係合部47とホルダ51のバックチェック62との間に、隙間が設けられている。
【0060】
上記の離鍵状態から鍵2の前端部が押し下げられると、鍵2はバランスピン18を中心として前下りに揺動し、鍵2の後端部が上方に移動する。これに伴い、アクションユニット6も、鍵2の後端部と一体に上方に移動し、ハンマー5がハンマー突出部46を介してレペティションレバー52で押し上げられる。これにより、ハンマー5は、ハンマー支軸33を中心として、上方(図10の時計方向)に回動する。
【0061】
次いで、押鍵が進み、アクションユニット6が上方に移動すると、図10(b)に示すように、レペティションレバー52の後端部が、クッション76を介して、ハンマーサポート4のレペティションストッパ35に下方から当接する。これにより、レペティションレバー52は、その後端部が係止された状態になる一方、ジャック53は、ハンマー突上げ部83の上端部がハンマー突出部46に下方から当接する。これにより、ハンマー5は、ジャック53のハンマー突上げ部83によって突き上げられ、さらに上方に回動する。
【0062】
次いで、押鍵がさらに進み、アクションユニット6が上方にさらに移動すると、図11(a)に示すように、ジャック53の後アーム84の後端部が、ジャックストッパ36(クッション37)に下方から当接する。これにより、ジャック53は、後アーム84の後端部が係止された状態で、ジャック支軸64が上方に移動することにより、そのジャック支軸64を中心として、図11(a)の時計方向に回動する。その結果、図11(b)に示すように、ジャック53のハンマー突上げ部83は、その上端部が後方へ移動し、ハンマー5のハンマー突出部46から抜ける。このようなジャック53の脱進により、ハンマー5は、アクションユニット6及び鍵2との連結を解かれ、自由回動の状態で、さらに上方に回動する。
【0063】
なお、ジャック53の脱進の際には、鍵2のタッチ重さの急激な増減によるクリック感が生じ、それにより、押鍵する演奏者のタッチ感において、レットオフ感が得られる。
【0064】
図12(a)は、上方に回動したハンマー5が、ハンマーサポート4の前端上部のハンマーストッパ38に当接した状態を示している。この場合、ハンマー5のハンマー本体41の前部がハンマーストッパ38に下方から当接することにより、ハンマー5のそれ以上の回動が阻止される。またこの場合、ハンマー5のスイッチ押圧部45が鍵スイッチ7のスイッチ本体7bを下方から押圧し、鍵スイッチ7をONにすることによって、ハンマー5の回動速度等に応じた鍵2の押鍵情報が検出され、発音制御装置(図示せず)に出力される。そして、その発音制御装置により、押鍵情報に基づいて、電子ピアノのスピーカ(図示せず)からピアノ音が出力される。
【0065】
図12(b)は、ハンマー5がハンマーストッパ38に当接した直後の状態、具体的には、ハンマー5がハンマーストッパ38から跳ね返って下方(反時計方向)に回動し、ハンマー5のバックチェック係合部47が、ホルダ51のバックチェック62に当接した状態を示している。この場合、ハンマー5は、バックチェック62に当接することで、それ以上の下方への回動が阻止されて停止し、ハンマー5のリバウンドや振動の発生が防止される。またこの場合、ハンマー5の上記の跳ね返りによる荷重が鍵2に伝わる。その結果、演奏者は、鍵2を押し切ったときの鍵2の止まり感を、明確に感じることができる。
【0066】
図13(a)は、押し下げられた鍵2が離鍵によって、若干(例えば鍵盤深さの1/3)戻された状態を示している。前述した図12(b)に示す状態から離鍵されると、図13(a)に示すように、鍵2は、その前端部が上方に移動する一方、後端部が下方に移動し、それに伴い、アクションユニット6が鍵2の後端部と一体に下方に移動する。この場合、バックチェック62が後方斜め下に移動することで、ハンマー5は、バックチェック62による係合が解除され、停止状態から解放される。加えて、レペティションレバー52は、その前アーム72がレペティションスプリング54の付勢力によって押し下げられ、それにより、レペティション支軸63を中心として、図13(a)の反時計方向に回動する。同様に、ジャック53は、その前アーム82がジャックスプリング55の付勢力によって押し下げられ、それにより、ジャック支軸64を中心として、図13(a)の反時計方向に回動する。これにより、図13(a)に示すように、ジャック53のハンマー突上げ部83の上端部が、ハンマー5のハンマー突出部46の下側に回り込み、その結果、鍵2が離鍵状態の位置まで完全に戻らなくても、アクションユニット6によるハンマー5の駆動が可能になる。
【0067】
なお、鍵2が完全に離鍵されると、図13(b)に示すように、鍵2、ハンマー5、並びにアクションユニット6のレペティションレバー52及びジャック53がそれぞれ、元の離鍵状態の位置に戻る。
【0068】
以上詳述したように、本実施形態によれば、上述した鍵2、アクションユニット6及びハンマー5を備えた鍵盤装置1により、グランドピアノと同様の動作を実現することができ、それにより、演奏時にグランドピアノと同等のタッチ感や演奏性を得ることができる。また、鍵盤装置1のアクションユニット6では、グランドピアノのアクションに比べて部品点数を低減できるとともに調整箇所を削減することができるので、鍵盤装置1の生産性やメンテナンス性を向上させることができる。
【0069】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明を電子ピアノの鍵盤装置に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、鍵スイッチ7に代えて、グランドピアノと同様の弦をハンマー5の上方に張設し、それをハンマー5で打弦する鍵盤装置に適用することも可能である。
【0070】
また、実施形態で示した鍵盤装置1、鍵2、ハンマー5及びアクションユニット6の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 鍵盤装置
2 鍵
3 鍵盤シャーシ
4 ハンマーサポート
5 ハンマー
6 アクションユニット
18 バランスピン
33 ハンマー支軸
35 レペティションストッパ(ジャック係止手段)
36 ジャックストッパ
38 ハンマーストッパ
46 ハンマー突出部(突出部)
47 バックチェック係合部
51 ホルダ
52 レペティションレバー
53 ジャック
54 レペティションスプリング
55 ジャックスプリング(ジャック戻し手段)
61 鍵取付部
62 バックチェック
63 レペティション支軸
64 ジャック支軸
71 嵌合孔(レペティション嵌合孔)
73 ハンマー載置アーム
73a ジャック案内孔
81 嵌合孔(ジャック嵌合孔)
82 前アーム
83 ハンマー突上げ部
84 後アーム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13