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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093322
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】路面凍結推定システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240702BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240702BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G01C21/34
G08G1/0969
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209625
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】美濃島 祐佳
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129BB22
2F129BB49
2F129DD13
2F129DD14
2F129DD15
2F129DD20
2F129EE02
2F129EE29
2F129EE52
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE80
2F129FF12
2F129FF15
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF57
2F129FF62
2F129FF63
2F129FF64
2F129FF71
2F129FF74
2F129FF75
2F129GG17
2F129HH21
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181EE13
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181MC02
5H181MC19
(57)【要約】
【課題】路面の凍結を融雪剤の配布状況に基づいて推定する技術の提供。
【解決手段】融雪剤が配布された融雪剤配布地点を取得する融雪剤情報取得部と、対象期間の前記融雪剤配布地点における外気温を取得する気象情報取得部と、前記融雪剤配布地点における前記対象期間の外気温が判定基準より低い場合に、前記融雪剤配布地点を、路面が前記対象期間に凍結している可能性がある推定凍結地点であると見なす凍結推定部と、前記推定凍結地点を案内する案内部と、を備える路面凍結推定システムを構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融雪剤が配布された融雪剤配布地点を取得する融雪剤情報取得部と、
対象期間の前記融雪剤配布地点における外気温を取得する気象情報取得部と、
前記融雪剤配布地点における前記対象期間の外気温が判定基準より低い場合に、前記融雪剤配布地点を、路面が前記対象期間に凍結している可能性がある推定凍結地点であると見なす凍結推定部と、
前記推定凍結地点を案内する案内部と、
を備える路面凍結推定システム。
【請求項2】
前記凍結推定部は、
前記融雪剤配布地点における融雪剤の使用量の傾向を取得し、前記使用量が多い場合は少ない場合よりも、前記融雪剤配布地点である前記推定凍結地点の路面が前記対象期間に凍結している可能性が高いと推定する、
請求項1に記載の路面凍結推定システム。
【請求項3】
前記凍結推定部は、前記融雪剤配布地点において前記対象期間に融雪剤が減少している場合に変化がない場合よりも前記融雪剤配布地点である前記推定凍結地点の路面が凍結している可能性が低いと推定する、
請求項2に記載の路面凍結推定システム。
【請求項4】
前記凍結推定部は、
路面が凍結しやすい特徴として予め決められた特徴を有し、前記対象期間の外気温が前記判定基準より低い凍結候補地点、
路面が凍結しやすい特徴として予め決められた特徴を有し、前記対象期間の外気温が前記判定基準より低く且つ前記対象期間に降雨または降雪があった凍結候補地点、
前記対象期間の外気温が前記判定基準より低く且つ前記対象期間に降雨または降雪のあった前記融雪剤配布地点、
のうちの少なくともいずれかの地点を、前記推定凍結地点であると見なす、
請求項1に記載の路面凍結推定システム。
【請求項5】
前記凍結推定部は、前記推定凍結地点を前記対象期間に走行したプローブ車両の車速が閾値速度以下である場合に前記閾値速度以下でない場合よりも前記推定凍結地点の路面が凍結している可能性が高いと推定する、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の路面凍結推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面凍結推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外気温と凍結助長因子に基づいて路面の凍結を予測する手法について記載されている。凍結助長因子として、湿度を上昇させ易い地形、風が発生し易い地形、日陰が発生し易い地形等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-165677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外気温と凍結助長因子に基づいて凍結していると予測された地点であっても、実際には他の要因によって路面が凍結していない場合もあり得る。逆に、凍結助長因子がない地点であっても凍結する場合もあり得る。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、路面の凍結を融雪剤の配布状況に基づいて推定する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、路面凍結推定システムは、融雪剤が配布された融雪剤配布地点を取得する融雪剤情報取得部と、対象期間の融雪剤配布地点における外気温を取得する気象情報取得部と、融雪剤配布地点における対象期間の外気温が判定基準より低い場合に、融雪剤配布地点を、路面が前記対象期間に凍結している可能性がある推定凍結地点であると見なす凍結推定部と、推定凍結地点を案内する案内部と、を備える。
【0006】
この路面凍結推定システムでは、融雪剤配布地点で融雪剤が必要とされる可能性が非融雪剤配布地点よりも統計的に高い地点、すなわち、実際に路面凍結する可能性が高い地点であると見なす。この路面凍結推定システムは、融雪剤配布地点における対象期間の外気温が判定基準より低い場合に、融雪剤配布地点を路面が凍結している可能性がある推定凍結地点と見なす。そのため、路面の凍結を融雪剤の配布状況に基づいて推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】路面凍結推定システムの構成を示すブロック図。
図2図2Aは融雪剤使用傾向判定処理のフローチャート、図2Bは凍結候補地点判定処理のフローチャート。
図3】凍結推定処理のフローチャート。
図4】レベル調整処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)路面凍結推定システムの構成:
(2)路面凍結推定処理:
(3)他の実施形態:
【0009】
(1)路面凍結推定システムの構成:
図1は、本発明にかかる路面凍結推定システム10の構成を示すブロック図である。路面凍結推定システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30、通信部41を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムとして路面凍結推定プログラム21を実行可能である。通信部41は、他の装置と通信を行う回路を備えており、制御部20は、路面凍結推定プログラム21を実行することによって道路管理者端末300と、気象情報サーバ400と、地図情報サーバ500と、パトロール車両100と、車両200と、通信を行うことが可能である。
【0010】
道路管理者端末300は、道路の管理者が使用する端末であり、PCやタブレット、スマートフォン等で構成される。管理者は、冬期に、管理地域内の道路のうちのいくつかの地点に融雪剤を配布する。融雪剤が配布された地点を融雪剤配布地点と呼ぶ。融雪剤は、例えば道路の利用者から依頼があった地点や、過去に頻繁に凍結した地点、橋やトンネル出入口等、凍結しやすいとして予め知られている特徴を有する地点のうちのいくつかに配布される。融雪剤は道路の脇に載置される。道路管理者は、融雪剤を配布すると、融雪剤配布地点を示す位置、配布作業日、配布量(例えばNkgの袋をM個等(Nは正の数、Mは自然数))等の情報を、道路管理者端末300を使用して入力する。また、道路管理者は、任意のタイミングで各融雪剤配布地点を巡って融雪剤の残量を点検し、融雪剤が減っている場合には融雪剤を追加する。道路管理者は、配布作業後の融雪剤配布地点上の融雪剤の総量(例えば、1袋も残存しない状態で2袋配布した場合は2袋分の量、1袋残っている状態でもう1袋追加で配布した場合は2袋分の量)等の情報を、道路管理者端末300を使用して入力する。なお本実施形態では、例えば、2袋配布済みであるが点検の結果1袋も減っておらず1袋も追加しなかった場合は、配布量は0、配布作業後の総量として2袋分の量が入力され、配布作業日が更新される。また、本実施形態において、道路管理者は、後述するパトロール車両100のカメラ130の撮影範囲に融雪剤配布地点に載置されている融雪剤の袋が含まれるように、当該融雪剤配布地点を撮影する際にパトロール車両100が走行するリンク(撮影リンク)を指定する。当該リンクが双方向に進行可能な道路である場合、撮影のための進行方向がさらに指定されてもよい。道路管理者端末300は、入力されたこれらの情報を、路面凍結推定システム10に送信する。路面凍結推定システム10は、道路管理者端末300から送信された、融雪剤の配布に関する情報を、融雪剤情報30aとして記録媒体30に記録する。
【0011】
気象情報サーバ400は、気象情報を提供するサーバである。気象情報サーバ400が提供する気象情報は、時間帯毎、地域毎の降雨量、降雪量、外気温、湿度、風向き、風速等の予想値と実績値を含んでいる。また、気象情報は、時間帯毎、地域毎の積雪量の実測値を含んでいる。気象情報サーバ400は、クライアントとしての路面凍結推定システム10から任意の地域の気象情報を要求されると、要求された地域の気象情報を路面凍結推定システム10に送信する。
【0012】
地図情報サーバ500は、地図情報を提供するサーバである。地図情報には、車両が走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、および、道路やその周辺に存在する施設の位置等を示す施設データ等が含まれる。リンクデータには、リンク内に存在する橋やトンネル等の位置や名称が含まれている。地図情報サーバ500は、クライアントとしての路面凍結推定システム10から、指定された地域の地図情報を要求されると、路面凍結推定システム10に地図情報を送信する。
【0013】
パトロール車両100は、管理対象地域の道路を走行し、道路の画像を撮影して路面凍結推定システム10に送信する車両である。パトロール車両100は、このようなパトロール専用の車両であってもよいし、例えば決まったルートを定期的に走行するごみ収集車や路線バス等の車両がパトロール車両100としても機能するように利用されてもよい。
【0014】
パトロール車両100は、通信部110と測位部120とカメラ130と制御部150を備える。制御部150は、CPU,ROM,RAM,記録媒体を備え、記録媒体やROMに記録されたプログラムをCPUが実行することにより、通信部110、測位部120、カメラ130を制御する。通信部110は、他の装置と無線通信を行うための無線通信回路を含む。制御部150は、通信部110によって路面凍結推定システム10と通信することができる。
【0015】
測位部120は、GNSS受信部、車速センサ、ジャイロセンサ等の測位センサを備える。GNSS受信部は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置である。GNSS受信部は、航法衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介してパトロール車両100の現在位置を算出するための信号を出力する。車速センサは、パトロール車両100が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。ジャイロセンサは、パトロール車両100の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両の向きに対応した信号を出力する。制御部150は、走行中の道路において、車速センサおよびジャイロセンサから出力された信号に基づいて推定される位置の軌跡である自立航法軌跡と記録媒体に記録された地図情報とに基づいてパトロール車両100の現在地を取得する。
【0016】
カメラ130は、パトロール車両100の進行方向における前方を撮影範囲に含むようにパトロール車両100に取り付けられている。カメラ130の光軸はパトロール車両100に対して固定されている。具体的には、例えば、カメラ130は、パトロール車両100の車幅方向と光軸中心が垂直で、パトロール車両100の進行方向前方が視野に含まれるような姿勢でパトロール車両100に取り付けられている。
【0017】
パトロール車両100の制御部150は路面凍結推定システム10から融雪剤配布地点に関する情報(道路管理者が登録した情報)を取得し、記録媒体に記録する。融雪剤配布地点に関する情報には、融雪剤配布地点の位置と、当該融雪剤配布地点を撮影する際にパトロール車両100が走行すべきリンク(撮影リンク[天野1])が含まれている。
【0018】
制御部150は、撮影リンクと、融雪剤配布地点から当該撮影リンクへの垂線との交点の座標を算出する。制御部150は、パトロール車両100の現在地が撮影リンク上であり、パトロール車両100の現在地と当該交点との距離が既定距離以下となった場合にカメラ130に画像を撮影させる。制御部150は、撮影された画像に融雪剤配布地点の位置および撮影日時と対応付けて記録媒体に記録する。制御部150は、融雪剤配布地点の画像と融雪剤配布地点の位置および撮影日時とを、通信部110を介して路面凍結推定システム10に送信する。このようにして送信された画像と融雪剤配布地点の位置と撮影日時は、道路画像情報30bとして路面凍結推定システム10の記録媒体30に蓄積される。
【0019】
車両200は、プローブ車両としてプローブ情報(走行履歴)を送信する車両、または、推定凍結地点の案内が行われる車両である。車両200は、通信部210と、測位部220と、UI部240と、制御部250を備える。制御部250は、CPU,ROM,RAM,記録媒体を備え、記録媒体やROMに記録されたプログラムをCPUが実行することにより、通信部210、測位部220、UI部240を制御する。通信部210と測位部220はそれぞれ、上述の通信部110と測位部120と同様の構成である。UI部240は、ユーザからの指示を受け付け、また、ユーザに各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、タッチパネルディスプレイやスイッチ、スピーカ、マイク等を備えている。UI部240は制御信号を制御部250から受信し、車両200の現在地を含む地図や走行予定経路等の各種案内を行うための画像をディスプレイに表示する。
【0020】
車両200がプローブ車両として機能する場合、制御部250は、車両200の走行履歴をプローブ情報として路面凍結推定システム10に送信する。走行履歴は、一定距離毎または一定時間毎の車両200の軌跡である、車両200の時系列の位置情報が含まれている。具体的には、車両200は、GNSS受信部、車速センサ、ジャイロセンサの出力信号と公知のマップマッチングとに基づいて、一定距離毎または一定時間毎に、車両の現在地、車両が走行中の区間(道路リンクID)を特定する。また車両200は、当該区間の始点のノードの通過時刻と終点のノードの通過時刻を図示しない計時部から取得する。そして、車両200は、車両の識別情報(車両ID)に、特定した現在位置、道路リンク、現在日時を対応付けて走行履歴を生成する。車両200は、このようにして生成した走行履歴を一時的に車両200記録媒体に格納し、当該走行履歴を予め決められたタイミングで路面凍結推定システム10に送信する。送信された走行履歴は、路面凍結推定システム10の記録媒体30にプローブ情報30dとして格納される。
【0021】
車両200が、推定凍結地点が案内される車両として機能する場合、制御部250は、路面凍結推定システム10から、推定凍結地点の位置や凍結の可能性のレベルを示す値を取得する。本実施形態において、制御部250は、UI部240に表示された地図における推定凍結地点の位置に、凍結の可能性のレベルを示すアイコンを示すことで、推定凍結地点の位置および凍結の可能性のレベルを車両200のユーザに案内する。
【0022】
なお、車両200がカメラを備えいてもよく、車両200のカメラで撮影された路面の画像と撮影位置等が路面凍結推定システム10に送信され、路面凍結推定システム10において融雪剤の使用量の傾向の判断に利用されてもよい。また、パトロール車両100がプローブ車両として機能してももちろんよい。
【0023】
路面凍結推定システム10の記録媒体30には、融雪剤情報30aと、道路画像情報30bと、プローブ情報30cが記録される。融雪剤情報30aは、融雪剤配布地点の位置と、配布作業日、配布量、配布作業後の融雪剤配布地点上の融雪剤の総量、当該融雪剤配布地点における融雪剤の使用量の傾向を示す情報(使用量が多い地点、使用量が少ない地点)が含まれる。配布作業日や配布量、配布作業後の総量は、融雪剤の配布作業が実施される毎に履歴として蓄積される。融雪剤の使用量の傾向は、パトロール車両100によって撮影された画像に基づいて制御部20によって更新される。また、融雪剤情報30aには、融雪剤配布地点を撮影する際の撮影リンクが含まれる。
【0024】
道路画像情報30bには、パトロール車両100で撮影された融雪剤配布地点の画像と融雪剤配布地点の位置と撮影日時が含まれている。パトロール車両100から送信されたこれらの情報が道路画像情報30bとして蓄積されていく。
【0025】
プローブ情報30cは、車両200から送信された走行履歴を示す情報である。本実施形態においてプローブ情報30cは、融雪剤配布地点を含む道路区間を走行する車両の車速を算出するために利用される。
【0026】
路面凍結推定プログラム21を実行することにより、制御部20は、融雪剤情報取得部21a、気象情報取得部21b、凍結推定部21c、案内部21dとして機能する。融雪剤情報取得部21aの機能により、制御部20は、融雪剤が配布された融雪剤配布地点を取得する。すなわち、各融雪剤配布地点の位置が取得される。
【0027】
気象情報取得部21bの機能により、制御部20は、対象期間の融雪剤配布地点における外気温を取得する。すなわち、制御部20は、道路管理者が管理する対象地域における対象期間の気象情報を気象情報サーバ400から取得する。融雪剤配布地点は対象地域内に存在する。対象期間は、路面が凍結するか否かあるいは凍結しているか否かを判断する対象の期間である。本実施形態においては、任意の日付である第1日の夜間の時間帯に含まれる予め決められた時刻から、第1日の翌日である第2日の朝の時間帯に含まれる予め決められた時刻までの時間帯を対象期間とする。本実施形態において、制御部20が気象情報サーバ400から取得して利用する気象情報は、外気温、降雨量、降雪量、積雪量である。
【0028】
凍結推定部21cの機能により、制御部20は、融雪剤配布地点における対象期間の外気温が判定基準より低い場合に、融雪剤配布地点を、路面が対象期間に凍結している可能性がある推定凍結地点であると見なす。本実施形態において、制御部20は、路面が凍結しやすい特徴として予め決められた特徴を有する地点をピックアップする。凍結しやすい特徴を有する地点とは、例えば、交差点、トンネル出入口、橋、等である。制御部20は、地図情報サーバ500から取得した対象地域の地図情報に基づいて、対象地域内の道路の中からこれらに該当する地点をピックアップする。
【0029】
制御部20は、ピックアップした凍結しやすい特徴を有する地点のうち、対象期間の外気温が判定基準より低く且つ対象期間に降雨または降雪があった地点を凍結候補地点としてピックアップする。本実施形態において、判定基準は、対象期間内のうち第1日の夜間として予め定めた時間帯の外気温が閾値以下であることである。また、降雨または降雪については、対象期間のうち、第1日の夜間として予め定めた時間帯のうちのいずれかの時間帯で降雨または降雪があったことを条件とする。さらに、制御部20は、ピックアップした凍結候補地点のうち、対象期間内の第2日の朝として予め定めた時間帯における積雪量が閾値以上である地点は、凍結候補地点から除外する。積雪量が閾値以上ある場合、本実施形態の路面凍結推定システム10が想定する路面凍結の状態から外れるためである。すなわち、路面上の水分がタイヤの接地面より広い所定の範囲に渡って凍り、タイヤが滑りやすくなる状態(例えば、ミラーバーンやブラックアイスバーン等)を、路面凍結の状態として想定している。閾値以上積雪している状態も走行に注意を要するが、本実施形態では凍結候補地点から除外するものとする。
【0030】
制御部20は、第2日の朝の積雪量が閾値未満である凍結候補地点を推定凍結地点と見なす。さらに、制御部20は、推定凍結地点の中でも、凍結の可能性のレベルを次のように判定する。すなわち制御部20は、推定凍結地点(凍結しやすい特徴を有し降雨降雪のあった地点)のうち、融雪剤配布地点と、非融雪剤配布地点とを区別し、融雪剤配布地点の方が、非融雪剤配布地点よりも凍結している可能性が高いと推定する。本実施形態においては、レベルを3段階に分けて表現するが、もちろんレベルは3段階であることに限定されない。制御部20は、推定凍結地点のうち、非融雪剤配布地点である地点は凍結の可能性が「小」であると判定する。このようにすることで、凍結しやすい特徴を有するものの別の要因によって実際には凍結しない傾向にあり融雪剤が使用されない地点については、融雪剤配布地点よりも凍結の可能性を低く判定することができる。
【0031】
また、制御部20は、融雪剤配布地点における融雪剤の使用量の傾向を取得し、融雪剤配布地点の中でも、融雪剤の使用量が多い場合は少ない場合よりも、路面が対象期間に凍結している可能性が高いと推定する。すなわち、本実施形態においては、制御部20は、融雪剤の使用量の傾向に応じて融雪剤配布地点である推定凍結地点について凍結の可能性のレベルを判断する。融雪剤配布地点における使用量の傾向を判断するため、制御部20は、道路画像情報30bとして蓄積された各画像に対して画像認識処理を行い、画像に含まれる融雪剤の袋の像から道路脇に残存している融雪剤の量を推定する。具体的には、例えば、融雪剤の袋の特徴に基づくパターンマッチングによって画像内における融雪剤1袋を示すオブジェクト領域の個数を検出する。制御部20は、新たに融雪剤を配布した際の配布後の融雪剤配布地点上の袋の個数よりも画像から検出した袋の数が少ない場合、その差分を、直近の配布作業日以降、撮影日までの期間において当該融雪剤配布地点で使用された袋の数に相当する融雪剤の量(すなわち使用量)として特定する。なお、融雪剤が未使用である場合の袋の形状と異なる(例えば融雪剤の袋全体の厚さが未使用の場合と比較して薄い)場合に、制御部20は当該融雪剤の袋は未使用でない(融雪剤が減っている)と判断し、袋の形状から使用量を推定するようにしてもよい。
【0032】
制御部20は、直近の配布作業日以降の融雪剤の使用量が閾値よりも多い融雪剤配布地点を、融雪剤の使用量が多い地点と見なし、閾値以下である融雪剤配布地点を融雪剤の使用量が少ない地点と見なす。このように、各融雪剤配布地点について融雪剤の使用量の傾向を、制御部20は予め分析しておく。
本実施形態において、制御部20は、使用量が多い傾向にある融雪剤配布地点の凍結の可能性を「大」と判定し、使用量が少ない傾向にある融雪剤配布地点の凍結の可能性を「中」と判定する。このようにすることで、融雪剤が多く使われる傾向にある融雪剤配布地点については、凍結の可能性が高いと判定することができる。そのため、路面が凍結した早朝等に、融雪剤が使用されるまでの間に当該地点を通行する車両のドライバに注意喚起することが可能である。
【0033】
なお、制御部20は、上述のように一旦、融雪剤配布地点であるか否かと、融雪剤の使用傾向に基づいて、各推定凍結地点の凍結の可能性を判定した後、対象期間における推定凍結地点を走行する車両の車速に応じて、凍結の可能性のレベルを調整する。本実施形態において制御部20は、推定凍結地点を対象期間のうちの第2日の朝の予め決められた時間帯に走行したプローブ車両の車速が閾値速度以下である場合に閾値速度以下でない場合よりも推定凍結地点の路面が凍結している可能性が高いと推定する。車速には、複数のプローブ車両が推定凍結地点を走行した際の各プローブ車両の車速の統計値が採用される。本実施形態において、制御部20は、車速が閾値速度以下である場合に、凍結の可能性のレベルを1段階上げ、閾値速度より大きい場合に、1段階下げる。なおこれは一例であり、プローブ車両の車速が閾値速度以下の場合に1段階上げるが閾値速度より大きくてもレベルは変化させないようにしてもよい。また、プローブ車両の車速が閾値速度以下の場合はレベルを変化させないが閾値速度より大きい場合に1段階上げるようにしてもよい。また、プローブ車両の車速と閾値速度との差が大きいほど上げ下げする段階を増加させてもよい。なお閾値車速は、例えば路面凍結時に想定される車両の走行速度と、路面が凍結していない場合の当該地点の平均的な走行速度とを区別するために設定される値である。
【0034】
以上のようにして推定凍結地点を抽出し、各推定凍結地点について凍結の可能性のレベルを判定した後、制御部20は、案内部21dの機能により、推定凍結地点を案内する。本実施形態において、制御部20は、車両200から指定された地域(例えばディスプレイに表示された地図の表示範囲に対応する地域)や走行予定経路上の推定凍結地点の有無を要求されると、制御部20は、該当する推定凍結地点の位置と凍結可能性のレベルを車両200に返信し、車両200にてUI部240を介してユーザにこれらの情報を案内させる。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、路面の凍結の可能性を、融雪剤の配布状況や使用状況に基づいてレベル分けして推定することができる。
【0036】
(2)路面凍結推定処理:
次に、路面の凍結を推定するための処理について説明する。本実施形態において、路面の凍結を推定するための処理は、融雪剤使用傾向判定処理(図2A)と、凍結候補地点判定処理(図2B)と、凍結推定処理(図3)と、レベル調整処理(図4)で構成される。まず、融雪剤使用傾向判定処理を、図2Aを参照しながら説明する。融雪剤使用傾向判定処理は、任意のタイミングで随時実行される処理である。融雪剤使用傾向判定処理は、各融雪剤配布地点を撮影した画像について1回ずつ実行される。融雪剤使用傾向判定処理が開始されると、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、カメラで撮影した路面の画像を取得する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、記録媒体30に蓄積された道路画像情報30bの中から処理対象の融雪剤配布地点を撮影した画像を取得する。
【0037】
続いて、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、画像認識処理を行う(ステップS110)。すなわち、制御部20は、ステップS100で取得した画像を対象に画像認識処理を行い、融雪剤の袋を検出する。続いて、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、融雪剤の使用量が閾値より多いか否かを判定する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、検出した袋の数を検出し、直近の配布作業後の融雪剤の総量が示す袋の個数と画像から検出した袋の個数の差を使用した袋の個数と見なす。制御部20は、使用した袋の個数が示す融雪剤の使用量と閾値とを比較する。なお、画像内に袋が検出できない場合、制御部20は、当該融雪剤配布地点に載置されていた融雪剤が全て使用されたと見なす。
【0038】
ステップS115において、融雪剤の使用量が閾値より多いと判定された場合、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、融雪剤の使用量が多い地点であると判定する(ステップS120)。ステップS115において、融雪剤の使用量が閾値より多いと判定されなかった場合、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、融雪剤の使用量が少ない地点であると判定する(ステップS125)。そして、制御部20は、ステップS120,S125におけるこれらの判定結果を、処理対象の融雪剤配布地点と対応付けて融雪剤情報30aに記録する。
【0039】
図2Bは、凍結候補地点判定処理を示すフローチャートである。本実施形態において、凍結候補地点判定処理は、第1日の夜間の予め決められた時間帯に制御部20によって実行される。凍結候補地点判定処理が開始されると、制御部20は、気象情報取得部21bの機能により、気象情報を収集する(ステップS200)。すなわち制御部20は、対象地域における、第1日の夜間の時間帯の気象情報を気象情報サーバ400から取得する。
【0040】
続いて、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、降雨または降雪があるか否かを判定する(ステップS205)。すなわち制御部20は、ステップS200で取得した気象情報に基づいて対象地域内で、第1日の夜間に降雨または降雪がある地域が存在するか否かを判定する。
【0041】
ステップS205において、降雨または降雪があると判定された場合、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、夜の気温が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS210)。すなわち、ステップS205で第1日の夜間に降雨または降雪がある地域であって第1日の夜の気温が閾値以下となる地域が存在するか否かが判定される。
【0042】
ステップS205において降雨または降雪があると判定されなかった場合、または、ステップS210において夜の気温が閾値以下であると判定されなかった場合、制御部20は、凍結候補地点判定処理を終了する。
【0043】
ステップS210において、夜の気温が閾値以下であると判定された場合、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、次の日の朝に凍結する地域(凍結地域)であると判定する(ステップS215)。すなわち、第1日の夜間に降雨または降雪がある地域であって、第1日の夜の気温が閾値以下となる地域が、第2日の朝に凍結する凍結地域と判定される。
【0044】
続いて制御部20は、凍結推定部21cの機能により、凍結地域の中から、予め決められた凍結しやすい特徴を有する地点を取得し、当該地点を凍結候補地点とする(ステップS220)。すなわち、制御部20は、地図情報サーバ500から凍結地域の地図情報を取得し、地図情報を分析して凍結地域内にある、交差点や、トンネル出入口、橋等の地点を凍結候補地点としてピックアップする。制御部20は、凍結地域内のノードを交差点として抽出する。また、制御部20は、凍結地域内のリンクであって、リンク内にトンネルが存在するリンクを特定し、当該リンクのリンクデータに基づいてリンク内のトンネル出入り口の位置を取得する。また、制御部20は、凍結地域内のリンクであって、リンク内に橋が存在するリンクを特定し、当該リンクのリンクデータに基づいてリンク内の橋に該当する区間内のいずれかの位置(例えば橋の端部の位置)を取得する。
【0045】
図3は、凍結推定処理を示すフローチャートである。凍結推定処理は、凍結候補地点判定処理を実行した結果、凍結候補地点であると判定された地点が1以上存在する場合に、第2日の朝の予め決められた時間帯に実行される。凍結推定処理は、制御部20によって、各凍結候補地点についてそれぞれ実行される。すなわち、第1日の夜に実行された凍結候補地点判定処理によって凍結候補地点であると判定された地点から処理対象の地点を1つずつ選択して順に凍結推定処理が実行される。
【0046】
凍結推定処理が開始されると、制御部20は、気象情報取得部21bの機能により、処理対象とする凍結候補地点の積雪量を取得する(ステップS300)。すなわち制御部20は、処理対象の凍結候補地点を含む地域における、第2日の朝の時間帯の積雪量(例えば、凍結推定処理実行時の最新の積雪量)を気象情報サーバ400から取得する。
【0047】
続いて、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、凍結候補地点の積雪量が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS305)。すなわち処理対象の凍結候補地点を含む地域の第2日の朝の時間帯の積雪量が閾値以上であるか否かが判定される。ステップS305において閾値以上と判定された場合、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、処理対象の凍結候補地点を、凍結候補地点から除外する(ステップS310)。
【0048】
ステップS305において積雪量が閾値以上であると判定されなかった場合、制御部20は、処理対象の凍結候補地点を凍結候補地点として残す(ステップS315)。すなわち制御部20は、処理対象の凍結候補地点を凍結候補地点から除外せずにそのまま凍結候補地点として扱ってステップS320以降の処理を行う。なおステップS315の処理はスキップされてもよい。
【0049】
続いて、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、処理対象の凍結候補地点が融雪剤配布地点に該当するか否かを判定する(ステップS320)。すなわち、制御部20は、融雪剤情報30aにおける各融雪剤配布地点の位置を参照し、いずれかの融雪剤配布地点に処理対象の凍結候補地点の位置との距離が閾値距離未満である場合に、処理対象の凍結候補地点が融雪剤配布地点に該当すると見なす。
【0050】
ステップS320において、該当すると判定された場合、制御部20は、処理対象の凍結候補地点(融雪剤配布地点)は融雪剤の使用量が多い地点であるか否かを判定する(ステップS325)。すなわち、制御部20は、処理対象の凍結候補地点が、融雪剤使用傾向判定処理(図2A)において融雪剤の使用量が多い地点と判定された地点に該当するか否かを判定する。
【0051】
ステップS325において融雪剤の使用量が多い地点と判定された場合、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、処理対象の凍結候補地点は凍結の可能性が「大」であると判定する(ステップS330)。すなわち、制御部20は、処理対象の凍結候補地点を、凍結している可能性が高い(可能性が大である)推定凍結地点と見なす。
【0052】
ステップS325において融雪剤の使用量が多い地点と判定されなかった場合、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、処理対象の凍結候補地点は凍結の可能性が「中」であると判定する(ステップS335)。すなわち、制御部20は、処理対象の凍結地点を、凍結可能性は中程度の推定凍結地点であると見なす。ステップS320において融雪剤配布地点に該当すると判定されなかった場合、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、処理対象の凍結候補地点は凍結の可能性が「小」であると判定する。すなわち制御部20は、処理対象の凍結候補地点を、凍結している可能性が小程度の推定凍結地点と見なす。
【0053】
図4は、レベル調整処理を示すフローチャートである。レベル調整処理は、凍結推定処理後の各推定凍結地点について、凍結の可能性を示すレベルの値をプローブ情報に基づいて調整する処理であり、対象期間のうち第2日の朝の時間帯に実行される。推定凍結地点の1つを処理対象として選択して調整処理が順に実行される。調整処理が開始されると、制御部20は、プローブ情報に基づいて車速を取得する(ステップS400)。すなわち、制御部20は、処理対象の推定凍結地点を対象期間のうちの朝の時間帯に通過した複数のプローブ車両の走行履歴をプローブ情報30dの中から特定する。制御部20は、特定した走行履歴に基づいて、推定凍結地点を含むリンクを走行時の車速(統計値)を取得する。
【0054】
続いて、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、車速が閾値速度以下である否かを判定する(ステップS405)。ステップS405において、車速が閾値速度以下と判定された場合、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、凍結の可能性を1レベル上げる(ステップS410)。すなわち、制御部20は、処理対象の推定凍結地点を含むリンクを走行する車両の走行速度が閾値速度より低い場合、その理由が路面凍結のためと見なす。そして、制御部20は、例えば処理対象の推定凍結地点の更新前の凍結可能性が「中」の場合は「大」に凍結可能性を更新し、更新前の凍結可能性が「小」の場合は「中」に凍結可能性を更新する。なお、更新前の凍結可能性が「大」の場合、本実施形態では凍結可能性は変化しない。
【0055】
ステップS405において車速が閾値速度以下であると判定されなかった場合、制御部20は、凍結推定部21cの機能により、凍結の可能性を1レベル下げる(ステップS415)。すなわち、制御部20は、処理対象の推定凍結地点を含むリンクを走行する車両の走行速度が閾値速度以上である場合、その理由は路面が凍結していないためと見なす。そして、制御部20は、例えば処理対象の推定凍結地点の更新前の凍結可能性が「中」の場合は「小」に凍結可能性を更新し、更新前の凍結可能性が「大」の場合は「中」に凍結可能性を更新する。なお、更新前の凍結可能性が「小」の場合、本実施形態では凍結可能性は変化しない。
【0056】
制御部20は、図3の凍結推定処理、または、凍結推定処理と図4のレベル調整処理の両方を経て、出力された推定凍結地点および凍結の可能性のレベルを、案内対象の車両からの要求に応じて送信し、案内対象の車両200においてユーザに案内させる。
【0057】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、路面凍結推定システム10は、車両等に搭載された装置であっても良いし、可搬型の端末によって実現される装置であっても良いし、複数の装置(例えば、クライアントとサーバ)によって実現される装置であっても良い。路面凍結推定システムを構成する融雪剤情報取得部21a、気象情報取得部21b、凍結推定部21c、案内部21dのうちの少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在していても良い。例えば、凍結推定部21cや案内部21dの機能が車両200の車載装置で実現されてもよい。むろん、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。
【0058】
融雪剤情報取得部において、融雪剤配布地点の位置は道路管理者が登録する構成以外の方法が採用されてもよい。例えばパトロール車両やプローブ車両のカメラが撮影した道路の画像に、融雪剤を示す像が含まれる場合に、当該画像の撮影位置(撮影時の車両の位置)と、撮影時の車両の進行方位と、車両を基準としたカメラの撮影範囲と、画像内における融雪剤を示すオブジェクトの座標に基づいて融雪剤が配布されている地点の位置を取得するように構成されてもよい。
【0059】
また、凍結推定部は、例えば昨年度の各融雪剤配布地点における配布実績を記録しておき、昨年度の当該配布実績に基づいて、各融雪剤配布地点について、融雪剤の使用量が多い傾向にある地点であるか否かを判定するように構成されてもよい。また、融雪剤の追加頻度に応じて融雪剤配布地点における融雪剤の使用量の傾向を取得してもよい。また、毎日のパトロールによって撮影された各融雪剤配布地点の画像に基づいて、融雪剤配布地点上の融雪剤の袋の個数の推移を特定し、当該推移に基づいて使用量の傾向を判定してもよい。
【0060】
気象情報取得部は、対象地域の湿度を取得し、湿度が湿度の判定基準より高く、外気温が気温の判定基準よりも低いことを、路面が凍結していると判定する条件としてもよい。例えば、降雨・降雪がなくとも、湿度が高く外気温が低い場合に路面が凍結することはあり得る。また、降雨・降雪がなくとも、例えば山道等で、少量のわき水によって路面が定常的に濡れている地点は、外気温が判定基準よりも低くなると路面が凍結する可能性はある。また第1日よりも前の降雪による積雪が一部融けた後再び凍結することによって第1日の夜に降雨や降雪がなくとも第2日の朝に路面が凍結する可能性もある。そのため、降雨・降雪があることは必ずしも、凍結の判定条件に含まれなくてもよいし、降雨・降雪の情報が気象情報サーバから取得されなくてもよい。
【0061】
対象期間は、路面の凍結を推定する対象の期間であればよく、どのような時間帯でもよい。従って対象期間は、夜間から翌朝までの期間に限定されない。対象期間は、例えば、夕刻から深夜までの時間帯でもよいし、朝の時間帯であってもよいし、日中の時間帯であってもよい。また、例えば対象期間が任意の第4日の朝の時間帯である場合、凍結候補地点判定処理は、第4日の朝の時間帯に実行されてもよい(第4日の前日である第3日の気象情報の実績値に基づいて判定可能である)。
【0062】
凍結推定部は、融雪剤配布地点における対象期間の外気温が判定基準より低い場合に、融雪剤配布地点を、路面が前記対象期間に凍結している可能性がある推定凍結地点であると見なすことができればよく、融雪剤の使用量の傾向は必ずしも考慮されなくてもよい。凍結推定部は、対象期間の外気温が判定基準より低い融雪剤配布地点を、対象期間の外気温が判定基準より低い非融雪剤配布地点よりも凍結の可能性が高いと見なしてもよい。
【0063】
上記実施形態においては、路面が凍結しやすい特徴として予め決められた特徴を有し、対象期間の外気温が判定基準よりも低く且つ対象期間に降雨または降雪があった凍結候補地点を推定凍結地点と見なす構成であったが、対象期間に降雨または降雪があったことが推定凍結地点と判定するための条件に含まれなくてもよい。すなわち、路面が凍結しやすい特徴として予め決められた特徴を有し、対象期間の外気温が判定基準よりも低い凍結候補地点を、推定凍結地点と見なすように構成されてもよい。
【0064】
また、対象期間の外気温が判定基準より低く且つ対象期間に降雨または降雪のあった融雪剤配布地点を推定凍結地点と見なすように構成されてもよい。すなわち、路面が凍結しやすい特徴として予め決められた特徴を有することが推定凍結地点と判定するための条件に含まれなくてもよい。
【0065】
凍結推定部は、融雪剤配布地点において対象期間に融雪剤が減少している場合に変化がない場合よりも融雪剤配布地点である推定凍結地点の路面が凍結している可能性が低いと推定する構成であってもよい。例えば、対象期間の前日に撮影された画像から特定された融雪剤の袋の個数より、対象期間に撮影された画像から特定された融雪剤の袋の個数が少ない場合、凍結推定部は、対象期間に路面の凍結を解消するために融雪剤が使用されたものと見なし、融雪剤が使用された結果、路面の凍結が緩和していると推定する。そのため例えば、凍結の可能性のレベルを1レベル下げる等の処理を行うように構成されてもよい。
【0066】
案内部は、車載装置に対して推定凍結地点の位置や凍結可能性のレベルを送信する構成に限定されない。スマートフォン等の可搬型の端末に送信するように構成されてももちろんよい。
【0067】
さらに、本発明の手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0068】
10…路面凍結推定システム、20…制御部、21…路面凍結推定プログラム、21a…融雪剤情報取得部、21b…気象情報取得部、21c…凍結推定部、21d…案内部、30…記録媒体、30a…融雪剤情報、30b…道路画像情報、30c…プローブ情報、30d…プローブ情報、41…通信部、100…パトロール車両、110…通信部、120…測位部、130…カメラ、150…制御部、200…車両、210…通信部、220…測位部、240…UI部、240…測位部、250…制御部、300…道路管理者端末、400…気象情報サーバ、500…地図情報サーバ
図1
図2
図3
図4