(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093325
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209629
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】明法寺 祐
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB13
3D333CC05
3D333CC14
3D333CD04
3D333CD05
3D333CD08
3D333CD16
3D333CD17
3D333CD20
3D333CD21
3D333CD22
3D333CD23
3D333CD38
3D333CD39
3D333CE03
3D333CE06
3D333CE12
(57)【要約】
【課題】新規構成を有するステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリング装置は、ステアリングシャフトを支持する支持筒と、減速機を収容する円筒部分を有するハウジングとを有する。円筒部分の内周面には軸受支持部材50が嵌合される。ステアリングシャフトの外周面と軸受支持部材50の内周面との間には軸受が配置される。軸受支持部材50は、軸受の外周面に嵌合する内周壁51と、円筒部分の内周面に嵌合する外周壁52と、内周壁51と外周壁52とを径方向に連結する連結壁53とを有する。内周壁51は連結壁53から装着方向DWと同じ方向へ延びており、外周壁52は装着方向DWと反対方向へ延びている。外周壁52の先端部には、複数の凹部52Aが周方向に間隔をおいて設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジを有し、ステアリングシャフトを回転可能に支持する円筒状の支持筒と、
前記ステアリングシャフトにトルクを付与するように構成される減速機と、
前記減速機を収容する円筒部分を有し、前記円筒部分が前記フランジと同軸に連結されるハウジングと、
軸方向に沿った方向である装着方向から前記円筒部分の内周面に嵌合される軸受支持部材であって、前記ステアリングシャフトが貫通する軸受支持部材と、
前記ステアリングシャフトの外周面と前記軸受支持部材の内周面との間に介在される軸受と、を有し、
前記軸受支持部材は、前記軸受の外周面に嵌合する内周壁と、前記円筒部分の内周面に嵌合する外周壁と、前記内周壁と前記外周壁とを径方向に連結する連結壁と、を有し、
前記内周壁は、前記連結壁に連結される基端部を有するとともに、前記連結壁から前記装着方向と同じ方向へ延びており、
前記外周壁は、前記連結壁に連結される基端部を有するとともに、前記連結壁から前記装着方向と反対方向へ延びており、
前記外周壁の先端部には、前記ステアリングシャフトを介して前記軸受支持部材に前記装着方向と反対方向の力が作用するとき、前記円筒部分の内周面に食い込むように構成される食込み部が設けられているステアリング装置。
【請求項2】
前記軸受支持部材は、前記軸受および前記円筒部分に対する嵌合によってのみ、前記ハウジングの内部に固定されており、
前記ハウジングは、前記軸受支持部材の軸方向位置を規制する構成を有していない請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記外周壁の先端部には、複数の凹部が周方向に間隔をおいて設けられており、
前記食込み部は、前記凹部の内面と、前記外周壁の先端面とが交わる角部である請求項1または請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記外周壁の先端部には、複数の突部が周方向に間隔をおいて設けられており、
前記突部は、前記食込み部として少なくとも1つの角部を有している請求項1または請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記連結壁は、径方向外側の部位ほど、前記装着方向に変位するように傾斜する傾斜部を有している請求項1または請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記軸受支持部材は、単一の板材が屈曲されてなる請求項1または請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項7】
前記軸受支持部材は、金属製である請求項1または請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項8】
前記減速機は、前記ステアリングシャフトと一体回転するウォームホイール、および前記ウォームホイールに噛み合うウォームを有し、
前記ハウジングは、前記ウォームホイールが収容されるウォームホイールハウジング部材、および前記ウォームが収容されるウォームハウジング部材を有し、
前記円筒部分は、前記ウォームホイールハウジング部材である、請求項1または請求項2に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを利用して操舵を補助する電動パワーステアリング装置が存在する。たとえば特許文献1のステアリング装置は、モータおよび軸受ユニットを有している。ステアリングシャフトは、軸受ユニットを軸方向に貫通している。軸受ユニットは、ハウジングを有している。ハウジングは、ケーシングおよびケーシングカバーを有している。ケーシングは、軸方向に開口する開口部を有している。ケーシングカバーは、ケーシングの開口部を塞ぐように、ケーシングに取り付けられている。
【0003】
ハウジングは、はずば歯車および緩衝ディスクを収容している。はずば歯車は、ステアリングシャフトに対して、一体回転可能に連結されている。はすば歯車は、モータにより駆動される。はすば歯車は、軸方向において、第1の軸受と第2の軸受との両方に支持されている。第1の軸受は、緩衝ディスクに設けられている。第2の軸受は、ケーシングの端壁に設けられている。端壁は、開口部と反対側の壁である。ステアリングシャフトは、第1の軸受および第2の軸受を介して、ケーシングに対して回転可能に支持されている。
【0004】
緩衝ディスクは、軸方向において、はすば歯車とケーシングカバーとの間に位置している。緩衝ディスクは、第1の軸受を介して、ステアリングシャフトの外周面に取り付けられている。緩衝ディスクの外周面は、ケーシングの内周面に当接している。ケーシングカバーの一部分は、ばね部材を介して、緩衝ディスクの側面に支持されている。ばね部材は、はすば歯車に向かう軸方向の弾性力を緩衝ディスクに付与する。ばね部材の弾性力により、緩衝ディスクのはすば歯車から離れる方向への移動が抑制される。
【0005】
緩衝ディスクは、ステアリングシャフトの径方向および軸方向に作用する衝撃を緩衝する機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、車両の仕様などに基づきステアリング装置に対する顧客の要求はますます多様化してきている。これらの要求に応えるために、ステアリング装置の構成についての多岐にわたる研究開発が行われている。新規構成を有するステアリング装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し得るステアリング装置は、フランジを有し、ステアリングシャフトを回転可能に支持する円筒状の支持筒と、前記ステアリングシャフトにトルクを付与するように構成される減速機と、前記減速機を収容する円筒部分を有し、前記円筒部分が前記フランジと同軸に連結されるハウジングと、軸方向に沿った方向である装着方向から前記円筒部分の内周面に嵌合される軸受支持部材であって、前記ステアリングシャフトが貫通する軸受支持部材と、前記ステアリングシャフトの外周面と前記軸受支持部材の内周面との間に介在される軸受と、を有する。前記軸受支持部材は、前記軸受の外周面に嵌合する内周壁と、前記円筒部分の内周面に嵌合する外周壁と、前記内周壁と前記外周壁とを径方向に連結する連結壁と、を有する。前記内周壁は、前記連結壁に連結される基端部を有するとともに、前記連結壁から前記装着方向と同じ方向へ延びている。前記外周壁は、前記連結壁に連結される基端部を有するとともに、前記連結壁から前記装着方向と反対方向へ延びている。前記外周壁の先端部には、前記ステアリングシャフトを介して前記軸受支持部材に前記装着方向と反対方向の力が作用するとき、前記円筒部分の内周面に食い込むように構成される食込み部が設けられている。
【0009】
ステアリングシャフトには、逆入力荷重が加わることがある。逆入力荷重は、軸受支持部材の装着方向と反対方向の力であって、軸受を介して軸受支持部材の内周壁に伝達される。
【0010】
上記の構成によれば、逆入力荷重がステアリングシャフトに加わったとき、軸受支持部材の外周壁の先端部の外径が拡径するように、外周壁の先端部を径方向外側に傾斜させようとする力が、外周壁に作用する。外周壁の外周面が、ハウジングの円筒部分の内周面に対して、より強く径方向外側に押し付けられることにより、軸受支持部材の抜け荷重が増大する。また、このとき、外周壁の先端部に設けられた食込み部が、ハウジングの円筒部分の内周面に食い込む。このため、軸受支持部材の抜け荷重がさらに増大する。抜け荷重は、ハウジングの円筒部分に嵌合された軸受支持部材を、装着方向と反対方向に移動させるために必要とされる力である。したがって、軸受支持部材が装着方向と反対方向に脱落しにくい新規のステアリング装置を得ることができる。たとえ、逆入力荷重がステアリングシャフトに作用したとしても、軸受支持部材は、適切な軸方向位置に保持される。
【0011】
上記のステアリング装置において、前記軸受支持部材は、前記軸受および前記円筒部分に対する嵌合によってのみ、前記ハウジングの内部に固定されていてもよい。前記ハウジングは、前記軸受支持部材の軸方向位置を規制する構成を有していなくてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、軸受支持部材の軸方向位置を保持するための別部材、あるいは軸受支持部材をハウジングの円筒部分に固定するための締結部品が不要である。したがって、ステアリング装置の部品点数の増加を抑えること、あるいはステアリング装置の製品コストを低減させることができる。
【0013】
上記のステアリング装置において、前記外周壁の先端部には、複数の凹部が周方向に間隔をおいて設けられていてもよい。この場合、前記食込み部は、前記凹部の内面と、前記外周壁の先端面とが交わる角部である。
【0014】
上記の構成によれば、逆入力荷重がステアリングシャフトに加わったとき、凹部の内面と、外周壁の先端面とが交わる角部が、ハウジングの円筒部分の内周面に食い込むように押し付けられる。このため、軸受支持部材の抜け荷重を、さらに増大させることができる。
【0015】
上記のステアリング装置において、前記外周壁の先端部には、複数の突部が周方向に間隔をおいて設けられていてもよい。前記突部は、前記食込み部として少なくとも1つの角部を有していてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、逆入力荷重がステアリングシャフトに加わったとき、突部の少なくとも1つの角部が、ハウジングの円筒部分の内周面に食い込むように押し付けられる。このため、軸受支持部材の抜け荷重を、さらに増大させることができる。
【0017】
上記のステアリング装置において、前記連結壁は、径方向外側の部位ほど、前記装着方向に変位するように傾斜する傾斜部を有していてもよい。
逆入力荷重がステアリングシャフトに加わったとき、軸受支持部材の内周壁と連結壁との連結部分を支点として、連結壁を装着方向と同じ方向に傾斜させようとする力が、連結壁53に作用する。これに伴い、外周壁の先端部の外径が拡径するように、外周壁の先端部を径方向外側に傾斜させようとする力が、外周壁に作用する。上記の構成によれば、傾斜部の傾斜の度合いを調節することにより、連結壁の荷重たわみ特性を調節することができる。
【0018】
上記のステアリング装置において、前記軸受支持部材は、単一の板材が屈曲されてなるものであってもよい。
上記の構成によれば、軸受支持部材を簡単に成形することができる。また、軸受支持部材を軽量化することができる。
【0019】
上記のステアリング装置において、前記軸受支持部材は、金属製であってもよい。
上記の構成によれば、たとえば、軸受支持部材をハウジングの円筒部分に装着する際、軸受支持部材の損傷を抑制することができる。
【0020】
上記のステアリング装置において、前記減速機は、前記ステアリングシャフトと一体回転するウォームホイール、および前記ウォームホイールに噛み合うウォームを有していてもよい。また、前記ハウジングは、前記ウォームホイールが収容されるウォームホイールハウジング部材、および前記ウォームが収容されるウォームハウジング部材を有していてもよい。この場合、前記円筒部分は、前記ウォームホイールハウジング部材であってもよい。
【0021】
上記の構成によれば、逆入力荷重がステアリングシャフトに加わったとき、軸受支持部材の抜け荷重が増大する。このため、軸受支持部材が、ウォームホイールハウジング部材から装着方向と反対方向に脱落することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、新規構成を有するステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施の形態に係るステアリング装置の構成を示す模式図である。
【
図3】
図2のハウジングとロアーチューブとの連結部分の断面図である。
【
図4】
図3の軸受支持部材を斜め上からみた斜視図である。
【
図5】
図3の軸受支持部材を斜め下からみた斜視図である。
【
図6】
図3の軸受支持部材を斜め上からみた斜視図である。
【
図7】
図6の軸受支持部材の要部を示す正面図である。
【
図8】
図6の軸受支持部材の変形例の要部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ステアリング装置の一実施の形態を説明する。
<ステアリング装置1の全体構成>
図1に示すように、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト2、中間軸3、ピニオン軸4、およびラック軸5を有している。ステアリングシャフト2の第1の端部には、ステアリングホイール6が連結されている。ステアリングシャフト2の第2の端部には、自在継手7を介して中間軸3の第1の端部が連結されている。中間軸3の第2の端部には自在継手8を介してピニオン軸4の第1の端部が連結されている。ピニオン軸4の第2の端部には、ピニオン4aが設けられている。ピニオン4aは、ラック軸5に設けられたラック5aに噛み合っている。ラック軸5は、車体のフレーム9に固定されるハウジング10の内部に支持されている。ラック軸5は、車両の進行方向に対する左方向または右方向へ移動可能である。ラック軸5の両端部はタイロッド(図示略)を介して左右の転舵輪(図示略)に連結される。
【0025】
ステアリングシャフト2は、アウタシャフト11およびインナシャフト12を有している。アウタシャフト11およびインナシャフト12は、たとえばスプライン結合によって互いに連結されている。アウタシャフト11およびインナシャフト12は、一体回転可能かつ互いの軸方向に沿って相対移動可能である。ステアリングシャフト2は、ステアリングホイール6を上にして車両の前後方向に対して斜めに設けられる。
【0026】
ステアリング装置1は、ステアリングコラム15を有している。ステアリングコラム15には、ステアリングシャフト2が挿通されている。ステアリングシャフト2は、軸受(図示略)を介してステアリングコラム15に対して回転可能に支持される。ステアリングコラム15は、車体に設けられる2つのフレーム13,14に取り付けられる。一方のフレーム13は、車両の前後方向において、他方のフレーム14よりも後方に位置している。
【0027】
ステアリングコラム15は、アッパーチューブ16、ロアーチューブ17およびハウジング18を有している。アッパーチューブ16は円筒状である。ロアーチューブ17は、円筒状であり、フランジ31を有している。アッパーチューブ16およびロアーチューブ17は、互いに嵌め合わされている。一例として、アッパーチューブ16は、ロアーチューブ17の第1の端部に挿入されている。第1の端部は、フランジ31が設けられた第2の端部と反対側の端部である。アッパーチューブ16およびロアーチューブ17は、ステアリングシャフト2の軸方向に互いに相対移動可能である。ロアーチューブ17は、コラムブラケット17Aを有している。ロアーチューブ17は、コラムブラケット17Aを介して車体のフレーム13に取り付けられる。
【0028】
アッパーチューブ16およびロアーチューブ17は、たとえば磁性体により形成されている。磁性体は、鉄などの磁性金属を含む。アッパーチューブ16およびロアーチューブ17は、ステアリングシャフト2を回転可能に支持する支持筒を構成する。
【0029】
ハウジング18は、ロアーチューブ17の第2の端部に連結されている。ハウジング18は、2つの支持部18A(
図1では1つのみ図示)および支持軸18Bを有している。2つの支持部18Aは、ハウジング18のロアーチューブ17とは反対側の側面に設けられている。2つの支持部18Aは、車体の幅方向において互いに対向している。支持軸18Bは、2つの支持部18Aの間を延びている。支持軸18Bは、車体のフレーム14に固定されたブラケット24に対して回転可能に連結される。
【0030】
ハウジング18の外部には、操舵補助用のモータ19が設けられている。ハウジング18の内部には、減速機20が収容されている。減速機20は、モータ19の回転を減速し、この減速される回転をインナシャフト12に伝達する。減速機20は、ウォーム21およびウォームホイール22を有するウォーム減速機である。ウォーム21は、モータ19の出力軸(図示略)に対して一体回転可能に連結される。ウォーム21の軸線およびモータ19の出力軸の軸線は、同一の直線上に位置している。ウォームホイール22は、ウォーム21と噛み合っている。ウォームホイール22は、インナシャフト12と一体回転可能に設けられている。ウォームホイール22の軸線およびインナシャフト12の軸線は、同一の直線上に位置している。
【0031】
ステアリング装置1はロック機構(図示略)を有している。ロック機構は、レバー(図示略)の操作を通じて、ステアリングコラム15の支持軸18Bを中心とする揺動およびステアリングコラム15の伸縮を選択的にロック及びアンロックする。レバーをアンロック操作することにより、ステアリングコラム15は支持軸18Bを中心としてコラムブラケット17Aに対して揺動することが可能となる。レバーをアンロック操作した後、ステアリングホイール6を上または下へ移動させることによって、ステアリングホイール6の上下位置を調節することが可能である。また、レバーをアンロック操作することにより、アッパーチューブ16はロアーチューブ17に対してステアリングシャフト2の軸方向に移動することが可能となる。レバーをアンロック操作した後、ステアリングホイール6をステアリングシャフト2の軸方向に移動させることにより、ステアリングホイール6の軸方向における位置を調節することが可能である。
【0032】
<ロアーチューブ17の構成>
つぎに、ロアーチューブ17の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、ロアーチューブ17はフランジ31を有している。フランジ31はロアーチューブ17の第2の端部に設けられている。ロアーチューブ17の第2の端部は、アッパーチューブ16が挿入される第1の端部と反対側の端部である。フランジ31は円環状の平板である。フランジ31は2つの取付部31Aを有している。2つの取付部31Aは、フランジ31の外周面に設けられている。2つの取付部31Aは、フランジ31の外周面から径方向外側に突出している。2つの取付部31Aは、フランジ31の半径方向において互いに反対側に位置している。
図3に示すように、2つの取付部31Aは、それぞれ挿通孔31Bを有している。挿通孔31Bにはボルト30が挿通される。このボルト30をハウジング18に締め付けることにより、フランジ31はハウジング18に固定される。ボルト30は頭部30Aおよび軸部30Bを有する。
【0033】
<ハウジング18の構成>
つぎに、ハウジング18の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、ハウジング18は、ウォームホイールハウジング部材41およびウォームハウジング部材42を有している。ウォームホイールハウジング部材41およびウォームハウジング部材42は、それぞれ円筒状である。ウォームハウジング部材42は、ウォームホイールハウジング部材41の外周面に連結されている。ウォームハウジング部材42は、ウォームホイールハウジング部材41の軸線に対して直交する方向に延びている。ウォームホイールハウジング部材41の内部とウォームハウジング部材42の内部とは、連通孔(図示略)を介して互いに連通している。ウォームホイールハウジング部材41は、ハウジング18の円筒部分を構成する。ハウジング18は、たとえば非磁性体により形成されている。非磁性体は、アルミニウムなどの非磁性金属を含む。
【0034】
ウォームホイールハウジング部材41の内部には、ウォームホイール22が回転可能に収容される。ウォームハウジング部材42の内部には、ウォーム21が軸受(図示略)を介して回転可能に支持される。ウォームホイール22とウォーム21とは、ハウジング18の内部に設けられる先の連通孔を介して互いに噛み合う。ウォームホイール22およびウォーム21は、たとえば磁性体により形成されている。磁性体は、鉄などの磁性金属を含む。
【0035】
図3に示すように、ウォームホイールハウジング部材41は、軸方向における第1の端部に開口部41Aを有し、第1の端部とは反対側の第2の端部に端壁を有している。開口部41Aは、ウォームホイールハウジング部材41の軸線に沿ってロアーチューブ17へ向けて開口している。ウォームホイールハウジング部材41の外径は、フランジ31の外径と実質的に同じである。
【0036】
ウォームホイールハウジング部材41は、円筒状の軸受支持部43を有している。軸受支持部43は、ウォームホイールハウジング部材41の端壁に設けられている。開口部41Aと軸受支持部43は同軸に配置されている。ウォームホイールハウジング部材41の内部とウォームホイールハウジング部材41の外部とは、軸受支持部43を介して互いに連通している。
【0037】
ウォームホイールハウジング部材41は、2つの締付部44を有している。各締付部44は、フランジ31をハウジング18に固定する際にボルト30が締め付けられる部分である。各締付部44は、ウォームホイールハウジング部材41の外周面から径方向外側に突出している。2つの締付部44は、ウォームホイールハウジング部材41の半径方向において互いに反対側に位置している。各締付部44は、ねじ穴44Aを有している。ねじ穴44Aが開口する各締付部44の端面は、開口部41Aが開口するウォームホイールハウジング部材41の端面と面一である。
【0038】
開口部41Aが開口するウォームホイールハウジング部材41の端面には、フランジ31の周縁が当接している。フランジ31の挿通孔31Bとハウジング18のねじ穴44Aとは互いに一致している。ボルト30は、フランジ31の挿通孔31Bにハウジング18と反対側から挿通されている。このボルト30はハウジング18の締付部44に締め付けられている。これにより、フランジ31はハウジング18に固定されている。すなわち、ロアーチューブ17は、フランジ31を介してハウジング18に連結されている。また、ハウジング18の開口部41Aは、フランジ31によって塞がれている。フランジ31はハウジング18の開口部41Aを閉塞するカバーでもある。
【0039】
ウォームホイールハウジング部材41は、インナシャフト12を回転可能に支持する。インナシャフト12は、ウォームホイールハウジング部材41を貫通している。インナシャフト12の軸線とウォームホイールハウジング部材41の軸線とは、同一の直線上に位置している。インナシャフト12は、入力シャフト12A、出力シャフト12Bおよびトーションバー12Cを有している。入力シャフト12Aと出力シャフト12Bとは、トーションバー12Cを介して互いに連結されている。出力シャフト12Bは、中空の円筒である。
【0040】
入力シャフト12Aの第1の端部は、アウタシャフト11に連結される。入力シャフト12Aの第2の端部は、出力シャフト12Bの第1の端部に挿入されている。入力シャフト12Aの外周面と出力シャフト12Bの内周面との間には隙間が存在する。入力シャフト12Aの外周面と出力シャフト12Bの内周面との間には、すべり軸受12Dが介在されている。入力シャフト12Aと出力シャフト12Bとは、すべり軸受12Dを介して相対回転することが可能である。
【0041】
入力シャフト12Aの第2の端部には、トーションバー12Cの第1の端部が挿入された状態で固定されている。トーションバー12Cの第2の端部は、出力シャフト12Bの内部に挿通されている。トーションバー12Cの外周面と出力シャフト12Bの内周面との間には隙間が存在する。トーションバー12Cの第2の端部は、出力シャフト12Bの第2の端部に固定される。ステアリングホイール6に付与される操舵トルクは、入力シャフト12Aおよびトーションバー12Cを介して出力シャフト12Bに伝達される。トーションバー12Cは、操舵トルクに応じて捩れる。
【0042】
ウォームホイールハウジング部材41の内部には、ウォームホイール22および軸受支持部材50が収容されている。ウォームホイール22は、出力シャフト12Bの外周面に対して一体回転可能に固定されている。軸受支持部材50は円筒状であって、出力シャフト12Bの外周面に対して相対的に回転可能に装着されている。ウォームホイール22および軸受支持部材50は、ウォームホイールハウジング部材41の軸方向に沿って互いに間隔をおいて並んでいる。ウォームホイール22は、軸受支持部材50とウォームホイールハウジング部材41の端壁との間に配置されている。ウォームホイールハウジング部材41、ウォームホイール22および軸受支持部材50は、同軸に配置されている。
【0043】
<軸受支持部材50の構成>
つぎに、軸受支持部材50の構成について詳細に説明する。
図4および
図5に示すように、軸受支持部材50は、筒状の内周壁51と、筒状の外周壁52と、環状の連結壁53とを有している。
【0044】
内周壁51は、外周壁52の径方向内側に位置している。内周壁51の軸方向位置と、外周壁52の軸方向位置とは、若干異なっている。連結壁53は、軸受支持部材50の径方向に拡がる壁部である。連結壁53は、内周壁51の基端部と外周壁52の基端部とを連結している。内周壁51の先端部と外周壁52の先端部とは、軸方向において互いに反対側を向いている。先端部は、基端部と反対側の端部である。
【0045】
連結壁53は、内側平坦部53Aと、傾斜部53Bと、外側平坦部53Cとを有している。内周壁51を基準として、内側平坦部53Aと、傾斜部53Bと、外側平坦部53Cとは、この順序で連結されている。内側平坦部53Aと外側平坦部53Cとは、軸方向に対して直交する方向に延びている。内側平坦部53Aの内周部分は、内周壁51の基端部に連結されている。外側平坦部53Cの外周部分は、外周壁52の基端部に連結されている。外側平坦部53Cは内側平坦部53Aに対し、軸受支持部材50の軸方向において内周壁51の先端部側にずれた位置に配置される。傾斜部53Bは、連結壁53の径方向外側の部位ほど、軸受支持部材50の軸方向において内周壁51の先端部に近づくように、傾斜している。
【0046】
内周壁51の内径は、軸受71の外径よりも、若干短くなるように設定されている。外周壁52の外径は、ウォームホイールハウジング部材41の内径よりも、若干長くなるように設定されている。内周壁51の内径、および外周壁52の外径は、定められる圧入代に応じて決定される。
【0047】
軸受支持部材50は、単一の板材が屈曲されてなる。軸受支持部材50は、たとえば磁性体により形成されている。磁性体は、鉄などの磁性金属を含む。軸受支持部材50は、たとえばプレスによって所定の形状に打ち抜かれた、単一の金属板材を塑性変形させることにより形成される。
【0048】
図3に示すように、軸受支持部材50の内周面、すなわち内周壁51の内周面は、軸受71の外周面に嵌合している。軸受支持部材50の外周面、すなわち外周壁52の外周面は、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に嵌合している。軸受支持部材50は、装着方向DWからウォームホイールハウジング部材41の内周面に圧入される。装着方向DWは、ウォームホイールハウジング部材41の軸線に沿った方向であり、軸受支持部材50がウォームホイールハウジング部材41に対して挿入される方向である。圧入装置(図示略)の圧入ストロークを管理することにより、ウォームホイールハウジング部材41に対する軸受支持部材50の軸方向位置を決める。内周壁51は、連結壁53から装着方向DWと同じ方向へ延びている。外周壁52は、連結壁53から装着方向DWと反対方向へ延びている。内周壁51の先端部は、装着方向DWと同じ方向を向いている。外周壁52の先端部は、装着方向DWとは反対の方向を向いている。外周壁52の基端部は、内周壁51の基端部に対し、装着方向DWにずれた位置に配置される。傾斜部53Bは、径方向外側の部位ほど、装着方向DWに変位するように、傾斜している。
【0049】
出力シャフト12Bは、軸受61を介して軸受支持部43の内周面に対して回転可能に支持されている。軸受61は、軸方向の移動が規制された状態にある。環状の段差部62および止め輪63が、出力シャフト12Bの外周面に設けられている。軸受61の内輪は、段差部62と止め輪63との間に介在されている。環状の突部64および止め輪65が、軸受支持部43の内周面に設けられている。軸受61の外輪は、突部64と止め輪65との間に介在されている。
【0050】
出力シャフト12Bは、軸受71を介して軸受支持部材50の内周壁51に対して回転可能に支持されている。軸受71は、軸方向の移動が規制された状態にある。環状の突条72が、出力シャフト12Bの外周面に設けられている。また、筒状のナット部材(図示略)が、出力シャフト12Bの第1の端部に装着される。軸受71の内輪は、突条72とナット部材との間に介在される。軸受71の外輪は、内周壁51により径方向内側へ弾性的に押圧された状態に維持される。軸受71の外輪は、内周壁51により支持される。
【0051】
ウォームホイールハウジング部材41の内部空間は、軸受支持部材50によって2つの空間に区画されている。軸受支持部材50とフランジ31との間の空間にはセンサ80が設けられる。センサ80は、トルクセンサおよび回転角センサを含む。トルクセンサは、トーションバー12Cのねじれ量に基づき操舵トルクを検出する。回転角センサは、入力シャフト12Aの回転角を操舵角として検出する。軸受支持部材50とウォームホイールハウジング部材41の端壁との間の空間にはグリースが封入される。
【0052】
<外周壁52の構成>
つぎに、外周壁52の構成について説明する。
図6に示すように、製品仕様によっては、軸受支持部材50の外周壁52は、凹部52Aを有している。凹部52Aは、外周壁52の先端部に設けられている。凹部52Aは、単数であってもよいし、複数であってもよい。
図6の例では、外周壁52は、3つの凹部52Aを有している。外周壁52が複数の凹部52Aを有する場合、各凹部52Aは、周方向に間隔をおいて配置される。各凹部52Aは、たとえば、周方向に等間隔に配置される。凹部52Aの深さは、たとえば、外周壁52の軸方向長さの半分以内に設定される。深さは、凹部52Aの軸方向の長さである。
【0053】
図7に示すように、軸受支持部材50の径方向からみて、凹部52Aは、四角形状の切り欠きである。凹部52Aは、周方向に互いに対向する第1の内側面と、第2の内側面とを有している。外周壁52に凹部52Aを設けることにより、外周壁52に、第1の角部P1と第2の角部P2とが形成される。第1の角部P1は、凹部52Aの第1の内側面と、外周壁52の先端面とが交わる外周壁52の部分である。第2の角部P2は、凹部52Aの第2の内側面と、外周壁52の先端面とが交わる外周壁52の部分である。第1の内側面と第2の内側面とは、凹部52Aの内面である。
【0054】
なお、径方向からみた凹部52Aの形状は、四角形に限らない。凹部52Aの形状は、たとえば、半円形、台形、あるいは三角形であってもよい。外周壁52に、第1の角部P1と第2の角部P2とが形成されればよく、凹部52Aの形状は問わない。
【0055】
図8に示すように、製品仕様によっては、外周壁52は、凹部52Aに代えて、突部52Bを有していてもよい。突部52Bは、外周壁52の先端部に設けられている。突部52Bは、外周壁52の先端部から装着方向DWと反対方向に延びている。突部52Bは、単数であってもよいし、複数であってもよい。外周壁52が複数の突部52Bを有する場合、各突部52Bは、周方向に間隔をおいて配置される。突部52Bの突出長さは、たとえば、外周壁52の軸方向長さの半分以内に設定される。突出長さは、突部52Bの軸方向の長さである。
【0056】
軸受支持部材50の径方向からみて、突部52Bは、四角形状である。突部52Bは、周方向に互いに対向する第1の外側面と、第2の外側面とを有している。外周壁52に突部52Bを設けることにより、外周壁52に第3の角部P3と第4の角部P4とが形成される。第3の角部P3は、突部52Bの第1の外側面と、突部52Bの先端面とが交わる突部52Bの部分である。第4の角部P4は、突部52Bの第2の外側面と、突部52Bの先端面とが交わる突部52Bの部分である。第1の外側面と第2の外側面とは、突部52Bの外面である。
【0057】
なお、径方向からみた突部52Bの形状は、四角形に限らない。突部52Bの形状は、たとえば、台形状、あるいは三角形状であってもよい。突部52Bが、少なくとも1つの角部を有していればよく、突部52Bの形状は問わない。
【0058】
<本実施の形態の第1の作用>
つぎに、本実施の形態の第1の作用について説明する。
図9に示すように、軸受支持部材50は、外周壁52が装着方向DWと反対方向を向く姿勢で、ウォームホイールハウジング部材41に装着される。軸受支持部材50をウォームホイールハウジング部材41の内部に圧入する際、外周壁52の外周面は、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に対して摺動する。このとき、外周壁52には、装着方向DWとは反対方向の摺動抵抗が作用する。この摺動抵抗を受けて、内周壁51と内側平坦部53Aとの連結部分を支点として、連結壁53が装着方向DWと反対方向に傾斜するように、わずかに弾性変形する。これに伴い、外周壁52の先端部が径方向内側に傾斜することにより、外周壁52の先端部の外径が、わずかに縮径する。
【0059】
このため、外周壁52の外周面とウォームホイールハウジング部材41との接触面積が低減する。また、接触面積が低減することにより、外周壁52とウォームホイールハウジング部材41との間の摺動抵抗が低減する。ウォームホイールハウジング部材41の内部に軸受支持部材50を挿入しやすくなるため、組付け性が向上する。また、圧入荷重を低減することができる。圧入荷重は、ウォームホイールハウジング部材41の内部に軸受支持部材50を圧入するために必要とされる力である。
【0060】
<本実施の形態の第2の作用>
つぎに、本実施の形態の第2の作用について説明する。
車両の縁石乗り上げ、あるいはラック軸5のエンド当てなどに起因して、いわゆる逆入力荷重Fが出力シャフト12Bに作用するおそれがある。エンド当ては、ラック軸5の端部がハウジング10に突き当たることである。逆入力荷重Fは、装着方向DWと反対方向の力である。
【0061】
図10に示すように、逆入力荷重Fは、出力シャフト12Bおよび軸受71を介して、軸受支持部材50の内周壁51に伝達される。この逆入力荷重Fを受けて、内周壁51と内側平坦部53Aとの連結部分を支点として、連結壁53を装着方向DWと同じ方向に傾斜させようとする力が、連結壁53に作用する。これに伴い、外周壁52の先端部の外径が拡径するように、外周壁52の先端部を径方向外側に傾斜させようとする力が、外周壁52に作用する。
【0062】
このため、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に対して、外周壁52の外周面は径方向外側に、より強く押し付けられる。ウォームホイールハウジング部材41の内周面に対する外周壁52の外周面の接触荷重が増大することにより、軸受支持部材50の抜け荷重が増大する。抜け荷重は、ウォームホイールハウジング部材41に圧入された状態の軸受支持部材50を、装着方向DWと反対方向に移動させるために必要とされる力である。したがって、抜け荷重が増大することにより、軸受支持部材50の装着方向DWと反対方向への移動が抑制される。たとえ、逆入力荷重Fが出力シャフト12Bに作用したとしても、軸受支持部材50は、適切な軸方向位置に保持される。
【0063】
外周壁52が凹部52A、すなわち第1の角部P1と第2の角部P2とを有する場合、さらに、つぎの作用を奏する。出力シャフト12Bに逆入力荷重Fが加わると、外周壁52の先端部の外径が拡径するように、外周壁52の先端部を径方向外側に傾斜させようとする力が外周壁52に作用する。これにより、第1の角部P1と第2の角部P2とが、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に食い込むように押し付けられる。このため、第1の角部P1と第2の角部P2とが、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に対して、軸受支持部材50の装着方向DWと反対方向に引っ掛かる。軸受支持部材50の抜け荷重がさらに増大するため、軸受支持部材50が装着方向DWと反対方向にさらに移動しにくくなる。
【0064】
なお、ここでいう「食い込む」とは、第1の角部P1と第2の角部P2とが、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に突き刺さる状態に限定されず、前記したような「引っ掛かる」作用を生じていれば、よい。
【0065】
第1の角部P1と第2の角部P2とは、ステアリングシャフト2を介して軸受支持部材50に装着方向DWと反対方向の力が作用するとき、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に食い込むように構成される食込み部である。
【0066】
外周壁52が突部52B、すなわち第3の角部P3と第4の角部P4とを有する場合においても、外周壁52が第1の角部P1と第2の角部P2とを有する場合と同様の作用を奏する。外周壁52の先端部を径方向外側に傾斜させようとする力が外周壁52に作用すると、第3の角部P3と第4の角部P4とが、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に食い込むように押し付けられる。このため、第3の角部P3と第4の角部P4とが、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に対して、軸受支持部材50の装着方向DWと反対方向に引っ掛かる。軸受支持部材50の抜け荷重がさらに増大するため、軸受支持部材50が装着方向DWと反対方向にさらに移動しにくくなる。
【0067】
第3の角部P3と第4の角部P4とは、ステアリングシャフト2を介して軸受支持部材50に装着方向DWと反対方向の力が作用するとき、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に食い込むように構成される食込み部である。
【0068】
なお、外周壁52を、装着方向DWと同じ方向を向くように設けることも考えられる。この場合、逆入力荷重Fが出力シャフト12Bに作用するとき、内周壁51と内側平坦部53Aとの連結部分を支点として、連結壁53が装着方向DWと同じ方向に傾斜するように、わずかに弾性変形する。これに伴い、外周壁52の先端部が径方向内側に傾斜することにより、外周壁52の先端部の外径が、わずかに縮径する。このため、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に対する外周壁52の外周面の接触荷重が減少することにより、軸受支持部材50の抜け荷重が減少するおそれがある。したがって、軸受支持部材50の抜け荷重を確保する観点から、外周壁52は装着方向DWと反対方向を向くように設けることが好ましい。
【0069】
<実施の形態の効果>
本実施の形態は、以下の効果を奏する。
(1)外周壁52は、連結壁53に連結される基端部を有するとともに、連結壁53から装着方向DWと反対方向へ延びている。このため、逆入力荷重Fが出力シャフト12Bに加わったとき、軸受支持部材50の外周壁52の先端部の外径が拡径するように、外周壁52の先端部を径方向外側に傾斜させようとする力が、外周壁52に作用する。外周壁52の外周面が、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に対して、より強く径方向外側に押し付けられるため、軸受支持部材50の抜け荷重が増大する。
【0070】
特に、外周壁52が凹部52Aを有する場合、第1の角部P1と第2の角部P2とが、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に食い込むように押し付けられる。また、外周壁52が突部52Bを有する場合、第3の角部P3と第4の角部P4とが、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に食い込むように押し付けられる。このため、軸受支持部材50の抜け荷重がさらに増大する。
【0071】
軸受支持部材50の抜け荷重が増大することにより、軸受支持部材50の装着方向DWと反対方向への移動が抑制される。すなわち、たとえ、逆入力荷重Fが出力シャフト12Bに作用したとしても、軸受支持部材50は、適切な軸方向位置に保持される。したがって、軸受支持部材50が装着方向DWと反対方向に脱落しにくい新規のステアリング装置1を得ることができる。凹部52Aの数、または突部52Bの数を調整することにより、軸受支持部材50の抜け荷重を調整することができる。
【0072】
(2)外周壁52は、連結壁53に連結される基端部を有するとともに、連結壁53から装着方向DWと反対方向へ延びている。このため、軸受支持部材50をウォームホイールハウジング部材41に嵌合する際、外周壁52の先端部が径方向内側に弾性的に傾斜することにより、外周壁52の先端部の外径が縮径する。外周壁52とウォームホイールハウジング部材41との間の摺動抵抗が低減するため、ウォームホイールハウジング部材41の内部に軸受支持部材50を挿入しやすくなる。また、圧入荷重を低減することができる。したがって、軸受支持部材50をウォームホイールハウジング部材41に圧入しやすい新規のステアリング装置1を得ることができる。
【0073】
(3)軸受支持部材50は、ウォームホイールハウジング部材41から抜けにくい構造を有する。このため、軸受支持部材50は、軸受71およびウォームホイールハウジング部材41に対する嵌合によってのみ、ウォームホイールハウジング部材41の内部に固定されている。すなわち、ウォームホイールハウジング部材41は、軸受支持部材50の軸方向位置を規制する構成を有していない。軸受支持部材50の軸方向位置を保持するための別部材、あるいは軸受支持部材50をウォームホイールハウジング部材41に固定するための締結部品は、不要である。締結部品は、たとえば、ボルトである。したがって、ステアリング装置1の部品点数の増加を抑えることができる。また、ステアリング装置1の製品コストを低減させることができる。
【0074】
(4)軸受支持部材50は、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に圧入された状態に維持される。内周壁51の内周面は、軸受71の外輪の外周面に対して径方向内側へ弾性的に押し付けられた状態に維持される。理想的には、内周壁51の内周面と、軸受71の外輪の外周面との間に隙間が存在しない。このため、内周壁51の内周面と軸受71の外輪の外周面との境界部分をグリースが通過することは困難である。したがって、グリースが、軸受支持部材50とウォームホイールハウジング部材41の端壁との間の第1の空間から、軸受支持部材50とフランジ31との間の第2の空間へ漏れ出すことが抑制される。
【0075】
また、外周壁52の外周面は、ウォームホイールハウジング部材41の内周面に対して径方向外側へ弾性的に押し付けられた状態に維持される。理想的には、外周壁52の外周面と、ウォームホイールハウジング部材41の内周面との間に隙間が存在しない。このため、外周壁52の外周面と、ウォームホイールハウジング部材41の内周面との境界部分をグリースが通過することは困難である。したがって、グリースが、軸受支持部材50とウォームホイールハウジング部材41の端壁との間の第1の空間から、軸受支持部材50とフランジ31との間の第2の空間へ漏れ出すことが抑制される。
【0076】
(5)理想的には、内周壁51の内周面と軸受71の外輪の外周面との間に隙間が存在しない。このため、軸受支持部材50と軸受71との間において、打音あるいはスティックスリップ音が発生することが抑制される。スティックスリップ音は、部品同士、ここでは、軸受支持部材50と軸受71とが擦れ合うことにより発生する異音である。したがって、ステアリング装置1の静粛性を向上させることができる。
【0077】
(6)連結壁53は、傾斜部53Bを有している。傾斜部53Bの傾斜の度合いを調節することにより、連結壁53の荷重たわみ特性を調節することができる。荷重たわみ特性は、部品に作用する荷重と、その荷重に対する部品のたわみ量との関係のことである。
【0078】
(7)軸受支持部材50は、単一の板材が屈曲されてなる。板材は、たとえば磁性を有する金属板材である。このため、軸受支持部材50をプレスなどにより簡単に成形することができる。また、軸受支持部材50を軽量化することができる。
【0079】
(8)軸受支持部材50は、金属製である。このため、たとえば軸受支持部材50をウォームホイールハウジング部材41に装着する際、軸受支持部材50の損傷を抑制することができる。
【0080】
(9)ウォームホイールハウジング部材41に装着方向DWからウォームホイール22、軸受支持部材50、およびセンサ80を一方向から組付けできるため、組付け性が向上する。
【0081】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・軸受支持部材50およびハウジング18は合成樹脂製であってもよい。合成樹脂材料は、金属材料に比べて安価である。このため、ステアリング装置1の製品コストを低減することができる。
【0082】
・連結壁53の傾斜部53Bを割愛してもよい。この場合、連結壁53は径方向延びる平坦な壁部である。
・製品の仕様などによっては、ステアリング装置1にステアリングホイール6の上下位置を調節するための構成、およびステアリングホイール6の軸方向における位置を調節するための構成を設けなくてもよい。この場合、アッパーチューブ16およびロアーチューブ17に替えて、伸縮しない単一の支持筒を設ける。この単一の支持筒によってステアリングシャフト2を回転可能に支持する。また、ハウジング18は、車体のフレーム14に固定する。ハウジング18から支持部18Aおよび支持軸18Bを割愛した構成を採用することができる。また、ステアリングコラム15の支持軸18Bを中心とする揺動およびステアリングコラム15の伸縮を選択的にロック及びアンロックするロック機構も不要となる。
【0083】
・ステアリング装置1、ステアバイワイヤ式のステアリング装置であってもよい。この場合、ステアリングホイール6と転舵輪との間の動力伝達が分離される。モータ19は、反力モータとして機能する。反力モータは、車両のステアリングシャフト2に付与される操舵反力トルクを発生する。操舵反力トルクは、ステアリングホイール6の操舵方向と反対方向のトルクである。
【符号の説明】
【0084】
1…ステアリング装置
2…ステアリングシャフト
16…アッパーチューブ(支持筒)
17…ロアーチューブ(支持筒)
18…ハウジング
20…減速機
21…ウォーム
22…ウォームホイール
31…フランジ
41…ウォームホイールハウジング部材(円筒部分)
42…ウォームハウジング部材
50…軸受支持部材
51…内周壁
52…外周壁
52A…凹部
52B…突部
53…連結壁
53B…傾斜部
71…軸受
P1…第1の角部(食込み部)
P2…第2の角部(食込み部)
P3…第3の角部(食込み部)
P4…第4の角部(食込み部)