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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093341
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】光透過性板状体の欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/958 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G01N21/958
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209651
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】阿久根 隆之
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA56
2G051AB01
2G051AB03
2G051BA02
2G051BB02
2G051BB05
2G051BC07
2G051CA04
2G051CB05
2G051EA12
2G051EA16
2G051EB01
2G051EC01
(57)【要約】
【課題】光透過性板状体の欠陥検出を行うとともに、欠陥が傷であるか付着物であるかを判別することのできる光透過性板状体の欠陥検査方法を提供する。
【解決手段】撮像部1の光軸を中心とする仮想円上に配置された照射部2を前記仮想円に沿って回転させながら前記撮像部の焦点位置に照射し、前記撮像部により、照射回転角度の異なる複数の画像データを取得する工程と、取得した各画像データから欠陥の二次元座標を特定する工程と、特定された前記欠陥について、照射方向の異なる複数の画像データの間での輝度の変化率が所定の閾値より大きいと傷の欠陥と判定し、輝度の変化率が前記閾値より小さいと付着物と判定する工程と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射部により光透過性板状体に光を照射し、前記光透過性板状体のおもて面に対向して配置された撮像部により前記光透過性板状体を撮像し、欠陥からの散乱光を検出することによって、光透過性板状体の欠陥を検査する光透過性板状体の欠陥検査方法であって、
前記撮像部の光軸を中心とする仮想円上に配置された前記照射部を前記仮想円に沿って回転させながら前記撮像部の焦点位置に照射し、前記撮像部により、照射方向の異なる複数の画像データを取得する工程と、
取得した各画像データから欠陥の二次元座標を特定する工程と、
特定された前記欠陥について、照射方向の異なる複数の画像データの間での輝度の変化率が所定の閾値より大きいと傷の欠陥と判定し、輝度の変化率が前記閾値より小さいと付着物と判定する工程と、
を備えることを特徴とする光透過性板状体の欠陥検査方法。
【請求項2】
前記特定された前記欠陥について、照射方向の異なる複数の画像データの間での輝度の変化率が所定の閾値より大きいと傷の欠陥と判定し、輝度の変化率が前記閾値より小さいと付着物と判定する工程において、
前記輝度の変化率の閾値を、輝度の標準偏差s>10に設定することを特徴とする請求項1に記載された光透過性板状体の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記撮像部の光軸を中心とする仮想円上に配置された前記照射部を前記仮想円に沿って回転させながら前記撮像部の焦点位置に照射し、前記撮像部により、照射方向の異なる複数の画像データを取得する工程において、
前記仮想円上に複数の照射部を等間隔に配置し、前記各照射部を前記仮想円に沿って、一照射部が隣の照射部の位置に配置されるまで、所定の回転角度ごとに回転させ、前記撮像部により前記所定の回転角度ごとの複数の画像データを取得することを特徴とする請求項1に記載された光透過性板状体の欠陥検査方法。
【請求項4】
前記取得した各画像データから欠陥の二次元座標を特定する工程において、
前記画像データを二値化処理することにより、欠陥を輝点として検出することを特徴とする請求項1に記載された光透過性板状体の欠陥検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性板状体の欠陥検査方法に関し、例えばフォトマスク用の合成シリカガラス基板のような光透過性板状体における欠陥を検出する、光透過性板状体の欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶表示装置やプラズマディスプレイ装置の製造工程においては、フォトリソグラフィ法により、光透過性板状体である合成シリカガラス基板上に各種パターンを形成し、フォトマスクを製造する。
前記製造工程において、フォトマスクに異物、傷等の欠陥が存在すると、フォトマスクによって形成される画像が、欠陥が含まれた画像となり、その欠陥が含まれた画像が被処理基板に投影される。
その結果、被処理基板上に形成されたパターンに欠陥が生じ、製造の歩留まりが低下する。この歩留まり低下を防止するため、従来から合成シリカガラス基板(ガラス基板という)の欠陥検査が行われている。
【0003】
従来、ガラス基板の欠陥検査は、暗室内においてガラス基板に光を照射して行われている。照射した光がガラス基板の傷等に入射すると散乱光が発生するため、その散乱光を検出すれば欠陥の有無を判別することができる。
ガラス基板の欠陥が微小な線状の傷の場合、傷からの散乱光が形成する像のコントラストが低いだけでなく、傷に対する照明の方向や観察の方向によってコントラストが著しく変化する。そのため、高照度照明装置を用い、ガラス基板の検査領域に対する照明の方向や観察の方向を手作業で変化させつつ目視で検査を行うことが主流となっている。
【0004】
しかしながら、より微細な傷の場合には、散乱光の光量が少なくなるため、照射光の照度を上げる必要がある。照射光の照度を上げると、ガラス基板表面からの反射光が目に入った場合の危険性が高く、肉眼での検出精度の向上には限界があった。また、目視による検査手法は、再現性、コストなどの観点からも望ましくないという課題があった。
【0005】
特許文献1には、光を照射したガラス基板の傷を直接目視で検査するのではなく、CCDカメラ等の撮像系で撮像した画像に対し検査を行う基板検査装置が開示されている。
図6に示すように、特許文献1に開示される基板検査装置30は、基板Wを照明する照明系31と、照明系31により照明された基板W上の領域を暗視野観察する撮像系32とを備える。
【0006】
照明系31は、撮像系の光軸AX2を中心とした円錐体の側面を描くように移動する光束によって基板W上の領域を照明する。照明系31は、例えば2つの照明ユニット31a、31bを有し、それらは、各照明ユニットの光軸AX1が撮像系32の光軸AX2を中心とした円錐体の側面を描くように撮像系32の光軸AX2を中心として一体的に回転移動するように構成されている。
【0007】
この基板検査装置30では、基板Wの照明領域内の線状の傷には様々な角度方向から照明光が照射されることになり、線状の傷から発生する散乱光は、様々な角度方向に二次元的に広がって撮像系により検出される。こうして、基板検査装置30では、あらゆる方向に沿って延びる微小な線状の傷が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-229155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された基板検査装置30にあっては、基板W上の微小な線状の傷を検出できるものの、それら傷だけでなく、基板に付着した異物(付着物)までも検出してしまう。
特許文献1には、傷と付着物との判別を、例えば洗浄前の検査画像と洗浄後の検査画像とを比較すればよいと記載されているが、洗浄工程と、再度の検査工程が必要になるため、時間とコストがかかるという課題があった。
【0010】
本発明者は、上記事情のもとになされたものであり、光透過性板状体の欠陥検出を行うとともに、欠陥が傷であるか付着物であるかを判別することのできる光透過性板状体の欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するためになされた本発明に係る光透過性板状体の欠陥検査方法は、照射部により光透過性板状体に光を照射し、前記光透過性板状体のおもて面に対向して配置された撮像部により前記光透過性板状体を撮像し、欠陥からの散乱光を検出することによって、光透過性板状体の欠陥を検査する光透過性板状体の欠陥検査方法であって、前記撮像部の光軸を中心とする仮想円上に配置された前記照射部を前記仮想円に沿って回転させながら前記撮像部の焦点位置に照射し、前記撮像部により、照射方向の異なる複数の画像データを取得する工程と、取得した各画像データから欠陥の二次元座標を特定する工程と、特定された前記欠陥について、照射方向の異なる複数の画像データの間での輝度の変化率が所定の閾値より大きいと傷の欠陥と判定し、輝度の変化率が前記閾値より小さいと付着物と判定する工程と、を備えることに特徴を有する。
【0012】
なお、前記特定された前記欠陥について、照射方向の異なる複数の画像データの間での輝度の変化率が所定の閾値より大きいと傷の欠陥と判定し、輝度の変化率が前記閾値より小さいと付着物と判定する工程において、前記輝度の変化率の閾値は、輝度の標準偏差s>10に設定することが望ましい。
また、前記撮像部の光軸を中心とする仮想円上に配置された前記照射部を前記仮想円に沿って回転させながら前記撮像部の焦点位置に照射し、前記撮像部により、照射方向の異なる複数の画像データを取得する工程において、前記仮想円上に複数の照射部を等間隔に配置し、前記各照射部を前記仮想円に沿って、一照射部が隣の照射部の位置に配置されるまで、所定の回転角度ごとに回転させ、前記撮像部により前記所定の回転角度ごとの複数の画像データを取得することが望ましい。
また、前記取得した各画像データから欠陥の二次元座標を特定する工程において、前記画像データを二値化処理することにより、欠陥を輝点として検出することが望ましい。
【0013】
本発明によれば、光透過性板状体のおもて面における欠陥を検出する際、欠陥に対する光の照射方向によって、傷は大きく光り方(輝度)が変化し、付着物は殆ど光り方(輝度)が変化しないことに着目し、照射方向に対する輝度の変化率が閾値より大きい場合は欠陥が傷であると判定し、輝度の変化率が閾値より小さい場合は欠陥が付着物であると判定するようにした。これにより、目視による検査を行うことなく光透過性板状体の欠陥検出を行い、画像データの撮像と解析の検査により容易に傷と付着物の判別を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光透過性板状体の欠陥検出を行うとともに、欠陥が傷であるか付着物であるかを判別することのできる光透過性板状体の欠陥検査方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の光透過性板状体の検査方法を実施する検査装置を模式的に示す概略図である。
図2図2は、図1の検査装置における照射部と撮像部と合成シリカガラス基板との位置関係を示す側面図である。
図3図3は、ガラス基板上の欠陥(傷、付着物)における散乱光の、輝度と照射方向との関係を示すグラフである。
図4図4は、本発明の光透過性板状体の検査方法の流れを示すフローである。
図5図5(a)、(b)は、実施例の結果を示すグラフである。
図6図6は、従来の欠陥検出装置の構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る光透過性板状体の欠陥検査方法について、更に実施形態に基づき説明する。
本発明に係る光透過性板状体の欠陥検査方法は、例えばフォトマスク等に使用する合成シリカガラス基板における傷、付着物等の欠陥を検出し、コンピュータの演算処理により傷と付着物との判別をするためのものである。
以下の実施形態にあっては、光透過性板状体が合成シリカガラス基板である場合を例にとって説明する。
【0017】
(検査装置の概要)
まず、本発明に係る光透過性板状体の欠陥検査方法を実施するための検査装置についてその概要を、図1に基づいて説明する。尚、図1に示す検査装置は一例であって、本発明に係る光透過性板状体の欠陥検査方法を実施する装置は、欠陥検査方法を実施することができれば、他の形態を有する装置であってもよい。
【0018】
図1に示す検査装置100は、被検査基板である合成シリカガラス基板Wのおもて面W1側に、該合成シリカガラス基板Wに対向して配置されるCCDカメラ(撮像部)1と、前記CCDカメラ1の撮像の光軸を中心とする仮想円C上に90°間隔で配置された4つの照明部2と、を備える。
また、検査装置100は、合成シリカガラス基板WをX方向、Y方向に移動させ、またCCDカメラ1をZ方向に移動させる移動駆動機構5を備える。
【0019】
このCCDカメラ1による撮像視野の範囲は、合成シリカガラス基板Wのおもて面W1の面積に対し小さな面積であり、合成シリカガラス基板Wが面方向(縦、横方向:X方向、Y方向)に移動することによって、CCDカメラ1は、合成シリカガラス基板Wのおもて面W1の全体の撮像画面データを得ることができる。
また、CCDカメラ1を合成シリカガラス基板Wの厚さ方向(Z方向)に沿って移動することによって、CCDカメラ1(撮像部)の焦点位置(フォーカス位置)を変えることができる。CCDカメラ1(撮像部)の焦点位置(フォーカス位置)は、Z軸方向のおもて面の位置に合わせられる。
【0020】
より具体的に説明すると、CCDカメラ1を移動駆動機構5によりZ軸方向に移動させて、CCDカメラ1(撮像部)の焦点位置が合成シリカガラス基板Wのおもて面位置となったところで停止させる。その後、前記移動駆動機構5によって、CCDカメラ1は、図1に一部示すように合成シリカガラス基板Wのおもて面W1を仮想的にn個にメッシュ分割した各領域Ar(Ar1、Ar2~Arn)の正面に対向するように、相対的にX方向、Y方向に移動する。
その後、領域Ar(Ar1、Ar2~Arn)毎に、CCDカメラ1によって、合成シリカガラス基板Wの撮像を行い、欠陥を検出することとなる。
【0021】
前記照明部2は、例えばメタルハライドランプを好適に用いることができる。図2に示すように、各照明部2の照射方向は、CCDカメラ1の撮像の光軸方向(レンズの光軸方向)とガラス基板Wのおもて面W1との交差点(照射位置Fとする)に向けて設けられている。このときのCCDカメラ1の光軸方向と照明部2の照射方向とのなす角度θ1は、好ましくは40°~50°である。
図1に示すように、各照明部2は、回転駆動部6によってCCDカメラ1の光軸を中心とした仮想円C上に沿って周方向に回転可能であり、CCDカメラ1を中心に周方向に0°から90°まで例えば10°ずつ移動する毎に、CCDカメラ1によって撮像が行われる。それにより、一領域Arにつき照射方向(仮想円Cの周方向に沿った回転角度)の異なる10枚の画像データが得られることになる。
【0022】
また、検査装置100は、CCDカメラ1から入力される画像データを処理するコンピュータ10と、処理された画像を表示するモニタ11と、コンピュータ10に合成シリカガラス基板Wの厚さ等を入力する入力装置12と、を備えている。
前記コンピュータ10は、演算を行うCPU14と、CPU14により実行可能な欠陥検査プログラムP等が記憶されるメモリ13と、CCDカメラ1が撮像した画像データを一時記憶するためのメモリ15と、メモリ15に一時記憶された画像データに対し2次元画像処理を行うための画像処理部16と、前記画像処理部16により処理された画像の前記モニタ11への出力制御を行う表示制御部17とを有する。
【0023】
図1に示すようにコンピュータ10は、前記CCDカメラ1と、前記移動駆動機構5と、照明部2をCCDカメラ1を中心に回転させる回転駆動部6と、前記モニタ11とに接続されている。
合成シリカガラス基板Wを検査する際には、検査対象である合成シリカガラス基板Wの厚さが入力装置12から入力されると、前記移動駆動機構5により、CCDカメラ1は、その焦点が基板おもて面W1になるように移動するようになされている。
【0024】
前記画像処理部16は、CCDカメラ1が検出した画像データを微分処理、及び二値化処理して、表面の傷や付着物を輝点として検出する。それら輝点は、XY方向の位置データと輝度データ、及び検出画素数に対応する面積データを有する。
また、以降に説明する欠陥の輝度測定は、CCDカメラ1が検出した画像データから画像処理部16によって処理することにより行われる。
そして、CPU14により各欠陥の輝度(256階調での数値)が各画像データについて求められ、メモリ13に、各欠陥における照射方向(仮想円Cの周方向に沿った回転角度)ごとの輝度(256階調)、照射方向の変化に対する輝度の変化率等が記憶される。
【0025】
(欠陥検査方法)
次に、本発明に係る光透過性板状体の欠陥検査方法について説明する。本願出願人は、合成シリカガラス基板における欠陥が付着物であるか傷であるかを判別する上で、図3のグラフに示すように、欠陥に対して照射する光の方向(仮想円Cの周方向に沿った回転角度)によって、傷は光り方(輝度)が大きく変化し、付着物はほとんど光り方(輝度)が変化しないことを知見し、この特徴を欠陥検査プログラムPに採用した。
【0026】
以下、具体的な実施形態について図4のフローに沿って説明する。
先ず、合成シリカガラス基板WをX-Yテーブルに搭載し、コンピュータ10においてCPU14により欠陥検査プログラムPを実行させる(図4のステップS1)。
また、この合成シリカガラス基板Wのおもて面W1側にCCDカメラ1を対向して配置し、入力装置12からシリカガラス基板Wの厚さを入力する。入力された厚さ寸法に基づき、移動駆動機構5は、CCDカメラ1を、その焦点が基板おもて面W1になるように移動させる(図4のステップS2)。
【0027】
次いで、移動駆動機構5によって、合成シリカガラス基板Wの面全体を走査するようにXY方向に撮像位置を順に移動させ、各撮像領域Arに対しCCDカメラ1により撮像を行う。このとき各領域Arnについて、CCDカメラ1の撮像の光軸を中心とする仮想円C上に90°間隔で配置された4つの照明部2を、回転駆動部6によって各CCDカメラ1を中心に周方向に0°から90°まで例えば10°ずつ回転させる。そして、10°ずつ回転した時点でCCDカメラ1によって2次元画像データを撮像する(図4のステップS3)。それにより、一領域Arnにつき照射方向(仮想円Cの周方向に沿った回転角度)の異なる10枚の画像データが得られる。これら10枚の画像データは、領域Arnごとに紐付けされ、メモリ15に一時記憶される。
【0028】
欠陥検査プログラムPに基づき、画像処理部16は、メモリ15に記憶された画像データを領域Arごとに画像処理し、欠陥を検出するとともに、その欠陥が傷であるのか付着物であるのかを判別する。具体的には、画像処理部16は、10枚の画像データのそれぞれについて欠陥エッジ抽出のための微分化処理、欠陥を抽出するための二値化処理を行う。この二値化処理における輝点としての検出下限値を越えたものが欠陥として特定される(図4のステップS4)。
【0029】
更に、コンピュータ10は、欠陥検査プログラムPに基づき、各画像データについて、特定した各欠陥の輝度を例えば256階調で表し、画像データ間において各欠陥のあるXY座標における輝度の変化率を求める(図4のステップS5)。この変化率は、照射角度毎に得た欠陥の輝度のばらつき(標準偏差s)により求める。
ここでコンピュータ10は、検出された各欠陥について、その輝度の変化率が所定の閾値、具体的には、輝度の標準偏差sが10より大きいものは(図4のステップS6)、照射部2による照射方向によって検出された方向性を有する傷欠陥であると判定する(図4のステップS7)。
一方、輝度の変化率が前記閾値より小さい場合には(図4のステップS6)、照射部2による照射方向にかかわらず検出された付着物であると判定する(図4のステップS8)。
【0030】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、合成シリカガラス基板Wのおもて面における欠陥を検出する際、欠陥に対する光の照射方向によって、傷は大きく光り方(輝度)が変化し、付着物は殆ど光り方(輝度)が変化しないことに着目し、照射方向(仮想円Cの周方向に沿った回転角度)に対する輝度の変化率が閾値より大きい場合は欠陥が傷であると判定し、輝度の変化率が閾値より小さい場合は欠陥が付着物であると判定するようにした。これにより、目視による検査を行うことなく合成シリカガラス基板Wの欠陥検出を行い、一度の画像データの撮像と解析の検査により容易に傷と付着物の判別を行うことができる。
【0031】
尚、本実施の形態においては、仮想円C上に4つの照射部2を配置したが、仮想円C上に配置する照射部2の数は本発明において限定されるものではない。また、前記実施の形態では、仮想円Cの周方向に沿った回転角度を10°ずつ移動させるものとしたが、本発明にあっては、前記回転角度は限定されるものではなく、任意の角度に設定してよい。
【0032】
また、前記実施の形態においては、合成シリカガラス基板Wのおもて面W1における欠陥検査について説明したが、図1の構成において、CCDカメラ1の焦点位置を基板裏面に合わせ、照射部2の照射位置をCCDカメラ1の焦点位置に合わせることにより、ガラス基板Wの裏面W2における欠陥検査も行うことができる。
【0033】
また、本実施の形態においては、合成シリカガラス基板Wを例にとって説明したが、本発明に係る光透過性板状体の欠陥検査方法は、これに限定されることなく、透明セラミックス、透明樹脂等の光透過性板状体に適用することができる。
更に、本実施の形態においては、CCDカメラを用いて検査を行ったが、これに限定されることなく、CMOS等の撮像装置を用いても良い。
【実施例0034】
本発明に係る光透過性板状体の欠陥検査方法について、実施例に基づき、更に説明する。
[実験1]
実験1では、合成シリカガラス基板における欠陥が付着物であるか傷であるかを判別する上で、欠陥に対して照射する光の方向によって、傷は光り方(輝度)が大きく変化し、付着物はほとんど光り方(輝度)が変化しないという想定モデルについて検証した。
【0035】
(試験1)
試験1では、合成シリカガラス基板のおもて面において、予め線状の傷とわかっている欠陥に対し、図1の装置によりCCDカメラ1を中心として仮想円上に配置された照射部2を回転させ、仮想円Cに沿った周方向の回転角度を10°ずつ変化させながらCCDカメラ1により撮像し、一領域Arnにつき10枚の画像データを得た。画像データから欠陥の輝度を256階調の数値で表し、図5(a)のグラフにプロットした。2つの傷の欠陥について輝度測定を行った。図5(a)のグラフにおいて、横軸は仮想円Cの周方向に沿った回転角度(°)、縦軸は輝度(256階調)である。
図5(a)のグラフに示すように、2つの傷欠陥ともに、照射方向によって、輝度が大きく変化することを確認した。
【0036】
(試験2)
試験2では、合成シリカガラス基板のおもて面において、予め付着物とわかっている欠陥に対し、図1の装置によりCCDカメラ1を中心として仮想円上に配置された照射部2を回転させ、仮想円Cの周方向に沿った回転角度を10°ずつ変化させながらCCDカメラ1により撮像し、一領域Arnにつき10枚の画像データを得た。画像データから欠陥の輝度を256階調の数値で表し、図5(b)のグラフにプロットした。2つの付着物の欠陥について輝度測定を行った。図5(b)のグラフにおいて、横軸は仮想円Cの周方向に沿った回転角度(°)、縦軸は輝度(256階調)である。
図5(b)のグラフに示すように、欠陥が付着物の場合には、いずれも照射方向によって、輝度が殆ど変化しないことを確認した。
【0037】
[実験2]
実験2では、図1の欠陥検査装置を用い、欠陥検出を行うとともに、検出した欠陥が、傷の欠陥か付着物の欠陥かを判別した。
【0038】
(実施例1)
実施例1では、□520mm×800mmで厚さ10mmのガラス基板のおもて面に、複数の微細な傷及び粒子径0.1μm~0.5μmの粒子をランダムに各々10個、形成・付着させ、被検査基板とした。この合成シリカガラス基板に対し欠陥検査を実施した。
図1の装置によりCCDカメラ1を中心として仮想円C上に配置された4つの照射部2を回転させ、仮想円の周方向に沿った回転角度を10°ずつ変化させながらCCDカメラ1により撮像し、すべての領域Arnにつき10枚の画像データを得た。
そして、各領域Arにおいて、10枚の画像データのそれぞれについて欠陥エッジ抽出のための微分化処理、欠陥を抽出するための二値化処理を行い、欠陥検出下限値を越えたものを欠陥として特定した。
【0039】
また、各画像データについて、特定した各欠陥の輝度を256階調で表し、画像データ間において各欠陥のあるXY座標における輝度の変化率を求めた。そして、検出された各欠陥について、輝度の標準偏差sが10より大きいものは傷欠陥であると判定し、閾値より小さいものは付着物と判定した。
結果、10個いずれの傷及び付着物も正しく識別し、検出することができた。
【符号の説明】
【0040】
1 CCDカメラ(撮像部)
2 照明部
5 移動駆動機構
10 コンピュータ
16 画像処理部
C 仮想円
P 欠陥検出プログラム
W 合成シリカガラス基板(光透過性板状体)
W1 おもて面

図1
図2
図3
図4
図5
図6