(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093342
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】カラムを用いた紅茶抽出液の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/16 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A23F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209652
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 藍
(72)【発明者】
【氏名】山本 研一朗
(72)【発明者】
【氏名】千葉 彩香
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 みなみ
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB08
4B027FC02
4B027FK01
4B027FK03
4B027FK20
4B027FP72
4B027FP90
4B027FR20
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、カラムを用いた紅茶抽出液の製造方法であって、苦渋味が保持され、かつ、雑味が抑制された紅茶抽出液の製造方法、及び、該製造方法により製造された紅茶抽出液を含む容器詰紅茶飲料等を提供することにある。
【解決手段】カラム容器内で紅茶葉と水を接触させる工程A、及び、前記工程Aより後に、前記カラム容器内に水を添加しながら、前記カラム容器から紅茶抽出液を得る工程Bを含む、紅茶抽出液の製造方法であって、
カラム容器から得られる紅茶抽出液全量のうち、最初に得られる6分の1重量倍の画分を第1画分とし、最後に得られる6分の1重量倍の画分を第6画分とした場合に、
前記第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、前記第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となるように、前記工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させて調整することを特徴とする、前記紅茶抽出液の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラム容器内で紅茶葉と水を接触させる工程A、及び、
前記工程Aより後に、前記カラム容器内に水を添加しながら、前記カラム容器から紅茶抽出液を得る工程B
を含む、紅茶抽出液の製造方法であって、
カラム容器から得られる紅茶抽出液全量のうち、最初に得られる6分の1重量倍の画分を第1画分とし、最後に得られる6分の1重量倍の画分を第6画分とした場合に、
前記第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、前記第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となるように、前記工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させて調整することを特徴とする、
前記紅茶抽出液の製造方法。
【請求項2】
第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となることが、第1画分の紅茶抽出液のpHが3.9~4.7となり、かつ、第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6~5.3となることである、請求項1に記載の紅茶抽出液の製造方法。
【請求項3】
第6画分の紅茶抽出液のpHから、第1画分の紅茶抽出液のpHを差し引いた数値が、0.5以上である、請求項1に記載の紅茶抽出液の製造方法。
【請求項4】
pH調整剤が、アスコルビン酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リン酸、塩酸、及び、炭酸からなる群から選択される1種または2種以上の酸である、請求項1に記載の紅茶抽出液の製造方法。
【請求項5】
工程Aが、カラム容器内で、1種または2種以上の酸の粉末を紅茶葉に接触させた後、水を添加することである、請求項4に記載の紅茶抽出液の製造方法。
【請求項6】
紅茶抽出液全量のタンニン濃度が200~5000mg/Lである、請求項1に記載の紅茶抽出液の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6に記載の紅茶抽出液の製造方法により製造された紅茶抽出液を含む容器詰紅茶飲料。
【請求項8】
紅茶抽出液の製造において、カラム容器内で紅茶葉と水を接触させる工程A、及び、
前記工程Aより後に、前記カラム容器内に水を添加しながら、前記カラム容器から紅茶抽出液を得る工程B
を含む、紅茶抽出液の雑味の抑制方法であって、
カラム容器から得られる紅茶抽出液全量のうち、最初に得られる6分の1重量倍の画分を第1画分とし、最後に得られる6分の1重量倍の画分を第6画分とした場合に、
前記第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、前記第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となるように、前記工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させて調整することを特徴とする、
前記紅茶抽出液の雑味の抑制方法。
【請求項9】
pH調整剤が、アスコルビン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リン酸、塩酸、及び、炭酸からなる群から選択される1種または2種以上の酸である、請求項8に記載の紅茶抽出液の雑味の抑制方法。
【請求項10】
紅茶抽出液全量のタンニン濃度が200~5000mg/Lである、請求項8に記載の紅茶抽出液の雑味の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラムを用いた紅茶抽出液の製造方法、及び、該製造方法により製造された紅茶抽出液を含む容器詰紅茶飲料等に関する。より詳細には、カラムを用いた紅茶抽出液の製造方法であって、苦渋味が保持され、かつ、雑味が抑制された紅茶抽出液の製造方法、及び、該製造方法により製造された紅茶抽出液を含む容器詰紅茶飲料等に関する。
【背景技術】
【0002】
茶飲料は、独特な香気と、苦味、渋味が醸し出す爽やかな風味から、古くから嗜好飲料、健康飲料として親しまれてきた代表的な飲料である。茶飲料には、緑茶、半発酵茶(烏龍茶)、発酵茶(紅茶)等、各種の茶から調製されたものがあり、近年は、缶詰、ペットボトル詰、又は紙パック等の容器詰飲料として、流通に供されている。紅茶飲料は、紅茶の独特な香気と、苦味、渋味をもつ味覚から、嗜好の面から或いは健康志向の面から、茶飲料の中でも特に愛用されている飲料の一つである。そのため、各種香味バリエーションに調製された紅茶飲料が、缶やペットボトルなどに充填された容器詰紅茶飲料として提供されている。
【0003】
紅茶飲料を製造する際には、紅茶葉から紅茶抽出液を得て、かかる紅茶抽出液を用いて紅茶飲料を製造する方法が一般的である。紅茶抽出液の風味がそのまま紅茶飲料の風味に影響を及ぼすため、風味の向上や不純物除去に関する様々な検討が重ねられており、風味の良い紅茶抽出液を得ること等を目的として、様々な抽出方法が開発されている。
【0004】
一般に、容器詰めの紅茶飲料に用いる紅茶抽出液の製法としては、ニーダーと呼ばれる抽出槽に紅茶葉と加熱した抽出溶媒を投入し、必要に応じて撹拌を行った後に紅茶抽出液を取り出す方法が知られている。この他に、カラム型の抽出槽に茶葉を投入し抽出溶媒を通じて抽出液を取る方法も知られている。カラム型の抽出槽を用いる抽出法には、浸漬方式と、通水方式が知られている。浸漬方式では、カラム型の抽出槽にお湯を張り、そこに紅茶葉を添加してから、必要に応じて、撹拌及び/又は保持を行ったあと、通常、抽出槽の下部から紅茶抽出液を採取する。例えば、特許文献1には、カラム型の抽出槽を用いて、浸漬方式で茶エキスを製造する方法が開示されている。
【0005】
一方、通水方式では、カラム型の抽出槽に比較的少ないお湯を張り、そこに紅茶葉を添加した後、上部からお湯をシャワー状に注ぎ(「一次シャワー」)、必要に応じてしばらく保持した後、上部からお湯をシャワー状に注ぎながら(「二次シャワー」)、抽出槽の下部から紅茶抽出液を採取する。通水方式のカラム抽出法では、二次シャワーで新鮮な湯を足すため、ニーダー抽出法や、浸漬方式のカラム抽出法と比較して、同じ茶葉量でも少ない湯量で抽出でき、濃い抽出液を得ることも可能である。しかし、通水方式のカラム抽出法で抽出した紅茶飲料には、雑味と苦渋味が多い傾向があるという課題があり、苦渋味を維持しながら、雑味を抑制する方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、カラムを用いた紅茶抽出液の製造方法であって、苦渋味が保持され、かつ、雑味が抑制された紅茶抽出液の製造方法、及び、該製造方法により製造された紅茶抽出液を含む容器詰紅茶飲料等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、
カラム容器内で紅茶葉と水を接触させる工程A、及び、前記工程Aより後に、前記カラム容器内に水を添加しながら、前記カラム容器から紅茶抽出液を得る工程Bを含む、紅茶抽出液の製造方法において、
カラム容器から得られる紅茶抽出液全量のうち、最初に得られる6分の1重量倍の画分を第1画分とし、最後に得られる6分の1重量倍の画分を第6画分とした場合に、
前記第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、前記第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となるように、前記工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させて調整することによって、苦渋味を保持しつつ、雑味が抑制された紅茶抽出液を得ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)カラム容器内で紅茶葉と水を接触させる工程A、及び、
前記工程Aより後に、前記カラム容器内に水を添加しながら、前記カラム容器から紅茶抽出液を得る工程B
を含む、紅茶抽出液の製造方法であって、
カラム容器から得られる紅茶抽出液全量のうち、最初に得られる6分の1重量倍の画分を第1画分とし、最後に得られる6分の1重量倍の画分を第6画分とした場合に、
前記第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、前記第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となるように、前記工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させて調整することを特徴とする、
前記紅茶抽出液の製造方法;
(2)第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となることが、第1画分の紅茶抽出液のpHが3.9~4.7となり、かつ、第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6~5.3となることである、上記(1)に記載の紅茶抽出液の製造方法;
(3)第6画分の紅茶抽出液のpHから、第1画分の紅茶抽出液のpHを差し引いた数値が、0.5以上である、上記(1)又は(2)に記載の紅茶抽出液の製造方法;
(4)pH調整剤が、アスコルビン酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リン酸、塩酸、及び、炭酸からなる群から選択される1種または2種以上の酸である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の紅茶抽出液の製造方法;
(5)工程Aが、カラム容器内で、1種または2種以上の酸の粉末を紅茶葉に接触させた後、水を添加することである、上記(4)に記載の紅茶抽出液の製造方法;
(6)紅茶抽出液全量のタンニン濃度が200~5000mg/Lである、上記(1)~(5)のいずれかに記載の紅茶抽出液の製造方法;
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載の紅茶抽出液の製造方法により製造された紅茶抽出液を含む容器詰紅茶飲料;
(8)紅茶抽出液の製造において、カラム容器内で紅茶葉と水を接触させる工程A、及び、
前記工程Aより後に、前記カラム容器内に水を添加しながら、前記カラム容器から紅茶抽出液を得る工程B
を含む、紅茶抽出液の雑味の抑制方法であって、
カラム容器から得られる紅茶抽出液全量のうち、最初に得られる6分の1重量倍の画分を第1画分とし、最後に得られる6分の1重量倍の画分を第6画分とした場合に、
前記第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、前記第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となるように、前記工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させて調整することを特徴とする、
前記紅茶抽出液の雑味の抑制方法;
(9)pH調整剤が、アスコルビン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リン酸、塩酸、及び、炭酸からなる群から選択される1種または2種以上の酸である、上記(8)に記載の紅茶抽出液の雑味の抑制方法;
(10)紅茶抽出液全量のタンニン濃度が200~5000mg/Lである、上記(8)又は(9)に記載の紅茶抽出液の雑味の抑制方法;
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カラムを用いた紅茶抽出液の製造方法であって、苦渋味が保持され、かつ、雑味が抑制された紅茶抽出液の製造方法、及び、該製造方法により製造された紅茶抽出液を含む容器詰紅茶飲料等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
[1]カラム容器内で紅茶葉と水を接触させる工程A、及び、前記工程Aより後に、前記カラム容器内に水を添加しながら、前記カラム容器から紅茶抽出液を得る工程Bを含む、紅茶抽出液の製造方法であって、
カラム容器から得られる紅茶抽出液全量のうち、最初に得られる6分の1重量倍の画分を第1画分とし、最後に得られる6分の1重量倍の画分を第6画分とした場合に、
前記第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、前記第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となるように、前記工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させて調整することを特徴とする、前記紅茶抽出液の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[2]本発明の紅茶抽出液の製造方法により製造された紅茶抽出液(以下、「本発明における紅茶抽出液」とも表示する。)を含む容器詰紅茶飲料(以下、「本発明の飲料」とも表示する。);
[3]紅茶抽出液の製造において、カラム容器内で紅茶葉と水を接触させる工程A、及び、前記工程Aより後に、前記カラム容器内に水を添加しながら、前記カラム容器から紅茶抽出液を得る工程Bを含む、紅茶抽出液の雑味の抑制方法であって、
カラム容器から得られる紅茶抽出液全量のうち、最初に得られる6分の1重量倍の画分を第1画分とし、最後に得られる6分の1重量倍の画分を第6画分とした場合に、
前記第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、前記第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となるように、前記工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させて調整することを特徴とする、前記紅茶抽出液の雑味の抑制方法(以下、「本発明の抑制方法」とも表示する。);
等の実施態様を含む。
【0012】
(紅茶葉)
本発明に用いる紅茶葉は特に限定されず、例えばCamelliasinensisの中国種(var.sinensis)、アッサム種(var.assamica)又はそれらの雑種から得られる茶葉から発酵工程を経て製茶されたものが挙げられる。茶期、茶葉の形状、産地、品種、等級、及び発酵条件等も特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
【0013】
(カラム容器)
本発明に用いるカラム容器は、容器内に水や紅茶葉を保持することができる限り、形状、大きさ、材質など特に制限されないが、好ましくは、容器の下部に茶葉を保持することができる底網、容器内に水を供給することができる供給装置(好ましくは、容器の上部から水を散布することができる散布装置)、及び、容器内で製造される紅茶抽出液を容器外に排出することができる排出部(好ましくは、容器の下部から紅茶抽出液を排出することができる排出部)からなる群から選択される1種又は2種又は3種を備えていることが好ましい。
【0014】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法としては、カラム容器内で紅茶葉と水を接触させる工程A、及び、前記工程Aより後に、前記カラム容器内に水を添加しながら、前記カラム容器から紅茶抽出液を得る工程Bを含む、紅茶抽出液の製造方法であって、
カラム容器から得られる紅茶抽出液全量のうち、最初に得られる6分の1重量倍の画分を第1画分とし、最後に得られる6分の1重量倍の画分を第6画分とした場合に、
前記第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、前記第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となるように、前記工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させて調整することを特徴とする、前記紅茶抽出液の製造方法である限り、特に制限されない。
【0015】
(工程A及び工程B)
本発明における工程A及び工程Bとしては、
カラム容器内で紅茶葉と水を接触させる工程A、及び、前記工程Aより後に、前記カラム容器内に水を添加しながら、前記カラム容器から紅茶抽出液を得る工程Bであって、
カラム容器から得られる紅茶抽出液全量のうち、最初に得られる6分の1重量倍の画分を第1画分とし、最後に得られる6分の1重量倍の画分を第6画分とした場合に、
前記第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、前記第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となるように、前記工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させて調整することである限り特に制限されない。
【0016】
上記工程Aで紅茶葉に接触させる水の温度としては、10~100℃、又は、50~100℃が好ましく、70~100℃がより好ましい。上記工程Aで紅茶葉に接触させる水の量は、特に制限されないが、例えば、使用する紅茶葉の乾燥重量に対して1~10重量倍、好ましくは3~7重量倍、より好ましくは4~6重量倍が挙げられる。紅茶葉に接触させる水を、使用する紅茶葉の乾燥重量に対して比較的低い割合とすると、濃い紅茶抽出液を得ることができる。また、工程Aで紅茶葉と水を接触させる時間としては、特に制限されず、例えば0.5~30分、好ましくは2~8分、より好ましくは3~5分を挙げることができる。また、工程Aは、カラム容器内の紅茶葉に水を添加して、紅茶葉と水を接触させることが好ましい。
【0017】
また、上記工程Bで、カラム容器内に添加して、紅茶葉に接触させる水の温度としては、10~100℃、又は、50~100℃が好ましく、70~100℃がより好ましい。上記工程Bで添加する水の量は、特に制限されないが、例えば、使用する紅茶葉の乾燥重量に対して2~30重量倍、好ましくは8~27.5重量倍、より好ましくは15~25重量倍が挙げられる。
工程Bで水の添加を開始してから、紅茶抽出液を得ることが完了するまでの時間としては、特に制限されず、例えば1分~20分、好ましくは3分~18分、より好ましくは8~18分が挙げられる。
また、工程A及び工Bにおいて、紅茶葉が水と接触している合計時間(すなわち、工程Aで紅茶葉と水の接触が開始されてから、工程Bで紅茶抽出液を得ることが完了するまでの時間)としては、特に制限されず、例えば1.5~50分、好ましくは5~23分、より好ましくは11~23分が挙げられる。
【0018】
上記の工程Bにおいて、カラム容器内に水を添加する方法としては、特に制限されないが、紅茶葉の上部から散布して添加する方法が好ましく挙げられる。また、工程Bにおける水の添加は、工程Bにおける水の添加量の全量を1回で連続的に添加してもよいし、2回以上に分けて添加してもよい。
【0019】
上記工程Bにおいて、「カラム容器内に水を添加しながら、カラム容器から紅茶抽出液を得る」こととしては、カラム容器内に水を添加する時期の一部と、カラム容器から紅茶抽出液を得る時期の一部が重なっている限り、特に制限されず、水の添加の開始の方が先であってもよいし、紅茶抽出液を得ることの開始の方が先であってもよいし、両方の開始が同時であってもよい。例えば、工程Bにおける水の添加の開始が、工程Bにおける紅茶抽出液を得ることの開始の、5分前以降、3分前以降、又は、1分前以降であってもよいし、工程Bにおける紅茶抽出液を得ることの開始が、工程Bにおける水の添加の開始の、5分前以降、3分前以降、又は、1分前以降であってもよい。
【0020】
上記工程Bで、カラム容器から紅茶抽出液を得る方法としては、特に制限されず、ポンプ等を用いて吸い上げるなどして紅茶抽出液を得てもよいが、カラム容器の下部の排出部から自然落下等を利用して紅茶抽出液を得る方法が好ましく挙げられる。なお、紅茶葉が水と接触している時間を所望の範囲に制御する観点などから、紅茶抽出液を得る際には、その流速を管理することが望ましい。
【0021】
「第1画分の紅茶抽出液」とは、本発明における工程A及び工程Bを実施する過程において最初に得られる紅茶抽出液であって、カラム容器から得られる紅茶抽出液全量に対して6分の1重量倍の紅茶抽出液を意味する。
【0022】
本発明における、「第1画分の紅茶抽出液」のpHとしては、4.7以下である限り、特に制限されないが、3.9~4.7が好ましく挙げられ、雑味をより多く抑制する観点から、3.9~4.4がより好ましく挙げられる。
【0023】
「第6画分の紅茶抽出液」とは、本発明における工程A及び工程Bを実施する過程において最後に得られる紅茶抽出液の画分であって、カラム容器から得られる紅茶抽出液全量に対して6分の1重量倍の紅茶抽出液を意味する。
【0024】
本発明における、「第6画分の紅茶抽出液」のpHとしては、4.6以上である限り、特に制限されないが、4.6~5.3が好ましく挙げられ、4.6~4.9がより好ましく挙げられる。
【0025】
本発明において、工程A及び工程Bを実施して得られる紅茶抽出液の全量としては、特に制限されないが、使用する紅茶葉の乾燥重量に対して2~40重量倍、好ましくは10~30重量倍、より好ましくは15~25重量倍が挙げられる。得られる紅茶抽出液全量を、使用する紅茶葉の乾燥重量に対して比較的低い割合とすると、濃い紅茶抽出液を得ることができる。また、本発明の製造方法における「紅茶抽出液全量」のpHとしては、特に制限されないが、4.1~5.0が好ましく挙げられ、4.1~4.5がより好ましく挙げられる。
【0026】
本発明において、カラム容器内に供給する水のすべてを紅茶葉に接触させてもよいし、接触させなくてもよい。カラム容器内に供給する水のうち、紅茶葉に接触させない水として、底水が挙げられる。底水としては、容器内で茶葉を保持する底網の下に存在する水が挙げられる。底水の温度としては、10~100℃、又は、50~100℃が好ましく、70~100℃がより好ましい。
【0027】
(pHの調整方法)
第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となるように、工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させて調整する方法としては、そのように調整できる限り、特に制限されない。上記のpH調整剤を、本発明における水にあらかじめ含有させた後、紅茶葉に接触させてもよいが、紅茶抽出液の雑味をより多く抑制する観点から、紅茶葉を水に接触させる前に、pH調整剤(好ましくは、酸の粉末であるpH調整剤)を工程Aにおける紅茶葉に接触させた後、そこに水を添加して接触させる方法が好ましく挙げられる。紅茶葉を水に接触させる前に、pH調整剤(好ましくは、酸の粉末であるpH調整剤)を工程Aにおける紅茶葉に接触させる方法としては、pH調整剤を紅茶葉と混合する方法や、pH調整剤を紅茶葉に散布する方法が挙げられ、紅茶抽出液の雑味をより多く抑制する観点から、pH調整剤を紅茶葉に散布する方法が好ましく挙げられ、pH調整剤を紅茶葉の上に散布する方法がより好ましく挙げられる。
【0028】
上記のpH調整剤としては、アスコルビン酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リン酸、塩酸、及び、炭酸からなる群から選択される1種または2種以上の酸(以下、本発明における「酸」とも表示する)が挙げられ、中でも、アスコルビン酸が好ましく挙げられ、中でも、L-アスコルビン酸がより好ましく挙げられる。本発明における酸としては、紅茶抽出液の雑味をより多く抑制する観点から、本発明における酸の粉末が好ましく挙げられる。
【0029】
pH調整剤(好ましくは、酸の粉末)を工程Aにおける紅茶葉及び水に接触させる場合の、紅茶葉へのpH調整剤(乾燥重量換算)の添加率としては、特に制限されないが、紅茶葉の乾燥重量に対して例えば0.5~8重量%、好ましくは1~8重量%が挙げられる。
【0030】
pH調整剤として、本発明における酸を用いる場合は、かかる本発明における酸は、本発明における酸であっても、本発明における酸の塩であってもよいが、雑味をより多く抑制する観点から、本発明における酸が好ましく挙げられる。本発明における酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0031】
第1画分の紅茶抽出液が調製される際に紅茶葉に接触する水における、pH調整剤(好ましくは本発明における酸)の濃度としては、第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下である限り、特に制限されないが、例えば3000~32000mg/L、好ましくは4000~32000mg/L、より好ましくは12000~32000mg/Lが挙げられる。かかる数値範囲は、pH調整剤が酸である場合には、本発明における酸の濃度であり、本発明における酸の塩を用いた場合は、本発明における酸に換算した濃度である。前述の数値範囲は、pH調整剤がアスコルビン酸である場合に特に好適に挙げられる。
【0032】
得られる紅茶抽出液全量中の、pH調整剤(好ましくは本発明における酸)の濃度としては、特に制限されないが、例えば333~5333mg/L、好ましくは666~5333mg/L、より好ましくは2000~5333mg/Lが挙げられる。かかる数値範囲は、pH調整剤が酸である場合には、本発明における酸の濃度であり、本発明における酸の塩を用いた場合は、本発明における酸に換算した濃度である。前述の数値範囲は、pH調整剤がアスコルビン酸である場合に特に好適に挙げられる。
【0033】
なお、本発明における工程A及び工程Bを実施する際、本発明の効果を妨げない限り、水に酵素剤等の任意の添加物を加えてもよい。また、本発明において得られる紅茶抽出液のうち、第1画分より後で、第6画分より前に得られる、第2画分、第3画分、第4画分、第5画分の紅茶抽出液(「中間画分」)のpHとしては、本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、例えば3.9~5.3や、4.0~5.3や、4.3~5.3が挙げられる。なお、第2画分、第3画分、第4画分、第5画分はそれぞれ、得られる紅茶抽出液全量に対して6分の1重量倍の抽出液からなる。
【0034】
(紅茶抽出液のタンニン濃度)
本発明における紅茶抽出液のタンニンの含有濃度としては、特に制限されないが、例えば、200mg/L以上が挙げられ、苦渋味を維持する観点から、好ましくは300mg/L以上、より好ましくは400mg/L以上、さらに好ましくは500mg/L以上が挙げられる。
また、本発明における紅茶抽出液におけるタンニンの含有濃度の上限としては、特に制限されないが、例えば5000mg/L以下、4000mg/L以下、3000mg/L以下、2000mg/L以下、1600mg/L以下、1200mg/L以下、1000mg/L以下、750mg/L以下、700mg/L以下、670mg/L以下が挙げられる。これらの下限値および上限値は、上限と下限とすることが可能な範囲内で、それぞれ任意に組み合わせることができる。
【0035】
本発明において、紅茶抽出液のタンニン濃度は、例えば、紅茶抽出液を調製する際の、紅茶葉や水の使用量などを調整すること等により調整することができる。
【0036】
(容器詰紅茶飲料)
本発明における「容器詰紅茶飲料」は、本発明の製造方法により製造された紅茶抽出液(「本発明における紅茶抽出液」)を含む容器詰紅茶飲料である。本発明の飲料は、かかる紅茶抽出液を用いているため、苦渋味が保持され、かつ、雑味が抑制されているという特徴を有する。なお、上記の「本発明における紅茶抽出液を含む」ことには、本発明における紅茶抽出液自体を含む場合のほか、本発明における抽出液の加工品類(例えば、紅茶抽出液を濃縮処理や粉末化処理等した紅茶抽出物エキス)等を含む場合も包含される。
【0037】
本発明の飲料中の、本発明におけるpH調整剤(好ましくは本発明における酸)の濃度としては、特に制限されないが、例えば200~5000mg/L、好ましくは700~4750mg/L、より好ましくは1200~4500mg/Lが挙げられる。かかる数値範囲は、pH調整剤が酸である場合には、本発明における酸の濃度であり、本発明における酸の塩を用いた場合は、本発明における酸に換算した濃度である。前述の数値範囲は、pH調整剤がアスコルビン酸である場合に特に好適に挙げられる。
【0038】
(本発明の飲料のタンニン濃度)
本発明の飲料のタンニンの含有濃度としては、特に制限されないが、例えば、200mg/L以上が挙げられ、苦渋味を維持する観点から、好ましくは300mg/L以上、より好ましくは400mg/L以上、さらに好ましくは500mg/L以上が挙げられ、また、700mg/L以上、800mg/L以上、1000mg/L以上が挙げられる。
また、本発明の飲料におけるタンニンの含有濃度の上限としては、特に制限されないが、例えば5000mg/L以下、4000mg/L以下、3000mg/L以下、2000mg/L以下、1600mg/L以下、1200mg/L以下、1000mg/L以下、750mg/L以下、700mg/L以下、670mg/L以下が挙げられる。これらの下限値および上限値は、上限と下限とすることが可能な範囲内で、それぞれ任意に組み合わせることができる。本発明の飲料は、希釈用の紅茶飲料であってもよい。かかる希釈倍率としては特に制限されないが、例えば2~10倍、2~8倍、3~7倍などであってもよい。
【0039】
本発明において、飲料中のタンニン濃度は、例えば、紅茶抽出液を調製する際の、紅茶葉や水の使用量や、紅茶抽出液の使用量などを調整すること等により調整することができる。
【0040】
本発明の飲料中のタンニン濃度は、酒石酸鉄吸光光度法(好ましくは、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法)を用いて測定することができる。
【0041】
(任意成分)
本発明の飲料は、例えば、酸味料、色素、甘味料、保存料、増粘安定剤、乳成分、及び、乳化剤のいずれか1つ又は2つ以上を含んでいなくてもよいが、含んでいてもよい。
【0042】
上記の「甘味料」としては、果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖、乳糖、トレハロース、麦芽糖、ショ糖等の二糖、粉末水あめ中の単糖、二糖等といった結晶性糖類;や、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖;水あめ、異性化液糖(例えば果糖ブドウ糖液糖)等の非結晶性糖類;マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール;スクラロース、ステビア、甘草抽出物、ソーマチン、グリチルリチン、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK等の高甘味度甘味料;を挙げることができ、甘味の自然さの観点から、糖類(結晶性糖類及び非結晶性糖類)が好ましく挙げられ、また、カロリーの低さの観点から、糖アルコールや高甘味度甘味料が好ましく挙げられる。甘味料を用いる場合、本発明の飲料における甘味料の濃度としては特に制限されないが、甘味料が糖類である場合、例えば、0.1~10重量%や、0.5~8重量%が挙げられ、甘味料が糖アルコールや高甘味度甘味料の場合、ショ糖換算の甘味度で0.1~10重量%や、0.5~8重量%となる濃度が挙げられる。
【0043】
(乳成分)
本明細書において「乳成分」とは、乳脂肪及び/又は無脂乳固形分を意味する。乳成分や、乳成分含有組成物として、具体的には、生乳又はその加工品(例えば、濃厚牛乳、低脂肪乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂粉乳、調製粉乳、脱脂粉乳、練乳、発酵乳、クリーム、チーズ、バター、ホエイパウダー、バターミルクパウダー等)が挙げられる。乳成分は含んでいなくても、含んでいてもよいが、本発明の課題がより顕著となり、発明の意義をより多く享受し得るため、含んでいないことが好ましい。
【0044】
(pH)
本発明の飲料のpHとしては特に制限されないが、例えば3.8~7.2が挙げられる。
該pHの調整は、本発明の飲料の香味設計に応じて、本発明における酸の使用量を調整することや、重曹などのアルカリ剤を用いること等により行うことができる。
本発明の飲料や紅茶抽出液のpHは、20℃におけるpHを指し、pHメーター(例えば、本体機器「HM-41X」;電極「ST-5741C」;いずれも東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて常法により測定することができる。
【0045】
本発明の飲料としては、本発明における紅茶抽出液を含む容器詰紅茶飲料である限り特に制限されない。本発明の飲料は、本発明における紅茶抽出液を用いること以外は、用いる製造原料、製造方法並びに製造条件において、通常の容器詰紅茶飲料と特に相違する点はない。
【0046】
本発明の飲料は、容器詰飲料である。かかる容器としては、ペットボトル、ポリプロピレンボトル、ポリ塩化ビニルボトル等の樹脂ボトル容器;ビン容器;缶容器;等の容器が挙げられる。
【0047】
本発明の飲料は、加熱殺菌処理がなされていなくてもよいが、保存性向上の観点から、加熱殺菌処理がなされていてもよい。加熱殺菌処理の方法や条件としては、容器詰飲料などの飲料に使用される通常の方法や条件を用いることができる。
【0048】
(本発明の抑制方法)
本発明の抑制方法としては、紅茶抽出液の製造において、カラム容器内で紅茶葉と水を接触させる工程A、及び、前記工程Aより後に、前記カラム容器内に水を添加しながら、前記カラム容器から紅茶抽出液を得る工程Bを含む、紅茶抽出液の雑味の抑制方法であって、
カラム容器から得られる紅茶抽出液全量のうち、最初に得られる6分の1重量倍の画分を第1画分とし、最後に得られる6分の1重量倍の画分を第6画分とした場合に、
前記第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下となり、かつ、前記第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上となるように、前記工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させて調整することを特徴とする、前記紅茶抽出液の雑味の抑制方法である限り、特に制限されない。
【0049】
(雑味が抑制された紅茶抽出液)
本発明における紅茶抽出液は、「雑味が抑制された」紅茶抽出液である。本発明における「雑味」とは、後に残るえぐみを意味する。本発明の飲料は、本発明における紅茶抽出液を含んでいるため、雑味が抑制された容器詰紅茶飲料となる。
【0050】
本明細書において、「雑味が抑制された」紅茶抽出液としては、例えば、第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下ではなく、又は、第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上ではないような製造方法で製造された紅茶抽出液(好ましくは、工程Aにおける紅茶葉と水にpH調整剤を接触させない製造方法で製造された紅茶抽出液)(以下、「コントロール抽出液」とも表示する。)と比較して、雑味が抑制した紅茶抽出液などが挙げられる。
【0051】
ある紅茶抽出液(又は飲料)における、雑味の程度や、かかる雑味の程度が本発明におけるコントロール抽出液と比較してどのようであるか(例えば、雑味が抑制されているかどうか、どの程度抑制されているか)は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。
【0052】
雑味の評価の基準や、パネル間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができる。紅茶抽出液(又は飲料)における雑味の程度を評価するパネルの人数については、客観性がより高い評価を得る観点から、パネルの人数の下限を、例えば3名以上、好ましくは5名以上とすることができ、また、評価試験をより簡便に実施する観点から、パネルの人数の上限を、例えば7名以下とすることができる。パネルが2名以上の場合の紅茶抽出液における雑味の程度の評価は、その紅茶抽出液における雑味の程度についてのパネル全員の評価の平均を採用してもよく、例えば、各評価基準に評価点が付与されている場合、パネル全員の評価点の平均値をその紅茶抽出液における雑味の程度の評価として採用してもよい。前述のように、評価点の平均値を採用する場合は、その平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用してもよい。なお、パネルが2名以上である場合には、各パネルの評価のばらつきを低減するために、実際の官能評価試験を行う前に、各パネルの評価基準ができるだけ揃うように評価基準を共通化する作業を行っておくことが好ましい。かかる共通化作業としては、雑味の程度が最も大きいときの評価に相当する、その雑味の程度の認識をパネル間であらかじめ共通化した上で、各サンプル抽出液の評価を行うことが挙げられる。また、このような評価基準に関する事前の共通化作業により、例えば、評価点が1点;2点;3点;4点;5点;の5段階である場合の、各パネルによる雑味の程度の評価の標準偏差が0.5以内となるようにしておくことが好ましい。
【0053】
ある紅茶抽出液における、雑味の抑制の程度は、例えば後述の実施例の試験1に記載の官能評価法と同様の方法、好ましくは、同じ方法により評価することができる。より具体的には、コントロール抽出液と比較して、サンプル抽出液において、「5点:茶の雑味が抑制されていない」、「4点:茶の雑味がやや抑制されている」、「3点:茶の雑味が抑制されている」、「2点:茶の雑味が大幅に抑制されている」、「1点:茶の雑味が完全に抑制されている」の5段階で評価し、例えば複数のパネルによる評価点(平均値の小数第2位を四捨五入した値)をそれぞれ算出することができる。このような評価基準による評価点(複数のパネルによる評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値)が4.9点以下である紅茶抽出液は、雑味が抑制された紅茶抽出液に含まれるが、雑味の抑制が明確となる観点から、前述の評価点が好ましくは4点以下、より好ましくは3.5点以下である紅茶抽出液が、雑味が抑制された紅茶抽出液として挙げられる。
【0054】
(苦渋味が維持された紅茶抽出液)
本発明の紅茶抽出液は、苦渋味が維持された紅茶抽出液であることが好ましい。本発明における「苦渋味」とは、紅茶に本来含まれる苦味や渋味を意味し、その原因となる成分は、主にタンニンや重合ポリフェノール類であろうと考えられている。ある紅茶抽出液において、苦渋味が維持されているかどうかは、パネルによって、容易かつ明確に決定することができる。
【0055】
本明細書において、「苦渋味が維持された」紅茶抽出液としては、例えば、コントロール抽出液と比較して、苦渋味がおおむね維持された紅茶抽出液などが挙げられる。ある紅茶抽出液が、コントロール飲料と比較して、苦渋味がおおむね維持されているかどうかは、例えば、後述の実施例の試験1に記載の官能評価法と同様の方法、好ましくは、同じ方法により評価することができる。より具体的には、コントロール抽出液と比較して、サンプル抽出液において、「5点:茶の苦渋味が大幅に強い」、「4点:茶の苦渋味が強い」、「3点:茶の苦渋味が同程度」、「2点:茶の苦渋味が弱い」、「1点:茶の苦渋味が大幅に弱い」の5段階で評価し、例えば複数のパネルによる評価点(平均値の小数第2位を四捨五入した値)をそれぞれ算出することができる。このような評価基準による評価点(複数のパネルによる評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値)が例えば2.0点以上、好ましくは2.5点以上であるサンプル抽出液は、苦渋味が維持された紅茶抽出液に含まれる。
【0056】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例0057】
試験1.[カラム抽出時の序盤の採液のpHを、終盤の採液のpHと比較して低下させることによる、紅茶抽出液の雑味への影響]
カラム抽出時の序盤の採液のpHを、終盤の採液のpHと比較して低下させることが、紅茶抽出液の雑味にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0058】
(1.紅茶飲料の調製)
カラム抽出機器の底網の下に底湯を6kg張り、底網の上に6kgの紅茶葉を入れた。紅茶葉の上に、表3~5に記載の割合(乾燥した紅茶葉に対する割合:重量%)でL-アスコルビン酸の粉末を散布した。カラム抽出器内の上部に設置された散布装置から、75℃の湯を約30kg、紅茶葉の上にシャワー状に散布(「一次シャワー」)した。次いで、散布装置から、75℃の湯を約9分かけて紅茶葉の上にシャワー状に散布(「二次シャワー」)しながら、抽出機器の下部から紅茶抽出液を90kg引き抜いて採取した(試験区2~6)。その際、カラム抽出器から最初に採取した15kgの画分(採取した紅茶抽出液全量90kgに対して6分の1重量倍)を第1画分とし、最後に採取した15kgの画分(採取した紅茶抽出液全量90kgに対して6分の1重量倍)を第6画分とし、第1画分と第6画分の間の中間画分(60kg)を第2画分~第5画分(それぞれ15kgずつ)とした。また、各試験区において、第1画分、第2画分~第5画分、第6画分をすべて合算した紅茶抽出液を全画分(90kg)とした。また、コントロールとして、L-アスコルビン酸を用いないこと以外は同様の方法で、紅茶抽出液を採取した(試験区1)。また、比較対象として、紅茶葉にL-アスコルビン酸の粉末を散布せず、75℃の湯に代えて、L-アスコルビン酸濃度が、乾燥した紅茶葉に対して3重量%である75℃の湯を用いたこと以外は同様の方法で、紅茶抽出液を採取した(試験区7)。
【0059】
各試験区の各画分の紅茶抽出液を遠心処理した後、それぞれ容器詰めし、次いで、レトルト殺菌して各容器詰紅茶飲料のサンプルを得た。
【0060】
(2.pHの測定)
試験区1~7のそれぞれにおいて、全画分サンプルの一部と、第1画分サンプルと、第6画分サンプルのpHをそれぞれ測定した。なお、各画分のpHは、20℃において、pHメーター(本体機器「HM-41X」;電極「ST-5741C」;いずれも東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて測定した。全画分サンプルのpHの結果を表3に示し、第1画分サンプルのpHの結果を表4に示し、第6画分サンプルのpHの結果を表5に示す。
【0061】
(3.茶の雑味の抑制の程度に関する官能評価試験)
試験区1~7の各容器詰紅茶飲料の各サンプルについて、以下のような官能評価試験を行うに際して、pHの違いによる香味の差が生じないように、すべてのサンプルに重曹を添加して、pHを5.9に調整した後、レトルト殺菌を行ってから、官能評価試験を行った。なお、レトルト殺菌後の各サンプルのpHは約5.7であった。
【0062】
コントロール(試験区1)の全画分サンプル又は第1画分サンプルと比較した、試験区2~7の全画分サンプル又は第1画分サンプルにおける茶の雑味の抑制の程度について、訓練した専門パネル4名によって、以下の表1に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。すなわち、コントロールの全画分サンプル又は第1画分サンプルにおける茶の雑味の程度を5点として、試験区2~7の全画分サンプル又は第1画分サンプルにおける茶の雑味の抑制の程度がどのようであるかを5段階で評価した。なお、1点と2点の雑味の抑制の程度の差、2点と3点の雑味の抑制の程度の差、3点と4点の雑味の抑制の程度の差、4点と5点の雑味の抑制の程度の差は、それぞれ同程度とした。
なお、各試験区の各画分における雑味の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。また、各試験区の各画分サンプルについての、各パネルの評価点の標準偏差は、いずれの画分サンプルにおいても0.5以下であった。
【0063】
【0064】
なお、表1の評価基準において、例えば4点以下である場合に、茶の雑味の抑制効果が発揮されていると判断することができる。
【0065】
試験区2~7の全画分サンプル又は第1画分サンプルにおける茶の雑味の抑制の程度についての官能評価試験の結果を表3(全画分サンプル)及び表4(第1画分サンプル)に示す。
【0066】
(4.茶の苦渋味の程度に関する官能評価試験)
コントロール(試験区1)の全画分サンプル又は第1画分サンプルと比較した、試験区2~7の全画分サンプル又は第1画分サンプルにおける茶の苦渋味の程度について、訓練した専門パネル4名によって、以下の表2に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。すなわち、コントロールの全画分サンプル又は第1画分サンプルにおける茶の苦渋味の程度を3点として、試験区2~7の全画分サンプル又は第1画分サンプルにおける茶の苦渋味の程度がどのようであるかを5段階で評価した。なお、1点と2点の苦渋味の程度の差、2点と3点の苦渋味の程度の差、3点と4点の苦渋味の程度の差、4点と5点の苦渋味の程度の差は、それぞれ同程度とした。
なお、各試験区の各画分サンプルにおける苦渋味の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。また、各試験区の各画分サンプルについての、各パネルの評価点の標準偏差は、いずれの画分サンプルにおいても0.5以下であった。
【0067】
【0068】
なお、表2の評価基準において、例えば2.0点以上である場合に、茶の苦渋味が維持されていると判断することができる。
【0069】
試験区1~7の全画分又は第1画分における茶の苦渋味の程度についての官能評価試験の結果を表3(全画分サンプル)及び表4(第1画分サンプル)に示す。なお、試験区1~7の各サンプルのタンニン濃度を測定したところ、いずれの試験区でも、全画分サンプルでは580~660mg/L、第1画分サンプルでは400~490mg/L、第6画分サンプルでは450~550mg/Lであった。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
表3~5から分かるように、L-アスコルビン酸を用いなかった試験区1(コントロール)(第1画分サンプルのpH4.92、第6画分サンプルpH5.53)や、L-アスコルビン酸濃度が、乾燥した紅茶葉に対して3重量%の75℃の湯で抽出した試験区7(第1画分サンプルのpH4.88、第6画分サンプルpH4.46)では、雑味の抑制はなされなかったが(表3の試験区1及び試験区7)、第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下(好ましくは3.9~4.7)となり、かつ、第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上(好ましくは4.6~5.3)となるように、紅茶葉と水にL-アスコルビン酸を接触させて調整した試験区2~6では、雑味が抑制されることが示された。特に、全画分のL-アスコルビン酸濃度が2000mg/Lで同じとなる試験区4と試験区7を比較すると、試験区7では雑味の評価が4.8であり、抑制されなかったが、試験区4では雑味の評価が2.5であり、抑制された。これらのことから、第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下(好ましくは3.9~4.7)となり、かつ、第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上(好ましくは4.6~5.3)となるように、紅茶葉と水にL-アスコルビン酸を接触させて調整することが、雑味の抑制に重要であることが示された。また、第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下(好ましくは3.9~4.7)となり、かつ、第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上(4.6~5.3)となるように、紅茶葉と水にL-アスコルビン酸を接触させて調整すると、雑味の抑制効果がより多く得られることが示された(表3の試験区3~6)。
【0074】
さらに、第1画分の紅茶抽出液のpHが4.7以下(好ましくは3.9~4.7)となり、かつ、第6画分の紅茶抽出液のpHが4.6以上(4.6~5.3)となるように、紅茶葉と水にL-アスコルビン酸を接触させて調整すると、雑味が抑制されることに加えて、苦渋味が維持されることも示された(表3の試験区3~6)。
本発明によれば、カラムを用いた紅茶抽出液の製造方法であって、苦渋味が保持され、かつ、雑味が抑制された紅茶抽出液の製造方法、及び、該製造方法により製造された紅茶抽出液を含む容器詰紅茶飲料等を提供することができる。