(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093347
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A61B17/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209660
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】松浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】相部 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄治
(72)【発明者】
【氏名】尾立 圭巳
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG05
4C160NN02
4C160NN11
4C160NN23
(57)【要約】
【課題】屈曲部の屈曲角度を大きくすることが可能な手術器具を提供する。
【解決手段】この手術器具100は、シャフト10と、シャフト10の先端に接続される屈曲部20と、屈曲部20の先端に配置されるエンドエフェクタ22と、シャフト10および屈曲部20の内部に挿入され、屈曲部20のエンドエフェクタ22側に先端が固定されるロッド40と、ロッド40の基端が固定されるロッド移動部材50と、ロッド移動部材50をシャフト10の軸方向に往復移動させる駆動部61と、内部にロッド40が挿入され、ロッド移動部材50とシャフト10との間に配置される管81と、を備える。管81は、ロッド移動部材50の孔51に挿入されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトの先端に接続される屈曲部と、
前記屈曲部の先端に配置されるエンドエフェクタと、
前記シャフトおよび前記屈曲部の内部に挿入され、前記屈曲部の前記エンドエフェクタ側に先端が固定されるロッドと、
前記ロッドの基端が固定されるロッド移動部材と、
前記ロッド移動部材を前記シャフトの軸方向に往復移動させる駆動部と、
内部に前記ロッドが挿入され、前記ロッド移動部材と前記シャフトとの間に配置される管と、を備え、
前記管は、前記ロッド移動部材の孔に挿入されている、手術器具。
【請求項2】
前記ロッドにおける前記ロッド移動部材側の部分は、前記ロッド移動部材の孔に挿入されており、
前記ロッド移動部材の孔において、前記ロッドの基端と前記管との間に配置され、前記ロッドの外周を覆う弾性部材を、さらに備える、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記弾性部材は、圧縮コイルばねを含み、
前記圧縮コイルばねの自然長のピッチは、前記ロッドの座屈長以下である、請求項2に記載の手術器具。
【請求項4】
前記管の前記シャフト側を固定する固定部をさらに備え、
前記管の前記ロッド移動部材側は、前記ロッド移動部材の孔に挿入され、自由端であり、
前記ロッド移動部材は、前記管に対して移動する、請求項3に記載の手術器具。
【請求項5】
前記シャフトは、孔を有しており、
前記管の前記シャフト側は、前記シャフトの孔の開口部から挿入され、前記シャフトの孔の前記開口部に対して移動する自由端であり、
前記管の前記ロッド移動部材側は、前記ロッド移動部材に固定され、
前記シャフトの孔の内部において、前記管の前記シャフト側に配置され、前記ロッドの外周を覆う弾性部材を、さらに備える、請求項1に記載の手術器具。
【請求項6】
前記ロッド移動部材は、一対配置され、
前記ロッドおよび前記管は、前記一対のロッド移動部材に対応するように複数配置され、
前記駆動部は、1つのモータからなり、
前記1つのモータの駆動力により、前記一対のロッド移動部材の一方を前記シャフトの軸方向の一方に移動させるとともに、前記一対のロッド移動部材の他方を前記シャフトの軸方向の他方に移動させる駆動機構をさらに備える、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の手術器具。
【請求項7】
前記一対のロッド移動部材は、各々、
前記駆動機構に接続される第1部分と、
前記第1部分に接続され、前記ロッドが接続される第2部分と、を含み、
前記一対のロッド移動部材の各々の前記第1部分は、前記シャフトの軸方向に沿って直列配置され、
前記一対のロッド移動部材の一方の前記第2部分は、前記シャフトの軸方向に直交する方向において、前記シャフトの一方側に配置され、
前記一対のロッド移動部材の他方の前記第2部分は、前記シャフトの軸方向に直交する方向において、前記シャフトの他方側に配置されている、請求項6に記載の手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屈曲部を備える手術器具が開示されている。たとえば、特許文献1には、屈曲部と把持部とを有する鉗子マニピュレータが開示されており、屈曲部にはスプリングが採用されている。スプリングの壁面には、4つの孔が形成されている。孔には、ロッドが挿入されている。ロッドは、超弾性ロッドにより構成されている。ロッドの先端は、スプリングに固定されている。4つのロッドの基端は、各々、空気圧シリンダに接続されている。空気圧シリンダによって押されるロッドと、空気圧シリンダによって引っ張られるロッドとによって、屈曲部が屈曲する。また、屈曲部の基端側にはシャフトが接続されている。ロッドは、鉗子マニピュレータのシャフト内に配置されている。シャフト内では、ロッドはガイドパイプに挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の鉗子マニピュレータにおいて屈曲部の屈曲角度を大きくする場合、空気圧シリンダのストロークを大きくしてロッドを押す量を大きくする必要がある。この場合、座屈荷重が小さくなり、少しでもロッドを押すとロッドが座屈してしまう。特許文献1では、シャフトと空気圧シリンダとの間では、ロッドはガイドパイプに覆われておらず露出しているため、ロッドにかかる力が大きくなった場合、シャフトと空気圧シリンダとの間においてロッドが座屈する場合があると考えられる。このため、屈曲部の屈曲角度を大きくできないという問題点がある。
【0005】
この開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この開示の1つの目的は、屈曲部の屈曲角度を大きくすることが可能な手術器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の局面による手術器具は、シャフトと、シャフトの先端に接続される屈曲部と、屈曲部の先端に配置されるエンドエフェクタと、シャフトおよび屈曲部の内部に挿入され、屈曲部のエンドエフェクタ側に先端が固定されるロッドと、ロッドの基端が固定されるロッド移動部材と、ロッド移動部材をシャフトの軸方向に往復移動させる駆動部と、内部にロッドが挿入され、ロッド移動部材とシャフトとの間に配置される管と、を備え、管は、ロッド移動部材の孔に挿入されている。
【0007】
本開示の一の局面による手術器具は、上記のように、内部にロッドが挿入され、ロッド移動部材とシャフトとの間に配置される管を備えている。これにより、ロッド移動部材によってロッドが押されている際のロッドの座屈が管によって抑制される。その結果、屈曲部の屈曲角度を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、屈曲部の屈曲角度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態による手術器具をC1方向から見た図である。
【
図2】第1実施形態による手術器具をB2方向から見た図である。
【
図3】第1実施形態によるシャフト、屈曲部およびエンドエフェクタを示す図である。
【
図4】
図2の1300-1300線に沿った断面図である。
【
図5】
図2の1000-1000線に沿った断面図である。
【
図6】第1実施形態による手術器具の斜視図である。
【
図7】
図2の1100-1100線に沿った断面図である。
【
図8】
図2の1200-1200線に沿った断面図である。
【
図9】第1実施形態によるロッドの先端を示す図である。
【
図10】
図2の1400-1400線に沿った断面図である。
【
図11】第1実施形態による移動機構を示す図である。
【
図12】第1実施形態による、ロッド移動部材、ロッド、管、および、弾性部材を示す模式図である。
【
図13】屈曲部がB1側に屈曲した状態を示す図である。
【
図14】屈曲部がB2側に屈曲した状態を示す図である。
【
図15】第2実施形態による、ロッド移動部材、ロッド、管、および、弾性部材を示す模式図である。
【
図16】変形例による駆動機構をC1側から見た図である。
【
図17】変形例による駆動機構の動作を説明するための図である。
【
図18】変形例による駆動機構をB2側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態による手術器具100の構成について説明する。なお、本願明細書では、シャフト10の軸方向をA方向とする。シャフト10の先端側をA1側とし、基端側をA2側とする。また、シャフト10の軸方向に直交する方向をB方向とする。B方向の一方側をB1側とし、他方側をB2側とする。また、A方向およびB方向に直交する方向をC方向とする。C方向の一方側をC1側とし、他方側をC2側とする。
【0012】
図1に示すように、手術器具100は、シャフト10と、屈曲部20と、ロッド移動部材50と、駆動部61と、固定部83と、を備える。
図2に示すように、手術器具100は、駆動機構70と、を備える。
図3に示すように、手術器具100は、エンドエフェクタ22を備える。
図4に示すように、手術器具100は、ロッド40と、管81と、弾性部材82と、を備える。なお、
図2では、駆動部61等を省略している。また、
図3以外の図では、エンドエフェクタ22の詳細な構造は省略されている。また、
図4では、手術器具100の各構成要素を見易くするため、手術器具100のA方向の幅を縮小し、B方向の幅を拡大して図示している。
【0013】
図1に示すように、シャフト10の先端に屈曲部20が接続されている。シャフト10の基端側であるA2側にロッド移動部材50が配置されている。ロッド移動部材50のB2側に駆動部61が配置されている。
図2に示すように、ロッド移動部材50のC2側に駆動機構70が配置されている。
図3に示すように、屈曲部20の先端にエンドエフェクタ22が接続されている。
図4に示すように、ロッド40は、管81および弾性部材82の内部に配置されている。ロッド移動部材50によりロッド40が押し引きされることにより、屈曲部20が屈曲する。
【0014】
図5に示すように、シャフト10は、中空の筒状部材である。シャフト10は、外管11と、溝付管12と、を含む。外管11は、溝付管12の外周を覆う。溝付管12には溝12aが形成されている。溝12aには、ロッド40が挿入されている。溝12aは、一対形成されている。溝12aは、溝付管12の外側表面において、シャフト10の軸方向であるA方向に沿って形成される。
【0015】
図7に示すように、屈曲部20は、シャフト10の先端に接続される。屈曲部20は、複数のコマ部材21を含む。複数のコマ部材21は、互いに接続されている。また、
図8に示すように、複数のコマ部材21は、貫通孔21aと、内部空間21bと、を有する。貫通孔21aには、ロッド40が挿入される。
図7に示すように、隣り合うコマ部材21は、ピン21cによって連結されている。シャフト10の遠位端は、ピン21cによって屈曲部20の近位端に位置するコマ部材21に連結されている。各コマ部材21は、隣接するコマ部材21に対してピン21cの軸線周りに回動可能に連結される。ピン21cの軸線は、C方向に沿った軸線である。ピン21cの各軸線は互いに平行である。つまり、屈曲部20は、C方向に直交するA-B平面内で屈曲可能である。
【0016】
図3に示すように、エンドエフェクタ22は、屈曲部20の先端に配置される。エンドエフェクタ22は、たとえば、医療用の鉗子である。
【0017】
図7に示すように、ロッド40は、シャフト10および屈曲部20の内部に挿入されている。ロッド40の先端40aは、屈曲部20のエンドエフェクタ22側であるA1側に固定されている。ロッド40は、溝付管12に設けられた溝12aおよび複数のコマ部材21に亘って形成された貫通孔21aに挿入されている。ロッド40の先端40aは、屈曲部20の先端に位置するコマ部材21に係合している。具体的には、
図9に示すように、ロッド40の先端40aは、球形状を有する。ロッド40は、屈曲部20の先端側から貫通孔21aに挿入される。そして、球形状のロッド40の先端が、コマ部材21の貫通孔21aに係合する。具体的には、球形状のロッド40の先端が屈曲部20を押し引きしている。ロッド40で屈曲部20を押す場合は、球形状のロッド40の先端が、最も先端に配置されるコマ部材21を押す。ロッド40により屈曲部20を引く場合は、コマ部材21の貫通孔21aに球形状のロッド40の先端を引っかけられて、ロッド40により屈曲部20が引かれる。ロッド40は、たとえば、棒状のニッケルチタン合金等の超弾性合金により形成されている。ロッド40が押し引きされることにより、屈曲部20は、C方向に直交するA-B平面内で屈曲する。
【0018】
図5に示すように、ロッド40は、シャフト10の溝付管12の溝12aに、2本ずつ配置されている。1つの溝12aに配置された2本のロッド40の間には、スペーサ15が配置されている。外管11と、溝付管12の溝12aと、スペーサ15とによって、溝12a内におけるロッド40の座屈が防止される。
【0019】
図4に示すように、ロッド移動部材50は、たとえば、ブロック形状を有する。ロッド移動部材50には、孔51が形成されている。ロッド40の基端は、孔51の底側の部分511に固定されている。なお、底側の部分511とは、孔51のうちの段差部512よりもA2側の部分を意味する。ロッド40の基端は、たとえば、孔51の底側の部分511の全体に塗布された接着剤により接着されている。ロッド移動部材50は、ロッド移動部材50aおよびロッド移動部材50bの一対のロッド移動部材50を含む。溝付管12の2つの溝12aのうちの一方の溝12aに挿入されている2本のロッド40が、ロッド移動部材50aに固定されている。2つの溝12aのうちの他方の溝12aに挿入されている2本のロッド40が、ロッド移動部材50bに固定されている。なお、
図4では、ロッド移動部材50aに1つの孔51が形成され、1本のロッド40が孔51に挿入されているが、実際には、
図10に示すように、ロッド移動部材50aに2つの孔51が形成され、2本のロッド40がそれぞれ孔51に挿入されている。ロッド移動部材50bについても同様である。なお、ロッド移動部材50aの孔51を、孔51aとする。ロッド移動部材50bの孔51を、孔51bとする。また、ロッド移動部材50aには凹部54aが形成され、ロッド移動部材50bには凹部54bが形成されている。凹部54aおよび凹部54bに、シャフト10の溝付管12の内部に挿入される部材を通すことが可能である。
【0020】
図11に示すように、駆動部61は、ロッド移動部材50をシャフト10の軸方向に往復移動させる。具体的には、第1実施形態では、駆動部61は、1つのモータからなる。
【0021】
第1実施形態では、駆動機構70は、1つのモータの駆動力により、一対のロッド移動部材50の一方をシャフト10の軸方向であるA方向の一方に移動させるとともに、一対のロッド移動部材50の他方をシャフト10の軸方向の他方に移動させる。具体的には、駆動機構70は、プーリ71と、タイミングベルト72と、ボールネジ73と、移動体74と、移動体75と、を含む。駆動部61には、プーリ61aが接続されている。タイミングベルト72は、プーリ71とプーリ61aとに亘るように配置されている。駆動部61の駆動力が、タイミングベルト72を介してボールネジ73に伝達される。ボールネジ73は左右ネジを有する。ボールネジ73が回転することにより、移動体74がシャフト10の軸方向の一方側に移動され、移動体75がシャフト10の軸方向の他方側に移動される。移動体74および移動体75には、それぞれ、ロッド移動部材50aおよびロッド移動部材50bが取り付けられている。
【0022】
第1実施形態では、
図6に示すように、ロッド移動部材50aは、第1部分52aと、第2部分53aと、を含む。第1部分52aは、駆動機構70に接続される。第2部分53aは、第1部分52aに接続され、ロッド40が接続される。ロッド移動部材50bも同様に、第1部分52bと、第2部分53bと、を含む。ロッド移動部材50aの第1部分52aと、ロッド移動部材50bの第1部分52bとは、シャフト10の軸方向であるA方向に沿って直列配置されている。ロッド移動部材50aの第2部分53aは、シャフト10の軸方向に直交するB方向において、シャフト10の一方側であるB1側に配置されている。ロッド移動部材50bの第2部分53bは、シャフト10の軸方向に直交するB方向において、シャフト10の一方側であるB2側に配置されている。
【0023】
具体的には、ロッド移動部材50aの第1部分52aは、駆動機構70の移動体74に接続されている。ロッド移動部材50aの第2部分53aは、第1部分52aからC1方向側に延びるように配置されている。ロッド移動部材50bの第1部分52bは、駆動機構70の移動体75に接続されている。ロッド移動部材50bの第2部分53bは、第1部分52bからC1方向側に延びるように配置されている。ボールネジ73が回転することにより、ロッド移動部材50aがA1側に移動し、ロッド移動部材50bがA2側に移動した場合でも、ロッド移動部材50aの第2部分53aと、ロッド移動部材50bの第2部分53bとは干渉しない。
【0024】
第1実施形態では、
図4に示すように、管81は、内部にロッド40が挿入されている。管81は、ロッド移動部材50とシャフト10との間に配置されている。管81は、ロッド移動部材50の孔51に挿入されている。具体的には、管81は、円筒形状を有する。管81の内径および外径は、ロッド移動部材50によってロッド40がA1方向に移動された際に、ロッド40とともに座屈しないように設定される。管81は、たとえば、金属からなる。また、管81の基端側が、ロッド移動部材50の孔51に挿入されている。なお、
図4では、ロッド移動部材50aの1つの孔51aに挿入された1つの管81が図示されているが、実際には、ロッド移動部材50aに2つの孔51aが形成され、2本のロッド40が各々孔51aに挿入されており、2つの孔51aには各々管81が配置されている。ロッド移動部材50bについても同様である。すなわち、管81は、4本のロッド40の各々に対して配置されている。
【0025】
第1実施形態では、固定部83は、管81のシャフト10側であるA1側を固定する。管81のロッド移動部材50側であるA2側は、ロッド移動部材50の孔51に挿入され、自由端である。ロッド移動部材50は、管81に対して移動する。たとえば、固定部83は、A方向に直交するように配置された板状の部材である。固定部83には、孔83aが形成されている。ロッド40は、孔83aに挿入されている。管81のA1側の端部は、固定部83の孔83aに固定されている。すなわち、管81のA1側の端部は、固定端である。管81のA1側の端部は、たとえば、接着剤83bにより、固定部83の孔83aに固定されている。なお、管81のA1側の端部を、溶接によって固定部83の孔83aに固定してもよい。また、管81のA1側の端部に雄ネジを形成し、固定部83の孔83aに雌ネジを形成して、螺合により管81のA1側の端部を固定部83の孔83aに固定してもよい。固定部83の孔83aは、4本のロッド40に対応するように、固定部83に4個形成されている。また、管81のA2側の端部は、ロッド移動部材50の孔51に固定されていない。これにより、ロッド移動部材50がA1側またはA2側に移動しても、管81は移動しない。
【0026】
第1実施形態では、弾性部材82は、ロッド移動部材50の孔51において、ロッド40の基端と管81との間に配置され、ロッド40の外周を覆っている。弾性部材82のA1側は、管81に固定されない自由端である。弾性部材82のA2側は、固定されない自由端である。なお、
図4では、ロッド移動部材50aの1つの孔51aに配置された1つの弾性部材82が図示されているが、実際には、ロッド移動部材50aに2つの孔51aが形成され、2本のロッド40が各々孔51に挿入されており、2つの孔51には各々弾性部材82が配置されている。ロッド移動部材50bについても同様である。
【0027】
第1実施形態では、弾性部材82は、圧縮コイルばねを含む。圧縮コイルばねの自然長のピッチpは、ロッド40の座屈長l以下である。座屈長lは、下記の式により算出される。
Pcr=nπ2EI/l2
Pcrは、座屈荷重である。Eは、ヤング率である。Iは、断面2次モーメントである。nは、末端係数である。
【0028】
図12に示すロッド移動部材50bのように、ロッド移動部材50bがA1側に移動した際には、弾性部材82は、ロッド移動部材50bの孔51bの部分511側の段差部512と管81とにより圧縮される。これにより、ロッド40の座屈が、管81および弾性部材82により抑制される。また、
図12に示すロッド移動部材50aのように、ロッド移動部材50aがA2側に移動した際には、圧縮コイルばねからなる弾性部材82の長さは、自然長となる。
【0029】
(手術器具の動作)
図13に示すように、駆動部61の駆動力によって、駆動機構70のボールネジ73が一方側に回転されることにより、ロッド移動部材50aがA2側に移動され、ロッド移動部材50bがA1側に移動される。これにより、屈曲部20は、B1側に屈曲する。
【0030】
図14に示すように、駆動部61の駆動力によって、駆動機構70のボールネジ73が他方側に回転されることにより、ロッド移動部材50aがA1側に移動され、ロッド移動部材50bがA2側に移動される。これにより、屈曲部20は、B2側に屈曲する。
【0031】
[第1実施形態の効果]
手術器具100は、内部にロッド40が挿入され、ロッド移動部材50とシャフト10との間に配置される管81を備えている。これにより、ロッド移動部材50によってロッド40が押されている際のロッド40の座屈が管81によって抑制される。その結果、屈曲部20の屈曲角度を大きくすることができる。
【0032】
ロッド40におけるロッド移動部材50側の部分は、ロッド移動部材50の孔51に挿入されている。手術器具100は、ロッド移動部材50の孔51において、ロッド40の基端と管81との間に配置され、ロッド40の外周を覆う弾性部材82を備える。これにより、ロッド移動部材50の孔51におけるロッド40の座屈を、弾性部材82により抑制できる。
【0033】
弾性部材82は、圧縮コイルばねを含み、圧縮コイルばねの自然長のピッチpは、ロッド40の座屈長l以下である。これにより、ロッド移動部材50の孔51におけるロッド40の座屈を圧縮コイルばねにより確実に抑制できる。
【0034】
ロッド移動部材50は、一対配置され、ロッド40および管81は、各々、一対のロッド移動部材50に対応するように複数配置されている。駆動部61は、1つのモータからなる。手術器具100は、1つのモータの駆動力により、一対のロッド移動部材50の一方をシャフト10の軸方向の一方に移動させるとともに、一対のロッド移動部材50の他方をシャフト10の軸方向の他方に移動させる駆動機構70を備える。これにより、1つのモータにより、一対のロッド移動部材50を互いに逆方向に移動できるので、一対のロッド移動部材50ごとにモータを配置する場合と比べて、手術器具100の構成を簡略化できるとともに、モータの制御を容易にできる。
【0035】
ロッド移動部材50aの第2部分53aは、シャフト10の軸方向に直交する方向において、シャフト10の一方側に配置され、ロッド移動部材50bの第2部分53bは、シャフト10の軸方向に直交する方向において、シャフト10の他方側に配置されている。これにより、第2部分53aおよび第2部分53bがシャフト10に対して別々の側に配置されるので、第2部分53aおよび第2部分53b同士の干渉を抑制できる。
【0036】
[第2実施形態]
図15を参照して、第2実施形態による手術器具200について説明する。手術器具200では、シャフト110は、孔111を有している。管81のシャフト110側であるA1側は、シャフト110の孔111の開口部111aから挿入され、自由端である。ロッド移動部材50と管81とは固定されており、ロッド移動部材50とともに管81がシャフト110の孔111の内部を移動する。弾性部材82は、シャフト110の孔111の内部において、管81のシャフト110側であるA1側に配置されており、ロッド40の外周を覆っている。具体的には、シャフト110において、シャフト110の溝付管112のA2側の部分に、弾性部材82が配置される溝112aが形成されている。なお、溝付管112の外周は、外管113に覆われている。弾性部材82は、溝112aと外管113とに囲まれた空間により形成された孔111に配置されている。弾性部材82が配置される孔111のA2側の部分111bの直径は、孔111のA1側の部分111cの直径よりも大きい。管81のA2側の基端は、ロッド移動部材50に固定されている。ロッド移動部材50がA1側に移動した場合、管81は、孔111に挿入され、弾性部材82は収縮する。ロッド移動部材50がA2側に移動した場合、管81は、孔111の内部をスライド移動し、弾性部材82は伸長する。
【0037】
[第2実施形態の効果]
シャフト110の孔111の内部において管81のシャフト110側にロッド40の外周を覆う弾性部材82が配置されているので、シャフト110の内部におけるロッド40の座屈を、弾性部材82により抑制できる。また、弾性部材82がシャフト110の内部に配置されるので、弾性部材82をロッド移動部材50の内部に配置する場合と比べて、ロッド移動部材50を小型化することができる。
【0038】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0039】
上記第1および第2実施形態では、ロッド40の座屈を抑制するために、管81と弾性部材82との両方が配置される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ロッド40の座屈を抑制するために、管81のみが配置されていてもよい。
【0040】
上記第1および第2実施形態では、ロッド移動部材50aおよびロッド移動部材50bに、各々、2本のロッド40が接続されている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ロッド移動部材50aおよびロッド移動部材50bに、各々、1本のみのロッド40が接続されていてもよい。また、ロッド移動部材50aおよびロッド移動部材50bに、各々、3本以上のロッド40が接続されていてもよい。
【0041】
上記第1および第2実施形態では、弾性部材82が圧縮コイルばねからなる例を示したが、本開示はこれに限られない。弾性部材82が圧縮コイルばね以外の、たとえば、伸び縮み可能な柔らかい管などでもよい。
【0042】
上記第1および第2実施形態では、1つの駆動部61によって、ロッド移動部材50aおよびロッド移動部材50bの両方が移動される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ロッド移動部材50aおよびロッド移動部材50bに対して、各々、駆動部61を配置してもよい。
【0043】
上記第1および第2実施形態では、手術器具100に本開示を適用する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、手術器具100以外の屈曲部を有する機構に、本開示を適用してもよい。
【0044】
上記第1および第2実施形態では、駆動機構70が、ボールネジ73と、移動体74と、移動体75とを含む例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、
図16に示す変形例による手術器具400の駆動機構310のように、駆動機構310がピニオン311を含んでいてもよい。そして、一対のロッド移動部材320の各々には、ラック321が配置されている。
図17に示すように、ピニオン311が図示しない駆動部により回転されることにより、一対のロッド移動部材320が移動する。また、
図18に示すように、一対のロッド移動部材320の各々は、直動機構330に支持されている。
【0045】
上記第1実施形態では、外管11と、溝付管12の溝12aと、スペーサ15とによって、溝12a内におけるロッド40の座屈が防止される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、溝付管12の溝12aに配置されたロッド40の周囲をガイドパイプにより囲うことにより、溝12a内におけるロッド40の座屈を防止してもよい。
【0046】
上記第1実施形態では、弾性部材82のA1側およびA2側の両方が、固定されない自由端である例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、弾性部材82のA1側およびA2側のうちの一方が自由端であり、他方が固定端でもよい。
【0047】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0048】
(項目1)
シャフトと、
前記シャフトの先端に接続される屈曲部と、
前記屈曲部の先端に配置されるエンドエフェクタと、
前記シャフトおよび前記屈曲部の内部に挿入され、前記屈曲部の前記エンドエフェクタ側に先端が固定されるロッドと、
前記ロッドの基端が固定されるロッド移動部材と、
前記ロッド移動部材を前記シャフトの軸方向に往復移動させる駆動部と、
内部に前記ロッドが挿入され、前記ロッド移動部材と前記シャフトとの間に配置される管と、を備え、
前記管は、前記ロッド移動部材の孔に挿入されている、手術器具。
【0049】
(項目2)
前記ロッドにおける前記ロッド移動部材側の部分は、前記ロッド移動部材の孔に挿入されており、
前記ロッド移動部材の孔において、前記ロッドの基端と前記管との間に配置され、前記ロッドの外周を覆う弾性部材を、さらに備える、項目1に記載の手術器具。
【0050】
(項目3)
前記弾性部材は、圧縮コイルばねを含み、
前記圧縮コイルばねの自然長のピッチは、前記ロッドの座屈長以下である、項目2に記載の手術器具。
【0051】
(項目4)
前記管の前記シャフト側を固定する固定部をさらに備え、
前記管の前記ロッド移動部材側は、前記ロッド移動部材の孔に挿入され、自由端であり、
前記ロッド移動部材は、前記管に対して移動する、項目3に記載の手術器具。
【0052】
(項目5)
前記シャフトは、孔を有しており、
前記管の前記シャフト側は、前記シャフトの孔の開口部から挿入され、前記シャフトの前記開口部に対して移動する自由端であり、
前記管の前記ロッド移動部材側は、前記ロッド移動部材に固定され、
前記シャフトの孔の内部において、前記管のシャフト側に配置され、前記ロッドの外周を覆う弾性部材を、さらに備える、項目1から項目3までのいずれか1項に記載の手術器具。
【0053】
(項目6)
前記ロッド移動部材は、一対配置され、
前記ロッドおよび前記管は、前記一対のロッド移動部材に対応するように複数配置され、
前記駆動部は、1つのモータからなり、
前記1つのモータの駆動力により、前記一対のロッド移動部材の一方を前記シャフトの軸方向の一方に移動させるとともに、前記一対のロッド移動部材の他方を前記シャフトの軸方向の他方に移動させる駆動機構をさらに備える、項目1から項目5までのいずれか1項に記載の手術器具。
【0054】
(項目7)
前記一対のロッド移動部材は、各々、
前記駆動機構に接続される第1部分と、
前記第1部分に接続され、前記ロッドが接続される第2部分と、を含み、
前記一対のロッド移動部材の各々の前記第1部分は、前記シャフトの軸方向に沿って直列配置され、
前記一対のロッド移動部材の一方の前記第2部分は、前記シャフトの軸方向に直交する方向において、前記シャフトの一方側に配置され、
前記一対のロッド移動部材の他方の前記第2部分は、前記シャフトの軸方向に直交する方向において、前記シャフトの他方側に配置されている、項目6に記載の手術器具。
【符号の説明】
【0055】
10 シャフト
20 屈曲部
22 エンドエフェクタ
40 ロッド
50、50a、50b ロッド移動部材
51、51a、51b 孔
52a、52b 第1部分
53a、53b 第2部分
61 駆動部
70 駆動機構
81 管
82 弾性部材
83 固定部
100、200、400 手術器具
111 孔
111a 開口部
310 駆動機構
l 座屈長
p ピッチ