(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093349
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A61B17/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209662
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】松浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】相部 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄治
(72)【発明者】
【氏名】尾立 圭巳
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 陽平
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG24
4C160NN02
4C160NN03
(57)【要約】
【課題】コストの増大を抑制することが可能な手術器具を提供する。
【解決手段】この手術器具100は、シャフト10と、シャフト10の先端に接続される屈曲部20と、屈曲部20の先端に配置されるエンドエフェクタ22と、エンドエフェクタ22を回転させる駆動部61と、シャフト100および屈曲部20の内部に配置され、駆動部61の駆動力をエンドエフェクタ22に伝達するコイル部材30と、シャフト10に挿入され、コイル部材30の基端に接続され、駆動部61の駆動力をコイル部材30に伝達する内管13と、内管13の基端に接続され、コイル部材30が屈曲した場合にコイル部材30の伸長を吸収し、コイル部材30が直線状になった場合にコイル部材30の収縮を吸収する伸縮吸収機構90と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトの先端に接続される屈曲部と、
前記屈曲部の先端に配置されるエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタを回転させる駆動部と、
前記シャフトおよび前記屈曲部の内部に配置され、前記駆動部の駆動力を前記エンドエフェクタに伝達するコイル部材と、
前記シャフトに挿入され、前記コイル部材の基端に接続され、前記駆動部の駆動力を、前記コイル部材に伝達する管と、
前記管の基端に接続され、前記コイル部材が屈曲した場合に前記コイル部材の伸長を吸収し、前記コイル部材が直線状になった場合に前記コイル部材の収縮を吸収する、伸縮吸収機構と、を備える、手術器具。
【請求項2】
前記伸縮吸収機構は、前記管の基端側に配置され、前記コイル部材が収縮する方向に前記コイル部材を付勢する付勢部材を含む、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記付勢部材は、圧縮コイルばねを含む、請求項2に記載の手術器具。
【請求項4】
前記伸縮吸収機構は、
前記駆動部の駆動力を伝達する第1部分と、
前記第1部分と前記コイル部材との間に配置され、前記第1部分に対して前記シャフトの軸方向に沿って移動する第2部分と、を含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の手術器具。
【請求項5】
前記第1部分は、前記駆動部に接続され、
前記第2部分は、前記第1部分に係合し、前記管に接続されている、請求項4に記載の手術器具。
【請求項6】
前記伸縮吸収機構は、前記コイル部材の基端側に配置され、前記コイル部材が収縮する方向に前記コイル部材を付勢する付勢部材をさらに含み、
前記付勢部材は、前記第1部分および前記第2部分の外周を覆い、
前記付勢部材の基端は、前記第1部分に当接し、
前記付勢部材の先端は、前記第2部分に当接する、請求項5に記載の手術器具。
【請求項7】
前記コイル部材は、多条多層コイルである、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の手術器具。
【請求項8】
前記伸縮吸収機構は、前記シャフトよりも手術器具の基端側に配置されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項9】
前記伸縮吸収機構は、前記シャフトの内部に配置されている、請求項1に記載の手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屈曲部と、屈曲部の先端に配置されるエンドエフェクタとを備える手術器具が開示されている。特許文献1では、屈曲部の内部には、トルク伝達要素が配置されている。トルク伝達要素は、屈曲部の先端に配置されるエンドエフェクタに回転トルクを伝達する。トルク伝達要素は、円環状の上部トルク伝達要素と、円環状の下部トルク伝達要素とを含む。上部トルク伝達要素と下部トルク伝達要素とは互いに接続されている。また、特許文献1では、中空チューブをレーザ切断することにより、スリットを形成することによって、中空チューブに上部トルク伝達要素と下部トルク伝達要素とが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、中空チューブがレーザ切断することに形成された特殊なトルク伝達要素が用いられるため、手術器具のコストが増大するという問題点がある。
【0005】
この開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この開示の1つの目的は、コストの増大を抑制することが可能な手術器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の局面による手術器具は、シャフトと、シャフトの先端に接続される屈曲部と、屈曲部の先端に配置されるエンドエフェクタと、エンドエフェクタを回転させる駆動部と、シャフトおよび屈曲部の内部に配置され、駆動部の駆動力をエンドエフェクタに伝達するコイル部材と、コイル部材の基端側に配置され、コイル部材が屈曲した場合にコイル部材の伸長を吸収し、コイル部材が直線状になった場合にコイル部材の収縮を吸収する、伸縮吸収機構と、を備える。
【0007】
本開示の一の局面による手術器具は、上記のように、シャフトおよび屈曲部の内部に配置され、駆動部の駆動力をエンドエフェクタに伝達するコイル部材を備える。これにより、比較的安価なコイル部材によって駆動部の駆動力をエンドエフェクタに伝達することができるので、手術器具のコストの増大を抑制できる。また、本開示の一の局面による手術器具は、上記のように、コイル部材の基端側に配置され、コイル部材が屈曲した場合にコイル部材の伸長を吸収し、コイル部材が直線状になった場合にコイル部材の収縮を吸収する、伸縮吸収機構を備える。ここで、コイル部材が屈曲した場合、屈曲したコイル部材の屈曲内側では、コイル部材を構成する素線同士が干渉してコイル部材が屈曲できなくなる。また、素線同士の干渉を抑制するためにコイル部材を引っ張って素線同士の間隔を広げた状態でコイル部材を手術器具に配置することが考えられる。しかしながら、コイル部材の素線同士の間隔を広くすると、コイル部材のねじり剛性が小さくなる。一方、本開示では、コイル部材の基端側にコイル部材の伸長を吸収する伸縮吸収機構が配置されているので、コイル部材が屈曲した場合、コイル部材の基端側が伸縮吸収機構側に移動する。これにより、コイル部材が伸長するので、コイル部材の屈曲内側の素線同士は常に密着した状態を維持きる。その結果、コイル部材の屈曲内側の素線同士の干渉が抑制されるので、コイル部材が屈曲できる。また、素線同士の間隔を広げた状態でコイル部材を手術器具に配置する必要がないので、コイル部材のねじり剛性の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、手術器具のコストの増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態による手術器具をC1方向から見た図である。
【
図2】第1実施形態による手術器具をB2方向から見た図である。
【
図3】第1実施形態によるシャフト、屈曲部およびエンドエフェクタを示す図である。
【
図4】第1実施形態による内管およびコイル部材を示す図である。
【
図5】
図2の1000-1000線に沿った断面図である。
【
図6】第1実施形態による手術器具の斜視図である。
【
図7】
図2の1100-1100線に沿った断面図である。
【
図8】
図2の1200-1200線に沿った断面図である。
【
図9】第1実施形態による伸縮吸収機構をC1側から見た図である。
【
図10】第1実施形態による伸縮吸収機構をB2側から見た図である。
【
図11】
図10の1500-1500線に沿った断面図である。
【
図12】屈曲部がB1側に屈曲した状態を示す図である。
【
図13】屈曲部がB2側に屈曲した状態を示す図である。
【
図14】第2実施形態による伸縮吸収機構をB2側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態による手術器具100の構成について説明する。なお、本願明細書では、シャフト10の軸方向をA方向とする。シャフト10の先端側をA1側とし、基端側をA2側とする。また、シャフト10の軸方向に直交する方向をB方向とする。B方向の一方側をB1側とし、他方側をB2側とする。また、A方向およびB方向に直交する方向をC方向とする。C方向の一方側をC1側とし、他方側をC2側とする。
【0012】
図1に示すように、手術器具100は、シャフト10と、屈曲部20と、駆動部62と、固定部83と、伸縮吸収機構90と、を備える。
図3に示すように、手術器具100は、エンドエフェクタ22を備える。
図4に示すように、手術器具100は、コイル部材30と、内管13と、を備える。なお、
図3以外の図では、エンドエフェクタ22の詳細な構造は省略されている。
【0013】
図5に示すように、シャフト10は、中空の筒状部材である。シャフト10は、外管11と、溝付管12と、内管13と、を含む。外管11は、溝付管12の外周を覆う。溝付管12には溝12aが形成されている。溝12aには、ロッド40が挿入されている。溝12aは、一対形成されている。溝12aは、溝付管12の外側表面において、シャフト10の軸方向であるA方向に沿って延びるように形成される。内管13は、溝付管12の内部に挿入されている。内管13は、管の一例である。
【0014】
第1実施形態では、内管13は、シャフト10に挿入され、コイル部材30の基端に接続されている。内管13は、駆動部62の駆動力を、伸縮吸収機構90を介してコイル部材30に伝達する。
図6に示すように、内管13の基端は、伸縮吸収機構90の後述する第2部分92に接続されている。たとえば、内管13に雄ネジを形成し、伸縮吸収機構90の第2部分92に雌ネジを形成する。そして、たとえば図示しないダブルナットによって内管13の基端と伸縮吸収機構90の第2部分92とを接続する。
図5に示すように、内管13は、中空の筒状部材である。また、内管13は、内部に他の部材などを挿入可能である。
【0015】
図7に示すように、屈曲部20は、シャフト10の先端に接続される。屈曲部20は、複数のコマ部材21を含む。複数のコマ部材21は、互いに接続されている。また、
図8に示すように、複数のコマ部材21は、貫通孔21aと、内部空間21bと、を有する。貫通孔21aには、ロッド40が挿入される。内部空間21bには、コイル部材30が挿入される。
図7に示すように、隣り合うコマ部材21は、ピン21cによって連結されている。シャフト10の遠位端は、ピン21cによって屈曲部20の近位端に位置するコマ部材21に連結されている。各コマ部材21は、隣接するコマ部材21に対してピン21cの軸線周りに回動可能に連結される。ピン21cの軸線は、C方向に沿った軸線である。ピン21cの各軸線は互いに平行である。つまり、屈曲部20は、コマ部材21の軸線と直交する方向に屈曲可能である。
【0016】
図3に示すように、エンドエフェクタ22は、屈曲部20の先端に配置される。エンドエフェクタ22は、たとえば、医療用の鉗子である。エンドエフェクタ22は、シャフト10および屈曲部20の内部に挿入されたコイル部材30の先端に取り付けられ、コイル部材30の中心を通る回転軸線周りに回転する。
【0017】
第1実施形態では、
図7に示すように、コイル部材30は、シャフト10および屈曲部20の内部に配置されている。コイル部材30は、駆動部62の駆動力をエンドエフェクタ22に伝達する。コイル部材30は、多条多層コイルである。多条多層コイルは、複数の金属の素線がスプリング状に巻かれた金属製のチューブである。多条多層コイルでは、スプリング状に巻かれた金属製のチューブが、複数層重ねられている。多条多層コイルは、屈曲部20の屈曲に応じて屈曲することが可能である。また、多条多層コイルに接続される部材に、多条多層コイルの軸線周りの回転トルクを伝達することができる。また、多条多層コイルは、内部に他の部材などを挿入可能である。
【0018】
図7に示すように、ロッド40は、シャフト10および屈曲部20の内部に挿入されている。ロッド40の先端40aは、屈曲部20のエンドエフェクタ22側であるA1側に固定されている。ロッド40は、溝付管12に設けられた溝12aおよび複数のコマ部材21に亘って形成された貫通孔21aに挿入されている。ロッド40の先端40aは、屈曲部20の先端に位置するコマ部材21に係合している。具体的には、
図7に示すように、ロッド40の先端40aは、球形状を有する。ロッド40は、屈曲部20の先端側から貫通孔21aに挿入される。そして、球形状のロッド40の先端が、コマ部材21の貫通孔21aに係合する。ロッド40は、たとえば、棒状のニッケルチタン合金等の超弾性合金により形成されている。ロッド40が押し引きされることにより、屈曲部20は、ピン21cの軸線と直交する方向に屈曲する。なお、
図1などに示されるロッド40のA2側の基端には、図示しないロッド40を押し引きする機構が配置されている。
【0019】
図5に示すように、ロッド40は、シャフト10の溝付管12の溝12aに、2本ずつ配置されている。1つの溝12aに配置された2本のロッド40の間には、スペーサ15が配置されている。
【0020】
図6に示すように、固定部83は、シャフト10の基端を固定する。
【0021】
第1実施形態では、
図6に示すように、伸縮吸収機構90は、内管13の基端に接続されている。伸縮吸収機構90は、コイル部材30が屈曲した場合にコイル部材30の伸長を吸収し、コイル部材30が直線状になった場合にコイル部材30の収縮を吸収する。
【0022】
具体的には、第1実施形態では、伸縮吸収機構90は、第1部分91と、第2部分92と、付勢部材93と、を含む。第1部分91は、駆動部62の駆動力を伝達する。第1部分91は、駆動部62に接続されている。具体的には、駆動部62には、プーリ62aが接続され、第1部分91にも、プーリ94が接続されている。駆動部62のプーリ62aと第1部分91のプーリ94とに亘るようにタイミングベルト95が配置されている。これにより、駆動部62の駆動力がタイミングベルト95を介して第1部分91に伝達される。すなわち、第1部分91は、タイミングベルト95を介して、駆動部62に接続されている。
【0023】
図9および
図10に示すように、第1部分91は、第2部分92に係合する爪部91aを有する。爪部91aは、たとえば第1部分91に2つ配置されている。
図11に示すように、爪部91aの断面は、四角形形状を有する。
【0024】
第1実施形態では、第2部分92は、内管13に接続されている。具体的には、第2部分92のA1側の部分が、内管13に接続されている。第2部分92は、第1部分91に対してシャフト10の軸方向であるA方向に沿って移動する。第2部分92は、第1部分91に係合する。具体的には、第2部分92は、たとえば、円柱形状を有する。円柱形状の第2部分92の外周面には、第1部分91の爪部91aが係合する溝92aが形成されている。溝92aの数は、爪部91aの数に等しい。
図11に示すように、溝92aの断面は、四角形形状を有する。
【0025】
第1実施形態では、付勢部材93は、コイル部材30の基端側に配置され、コイル部材30が収縮する方向にコイル部材30を付勢する。付勢部材93は、圧縮コイルばねを含む。付勢部材93は、第1部分91および第2部分92の外周を覆う。付勢部材93の基端は、第1部分91に当接する。付勢部材93の先端は、第2部分92に当接する。具体的には、第1部分91は、A方向に直交する方向に突出するフランジ部91bを有する。第2部分92は、A方向に直交する方向に突出するフランジ部92bを有する。付勢部材93の基端は、第1部分91のフランジ部91bに当接し、付勢部材93の先端は、第2部分92のフランジ部92bに当接する。
【0026】
図6に示すように、第1実施形態では、伸縮吸収機構90は、シャフト10よりも手術器具100の基端側に配置されている。具体的には、シャフト10の基端から内管13がA2側に延びており、伸縮吸収機構90は、シャフト10よりもA2側において内管13に接続されている。
【0027】
(手術器具の動作)
図1に示すように、屈曲部20が直線状である場合、コイル部材30自身の収縮力により、コイル部材30は、収縮する。すなわち、コイル部材30を構成する素線同士は密着する。その結果、コイル部材30のねじり剛性の低下が抑制される。
【0028】
図12に示すように、内管13のB1側に配置されているロッド40がA2側に引っ張られ、内管13のB2側に配置されているロッド40がA1側に押される。これにより、屈曲部20は、B1側に屈曲する。このとき、コイル部材30の素線がA2側に押し出されることにより、伸縮吸収機構90の第2部分92は、A2側に移動する。
【0029】
図13に示すように、内管13のB1側に配置されているロッド40がA1側に押され、内管13のB2側に配置されているロッド40がA2側に引っ張られる。これにより、屈曲部20は、B2側に屈曲する。このとき、コイル部材30の素線がA2側に押し出されることにより、伸縮吸収機構90の第2部分92は、A2側に移動する。
【0030】
[第1実施形態の効果]
手術器具100は、シャフト10および屈曲部20の内部に配置され、駆動部62の駆動力をエンドエフェクタ22に伝達するコイル部材30を備える。これにより、比較的安価なコイル部材30によって駆動部62の駆動力をエンドエフェクタ22に伝達することができるので、手術器具100のコストの増大を抑制できる。また、手術器具100は、内管13の基端側に配置され、コイル部材30が屈曲した場合にコイル部材30の伸長を吸収し、コイル部材30が直線状になった場合にコイル部材30の収縮を吸収する、伸縮吸収機構90を備える。ここで、コイル部材30が屈曲した場合、屈曲したコイル部材30の屈曲内側では、コイル部材30を構成する素線同士が干渉してコイル部材30が屈曲できなくなる。また、素線同士の干渉を抑制するためにコイル部材30を引っ張って素線同士の間隔を広げた状態でコイル部材30を手術器具100に配置することが考えられる。しかしながら、コイル部材30の素線同士の間隔を広くすると、コイル部材30のねじり剛性が小さくなる。一方、第1実施形態では、コイル部材30の基端側にコイル部材30の伸長を吸収する伸縮吸収機構90が配置されているので、コイル部材30が屈曲した場合、コイル部材30の基端側が伸縮吸収機構90側に移動する。これにより、コイル部材30が伸長するので、コイル部材30の屈曲内側の素線同士は常に密着した状態を維持きる。その結果、コイル部材30の屈曲内側の素線同士の干渉が抑制されるので、コイル部材30が屈曲できる。また、素線同士の間隔を広げた状態でコイル部材30を手術器具100に配置する必要がないので、コイル部材30のねじり剛性の低下を抑制できる。
【0031】
伸縮吸収機構90は、内管13の基端側に配置され、コイル部材30が収縮する方向にコイル部材30を付勢する付勢部材93を含む。これにより、コイル部材30が屈曲した場合、コイル部材30の屈曲内側では素線が伸縮吸収機構90側に押し出されて素線同士が密着している状態が維持される一方、コイル部材30の屈曲内側以外の部分では、素線同士が密着しない。そこで、付勢部材93によりコイル部材30が収縮する方向にコイル部材30を付勢することにより、コイル部材30の屈曲内側以外の部分においても素線同士の密着性を高めることができるので、コイル部材30のねじり剛性の低下が抑制される。
【0032】
付勢部材93は、圧縮コイルばねを含む。これにより、比較的簡易な構成の圧縮コイルばねによって、コイル部材30を収縮させることができる。
【0033】
伸縮吸収機構90は、駆動部62の駆動力を伝達する第1部分91と、第1部分91とコイル部材30との間に配置され、第1部分91に対してシャフト10の軸方向に沿って移動する第2部分92と、を含む。これにより、駆動部62の駆動力を、第1部分91を介して、コイル部材30に伝達することができる。また、コイル部材30が屈曲した場合において、伸長するコイル部材30によって、第2部分92が第1部分91側に移動する。これにより、コイル部材30が屈曲した場合、コイル部材30の基端側が容易に伸縮吸収機構90側に移動することができるので、コイル部材30が容易に伸長することができる。
【0034】
第1部分91は、駆動部62に接続され、第2部分92は、第1部分91に係合し、内管13に接続されている。これにより、駆動部62の駆動力を、第1部分91、第2部分92および内管13を介して、コイル部材30に伝達することができる。
【0035】
付勢部材93は、第1部分91および第2部分92の外周を覆い、付勢部材93の基端は、第1部分91に当接し、付勢部材93の先端は、第2部分92に当接する。これにより、コイル部材30が屈曲した場合、伸縮吸収機構90側に移動しようとするコイル部材30の基端側を、付勢部材93に付勢された第2部分92によりシャフト10側に押し返すことができる。その結果、コイル部材30が過度に伸長することが抑制できるので、コイル部材30の屈曲内側以外の部分における素線同士の密着性を高めることができる。
【0036】
コイル部材30は、多条多層コイルである。これにより、多条多層コイルは柔軟性が高いので、コイル部材30を柔軟に屈曲させることができる。また、多条多層コイルは、大きなトルクを伝達することができる。
【0037】
[第2実施形態]
図14を参照して、第2実施形態による手術器具300について説明する。手術器具300では、伸縮吸収機構220がシャフト210の内部に配置されている。具体的には、第1部分221がシャフト210の外部から内部まで亘るように配置されている。なお、シャフト210の外部から図示しない内管を挿入し、内管のA1側に第1部分221を接続してもよい。第2部分222は、シャフト210の内部において第1部分221と係合する。第2部分222のA1側には、コイル部材30が接続されている。なお、第2部分222とコイル部材30との間に図示しない内管を配置してもよい。
【0038】
[第2実施形態の効果]
伸縮吸収機構220は、シャフト210の内部に配置されている。これにより、伸縮吸収機構220がシャフト210の外部に配置されている場合と比べて、手術器具300のA方向の長さを小さくすることができる。
【0039】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0040】
上記第1および第2実施形態では、ロッド40が押し引きされることにより、屈曲部20が屈曲する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ロッド40以外の代わりにワイヤを配置して、ワイヤが引っ張られることにより、屈曲部20を屈曲させてもよい。
【0041】
上記第1および第2実施形態では、ロッド40がシャフト10の溝付管12の溝12aに、2本ずつ配置されている。例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、シャフト10の溝付管12の溝12aに、各々、1本のみのロッド40が接続されていてもよい。また、シャフト10の溝付管12の溝12aに、各々、3本以上のロッド40が接続されていてもよい。
【0042】
上記第1実施形態では、伸縮吸収機構90が、コイル部材30が収縮する方向にコイル部材30を付勢する付勢部材93を含む例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、屈曲部20が屈曲してコイル部材30が伸びた状態になった場合でも、コイル部材30の屈曲内側以外の部分の素線の密着状態がある程度維持できるのであれば、付勢部材93を配置しなくてもよい。なお、第2実施形態の伸縮吸収機構220についても同様である。
【0043】
上記第1および第2実施形態では、コイル部材30が多条多層コイルである例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、曲げ剛性およびねじり剛性が十分であれば、コイル部材30が、1条単層コイル、1条多層コイル、多条単層コイルでもよい。
【0044】
上記第1および第2実施形態では、手術器具100に本開示を適用する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、手術器具100以外の屈曲部を有する機構に、本開示を適用してもよい。
【0045】
上記第1および第2実施形態では、屈曲部20がC方向に直交するA-B面内で屈曲する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、シャフト10の軸線を含むすべての平面のうちのいずれかの平面内で屈曲部20が屈曲してもよい。
【0046】
上記第1および第2実施形態では、手術器具100および300に、屈曲部20が1つ配置されている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、手術器具100および300に、屈曲部20が複数配置されていてもよい。
【0047】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0048】
(項目1)
シャフトと、
前記シャフトの先端に接続される屈曲部と、
前記屈曲部の先端に配置されるエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタを回転させる駆動部と、
前記シャフトおよび前記屈曲部の内部に配置され、前記駆動部の駆動力を前記エンドエフェクタに伝達するコイル部材と、
前記シャフトに挿入され、前記コイル部材の基端に接続され、前記駆動部の駆動力を、前記コイル部材に伝達する管と、
前記管の基端に接続され、前記コイル部材が屈曲した場合に前記コイル部材の伸長を吸収し、前記コイル部材が直線状になった場合に前記コイル部材の収縮を吸収する、伸縮吸収機構と、を備える、手術器具。
【0049】
(項目2)
前記伸縮吸収機構は、前記管の基端側に配置され、前記コイル部材が収縮する方向に前記コイル部材を付勢する付勢部材を含む、項目1に記載の手術器具。
【0050】
(項目3)
前記付勢部材は、圧縮コイルばねを含む、項目2に記載の手術器具。
【0051】
(項目4)
前記伸縮吸収機構は、
前記駆動部の駆動力を伝達する第1部分と、
前記第1部分と前記コイル部材との間に配置され、前記第1部分に対して前記シャフトの軸方向に沿って移動する第2部分と、を含む、項目1から項目3までのいずれか1項に記載の手術器具。
【0052】
(項目5)
前記第1部分は、前記駆動部に接続され、
前記第2部分は、前記第1部分に係合し、前記管に接続されている、項目4に記載の手術器具。
【0053】
(項目6)
前記伸縮吸収機構は、前記コイル部材の基端側に配置され、前記コイル部材が収縮する方向に前記コイル部材を付勢する付勢部材をさらに含み、
前記付勢部材は、前記第1部分および前記第2部分の外周を覆い、
前記付勢部材の基端は、前記第1部分に当接し、
前記付勢部材の先端は、前記第2部分に当接する、項目5に記載の手術器具。
【0054】
(項目7)
前記コイル部材は、多条多層コイルである、項目1から項目6までのいずれか1項に記載の手術器具。
【0055】
(項目8)
前記伸縮吸収機構は、前記シャフトよりも手術器具の基端側に配置されている、項目1から項目7までのいずれか1項に記載の手術器具。
【0056】
(項目9)
前記伸縮吸収機構は、前記シャフトの内部に配置されている、項目1から項目7までのいずれか1項に記載の手術器具。
【符号の説明】
【0057】
10 シャフト
13 内管(管)
20 屈曲部
22 エンドエフェクタ
30 コイル部材
62 駆動部
90 伸縮吸収機構
91 第1部分
92 第2部分
93 付勢部材
100、300 手術器具
110 シャフト
220 伸縮吸収機構