(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093359
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】粉砕機、ライナ固定装置、及びライナ摩耗判定方法
(51)【国際特許分類】
B02C 17/10 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B02C17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209681
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 剛
(72)【発明者】
【氏名】山下 達也
(72)【発明者】
【氏名】小田 健二
(72)【発明者】
【氏名】木島 崇
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063FF02
4D063FF28
4D063FF35
4D063GC29
4D063GD04
(57)【要約】
【課題】シェルの外部からライナの摩耗の進行度を判定可能とする。
【解決手段】粉砕機は、中空状のシェルと、ライナと、貫通部材と、摩耗確認部材と、を備える。前記シェルは、被粉砕物を粉砕媒体とともに収容した状態で回転可能である。前記ライナは、前記シェルの内壁に固定される。前記貫通部材は、前記シェルを貫通するように設けられる。前記摩耗確認部材は、前記貫通部材に形成された装着穴に前記シェルの外側から取外し可能に装着される。前記装着穴の内部における前記摩耗確認部材の端部は、前記シェルの内壁面よりも、前記シェルの内部空間側に位置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被粉砕物を粉砕媒体とともに収容した状態で回転可能な中空状のシェルと、
前記シェルの内壁に固定されるライナと、
前記シェルを貫通し、前記ライナに取り付けられる貫通部材と、
前記貫通部材に形成された装着穴に装着される摩耗確認部材と、
を備え、
前記摩耗確認部材は、前記シェルの外側での作業により取外し可能であり、
前記装着穴の内部における前記摩耗確認部材の端部は、前記シェルの内壁面よりも、前記シェルの内部空間側に位置する、粉砕機。
【請求項2】
請求項1に記載の粉砕機であって、
前記摩耗確認部材は、前記貫通部材にネジ止めにより装着される、粉砕機。
【請求項3】
請求項1に記載の粉砕機であって、
前記摩耗確認部材と前記装着穴との間が封止されている、粉砕機。
【請求項4】
被粉砕物を粉砕媒体とともに収容した状態で回転可能な中空状のシェルと、
前記シェルの内壁に固定されるライナと、
前記シェルを貫通し、前記ライナに取り付けられる貫通部材と、
前記貫通部材に形成された凹部を閉鎖するように前記貫通部材に装着される閉鎖部材と、
を備え、
前記閉鎖部材は、前記シェルの外側での作業により前記凹部を開放させることが可能であり、
前記凹部の内壁面のうち前記凹部の開口から遠い側の端面は、前記貫通部材の内部に位置しており、
前記シェルの貫通孔に前記貫通部材を差し込んだ状態で、前記凹部の前記端面は、前記シェルの内壁面よりも、前記シェルの内部空間側に位置する、粉砕機。
【請求項5】
請求項1に記載の粉砕機であって、
前記貫通部材は、前記ライナを前記シェルに固定する固定ボルトである、粉砕機。
【請求項6】
被粉砕物を粉砕媒体とともに収容した状態で回転可能な中空状のシェルを備える粉砕機のライナ固定装置であって、
前記シェルに形成された貫通孔に差込可能であり、ライナに取付可能な貫通部材と、
前記貫通部材に形成された装着穴に装着される摩耗確認部材と、
を備え、
前記シェルの貫通孔に前記貫通部材を差し込んだ状態で、前記摩耗確認部材は、前記貫通部材とともに前記シェルを貫通し、
前記シェルの貫通孔に前記貫通部材を差し込んだ状態で、前記貫通孔を挟んで前記ライナと反対側から、前記摩耗確認部材の前記貫通部材への取付け及び取外しが可能である、ライナ固定装置。
【請求項7】
被粉砕物を粉砕媒体とともに収容した状態で回転可能な中空状のシェルを備える粉砕機のライナ固定装置であって、
前記シェルに形成された貫通孔に差込可能であり、ライナに取付可能な貫通部材と、
前記貫通部材に形成された凹部を閉鎖するように前記貫通部材に装着される閉鎖部材と、
を備え、
前記凹部の内壁面のうち前記凹部の開口から遠い側の端面は、前記貫通部材の内部に位置しており、
前記シェルの前記貫通孔に前記貫通部材を差し込んだ状態で、前記凹部の前記端面は、前記シェルの内壁面よりも、前記シェルの内部空間側に位置し、
前記シェルの貫通孔に前記貫通部材を差し込んだ状態で、前記閉鎖部材に対する作業を、前記貫通孔を挟んで前記ライナと反対側で行うことで、前記ライナと反対側に前記凹部を開放させることが可能である、ライナ固定装置。
【請求項8】
被粉砕物を粉砕媒体とともに収容した状態で回転可能な中空状のシェルと、
前記シェルの内壁に固定されるライナと、
前記シェルを貫通し、前記ライナに取り付けられる貫通部材と、
を備える粉砕機における前記ライナの摩耗を判定するライナ摩耗判定方法であって、
前記貫通部材に形成された装着穴に前記シェルの外側から摩耗確認部材を装着した状態で、前記粉砕機を稼動させ、
取り外された前記摩耗確認部材に生じている摩耗に基づいて、前記ライナの摩耗を判定する、ライナ摩耗判定方法。
【請求項9】
被粉砕物を粉砕媒体とともに収容した状態で回転可能な中空状のシェルと、
前記シェルの内壁に固定されるライナと、
前記シェルを貫通し、前記ライナに取り付けられる貫通部材と、
を備える粉砕機における前記ライナの摩耗を判定するライナ摩耗判定方法であって、
前記貫通部材に形成された凹部を閉鎖するように閉鎖部材を前記貫通部材に装着した状態で、前記粉砕機を稼動させ、
前記粉砕機の稼動中は、前記凹部の内壁面のうち前記凹部の開口から遠い側の端面が前記貫通部材の内部に位置しており、かつ、前記端面が、前記シェルの内壁面よりも、前記シェルの内部空間側に位置し、
前記閉鎖部材に対する前記シェルの外側での作業により前記凹部を開放させ、この状態での前記凹部からの漏出物の有無に基づいて、前記ライナの摩耗を判定する、ライナ摩耗判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉砕機におけるライナの摩耗に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の粉砕機は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1は、ミルライナが摩耗した場合でも被砕物のかき上げ作用が衰えないための、ミルライナの形状について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉砕機におけるライナの摩耗の状況を把握することは、機械の損傷を防止する等の観点から重要である。しかし、粉砕機においてライナはミル本体の内壁を覆うように配置されることから、外部からライナの摩耗の状況を判別することができない。従って、メンテナンス作業等に大きな手間を要していた。
【0005】
本開示は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、シェルの外部からライナの摩耗の進行度を判定可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本開示の第1の観点によれば、以下の構成の粉砕機が提供される。即ち、この粉砕機は、中空状のシェルと、ライナと、貫通部材と、摩耗確認部材と、を備える。前記シェルは、被粉砕物を粉砕媒体とともに収容した状態で回転可能である。前記ライナは、前記シェルの内壁に固定される。前記貫通部材は、前記シェルを貫通し、前記ライナに取り付けられる。前記摩耗確認部材は、前記貫通部材に形成された装着穴に装着される。前記摩耗確認部材は、前記シェルの外側での作業によって取外し可能である。前記装着穴の内部における前記摩耗確認部材の端部は、前記シェルの内壁面よりも、前記シェルの内部空間側に位置する。
【0008】
これにより、シェルの内部に入ることなく、ライナの摩耗の状況を外部から判定することができる。従って、メンテナンス性が良好である。
【0009】
本開示の第2の観点によれば、以下の構成の粉砕機が提供される。即ち、この粉砕機は、中空状のシェルと、ライナと、貫通部材と、閉鎖部材と、を備える。前記シェルは、被粉砕物を粉砕媒体とともに収容した状態で回転可能である。前記ライナは、前記シェルの内壁に固定される。前記貫通部材は、前記シェルを貫通し、前記ライナに取り付けられる。前記閉鎖部材は、前記貫通部材に形成された凹部を閉鎖するように、前記貫通部材に装着される。前記閉鎖部材は、前記シェルの外側での作業によって取外し可能である。前記凹部の内壁面のうち前記凹部の開口から遠い側の端面は、前記貫通部材の内部に位置している。前記シェルの貫通孔に前記貫通部材を差し込んだ状態で、前記凹部の前記端面は、前記シェルの内壁面よりも、前記シェルの内部空間側に位置する。
【0010】
これにより、シェルの内部に入ることなく、ライナの摩耗の状況を外部から判定することができる。従って、メンテナンス性が良好である。
【0011】
本開示の他の観点によれば、ライナ固定装置及びライナ摩耗判定方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、シェルの外部からライナの摩耗の進行度を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態に係る横型ミルの全体的な構成を示す一部断面斜視図。
【
図2】摩耗確認機能を有していない固定装置の構成を説明する斜視図。
【
図3】本実施形態の第1例の固定装置を説明する斜視図。
【
図4】本実施形態の第2例の固定装置を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、開示される実施の形態を説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る横型ミル100の全体的な構成を示す斜視図である。
図2は、摩耗確認機能を有していない固定装置1の構成を説明する斜視図である。
【0015】
図1に示す横型ミル100は、湿式のボールミルとして構成されている。本実施形態において、横型ミル100は、砕石を粉砕して砂を得る製砂機として用いられる。横型ミル100は、シェル10と、供給部20と、排出部30と、を備える。
【0016】
シェル10は、中空状の部材である。シェル10は、例えば円筒状に形成することができる。シェル10は、粉砕ドラムと呼ばれることもある。シェル10の中心軸は、水平に配置されるか、又は、排出部30に近づくにつれて下方となるように少し傾斜して配置される。
【0017】
シェル10の内部には、粉砕媒体としてのボールが多数配置されている。ボールは、例えば鋼球である。ただし、粉砕媒体として、ボールに代えてロッドを用いることもできる。
【0018】
シェル10の下方には、複数の支持タイヤ11が配置されている。シェル10の外周面には、2つのスリーブ12が固定されている。それぞれのスリーブ12は、リング状に形成されている。スリーブ12の外径は、シェル10の外径よりも大きい。
【0019】
シェル10は、スリーブ12が複数の支持タイヤ11の上に載るように配置される。支持タイヤ11のうち少なくとも一部は、電動モータ等の駆動力が伝達されて回転駆動される。これにより、シェル10は、実質的に横向きの回転軸10cを中心として回転する。この回転軸10cは、シェル10の中心軸と一致する。
【0020】
シェル10の側方には、2つのガイドタイヤ13が回転可能に支持されている。ガイドタイヤ13は、2つのスリーブ12の間に差し込まれている。ガイドタイヤ13がスリーブ12に接触することで、シェル10の軸方向の位置を規制することができる。
【0021】
シェル10の軸方向一側の端部には、供給部20が配置されている。供給部20には、被粉砕物である石を投入するための投入口21が形成されている。本実施形態の横型ミル100は湿式であるので、投入口21からは、被粉砕物である原料とともに、水が投入される。供給部20に投入された原料と水は、シェル10の軸端部の中心孔から内部空間に入る。
【0022】
シェル10の内壁面には、ライナ15,16,17が多数並べて固定されている。ライナ15,16,17は、シェル10の内壁面を保護する保護部材として機能する。ライナ15,16,17のそれぞれは、後述の固定装置1を用いて、シェル10に取外し可能に固定されている。粉砕対象物及びボールとの接触によりライナ15,16,17の摩耗が進行した場合に、ライナ15,16,17を交換することができる。
【0023】
シェル10の内壁面のうち軸端面に配置されるライナ15,17は、平板状に形成される。一方、シェル10の内壁面のうち、円筒の内周面に配置されるライナ16は、突起9を有している。シェル10が回転すると、内部空間の底部にある原料及びボールが突起9に押されるので、原料及びボールはシェル10の内周面に沿うようにかき上げられ、やがて突起9から落下する。これにより、原料の粉砕を良好に行うことができる。
【0024】
シェル10の軸方向において、供給部20と反対側の端部には、分粒装置31が接続されている。シェル10の内部空間と、分粒装置31とは、シェル10の中心部に配置された通路32を通じて接続される。分粒装置31は、回転篩として構成されており、シェル10と一体的に回転する。
【0025】
シェル10の内部空間からオーバーフローした原料及び水は、通路32を通じて分粒装置31の内部に入り、回転する篩によって分粒される。
【0026】
分粒装置31を覆うように、排出部30が配置されている。排出部30の下部には、分粒装置31の篩を通過した砂を排出する第1排出口35と、篩を通過できなかった砂を排出する第2排出口36と、が形成されている。第2排出口36から排出された砂は、適宜の手段で再び投入口21に戻され、粉砕される。
【0027】
次に、ライナ16をシェル10の内壁に固定する固定装置1について説明する。上述のとおりシェル10には多数のライナ15,16,17が固定されるが、
図2においては、1つのライナ16だけが示されている。
【0028】
本実施形態において、ライナ15,16,17は、1つのライナにつき2つの固定装置1によってシェル10に固定される。
図2に示される2つの固定装置1の構成は同一である。ただし、1つのライナを固定するために用いられる固定装置1の数は任意である。
【0029】
図2に示すように、それぞれの固定装置1は、固定ボルト(貫通部材)51と、ナット52と、シール用座金53と、シールリング54と、バネ座金55と、を備える。
【0030】
固定ボルト51は、頭部が概ね多角錘状に形成されている公知のネジである。シェル10には、固定ボルト51の軸部に対応した貫通孔18が形成されている。ライナ16には、固定ボルト51の頭部に対応した多角錘状の取付穴19が形成されている。固定ボルト51の軸部は、シェル10の内側から、取付穴19及び貫通孔18に差し込まれる。固定ボルト51の長手方向は、円筒状のシェル10の径方向に向けられる。固定ボルト51の頭部は、シェル10の内側に位置し、先端部は、シェル10の外側に位置する。シェル10の外側とは、貫通孔18を挟んでライナ16と反対側と言い換えることもできる。固定ボルト51の頭部と取付穴19の形状が矩形状であるので、固定ボルト51がライナ16に対して回転するのを防止できる。
【0031】
固定ボルト51の軸部には、ナット52がネジ止めされる。ナット52は、公知の6角ナットである。シェル10の外周面とナット52の間には、シール用座金53及びバネ座金55が配置される。固定ボルト51からナット52を取り外すことで、シェル10に対するライナ16の固定を解除することができる。
【0032】
シール用座金53は、リング状に形成されている。シール用座金53の内周側には円錐状の空間が形成されており、この部分にシールリング54が配置される。シールリング54は、固定ボルト51の軸部よりも外側、かつ、シール用座金53よりも内側に配置される。シールリング54は、貫通孔18がシェル10の外周面に形成する開口の周囲において、シェル10と固定ボルト51の間を封止する。これにより、シェル10の内部の水又は被粉砕物が外部に漏れるのを防止することができる。
【0033】
次に、ライナ16の摩耗確認機能付きの固定装置1aについて、
図3を参照して説明する。
【0034】
図2に示した固定装置1は、シェル10の外部からライナ16の摩耗を確認できる構成を有していない。以下、この固定装置1を、通常の固定装置と呼ぶことがある。シェル10には多数のライナ15,16,17が固定されるが、これらの大部分は、
図2に示す通常の固定装置1によってシェル10に固定される。多数のライナ15,16,17のうち選択された一部又は全部のライナが、
図3に示す固定装置1aを用いてシェル10に固定される。
【0035】
この固定装置1aにおいては、固定ボルト51の中心に、貫通状の装着穴56が形成されている。装着穴56は直線状に形成され、その向きは固定ボルト51の軸方向と平行である。装着穴56には、確認ボルト(摩耗確認部材)57の軸部が挿入されている。詳細は後述するが、確認ボルト57の軸部の摩耗を調べることで、ライナ16の摩耗の進行度を判断することができる。確認ボルト57は、装着穴56が固定ボルト51の先端面に形成する開口に、シェル10の外側から差し込まれている。確認ボルト57は、その軸部の全体が装着穴56に差し込まれた状態で、固定ボルト51に固定される。確認ボルト57と装着穴56との間には、確認シールリング58が取り付けられている。
【0036】
確認ボルト57の軸部のうち、少なくとも頭部に近い部分には、オネジ部が形成されている。これに対応して、装着穴56の内壁にはメネジ部が形成されている。これにより、確認ボルト57を装着穴56に対して取外し可能に固定することができる。
【0037】
上記以外に関する固定装置1aの構成は、前述した固定装置1と同様であるので、説明を省略する。
【0038】
確認ボルト57は、固定ボルト51の軸部に大部分が埋め込まれる形で配置される。従って、確認ボルト57を事前に取り外さなくても、例えば固定ボルト51からナット52を取り外す場合に、確認ボルト57と干渉しない。
図3に示す固定装置1aは、ライナ15,16,17の取付け/取外しに関して、通常の固定装置1と全く同様に作業を行うことができる。
【0039】
確認ボルト57が装着穴56に取り付けられた状態が、
図3に鎖線で示されている。この状態では、確認ボルト57の先端部は、固定ボルト51の頭部付近であって、ライナ16に形成された取付穴19の内部に位置する。確認ボルト57の先端部は、シェル10の内壁面10aよりも回転軸10cに近い位置となっている。言い換えれば、確認ボルト57の軸部は、固定ボルト51とともにシェル10を貫通する。確認ボルト57の先端部は、シェル10の内壁面10aよりも、シェル10の内部空間側に位置する。
【0040】
横型ミル100の使用に伴い、ライナ16が摩耗していく。ライナ16の摩耗がある程度進行すると、固定装置1が備える固定ボルト51の頭部にも摩耗が生じる。固定ボルト51の摩耗が確認ボルト57の埋込み部分に到達すると、確認ボルト57の先端に摩耗が生じる。
【0041】
横型ミル100のオペレータは、定期的又は不定期に、ライナ16の摩耗の検査を行う。この検査作業は、シェル10の回転を停止した状態で行われる。作業者は、固定装置1aの確認ボルト57を回転させることで取り外し、確認ボルト57の長さを測定することにより摩耗を検査する。確認ボルト57の長さが所定の長さ以下となっていた場合は、ライナ16の摩耗が一定程度進行しているため、作業者はライナ16を交換すべきと判定する。検査作業の後、確認ボルト57は再び装着穴56に取り付けられる。
【0042】
本実施形態では、シェル10の外側から取外し可能に構成された確認ボルト57の長さから、ライナ16の摩耗の度合いを判断することができる。従って、シェル10の内部に作業者が入ってライナ16の状態を直接目視で確認する必要がなくなるので、ライナ16の摩耗確認作業を著しく省力化できる。
【0043】
図3の例では、1つのライナ16が、確認ボルト57付きの固定装置1aと、通常の固定装置1と、によってシェル10に固定されている。ただし、確認ボルト57付きの固定装置1aを2つ用いてライナ16を固定することもできる。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態の横型ミル100は、中空状のシェル10と、ライナ16と、固定ボルト51と、確認ボルト57と、を備える。中空状のシェル10は、投入口21をボールとともに収容した状態で回転可能である。ライナ16は、シェル10の内壁に固定される。固定ボルト51は、シェル10を貫通するように設けられる。確認ボルト57は、固定ボルト51に形成された装着穴56に装着される。確認ボルト57は、シェル10の外側で確認ボルト57を回転させる作業により取り外すことができる。装着穴56の内部における確認ボルト57の端部は、シェル10の内壁面10aよりも、シェル10の内部空間側に位置する。
【0045】
固定装置1aは、固定ボルト51と、確認ボルト57と、を備える。固定ボルト51は、シェル10に形成された貫通孔18に差込可能であり、ライナ16に取付可能である。確認ボルト57は、固定ボルト51に形成された装着穴56に装着される。シェル10の貫通孔18に固定ボルト51を差し込んだ状態で、確認ボルト57は、固定ボルト51とともにシェル10を貫通する。シェル10の貫通孔18に固定ボルト51を差し込んだ状態で、貫通孔18を挟んでライナ16と反対側から、確認ボルト57の固定ボルト51への取付け及び取外しが可能である。
【0046】
固定装置1aを用いる場合、以下のようにしてライナ16の摩耗が判定される。即ち、固定ボルト51に形成された装着穴56にシェル10の外側から確認ボルト57を装着した状態で、横型ミル100を稼動させる。取り外された確認ボルト57に生じている摩耗に基づいて、ライナ16の摩耗を判定する。
【0047】
これにより、作業者は、シェル10の内部に入ることなく、ライナ16の摩耗の状況を外部から判定することができる。従って、メンテナンス性が良好である。
【0048】
本実施形態の横型ミル100において、確認ボルト57は、固定ボルト51にネジ止めにより装着される。
【0049】
これにより、確認ボルト57の装着/取外しが容易になる。
【0050】
本実施形態の横型ミル100において、確認ボルト57と装着穴56との間が、確認シールリング58により封止されている。
【0051】
これにより、運転中にシェル10の内部から水又は被粉砕物が漏れることを防止できる。
【0052】
本実施形態の横型ミル100において、ライナ16をシェル10に固定する固定ボルト51に、装着穴56が形成されている。
【0053】
これにより、ライナ16をシェル10に固定する部分に、ライナ16の摩耗を外部から確認できる機能を発揮させることができる。従って、構成を簡素化できる。
【0054】
次に、
図4の構成について説明する。ライナ16の摩耗の進行度は、
図4に示す固定装置1bによっても、シェル10の外側から判定することができる。
【0055】
図4の固定装置1bにおいては、固定ボルト51の中心に、確認凹部(凹部)59が形成されている。確認凹部59は、直線状に細長い凹部として形成されている。確認凹部59は直線状に形成され、その向きは固定ボルト51の軸方向と平行である。確認凹部59は、
図3で説明した装着穴56と異なり、非貫通状に形成されている。確認凹部59は、固定ボルト51の先端面に開口を形成している。
【0056】
確認凹部59の内壁面のうち、開口から遠い側の端面59aは、固定ボルト51の内部に位置している。従って、確認凹部59の内部は、シェル10の内部空間に対して閉鎖されている。この端面59aは、固定ボルト51の頭部の面に対して、固定ボルト51の軸方向で所定の長さだけ離れて位置している。確認凹部59の端面59aは、シェル10の内壁面10aよりも、シェル10の内部空間側に位置する。
【0057】
確認凹部59の開口を閉鎖するように、閉鎖プラグ(閉鎖部材)60が確認凹部59に固定される。閉鎖プラグ60は、固定ボルト51の先端部に対してネジ止めされる。これにより、閉鎖プラグ60を確認凹部59に対して取外し可能に固定することができる。閉鎖プラグ60と確認凹部59の間には、シールリング61が配置される。これにより、確認凹部59をシールすることができる。
【0058】
図4の構成でライナ16の摩耗が進行し、やがて、固定ボルト51の頭部の摩耗が一定以上進行すると、確認凹部59の内部空間が、シェル10の内部空間に対して接続される。作業者は、シェル10の外部で、固定装置1bの閉鎖プラグ60を回転させることによって取り外し、確認凹部59を開放させる。続いて、作業者は、確認凹部59の開口から水又は被粉砕物が漏出しているか否かを検査する。水又は被粉砕物が漏出していた場合は、ライナ16の摩耗が一定程度進行しているため、作業者はライナ16を交換すべきと判定する。
【0059】
この固定装置1bによっても、ライナ16の摩耗確認作業の手間を効果的に軽減することができる。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態の横型ミル100は、固定ボルト51と、閉鎖プラグ60と、を備える。固定ボルト51は、シェル10を貫通する。固定ボルト51は、ライナ16に取り付けられる。閉鎖プラグ60は、固定ボルト51に形成された確認凹部59を閉鎖するように固定ボルト51に装着される。閉鎖プラグ60は、シェル10の外側での作業により確認凹部59を開放させることが可能である。確認凹部59の内壁面のうち確認凹部59の開口から遠い側の端面59aは、固定ボルト51の内部に位置している。シェル10の貫通孔18に固定ボルト51を差し込んだ状態で、確認凹部59の端面59aは、シェル10の内壁面よりも、シェル10の内部空間側に位置する。
【0061】
固定装置1bは、固定ボルト51と、閉鎖プラグ60と、を備える。固定ボルト51は、シェル10に形成された貫通孔18に差込可能であり、ライナ16に取付可能である。閉鎖プラグ60は、固定ボルト51に形成された確認凹部59を閉鎖するように固定ボルト51に装着される。確認凹部59の内壁面のうち確認凹部59の開口から遠い側の端面59aは、固定ボルト51の内部に位置している。シェル10の貫通孔18に固定ボルト51を差し込んだ状態で、確認凹部59の端面59aは、シェル10の内壁面10aよりも、シェル10の内部空間側に位置する。シェル10の貫通孔18に固定ボルト51を差し込んだ状態で、閉鎖プラグ60に対する作業を、貫通孔18を挟んでライナ16と反対側で行うことで、ライナ16と反対側に確認凹部59を開放させることが可能である。
【0062】
固定装置1bを用いる場合、以下のようにしてライナ16の摩耗が判定される。即ち、固定ボルト51に形成された確認凹部59を閉鎖するように閉鎖プラグ60を固定ボルト51に装着した状態で、横型ミル100を稼動させる。横型ミル100の稼動中は、確認凹部59の内壁面10aのうち確認凹部59の開口から遠い側の端面59aが固定ボルト51の内部に位置しており、かつ、端面59aが、シェル10の内壁面10aよりも、シェル10の内部空間側に位置する。閉鎖プラグ60に対するシェル10の外側での作業により確認凹部59を開放させ、この状態での確認凹部59からの漏出物の有無に基づいて、ライナ16の摩耗を判定する。
【0063】
これにより、作業員がシェル10の内部に入ることなく、ライナ16の摩耗の状況を外部から判定することができる。従って、メンテナンス性が良好である。
【0064】
以上に本開示の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0065】
固定装置1a,1bは、シェル10の軸端面に配置されるライナ15,17の固定のために用いることもできる。
【0066】
固定装置1aにおいて、ネジ止め以外の方法で、摩耗を確認するための部材を固定ボルト51に固定することもできる。例えば、ピンによる固定が考えられる。
【0067】
シールリング54を省略することもできる。
【0068】
ボルトと異なる手段で、ライナ16をシェル10に固定することもできる。
【0069】
確認ボルト57に、摩耗量の目安を示す目盛り又はマーク等を付すこともできる。
【0070】
確認ボルト57が差し込まれる装着穴56は、固定ボルト51を貫通しないように形成されても良い。
【0071】
確認ボルト57は、ボルトに限定されず、シェル10を貫通する他の部材に設けるように構成することもできる。同様に、確認凹部59を、ボルトと異なる部材に形成することができる。
【0072】
既存の横型ミルに取り付けられている固定装置を、
図3又は
図4に示す固定装置1a,1bに交換することもできる。これにより、既存の装置への適用が容易である。
【0073】
上記実施形態の横型ミル100は、シェル10を支持タイヤ11によって下側から支持しつつ摩擦駆動する構成である。摩耗を確認するための部材は、上記に限定されず、例えばギア式の横型ミルに適用することができる。ギア式の横型ミルにおいては、シェルは軸受を介して回転可能に支持されている。電動モータ等の駆動力は、ギアの噛合いによってシェルに伝達され、シェルが回転駆動される。
【符号の説明】
【0074】
1a,1b 固定装置(ライナ固定装置)
10 シェル
10c 回転軸
15,16,17 ライナ
18 貫通孔
19 取付穴
21 投入口
51 固定ボルト(貫通部材)
56 装着穴
57 確認ボルト(摩耗確認部材)
59 確認凹部(凹部)
60 閉鎖プラグ(閉鎖部材)
100 横型ミル(粉砕機)