(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093371
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】表示装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G09G 3/20 20060101AFI20240702BHJP
G09G 3/3225 20160101ALI20240702BHJP
H04N 5/66 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G09G3/20 622R
G09G3/20 622Q
G09G3/20 660K
G09G3/20 660X
G09G3/20 680A
G09G3/3225
H04N5/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209701
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西沢 和夫
【テーマコード(参考)】
5C058
5C080
5C380
【Fターム(参考)】
5C058BA25
5C058BA35
5C080AA06
5C080AA07
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD08
5C080FF11
5C080HH09
5C080HH13
5C080JJ02
5C080JJ04
5C080JJ06
5C080JJ07
5C080KK07
5C080KK20
5C380AA01
5C380AA03
5C380AB06
5C380AB32
5C380AC11
5C380AC12
5C380AC13
5C380BC20
5C380CB02
5C380CB29
5C380CB34
5C380CC26
5C380CC33
5C380CC62
5C380CD012
5C380DA06
5C380DA32
5C380DA35
5C380DA44
5C380EA13
5C380FA24
(57)【要約】
【課題】データが表示装置に供給されてから表示されるまでの遅延時間を減少させつつ、ユーザーに体感的な画質低下を感じ難くさせることができる表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置は、複数のフレーム期間のそれぞれにおいて、前記複数の画素のうち選択された前記走査線に対応する選択画素に対し、前記複数のデータ線のうち前記選択画素に対応するデータ線を介して映像データ信号を書込む複数の書込み処理を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数のフレーム期間のうちの1フレーム期間に含まれる前記複数の書込み処理のうちの2以上の書込み処理において、1以上の走査線を順次選択する第1選択処理と、前記複数のフレーム期間のうちの前記第1選択処理が行われるフレーム期間とは異なる1フレーム期間のうちの2以上の書込み処理において、前記第1選択処理で選択される走査線の数よりも多い数の走査線を選択する第2選択処理と、を含む処理を繰り返す。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
行方向に延在する複数の走査線と、
列方向に延在する複数のデータ線と、
前記複数の走査線と前記複数のデータ線の交差のそれぞれに対応して設けられた複数の画素と、
複数のフレーム期間のそれぞれにおいて、前記走査線を選択し、前記複数の画素のうち選択された前記走査線に対応する選択画素に対し、前記複数のデータ線のうち前記選択画素に対応するデータ線を介して映像データ信号を書込む複数の書込み処理を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記複数のフレーム期間のうちの1フレーム期間に含まれる前記複数の書込み処理のうちの2以上の書込み処理において、1以上の走査線を順次選択する第1選択処理と、
前記複数のフレーム期間のうちの前記第1選択処理が行われるフレーム期間とは異なる1フレーム期間のうちの2以上の書込み処理において、前記第1選択処理で選択される走査線の数よりも多い数の走査線を選択する第2選択処理と、
を含む処理を繰り返す、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1選択処理は、前記複数の走査線のうちの所定数の走査線が1行ごとに順次選択される処理であり、
前記第2選択処理は、前記所定数の走査線が2行ごとに順次選択される処理である、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記複数の画素を含む表示パネルを備え、
前記表示パネルが有する画面は、第1領域および第2領域を含み、
前記第1領域において前記第1選択処理および前記第2選択処理を含む選択処理が繰り返され、
前記第2領域において前記第2選択処理が行われる、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
視線を検出するセンサーをさらに備え、
前記制御部は、前記センサーが検出する視線検出データに応じて前記第1領域を設定する、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記複数のフレーム期間のうち前記第1選択処理が行われるフレーム期間および前記第2選択処理が行われるフレーム期間のそれぞれとは異なる1フレーム期間において、前記第1選択処理および前記第2選択処理のそれぞれで選択される走査線の数よりも多い数の走査線を選択する第3選択処理を行い、
前記第1選択処理、前記第2選択処理および前記第3選択処理を含む選択処理を繰り返す、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の表示装置を有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置および有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置が知られている。かかる装置の一例として、特許文献1に記載の表示装置が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、仮想現実機器システムに搭載された表示装置について開示される。当該表示装置は、データラインとゲートラインとが交差されるマトリクス形態に配列された複数のピクセルを含む表示パネルを有する。また、当該表示装置は、表示パネルが第1領域と第2領域とを有しており、第1領域に比べて第2領域においてゲートラインに供給されるゲート信号のシフト回数を減らしている。よって、当該装置では、第1領域に映像データが第1解像度で表示され、第2領域に映像データが第1解像度よりも低い第2解像度で表示される。かかる装置では、前述のシフト回数を減らすことにより、ピクセルにデータが書き込まれるまでの遅延時間を減少させている。また、第1領域は、ユーザーの視線が向かう焦点位置を含む領域であり、第2領域は、第1領域の周辺領域である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置では、第1領域および第2領域の各解像度が一定である。このため、例えばユーザーの頭の動き等によって、解像度の低い第2領域がユーザーに視認するおそれがある。このため、ユーザーが第1領域と第2領域との解像度の違いを認知してしまい、ユーザーに画質低下を感じさせてしまうおそれがある。よって、従来の装置では、データが表示装置に供給されてから表示されるまでの遅延時間を減少させつつ、ユーザーに体感的な画質低下を感じ難くさせることが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る表示装置は、行方向に延在する複数の走査線と、列方向に延在する複数のデータ線と、前記複数の走査線と前記複数のデータ線の交差のそれぞれに対応して設けられた複数の画素と、複数のフレーム期間のそれぞれにおいて、前記走査線を選択し、前記複数の画素のうち選択された前記走査線に対応する選択画素に対し、前記複数のデータ線のうち前記選択画素に対応するデータ線を介して映像データ信号を書込む複数の書込み処理を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数のフレーム期間のうちの1フレーム期間に含まれる前記複数の書込み処理のうちの2以上の書込み処理において、1以上の走査線を順次選択する第1選択処理と、前記複数のフレーム期間のうちの前記第1選択処理が行われるフレーム期間とは異なる1フレーム期間のうちの2以上の書込み処理において、前記第1選択処理で選択される走査線の数よりも多い数の走査線を選択する第2選択処理と、を含む処理を繰り返す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の表示装置を備える電子機器としてのヘッドマウントディスプレイを示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の表示装置のブロック図である。
【
図6】表示パネルが有する画面の第1領域および第2領域を示す図である。
【
図7】第1領域における同時書込み数を説明するための図である。
【
図8】画面の第1領域および第2領域における同時書込み数を説明するための図である。
【
図9】
図8における画面の表示にかかる走査信号を示す図である。
【
図10】第1実施形態のデータ量と比較例のデータ量との比較を示す表である。
【
図11】第1実施形態の表示装置の動作のフロー図である。
【
図12】第2実施形態の第1領域の表示を説明するための図である。
【
図13】画面の第1領域および第2領域における同時書込み数を説明するための図である。
【
図14】画面の同時書込み数を説明するための図である。
【
図15】表示装置を備える電子機器としてデジタルスチルカメラの図である。
【
図16】表示パネルの画面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法や縮尺は実際のものと適宜異なり、理解を容易にするために模式的に示す部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0009】
1.第1実施形態
1―1.ヘッドマウントディスプレイ9
図1は、第1実施形態の表示装置1を備える電子機器としてのヘッドマウントディスプレイ9を示す斜視図である。
図1に示すヘッドマウントディスプレイ9は、フロントフレーム91と、一対のサイドフレーム92と、光学パネル93と、2つの回路カバー94と、表示装置1とを備える。フロントフレーム91は、ユーザーの頭部の前方に位置する。一対のサイドフレーム92は、フロントフレーム91の両端に接続され、ユーザーの頭部の両側に位置する。光学パネル93は、フロントフレームに固定され、ユーザーの眼前を覆う。各回路カバー94は、一対のサイドフレーム92のいずれか一方に固定される。
【0010】
表示装置1は、2つの表示パネル10と、視線検出装置2と、制御部3と、電源回路4とを含む。
図1では、左眼用の表示パネル10を表示パネル10Lと表記し、右眼用の表示パネル10を表示パネル10Rと表記する。2つの表示パネル10は、光学パネル93内に配置される。各表示パネル10から出射される光は、光学パネル93から出射される。表示パネル10Rはユーザーの右眼で視認され、表示パネル10Lはユーザーの左眼で視認される。
【0011】
表示パネル10または光学パネル93には、視線検出装置2が配置される。また、本実施形態では、一方の回路カバー94内に制御部3が配置され、他方の回路カバー94内に電源回路4が配置される。ただし、これらの配置は適宜変更可能である。
【0012】
かかるヘッドマウントディスプレイ9は、表示装置1を備える。後で詳述するが、表示装置1によれば、データが供給されてから表示されるまでの遅延時間を減少させつつ、ユーザーに体感的な画質低下を感じ難くさせることができる。よって、表示装置1を備えるヘッドマウントディスプレイ9によれば、ユーザーは、データ供給の遅延および画質の低下を感じ難く、快適に映像を視認することができる。
【0013】
1-2.表示装置1の構成
図2は、第1実施形態の表示装置1のブロック図である。
図2に示す表示装置1は、例えば、発光素子の一例であるOLEDを含む有機ELディスプレイである。OLEDは、Organic Light Emitting Diodeの略称である。ELは、Electroluminescenceの略称である。本実施形態では、表示装置1は、フルカラーの映像の表示が可能である。なお、映像には、文字情報のみを表示するものが含まれる。また、表示装置1は単色のみを表示可能な装置であってもよい。
【0014】
表示装置1は、図示省略されたホスト装置から供給された映像データVideoに基づく映像を表示する。表示装置1では、当該ホスト装置から映像データVideoが供給されてから映像が表示されるまでの遅延時間を減少させるために、映像データVideoの間引きを行うことで、少ないデータで映像を表示させる。また、表示装置1では、ユーザーに体感的な画質低下を感じ難くさせるために、間引き量を経時的に変化させながら映像の表示を行う。特に、表示装置1では、ユーザーの視線を検知し、ユーザーの眼の焦点位置を含む領域において間引き量を経時的に変更する。
【0015】
前述のように表示装置1は、2つの表示パネル10と、視線検出装置2と、制御部3とを有する。2つの表示パネル10のうちの一方は、右眼用の表示パネル10Rであり、他方は、左眼用の表示パネル10Lである。なお、の表示パネル10Rと10Lとを区別しない場合、表示パネル10と表記する。
【0016】
図3は、表示パネル10の概略図である。なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交するX軸およびY軸を適宜用いて説明する。X軸に沿った方向が「行方向」であり、Y軸に沿った方向が「列方向」である。
【0017】
図3に示す表示パネル10は、映像を表示する。表示パネル10には、行方向に延びるm本の走査線11と、列方向に延びるn本のデータ線12とが設けられる。複数の走査線11と複数のデータ線12との交差に対応して複数の画素Pが設けられる。なお、例えば、行方向に並ぶ3つの画素Pごとにカラー映像の1ドットが表現される。表示パネル10の画素配列は、所謂RGBストライプ配列である。また、各画素Pには、画素回路110が設けられる。
【0018】
図4は、画素回路110を示す図である。
図4に示す画素回路110は、発光素子15と、駆動用トランジスター16と、選択トランジスター17と、容量素子18とを含む。なお、
図4に示す画素回路110の構成は例示であり、
図4に示す例に限定されない。
【0019】
発光素子15は、第1定電位配線13と第2定電位配線14とを連結する経路上に配置される。第1定電位配線13には、
図1の電源回路4から高位側の電源電位Velが供給される。第2定電位配線14には、電源回路4から低位側の電源電位Vctが供給される。また、
図4の発光素子15は、例えばOLEDである。発光素子15は、発光層151と、画素電極152と、共通電極153とを含む。発光層151は、発光材料を含み、画素電極152と共通電極153との間に介在する。画素電極152が陽極として機能し、共通電極153が陰極として機能する。画素電極152は、画素Pごとに個別に形成され、共通電極153は、複数の画素Pにわたり共通である。かかる発光素子15は、画素電極152から供給される正孔と、共通電極153から供給される電子とが発光層151で再結合する。再結合により、発光層151が発光する。
【0020】
駆動用トランジスター16は、階調電位に応じた駆動電流を発光素子15に供給する。駆動用トランジスター16は、発光素子15に対して直列に配置される。駆動用トランジスター16のソースまたはドレインのうちの一方は、第1定電位配線13に電気的に接続され、他方は、画素電極152に電気的に接続される。
【0021】
選択トランジスター17は、データ線12と駆動用トランジスター16のゲートとの導通および非導通を制御するスイッチとして機能する。選択トランジスター17のソースまたはドレインのうちの一方が、データ線12に電気的に接続され、他方は、駆動用トランジスター16のゲートに電気的に接続される。
【0022】
容量素子18は、駆動用トランジスター16のゲート-ソース間またはゲート-ドレイン間の電圧を保持する保持容量である。容量素子18の一方の電極は、駆動用トランジスター16のゲートに接続され、他方の電極は、第1定電位配線13に接続される。
【0023】
図5は、視線検出装置2を示す概略図である。
図5に示すように、視線検出装置2は、ユーザーの視線を検出する複数のセンサー20を含む。センサー20は、センシングデータである視線検出データを取得する。例えば、視線検出装置2は、ユーザーの左眼および右眼の一方または両方の眼EYに赤外線L1を照射する赤外線照射部と、反射光L2を受光する赤外線カメラとを含む。また、視線検出装置2は、赤外線カメラで記録した結果を視線検出データとして出力する。
【0024】
なお、視線検出装置2は、赤外線L1を利用したセンサーに限定されず、例えば、可視光を用いたセンサーであってもよい。
【0025】
図2に示す制御部3は、表示パネル10および視線検出装置2にそれぞれ電気的に接続される。制御部3は、表示パネル10における映像の表示を制御する。また、表示パネル10には、図示省略されたホスト装置から映像データVideoおよび同期信号Syncが供給される。かかる制御部3は、外部機器に接続するためのインターフェース、およびGPU(Graphics Processing Unit)等を含む。
【0026】
制御部3は、機能部として、視線検出部31と、領域決定部32と、解像度決定部33と、同時書込み数設定部34と、パネル駆動回路制御部35と、パネル駆動回路部36とを含む。
【0027】
視線検出部31は、視線検出データに基づいて画面内におけるユーザーの眼の焦点位置を計測する。例えば、視線検出部31は、アイトラッキング処理により、視線検出装置2から供給された視線検出データに基づいてカメラの撮像データを解析し、ユーザーの視線の焦点位置を計測する。
【0028】
図2に示す領域決定部32は、表示パネル10の画面100内で第1領域S1および第2領域S2を決定する。
【0029】
図6は、表示パネル10が有する画面100の第1領域S1および第2領域S2を示す図である。
図6に示す例では、第1領域S1は画面100の中央に位置し、2つの第2領域S2が第1領域S1の上下に位置する。
【0030】
本実施形態では、領域決定部32は、焦点位置を含む第1領域S1と、それ以外の領域である第2領域S2とに画面100を区分する。例えば、第1領域S1は、視線検出部31から供給されるユーザーの視線の焦点位置を含み、当該焦点位置の情報に応じて決定される。例えば、焦点位置を中心として任意の範囲に広がる領域を第1領域S1とする。加えて、領域決定部32は、映像データVideoのエッジ検出を行う。第1領域S1は、エッジ検出の結果に応じて決定される。具体的には、第1領域S1は、映像内での色の急峻な変化に基づく物体の境界の情報に応じて決定される。また、本実施形態では、領域決定部32は、第1領域S1を決定したら、それ以外の領域を第2領域S2として決定する。
【0031】
なお、本実施形態では、第1領域S1は、焦点位置で決定される。このため、第1領域S1および第2領域S2の画面100内での各位置は経時的に変化する。
【0032】
図2に示す解像度決定部33は、第1領域S1の解像度を決定する。解像度決定部33は、映像データVideoの複雑さに応じて第1領域S1の解像度を決定する。すなわち、解像度決定部33は、第1領域S1における映像データVideoの間引き量を決定する。例えば、解像度決定部33は、映像データVideoを測定し、エッジ成分の多さ、解像度、およびフレームレートから映像の複雑さを決定する。本実施形態では、例えば、複雑でない映像ほどデータ量を削減する。
【0033】
また、解像度決定部33は、第2領域S2の解像度を決定する。第2領域S2はユーザーの視線以外の領域であるため、第1領域S1よりも解像度を落としても、ユーザーは体感的な画質低下を感じ難い。よって、本実施形態では、第2領域S2の解像度は第1領域S1の解像度以下に設定される。さらに、解像度決定部33は、表示装置1のハードウェアの性能に応じて、第2領域S2の解像度を落とさないとデータ遅延が生じる場合、データ遅延が生じない程度に第2領域S2の解像度を低下させる。
【0034】
図2に示す同時書込み数設定部34は、第1領域S1の解像度に応じて、第1領域S1に属する走査線11の選択数をどのくらいの頻度で組み合わせるかを決定する。具体的には、同時書込み数設定部34は、走査線11の選択数の互いに異なる2種類以上のフレーム期間Vの繰り返しパターンを決定する。なお、フレーム期間Vとは、表示装置1が1カット分の映像を表示するのに要する期間をいう。フレーム期間Vの長さは、例えば、駆動フレームレートが60Hzである場合、1/60秒である。
【0035】
例えば、同時書込み数設定部34は、走査線11を1行単独で選択するか、2行同時に選択するか、および3行同時に選択するかをどのくらいの頻度で組み合わせるかを決定する。本実施形態では、走査線11を1行単独で選択する第1選択処理と、走査線11を2行同時に選択する第2選択処理とを交互に繰り返す。したがって、本実施形態では、複数のフレーム期間Vのうち、あるフレーム期間Vで第1選択処理が行われ、次のフレーム期間Vで第2選択処理が行われ、その次のフレーム期間Vで第1選択処理が行われ、その次のフレーム期間Vで第2選択処理が行われる。このように、第1領域S1では、同時書込み数が経時的に変更する。なお、1フレーム期間Vに含まれる第1領域S1に対応する各水平走査期間Hにおける走査線11の選択数は互いに同じである。水平走査期間Hでは、選択された1以上の走査線11に対応する画素回路110に映像データ信号Vdを書き込む書込み処理が行われる。
【0036】
通常、走査線11は、1行ごとに順番に走査される。走査線11が1行ごとに順番に選択される場合、すなわち、走査線11が1行単独で選択される場合、選択された走査線11に対応する画素回路110にデータ線12を介して映像データ信号Vdが書き込まれる。一方、走査線11が2行ごとに順番に走査される場合、すなわち走査線11が2行同時に選択される場合、当該2行において列を同じくする2つの画素回路110に同じ映像データ信号が書き込まれる。よって、1水平走査期間Hにおいて同時に2列の画素回路110に映像データ信号Vdが書き込まれる。また、走査線11が3行ごとに順番に走査される場合、すなわち、走査線11が3行同時に選択される場合、当該3行において列を同じくする3つの画素回路110に同じ映像データ信号が書き込まれる。よって、1水平走査期間Hにおいて同時に3列の画素回路110に映像データ信号Vdが書き込まれる。
【0037】
図7は、第1領域S1における同時書込み数を説明するための図である。
図7に示す1つの第1領域S1は、1フレーム期間Vでの表示を示す。以下では、複数のフレーム期間Vのうち1つ目のフレーム期間Vを第1フレーム期間V1とし、次の2つ目のフレーム期間Vを第2フレーム期間V2とする。
【0038】
第1フレーム期間V1において、第1領域S1で走査線11が1行単独で選択され第1選択処理が行わる。その次の第2フレーム期間V2において、第1領域S1で走査線11が2行同時に選択される第2選択処理が行われる。そして、第1領域S1では、この走査線11が1行単独で選択される第1選択処理による表示と、走査線11が2行同時に選択される第2選択処理による表示とをこの順で含む処理が繰り返される。
【0039】
なお、
図7に示す例では、走査線11が1行単独で選択される処理と、2行同時に選択される処理とが交互に繰り返されるが、走査線11の選択数および組み合わせの頻度はこれに限定されない。ただし、第1領域S1は、ユーザーの視線の領域である。よって、過度に解像度を下げることによりユーザーが体感的な画質低下を感じないよう、走査線11が1行単独で選択される第1選択処理を含むことが好ましい。
【0040】
また、
図2に示す同時書込み数設定部34は、第2領域S2に属する走査線11の同時書込み数を設定する。具体的には、同時書込み数設定部34は、第2領域S2に属する走査線11の同時選択数を決定する。具体的には例えば、同時書込み数設定部34は、走査線11を2行同時に選択するか、3行同時に選択するかを決定する。
【0041】
第2領域S2はユーザーの視線以外の領域である。このため、同時書込み数が経時的に一定であっても、ユーザーは体感的な画質低下を感じ難い。よって、同時書込み数設定部34は、第2領域S2に属する走査線11の同時書込み数が経時変化しないように設定する。経時変化させないことで、経時変化させる場合に比べ表示制御が容易である。
【0042】
図8は、画面100の第1領域S1および第2領域S2における同時書込み数を説明するための図である。
図8に示す1つの画面100は、1フレーム期間Vでの表示を示す。
図8に示すように、例えば、第2領域S2では、各フレーム期間Vにおいて、走査線11が2行同時に選択される処理による表示が継続される。したがって、画面100では、第1フレーム期間V1において、第1領域S1で走査線11が1行単独で選択され処理が行われ、第2領域S2で走査線11が2行同時に選択される処理が行われる。その次の第2フレーム期間V2において、第1領域S1で走査線11が2行同時に選択される処理が行われ、第2領域S2で走査線11が2行同時に選択される処理が行われる。
【0043】
図2に示すパネル駆動回路制御部35は、図示省略されたホスト装置から供給された映像データVideoに基づいてアナログの映像データ信号Vdを生成し、当該映像データ信号Vdをパネル駆動回路部36のデータ線駆動回路362に対して供給する。映像データVideoは、表示パネル10で表示される映像の諧調レベルを画素Pごとにデジタルで指定する。また、パネル駆動回路制御部35は、図示省略されたホスト装置から供給された同期信号Syncに基づいて、パネル駆動回路部36の走査線駆動回路361およびデータ線駆動回路362に各種制御信号を供給する。同期信号Syncには、複数の画素Pの走査開始を指示する垂直同期信号、複数の画素Pの水平走査の開始を指示する水平同期信号、および1画素P分のタイミングを示すドットクロック信号が含まれる。
【0044】
また、パネル駆動回路制御部35は、同時書込み数設定部34が決定した走査線11の同時書込み数に応じて、走査線駆動回路361に選択させる走査線11を示す選択情報Sを生成する。
【0045】
図2に示すパネル駆動回路部36は、各フレーム期間Vにおいて、選択された1以上の走査線11に対応する画素Pに設けられた画素回路110に映像データ信号Vdを供給する複数の書込み処理を行う。各書込み処理は、走査線11を選択する選択処理を含む。選択処理は、選択された1以上の走査線11に対応する複数の画素Pの画素回路110の中から、映像データ信号Vdを書き込む画素回路110を含む画素Pを選択する処理である。
【0046】
パネル駆動回路部36は、走査線駆動回路361とデータ線駆動回路362とを含む。
図3に示すように、走査線駆動回路361は、複数の走査線11に接続される。データ線駆動回路362は複数のデータ線12に接続される。
図3において、1行目の走査線11に対応する画素Pは、画素P1である。
【0047】
走査線駆動回路361は、パネル駆動回路制御部35で生成された制御信号に基づいて走査信号Gwrを生成する。走査信号Gwrは、各フレーム期間Vにおいてm行の走査線11を所定数行ごとに順番に選択して走査するため信号である。また、走査線駆動回路361は、選択処理を行う。具体的には、走査線駆動回路361は、選択情報Sに基づいて、各フレーム期間Vにおいて1水平走査期間Hごとに、m行の走査線11から1以上の走査線11を順次排他的に選択し、複数の画素Pのうち映像データ信号Vdを書込む画素Pを選択する。すなわち、走査線駆動回路361は、選択情報Sに基づいて1以上の走査線11にHレベルの走査信号Gwrを順次排他的に供給することで、映像データ信号Vdを書込む画素を選択する。なお、
図3では、1、2、3、…、m行目の走査線11に供給される走査信号Gwrは、Gwr_1、Gwr_2、Gwr_3、…Gwr_mと表記される。
【0048】
データ線駆動回路362は、走査線駆動回路361によって選択された行に位置する画素Pの画素回路110に対し、映像データ信号Vdを供給する。すなわち、データ線駆動回路362は、複数の画素Pのうち選択された画素、すなわち選択画素PSELに対し、選択画素PSELに対応するデータ線12を介して映像データ信号Vdを書き込む。なお、
図3では、1、2、3、…、n行目のデータ線12に供給される映像データ信号Vdは、Vd_1、Vd_2、Vd_3、…Vd_nと表記される。複数の画素Pのうち選択された画素すなわち選択画素PSELとは、複数の画素Pのうち、選択された走査線11に対応する画素のことである。
図3において、例えば、3行目の走査線11が選択された場合、3行目の走査線11に対応する画素Pは、画素P3であり、画素P3が、選択画素PSELである。
【0049】
走査線駆動回路361が選択した走査線11に対応する選択画素PSELの選択トランジスター17がオンすると、駆動用トランジスター16のゲートには映像データ信号Vdに応じた階調電位が供給され、容量素子18には階調電位に応じた電圧が保持される。駆動用トランジスター16のゲートに階調電位が供給されると、階調電位に応じた駆動電流が駆動用トランジスター16から発光素子15に供給される。この結果、各発光素子15が階調電位に応じた輝度で発光し、よって、映像が表示パネル10に表示される。また、書込み処理の行われる期間が終了した後においても、容量素子18に保持された電圧に応じた駆動電流が駆動用トランジスター16から発光素子15に供給される。このため、各発光素子15は階調電位に応じた輝度での発光を維持する。
【0050】
図9は、
図8における画面100の表示にかかる走査信号Gwrを示す図である。
図9では、便宜上、第1領域S1に属する走査線11の数が6本であり、第2領域S2に属する走査線11の数が12本である場合を例示している。1~6行目の走査線11は第2領域S2に属し、7~12行目の走査線11は第1領域S1に属し、13~18行目の走査線11は第2領域S2に属する。
【0051】
各フレーム期間Vでは、第1領域S1よりも上方の第2領域S2に属する走査線11が選択された後、第1領域S1に属する走査線11が選択され、その後、第1領域S1よりも下方の第2領域S2に属する走査線11が選択される。
【0052】
図9に示すように、第1フレーム期間V1では、まず、第2領域S2に属する1列目の走査線11に走査信号Gwr_1が供給されると同時に、2列目の走査線11に走査信号Gwr_2が供給される。すなわち、1・2行目の走査線11が同時に選択される。次いで、第2領域S2に属する3・4行目、5・6行目の走査線11がこの順に2行ずつ選択される。次に、第1領域S1に属する7、8、9、10、11、12行目の走査線11がこの順に1行ずつ選択される。次に、第2領域S2に属する13・14行目、15・16行目、17・18行目の走査線11がこの順に2行ずつ選択される。
【0053】
第1フレーム期間V1では、1・2行目の走査線11が選択されると、1・2行目において列を同じくする2つの画素回路110に同じ映像データ信号Vdが書き込まれる。この場合、例えば、1行目の画素回路110には、自身に対応する映像データ信号Vdが書き込まれる。一方、2行目の画素回路110には、自身に対応する映像データ信号Vdではなく、1行目の画素回路110に対応する映像データ信号Vdが書き込まれる。なお、3・4行目、5・6行目、15・16行目、17・18行目についても同様である。一方、7、8、9、10、11、12行目の画素回路110には、自身に対応する映像データ信号Vdが書き込まれる。
【0054】
第2フレーム期間V2では、まず、第2領域S2に属する1列目の走査線11に走査信号Gwr_1が供給されると同時に、2列目の走査線11に走査信号Gwr_2が供給される。すなわち、1・2行目の走査線11が同時に選択される。次いで、第2領域S2に属する3・4行目、5・6行目の走査線11がこの順に2行ずつ選択される。次に、第1領域S1に属する7・8行目、9・10行目、11・12行目の走査線11がこの順に2行ずつ選択される。次に、第2領域S2に属する13・14行目、15・16行目、17・18行目の走査線11がこの順に2行ずつ選択される。
【0055】
第2フレーム期間V2では、1・2行目の走査線11が選択されると、1・2行目において列を同じくする2つの画素回路110に同じ映像データ信号が書き込まれる。この場合、例えば、1行目の画素回路110には、自身に対応する映像データ信号Vdが書き込まれる。一方、2行目の画素回路110には、自身に対応する映像データ信号Vdではなく、1行目の画素回路110に対応する映像データ信号Vdが書きこまれる。なお、3・4行目、5・6行目、7・8行目、9・10行目、11・12行目、15・16行目、17・18行目についても同様である。
【0056】
また、第1フレーム期間V1と第2フレーム期間V2との駆動フレームレートが同じ場合、第2フレーム期間V2において第1領域S1に属する走査線11の書込み処理が行われる期間を第1フレーム期間V1における当該期間よりも長くすることができる。なお、各書込み処理が行われる期間を等しくする場合、第1フレーム期間V1よりも第2フレーム期間V2の駆動フレームレートを短くすることができる。
【0057】
図10は、第1実施形態のデータ量と比較例のデータ量との比較を示す表である。
図11の中の比較例1は、駆動フレームレートが120Hzである場合のデータ量を示す。比較例2は、駆動フレームレートが60Hzである場合のデータ量を示す。実施例は、本実施形態のデータ量を示す。これらの例では、例えば、走査線11の数が1920本であり、データ線12の数が1080本である場合を想定する。
【0058】
比較例1および2は、走査線11が1行ごとに順番に選択される通常の表示駆動である。比較例1では、行方向の解像度が1920[dpi]であり、列方向の解像度が1080[dpi]であり、1画素Pのデータ量が24[bit]であり、駆動フレームレートが120[Fps]であり、単位時間当たりのデータ量が5971968000[bit]である。比較例2では、行方向の解像度が1920[dpi]であり、列方向の解像度が1080[dpi]であり、1画素Pのデータ量が24[bit]であり、駆動フレームレートが60[Fps]であり、単位時間当たりのデータ量が2985984000[bit]である。
【0059】
実施例1は、1080本の走査線11のうち270本が第1領域S1に属し、残りの810本が第2領域S2に属する例である。実施例1では、270本の走査線11について1行単独で選択される第1選択処理と2行同時に選択される第2選択処理とが交互に繰り返される。このため、第1領域S1における列方向の解像度は、270本の走査線11が1行単独で選択される場合の75%である。よって、第1領域S1における列方向の解像度は、270×0.75=202.5[dpi]である。また、実施例1では、810本の走査線11が2行同時に選択される。このため、第2領域S2における列方向の解像度は、810本の走査線11が1行単独で選択される場合の50%である。よって、第2領域S2における列方向の解像度は、810×0.5=405[dpi]である。したがって、実施例1の行方向の解像度は、202.5+405=607.5[dpi]である。また、実施例1では、行方向の解像度が1920[dpi]であり、1画素Pのデータ量が24[bit]であり、駆動フレームレートが120[Fps]である。したがって、実施例1では、単位時間当たりのデータ量が3359232000[bit]となる。
【0060】
実施例1によれば、比較例1の単位時間当たりのデータ量に比べ、データ量を大幅に削減することができる。また、実施例1によれば、単位時間当たりのデータ量を第2比較例の単位時間当たりのデータ量に近づけることができる。
【0061】
前述のように、制御部3のパネル駆動回路部36は、複数のフレーム期間Vのそれぞれにおいて、複数の画素Pのうち選択された画素、すなわち選択画素PSELに対し、複数のデータ線12のうち選択画素PSELに対応するデータ線12を介して映像データ信号Vdを書込む複数の書込み処理を行う。また、制御部3のパネル駆動回路部36は、複数の書込み処理のそれぞれにおいて、複数の走査線11から1以上の走査線11を選択し、複数の画素Pのうち映像データ信号Vdを書込む画素Pを選択する。複数の画素Pのうち選択された画素、すなわち選択画素PSELとは、複数の画素Pのうち、選択された走査線11に対応する画素のことである。
【0062】
また、制御部3のパネル駆動回路部36は、複数のフレーム期間Vのうちの1フレーム期間Vにおいて1以上の走査線11を選択する第1選択処理を行う。また、複数のフレーム期間Vのうちの第1選択処理が行われるフレーム期間Vとは異なるフレーム期間Vにおいて第1選択処理で選択される走査線11の数よりも多い数の走査線11を選択する第2選択処理を行う。そして、制御部3のパネル駆動回路部36は、第1選択処理と第2選択処理とを含む処理を繰り返す。本実施形態では、第1選択処理は、複数の走査線11のうちの所定数の走査線11が1行ごとに順次選択される処理である。第2選択処理は、所定数の走査線11が2行ごとに順次選択される処理である。
【0063】
走査線11が1行単独で選択される第1選択処理と、走査線11が2行同時に選択される第2選択処理とを含む処理が繰り返されることで、走査線11が1行単独で選択され続ける通常の処理に比べ、データ量を削減することができる。このため、図示省略されたホスト装置から映像データVideoが供給されてから映像が表示されるまでの遅延時間を減少させることができる。また、第1選択処理と第2選択処理とを含む処理が繰り返されることで、第2選択処理のみが継続する場合に比べ、ユーザーに体感的な画質低下を感じ難くさせることができる。
【0064】
また、前述のように、本実施形態では、第1選択処理は、複数の走査線11のうちの第1領域S1に属する所定数の走査線11が1行ごとに順次選択される処理であり、第2選択処理は、当該所定数の走査線11が2行ごとに順次選択される処理である。このため、例えば、第1選択処理が2行同時に選択する処理であり、第2選択処理が3行同時に選択する処理である場合に比べ、解像度を高めることができる。よって、ユーザーに体感的な画質低下をより感じ難くさせることができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、表示パネル10が有する画面100は、第1領域S1および第2領域S2を含む。第1領域S1において第1選択処理および第2選択処理を含む処理が繰り返され、第2領域S2において第2選択処理が継続して行われる。第1領域S1において第1選択処理と第2選択処理を含む処理が繰り返されることで、第2領域S2と第1領域S1との解像度の違いをユーザーに認知させ難くすることができる。
【0066】
また、制御部3の視線検出部31は、視線検出装置2が有するセンサー20が検出する視線検出データに応じて第1領域S1を設定する。よって、第1領域S1は、ユーザーの視線の領域である。前述のように、第1領域S1において第1選択処理および第2選択処理を含む処理が繰り返され、第2領域S2において第2選択処理が継続して行われるため、第1領域S1の解像度は、第2領域S2の解像度よりも高い。このため、視線を含む第1領域S1の解像度が、第2領域S2の解像度よりも高いことで、ユーザーに体感的な画質低下を感じ難くさせることができる。
【0067】
1-3.表示装置1の動作
図11は、第1実施形態の表示装置1の動作のフロー図である。なお、
図11の表示装置1の動作は一例であり、各部の作用を逸脱しない程度に適宜変更してもよい。
【0068】
図11に示すように、まず、ステップS11において、制御部3は、視線検出装置2を起動させる。視線検出装置2が有するセンサー20は、例えば、ユーザーの眼に対する赤外線の照射を開始し、赤外線カメラでの撮影を行う。視線検出装置2は、赤外線カメラで記録した結果を視線検出データとして出力する。
【0069】
ステップS12において、制御部3は、視線検出データを取得する。ステップS13において、制御部3の視線検出部31は、例えばアイトラッキング処理により、視線検出データに基づいて画面内におけるユーザーの眼の焦点位置を計測する。
【0070】
ステップS14において、制御部3の領域決定部32は、表示パネル10の画面100内で第1領域S1および第2領域S2を決定する。第1領域S1は、焦点位置の情報および色の急峻な変化に基づく物体の境界の情報に応じて決定される。領域決定部32は、第1領域S1以外の領域を第2領域S2として決定する。
【0071】
ステップS15において、制御部3の解像度決定部33は、第1領域S1の解像度を設定する。具体的には、解像度決定部33は、映像データVideoの複雑さに応じてデータ量の間引き量、すなわち削減度合を決定する。ステップS16において、解像度決定部33は、第2領域S2の解像度を設定する。具体的には、解像度決定部33は、第2領域S2の解像度を第1領域S1の解像度以下に設定する。また、解像度決定部33は、表示装置1のハードウェアに応じて、データ遅延が生じない程度に第2領域S2の解像度を低下させる。
【0072】
ステップS17において、制御部3の同時書込み数設定部34は、第1領域S1に関して、解像度決定部33により決定された解像度に応じて、走査線11の選択数の互いに異なる2種類以上のフレーム期間Vの繰り返しパターンを決定する。例えば、同時書込み数設定部34は、第1領域S1に関して、第1領域S1における1行単独の選択、2行同時の選択、および3行同時の選択をどのくらいの頻度で組み合わせるかを決定する。同時書込み数設定部34は、決定した同時書込み数に関する選択情報Sを生成する。
【0073】
ステップS18において、同時書込み数設定部34は、第2領域S2に関して、第1領域S1の繰り返しパターンおよび解像度決定部33により決定された解像度に応じて、走査線11の同時選択数を決定する。例えば、同時書込み数設定部34は、第2領域S2に関して、2行同時の選択、および3行同時の選択のいずれかに決定する。同時書込み数設定部34は、決定した同時書込み数に関する選択情報Sを生成する。
【0074】
ステップS19において、制御部3のパネル駆動回路制御部35は、映像データVideo、同期信号Syncおよび選択情報Sに基づいて、パネル駆動回路部36に各種信号を供給することにより、表示パネル10の表示を制御する。これにより、表示パネル10には、映像データVideoに基づく映像が表示される。
【0075】
ステップS20では、視線検出装置2が有するセンサー20からの視線検出データに基づき、焦点位置が所定範囲外に外れたか否かを判断する。焦点位置が所定範囲外である場合、ステップS12に戻る。焦点位置が所定範囲外でない場合、ステップS21に移行する。ステップS21では、映像が終了したか否かを判断する。映像が終了していない場合、すなわち映像データVideoに基づく各種信号の供給が終了していない場合、ステップS19に戻る。映像が終了した場合、制御部3は、
図11に示す表示装置1の動作を終了する。
【0076】
図11に示す表示装置1の動作によれば、第1領域S1において走査線11の同時書込み数を経時的に変化させることができる。走査線11の同時書込み数が経時的に変化することで、映像データVideoが供給されてから映像が表示されるまでの遅延時間を減少させることができるとともに、ユーザーに体感的な画質低下を感じ難くさせることができる。
【0077】
2.第2実施形態
第2実施形態を説明する。なお、以下の各例示において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0078】
本実施形態では、第1領域S1において、第1選択処理および第2選択処理に加え、第3選択処理を含む処理が繰り返される点が前述の実施形態と異なる。
【0079】
図12は、第2実施形態の第1領域S1の表示を説明するための図である。
図12に示すように、第1フレーム期間V1において、第1領域S1で走査線11が1行単独で選択され処理が行わる。その次の第2フレーム期間V2において、第1領域S1で走査線11が2行同時に選択される処理が行われる。その次の第3フレーム期間V3において、第1領域S1で走査線11が2行同時に選択される処理が行われる。その次の第4フレーム期間V4において、第1領域S1で走査線11が3行同時に選択される処理が行われる。そして、第1領域S1では、この走査線11が1行単独で選択される第1選択処理による表示と走査線11が2行同時に選択される第2選択処理による表示と、走査線11が2行同時に選択される第2選択処理による表示と、走査線11が3行同時に選択される第3選択処理による表示とがこの順に繰り返される。したがって、本実施形態では、第1選択処理、第2選択処理および第3選択処理を含む処理が繰り返される。
【0080】
図13は、画面100の第1領域S1および第2領域S2における同時書込み数を説明するための図である。
図13に示すように、第2領域S2では、各フレーム期間Vにおいて、走査線11が2行同時に選択される処理による表示が継続される。したがって、画面100では、第1フレーム期間V1において、第1領域S1で走査線11が1行単独で選択され処理が行われ、第2領域S2で走査線11が2行同時に選択される処理が行われる。その次の第2フレーム期間V2において、第1領域S1で走査線11が2行同時に選択される処理が行われ、第2領域S2で走査線11が2行同時に選択される処理が行われる。その次の第3フレーム期間V3において、第1領域S1で走査線11が2行同時に選択される処理が行われ、第2領域S2で走査線11が2行同時に選択される処理が行われる。その次の第4フレーム期間V4において、第1領域S1で走査線11が2行同時に選択される処理が行われ、第2領域S2で走査線11が3行同時に選択される処理が行われる。
【0081】
前述のように、本実施形態では、制御部3は、第1選択処理が行われるフレーム期間Vおよび第2選択処理が行われるフレーム期間Vのそれぞれとは異なるフレーム期間Vにおいて、第1選択処理および第2選択処理のそれぞれで選択される走査線11の数よりも多い数の走査線11を選択する第3選択処理を行う。本実施形態では、第3選択処理では、走査線11が3行同時に選択される。
【0082】
第1選択処理、第2選択処理および第3選択処理を含む処理が繰り返されることで、第1実施形態に比べ、解像度を低下させることができるので、データ量を削減することができる。このため、図示省略されたホスト装置から映像データVideoが供給されてから映像が表示されるまでの遅延時間を減少させることができる。
【0083】
なお、前述の説明では、第1選択処理、第2選択処理、第2選択処理および第3選択処理がこの順に繰り返されるが、第1選択処理、第2選択処理および第3選択処理を含む処理の例としてはこれに限定されない。例えば、第1選択処理、第2選択処理および第3選択処理がこの順に繰り返されてもよい。
【0084】
3.第3実施形態
第3実施形態を説明する。なお、以下の各例示において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0085】
本実施形態では、画面100の全域において、走査線11の選択数の異なる選択処理を含む処理が繰り返し行われる。
【0086】
図14は、画面100の同時書込み数を説明するための図である。
図14に示すように、表示パネル10の画面100では、第1フレーム期間V1において、走査線11が1行単独で選択され処理が行われる。その次の第2フレーム期間V2において走査線11が2行同時に選択される処理が行われる。
【0087】
本実施形態では、画面100の全域において、走査線11の選択数が経時的に変化する。このため、第1実施形態における第2領域S2が存在しない。このため、第1実施形態に比べ、ユーザーに体感的な画質低下をより感じ難くさせることができる。
【0088】
4.変形例
以上に例示した実施形態は多様に変形され得る。前述の実施形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0089】
前述の実施形態では、第1領域S1が、視線検出装置2のセンサー20からの視線検出データに基づく焦点位置に応じて決定される。しかし、第1領域S1は、焦点位置に応じて設定された領域ではなく、予め設定された領域であってもよい。この場合、
図11のステップS11およびS12は省略される。また、この場合、
図11のステップS20は省略してもよいし、ステップS20は、一定時間を過ぎたか否かを判定する工程に変更してもよい。また、前述の実施形態では、表示装置1は視線検出装置2を備えるが、視線検出装置2は省略してもよい。
【0090】
図11のステップS15およびS16において、映像の複雑さに応じて解像度が決定される。しかし、映像の複雑さは、映像の表示を開始した後で表示しながら解析してもよいが、映像の表示を開始する前に事前に解析してもよい。
【0091】
前述の実施形態では、前述の表示装置1が適用される電子機器としてヘッドマウントディスプレイ9を例示したが、前述の表示装置1が適用される電子機器はこれに限定されない。例えば、前述の表示装置1が適用される電子機器としては、デジタルスコープ、デジタル双眼鏡、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラなど眼に近接して配置する電子機器が挙げられる。さらに、携帯電話機、スマートフォン、スマートウォッチ、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)、カーナビゲーション装置、および車載用のインストルメントパネルなどの表示器等の電子機器に設けられる表示部として適用することができる。また、表示装置1は、投写式プロジェクターに適用可能である。
【0092】
図15は、表示装置1を備える電子機器としてデジタルスチルカメラ8の図である。
図15に示すように、デジタルスチルカメラ8は、筐体80と、図示しないレンズおよび撮像素子と、表示装置1と、操作ボタン81とを備える。表示装置1は、ファインダーとしても用いられる。デジタルスチルカメラ8では、表示パネル10がタッチパネルであり、ユーザーの指Uで操作可能に構成される。表示パネル10は、例えばピンチ操作によりデジタルズームが可能に構成される。このデジタルスチルカメラ8では、ユーザーが映像を拡大した場合に、その拡大箇所を第1領域S1として設定してもよい。
【0093】
また、第1および第2実施形態では、画面100は第1領域S1と第2領域S2とに区分されたが、さらに第3領域S3が設けられていてもよい。したがって、画面100は、3以上の領域に区分されていてもよい。また、表示パネル10の画面100は、四角形に限定されず、四角形以外の多角形、および円形等であってもよい。
【0094】
図16は、表示パネル10の画面100の他の例を示す図である。
図16に示すように、表示パネル10の画面100が円形である場合、第1領域S1が円形であり、第2領域S2が第1領域S1を囲む円枠状であり、第3領域S3が第1領域S1および第2領域S2を囲む円枠状であってもよい。第1例えば、表示装置1が適用される電子機器がデジタル望遠鏡である場合、表示パネル10の画面100が
図16に示す円形である場合が想定される。
【0095】
前述の実施形態では、第1選択処理が走査線11を1行単独で選択する処理であり、第2選択処理が走査線11を2行同時に選択する処理である。しかし、第2選択処理は、第1選択処理よりも走査線11の同時選択数が多ければよい。すなわち、1水平走査期間Hで選択される走査線11の数が、第1選択処理よりも第2選択処理の方が多ければよい。また、第3選択処理は、第1選択処理よりも走査線11の同時選択数が多ければよい。すなわち、1水平走査期間Hで選択される走査線11の数が、第2選択処理よりも第3選択処理の方が多ければよい。したがって、第2選択処理が走査線11を2行同時に選択する処理であり、第2選択処理が走査線11を3行同時に選択する処理であり、第3選択処理が3行同時に選択する処理でもよい。この場合であっても前述の実施形態と同様に、映像データVideoが供給されてから映像が表示されるまでの遅延時間を減少させることができるとともに、ユーザーに体感的な画質低下を感じ難くさせることができる。
【0096】
前述の実施形態では、第2領域S2は同時書込み数が経時的に一定であるが、経時的に変化してもよい。例えば、第1実施形態において、第2領域S2は、走査線11を2行同時に選択する処理、および3行同時に選択する処理が繰り返されてもよい。また、前述の実施形態では、第2領域S2は第1領域S1よりも解像度が低いが、第1領域S1よりの解像度が高くてもよい。
【0097】
また、前述の複数の選択処理を含む処理において、非表示の行、すなわち黒表示するよう表示制御する行が存在していてもよい。また、前述の実施形態では、複雑でない映像程、解像度を低下させたが、複雑な映像ほど解像度を高くしてもよい。また、前述の説明では、画素配列は、所謂RGBストライプ配列であるが、所謂RGBペンタイル配列であってもよい。この場合、1ドットを表現するRGBのうちの赤色(R)の画素Pおよび緑色(G)と、他の1ドットを表現するRGBのうちの赤色(R)の画素Pおよび緑色(G)とを共通化することにより、水平方向におけるデータ量の削減を図ってもよい。この場合、垂直方向の解像度の低下だけでなく、水平方向の解像度の低下を図ることができる。
【0098】
前述の実施形態では、発光素子15は、OLEDである。しかし、例えば発光素子15は、LED、ミニLED、マイクロLED等であってもよい。LEDは、light-emitting diodeの略である。
【0099】
以上、本発明について図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。また、本発明の各部の構成は、前述した実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【符号の説明】
【0100】
1…表示装置、2…視線検出装置、3…制御部、4…電源回路、8…デジタルスチルカメラ、9…ヘッドマウントディスプレイ、10…表示パネル、10L…表示パネル、10R…表示パネル、11…走査線、12…データ線、13…第1定電位配線、14…第2定電位配線、15…発光素子、16…駆動用トランジスター、17…選択トランジスター、18…容量素子、20…センサー、31…視線検出部、32…領域決定部、33…解像度決定部、34…同時書込み数設定部、35…パネル駆動回路制御部、36…パネル駆動回路部、80…筐体、81…操作ボタン、91…フロントフレーム、92…サイドフレーム、93…光学パネル、94…回路カバー、100…画面、110…画素回路、151…発光層、152…画素電極、153…共通電極、361…走査線駆動回路、362…データ線駆動回路、EY…眼、Gwr…走査信号、H…水平走査期間、L1…赤外線、L2…反射光、P…画素、S…選択情報、S1…第1領域、S2…第2領域、S3…第3領域、Sync…同期信号、U…指、V…フレーム期間、V1…第1フレーム期間、V2…第2フレーム期間、V3…第3フレーム期間、V4…第4フレーム期間、Vct…電源電位、Vd…映像データ信号、Vel…電源電位、Video…映像データ。