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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093375
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】試料観察装置及び試料観察方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20240702BHJP
   G02B 21/26 20060101ALI20240702BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G02B21/36
G02B21/26
G01N21/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209709
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】山本 諭
【テーマコード(参考)】
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE07
2G059EE13
2G059FF01
2G059JJ02
2G059KK04
2H052AA07
2H052AC04
2H052AD03
2H052AD18
2H052AF14
(57)【要約】
【課題】ローリングシャッタ方式による撮像を採用した場合であっても、画像データにおける試料の像の歪みを低減できる試料観察装置及び試料観察方法を提供する。
【解決手段】試料観察装置1では、撮像部5は、画素領域22における各画素列25の露光期間Tの開始が所定時間ずつずれるローリングシャッタ方式で撮像を行うエリアイメージセンサ21によって構成され、生成部8は、各画素列25のうちの一の画素列25を基準画素列25Rとして設定し、一のフレームの各画素列25の露光位置Pのうち基準画素列25Rの露光位置Pに対応するデータ部分Dと、一のフレームに連続する他のフレームの各画素列25の露光位置Pのうち基準画素列25Rの露光位置Pに対応するデータ部分Dとを結合することにより、一のフレームにおける基準画素列25Rの露光位置Pに対応する二次元画像データGtを生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に面状光を照射する照射光学系と、
前記面状光の照射面に対して直交する方向に前記試料を走査する走査部と、
前記面状光の照射によって前記試料で発生した観察光を撮像する画素領域を有し、当該画素領域での前記観察光の撮像結果に基づく画像データを出力する撮像部と、
前記画像データに基づいて、前記試料の走査方向の各位置での二次元画像データを生成する生成部と、を備え、
前記撮像部は、前記画素領域における各画素列の露光期間の開始が所定時間ずつずれるローリングシャッタ方式で撮像を行うエリアイメージセンサによって構成され、
前記生成部は、前記各画素列のうちの一の画素列を基準画素列として設定し、一のフレームの各画素列の露光位置のうち前記基準画素列の露光位置に対応するデータ部分と、前記一のフレームに連続する他のフレームの各画素列の露光位置のうち前記基準画素列の露光位置に対応するデータ部分とを結合することにより、前記一のフレームにおける前記基準画素列の露光位置に対応する二次元画像データを生成する試料観察装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記画素領域の配列端となる画素列を前記基準画素列として設定する請求項1記載の試料観察装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記画素領域の中間画素列を前記基準画素列として設定する請求項1記載の試料観察装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記各画素列の露光期間の開始の時間差で表されるロールタイムと、前記走査部による前記試料の走査速度と、前記撮像部の解像度とに基づいて、前記データ部分の結合割合を算出する請求項1~3のいずれか一項記載の試料観察装置。
【請求項5】
試料に面状光を照射する照射ステップと、
前記面状光の照射面に対して直交する方向に前記試料を走査する走査ステップと、
前記面状光の照射によって前記試料で発生した観察光を撮像する画素領域を用い、当該画素領域での前記観察光の撮像結果に基づく画像データを出力する撮像ステップと、
前記画像データに基づいて、前記試料の走査方向の各位置での二次元画像データを生成する生成ステップと、を備え、
前記撮像ステップでは、前記画素領域における各画素列の露光期間の開始が所定時間ずつずれるローリングシャッタ方式で撮像を行うエリアイメージセンサを用い、
前記生成ステップでは、前記各画素列のうちの一の画素列を基準画素列として設定し、一のフレームの各画素列の露光位置のうち前記基準画素列の露光位置に対応するデータ部分と、前記一のフレームに連続する他のフレームの各画素列の露光位置のうち前記基準画素列の露光位置に対応するデータ部分とを結合することにより、前記一のフレームにおける前記基準画素列の露光位置に対応する二次元画像データを生成する試料観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料観察装置及び試料観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料観察装置として、例えば特許文献1に記載の装置が知られている。この試料観察装置は、試料に面状光を照射する照射光学系と、面状光の照射面に対して試料を走査する走査部と、照射面に対して傾斜する観察軸を有し、面状光の照射によって試料で発生した観察光を結像する結像光学系と、結像光学系によって結像された観察光による光像の一部に対応する部分画像データを複数取得する画像取得部と、画像取得部によって生成された複数の部分画像データに基づいて試料の観察画像データを生成する画像生成部と、を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-063292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような試料観察装置の画像取得部には、例えばCMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサといったエリアイメージセンサが用いられる。これらのエリアイメージセンサは、結像光学系によって結像された観察光の結像面に配置され、観察光の光像を撮像して二次元画像データを生成する。エリアイメージセンサの撮像方式としては、例えばグローバルシャッタ方式及びローリングシャッタ方式が挙げられる。
【0005】
グローバルシャッタ方式は、各画素列の露光期間の開始が一致する撮像方式であり、ローリングシャッタ方式は、各画素列の露光期間の開始が所定時間ずつずれる撮像方式である。一般に、ローリングシャッタ方式は、グローバルシャッタ方式と比べてフレームレートが速い傾向がある。このため、試料走査中のフレーム数が画像データの解像度に影響する試料観察装置では、ローリングシャッタ方式の採用が検討されている。
【0006】
しかしながら、撮像方式としてローリングシャッタ方式を採用する場合、各画素列の露光期間の開始がずれることで各画素列の露光期間がずれ、試料の走査で取得した画像データにおいて、試料の像に歪みが生じてしまうことが考えられる。露光期間のずれは、走査速度に応じて試料に対する露光位置のずれになる。このため、ずれ量によっては、本来は一のフレームに存在すべき試料の像が隣のフレームに存在する試料の像として認識され、試料の形状や存在位置の解析精度を低下させてしまうおそれがある。
【0007】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、ローリングシャッタ方式による撮像を採用した場合であっても、画像データにおける試料の像の歪みを低減できる試料観察装置及び試料観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係る試料観察装置は、試料に面状光を照射する照射光学系と、面状光の照射面に対して直交する方向に試料を走査する走査部と、面状光の照射によって試料で発生した観察光を撮像する画素領域を有し、当該画素領域での観察光の撮像結果に基づく画像データを出力する撮像部と、画像データに基づいて、試料の走査方向の各位置での二次元画像データを生成する生成部と、を備え、撮像部は、画素領域における各画素列の露光期間の開始が所定時間ずつずれるローリングシャッタ方式で撮像を行うエリアイメージセンサによって構成され、生成部は、各画素列のうちの一の画素列を基準画素列として設定し、一のフレームの各画素列の露光位置のうち基準画素列の露光位置に対応するデータ部分と、一のフレームに連続する他のフレームの各画素列の露光位置のうち基準画素列の露光位置に対応するデータ部分とを結合することにより、一のフレームにおける基準画素列の露光位置に対応する二次元画像データを生成する。
【0009】
この試料観察装置では、試料の二次元画像データの生成にあたり、各画素列のうちの一の画素列を基準画素列として設定し、連続するフレーム間で当該基準画素列の露光位置に対応するデータ部分を結合する。これにより、ローリングシャッタ方式で撮像して得られた画像データがグローバルシャッタ方式で得られた画像データと同等な画像データに再構築され、画像データにおける試料の像の歪みを低減できる。試料の像の歪みが低減されることで、一のフレームの試料の像が隣のフレームの試料の像として認識されることを抑制でき、試料の形状や存在位置の解析精度を十分に担保できる。
【0010】
生成部は、画素領域の配列端となる画素列を基準画素列として設定してもよい。この場合、二次元画像データの生成に要する制御を簡単化できる。
【0011】
生成部は、画素領域の中間画素列を基準画素列として設定してもよい。こうすると、試料を双方向走査するような場合であっても、走査方向に関わらず計測範囲を同一にすることが可能となる。
【0012】
生成部は、各画素列の露光期間の開始の時間差で表されるロールタイムと、走査部による試料の走査速度と、撮像部の解像度とに基づいて、データ部分の結合割合を算出してもよい。走査条件及び撮像条件を考慮してデータ部分の結合割合を算出することで、結合の最適化が図られる。
【0013】
本開示の一側面に係る試料観察方法は、試料に面状光を照射する照射ステップと、面状光の照射面に対して直交する方向に試料を走査する走査ステップと、面状光の照射によって試料で発生した観察光を撮像する画素領域を用い、当該画素領域での観察光の撮像結果に基づく画像データを出力する撮像ステップと、画像データに基づいて、試料の走査方向の各位置での二次元画像データを生成する生成ステップと、を備え、撮像ステップでは、画素領域における各画素列の露光期間の開始が所定時間ずつずれるローリングシャッタ方式で撮像を行うエリアイメージセンサを用い、生成ステップでは、各画素列のうちの一の画素列を基準画素列として設定し、一のフレームの各画素列の露光位置のうち基準画素列の露光位置に対応するデータ部分と、一のフレームに連続する他のフレームの各画素列の露光位置のうち基準画素列の露光位置に対応するデータ部分とを結合することにより、一のフレームにおける基準画素列の露光位置に対応する二次元画像データを生成する。
【0014】
この試料観察方法では、試料の二次元画像データの生成にあたり、各画素列のうちの一の画素列を基準画素列として設定し、連続するフレーム間で当該基準画素列の露光位置に対応するデータ部分を結合する。これにより、ローリングシャッタ方式で撮像して得られた画像データがグローバルシャッタ方式で得られた画像データと同等な画像データに再構築され、画像データにおける試料の像の歪みを低減できる。試料の像の歪みが低減されることで、一のフレームの試料の像が隣のフレームの試料の像として認識されることを抑制でき、試料の形状や存在位置の解析精度を十分に担保できる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ローリングシャッタ方式による撮像を採用した場合であっても、画像データにおける試料の像の歪みを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の一実施形態に係る試料観察装置を示す概略構成図である。
図2】撮像部の撮像領域を示す模式図である。
図3】(a)は、一般的なローリングシャッタ方式による各画素の露光期間を示す模式図であり、(b)その走査方向の露光位置を示す模式図である。
図4】試料の画像の取得の様子を示す模式図である。
図5】画像データの再構築の一例を示す模式図である。
図6】画像データの再構築の別例を示す模式図である。
図7】データ部分の結合割合の算出を示す模式図である。
図8】本開示の一実施形態に係る試料観察方法を示すフローチャートである。
図9】(a)~(c)は、トリガ信号の設定例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る試料観察装置及び試料観察方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本開示の一実施形態に係る試料観察装置を示す概略構成図である。図1に示す試料観察装置1は、面状光L1を試料Sに照射し、試料Sの内部で発生した蛍光又は散乱光を撮像することにより、試料Sの内部の観察画像データを取得する装置として構成されている。
【0019】
この種の試料観察装置1としては、スライドガラスに保持される試料Sの画像を取得し表示するスライドスキャナ、或いはマイクロプレートに保持される試料Sの画像データを取得し、画像データを解析するプレートリーダなどが挙げられる。観察対象となる試料Sとしては、例えばヒト或いは動物の細胞、組織、臓器、動物或いは植物自体、植物の細胞、組織などが挙げられる。また、試料Sは、溶液、ゲル、或いは試料Sとは屈折率の異なる物質に含まれていてもよい。
【0020】
試料観察装置1は、図1に示すように、照射光学系2と、走査部3と、結像光学系4と、撮像部5と、制御部6とを含んで構成されている。照射光学系2は、試料Sに面状光L1を照射する光学系である。照射光学系2は、面状光L1の生成元となる光L0を出力する光源11と、光L0を面状光L1に整形し、整形された面状光L1を光軸P1に沿って試料Sに照射する光整形素子12とを有している。
【0021】
光源11としては、例えばレーザダイオード、固体レーザ光源といったレーザ光源が挙げられる。また、光源11は、発光ダイオード、スーパールミネッセントダイオード、ランプ系光源であってもよい。光源11から出力された光L0は、光整形素子12に導光される。
【0022】
光整形素子12としては、例えばシリンドリカルレンズ、アキシコンレンズ、空間光変調器などが挙げられる。光整形素子12は、対物レンズを含んで構成されていてもよい。光整形素子12は、光スキャナを含んで構成されていてもよい。この場合、光整形素子12は、光源11から出力されたライン状の光L0を光学的に走査し、面状光L1を形成してもよい。光整形素子12によって生成された面状光L1が照射された試料Sでは、面状光L1の照射面Rにおいて観察光L2が発生する。観察光L2は、例えば面状光L1によって励起された蛍光、面状光L1の散乱光、或いは面状光L1の拡散反射光である。
【0023】
走査部3は、面状光L1の照射面Rに対して試料Sを走査する機構である。走査部3は、試料Sを保持する容器13と、容器13を移動させるステージ14とを有している。容器13としては、例えばマイクロプレート、スライドガラス、シャーレなどが挙げられる。容器13の底面13aは、面状光L1の入力面となっている。面状光L1に対する透過性を有する透明部材によって構成されている。底面13aの構成材料としては、例えばガラス、石英、剛性樹脂などが挙げられる。
【0024】
ステージ14は、容器13を保持すると共に、予め設定された方向に容器13を走査する。ステージ14は、面状光L1の光軸P1と直交する平面内の一方向に容器13を走査する。本実施形態では、ステージ14は、双方向走査を行う態様であってもよい。双方向走査では、ステージ14は、面状光L1の照射面Rに対して容器13を第1の方向及び当該第1の方向と反対の第2の方向を含む方向に走査する。
【0025】
以下の説明では、便宜上、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸による直交座標系を用いる(図1参照)。本実施形態では、面状光L1の光軸P1に沿う方向をZ軸、ステージ14による容器13の走査方向をY軸、面状光L1の光軸P1と直交する平面内においてY軸に直交する方向をX軸と規定する。
【0026】
光整形素子12が光スキャナを含んで構成される場合、光源11からZ方向に出力されたライン状の光L0がX方向に光学的に走査され、面状光L1が形成される。上記規定によれば、試料Sに対する面状光L1の照射面Rは、XZ平面内の面となる。試料Sの深さ方向は、Z方向に対応する。ステージ14による容器13の走査方向は、Y方向に対応する。双方向走査を行う場合、第1の方向は+Y方向であり、第2の方向は-Y方向である。第1の方向への走査と第2の方向への走査との間に容器13をX方向に移動させる動作が行われてもよい。
【0027】
結像光学系4は、面状光L1の照射によって試料Sで発生した観察光L2を結像する光学系である。結像光学系4は、例えば対物レンズ15と、フィルタ切替部16と、結像レンズ17とを有している。フィルタ切替部16は、試料Sの多波長計測に用いられるフィルタホイールであり、第1のフィルタ18A及び第2のフィルタ18Bを保持している。フィルタ切替部16は、対物レンズ15と結像レンズ17との間の結像光路上に配置され、結像光路に対して第1のフィルタ18A及び第2のフィルタ18Bのいずれかを配置させる。第1のフィルタ18A及び第2のフィルタ18Bは、その光学特性に応じて観察光L2の一部(例えば特定の波長の蛍光など)を透過させる。
【0028】
結像光学系4の光軸は、観察光L2の観察軸P2となっている。本実施形態では、観察軸P2は、面状光L1の照射面Rに対して所定の角度θをもって傾斜している。角度θは、面状光L1の光軸P1と観察軸P2とのなす角とも一致する。角度θは、例えば10°~80°となっている。観察画像の解像度を向上させる観点から、角度θは、20°~70°であってもよい。観察画像の解像度の向上及び視野の安定性の観点から、角度θは、30°~65°であってもよい。
【0029】
観察軸P2は、必ずしも面状光L1の照射面Rに対して傾斜していなくてもよい。すなわち、観察軸P2は、面状光L1の照射面R(面状光L1の光軸P1)に対して直交していてもよい。
【0030】
撮像部5は、面状光L1の照射によって試料Sで発生した観察光L2を撮像する部分である。撮像部5は、例えばCMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサといったエリアイメージセンサ21によって構成されている。エリアイメージセンサ21は、結像光学系4の結像面に配置されている。エリアイメージセンサ21は、例えば図2に示すように、複数の画素23からなる画素領域22と、各画素23に蓄積された電荷を外部に読み出す読出部24とを有している。エリアイメージセンサ21は、画素領域22(図2参照)における各画素列25の露光期間の開始が所定時間ずつずれるローリングシャッタ方式で観察光L2の光像を撮像し、撮像結果に基づく画像データを生成する。
【0031】
制御部6は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部、ディスプレイなどを備えて構成されている。制御部6の構成例としては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末)などが挙げられる。制御部6は、メモリに格納されるプログラムをCPU等のプロセッサで実行することにより、光源11、光整形素子12、ステージ14、フィルタ切替部16、撮像部5の動作を制御する動作制御部7として機能する。
【0032】
動作制御部7としての制御部6は、ユーザによる計測開始の操作の入力を受け、光源11、ステージ14、フィルタ切替部16、撮像部5を駆動する。また、予め入力された設定に従って、光源11による光L0の出力条件(波長など)、ステージ14による試料Sの走査条件(走査速度など)、撮像部5による撮像条件(露光期間、解像度など)を制御する。動作制御部7は、光整形素子12が光スキャナを含む構成の場合、光整形素子12の光スキャナの動作を制御する。
【0033】
制御部6は、走査部3が試料Sを第1の方向に走査する期間と第2の方向に走査する期間との間で、互いに異なる波長の面状光L1が試料Sに照射されるように照射光学系2を制御してもよい。制御部6は、走査部3が試料を第1の方向に走査する期間と第2の方向に走査する期間との間で、互いに異なる走査速度V1,V2で面状光L1の照射面Rに対して試料Sが走査されるように走査部3を制御してもよい。制御部6は、走査部3が試料Sを第1の方向に走査する期間と第2の方向に走査する期間との間で、各画素列25の露光期間Tの開始の時間差で表されるロールタイムTr(図3(a)参照)が互いに異なるように撮像部5を制御してもよい。
【0034】
制御部6は、撮像部5で生成された画像データに基づいて試料Sの観察画像データを生成する生成部8、及び観察画像データに基づいて試料Sの解析を行う解析部9としても機能する。観察画像データは、例えば面状光L1の光軸P1に直交する面(XZ面)における試料Sの二次元画像データ(断面像)である。生成部8としての制御部6は、これらの断面像を試料Sの走査方向(Y方向)に結合することで、試料Sの三次元情報を生成する。解析部9としての制御部6は、生成した観察画像データに基づいて試料Sの解析を実行し、解析結果を生成する。解析結果は、必要に応じてディスプレイに表示され、格納部に格納される。
【0035】
続いて、試料観察装置1における撮像部5の撮像方式について更に詳細に説明する。
【0036】
上述したように、試料観察装置1における撮像部5は、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサといったエリアイメージセンサ21によって構成され、その撮像方式としてローリングシャッタ方式が採用されている。一般的に、ローリングシャッタ方式では、図3(a)に示すように、画素領域22における各画素列25の露光期間Tの開始が所定時間ずつずれるようになっている。つまり、一の画素列25の露光が指示されてから所定時間が経過した後、次の画素列25の露光が開始され、その後所望の画素列25に至るまで露光期間Tが順次開始される。
【0037】
各画素列25における露光期間Tの開始の時間差は、ロールタイムTrと称され、制御部6で制御可能なパラメータである。各画素列25におけるY方向の解像度R(Y)は、図3(b)に示すように、露光期間Tと試料Sの走査速度Vとの積に基づいて算出できる。各画素列25の露光位置Pのずれ量は、撮像時の試料Sの走査速度Vに比例することとなる。
【0038】
一般的なローリングシャッタ方式の撮像では、各フレームは、露光期間と読出期間とから構成される。各画素列25における読出期間の開始の時間差は、ラインタイムTlと称される(図3(a)参照)。ラインタイムTlは、ロールタイムTrと同様に、制御部6で制御可能なパラメータである。本実施形態では、ロールタイムTrとラインタイムTlとは、等しい値に設定されている。また、一般には、所定のフレームにおいて、所定の画素列25の露光期間Tの経過後、露光の終了と共に当該画素列25の読出期間が開始される。そして、所定のフレームにおける所定の画素列25の読出期間の経過後、読出の終了と共に次のフレームにおける所定の画素列25の露光が開始される。
【0039】
本実施形態では、様々なローリングシャッタ方式の撮像モードを適用できる。例えば撮像部5は、トリガ信号に基づいて露光開始を制御する撮像モードでローリングシャッタ方式の撮像を行ってもよい。撮像部5は、トリガ信号に基づいて露光開始及び露光期間を制御する撮像モードでローリングシャッタ方式の撮像を行ってもよい。撮像部5は、トリガ信号に基づいて読出開始を制御する撮像モードでローリングシャッタ方式の撮像を行ってもよい。撮像部5は、トリガ信号に基づき読出開始及び読出期間を制御する撮像モードでローリングシャッタ方式の撮像を行ってもよい。
【0040】
ローリングシャッタ方式の撮像を制御するトリガ信号は、例えば外部トリガ信号によって制定できる。例えば外部トリガ信号は、ステージ14の位置を検出するリニアエンコーダから出力されるトリガ信号であってもよい。この場合、リニアエンコーダは、ステージ14がY方向に所定の距離だけ移動する度にトリガ信号を出力する。撮像部5では、入力される外部トリガ信号に基づき、撮像モードに応じてローリングシャッタ方式の撮像における露光期間及び/又は読出期間を制御し、n番目のフレームの露光及び読出に続けて(n+1)番目のフレームの露光及び読出を実行する。
【0041】
露光位置Pのずれ量と得られた画像データにおける試料Sの像との関係を図4に示す。図4の例は、Y方向に走査する期間における試料Sの像の取得の様子を示す模式図である。同図に示すように、Y方向に走査する期間中の試料Sの撮像にあたっては、n番目のフレーム、(n+1)番目のフレーム…の順に各画素列25による露光が行われる。
【0042】
各フレームでの各画素列25の露光順序は、例えば列番号の小さい方から大きい方に並んでいる。すなわち、m列目の画素列25の露光期間Tは、ロールタイムTrの分だけ(m+1)列目の画素列25の露光期間Tよりも時間的に先行した状態となっている。この状態で取得された画像データでは、ローリングシャッタ方式での撮像及びステージ14の移動の影響により、露光期間Tに対応する試料Sの露光位置PがZ方向の位置に対してのY方向に徐々にずれていく。このため、試料Sの像には、試料Sの本来の存在位置に対し、Z方向(深さ方向)の位置に対してY方向に歪みが生じることとなる。
【0043】
試料Sの露光位置PがZ方向の位置に対してY方向に徐々にずれていくと、ずれ量によっては、本来は一のフレームに存在すべき画像が隣のフレームに存在する画像として認識されてしまうことが考えられる。つまり、一のフレームのある露光位置Pの試料Sの像が、一のフレームに隣のフレームの同位置の露光位置Pの試料Sの像として認識され得る。このような像の認識のずれは、試料Sの形状や存在位置の解析精度の低下の要因となるおそれがある。
【0044】
このような課題に対し、本実施形態では、ローリングシャッタ方式で撮像して得られた画像データをそのまま用いるのではなく、グローバルシャッタ方式で得られた画像データと同等な画像データに再構築することにより、画像データにおける試料Sの像の歪みの低減が図られている。
【0045】
より具体的には、本実施形態では、生成部8は、図5に示すように、各画素列25のうちの一の画素列25を基準画素列25Rとして設定する。生成部8は、設定した基準画素列25Rに基づいて、一のフレームの各画素列25の露光位置Pのうち基準画素列25Rの露光位置Pに対応するデータ部分Dと、一のフレームに連続するフレームの各画素列25の露光位置Pのうち基準画素列25Rの露光位置Pに対応するデータ部分Dとを結合する(以下では、基準画素列25Rの露光位置Pを「基準露光位置Pr」と称す)。そして、生成部8は、これらのデータ部分D同士を結合することにより、一のフレームにおける基準露光位置Prに対応する二次元画像データGtを生成する。
【0046】
図5の例では、生成部8は、画素領域22の配列端となる1番目の画素列25を基準画素列25Rとして設定している。この例では、基準露光位置Prに対応する二次元画像データGtを生成するにあたって、n番目のフレームで取得したデータ部分Dと、(n-1)番目のフレームで取得したデータ部分Dn-1と、(n-2)番目のフレームで取得したデータ部分Dn-2とが用いられている。
【0047】
基準画素列25Rである1番目の画素列25では、n番目のフレームで取得した画像データGの100%が二次元画像データGtの生成に用いられている。すなわち、基準画素列25Rでは、データ部分Dのみが二次元画像データGtの生成に用いられている。基準画素列25Rからの配列順が遠い画素列25であるほど、データ部分Dの結合割合が徐々に低下し、データ部分Dn-1の結合割合が徐々に増加する。
【0048】
図5の例では、2番目~6番目の画素列25については、n番目のフレームで取得したデータ部分Dと、(n-1)番目のフレームで取得したデータ部分Dn-1とが二次元画像データGtの生成に用いられている。2番目及び3番目の画素列25では、データ部分Dの結合割合がデータ部分Dn-1の結合割合より高くなっており、4番目~6番目の画素列25では、データ部分Dn-1の結合割合がデータ部分Dの結合割合より高くなっている。
【0049】
7番目~10番目の画素列25については、(n-1)番目のフレームで取得したデータ部分Dn-1と、(n-2)番目のフレームで取得したデータ部分Dn-2とが二次元画像データGtの生成に用いられている。7番目及び8番目の画素列25では、データ部分Dn-1の結合割合がデータ部分Dn-2の結合割合より高くなっており、9番目の画素列25では、データ部分Dn-1の結合割合とデータ部分Dn-2の結合割合とが同程度となっている。9番目及び10番目の画素列25では、データ部分Dn-2の結合割合がデータ部分Dn-1の結合割合より高くなっている。
【0050】
また、図6に示すように、生成部8は、画素領域22の中間画素列を基準画素列25Rとして設定してもよい。中間画素列は、画素領域22に含まれる各画素列25のうち配列端を除く画素列25である。図6の例では、生成部8は、5番目の画素列25を基準画素列25Rとして設定している。この例では、基準露光位置Prに対応する二次元画像データGtを生成するにあたって、n番目のフレームで取得したデータ部分Dと、(n+1)番目のフレームで取得したデータ部分Dn+1と、(n-1)番目のフレームで取得したデータ部分Dn-1とが用いられている。
【0051】
基準画素列25Rである5番目の画素列25では、n番目のフレームで取得した画像データの100%が二次元画像データGtの生成に用いられている。すなわち、基準画素列25Rでは、データ部分Dのみが二次元画像データGtの生成に用いられている。基準画素列25Rからの配列順が遠い画素列25であるほど、データ部分Dnの結合割合が徐々に低下し、データ部分Dn+1或いはデータ部分Dn-1の結合割合が徐々に増加する。
【0052】
図6の例では、1番目~4番目の画素列25については、n番目のフレームで取得したデータ部分Dと、(n+1)番目のフレームで取得したデータ部分Dn+1とが二次元画像データGtの生成に用いられている。3番目及び4番目の画素列25では、データ部分Dの結合割合がデータ部分Dn+1の結合割合より高くなっており、1番目及び2番目の画素列25では、データ部分Dn+1の結合割合がデータ部分Dの結合割合より高くなっている。
【0053】
6番目~10番目の画素列25については、n番目のフレームで取得したデータ部分Dと、(n-1)番目のフレームで取得したデータ部分Dn-1とが二次元画像データGtの生成に用いられている。6番目及び7番目の画素列25では、データ部分Dの結合割合がデータ部分Dn-1の結合割合より高くなっており、8番目~10番目の画素列25では、データ部分Dn-1の結合割合がデータ部分Dの結合割合より高くなっている。
【0054】
データ部分Dの結合割合は、走査部3による試料Sの走査条件、及び撮像部5による観察光L2の撮像条件を用いて算出できる。本実施形態では、生成部8は、各画素列25の露光期間Tの開始の時間差で表されるロールタイムTrと、走査部3による試料Sの走査速度Vと、撮像部5の解像度R(Y)とに基づいて、データ部分D同士の結合割合を算出する。
【0055】
結合割合の算出には、例えば以下の式(1)又は式(2)が用いられる。数値Aが表す部分は、図7に示すように、基準露光位置Prに対応する各画素列25の画像データGのうち、一のフレームの前若しくは後のフレームで取得したデータ部分Dに相当する部分が占める割合を示している。ギャップナンバーNgが0より大きい場合、数値Aが表す部分を含むフレームに対して式(1)を用いる。一方、ギャップナンバーNgが0より小さい場合、数値Aが表す部分を含むフレームに対して式(2)を用いる。数値Aが表す部分を含むフレームは、一のフレームに連続する前後のフレームに限られず、一のフレームから2つ以上前若しくは2つ以上後のフレームであってもよい。
A[/line]=((ギャップナンバーNg×ロールタイムTr×走査速度V)/解像度R(Y))+1 …(1)
A[/line]=((ギャップナンバーNg×ロールタイムTr×走査速度V)/解像度R(Y))-1 …(2)
【0056】
ギャップナンバーNgは、基準画素列25Rを0とし、基準画素列25Rから何番目の画素列であるかを示す値である。ギャップナンバーNgは、画素列25の列番号をNとし、基準画素列25Rの列番号をNrとした場合に、Ng=N-Nrで算出できる(図7参照)。なお、ローリングシャッタ方式によって読み出される画素列の順番を基準画素列25Rの列番号Nrと定義してもよい。こうすると、ローリングシャッタの読出方向が変更になった場合でも、同じ計算にてギャップナンバーNgを算出できる。
【0057】
結合割合の算出にあたっては、ギャップナンバーNg毎にAを算出する。Aの値のうちの整数部分fは、結合に用いるフレームの番号を示す。基準画素列25Rが設定されているフレームの番号をnとした場合、(n+f)番目のフレームで取得したデータ部分Dが結合に用いられる。Aの値のうちの小数部分dの絶対値は、(n+f)番目のフレームで取得したデータ部分Dの割合を示す。小数部分dの絶対値は、1=100%としてデータ部分Dの割合に換算する。
【0058】
基準画素列25Rでは、ギャップナンバーNgが0となり、式(1)で算出されるAの値は1となる。この場合、整数部分fは1であるため、式の上では(n+1)番目のフレームで取得したデータ部分Dが結合に用いられることとなるが、小数部分dの絶対値が0であるため、(n+1)番目のフレームで取得したデータ部分Dの割合は0%となる。したがって、基準画素列25Rでは、n番目のフレームのデータ部分Dが100%用いられることとなる。
【0059】
基準画素列25R以外の画素列25において、例えば式(1)で算出されるAの値が1.109であった場合、整数部分fは1であるため、(n+1)番目のフレームで取得したデータ部分Dが結合に用いられる。また、小数部分dの絶対値は0.109であるため、(n+1)番目のフレームで取得したデータ部分Dの割合は10.9%となる。したがって、この画素列25については、n番目のフレームで取得したデータ部分Dの89.1%と、(n+1)番目のフレームで取得したデータ部分Dの10.9%とが結合される。
【0060】
基準画素列25R以外の画素列25において、例えば式(2)で算出されるAの値が-1.109であった場合、整数部分fは-1であるため、(n-1)番目のフレームで取得したデータ部分Dが結合に用いられる。また、小数部分dの絶対値は0.109であるため、(n-1)番目のフレームで取得したデータ部分Dの割合は10.9%となる。したがって、この画素列25については、n番目のフレームで取得したデータ部分Dの89.9%と、(n-1)番目のフレームで取得したデータ部分Dの10.9%とが結合される。
【0061】
図8は、本開示の一実施形態に係る試料観察方法を示すフローチャートである。同図に示すように、この試料観察方法は、照射ステップS01と、走査ステップS02と、撮像ステップS03と、生成ステップS04と、解析ステップS05とを含んで構成されている。
【0062】
照射ステップS01は、試料Sに面状光L1を照射するステップである。照射ステップS01では、光源11から出力した光L0が面状光L1に整形され、容器13に保持されている試料Sに面状光L1が照射される。試料Sからは、面状光L1の照射に基づく観察光L2が発生する。走査ステップS02は、面状光L1の照射面Rに対して試料Sを走査するステップである。ここでは、ステージ14により、Y方向に試料Sを走査する。
【0063】
撮像ステップS03は、面状光L1の照射によって試料Sで発生した観察光L2を撮像し、撮像結果に基づく画像データGを出力するステップである。撮像ステップS03では、画素領域22における各画素列25の露光期間Tの開始が所定時間ずつずれるローリングシャッタ方式で撮像を行うエリアイメージセンサ21を用い、走査中の試料Sの撮像結果に基づく画像データGを出力する。
【0064】
生成ステップS04は、撮像ステップS03で取得した画像データGに基づいて、試料Sの走査方向の各位置での二次元画像データGtを生成するステップである。生成ステップS04では、各画素列25のうちの一の画素列25を基準画素列25Rとして設定する。そして、生成ステップS04では、一のフレームの基準露光位置Prに対応するデータ部分Dと、一のフレームに連続するフレームの基準露光位置Prに対応するデータ部分Dとを結合することにより、基準露光位置Prに対応する二次元画像データGtを生成する。
【0065】
解析ステップS05は、試料Sの解析を行うステップである。解析ステップS05では、生成ステップS04で得られた二次元画像データGtに基づいて試料Sの観察画像データを生成し、生成した観察画像データに基づいて試料Sの解析を実行し、解析結果を生成する。
【0066】
以上説明したように、試料観察装置1では、試料Sの二次元画像データGtの生成にあたり、各画素列25のうちの一の画素列25を基準画素列25Rとして設定し、連続するフレーム間で基準露光位置Prに対応するデータ部分Dを結合する。これにより、ローリングシャッタ方式で撮像して得られた画像データGがグローバルシャッタ方式で得られた画像データと同等な画像データGに再構築され、画像データGにおける試料Sの像の歪みを低減できる。試料Sの像の歪みが低減されることで、一のフレームの試料Sの像が隣のフレームの試料Sの像として認識されることを抑制でき、試料Sの形状や存在位置の解析精度を十分に担保できる。
【0067】
本実施形態では、生成部8は、画素領域22の配列端となる画素列25を基準画素列25Rとして設定し得る。この場合、二次元画像データGtの生成に要する制御を簡単化できる。
【0068】
具体的には、画素領域22の配列端となる画素列25を基準画素列25Rとして設定する場合、図9(a)に示すように、基準露光位置Prに対応する二次元画像データGtの生成にあたって、一のフレームのデータ部分Dと、一のフレームの一つ前のフレームのデータ部分Dと結合すればよい。このため、図9(b)に示すように、図9(a)の状態から走査速度Vが変更される場合でも、例えばリニアエンコーダからのトリガ信号のタイミングの変更回数の増大を回避できる。また、図9(c)に示すように、走査条件或いは撮像条件の変更によってデータ部分Dの結合に用いるフレームの数が増加した場合でも、解像度R(Y)の分だけずらしたタイミングでトリガ信号を出力すればよい。
【0069】
本実施形態では、生成部8は、画素領域22の中間画素列を基準画素列25Rとして設定し得る。この手法によれば、試料Sを双方向走査するような場合であっても、走査方向に関わらず計測範囲を同一にすることが可能となる。
【0070】
本実施形態では、生成部8は、各画素列25の露光期間Tの開始の時間差で表されるロールタイムTrと、走査部3による試料Sの走査速度Vと、撮像部5の解像度R(Y)とに基づいて、データ部分Dの結合割合を算出している。走査条件及び撮像条件を考慮してデータ部分Dの結合割合を算出することで、結合の最適化が図られる。
【0071】
本開示の要旨は、以下の[1]~[8]のとおりである。
[1]試料に面状光を照射する照射光学系と、前記面状光の照射面に対して直交する方向に前記試料を走査する走査部と、前記面状光の照射によって前記試料で発生した観察光を撮像する画素領域を有し、当該画素領域での前記観察光の撮像結果に基づく画像データを出力する撮像部と、前記画像データに基づいて、前記試料の走査方向の各位置での二次元画像データを生成する生成部と、を備え、前記撮像部は、前記画素領域における各画素列の露光期間の開始が所定時間ずつずれるローリングシャッタ方式で撮像を行うエリアイメージセンサによって構成され、前記生成部は、前記各画素列のうちの一の画素列を基準画素列として設定し、一のフレームの各画素列の露光位置のうち前記基準画素列の露光位置に対応するデータ部分と、前記一のフレームに連続する他のフレームの各画素列の露光位置のうち前記基準画素列の露光位置に対応するデータ部分とを結合することにより、前記一のフレームにおける前記基準画素列の露光位置に対応する二次元画像データを生成する試料観察装置。
[2]前記生成部は、前記画素領域の配列端となる画素列を前記基準画素列として設定する[1]記載の試料観察装置。
[3]前記生成部は、前記画素領域の中間画素列を前記基準画素列として設定する[1]記載の試料観察装置。
[4]前記生成部は、前記各画素列の露光期間の開始の時間差で表されるロールタイムと、前記走査部による前記試料の走査速度と、前記撮像部の解像度とに基づいて、前記データ部分の結合割合を算出する[1]~[3]のいずれか記載の試料観察装置。
[5]試料に面状光を照射する照射ステップと、前記面状光の照射面に対して直交する方向に前記試料を走査する走査ステップと、前記面状光の照射によって前記試料で発生した観察光を撮像する画素領域を用い、当該画素領域での前記観察光の撮像結果に基づく画像データを出力する撮像ステップと、前記画像データに基づいて、前記試料の走査方向の各位置での二次元画像データを生成する生成ステップと、を備え、前記撮像ステップでは、前記画素領域における各画素列の露光期間の開始が所定時間ずつずれるローリングシャッタ方式で撮像を行うエリアイメージセンサを用い、前記生成ステップでは、前記各画素列のうちの一の画素列を基準画素列として設定し、一のフレームの各画素列の露光位置のうち前記基準画素列の露光位置に対応するデータ部分と、前記一のフレームに連続する他のフレームの各画素列の露光位置のうち前記基準画素列の露光位置に対応するデータ部分とを結合することにより、前記一のフレームにおける前記基準画素列の露光位置に対応する二次元画像データを生成する試料観察方法。
[6]前記生成ステップでは、前記画素領域の配列端となる画素列を前記基準画素列として設定する[5]記載の試料観察方法。
[7]前記生成ステップでは、前記画素領域の中間画素列を前記基準画素列として設定する[5]記載の試料観察方法。
[8]前記生成ステップでは、前記各画素列の露光期間の開始の時間差で表されるロールタイムと、前記走査部による前記試料の走査速度と、前記撮像部の解像度とに基づいて、前記データ部分の結合割合を算出する[5]~[7]のいずれか記載の試料観察方法。
【符号の説明】
【0072】
1…試料観察装置、2…照射光学系、3…走査部、5…撮像部、6…制御部、8…生成部、21…エリアイメージセンサ、22…画素領域、25…画素列、25R…基準画素列、S…試料、L1…面状光、L2…観察光、R…照射面、D…データ部分、G…画像データ、Gt…二次元画像データ、T…露光期間、Tr…ロールタイム、P…露光位置、R(Y)…解像度、V…走査速度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9