IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タカラトミーの特許一覧

<>
  • 特開-噴射装置 図1
  • 特開-噴射装置 図2
  • 特開-噴射装置 図3
  • 特開-噴射装置 図4
  • 特開-噴射装置 図5
  • 特開-噴射装置 図6
  • 特開-噴射装置 図7
  • 特開-噴射装置 図8
  • 特開-噴射装置 図9
  • 特開-噴射装置 図10
  • 特開-噴射装置 図11
  • 特開-噴射装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093378
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】噴射装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 9/02 20060101AFI20240702BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240702BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240702BHJP
   B67D 1/10 20060101ALI20240702BHJP
   B65D 85/72 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F04B9/02 C
B05C5/00 101
B05C11/10
B67D1/10
B65D85/72 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209714
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 謙二郎
(72)【発明者】
【氏名】城▲崎▼ 恭平
【テーマコード(参考)】
3E035
3E082
3H075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
3E035AA03
3E035BA04
3E035BB05
3E035BC02
3E082AA02
3E082BB01
3E082CC01
3E082DD20
3H075AA01
3H075BB03
3H075BB22
3H075CC26
3H075CC40
3H075DA03
3H075DA30
3H075DB32
4F041AB01
4F041BA02
4F041BA10
4F041BA32
4F041CB02
4F041CB30
4F041CB55
4F042BA08
4F042BA12
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB11
(57)【要約】
【課題】液垂れを効果的に防止し、且つ、繰り返して噴出を行う場合に効率的に噴射をおこなうことができる噴射装置を提供すること。
【手段】液体を貯留し先端に噴出孔が形成されたシリンダと、プランジャとを、有する容積式の往復ポンプと、前記プランジャに押出し動作及び引込み動作をさせる駆動装置と、を備えた噴射装置であって、前記駆動装置は、前記プランジャに所定距離(X1)だけ前記押出し動作をさせた後、前記プランジャに前記所定距離(X1)よりも小さい距離(X2)だけ引込み動作をさせる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留し先端に噴出孔が形成されたシリンダと、押出し動作及び引込み動作可能なプランジャとを、有する容積式の往復ポンプと、
前記プランジャに押出し動作及び引込み動作をさせる駆動装置と、
を備えた噴射装置であって、
前記駆動装置は、
前記プランジャに所定距離(X1)だけ前記押出し動作をさせた後に前記プランジャに前記所定距離(X1)よりも小さい距離(X2)だけ引込み動作をさせる、
ことを特徴とする噴射装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、操作子の操作に基づいて作動されるモータを備え、
前記モータの動力によって前記プランジャに押出し動作及び引込み動作をさせ、
前記プランジャの前記引込み動作が完了した時に前記モータの作動を停止させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の噴射装置。
【請求項3】
前記駆動装置は、
前記プランジャに前記プランジャと一体動作可能に連結されたラックを含んで構成されるとともに、
前記モータ動力によって動作し、前記ラックの歯に一方向から噛合して前記プランジャに所定距離(X1)だけ前記押出し動作をさせる第1噛合部と、
前記押出し動作の終了後に前記モータの動力によって動作し、前記ラックの歯に反対方向から噛合して前記プランジャに前記所定距離(X1)よりも小さい距離(X2)だけ引込み動作をさせる第2噛合部と、
を備える、ことを特徴とする請求項2に記載の噴射装置。
【請求項4】
前記第1噛合部及び前記第2噛合部は、
前記モータの動力によって第1軸を中心に往復回転する1つの回転体に設けられ、
前記回転体に設けた個別の軸を中心に揺動可能で、揺動によって、前記ラックの歯と噛合可能な状態となる第1位置と噛合不能な状態となる第2位置とを取り得るように構成されるとともに、付勢部材によって前記第1位置に向けて付勢され、
前記第1噛合部は、
前記回転体の往動のときには、前記第1位置を取り、前記プランジャに前記押出し動作をさせるとともに、
前記回転体の復動によって前記ラックの歯に当たったときには、前記ラックの歯との摺接により前記第2位置を取り、
前記第2噛合部は、
前記回転体の復動のときには、前記第1位置を取り、前記プランジャに前記引込み動作をさせるとともに、
前記回転体の往動によって前記ラックの歯に当たったときには、前記ラックの歯との摺接により前記第2位置を取る、
ことを特徴とする請求項3に記載の噴射装置。
【請求項5】
前記回転体が復動から往動に切り替わる切り替わり位置で前記回転体を係止し、同時に、モータの作動を停止させる、ことを特徴とする請求項4に記載の噴射装置。
【請求項6】
前記操作子を操作によって、前記モータを始動させる第1スイッチと、
前記回転体の所定部位が当接している間、前記モータを作動させる第2スイッチと、を備え、
前記モータの始動直後に、前記回転体の前記所定部位が前記第2スイッチに当接し、前記回転体の所定部位は前記切り替わり位置で当接が解除される、ことを特徴とする請求項5に記載の噴射装置。
【請求項7】
前記回転体は、前記モータの出力軸の延長線に直交する前記第1軸を中心に回転可能に構成され、
前記出力軸には偏心ピンが設けられ、
前記回転体には、前記偏心ピンに係合する凹部が設けられ、
前記出力軸の一方向の回転によって前記凹部の縁が押圧されて前記回転体が往復回転するように構成されている、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の噴射装置。
【請求項8】
前記第1噛合部及び前記第2噛合部の各々は、前記モータの動力によって互いに反対方向に回転する別個の欠歯歯車によって構成され、
前記第1噛合部及び前記第2噛合部の歯数比は(X1:X2)に設定され、前記第1噛合部及び前記第2噛合部が同時に前記ラックの歯と噛合しないように構成され、
前記第1噛合部は、前記回転体の往動に伴って前記プランジャに前記押出し動作をさせ、前記第2噛合部は、前記回転体の復動に伴って前記プランジャに前記引込み動作をさせる、ことを特徴とする請求項3に記載の噴射装置。
【請求項9】
前記往復ポンプはマウスピースが付設されてカートリッジとして構成され、前記カートリッジは、装置本体に着脱可能となっており、カートリッジを装着する際に前記プランジャが前記ラックに連結される、ことを特徴とする請求項7に記載の噴射装置。
【請求項10】
前記シリンダには、前記液体として飲料が貯留されている、ことを特徴とする請求項9に記載の噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を貯留し先端に噴出孔が形成されたシリンダと、押出し動作及び引込み動作可能なプランジャとを、有する容積式の往復ポンプと、プランジャに一体動作可能に連結されたラックを含んで構成され、モータ動力によってラックを駆動させてプランジャに押出し動作をさせる駆動装置と、を備えた噴射装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-526993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリンダに入った液体を、モータの動力で機械的構成を介してプランジャに押出し動作をさせたままの状態とすると、液体の噴出後に噴出孔から液体が漏れ出て液垂れが生じる虞があった。
また、この漏出しを防止するために、液体の噴出後、プランジャを初期位置まで引き込み、漏れ出ようとする液体をシリンダ内に引き戻すこともできる。
しかしながら、シリンダ内に入っている液体を複数回繰り返して噴出させようとする場合、シリンダ内に貯留されている液体の量が減るので、その度毎に噴出のためのストロークが増し、効率的な噴射を行うことができない。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、液垂れを効果的に防止し、且つ、繰り返して噴出を行う場合に効率的に噴射をおこなうことができる噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
液体を貯留し先端に噴出孔が形成されたシリンダと、押出し動作及び引込み動作可能なプランジャとを、有する容積式の往復ポンプと、
前記プランジャに押出し動作及び引込み動作をさせる駆動装置と、
を備えた噴射装置であって、
前記駆動装置は、
前記プランジャに所定距離(X1)だけ前記押出し動作をさせた後に前記プランジャに前記所定距離(X1)よりも小さい距離(X2)だけ引込み動作をさせる、
ことを特徴とする。
【0006】
第2の手段は、第1の手段であって、
前記駆動装置は、操作子の操作に基づいて作動されるモータを備え、
前記モータの動力によって前記プランジャに押出し動作及び引込み動作をさせ、
前記プランジャの前記引込み動作が完了した時に前記モータの作動を停止させる、
ことを特徴とする。
【0007】
第3の手段は、第2の手段であって、
前記駆動装置は、
前記プランジャに当該プランジャと一体動作可能に連結されたラックを含んで構成されるとともに、
前記モータ動力によって動作し、前記ラックの歯に一方向から噛合して前記プランジャに所定距離(X1)だけ前記押出し動作をさせる第1噛合部と、
前記押出し動作の終了後に前記モータの動力によって動作し、前記ラックの歯に反対方向から噛合して前記プランジャに前記所定距離(X1)よりも小さい距離(X2)だけ引込み動作をさせる第2噛合部と、
を備える、ことを特徴とする。
【0008】
第4の手段は、第3の手段であって、
前記第1噛合部及び前記第2噛合部は、
前記モータの動力によって第1軸を中心に往復回転する1つの回転体に設けられ、
前記回転体に設けた個別の軸を中心に揺動可能で、揺動によって、前記ラックの歯と噛合可能な状態となる第1位置と噛合不能な状態となる第2位置とを取り得るように構成されるとともに、付勢部材によって前記第1位置に向けて付勢され、
前記第1噛合部は、
前記回転体の往動のときには、前記第1位置を取り、前記プランジャに前記押出し動作をさせるとともに、
前記回転体の復動によって前記ラックの歯に当たったときには、前記ラックの歯との摺接により前記第2位置を取り、
前記第2噛合部は、
前記回転体の復動のときには、前記第1位置を取り、前記プランジャに前記引込み動作をさせるとともに、
前記回転体の往動によって前記ラックの歯に当たったときには、前記ラックの歯との摺接により前記第2位置を取る、
ことを特徴とする。
【0009】
第5の手段は、第4の手段であって、前記回転体が復動から往動に切り替わる切り替わり位置で前記回転体を係止し、同時に、モータの作動を停止させる、ことを特徴とする。
【0010】
第6の手段は、第5の手段であって、
前記操作子を操作によって、前記モータを始動させる第1スイッチと、
前記回転体の所定部位が当接している間、前記モータを作動させる第2スイッチと、を備え、
前記モータの始動直後に、前記回転体の前記所定部位が前記第2スイッチに当接し、前記回転体の所定部位は前記切り替わり位置で当接が解除される、ことを特徴とする。
【0011】
第7の手段は、第4~第6のいずれかの手段であって、
前記回転体は、前記モータの出力軸の延長線に直交する前記第1軸を中心に回転可能に構成され、
前記出力軸には偏心ピンが設けられ、
前記回転体には、前記偏心ピンに係合する凹部が設けられ、
前記出力軸の一方向の回転によって前記凹部の縁が押圧されて前記回転体が往復回転するように構成されている、ことを特徴とする。
【0012】
第8の手段は、第3の手段であって、
前記第1噛合部及び前記第2噛合部の各々は、前記モータの動力によって互いに反対方向に回転する別個の欠歯歯車によって構成され、
前記第1噛合部及び前記第2噛合部の歯数比は(X1:X2)に設定され、前記第1噛合部及び前記第2噛合部が同時に前記ラックの歯と噛合しないように構成され、
前記第1噛合部は、前記回転体の往動に伴って前記プランジャに前記押出し動作をさせ、前記第2噛合部は、前記回転体の復動に伴って前記プランジャに前記引込み動作をさせる、ことを特徴とする。
【0013】
第9の手段は、第7の手段であって、前記往復ポンプはマウスピースが付設されてカートリッジとして構成され、前記カートリッジは、装置本体に着脱可能となっており、カートリッジを装着する際に前記プランジャが前記ラックに連結される、ことを特徴とする。
【0014】
第10の手段は、第9の手段であって、前記シリンダには、前記液体として飲料が貯留されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1~第10の手段によれば、プランジャの押出し動作によって液体が噴出された後に、プランジャが引込み動作をするので、その後に噴出孔から液体が漏れ出ることが防止される。
また、1回のプランジャの押出し距離(X1)が引込み距離(X2)よりも大きいので、1回毎に(X1-X2)の距離ずつプランジャを押出し方向に進めることができることから、次回に、液体を押し出すまでのストロークを短くすることができるため、効率よく液体を噴射させることができる。
【0016】
第4の手段によれば、1つの回転体に第1噛合部及び第2噛合部の双方を設けるため、部品点数を少なくすることができる。
【0017】
第5の手段によれば、切り替わり位置で回転体を係止するので、モータが作動していない状態での回転体の遊動が防止され、いつでも同じ位置から回転体を往復回転させることができる。
【0018】
第6の手段によれば、第1スイッチと第2スイッチとでモータを作動させているので、ICなどの半導体集積回路や特別なセンサが不要となるため、安価な噴射装置が実現できる。
【0019】
第7の手段によれば、2つの回転体を共に1回転させるだけで、プランジャを所定距離(X1)だけ押出した後、(X2)の距離だけ引き込むことができる。
【0020】
第8の手段によれば、モータの出力軸の一方向の回転を回転体の往復回転に変換する機構が簡素に構成できる。
【0021】
第9の手段によれば、装置本体がカートリッジとなっているので、装置本体内に液体を蓄えておく必要がないことから、噴射装置をコンパクトに構成できる。
【0022】
第10の手段によれば、液体が飲料であるので、どこでも手軽に飲料を味わうことができる。また、噴射させることによって口全体に飲料が広がるので、少量でも十分に飲料を堪能することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る噴射装置の斜視図である。
図2】装置本体及びカートリッジの斜視図である。
図3】装置本体の図2とは反対側の斜視図である。
図4】噴射装置の内部構造を示した図である。
図5】駆動装置の構造を示した図である。
図6】駆動装置の構造を示した図である。
図7】(A)は、第1爪部材と第3噛合部との噛合状態を示す図、(B)は、第2爪部材と第4噛合部との噛合状態を示す図ある。
図8】ラックを噛合部側から見た図である。
図9】噴射装置の噴射の様子を示した図である。
図10】モータ駆動回路の模式図である。
図11】収容ケース及び噴射装置を示した斜視図である。
図12】収容ケースへの噴射装置の収容の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0025】
《概略》
図1は、実施形態に係る噴射装置100の斜視図、図2は装置本体20及びカートリッジ10の斜視図、図3は装置本体20を図2とは反対側から見た斜視図である。
図2の符号10は、コーヒー液などの飲料が貯留されたカートリッジを指示している。
カートリッジ10(図2)にはマウスピース11が設けられている。このカートリッジ10は、装置本体20に着脱可能に構成されている。装置本体20の一の側面にはボタン20aが設けられている。
そして、カートリッジ10が装着された状態の装置本体20、つまり噴射装置100を片手で持ち、マウスピース11を口に咥えてボタン20aを押す。すると、マウスピース11を通じて口の中に飲料が噴射される。この飲料の噴射は、ボタン20aを押す毎に1回ずつなされる。1つのカートリッジ10は、例えば10回の噴射ができるだけの飲料を貯留しており、貯留した飲料がなくなったらカートリッジ10を交換する。
以下、この噴射装置100の詳細を説明する。
【0026】
《詳細》
図4は、噴射装置100の内部構造を示した図である。
〈カートリッジ10〉
カートリッジ10は、マウスピース11と、噴出孔(図示せず)が形成された円筒状のシリンダ12と、シリンダ12内の液体を押し出すプランジャ13と、を備えている。
シリンダ12及びカートリッジ10は、容積式の往復ポンプを構成している。プランジャ13の後端部には、プランジャ13をラック21に連結させるための球状部15が設けられている。
このカートリッジ10のシリンダ12内には、コーヒー液その他の飲料が貯留されている。
【0027】
〈装置本体20〉
1.カートリッジ収容室20b
装置本体20は片手で握ることができる程度の大きさとなっている。装置本体20の側部上方には、開閉可能なカートリッジ収容室20bが設けられており、カートリッジ収容室20bに対してカートリッジ10が着脱可能となっている。
カートリッジ収容室20bには、後述のラック21の一端部が露出している。ラック21には、上記球状部15に係合可能な孔21aが設けられ、この孔21aに球状部15を嵌合させることで、プランジャ13がラック21に連結される。
【0028】
2.スライドドア22
装置本体20には、カートリッジ収容室20bを開閉するスライドドア22が設けられている。
スライドドア22の内面には凸部22aが設けられている。凸部22aは、スライドドア22の動作に伴って、ラック21に付設された凸部21bと当接可能となっている。つまり、カートリッジ10がカートリッジ収容室20bに装着されていない状態で、スライドドア22を開けると、スライドドア22の凸部22aがラック21の凸部21bに当接し、押圧することで、ラック21が初期位置に戻される。カートリッジ10を装着するとき、この初期位置で、プランジャ13とラック21が連結される。
【0029】
3.駆動装置30
図5及び図6は、駆動装置30の構造を示した図である。
装置本体20には、カートリッジ10のプランジャ13を駆動させるための駆動装置30が設けられている。
駆動装置30は、ギヤモータ31と、回転体32と、ラック21を備えている。また、駆動装置30は、ギヤモータ31の出力軸31aの回転を回転体32の往復回転に変換する第1運動変換機構33と、回転体32の往復回転をラック21の直線往復動作に変換する第2運動変換機構34と、を備えている。
【0030】
4.第1運動変換機構33
第1運動変換機構33は、ギヤモータ31に付設された偏心ピン31bと、回転体32の外周に形成された凹部32aと、から構成されている。
すなわち、ギヤモータ31の出力軸31aには円板31cが設けられ、この円板31cには偏心ピン31bが設けられている。一方、回転体32の軸32bは、ギヤモータ31の出力軸31aの延長線に対して直交する方向に延びている。この回転体32の外周には、偏心ピン31bに係合する凹部32aが設けられている。偏心ピン31bと凹部32aとは、常時に係合しており、ギヤモータ31の出力軸31aが一方向に1回転すると、偏心ピン31bが凹部32aの縁を押すことで、回転体32を、軸32bを中心に所定範囲で往復回転させる。
【0031】
5.第2運動変換機構34
第2運動変換機構34は、回転体32に付設された第1爪部材(第1歯合部)36及び第2爪部材(第2歯合部)37と、ラック21に形成された第3噛合部38及び第4噛合部39と、から構成されている。
【0032】
第1爪部材36は回転体32の第1面に設けられ、また、第2爪部材37は回転体32の第2面に設けられている。図7(A)、(B)は、回転体32の第1面側から見た第1爪部材36及び第2爪部材37を示した図である。第1面側から見た第1爪部材36と、第2面側から見た第2爪部材37の形は同じとなっている。
第1爪部材36及び第2爪部材37は、基端部の軸36a、37aを中心に噛合可能位置と噛合不能位置との間で回動(往復回転)可能となっており、弾性を有する付勢部材36b、37bの付勢力によって、噛合可能位置に向けて付勢されている。したがって、第1爪部材36及び第2爪部材37は、常態では、付勢部材36b、37bの付勢力によって噛合可能位置を取る。
なお、第1爪部材36及び第2爪部材37の軸36a、37aは回転体32の軸32bから等距離に位置している。また、図7(A)、(B)において、符号36c、36d、37c、37dは回転板32上の固定部を指示している。さらに、上記付勢部材36b、37bに変えてトーションばねのような付勢部材を設けてもよい。
【0033】
図8は、ラック21を噛合部側から見た図である。
第3噛合部38及び第4噛合部39はラック21に並んで形成されている。
第3噛合部38及び第4噛合部39は、共に、片側だけが傾斜する鋸歯状の複数の歯から構成され、第3噛合部38の歯と第4噛合部39の歯は互いに反対の向きとなるように形成されている(図7(A)、(B)参照)。第3噛合部38の歯と第4噛合部39の歯は、歯の形、ピッチが同じとなっている。
第3噛合部38の歯は、回転体32の往動に共なって、噛合可能位置にある第1爪部材36と噛合し、回転体32が復動する際には、第1爪部材36と摺接し、付勢部材36bの付勢力に抗して第1爪部材36に噛合不能位置を取らせる。
また、第4噛合部39の歯は、回転体32の復動に伴って、噛合可能位置にある第2爪部材37と噛合し、回転体32が往動する際には、第2爪部材37と摺接し、付勢部材37bの付勢力に抗して第2爪部材36に噛合い不能位置を取らせる。
回転体32が複動する際に、第1爪部材36に噛合不能位置を取らせるのは、回転体32の復動を妨げないためであり、また、回転体32が往動する際に、第2爪部材36に噛合不能位置を取らせるのは、回転体32の往動を妨げないためである。
【0034】
この第2運動変換機構34によれば、回転体32が往動するに伴って、第1爪部材36の爪が第3噛合部38に噛合してラック21ひいてはプランジャ13を押出し方向に動作させる。これによって、図9に示すように、シリンダ12の噴出孔ひいてはマウスピース11の口から飲料を噴出させる。また、回転体32が復動するにともなって、第2爪部材37が第4噛合部39に噛合してラック21ひいてはプランジャ13を引込み方向に動作させる。
【0035】
6.回転体係止機構40
装置本体20には、回転体32を初期位置に留める回転体係止機構40が設けられている(図5参照)。
回転体係止機構40は、回転体32の外周に形成された係止凹部40aと、装置本体20内の固定部に形成された係止突起40bと、から構成されている。係止凹部40aと係止突起40bとが係合することにより、回転体32が係止される。回転体32の係止位置は、回転体32が複動から往動に切り替わる場所である。この場所が、回転体32の往復回転の初期位置となり、この場所に回転体32の係止凹部40aが至ると同時にギヤモータ31の作動も停止する。
【0036】
7.押出し距離及び引込み距離
駆動装置30では、1回の押出し及び引込みにおいて、プランジャ13の押出し距離よりも引込み距離が小さくなるように設定されている。
例えば、第1爪部材36は、回転体32の往動に伴って、第3噛合部38に噛合し、ラック21ひいてはプランジャ13を例えば3mm程度、押出し方向へ移動させる。また、第2爪部材37は、回転体32の複動に伴って、第4噛合部39に噛合し、ラック21ひいてはプランジャ13を例えば1mm程度、引込み方向に移動させる。
これにより、噴出孔ひいてはマウスピース11からの液垂れを可及的に防止することができる。また、1回毎に例えば1mmずつプランジャ13を押出し方向に進めることができることから、次回に、液体を押し出すまでのストロークを短くすることができるため、効率よく飲料を噴射させることができる。
【0037】
8.スイッチSW1、SW2
図10はモータ駆動回路の模式図である。
ギヤモータ31は、スイッチSW1、SW2のON、OFFに応じて作動又は作動停止する。
スイッチSW1は、押しボタン式のモーメンタリスイッチであり、人為的にボタン20aが押された時にギヤモータ31を作動させ、ボタン20aが押されなくなった時にOFFとなる。また、スイッチSW2は、押しボタン式のモーメンタリスイッチであり、回転体32の所定部位に当接している間だけギヤモータ31を作動させる。符号Bは噴射装置100に搭載されたバッテリを指示する。
回転体32の外周には凸部32dが形成されている(図4参照)。凸部32dは、スイッチSW1がONされ回転体32が始動した直後にスイッチSW2に当接され、スイッチSW2をONさせ、ギヤモータ31の作動を継続させる。また、凸部32dは、回転体32の係止凹部40aが係止突起40bに係合すると同時にスイッチSW2との当接を解除し、スイッチSW2をOFFさせ、ギヤモータ31の作動を停止させる。
【0038】
《収容ケース50》)
図11は、収容ケース50及び噴射装置100の斜視図、図12(A)~(C)は、噴射装置100が収容ケース50に収容される様子を示した図である。
収容ケース50には、噴射装置100が収容ケース50に収納可能となっている。
収容ケース50の内部には、噴射装置100を収容する空間(収容空間)が設けられている。また、収容ケース50には、軸51の周りを回動して収容空間を開閉可能なドア52が設けられている。ドア52の内側には、装置本体20を入れるポケット53が設けられている。
【0039】
この収容ケース50には、噴射装置100を収容した収容ケース50を持ち歩いたり、振ったりした場合でも、マウスピース11からの液垂れを防止する工夫がなされている。
先ず、噴射装置100を収容したときに、カートリッジ10のマウスピース11の口を塞ぐ工夫がされている。
すなわち、ドア52には矩形の開口52aが形成されている。ポケット53に噴射装置100を入れ(図12(A))、ドア52を閉めた際、噴射装置100の凹凸部20dが開口52a内に露出する(図12(B))。そして、噴射装置の100の凹凸部20dを手指で上方(マウスピース11側)に動作させることで、内部の噴射装置100が上方に移動させられる。収容ケース50の内部上方にはシリコン材から構成されるシール部材54が設けられている。そして、装置本体20へ移動したときに、マウスピース11の先がシール部材54に当接される(図12(C))。
また、噴射装置100のマウスピース11の口を塞いだ状態を継続させるための工夫がされている。
すなわち、収容ケース50の内部上方に、先端に突起が形成された爪部材55が設けられている。一方、装置本体20に凹部20cが設けられている。そして、装置本体20が上方に移動した際に爪部材55と凹部20cとを係合させることとしている。なお、この係合は、凹凸部20dを手指で下方に動作させることで解除させることができる。
【0040】
《変形例》
例えば、上記実施形態では、第1爪部材36と第2爪部材37との回転体32の円周方向の設置場所を調整することで、1回のプランジャ13の引込み距離を押出し距離よりも小さくしたが、回転体32の軸32bに対して、第1爪部材36と第3噛合部38との噛合位置を及び第2爪部材37と第4噛合部39との噛合位置よりも遠位とすることで、1回のプランジャ13の引込み距離を押出し距離よりも小さくすることもできる。
【0041】
また、モータの動力によって、互いに反対方向に回転する欠歯歯車を2つ設けるとともに、2つの欠歯歯車の歯数の比を所望の押出し距離と所望の引込み距離との比に設定し、且つ、同時に2つの欠歯歯車の歯が対応するラックの歯と噛合しないようにすることで、1回のプランジャ13の引込み距離を押出し距離よりも小さくすることもできる。
この場合、モータの動力に代えて、人為的な動力を用いた駆動装置によって、2つの欠歯歯車を回転させることができる。
【0042】
また、往復回転する1つの欠歯歯車に歯部を円周方向に離して2箇所に設け、歯部同士の歯数の比を所望の押出し距離と所望の引込み距離との比とすることで、1回のプランジャ13の引込み距離を押出し距離よりも小さくすることもできる。この場合、両歯部の歯が欠歯歯車の軸に対して遠位と近位とを取り、遠位に向けて付勢されていることが好ましい。
【0043】
また、カートリッジに貯留される液体も飲料には限定されない。
【符号の説明】
【0044】
10 カートリッジ
12 シリンダ
13 プランジャ
15 球状部
20 装置本体
20a ボタン
20b カートリッジ収容室
30 駆動装置
31 ギヤモータ
31b 偏心ピン
32 回転体
36b、37b 付勢部材
40 回転体係止機構
40a 係止凹部
40b 係止突起
100 噴射装置
SW1、SW2 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12