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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093391
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】車両用モータ駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240702BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20240702BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02K11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209749
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】マーレジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】塚口 剛
【テーマコード(参考)】
5H611
5H770
【Fターム(参考)】
5H611AA09
5H611TT01
5H770BA02
5H770PA12
5H770PA22
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA08
5H770QA28
5H770QA33
5H770QA37
(57)【要約】
【課題】パワーデバイスの放熱を改善する。
【解決手段】車両用モータ駆動制御装置1は、車両を駆動する電気モータの電力を制御するパワーデバイス12と、パワーデバイス12と熱的に接続するように前記パワーデバイスの第1面の側に配置されたヒートシンク13と、ヒートシンク13に冷媒Cを流通させる流路を形成する流路部14と、熱伝導性を有する材料により形成されていて、パワーデバイス12の第1面の側とは反対の第2面の側を覆うカバー15と、カバー15と熱的に接続するとともに流路部14の流路において冷媒Cと熱的に接続する熱伝導部16と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動する電気モータの電力を制御するパワーデバイスと、
前記パワーデバイスと熱的に接続するように前記パワーデバイスの第1面の側に配置されたヒートシンクと、
前記ヒートシンクに冷媒を流通させる流路を形成する流路部と、
熱伝導性を有する材料により形成されていて、前記パワーデバイスの前記第1面の側とは反対の第2面の側を覆うカバーと、
前記カバーと熱的に接続するとともに前記流路部の前記流路において前記冷媒と熱的に接続する熱伝導部と、
を備える、
車両用モータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記電気モータの作動を制御する回路基板をさらに備え、
前記回路基板は、前記パワーデバイスの前記第1面から前記第2面に向かう第1方向に見て前記パワーデバイスと少なくとも一部が重なるように配置されているとともに、前記カバーよりも前記第1方向の側に配置されている、
請求項1に記載の車両用モータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記回路基板よりも前記第1方向の側から前記回路基板及び前記カバーを覆う筐体を備える、
請求項2に記載の車両用モータ駆動制御装置。
【請求項4】
熱伝導性を有する材料により形成されていて前記カバーを前記熱伝導部に取り付ける取付部材を備える、
請求項1に記載の車両用モータ駆動制御装置。
【請求項5】
前記熱伝導部は、前記流路部の内壁から前記流路に突出しているフィンを有する、
請求項1に記載の車両用モータ駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用モータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、駆動用や制御用などのさまざまな用途のために電子部品が搭載されている。
【0003】
なお、車両に搭載される電子部品において、例えば、ヒートシンクなどの金属部材や冷媒を用いて放熱を行う技術が知られている(例えば、特許文献1から3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-294806号公報
【特許文献2】特開2009-206191号公報
【特許文献3】国際公開第2012/029165号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車において、動力源の電動化により搭載される電子部品が増加するのに伴い、電子部品の放熱に対する要求も高まっている。例えば、動力源が電動化されている自動車には、PCU(Power Control Unit)とも称される、駆動用モータを制御する駆動制御装置が搭載されている。PCUには、筐体の内部に、直流電流と交流電流を相互に変換するインバータの他に、インバータを含むPCUの動作を制御する回路を構成する制御回路基板に各種の電子部品が搭載されている。
【0006】
ところで、PCUは、制御回路基板を保護するために、筐体が防塵構造を採用している。このため、PCUにおいて、筐体の内部で発生した熱を外部に放出しにくい。一方で、PCUにおいて、インバータを構成するパワーデバイスとも称される半導体装置は、発熱量が大きい。従って、特にこのパワーデバイスにおける放熱についてさらなる改善が求められている。
【0007】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、パワーデバイスの放熱を改善することができる車両用モータ駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用モータ駆動制御装置は、車両を駆動する電気モータの電力を制御するパワーデバイスと、前記パワーデバイスと熱的に接続するように前記パワーデバイスの第1の面の側に配置されたヒートシンクと、前記ヒートシンクに冷媒を流通させる流路を形成する流路部と、熱伝導性を有する材料により形成されていて、前記パワーデバイスの前記第1の面の側とは反対の第2の面の側を覆うカバーと、前記カバーと熱的に接続するとともに前記流路部の前記流路において前記冷媒と熱的に接続する熱伝導部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る車両用モータ駆動制御装置において、前記電気モータの作動を制御する回路基板をさらに備え、前記回路基板は、前記パワーデバイスの前記第1面から前記第2面に向かう第1方向に見て前記パワーデバイスと少なくとも一部が重なるように配置されているとともに、前記カバーよりも前記第1方向の側に配置されている。
【0010】
本発明の一態様に係る車両用モータ駆動制御装置において、前記回路基板よりも前記第1方向から前記回路基板及び前記カバーを覆う筐体を備える。
【0011】
本発明の一態様に係る車両用モータ駆動制御装置において、熱伝導性を有する材料により形成されていて前記カバーを前記熱伝導部に取り付ける取付部材を備える。
【0012】
本発明の一態様に係る車両用モータ駆動制御装置において、前記熱伝導部は、前記流路部の内壁から前記流路に突出しているフィンを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パワーデバイスの放熱を改善することができる車両用モータ駆動制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置の模式的な断面図である。
図2】実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置における筐体を外した状態を示す断面図である。
図3】実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置における筐体を外した状態を示す斜視図である。
図4】実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置において流路部、カバー、熱伝導部、及び取付部材を中心に拡大して示す断面斜視図である。
図5】実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置において上側流路部と熱伝導部を中心に拡大して示す断面斜視図である。
図6】実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置においてカバー、熱伝導部、及び取付部材を中心に拡大して示す斜視図である。
図7】実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置における熱伝導部を示す斜視図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置1の模式的な断面図である。図2は車両用モータ駆動制御装置1における筐体11を外した状態を示す断面図である。図3は、車両用モータ駆動制御装置における筐体11を外した状態を示す斜視図である。
【0017】
以下、説明の便宜上、図1から図3に示す車両用モータ駆動制御装置1における長手方向をx軸方向(左右方向、幅方向)、短手方向をy軸方向(前後方向、奥行方向)、x軸及びy軸の双方と垂直な方向をz軸方向(上下方向、高さ方向)とする。以下の説明において、各構成要素の位置関係や方向を右側、左側、前側、後側、上側、下側として説明するときは、あくまで図1から図4など図面における位置関係や方向を示し、実際の車両用モータ駆動制御装置1における位置関係や方向を限定するものではない。
【0018】
図1から図3に示すように、車両用モータ駆動制御装置1は、主に、筐体11、パワーデバイス12、ヒートシンク13、流路部14、カバー15、熱伝導部16、取付部材17、及び、回路基板18を備える。以下、本実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置1について具体的に説明する。
【0019】
パワーデバイス12は、車両を駆動する電気モータの電力を制御する。パワーデバイス12は、例えば、半導体材料としてSi(シリコン)やSiC(シリコンカーバイド)を用いた半導体装置である。パワーデバイス12は、具体的には、直流電流と交流電流を相互に変換するインバータとして動作する。本実施の形態において、パワーデバイス12は、上下方向における下側の面(下側面121)を第1面とし、上側の面(上側面122)を第2面とする。また、本実施の形態において、下側面121から上側面122に向かう方向、すなわち、上方向を、第1方向とする。
【0020】
ヒートシンク13は、基板部131とフィン132とを有する。図1及び図2に示すように、ヒートシンク13において、基板部131の一方の面である上側面133が、パワーデバイス12における第1面である下側面121に取り付けられている。ヒートシンク13において、フィン132は、冷却対象であるパワーデバイス12と接する面とは反対側の面、すなわち、基板部131の他方の面である下側面134に設けられている。フィン132の数は、1つまたは任意の複数である。フィン132は、基板部131から離れる方向に立つように設けられている。フィン132の形状は、図1などに示すものに限定されない。ヒートシンク13は、パワーデバイス12に取り付けられることにより、パワーデバイス12と熱的に接続している。ヒートシンク13は、例えば、アルミニウム合金などの熱伝導性に優れた材料により形成されている。ヒートシンク13の上側面133とパワーデバイス12の下側面121との間には、スペーサ135などの部材が設けられていてもよい。ヒートシンク13の上側面133とパワーデバイス12の下側面121との間には、例えば、熱伝導シートや熱伝導グリスなど、熱伝導性を高めるための部材が設けられていてもよい。
【0021】
流路部14は、上側流路部142と、下側流路部143とにより構成される。流路部14は、上側流路部142の下側の面である上側内壁141と、下側流路部143の上側の面である下側内壁144とが向かい合って相互間に空間を形成する。上側内壁141と下側内壁144とに形成される空間は、LLC(Long Life Coolant)などの冷媒Cをヒートシンク13に流通させる流路として機能する。上側流路部142は、上側にパワーデバイス12、下側にヒートシンク13を設けることができるように構成される。上側流路部142には、熱伝導部取付部147が設けられている。熱伝導部取付部147は、熱伝導部16を取り付けた際に、上側及び下側に熱伝導部16が露出するように、上側流路部142を上下方向に貫通する孔状に形成されている。また、熱伝導部取付部147は、流路部14に対する熱伝導部16の位置決めを行うために、例えば、孔状の部分の内周面が熱伝導部16の外周面165に対応した形状になっている。なお、上側流路部142における熱伝導部取付部147の形状は上述したものに限定されない。
【0022】
下側流路部143は、下側内壁144及びシール溝146が設けられている。下側内壁144は、下側流路部143を上側流路部142と組み付けた際に流路を形成するための凹部形状に形成されている。シール溝146は、上側流路部142と下側流路部143との接合部の密封を図るシール部材145を配置するための凹部である。流路部14において、上側流路部142、流路、下側内壁144、及び、シール溝146は、上述した説明の構成に限定されない。例えば、シール溝146は、上側流路部142と下側流路部143とのいずれか一方に設けられていればよい。
【0023】
カバー15は、カバー本体151、接合部152、孔部153を有する。カバー15は、熱伝導性を有する材料、例えば、アルミニウム合金などの熱伝導性に優れた金属材料により形成されている。カバー15は、ヒートシンク13が設けられているパワーデバイス12の第1面である下側面121の側とは反対の第2面である上側面122の側からパワーデバイス12を覆い、カバー本体151の下側(内側)にあるパワーデバイス12から受熱する。
【0024】
カバー本体151は、上側からパワーデバイス12を覆うことができるように、下側が開放されている箱型の形状を有している。カバー本体151の形状は、箱型に限定されず、パワーデバイス12を上側から覆ってパワーデバイス12の上側からの放熱を受熱することができる形状であればよい。
【0025】
図4は、車両用モータ駆動制御装置1における流路部14、カバー15、熱伝導部16、及び取付部材17を中心に拡大して示す断面斜視図である。
【0026】
図4に示すように、接合部152は、カバー15と熱伝導部16とを接合するために設けられている。接合部152は、カバー本体151の側面の端部に設けられている。接合部152は、流路部14の形状に対応した形状、例えば、幅方向及び奥行方向に平行または略平行な面を有する流路部14と同様に、幅方向及び奥行方向に平行または略平行な面を有していればよい。接合部152には、カバー15を流路部14に取り付けるための取付部材17を挿通することができるように、接合部152の厚み方向(上下方向)に貫通されている孔部153が設けられている。なお、接合部152は、図1から図3に示すように長手方向に設けられている両方の側面の端部に設けられている例に限定されず、短手方向の側面の端部に設けられていてもよい。
【0027】
図5は、車両用モータ駆動制御装置1における上側流路部142と熱伝導部16とを中心に拡大して示す断面斜視図である。図6は、車両用モータ駆動制御装置1におけるカバー15、熱伝導部16、及び取付部材17を中心に拡大して示す斜視図である。図7は、車両用モータ駆動制御装置1における熱伝導部16を示す斜視図である。図5は、上側流路部142と熱伝導部16の構成を説明するために、図1図4図6図7と上下の向きを反転させているが、上下方向などの向きは他の図面と同様に説明する。
【0028】
図4から図7に示すように、熱伝導部16は、熱伝導部本体161と、フィン162と、基台部163と、雌ネジ部164とを有する。熱伝導部本体161は、外周面165が上側流路部142に設けられている熱伝導部取付部147に接合するように形成されている。外周面165と熱伝導部取付部147との間には、接着剤166やシーリング材などが充填されていてもよく、O-リングや樹脂製のガスケットなどを用いてシールがされるようにしたのでもよい。熱伝導部本体161は、上側にカバー15の孔部153に挿通された取付部材17の雄ネジ部171を螺合するための雌ネジ部164が設けられている。熱伝導部本体161の下側には、フィン162が設けられている。
【0029】
フィン162は、熱伝導部本体161から下側に向かって突出している、例えば、1本または複数本のピン状の部材である。フィン162は、熱伝導部16を流路部14に取り付けた状態において、流路部14の上側内壁141から流路に向かって突出している。熱伝導部本体161の上側の面にカバー15の接合部152が取り付けられることにより、熱伝導部16は、カバー15と熱的に接続する。熱伝導部本体161にフィン162が設けられていることにより、熱伝導部16は、流路部14に取り付けた状態において、流路部14の内部において冷媒Cに対してより効率よく熱的に接続する。なお、熱伝導部16におけるフィン162の形状や本数は、本実施の形態に示したものに限定されない。
【0030】
取付部材17は、例えば、雄ネジ部171とネジ頭172とを有するネジ部材である。取付部材17には、ネジ頭172とカバー15の接合部152との間に介在させるワッシャ173を含んでいてもよい。取付部材17は、金属などの熱伝導性を有する材料により形成されている。取付部材17は、雄ネジ部171を熱伝導部本体161の雌ネジ部164に螺合させて締結することで、カバー15と熱伝導部16とを固定する。
【0031】
回路基板18は、パワーデバイス12の下側面121から上側面122に向かう第1方向側に配置されている。換言すれば、回路基板18は、パワーデバイス12の上下方向において上側に配置されている。回路基板18は、上下方向に見てパワーデバイス12と少なくとも一部が重なるように配置されている。回路基板18には、回路が形成されている基板181に複数の電子部品182が取り付けられることにより、電気モータの作動を制御するPCUを構成する。
【0032】
筐体11は、内側筐体111と外側筐体112とにより構成される。筐体11は、回路基板18におけるパワーデバイス12の上側面122と面する側とは反対側、すなわち、上側から回路基板18、カバー15及びパワーデバイス12を覆う。内側筐体111及び外側筐体112は、いずれも、上側から回路基板18、カバー15及びパワーデバイス12を覆うことができるように、下側が開放されている箱型の形状を有している。筐体11は、回路基板18に搭載される電子部品182やパワーデバイス12などを保護するために、上側流路部142との接合箇所が密封されている防塵構造を採用している。内側筐体111及び外側筐体112の形状は、箱型に限定されず、回路基板18及びカバー15に覆われているパワーデバイス12を上側から覆うことができればよい。また、車両用モータ駆動制御装置1において、筐体11は、内側筐体111及び外側筐体112の2つの部材により構成される例に限定されず、例えば、1つの筐体により回路基板18、カバー15及びパワーデバイス12を覆ってもよく、アルミダイキャスト構造等の筐体を用いてもよい。
【0033】
次に、以上説明した車両用モータ駆動制御装置1の作用について説明する。
【0034】
図1に示すように、車両用モータ駆動制御装置1において、車両を駆動する電気モータの電力を制御するパワーデバイス12は、第1面、具体的には下側面121がヒートシンク13と熱的に接続するように配置されている。また、パワーデバイス12は、熱伝導性を有する材料により形成されているカバー15により、第2面、具体的には上側面122が覆われている。カバー15は、熱伝導部16と熱的に接続している。熱伝導部16は、ヒートシンク13を冷却する冷媒Cが流れる流路部14の流路において冷媒Cと熱的に接続する。
【0035】
以上のように構成されることにより、車両用モータ駆動制御装置1は、発熱量が大きい半導体装置であるパワーデバイス12からの発熱を、パワーデバイス12の下側面121からヒートシンク13に伝達する矢印H1で示す経路に加えて、パワーデバイス12の上側面122からカバー15に伝達する矢印H2で示す経路からも放熱することができる。熱伝導部16に伝わった熱は、流路部14の流路を流れる冷媒Cに放熱することができる。
【0036】
従って、車両用モータ駆動制御装置1によれば、パワーデバイス12の放熱を改善することができる。特に、パワーデバイス12に用いられる半導体材料が、SiCである場合に、Siなど他の半導体材料と比較して発熱する温度が高いため、放熱の改善による効果がより期待できる。SiCを用いた半導体装置は、高温作動が可能であるためSiを用いた半導体装置と比較して高温になり放熱温度も高くなる。車両用モータ駆動制御装置1は、カバー15により筐体11内への放熱を抑えることができるため、パワーデバイス12に用いられる半導体の高温作動による放熱影響を気にせずにパワーデバイス12の能力を限界まで発揮させることができる。
【0037】
車両用モータ駆動制御装置1は、電気モータの作動を制御する回路基板18をさらに備える。回路基板18は、パワーデバイス12の下側面121から上側面122に向かう第1方向に見てパワーデバイス12と少なくとも一部が重なるように配置されている。また、回路基板18は、カバー15よりも第1方向の側(上側)に配置されている。
【0038】
以上のように構成されることにより、車両用モータ駆動制御装置1は、パワーデバイス12から上側への放熱を、カバー15が受ける。このため、車両用モータ駆動制御装置1によれば、回路基板18に対するパワーデバイス12からの放熱の影響を低減することができる。
【0039】
車両用モータ駆動制御装置1は、回路基板18よりも第1方向の側(上側)から回路基板18、カバー15及びパワーデバイス12を覆う筐体11を備える。車両用モータ駆動制御装置1は、回路基板18に搭載される電子部品182やパワーデバイス12などを保護するために、筐体11が防塵構造を採用している。このような防塵構造を有している車両用モータ駆動制御装置1において、カバー15を備えることにより、筐体11の内部で発生した熱を効率的に放出することができる。
【0040】
車両用モータ駆動制御装置1において、取付部材17は、熱伝導性を有する材料により形成されていて、カバー15を熱伝導部16に固定する。車両用モータ駆動制御装置1は、取付部材17を有することにより、カバー15を熱伝導部16に固定するとともに、カバー15からの熱をより確実に熱伝導部16に伝えて冷媒Cに効率的に放熱することができる。なお、カバー15の熱伝導部16への固定は、取付部材17による螺合に替えて溶接などの接合方法を用いることもできる。
【0041】
車両用モータ駆動制御装置1において、熱伝導部16は、熱伝導部本体161における、流路部14の内壁である下側内壁144の側の面から流路に突出しているフィン162を有する。フィン162を有することにより、熱伝導部16は、冷媒Cに対してより効率よく放熱することができる。
【0042】
以上、説明したように、実施の形態に係る内燃機関の車両用モータ駆動制御装置1によれば、パワーデバイス12の放熱を改善することができる。
【0043】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下、上述の第1の実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置1と同一の又は類似する機能を有する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0044】
図8は、第2の実施の形態に係る車両用モータ駆動制御装置1Bの模式的な断面図である。図8に示すように、車両用モータ駆動制御装置1Bは、ヒートシンク13B、流路部14B、カバー15B、熱伝導部16B、及び、取付部材17Bの構成が、先に説明した車両用モータ駆動制御装置1と異なる。
【0045】
ヒートシンク13Bは、基板部131Bがヒートシンク13の基板部131と比較して車両用モータ駆動制御装置1Bの長手方向外側に長くなっている。ヒートシンク13Bの基板部131Bにおける外周側の部分には、カバー15Bの接合部152Bが接合されている。つまり、ヒートシンク13Bの基板部131Bにおける外周側の部分は、カバー15Bと熱的に接続している熱伝導部16Bとして機能する。
【0046】
流路部14Bにおいて、上側流路部142Bは、下側流路部143Bと組み付けた際に流路を形成することができるように、上側流路部142Bが凹部形状に形成されている。一方、下側流路部143Bは、上側流路部142Bと組み付けた際に流路を形成することができるように、板状または略板状に形成されている。
【0047】
カバー15Bは、カバー本体151B及び接合部152Bを有する点がカバー15と共通している。カバー本体151Bは、カバー本体151と同様に、上側からパワーデバイス12の上側面122を覆うことができるように、下側が開放されている箱型の形状を有している。接合部152Bは、熱伝導部16Bに接合しているが、カバー15と異なり孔部153を有していない。接合部152Bは、締結部材である取付部材17を用いて熱伝導部16に取り付けられる接合部152と異なり、樹脂モールド、接着剤、あるいはロウ付けなどの適宜な材料を取付部材17Bとして用いて、熱伝導部16Bに接合している。
【0048】
次に、以上説明した車両用モータ駆動制御装置1Bの作用について説明する。
【0049】
図8に示すように、車両用モータ駆動制御装置1Bは、先に説明した車両用モータ駆動制御装置1と同様に、パワーデバイス12からの発熱を、パワーデバイス12の下側面121からヒートシンク13Bに伝達する矢印H1で示す経路に加えて、パワーデバイス12の上側面122からカバー15Bに伝達する矢印H2で示す経路からも放熱することができる。熱伝導部16Bに伝わった熱は、流路部14Bの内部を流れる冷媒Cに放熱することができる。
【0050】
従って、車両用モータ駆動制御装置1Bによれば、車両用モータ駆動制御装置1と同様に、パワーデバイス12の放熱を改善することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0052】
例えば、以上説明した車両用モータ駆動制御装置1,1Bにおいて、冷媒CがLLCである例について説明したが、冷媒Cの種類はLLCに限定されない。
【0053】
例えば、以上説明した車両用モータ駆動制御装置1,1Bにおいて、パワーデバイス12に用いられる半導体材料はSiとSiCである例について説明したが、半導体材料の種類は以上の例に限定されない。
【0054】
例えば、以上説明した車両用モータ駆動制御装置1,1Bにおいて、パワーデバイス12がインバータを構成する例について説明したが、パワーデバイスにより構成される機能は以上の例に限定されない。
【符号の説明】
【0055】
1,1B…車両用モータ駆動制御装置、11…筐体、12…パワーデバイス、13,13B…ヒートシンク、14,14B…流路部、15,15B…カバー、16,16B…熱伝導部、17,17B…取付部材、18…回路基板、111…内側筐体、112…外側筐体、121…下側面、122…上側面、131,131B…基板部、132…フィン、133…上側面、134…下側面、135…スペーサ、141…上側内壁、142,142B…上側流路部、143,143B…下側流路部、144…下側内壁、145…シール部材、146…シール溝、147…熱伝導部取付部、151,151B…カバー本体、152,152B…接合部、153…孔部、161…熱伝導部本体、162…フィン、163…基台部、164…雌ネジ部、165…外周面、166…接着剤、171…雄ネジ部、172…ネジ頭、173…ワッシャ、181…基板、182…電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8