(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093395
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】蒸気タービン
(51)【国際特許分類】
F01D 1/16 20060101AFI20240702BHJP
F01D 5/06 20060101ALI20240702BHJP
F01D 5/14 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F01D1/16
F01D5/06
F01D5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209756
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】野上 智晃
(72)【発明者】
【氏名】大内 智貴
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202AA07
3G202BB01
(57)【要約】
【課題】平行翼及び三次元翼を混在させつつ、効率を向上する。
【解決手段】蒸気タービンは、ロータ軸と、複数の動翼列と、ケーシングと、複数の静翼列と、を備える。複数の動翼列は、主流路における上流領域に配置されている複数の上流動翼列と、主流路において上流領域に対して下流領域に配置されている複数の下流動翼列と、を備え、上流動翼列は、複数の平行翼を有し、下流動翼列は、複数の三次元翼を有し、静翼列は、周方向に間隔をあけて配置された複数の静翼を有し、ロータ軸の外周面は、下流領域における三次元翼が配置される領域で、軸線と平行な断面において、軸線と平行、又は軸線に対して軸方向の第二側に向かって径方向の外側に漸次拡径するよう形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心として回転可能するロータ軸と、
前記軸線を基準とする径方向における前記ロータ軸の外側に固定され、前記軸線の延びる軸方向に間隔をあけて複数配置された動翼列と、
前記ロータ軸及び複数の前記動翼列を前記径方向の外側から覆い、内部に蒸気が流通可能な主流路が形成されたケーシングと、
前記径方向における前記ケーシングの内側に固定され、複数の前記動翼列のそれぞれに対して前記軸方向の第一側に配置された複数の静翼列と、を備え、
複数の前記動翼列は、
前記主流路における上流領域に配置されている複数の上流動翼列と、
前記主流路において前記上流領域に対して前記軸方向の第二側に位置する下流領域に配置されている複数の下流動翼列と、を備え、
前記上流動翼列は、前記軸線回りの周方向に間隔をあけて配置された複数の平行翼を有し、
前記下流動翼列は、前記周方向に間隔をあけて配置された複数の三次元翼を有し、
前記静翼列は、前記周方向に間隔をあけて配置された複数の静翼を有し、
前記ロータ軸において前記径方向の外側を向く外周面は、前記下流領域における前記三次元翼が配置される領域で、前記軸線と平行な断面において、前記軸線と平行、又は前記軸線に対して前記軸方向の第二側に向かって前記径方向の外側に漸次拡径するよう形成されている蒸気タービン。
【請求項2】
前記下流領域では、複数の前記三次元翼の前記径方向の外側の三次元翼先端部の位置が、前記軸方向の第一側に位置する前記下流動翼列から前記軸方向の第二側に位置する前記下流動翼列に向かって、前記径方向の外側に拡がるように形成され、
前記軸方向で最も第一側に位置する前記下流動翼列を含む二つの最も近接した一対の前記下流動翼列における前記三次元翼先端部の位置の前記径方向の外側への変化量が、前記軸方向で最も第二側に位置する前記下流動翼列を含む最も近接した一対の前記下流動翼列における前記三次元翼先端部の位置の前記径方向の外側への変化量よりも大きい請求項1に記載の蒸気タービン。
【請求項3】
前記軸方向で最も第二側に位置する前記下流動翼列では、前記三次元翼先端部と、前記ケーシングとの間の前記径方向におけるクリアランスが、前記三次元翼の前記径方向における翼長に対し、1.5~2.5%となるように形成されている請求項2に記載の蒸気タービン。
【請求項4】
前記軸方向で最も第二側に位置する前記静翼列では、前記静翼の前記径方向の内側の静翼先端部におけるスロート幅、及び前記静翼の前記径方向の外側の静翼基端部におけるスロート幅に対し、前記静翼の前記径方向の中間部におけるスロート幅が大きくなるように形成されている請求項1又は2に記載の蒸気タービン。
【請求項5】
前記軸方向で最も第二側に位置する前記下流動翼列において、前記三次元翼は、遷音速翼型を有している請求項1又は2に記載の蒸気タービン。
【請求項6】
前記ケーシングは、前記軸方向の最も第二側に配置された前記下流動翼列から流出した蒸気を前記ケーシングの外部に案内するディフューザを備え、
前記ディフューザは、前記軸方向の第一側から第二側に向かって前記径方向の外側に延びるガイド部材を有し、
前記ガイド部材における前記軸方向の長さが、前記軸方向で最も第二側に位置する前記下流動翼列の前記三次元翼における前記径方向の長さに対し、85%~120%となるように形成されている請求項1又は2に記載の蒸気タービン。
【請求項7】
前記平行翼は、衝動翼であり、前記三次元翼は、反動翼である請求項1又は2に記載の蒸気タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、ケーシング内に配置されたロータ(タービンロータ)と、ロータの径方向外側に備えられた動翼列と、ケーシングの径方向内側に備えられたダイアフラムと、ダイアフラムの径方向内側に支持された静翼列と、を備えている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような蒸気タービンでは、上流側の動翼列に平行翼を有する衝動段を形成し、下流側の動翼列に三次元翼を有する反動段を形成することで効率を向上した構造がある。一般に反動翼は効率向上が図れるものの、軸スラスト負荷が大きいこと、動翼のリークが大きくなることを考慮した設計が必要であり複雑な構造が必要となる。一方で、衝動翼は反動翼ほどの高効率化を図ることは難しいが、簡素な構造をとることが可能である。そのため、このような蒸気タービンでは、設計の容易性と効率の向上を図るために、平行翼(衝動翼)及び三次元翼(反動翼)を混在させた状態で、効率の更なる向上が常に要求されている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、平行翼及び三次元翼を混在させつつ、効率を向上することが可能な蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る蒸気タービンは、軸線を中心として回転可能するロータ軸と、前記軸線を基準とする径方向における前記ロータ軸の外側に固定され、前記軸線の延びる軸方向に間隔をあけて複数配置された動翼列と、前記ロータ軸及び複数の前記動翼列を前記径方向の外側から覆い、内部に蒸気が流通可能な主流路が形成されたケーシングと、前記径方向における前記ケーシングの内側に固定され、複数の前記動翼列のそれぞれに対して前記軸方向の第一側に配置された複数の静翼列と、を備え、複数の前記動翼列は、前記主流路における上流領域に配置されている複数の上流動翼列と、前記主流路において前記上流領域に対して前記軸方向の第二側に位置する下流領域に配置されている複数の下流動翼列と、を備え、前記上流動翼列は、前記軸線回りの周方向に間隔をあけて配置された複数の平行翼を有し、前記下流動翼列は、前記周方向に間隔をあけて配置された複数の三次元翼を有し、前記静翼列は、前記周方向に間隔をあけて配置された複数の静翼を有し、前記ロータ軸において前記径方向の外側を向く外周面は、前記下流領域における前記三次元翼が配置される領域で、前記軸線と平行な断面において、前記軸線と平行、又は前記軸線に対して前記軸方向の第二側に向かって前記径方向の外側に漸次拡径するよう形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の蒸気タービンによれば、平行翼(衝動翼)及び三次元翼(反動翼)を混在させつつ、効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る蒸気タービンの全体構成を示す模式図である。
【
図2】上記蒸気タービンの動翼列及び静翼列を示す断面図である。
【
図3】上記蒸気タービンの軸方向で最も第二側に位置する静翼列におけるスロート幅の変化を示す図である。
【
図4】上記蒸気タービンに備えられたディフューザ周辺の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本開示による蒸気タービンを実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0010】
(蒸気タービンの構成)
図1に示すように、本実施形態の蒸気タービン1は、軸線Arを中心として回転するロータ20と、ロータ20を回転可能に覆うケーシング10と、複数の静翼列41とを有している。
【0011】
なお、以下の説明の都合上、軸線Arが延びている方向を軸方向Daとする。軸方向Daの第一側を上流側(一方側)Dau、軸方向Daの第二側を下流側(他方側)Dadとする。また、軸線Arを基準としたロータ20における径方向を単に径方向Drとする。この径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向Drの内側Dri、この径方向Drで径方向Drの内側Driとは反対側を径方向Drの外側Droとする。また、軸線Arを中心としたロータ20の周方向を単に周方向Dcとする。
【0012】
図1及び
図2に示すように、ロータ20は、ロータ軸21と、複数の動翼列31と、を有している。
【0013】
ロータ軸21は、ケーシング10に対して、軸線Arを中心として回転する。ロータ軸21は、軸芯部22と、複数のディスク部23と、を有する。軸芯部22は、軸線Arを中心として円柱状に形成されて軸方向Daに延びている。ディスク部23は、軸芯部22から径方向Drの外側Droに広がっている。ディスク部23は、軸方向Daに互いに間隔をあけて並んでいる。ディスク部23は、複数の動翼列31毎に配置されている。
【0014】
動翼列31は、径方向Drにおけるロータ軸21の外側に固定されている。具体的には、
図2に示すように、動翼列31は、径方向Drにおいてロータ軸21の外周部分であるディスク部23の外側Droに固定されている。動翼列31は、ロータ軸21の軸方向Daに間隔をあけて複数配置されている。本実施形態の場合、動翼列31は、例えば、軸方向Daで最も上流側Dauに位置する動翼列31Aから、軸方向Daで最も下流側Dadに位置する動翼列31Gまでの、計7つが配置されている。各動翼列31は、周方向Dcに並ぶ複数の動翼32を有している。複数の動翼32は、それぞれ、ディスク部23に取り付けられている。各動翼32は、プラットフォーム32aと、翼本体32bと、シュラウド32cと、を有する。
【0015】
プラットフォーム32aは、ディスク部23に対して径方向Drの外側Droに配置されている。プラットフォーム32aは、周方向Dcに延びている。複数の動翼32のプラットフォーム32aは、周方向Dcに並ぶことで全体として軸線Arを中心とする円筒状を形成している。
【0016】
翼本体32bは、プラットフォーム32aから径方向Drの外側Droに延びている。翼本体32bは、プラットフォーム32a及びシュラウド32cと一体に形成されている。翼本体32bは、後述する主流路15内に配置されている。翼本体32bは、径方向Drの外側から見た際に、翼型断面を有している。
【0017】
シュラウド32cは、翼本体32bに対して径方向Drの外側Droの端部に接続されている。つまり、径方向Drにおいて、シュラウド32cは、翼本体32bを挟んでプラットフォーム32aと反対側に配置されている。シュラウド32cは、周方向Dcに延びている。複数の動翼32のシュラウド32cは、周方向Dcに並ぶことで全体として円筒状をなしている。
【0018】
ケーシング10は、ロータ軸21及び複数の動翼列31を径方向Drの外側Droから覆うように形成されている。ケーシング10の内部には、外部から蒸気Sが流入するノズル室11と、ノズル室11からの蒸気Sが流れる流路室12と、流路室12から流れた蒸気Sを排出する排気室13と、が形成されている。ノズル室11と流路室12との間には、複数の動翼列31及び静翼列41のうちで最も上流側Dauの第一段50Aの動翼列31A及び静翼列41Aが配置されている。言い換えると、ケーシング10内は、この最も上流側Dauの動翼列31A及び静翼列41Aにより、ノズル室11と流路室12とに仕切られている。ノズル室11と流路室12と排気室13とによって、高圧の蒸気Sが流通する主流路15が構成されている。
【0019】
主流路15では、高圧の蒸気Sが上流側Dauから下流側Dadに向かって徐々に圧力が低下しながら流れている。主流路15は、ロータ軸21の回りに環状をなしている。主流路15は、複数の動翼列31及び静翼列41に跨って軸方向Daに延在している。主流路15は、後述する静翼42が配置されている環状の空間によって一部が形成されている。
【0020】
静翼列41は、径方向Drにおけるケーシング10の内側Driに固定されている。た複数の静翼列41を備えている。静翼列41は、軸方向Daに間隔を空けて複数配置されている。本実施形態の静翼列41は、例えば、軸方向Daで最も上流側Dauに位置する静翼列41Aから、軸方向Daで最も下流側Dadに位置する静翼列41Gまでの、計7つが配置されている。各静翼列41は、それぞれ対応する一の動翼列31に対して上流側Dauに並んで配置されている。
【0021】
静翼列41は、静翼42と、外側リング43と、内側リング46と、を有する。静翼42は、周方向Dcに間隔を開けて複数配置されている。外側リング43は、複数の静翼42に対して径方向Drの外側Droに配置されている。外側リング43は、軸線Arを中心とする環状に形成されている。内側リング46は、複数の静翼42に対して径方向Drの内側Driに配置されている。内側リング46は、軸線Arを中心とする環状に形成されている。すなわち、複数の静翼42は、外側リング43と内側リング46との間に配置されている。静翼42は、外側リング43と内側リング46とに固定されている。
【0022】
動翼列31と、この動翼列31の上流側Dauに並ぶ一つの静翼列41との組毎によって、一つの段50が形成されている。本実施形態の蒸気タービン1は、
図2においては7つの動翼列31のそれぞれに対して静翼列41が配置されている。そのため、7つの段50を備えている。つまり、本実施形態の蒸気タービン1は、上流側Dauから下流側Dadへ順に、第一段50A、第二段50B、第三段50C、第四段50D、第五段50E、第六段50F、及び第七段50Gの動翼列31及び静翼列41を備えている。
【0023】
また、本実施形態の蒸気タービン1では、複数の段50の中で、軸方向Daにおける上流側Dauに配置された第一段50A~第四段50Dが高圧段50xをなしている。また、複数の段50の中で、高圧段50xに対して軸方向Daの下流側Dadに配置された第五段50E~第七段50G(最下流の段から3段)が低圧段50yをなしている。
【0024】
ここで、主流路15における高圧段50xが配置された領域を上流領域P1と称する。また、主流路15において、上流領域P1に対して軸方向Daの下流側Dadに位置し、低圧段50yが配置された領域を下流領域P2と称する。
【0025】
複数の動翼列31は、上流領域P1に配置された複数の上流動翼列31Uと、下流領域P2に配置された複数の下流動翼列31Lと、を備えている。本実施形態では、つまり、複数の上流動翼列31Uは、衝動段であって、高圧段50xの一部を構成している。複数の上流動翼列31Uとして、第一段50Aの動翼列31Aから第四段50Dの動翼列31Dが備えられている。つまり、第一段50Aの動翼列31Aは、複数の上流動翼列31Uの中で、軸方向Daで最も上流側Dauに位置する上流動翼列31Uである。また、第四段50Dの動翼列31Dは、軸方向Daで最も下流側Dadに位置する上流動翼列31Uである。
【0026】
また、複数の下流動翼列31Lは、反動段であって、低圧段50yの一部を構成している。本実施形態では、複数の下流動翼列31Lとして、第五段50Eの動翼列31Eから第七段50Gの動翼列31Gが備えられている。つまり、第五段50Eの動翼列31Eは、複数の下流動翼列31Lの中で、軸方向Daで最も上流側Dauに位置する下流動翼列31Lである。また、第七段50Gの動翼列31Gは、軸方向Daで最も下流側Dadに位置する下流動翼列31Lである。
【0027】
各上流動翼列31Uは、翼本体32bとして、平行翼35を有している。平行翼35は、周方向Dcの一方側を向く翼面(圧力面)と、周方向Dcの他方側を向く翼面(負圧面)との間隔が翼高さ方向(径方向Dr)に一定となるような断面を有する。つまり、平行翼35は、翼断面が翼高さ方向に一定とされている。平行翼35は、いわゆる二次元翼である。上流動翼列31Uの平行翼35は、反動度Rが、例えば、25%以上40%未満の衝動翼である。各上流動翼列31Uでは、平行翼35が周方向Dcに間隔をあけて複数配置されている。
【0028】
ここで、反動度Rについて説明する。反動度Rとは、段50における熱落差に対する段50中の動翼32における熱落差の比である。言い換えると、反動度Rとは、段50あたりの全エンタルピの変化量中で、動翼32での静エンタルピの変化量が占める割合である。
【0029】
したがって、第二段50Bにおける反動度Rは、第二段の静翼列41Bの上流側における蒸気SのエンタルピをH1、第二段の静翼列41Bの下流側かつ第二弾の動翼列31Bの上流側における蒸気SのエンタルピをH2、及び第二段の動翼列31Bの下流側におけるエンタルピをH3とした場合、次の式で表される。
R=(H2-H3)/(H1-H3)
【0030】
なお、反動度Rが0の場合、動翼32での圧力変化がない。一方、反動度Rが0でない場合、動翼32での圧力降下がある一方で動翼32での蒸気Sの流速上昇がある。このため、反動度Rが0でない場合、蒸気Sは動翼32の通過過程で膨張する。この膨張により生じた反動力が動翼32に作用する。反動度Rが0の場合には、蒸気Sの衝動作用のみ動翼32に対する蒸気Sの仕事になるが、反動度Rが0でない場合、蒸気Sの衝動作用の他に反動作用が動翼32に対する蒸気Sの仕事になる。
【0031】
ロータ軸21において径方向Drの外側Droを向く外周面21fは、上流領域P1における動翼32(平行翼35)が配置される領域で、軸線Arと平行な断面において、軸線Arと平行、又は軸線Arに対して軸方向Daの下流側Dadに向かって径方向Drの外側Droに漸次拡径するように形成されている。なお、本実施形態では、外周面21fが、上流領域P1における平行翼35が配置される領域で、軸線Arと平行な断面において、軸線Arと平行に形成されている場合を例示している。
【0032】
ここで、ロータ軸21の外周面21fとは、動翼32や静翼42が接続されている面である。つまり、ロータ軸21の外周面21fは、プラットフォーム32aの内周面と接触するディスク部23の外周面や、内側リング46の外周面である。
【0033】
これにより、上流領域P1では、第一段50Aの動翼列31Aから第四段50Dの動翼列31D(複数の上流動翼列31U)では、平行翼基端部35bは、径方向Drで同じ位置に配置されている。ここで、平行翼基端部35bは、平行翼35において、平行翼35の径方向Drでの内側Driの端部を含む領域であって、ロータ軸21の外周面21fに近い領域である。より具体的には、平行翼基端部35bは、翼長Hb(プラットフォーム32aの内周面からシュラウド32cの先端まで翼高さの全長)に対して、プラットフォーム32aの外周面から30%程度の領域である。
【0034】
また、第一段50Aの動翼列31Aから第四段50Dの動翼列31D(複数の上流動翼列31U)では、軸方向Daの上流側Dauの動翼列31Aの平行翼35から、軸方向Daの下流側Dadの動翼列31Cの平行翼35に向けて、径方向Drにおける動翼32の長さが漸次長くなっている。
【0035】
これにより、複数の上流動翼列31Uでは、平行翼先端部35sは、第一段50Aの動翼列31Aから第四段50Dの動翼列31Dに向かって、径方向Drにおける位置が、漸次外側Droに拡がるように配置されている。ここで、平行翼先端部35sとは、平行翼35において、平行翼35の径方向Drでの外側Droの端部を含む領域であって、ケーシング10の内周面に近い領域である。より具体的には、平行翼先端部35sは、翼長Hbに対して、シュラウド32cの内周面から30%程度の領域である。
【0036】
一方で、下流動翼列31Lは、上流動翼列31Uとは異なり、翼本体32bとして、三次元翼37を有している。三次元翼37は、径方向Drの長さが平行翼35よりも長く形成されている。三次元翼37は、周方向Dcの一方側を向く翼面(圧力面)と、周方向Dcの他方側を向く翼面(負圧面)とが、翼高さ方向(径方向Dr)に進むにしたがって捻じれるように三次元状に湾曲している。つまり、三次元翼37は、翼断面が翼高さ方向に一定ではなく、形状および断面積が変化している。下流動翼列31Lの三次元翼37は、反動度Rが、例えば、45%以上60%以下の反動翼である。
【0037】
また、複数の下流動翼列31Lのうち、少なくとも最終段(第七段50G)の動翼列31Gの三次元翼37は、遷音速翼型を有している。なお、遷音速翼型は、翼面に衝撃波や剥離によって性能を悪化させる超音速流が発生する限界速度が高く、衝撃波の発生による急激な抵抗の増加を起こしにくい翼型である。具体的には、遷音速翼型は、マッハ数(翼体から流出する蒸気Sの流速と音速との比で求まる無次元量)が0.8~1.5程度となる翼型である。本実施形態では、全ての下流動翼列31Lの三次元翼37は、遷音速翼型を有している。
【0038】
ロータ軸21の外周面21fは、下流領域P2における動翼32(三次元翼37)が配置される領域で、軸線Arと平行な断面において、軸線Arと平行、又は軸線Arに対して軸方向Daの下流側Dadに向かって径方向Drの外側Droに漸次拡径するよう形成されている。
【0039】
本実施形態では、外周面21fは、下流領域P2における三次元翼37が配置される領域で、軸線Arと平行な断面において、軸線Arと平行に形成されている。これにより、下流領域P2では、第五段50Eの動翼列31Eから第七段50Gの動翼列31G(複数の下流動翼列31L)において、三次元翼基端部37bは、径方向Drで同じ位置に配置されている。ここで、三次元翼基端部37bは、三次元翼37において、三次元翼37の径方向Drでの内側Driの端部を含む領域であって、ロータ軸21の外周面21fに近い領域である。より具体的には、三次元翼基端部37bは、翼長Hbに対して、プラットフォーム32aの外周面から30%程度の領域である。
【0040】
したがって、本実施形態では、上流領域P1及び下流領域P2を含む主流路15において動翼列31が配置されている全領域で、外周面21fは、軸方向Daの下流側Dadに向かって径方向Drの内側Driに縮小しないように(軸線Arに近づかないように)形成されていない。つまり、第五段50Eの動翼列31Eの三次元翼基端部37bは、複数の下流動翼列31Lの三次元翼基端部37bの中で、最も径方向Drの内側Driに位置している。
【0041】
また、第五段50Eの動翼列31Eから第七段50Gの動翼列31G(複数の下流動翼列31L)では、軸方向Daの上流側Dauの動翼列31Fの三次元翼37から、軸方向Daの下流側Dadの動翼列31Gの三次元翼37に向けて、径方向Drにおける動翼32の長さが漸次長くなっている。
【0042】
これにより、複数の下流動翼列31Lでは、三次元翼先端部37sは、第五段50Eの動翼列31Eから第七段50Gの動翼列31Gに向かって、径方向Drにおける位置が、漸次外側Droに拡がるように配置されている。ここで、三次元翼先端部37sとは、三次元翼37において、三次元翼37の径方向Drでの外側Droの端部を含む領域であって、ケーシング10の内周面に近い領域である。より具体的には、三次元翼先端部37sは、翼長Hbに対して、シュラウド32cを含む三次元翼37の先端から30%程度の領域である。
【0043】
さらに、第五段50Eの動翼列31Eと第六段50Fの動翼列31Fとにおける三次元翼先端部37sの位置の径方向Drの外側Droへの変化量をΔS1とする。また、第六段50Fの動翼列31Fと第七段50Gの動翼列31Gとにおける三次元翼先端部37sの位置の径方向Drの外側Droへの変化量をΔS2とする。この場合、本実施形態では、変化量ΔS2よりも変化量ΔS1が大きい(ΔS1>ΔS2)となることが好ましい。
【0044】
ここで、第五段50Eの動翼列31E及び第六段50Fの動翼列31Fは、複数の下流動翼列31Lの中で、軸方向Daで最も上流側Dauに位置する下流動翼列31L(第五段50Eの動翼列31E)を含む二つの最も近接した一対の下流動翼列31Lである。また、第六段50Fの動翼列31F及び第七段50Gの動翼列31Gは、複数の下流動翼列31Lの中で、軸方向Daで最も下流側Dadに位置する下流動翼列31L(第七段50Gの動翼列31G)を含む最も近接した一対の下流動翼列31Lである。
【0045】
また、軸方向Daで最も下流側Dadに位置する動翼列31である第七段50Gの動翼列31Gでは、三次元翼先端部37sにおけるスロート幅が、三次元翼基端部37bにおけるスロート幅、及び三次元翼37の径方向Drの三次元翼中間部37cにおけるスロート幅に対し、小さくなるように形成されている。ここで、三次元翼中間部37cは、三次元翼37において、径方向Drで三次元翼先端部37sと三次元翼基端部37bとに挟まれた領域である。より具体的には、三次元翼中間部37cは、翼長Hbに対して、中央部分を含む40%程度の領域である。また、スロート幅とは、周方向Dc一対の翼体(翼本体32bや静翼42)の間に形成される流路の中で、最も流路断面積が小さくなる位置での流路の幅である。
【0046】
また、本実施形態では、三次元翼37の径方向Drの三次元翼中間部37cのスロート幅は、三次元翼基端部37bにおけるスロート幅よりも大きくなるように形成されている。つまり、第七段50Gの動翼列31Gにおいて、三次元翼37のスロート幅は、最も小さい三次元翼先端部37sから、最も広い径方向Drの三次元翼中間部37cに向かって広がった後、三次元翼基端部37bで再び狭くなっている。
【0047】
また、第七段50Gの動翼列31Gでは、三次元翼先端部37sと、ケーシング10との間の径方向DrにおけるクリアランスCが、三次元翼37の径方向Drにおける翼長Hbに対し、1.5~2.5%となるように形成されている。
【0048】
また、軸方向Daで最も下流側Dadに位置する静翼列41である第七段50Gの静翼列41Gでは、
図3に示すように、静翼先端部42sにおけるスロート幅、及び静翼基端部42bにおけるスロート幅に対し、静翼中間部(中間部)42cにおけるスロート幅が大きくなるように形成されている。
【0049】
ここで、
図2に示すように、静翼先端部42sは、静翼42において、静翼42の径方向Drでの外側Droの端部を含む領域であって、外側リング43の内周面に近い領域である。より具体的には、静翼先端部42sは、静翼42の翼高さの全長(内側リング46の外周面から外側リング43の内周面までの径方向Drの長さ)に対して、外側リング43の内周面から30%程度の領域である。
【0050】
また、静翼基端部42bは、静翼42において、静翼42の径方向Drでの内側Driの端部を含む領域であって、内側リング46の外周面に近い領域である。より具体的には、静翼基端部42bは、静翼42の翼高さの全長に対して、内側リング46の外周面から30%程度の領域である。
【0051】
また、静翼中間部42cは、静翼42において、径方向Drで静翼先端部42sと静翼基端部42bとに挟まれた領域である。より具体的には、静翼中間部42cは、静翼42の翼高さの全長に対して、中央部分を含む40%程度の領域である。
【0052】
また、本実施形態では、静翼先端部42sにおけるスロート幅、及び静翼基端部42bにおけるスロート幅は、実質的に同じになるように形成されている。つまり第七段50Gの静翼列41Gにおいて、静翼42のスロート幅は、静翼先端部42sから、最も広い径方向Drの静翼中間部42cに向かって次第に広がった後、静翼先端部42sと同程度となっている静翼基端部42bで再び狭くなっている。
【0053】
さらに、
図4に示すように、本実施形態のケーシング10は、排気ケーシング51と、ディフューザ70とをさらに備えている。
【0054】
排気ケーシング51は、ケーシング10の外部と繋がっている。排気ケーシング51は、主流路15を流れてきた蒸気Sをケーシング10の外部に排出する。排気ケーシング51は、ケーシング10において、軸方向Daの最も第二側Dadに配置されている。排気ケーシング51の下部には、下方に向かって開口する排気室13が形成されている。排気ケーシング51は、後述するディフューザ70によって静圧回復が図られた蒸気Sを外部に排気する。
【0055】
ディフューザ70は、第七段50Gの動翼列31Gから流出した蒸気Sを、排気室13を介してケーシング10の外部に案内する。ディフューザ70は、第七段50Gの動翼列31Gと、ケーシング10において排気室13を形成する排気ケーシング51との間に配置されている。本実施形態のディフューザ70は、外側ガイド(ガイド部材)71と、内側ガイド72と、を有している。
【0056】
外側ガイド71は、第七段50Gの動翼列31Gに対して軸方向Daの下流側Dadに配置されている。外側ガイド71は、軸方向Daの上流側Dauから下流側Dadに向かって径方向Drの外側Droに次第に拡大するよう形成されている。ディフューザ70の外側ガイド71における軸方向Daの長さLは、第七段50Gの動翼列31Gの三次元翼37における翼長に対し、85%~120%となるように形成されている。特に、外側ガイド71における軸方向Daの長さLは、第七段50Gの動翼列31Gの三次元翼37における翼長に対し、100%以上となっていることが好ましい。
【0057】
内側ガイド72は、外側ガイド71に対して径方向Drの内側Driに間隔を空けて配置されている。これにより、外側ガイド71と内側ガイド72との間には、蒸気Sが流通可能な流路である環状流路100が画成されている。環状流路100は、軸方向Daから見て円環状になるように、外側ガイド71と内側ガイド72との間に画成されている。環状流路100は、主流路15に対して軸方向Daの下流側Dadで繋がっている。内側ガイド72は、軸方向Daの上流側Dauから下流側Dadに向かって径方向Drの外側Droに真っすぐに傾斜して延びている。
【0058】
(作用効果)
上記構成の蒸気タービン1は、複数の平行翼35を有した上流動翼列31Uと、複数の三次元翼37を有した下流動翼列31Lと、を備えている。さらに、本実施形態では、ロータ軸21の外周面21fは、軸線Arと平行な断面において、軸線Arと平行に形成されている。つまり、ロータ軸21の外周面21fは、下流領域P2における三次元翼37が配置される領域で、軸方向Daの上流側Dauから下流側Dadに向かって、径方向Drに内側Driに縮小しないように形成されている。そのため、最終段である第七段50Gの動翼列31Gでの径方向Drの長さを抑えるために、第五段50Eの動翼列31Eの三次元翼基端部37bの位置を、第七段50Gの動翼列31Gの三次元翼基端部37bの位置に対して径方向Drの外側Droに配置する必要がない。したがって、第五段50Eの動翼列31Eの三次元翼基端部37bの径方向Drの位置を、径方向Drの内側Driに抑えることができる。つまり、第五段50Eの動翼列31Eが配置される位置でのロータ軸21の直径の増大が抑えられる。
【0059】
ここで、平行翼35を有した上流動翼列31Uにおいて、効率を向上させるためには、上流動翼列31Uの段数を増加させる必要がある。上流動翼列31Uの段数を増加させていくと、各上流動翼列31Uにおける段差圧が小さくなる。そして、段差圧が小さくなると、蒸気Sの速度も小さくなる。このように段差圧が小さくなった状態でも、平行翼35に対して適切な速度比(平行翼35の周速と蒸気Sの速度の比)を維持する必要がある。速度比を維持するためには、平行翼35の周速を抑える必要がある。そして、平行翼35の周速を抑えるためには、平行翼35の根本である平行翼基端部35bの位置を径方向Drの内側Driへ近づける必要がある。つまり、平行翼35と接続されるロータ軸21の外周面21fの位置を径方向Drの内側Driへ近づける必要がある。
【0060】
一方で、平行翼35を有した上流動翼列31Uで、ロータ軸21の外周面21fの位置を径方向Drの内側Driへ近づけると、平行翼35を有した上流動翼列31Uから、三次元翼37を有した下流動翼列31Lに切り替わる領域で、ロータ軸21の直径の違いによる大きな段差が生じてしまう構造となる。このような構造を防ぐためには、軸方向Daで最も下流側Dadに位置する上流動翼列31Uと、軸方向Daで最も上流側Dauに位置する下流動翼列31Lとで、ロータ軸21の外周面21fの径方向Drの位置を合わせる必要がある。
【0061】
これに対し、本願発明では、第五段50Eの動翼列31Eが配置される位置でのロータ軸21の直径の増大が抑えられる。そのため、第五段50Eと並んでいる第四段50Dの動翼列31Dで、ロータ軸21の直径の大きくする必要がなくなる。つまり、軸方向Daで最も上流側Dauに位置する下流動翼列31Lでのロータ軸21の外周面21fの位置が、径方向Drの内側Driに抑えられる。したがって、平行翼35を有した上流動翼列31Uの段数を増加させても、平行翼35を有した上流動翼列31Uから、三次元翼37を有した下流動翼列31Lに切り替わる領域で、ロータ軸21に大きな段差が生じてしまうことが抑制できる。その結果、ロータ20やケーシング10への構造上の影響を抑えて、上流動翼列31Uの段数を増加させることができる。これにより、平行翼35及び三次元翼37を混在させつつ、効率を向上することができる。
【0062】
また、第六段50Fの動翼列31Fと第七段50Gの動翼列31Gとにおける三次元翼先端部37sの位置の径方向Drの外側Droへの変化量ΔS2が、第五段50Eの動翼列31E及び第六段50Fの動翼列31Fでの三次元翼先端部37sの位置の径方向Drの外側Droへの変化量ΔS1よりも大きい。そのため、上流動翼列31Uから下流動翼列31Lに切り替わる領域で、主流路15は、径方向Drの外側Droに急激に広がることとなる。そのため、上流領域P1から下流領域P2へ流入した際に、蒸気Sは、径方向Drの内側Driではなく外側Droに流れ込みやすくなる。したがって、三次元翼37の全長を効果的に利用することができる。
【0063】
また、第七段50Gの静翼列41Gにおいて、静翼42のスロート幅は、静翼中間部42cが静翼先端部42s及び静翼基端部42bに対して大きい。特に、本実施形態では、静翼中間部42cから静翼先端部42sに向かって小さくなる。そのため、径方向Drの外側Droに蒸気Sが拡がる流れである半径流が、抑えられる。加えて、静翼42のスロート幅は、静翼中間部42cから静翼基端部42bに向かって小さくなる。そのため、反動度を低減でき、静翼先端部42sとロータの外周面21fとの隙間への蒸気の漏れ流れを抑えることができる。
【0064】
また、第七段50Gの動翼列31Gにおいて、三次元翼先端部37sと、ケーシング10との間の径方向Drにおけるクリアランスは、三次元翼37の径方向Drにおける翼長Hbに対し、1.5~2.5%となるように形成されている。そのため、三次元翼先端部37sと、ケーシング10との間における蒸気Sの漏れ流れを有効に抑えることができる。また、三次元翼先端部37s近傍での漏れ流れが抑えられることで、第七段50Gの動翼列31Gの三次元翼37で、半径流を抑えることができる。これにより、損失を抑えて、効果的に第七段50Gの三次元翼37に仕事をさせることができる。
【0065】
また、第七段50Gの動翼列31Gにおいて、三次元翼37は、遷音速翼型を有している。これにより、第七段50Gの動翼列31Gの三次元翼37を、軸方向Daで最も下流側Dadに位置する主流路15を流通する高速化された蒸気Sの流速に応じたものとすることができる。特に、本実施形態では、全ての下流動翼列31Lにおいて、三次元翼37は、遷音速翼型を有している。そのため、第七段50Gを含むすべての下流動翼列31Lの三次元翼37で、高速化された蒸気Sの流速に応じたものとすることができる。これにより、損失を抑えて、効果的に三次元翼37に仕事をさせることができる。
【0066】
また、ディフューザ70では、外側ガイド71における軸方向Daの長さが、軸方向Daで最も下流側Dadに位置する下流動翼列31Lの三次元翼37における径方向Drの長さHbに対し、85%~120%となるように形成されている。そのため、外側ガイド71によって、ディフューザ70の環状流路100を流通する蒸気Sは、軸方向Daに長い距離にわたって案内される。その結果、ディフューザ70の環状流路100において、径方向Drの外側Droで蒸気Sの流れに剥離が生じることを抑えることができる。したがって、ディフューザ70で、蒸気Sの剥離を抑えつつ、流速を低減させるこができる。そのため、最終段の動翼列31Gから流出した蒸気Sの流速(平均流速)が遷音速である場合であっても、剥離の発生を抑えることができる。したがって、ディフューザ70内における蒸気Sの静圧の回復を効率良く行うことが可能となる。
【0067】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0068】
例えば、動翼列31及び静翼列41の段数等をはじめとして、蒸気タービン1の各部の構成については、適宜変更することが可能である。つまり、蒸気タービン1は、本実施形態のように7段(7つの動翼列31及び静翼列41)を有する構造に限定されるものではない。したがって、蒸気タービン1は、本実施形態のように6段以下であってもよく、8段以上であってもよい。
【0069】
また、本実施形態では、ロータ軸21の外周面21fは、上流領域P1及び下流領域P2の全領域で、軸線Arと平行な断面において、軸線Arと平行に形成されている。しかしながら、ロータ軸21の外周面21fは、このような構造に限定されるものではない。例えば、ロータ軸21の外周面21fは、下流領域P2における三次元翼37が配置される領域で、軸線Arに対して軸方向Daの下流側Dadに向かって径方向Drの外側Droに漸次拡径するよう形成されていてもよい。このような構造であっても、ロータ軸21の外周面21fが軸線Arと平行に形成されている場合と同様に、平行翼35及び三次元翼37を混在させつつ、効率を向上することができる。さらに、ロータ軸21の外周面21fは、上流領域P1で、軸線Arに対して軸方向Daの下流側Dadに向かって径方向Drの外側Droに漸次拡径するよう形成されていてもよい。
【0070】
<付記>
実施形態に記載の蒸気タービン1は、例えば以下のように把握される。
【0071】
(1)第1の態様に係る蒸気タービン1は、軸線Arを中心として回転可能するロータ軸21と、前記軸線Arを基準とする径方向Drにおける前記ロータ軸21の外側Droに固定され、前記軸線Arの延びる軸方向Daに間隔をあけて複数配置された動翼列31と、前記ロータ軸21及び複数の前記動翼列31を前記径方向Drの外側Droから覆い、内部に蒸気が流通可能な主流路15が形成されたケーシング10と、前記径方向Drにおける前記ケーシング10の内側Driに固定され、複数の前記動翼列31のそれぞれに対して前記軸方向Daの第一側Dauに配置された複数の静翼列41と、を備え、複数の前記動翼列31は、前記主流路15における上流領域P1に配置されている複数の上流動翼列31Uと、前記主流路15において前記上流領域P1に対して前記軸方向Daの第二側Dadに位置する下流領域P2に配置されている複数の下流動翼列31Lと、を備え、前記上流動翼列31Uは、前記軸線Ar回りの周方向Dcに間隔をあけて配置された複数の平行翼35を有し、前記下流動翼列31Lは、前記周方向Dcに間隔をあけて配置された複数の三次元翼37を有し、前記静翼列41は、前記周方向Dcに間隔をあけて配置された複数の静翼42を有し、前記ロータ軸21において前記径方向Drの外側Droを向く外周面21fは、前記下流領域P2における前記三次元翼37が配置される領域で、前記軸線Arと平行な断面において、前記軸線Arと平行、又は前記軸線Arに対して前記軸方向Daの第二側Dadに向かって前記径方向Drの外側Droに漸次拡径するよう形成されている。
【0072】
このような蒸気タービン1は、平行翼35を有した上流動翼列31Uと、三次元翼37を有した下流動翼列31Lと、を備えている。さらに、本実施形態では、ロータ軸21の外周面21fは、軸線Arと平行な断面において、軸線Arと平行、又は軸線Arに対して軸方向Daの下流側Dadに向かって径方向Drの外側Droに漸次拡径するよう)形成されている。つまり、ロータ軸21の外周面21fは、下流領域P2における三次元翼37が配置される領域で、軸方向Daの上流側Dauから下流側Dadに向かって、径方向Drに内側Driに縮小しないように形成されている。そのため、最終段の動翼列31Gでの径方向Drの長さを抑えるために、軸方向Daで最も第一側Dauに位置する下流動翼列31Lの三次元翼基端部37bの位置を最終段の動翼列31Gの三次元翼基端部37bの位置に対して径方向Drの外側Droに配置する必要がない。したがって、軸方向Daで最も第一側Dauに位置する下流動翼列31Lの三次元翼基端部37bの径方向Drの位置を、径方向Drの内側Driに抑えることができる。つまり、軸方向Daで最も第一側Dauに位置する下流動翼列31Lが配置される位置でのロータ軸21の直径の増大が抑えられる。その結果、軸方向Daで最も第一側Dauに位置する下流動翼列31Lと並んでいる最も第二側Dadに位置する上流動翼列31Uで、ロータ軸21の直径の大きくする必要がなくなる。つまり、軸方向Daで最も第一側Dauに位置する下流動翼列31Lでのロータ軸21の外周面21fの位置が、径方向Drの内側Driに抑えられる。したがって、平行翼35を有した上流動翼列31Uの段数を増加させても、平行翼35を有した上流動翼列31Uから、三次元翼37を有した下流動翼列31Lに切り替わる領域で、ロータ軸21に大きな段差が生じてしまうことが抑制できる。その結果、ロータ20やケーシング10への構造上の影響を抑えて、上流動翼列31Uの段数を増加させることができる。これにより、平行翼35及び三次元翼37を混在させつつ、効率を向上することができる。
【0073】
(2)第2の態様に係る蒸気タービン1は、(1)の蒸気タービン1であって、前記下流領域P2では、複数の前記三次元翼37の前記径方向Drの外側Droの三次元翼先端部37sの位置が、前記軸方向Daの第一側Dauに位置する前記下流動翼列31Lから前記軸方向Daの第二側Dadに位置する前記下流動翼列31Lに向かって、前記径方向Drの外側Droに拡がるように形成され、前記軸方向Daで最も第一側Dauに位置する前記下流動翼列31Lを含む二つの最も近接した一対の前記下流動翼列31Lにおける前記三次元翼先端部37sの位置の前記径方向Drの外側Droへの変化量が、前記軸方向Daで最も第二側Dadに位置する前記下流動翼列31Lを含む最も近接した一対の前記下流動翼列31Lにおける前記三次元翼先端部37sの位置の前記径方向Drの外側Droへの変化量よりも大きい。
【0074】
これにより、上流動翼列31Uから下流動翼列31Lに切り替わる領域で、主流路15は、径方向Drの外側Droに急激に広がることとなる。そのため、上流領域P1から下流領域P2へ流入した際に、蒸気Sは、径方向Drの内側Driではなく外側Droに流れ込みやすくなる。したがって、三次元翼37の全長を効果的に利用することができる。
【0075】
(3)第3の態様に係る蒸気タービン1は、(2)の蒸気タービン1であって、前記軸方向Daで最も第二側Dadに位置する前記下流動翼列31Lでは、前記三次元翼先端部37sと、前記ケーシング10との間の前記径方向Drにおけるクリアランスが、前記三次元翼37の前記径方向Drにおける翼長に対し、1.5~2.5%となるように形成されている。
【0076】
これにより、三次元翼先端部37sと、ケーシング10との間における蒸気の漏れ流れを有効に抑えることができる。また、三次元翼先端部37s近傍での漏れ流れが抑えられることで、最終段の動翼列31Gの三次元翼37で、半径流を抑えることができる。これにより、損失を抑えて、効果的に最終段の三次元翼37に仕事をさせることができる。
【0077】
(4)第4の態様に係る蒸気タービン1は、(1)から(3)の何れか一つの蒸気タービン1であって、前記軸方向Daで最も第二側Dadに位置する前記静翼列41では、前記静翼42の前記径方向Drの内側Driの静翼先端部42sにおけるスロート幅、及び前記静翼42の前記径方向Drの外側Droの静翼基端部42bにおけるスロート幅に対し、前記静翼42の前記径方向Drの中間部におけるスロート幅が大きくなるように形成されている。
【0078】
これにより、径方向Drの外側Droに蒸気Sが拡がる流れである半径流が、抑えられる。加えて、静翼42のスロート幅は、中間部42cから静翼基端部42bに向かって小さくなる。そのため、反動度を低減でき、静翼先端部42sとロータの外周面21fとの隙間への蒸気の漏れ流れを抑えることができる。
【0079】
(5)第5の態様に係る蒸気タービン1は、(1)から(4)の何れか一つの蒸気タービン1であって、前記軸方向Daで最も第二側Dadに位置する前記下流動翼列31Lにおいて、前記三次元翼37は、遷音速翼型を有している。
【0080】
これにより、軸方向Daで最も第二側Dadに位置する動翼列31Gの三次元翼37を、軸方向Daで最も第二側Dadに位置する主流路15を流通する高速化された蒸気Sの流速に応じたものとすることができる。
【0081】
(6)第6の態様に係る蒸気タービン1は、(1)から(5)の何れか一つの蒸気タービン1であって、前記ケーシング10は、前記軸方向Daの最も第二側Dadに配置された前記下流動翼列31Lから流出した蒸気を前記ケーシング10の外部に案内するディフューザ70を備え、前記ディフューザ70は、前記軸方向Daの第一側Dauから第二側Dadに向かって前記径方向Drの外側Droに延びるガイド部材71を有し、前記ガイド部材71における前記軸方向Daの長さが、前記軸方向Daで最も第二側Dadに位置する前記下流動翼列31Lの前記三次元翼37における前記径方向Drの長さに対し、85%~120%となるように形成されている。
【0082】
これにより、
ガイド部材71によって、ディフューザ70を流通する蒸気Sは、軸方向Daに長い距離にわたって案内される。その結果、ディフューザ70において、径方向Drの外側Droで蒸気Sの流れに剥離が生じることを抑えることができる。したがって、ディフューザ70で、蒸気Sの剥離を抑えつつ、流速を低減させるこができる。そのため、最終段の動翼列31Gから流出した蒸気Sの流速(平均流速)が遷音速である場合であっても、剥離の発生を抑えることができる。したがって、ディフューザ70内における蒸気Sの静圧の回復を効率良く行うことが可能となる。
【0083】
(7)第7の態様に係る蒸気タービン1は、(1)から(6)の何れか一つの蒸気タービン1であって、前記平行翼35は、衝動翼であり、前記三次元翼37は、反動翼である。
【符号の説明】
【0084】
1…蒸気タービン
10…ケーシング
51…排気ケーシング
11…ノズル室
12…流路室
13…排気室
15…主流路
20…ロータ
21…ロータ軸
21f…外周面
22…軸芯部
23…ディスク部
31、31A~31G…動翼列
31L…下流動翼列
31U…上流動翼列
32…動翼
32a…プラットフォーム
32b…翼本体
32c…シュラウド
35…平行翼
35b…平行翼基端部
35s…平行翼先端部
37…三次元翼
37b…三次元翼基端部
37c…三次元翼中間部
37s…三次元翼先端部
41、41A~41G…静翼列
42…静翼
42b…静翼基端部
42c…静翼中間部(中間部)
42s…静翼先端部
43…外側リング
46…内側リング
50…段
50A…第一段
50B…第二段
50C…第三段
50D…第四段
50E…第五段
50F…第六段
50G…第七段
50x…高圧段
50y…低圧段
70…ディフューザ
71…外側ガイド(ガイド部材)
72…内側ガイド
100…環状流路
Ar…軸線
Da…軸方向
Dad…下流側(第二側)
Dau…上流側(第一側)
Dc…周方向
Dr…径方向
Dri…内側
Dro…外側
Hb…翼長
P1…上流領域
P2…下流領域
S…蒸気