(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093399
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】果実栽培用二段式栽培棚
(51)【国際特許分類】
A01G 13/10 20060101AFI20240702BHJP
A01G 9/12 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A01G13/10 A
A01G9/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209761
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】514185998
【氏名又は名称】三共包材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和男
(72)【発明者】
【氏名】藤田 仁
【テーマコード(参考)】
2B023
2B024
【Fターム(参考)】
2B023AE01
2B023AE02
2B023AE03
2B023AF01
2B024EA07
2B024EA10
(57)【要約】
【課題】果実栽培における二段式栽培棚について、用いられる資材を削減し、簡便に設置できる二段式栽培棚を提供する。
【解決手段】果実栽培用の果実棚と多目的防災網のための棚とからなる二段式栽培棚において、多目的防災網のための棚用の周囲柱が、果実棚用の周囲柱を兼ねる構造であることを特徴とする、果実栽培用の二段式栽培棚。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実栽培用の果実棚と多目的防災網のための棚とからなる二段式栽培棚において、多目的防災網のための棚用の周囲柱が、果実棚用の周囲柱を兼ねる構造であることを特徴とする、果実栽培用の二段式栽培棚。
【請求項2】
果実が梨である、請求項1に記載の果実栽培用の二段式栽培棚。
【請求項3】
多目的防災網のための棚用の周囲柱の径が、果実棚用の周囲柱の径と同じかそれよりも大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の果実栽培用の二段式栽培棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実栽培における二段式栽培棚に関する。
具体的には、果実栽培における二段式栽培棚において、多目的防災網のための棚の周囲柱が果実棚の周囲柱を兼ねる構造である果実栽培における二段式栽培棚に関する。
【背景技術】
【0002】
果実栽培においては、防鳥、防虫、防風、雹害の防止のために、多目的防災網をかぶせることが行われている(特許文献1)。そのためには、果実棚、例えば、梨棚の場合には、通常の梨棚の上部に、さらに立設した支柱の間を鋼線などの線材で縦横に連結することで、多目的防災網を設置するための棚を設ける必要があり、果実栽培においては、二段式栽培棚を設置することが必要となっている。
【0003】
従来、例えば、梨栽培の場合、梨棚と多目的防災網のための棚とを独立して設置しており、梨棚用の隅柱及び周囲柱を設置すると共に、多目的防災網のための棚用の隅柱及び周囲柱を設置していた。梨園の広さにもよるが、梨棚の設置のために、高さ2.5m程度の4本の隅柱に加えて、50本程度の周囲柱を用い、併せて、多目的防災網のための棚の設置のために、高さ4.5m程度の4本の隅柱と30本程度の周囲柱を用いることもあった。したがって、二段式栽培棚を設置するためには、資材が多く必要であり、設置に係る作業も負担となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記した従来技術の問題点を解決し、果実栽培における二段式栽培棚について、用いられる資材を削減し、簡便に設置できる二段式栽培棚を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために検討した結果、隅柱については果実棚用の隅柱と多目的防災網のための棚用の隅柱とをそれぞれ4本ずつ設置すると共に、周囲柱については多目的防災網のための棚用の周囲柱を果実棚用の周囲柱と兼用することで、全体の保持強度を保ちつつ、果実棚用の周囲柱の本数を全体として削減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の事項により特定されるとおりのものである。
(1)果実栽培用の果実棚と多目的防災網のための棚とからなる二段式栽培棚において、多目的防災網のための棚用の周囲柱が、果実棚用の周囲柱を兼ねる構造であることを特徴とする、果実栽培用の二段式栽培棚。
(2)果実が梨である、(1)に記載の果実栽培用の二段式栽培棚。
(3)多目的防災網のための棚用の周囲柱の径が、果実棚用の周囲柱の径と同じかそれよりも大きいことを特徴とする、(1)又は(2)に記載の果実栽培用の二段式栽培棚。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、果実栽培用の二段式栽培棚を設置する際に、栽培棚の保持強度を維持しながら、用いられる資材を削減することにより、簡便かつ安価に設置できる果実栽培用の二段式栽培棚を提供するものである。また、本発明によれば、周囲柱の角度を大きくとることができることから、支柱下のスペースが広く使え、栽培棚内での管理作業が容易となる。さらに、本発明によれば、多目的防災網のための棚の周囲柱が果実棚の周囲柱を兼ねることから、果実棚の高さの変更に際して、周囲柱の建替えなどの大幅な変更をすることなく、容易に変更できるものであり、作業者や経営者が変わり、作業環境が変わった場合であっても、フレキシブルな対応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本発明に係る果実栽培用の二段式栽培棚における隅柱及び周囲柱の配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、隅柱と周囲柱とを立設し、立設した柱間を線材で縦横に連結してなる果実栽培用二段式栽培棚において、隅柱については、果実棚用と多目的防災網のための棚用との隅柱をそれぞれ4本ずつ設置すると共に、周囲柱については、多目的防災網のための棚用の周囲柱を果実棚用の周囲柱と兼用して設置することを特徴とする果実栽培用二段式栽培棚である。以下に、その具体的態様について、梨栽培用二段式栽培棚を例として、具体的に説明するが、本発明は梨栽培用二段式栽培棚に限定されるものではない。
【0011】
二段式栽培棚は、隅柱、周囲柱及び線材で構成されており、隅柱と周囲柱は、それぞれ線材で連結されて均一な力で保持されている。柱の一端は地中に埋められているアンカーにより線材の張りと緊張を保たれている。
【0012】
隅柱は、梨棚(下棚)用隅柱と多目的防災網のための棚(上棚)用隅柱とをそれぞれ4本ずつ設置する。梨棚(下棚)用隅柱と多目的防災網のための棚(上棚)用隅柱とを独立して設置することにより、棚全体の保持強度が向上する。梨棚(下棚)用隅柱と多目的防災網のための棚(上棚)用隅柱とは、同径の支柱を用いることもできるし、梨棚(下棚)用隅柱の径を多目的防災網のための棚(上棚)用隅柱の径よりも大きい支柱を用いることもできる。梨棚(下棚)用隅柱と多目的防災網のための棚(上棚)用隅柱とはクランプなどを用いて、連結させて設置することもできる。また、梨園の形状や広さにより、隅柱の数は4本に限られるものではない。
【0013】
周囲柱は、梨棚(下棚)用のための周囲柱と、梨棚(下棚)用と多目的防災網のための棚(上棚)用とを兼用する周囲柱とを用いることができる。すなわち、一部の周囲柱については、棚(上棚)用と多目的防災網のための棚(上棚)用とを兼ねることで、梨棚(下棚)用の周囲柱の本数を削減することができる。多目的防災網のための棚(上棚)用の周囲柱で梨棚(下棚)用の周囲柱を兼ねるものの数や割合は、棚の強度を保持できる範囲で適宜選択できるが、
図1では、周囲柱の半分を多目的防災網のための棚用の周囲柱が兼用している態様を示している。梨棚(下棚)用と多目的防災網のための棚(上棚)用とを兼用する周囲柱の径は、梨棚(下棚)用のための周囲柱の径と同じでもよいが、梨棚と多目的防災網のための棚とを共に保持するために、梨棚(下棚)用の周囲柱の径よりも大きい径を用いることが好ましい。また、多目的防災網のための棚(上棚)用の周囲柱を用いることにより、周囲柱の設置角度が大きくなることから、梨棚(下棚)用の周囲柱を用いる場合に比べてスペースが広く使え、管理作業が容易になる。
【0014】
通常、梨棚(下棚)用に用いられる隅柱の長さは約2.5mであり、多目的防災網のための棚(上棚)用に用いられる隅柱の長さは約4.5mであり、周囲柱の長さは隅柱の長さよりも20~50cm程度短いことが好ましい。また、果実の種類、果樹園の状況により、長さは適宜選択することができる。
【0015】
梨棚(下棚)用と防災棚(上棚)用とに用いられる隅柱及び周囲柱の材質は、錆びたり、腐ったりすることがなければいずれの材質でも構わないが、JIS規格鋼管が好適であり、また、柱の間をつなぐ線材についても特に制限はないが、日光の紫外線や農薬、外傷に対して耐久性があることから、鋼より線をポリエチレン被覆した線材が好適である。
【0016】
本発明によれば、これまで、10a当たりの梨園について、梨棚(下棚)用の周囲柱を40本以上用いていたが、用いられる梨棚(下棚)の周囲柱の数を3分の1以下にしても、同程度の強度を維持することができた。
【0017】
以下に、
図1を用いて、本発明の具体的な態様を説明するが、
図1は本発明を何ら限定するものではない。
【0018】
30.0m×33.0m四方の果樹園の4隅に、梨棚用の隅柱(1)と多目的防災網のための棚用の隅柱(2)を受石により設置した。梨棚用の隅柱(1)は89.1mm径で、2700mm長のサイズであり、多目的防災網のための棚用の隅柱(2)は76.3mm径で、4500mm長のサイズとした。隅柱の間に、等間隔に、8の周囲柱を受石により設置し、周囲柱は梨棚用のための周囲柱(3)と、梨棚(下棚)用と多目的防災網のための棚(上棚)用とを兼用する周囲柱(4)とを交互に設置した。梨棚用の周囲柱(3)は48.6mm径で、2500mm長のサイズであり、多目的防災網のための棚用の周囲柱(4)は60.5mm径で、4000mm長のサイズとした。したがって、本発明による周囲柱は、梨棚用の周囲柱(3)16本と多目的防災網のための棚用の周囲柱(4)16本との、計32本を使用した。対向する周囲柱を線材で連結することで、梨棚及び多目的防災網のための棚を形成した。形成された梨棚及び多目的防災網のための棚の保持強度は、従来の棚と比べて、同程度であった。一方、従来の梨棚用の周囲柱と多目的防災網のための棚用の周囲柱とを分離して設置する方式では、梨棚用の周囲柱(3)32本と多目的防災網のための棚用の周囲柱(4)16本との、計48本を使用するものであり、本発明により、梨棚用の周囲柱を16本削減できることがわかった。
【0019】
以上の例からも、本発明によれば、果実棚用の周囲柱の数を削減することが可能となるだけでなく、周囲柱の設置に係るアンカー、受石などの部材も同様に削減できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、果樹園における周囲柱の本数を削減することができ、コスト削減が図れると共に、果樹園のスペースを広く使うことが可能となることから、草刈りなどの管理作業が容易になり、さらに、周囲柱が上棚と下棚とを兼用することから、下棚の高さの変更を容易に行うことができ、経営者の変更に伴う改修のほかのみならず、多目的防災網を利用する技術に広く応用されることが期待されるものである。
【符号の説明】
【0021】
1 梨棚用の隅柱
2 多目的防災網のための棚用の隅柱
3 梨棚用の周囲柱
4 多目的防災網のための棚用の周囲柱