(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093413
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】バルブブリッジ及びバルブブリッジ製造方法
(51)【国際特許分類】
F01L 1/26 20060101AFI20240702BHJP
F01L 1/18 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F01L1/26 B
F01L1/18 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209780
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 怜央
(72)【発明者】
【氏名】沖見 昇一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 久美子
(72)【発明者】
【氏名】藤木 駿
【テーマコード(参考)】
3G016
【Fターム(参考)】
3G016AA05
3G016BA03
3G016BA06
3G016BA18
3G016BB08
3G016CA04
3G016CA06
3G016CA12
3G016CA30
3G016FA04
3G016FA12
(57)【要約】
【課題】通気孔の構造や形状、並びにその作り方までも含めた総合的な見直しにより、案内孔部へ適切に空気及びオイル供給できるように、通気孔から十分なオイル捕集が行え、かつ、固定軸のスカッフも生じないように、より改善されたバルブブリッジを提供する。
【解決手段】固定軸14に摺動可能に外嵌されるブリッジ本体5を有してロッカアーム8の動作を複数のバルブ1,1に伝えるバルブブリッジであって、固定軸14を内嵌する案内孔部16がブリッジ本体5に形成され、案内孔部16の上端部とブリッジ5の外部とを連通させる通気孔17が設けられ、通気孔17は、案内孔部16から遠ざかるに連れて断面積が大きくなる外拡がり状の孔に設定されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定軸に摺動可能に外嵌されるブリッジ本体を有してロッカアームの動作を複数のバルブに伝えるバルブブリッジであって、
前記固定軸を内嵌する案内孔部が前記ブリッジ本体に形成され、前記案内孔部の上端部と前記ブリッジ本体の外部とを連通させる通気孔が設けられ、
前記通気孔は、前記案内孔部から遠ざかるに連れて断面積が大きくなる外拡がり状の孔に設定されているバルブブリッジ。
【請求項2】
前記通気孔の外部連通側の開口は、前記案内孔部の周方向に長い楕円形又は長円形を呈するように形成されている請求項1に記載のバルブブリッジ。
【請求項3】
前記通気孔は、前記案内孔部に直交する方向に延びている請求項2に記載のバルブブリッジ。
【請求項4】
前記通気孔は、型成形によって前記ブリッジ本体に設けられた凹みが、前記案内孔部を形成する加工によって前記案内孔部に開口する状態に構成されている請求項1~3の何れか一項に記載のバルブブリッジ。
【請求項5】
前記バルブの軸端部に当接するバルブ出力部を備えるブリッジアーム部の複数が前記ブリッジ本体から突設され、
前記通気孔の前記外部連通側の開口は、前記ブリッジ本体における前記ブリッジアーム部が形成されない箇所に設けられている請求項4に記載のバルブブリッジ。
【請求項6】
固定軸を摺動可能に内嵌する案内孔を備えるブリッジ本体と、バルブの軸端部に当接するバルブ出力部を備えて前記ブリッジ本体から互いに反対方向に突設される一対のブリッジアーム部とを有するバルブブリッジの製造方法であって、
一対の前記ブリッジアーム部及び前記ブリッジ本体を通る型割面が形成された第1及び第2の成形型を用意し、かつ、前記案内孔に到達する深さの凹みを前記ブリッジ本体の上端部に生じさせる突起部を前記第1及び第2の成形型の何れかに形成しておき、
前記第1及び第2の二つの成形型による型成形の後に、前記案内孔を機械加工により前記ブリッジ本体に形成するバルブブリッジの製造方法。
【請求項7】
前記凹みの深さが深くなるほど前記凹みの断面積が小さくなるように、前記突起部は先細り形状のものに設定されている請求項6に記載のバルブブリッジの製造方法。
【請求項8】
前記凹みの外部連通側の開口の面積が、前記案内孔の形成に伴って前記凹みの案内孔側に形成される開口の面積の2倍となるように、前記突起部の先細り形状が設定されている請求項7に記載のバルブブリッジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農機用ディーゼルエンジンなどの各種エンジンの動弁装置に用いられるバルブブリッジ及びその製造方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用エンジンにおいては、高効率な吸排気動作を目指すために、エンジンの1気筒あたりに吸気バルブや排気バルブを2個以上設ける構成(3バルブ式や4バルブ式など)が採られることがよくある。例えば、OHV(オーバーヘッドバルブ)構造のエンジンにおいて、気筒あたりの吸気及び/又は排気のバルブが2個配置されている場合は、ロッカアームで同時に2つのバルブを押し駆動するために、それら両者の間を繋ぐバルブブリッジが用いられる(特許文献1を参照)。
【0003】
複数のバルブ出力部がブリッジ本体から互いに反対方向に突設されてなるバルブブリッジを介装することにより、1つのロッカアームで同時に複数のバルブを動かすことが可能になる。この場合、バルブブリッジが往復移動(上下動)するときの位置ずれを抑制してガイド(案内)させるために、シリンダヘッドに支持される固定軸に摺動可能にバルブブリッジを外嵌させ、固定軸にガイドされてバルブブリッジを円滑に往復スライド移動できるように構成されているのが一般的である。
【0004】
ブリッジ本体の案内孔に固定軸を外嵌させる構成では、通常、ロッカアームの押し力を受ける入力部材が案内孔の上端に設けられるので、案内孔の上端が入力部材で塞がれてほぼ密閉された穴の状態になっている。従って、一方が固定軸で塞がれ、他方が入力部材で塞がれた略密閉状態の案内孔は、バルブブリッジが上下する際に容積変化するので、呼吸するために外部に連通した通気孔(空気孔)がドリリングなどの機械加工により設けられている。
【0005】
特許文献1(
図1,3を参照)においては、1つの大径な通気孔(オイル孔及び呼吸用孔:10a)が形成されており、特許文献2においては、案内孔(ガイド孔:5a)を貫通する一対の小径な通気孔(連通孔:5d)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-3687号公報
【特許文献2】特開2000-204914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ブリッジ本体の通気孔は、容積変化を可能にする空気の出入りだけでなく、オイルを案内孔に取り入れる機能も有しているので、オイルの吸引による固定軸と案内孔との潤滑の点では、通気孔の径は大きい(広い面積)方が良い。しかしながら、特許文献1で例示されるように、径の大きい通気孔(10a)にすると、比較的小さい径である案内孔に対する寸法割合が大きくなるためか、通気孔の開口縁と固定軸との擦れ(スカッフ)が生じ易くなる。また、通気孔はレイアウトの制約上、ワークの姿勢変化や加工刃の折損が生じ易いという問題があり、機械加工で大きな径を横向きに開けるのには無理があった。
【0008】
そこで、機械加工が無理なく行い易いことやスカッフが生じないことからは、小径の通気孔をブリッジ本体に設けるのが良いが、その場合はオイル供給が不足しがちになって都合が悪い。また、特許文献2で開示されるように、小径の通気孔(5d)を互いに同心で2カ所設ける手段も考えられるが、その場合は、ブリッジ本体を貫通させる機械加工の動作量が大きくなり、作業量及び時間が長くなってコストアップを招く不利がある。
【0009】
このように、ブリッジ本体に形成される通気孔は、大径でも小径でも満足できるものではなかったため、加工の簡素化を図りながら十分なオイル供給も行える通気孔を備えるバルブブリッジとするには、さらなる改善の余地が残されていた。
【0010】
本発明の目的は、鋭意研究により、通気孔の構造や形状、並びにその作り方までも含めた総合的な見直しにより、案内孔へ十分にオイル供給しながら固定軸のスカッフもなく、かつ、生産の合理化によるコストダウンも可能なとなるように、より改善されたバルブブリッジを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、固定軸に摺動可能に外嵌されるブリッジ本体を有してロッカアームの動作を複数のバルブに伝えるバルブブリッジにおいて、
前記固定軸を内嵌する案内孔部が前記ブリッジ本体に形成され、前記案内孔部の上端部と前記ブリッジ本体の外部とを連通させる通気孔が設けられ、
前記通気孔は、前記案内孔部から遠ざかるに連れて断面積が大きくなる外拡がり状の孔に設定されていることを特徴とする。
【0012】
この場合、前記通気孔の外部連通側の開口は、前記案内孔部の周方向に長い楕円形又は長円形を呈するように形成されていると好都合である。
【0013】
第2の本発明は、固定軸を摺動可能に内嵌する案内孔を備えるブリッジ本体と、バルブの軸端部に当接するバルブ出力部を備えて前記ブリッジ本体から互いに反対方向に突設される一対のブリッジアーム部とを有するバルブブリッジ製造方法において、
一対の前記ブリッジアーム部及び前記ブリッジ本体を通る型割面が形成された第1及び第2の成形型を用意し、かつ、前記案内孔に到達する深さの凹みを前記ブリッジ本体の上端部に生じさせる突起部を前記第1及び第2の成形型の何れかに形成しておき、
前記第1及び第2の二つの成形型による型成形の後に、前記案内孔を機械加工により前記ブリッジ本体に形成することを特徴とする。
【0014】
本発明に関して、上述した構成(手段)以外の特徴構成や手段ついては、特許請求の範囲における請求項3~5を参照のこと。また、第2の本発明に関して、上述した方法(製法)以外の方法ついては、特許請求の範囲における請求項7,8を参照のこと。
【発明の効果】
【0015】
動弁装置において、バルブを押す方向にバルブブリッジが移動する際は、案内孔部の容積(余剰空間部s:
図2を参照)が拡大変化し、負圧によって外部の空気が通気孔から案内孔部に吸引される。本発明によれば、通気孔は、案内孔部から遠ざかるに連れて断面積が大きくなる外拡がり状の孔であるから、外部から通気孔に捕集される空気及びオイルの吸引速度が通気孔内で加速されるようになる。
【0016】
従って、通気孔の外部側の開口面積を、十分なオイル捕集が可能となる大面積とすることができるとともに、通気孔の案内孔部側の開口面積を、前述のスカッフが生じないように小面積としても、通気孔内での加速によって案内孔部に十分なオイル供給が行えるようになる。
【0017】
その結果、通気孔の構造や形状、並びにその作り方までも含めた総合的な見直しにより、固定軸との摺動を行う案内孔部へ適切に空気及びオイル供給できるように、通気孔から十分なオイル捕集が行えるようにしながら、通気孔の存在故の固定軸のスカッフも生じないように、より改善されたバルブブリッジを提供することができる。
【0018】
第2の本発明は、二つ割構造の型成形によってバルブブリッジを作製する方法であって、案内孔に到達する深さの凹みをブリッジ本体に生じさせる突起部をいずれかの成形型に形成し、第1及び第2の二つの成形型による型成形の後に案内孔を機械加工によりブリッジ本体に形成する方法である。
【0019】
凹みの内奥端(最大深さ)の位置は、案内孔の予定形成範囲に至る(到達する)深さに設定されているので、機械加工によって案内孔を形成すれば、その機械加工によって凹みの内奥端側の部分も削られ、内側の開口が作製される。従って、型成形後に行われる案内孔の形成工程によって凹みの内奥側が貫通されて通気孔を形成できるようになるので、従来では必要であった「通気孔を形成するための専用の機械加工工程」を省略することができる。
【0020】
その結果、通気孔の構造や形状、並びにその作り方までも含めた総合的な見直しにより、ブリッジ本体に設けられる通気孔を作るための専用の製作工程を不要にでき、生産の合理化によるコストダウンが可能となるように改善されたバルブブリッジ製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】産業用ディーゼルエンジンの動弁装置を示し、(A)は要部の後から見た縦断側面図、(B)はバルブブリッジ部分の断面図
【
図2】ブリッジ本体で前後に切ったバルブブリッジの拡大断面図
【
図3】バルブブリッジを示し、(A)は背面図、(B)は右側面視
【
図4】
図3のバルブブリッジを示し、(A)は平面図、(B)は正面図
【
図5】
図3のバルブブリッジを示し、(A)は
図3(A)のZ-Z線の断面図、(B)は型抜き後の案内孔形成工程を示す製法図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明によるバルブブリッジ及びバルブブリッジ製造方法の実施の形態を、立形多気筒ディーゼルエンジンの動弁装置について、図面を参照しながら説明する。エンジンの全体図などは省略するが、気筒直列方向でエンジン冷却ファンの有る側を前、反対側を後、排気マニホルドの有る側を左、吸気マニホルドの有る側を右として説明する。
【0023】
図1(A)に示されるように、シリンダブロック(図示省略)の上部にシリンダヘッド21が取り付けられ、シリンダヘッド21の上にヘッドカバー(図示省略)が取り付けられている。シリンダヘッド21内には吸気ポート23と排気ポート22とプッシュロッド挿通孔24とが設けられている。排気ポート22には一対の排気弁口25,25が設けられ、この一対の排気弁口25,25を開閉する一対の排気バルブ1,1が配置されている。
【0024】
シリンダヘッド21の上部にはロッカアームブラケット26が取り付けられ、このロッカアームブラケット26に軸心27pを有する枢軸(ロッカアーム軸)27を介してロッカアーム8が揺動可能に取り付けられている。プッシュロッド挿通孔24にはプッシュロッド28が挿通されている。ロッカアームブラケット26とロッカアーム8は、図示しないヘッドカバー内に収容されている。
【0025】
図1(A),(B)に示されるように、一対の排気バルブ1,1は、動弁カム(図示省略)からタペット(図示省略)とプッシュロッド28とロッカアーム8とバルブブリッジ4とを順に介して連動される。また、図示は省略するが、吸気ポート23の吸気排気弁口も2つで、一対の吸気バルブは動弁カムからタペットとプッシュロッドとロッカアームとバルブブリッジとを介して連動される。
【0026】
図1(A)に示されるように、排気バルブ1,1のロッカアーム8の上部にあるオイル流出孔30には、オイルパン(図示省略)のエンジンオイル(図示省略)が、オイルポンプ(図示省略)の圧送力で、オイルギャラリ(図示省略)と枢軸27とを介して供給される構成とされている。また、図示は省略するが、吸気バルブのロッカアームの上部にあるオイル流出孔にも、同様にオイルパンのエンジンオイルを供給する構成である。
【0027】
排気バルブ1の動弁装置Aの概要は、次の通りである(吸気バルブの動弁装置も構成は排気バルブ1の場合と同様であり、代表として排気バルブ1の場合で説明する)。
図1(A),(B)に示されるように、一対のバルブ(排気バルブ)1,1と、各バルブ1,1を押し下げ可能なバルブブリッジ4と、バルブブリッジ4をそのブリッジ本体5に作用して押し下げ可能なロッカアーム8とを有して動弁装置Aが構成されている。ロッカアーム8の枢軸27の軸心27pでの揺動により、バルブブリッジ4を介して一対のバルブ1,1を同時に押し下げ駆動できるように構成されている。
【0028】
図1(A),(B)及び
図2に示されるように、各バルブ1は、バルブスプリング2により閉弁方向に付勢される状態でスライド移動可能にシリンダヘッド21に支持されている。ロッカアーム8は、相対回動可能に枢軸27を内嵌する中央ボス部9と、下方からプッシュロッド28の突き上げ力を受けるアーム入力部10と、バルブブリッジ4を押し下げるためのアーム出力部11とを備えている。なお、31はインジェタであり、排気側のバルブブリッジ4と吸気側のバルブブリッジ(図示省略)との間(排気側のバルブブリッジ4の前)に配置されている。
【0029】
図1~
図3に示されるように、バルブブリッジ4は、固定軸14を摺動可能に内嵌する案内孔を備えるブリッジ本体5と、バルブ1の軸端部3に当接する一対の第1及び第2バルブ出力部12,13を備えてブリッジ本体5から互いに反対方向に突設される一対の第1及び第2ブリッジアーム部6,7とを有して、略T字状〔
図3(A)を参照〕を呈する部品に構成されている。
【0030】
図1に示されるように、バルブブリッジ4の長手方向中央部であるブリッジ本体5の上部に形成された円形で上向き開放状の受止め座5A〔
図4(A)や
図5(A)を参照〕に、円板状で金属材製のブリッジ入力部15が内嵌装着されている。ブリッジ入力部15の上面15aには、ロッカアーム8先端側のアーム出力部11の底面部(符記省略)が当接可能に構成されている。なお、
図3(B)、
図4(B)に示されるように、各バルブ出力部12,13のそれぞれには、バルブ1の軸端部3を挟み込み可能なように、対向配置される一対の垂下片12a,13aが片持ち状に形成されている。
【0031】
従って、アーム出力部11が下に移動するロッカアーム8の揺動により、バルブブリッジ4が下向きに押されて各バルブ出力部12,13が対応する軸端部3,3を下方に押し、一対のバルブ1,1がバルブスプリング2,2の付勢力に抗して下降して開弁される。そして、アーム出力部11が上に移動するロッカアーム8の揺動により、一対のバルブ1,1とバルブブリッジ4とがバルブスプリング2,2の付勢力によって上昇し、一対のバルブ1,1が閉弁される。
【0032】
図4に示されるように、円筒状の(ボス状の)ブリッジ本体5には、軸心Pを有してブリッジ本体5長手方向(上下方向)に延びる案内孔部(案内孔)16が貫通形成されている。第1ブリッジアーム部6及び第2ブリッジアーム部7は、互いにブリッジ本体5の上端部から横向きに突設されている。
図1,2に示されるように、軸心14pを有する固定軸14は、その下端部をシリンダヘッド21に嵌合固定されて、各バルブ1,1の軸心Q,Qと互いに同方向に向く軸心Pを有して突設されている。
【0033】
図2、
図3に示されるように、ブリッジ本体5の上端部に、案内孔部16の上端部とブリッジ本体5の外部とを連通させる通気孔17が設けられている。ブリッジ本体5の後側の上端部には、若干後方突出した厚肉箇所5Bが形成されており、側面視で孔軸心17Pを有する通気孔17が、後横向きの外開口17bを有する状態で厚肉箇所5Bに形成されている。なお、案内孔部16の軸心Pと、固定軸14の軸心14pとは、組付け状態(
図1を参照)では、理論上は同心(同一軸心)となっている。厚肉箇所5Bは、バルブブリッジ4におけるインジェクタ31配置側(前側)と反対の側(後側)に設けられている。
【0034】
図3(A)、
図4(A)及び
図5に示されるように、通気孔17は、その内部側(内奥側)が案内孔部16に連通する前横向きの内開口17aを有している。つまり、通気孔17の外部連通側の開口である外開口17bは、ブリッジ本体5における第1及び第2の各ブリッジアーム部6,7が形成されない箇所(厚肉箇所5B)に設けられている。この構成は、詳しくは後述するが、二つ割構造の型成形によりバルブブリッジ4を製造する際に、一対の型どうしの遠近移動方向に沿う孔軸心17Pを有することとなり、型成形によって通気孔17も一体に成形できる利点に繋がる。
【0035】
内開口17aは円形(又は円形に近い楕円)であり、かつ、外開口17bは案内孔部16の周方向(左右方向)に長い楕円形(又は長円形)を呈するように形成されており、通気孔17の断面形状は内開口17aを除いて楕円形又は長円形である。加えて、通気孔17は、案内孔部16から遠ざかるに連れて(内開口17aから外開口17bに向かうに連れて)断面積が大きくなる外拡がり状の孔に設定されている。
【0036】
楕円又は長円形の外開口17bは、ブリッジ本体5の周方向(軸心Pを持つ円筒状のブリッジ本体5の周方向)、或いは厚肉箇所5Bの横方向(左右方向)に長い形状である〔
図3(A)を参照〕。また、通気孔17の「外拡がり状」とは、外開口17bの側からの孔軸心17P方向視では漏斗状やノズル状の通気孔17になっていると言える。
【0037】
次に、バルブブリッジ4の製造方法を、ブリッジ本体5に着目して説明する。
図2や
図5に示されるように、通気孔17は、型成形によってブリッジ本体5に設けられた凹み17Hが、案内孔部16を形成する加工によって案内孔部16に開口(内開口17a)する状態に構成されている。
【0038】
即ち、
図5(B)に示されるように、一対のブリッジアーム部6,7及びブリッジ本体5を通る型割面wが形成された第1及び第2の成形型K1,K2を用意し〔
図4(A)を参照〕、かつ、案内孔部16に到達する深さの凹み17Hをブリッジ本体5の上端部に生じさせる突起部18を第1及び第2の成形型K1,K2の何れか(例:第1成形型K1)に形成しておき、第1及び第2の二つの成形型K1,K2による型成形の後に、案内孔部16を機械加工によりブリッジ本体5に形成する、という作り方である。
【0039】
例として、
図5(B)に示されるように、バルブブリッジ4は鍛造品であり、鍛造用の型である第1成形型K1と第2成形型K2とによる型成形により、突起部18による凹み(窪み)17Hも一体に設けられたブリッジ本体5を有するバルブブリッジ4をする型成形工程が行われる。
【0040】
それから、凹み17Hを有するブリッジ本体5に、ドリル刃19による穿孔加工(機械加工の一例)を行い、案内孔部16を形成する案内孔形成工程が行われる。次いで、エンドミル20を用いたフライス加工(その他の機械加工でも良い)により、ブリッジ本体5の上面(符記省略)に受止め座5Aを形成する座面形成工程が行われる。なお、案内孔形成工程と座面形成工程と順序は逆でも可である。
【0041】
凹み17Hの内奥端(最大深さ)29の位置は、案内孔部16の予定形成範囲に至る(到達する)深さに設定されているので、機械加工によって案内孔部16を形成すれば、それによって
図5(A)に示されるように、自動的に内開口17aも形成され、通気孔17が完成される。従って、型成形後に行われる案内孔形成工程によって凹み17Hの内奥側を貫通して通気孔17が形成されるので、従来では必要であった「通気孔を形成するための専用の機械加工工程」を省略することができる。
【0042】
〔作用効果について〕
以上のとおり、バルブブリッジ4は、固定軸14を内嵌する案内孔部16がブリッジ本体5に形成され、案内孔部16の上端部とブリッジ本体5の外部とを連通させる通気孔17が設けられ、通気孔17は、案内孔部16から遠ざかるに連れて断面積が大きくなる外拡がり状の孔に設定することを特徴としている。
【0043】
つまり、解決手段として、次の(1)~(3)の考え方を有している。
(1)鍛造の凹み(窪み)17Hの形状を活かして、案内孔部16の内径加工をすることで貫通させて通気孔17とさせる。
(2)通気孔17を、開口面積は維持させながらインジェクタ31とは逆側となる1箇所(厚肉箇所5B)に集約させることにより、実質的に通気孔17の開口面積を広げる。
(3)通気孔17の部分は鍛造型の勾配を活かし、案内孔部16に架けて絞る。
【0044】
具体的には、鍛造や鋳造などにおいて、比較的型費が廉価となる二つ割構造の成形型K1,K2を用いるとともに、型割方向〔型割面wに直交する方向:型割面wは
図4(A)参照〕に延びる突起部18を一方の成形型K1に設け、バルブブリッジ4の金型成形に伴って凹み17Hも同時に作ってしまうものである。従って、前述したように、その後に案内孔部16を作る案内孔形成工程を行うことで通気孔17も一緒に作成される利点がある。また、通気孔17を外拡がり状とするには突起部18を基拡がり形状にするが、これは型成形で必要となる抜き勾配を大きくすることで容易に対応できるとともに、大きな抜き勾配は型抜き構造上でも好都合である。
【0045】
加えて、次の(4)~(6)の作用や効果を得ることができる。
(4)型成形によって通気孔17の基本形(凹み17H)も作成される構成であるから、「側面からの専用の機械加工によって通気孔を作る」という従来では必要であった加工工程を廃止することが可能になる利点がある。
(5)通気孔17の外開口17bの面積を(従来品より)大きくしてあるから、跳ね上げられたオイルの外開口17bでの捕集効率が向上する。
【0046】
(6)バルブブリッジ4が下方移動(バルブ1の開弁動作)する際は、案内孔部16における固定軸14以外の余剰空間部s(
図2を参照)の容積が拡大変化し、負圧によって外部の空気が通気孔17から余剰空間部sに吸引される。通気孔17は、内開口17aの面積よりも外開口17bの面積が明確に大きい外拡がり状となるような絞り形状とされているため、外開口17bから通気孔17に捕集される空気及びオイルの吸引速度が加速されるようになる。従って、通気孔17の存在に因るスカッフが固定軸14に生じない比較的小面積の内開口17aとしながらも、十分な通気(呼吸)及びオイル吸引が行えるというインパクタ効果を得ることができる。
【0047】
その結果、通気孔17を作る専用の機械加工を省略してコストダウンできるようにしながら、無理なく通気孔17を外拡がり形状にして、固定軸のスカッフ解消と十分な呼吸及びオイル供給が行えるという、従来の問題を一掃できるように改善されたバルブブリッジ4を提供することができる。
【0048】
外開口17bの面積を、内開口17aの面積の2倍以上の大きさとすれば、前述の作用や効果を強化できて好都合である。また、バルブブリッジ4を実機に組付けた状態(動弁装置A)では、厚肉箇所5B、即ち、外開口17bがブリッジ本体5における反インジェクタ側(インジェクタ31が存在する側と反対の側:後側)に配置されているので、外開口17bの吸引作用を妨げるものがほぼなく、通気孔17からの呼吸及びオイル捕集が効率良く行える利点もある
【0049】
〔別実施例〕
固定軸14が内嵌される案内孔部16は、
図5(B)に示されるように、ブリッジ本体5を貫通する「孔」に形成されている。また、図示は省略するが、ブリッジ本体の頂壁自体、或いは別部材を取付けてブリッジ入力部15とする構成の場合には、上側が貫通されない「穴」とすることも可能である。従って、案内孔部16とは、案内孔及び案内穴の双方を含む表現であると定義する。
【0050】
外開口17bの孔軸心17P方向視の形状は、内開口17aの径より大きい大径の円形や角丸矩形など、横長の楕円や長円形以外の形状でとされた通気孔17でも良い。
【符号の説明】
【0051】
1 バルブ
3 軸端部
5 ブリッジ本体
6 第1ブリッジアーム部
7 第2ブリッジアーム部
8 ロッカアーム
12 第1バルブ出力部
13 第2バルブ出力部
14 固定軸
16 案内孔部(案内孔)
17 通気孔
17H 凹み
17b 外部連通側の開口
18 突起部
K1 第1成形型
K2 第2成形型
w 型割面