(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093414
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】車椅子用クッション
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20240702BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61G5/12 707
A61G5/12 701
A47C27/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209781
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 文博
(72)【発明者】
【氏名】大友 悠平
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 裕代
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA01
3B096AB01
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】車椅子のバックサポートとの間に隙間を生じさせず、車椅子用クッションの面積全体を活かして使用者を確実に支持できる車椅子用クッションを提供する。
【解決手段】車椅子10の座シート18に配置される車椅子用クッション50であって、車椅子10のバックサポート16を張設するため左右両側に設けられたフレーム14を逃がすための逃がし部52が、背面側の左右両端部に形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子の座シートに配置される車椅子用クッションであって、
車椅子のバックサポートを張設するため左右両側に設けられたフレームを逃がすための逃がし部が、背面側の左右両端部に形成されていることを特徴とする車椅子用クッション。
【請求項2】
背面側端面が平面視直線状に形成され、
左右両側端面がそれぞれ平面視直線状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の車椅子用クッション。
【請求項3】
背面側端面が、前記フレームよりも背面側に配置されるように前記逃がし部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車椅子用クッション。
【請求項4】
車椅子のバックサポートの下部において使用者の腰をサポートする背張りが、各前記フレームの背張り取り付け部間にかけ渡されて設けられた車椅子に対し、
前記逃がし部は、前記フレーム及び前記背張り取り付け部を逃がすように形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車椅子用クッション。
【請求項5】
上面が、前記背張りの下端部よりも下方となるような厚さであることを特徴とする請求項4記載の車椅子用クッション。
【請求項6】
前記逃がし部は、
背面側の左右両端部の角が丸められて形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車椅子用クッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子に配置可能な車椅子用のクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子は座シートのみでは座圧の分散や姿勢の維持が困難な場合もあるため、座シート上にクッションを配置することが行われている。
車椅子の座シートに配置するクッションとしては、特許文献1に開示されているような構成が知られている。
特許文献1の車椅子用クッションによれば、座ったまま所定方向への体重移動を行うために使用者を支持するクッション部において、一部分の反発力が低くなるように構成している。
【0003】
また、特許文献2に開示されている車椅子用クッションは、高通気性を有し、吸水性を備えた材質で形成されたユーザ側部分と、車椅子座面側に設けられ、ユーザ側部分よりも高摩擦抵抗で、防水加工された、材質で形成される座面側部分と、ユーザ側部分及び座面側部分を内部に収容するカバーを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-198960号公報
【特許文献2】実用新案登録第3218974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に開示されているように、車椅子用クッションは平面視四角形状である。
このような平面視四角形状の車椅子用クッションを車椅子の座シートに配置しようとすると、車椅子の2つの手押しハンドルからそれぞれ下方に延びるフレームに、車椅子用クッションの背面側端部が当接してしまい、それ以上車椅子用クッションを奥に移動させることが出来ない場合がある。
【0006】
このように、車椅子用クッションを座シートの奥まで設置できない場合には、車椅子用クッションの背面側端面と、車椅子のバックサポートとの間に隙間が生じてしまう可能性もあり、また車椅子用クッションの面積全体を活かすことが出来ず、使用者の支持を確実に行えないという課題がある。
【0007】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、車椅子のバックサポートとの間に隙間を生じさせず、車椅子用クッションの面積全体を活かして使用者を確実に支持できる車椅子用クッションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる車椅子用クッションによれば、車椅子の座シートに配置される車椅子用クッションであって、車椅子のバックサポートを張設するため左右両側に設けられたフレームを逃がすための逃がし部が、背面側の左右両端部に形成されていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、車椅子用クッションを、フレームを逃がして奥まで配置させることができるので、バックサポートとの間に隙間が生じさせず、車椅子用クッションの面積全体を活かして使用者を確実に支持できる。
【0009】
また、背面側端面が平面視直線状に形成され、左右両側端面がそれぞれ平面視直線状に形成されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、逃がし部以外の部位で車椅子の構造に当接する箇所は全て直線ということになり、クッションの有効面積を最大化して使用者の確実な支持を図ることができる。
【0010】
また、背面側端面が、前記フレームよりも背面側に配置されるように前記逃がし部が形成されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、背面側端面が少なくともバックサポートには当接し、バックサポートとの間に隙間を生じさせないようにできる。
【0011】
また、車椅子のバックサポートの下部において使用者の腰をサポートする背張りが、各前記フレームの背張り取り付け部間にかけ渡されて設けられた車椅子に対し、前記逃がし部は、前記フレーム及び前記背張り取り付け部を逃がすように形成されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、背張り取り付け部がフレームよりもさらに突出している場合に、背張り取り付け部及びフレームを逃がし部で逃がして、奥まで配置させることができるので、バックサポートとの間に隙間が生じさせず、車椅子用クッションの面積全体を活かして使用者を確実に支持できる。
【0012】
また、上面が、前記背張りの下端部よりも下方となるような厚さであることを特徴としてもよい。
背張りは、使用者の腰をサポートするための構造であるため、車椅子用クッションを背張りよりも下方に位置させて、使用者の腰に背張りを的確にフィットさせることができる。また、背張りは、バックサポートよりも固い部材又は厚い部材で形成されている。このため、背張りより下方のバックサポートに車椅子用クッションの背面側端部を当接して押すことで、バックサポートとの間に隙間を生じさせないようにできる。
【0013】
また、前記逃がし部は、背面側の左右両端部の角が丸められて形成されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、フレームが逃がし部に当接したとしても当接する部位が曲面であるため、車椅子用クッションを座シートに配置して背面側に移動させる際の動作がスムーズに行える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車椅子のバックサポートとの間に隙間が生じさせず、車椅子用クッションの面積全体を活かして使用者を確実に支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】車椅子の背張りの取り付け箇所を拡大した説明図である。
【
図5】フレームと車椅子用クッションの位置関係を示す平面図である。
【
図6】フレーム及び背張り取り付け部と車椅子用クッションの位置関係を示す平面図である。
【
図7】背張りと車椅子用クッションの位置関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本明細書中では車椅子に着座した使用者の背中側を「背面側」、正面側を「正面側」、使用者が着座したときの左手側が「左側」、右手側が「右側」として説明している。
【0017】
(車椅子)
最初に、
図1及び
図2に基づいて、車椅子10について、本発明の車椅子用クッションに関係する構成のみ概略説明する。ただし、ここで示す車椅子10の構造はあくまで一例であり、本実施形態の車椅子用クッションは、ここで示す車椅子10のみに適用されるものではなく、その他種々の車椅子に適用され得る。
【0018】
車椅子10は、2本の手押しハンドル12から下方に延びるように形成された2本のフレーム14と、2本のフレーム14の間に配置されたバックサポート16とを備えている。バックサポート16は使用者が背中をもたれさせる部位である。
【0019】
また、使用者が着座する座シート18は、2本のフレーム14から前方に延びる2本の座フレーム20の間に配置されている。
2本の座フレーム20のそれぞれの外側においてサイドガード22が上方に突出するように配置され、サイドガード22の上部には、使用者が前腕を載せるためのアームサポート24が配置されている。
サイドガード22は、使用者の衣類がはみ出して駆動輪に巻き込まれたりすることを防止するため、使用者の側面を保護している。
【0020】
本実施形態の車椅子10では、バックサポート16の下部に背張り30が設けられている。背張り30は、使用者の腰をサポートするためのものであり、バックサポート16よりも固い部材又は厚い部材で構成され、使用者の腰に当接する位置に左右方向に沿って張られている。
背張り30は、バックサポート16に縫い付けられていてもよいし、バックサポート16とは分離していてもよい。なお、背張り30とバックサポート16は縫い付けられていることが一般的である。
【0021】
図2に示すように、背張り30の左右両端部は、各フレーム14に設けられている背張り取り付け部32に通して固定される。
背張り取り付け部32はフレーム14よりも細い金属製部材でコの字状に形成されており、フレーム14の表面との間に背張り30を進入できる程度の隙間33を開けてフレーム14に固定されている。
背張り30は、その左右両端部を背張り取り付け部32を通して、張り具合を調整してから固定でき、バックサポート16よりも背面側に配置されることが一般的である。
【0022】
なお、上述した背張り30は、設けられていない車椅子10も多く存在する。
本発明の車椅子用クッション50としては、背張り30が設けられている車椅子10にのみ対応するものではなく、背張り30が設けられていない車椅子10にも対応可能である。
【0023】
(車椅子用クッション)
続いて、
図3~
図7に基づいて、本実施形態における車椅子用クッション50について説明する。
車椅子用クッション50は、幅Wが座シート18の幅とほぼ同一幅に構成される。車椅子のサイズにもよるが、標準タイプで幅Wは400mm、小さいタイプで幅Wは380mm、大きいタイプで幅Wは430mmである。
また車椅子用クッション50の奥行Dは、車椅子のサイズが変わっても共通で400mmを想定している。
厚さTについては、よく動く使用者は地面に足を付けることもあるため薄い方が良く、あまり動かない使用者は体位を安定させるために立体的な形状にすることが好ましいので厚い方が良く、一律に決めることはできないが、30mm~60mm程度を想定している。
【0024】
車椅子用クッション50の内容物の材質は、モールドウレタン、ラテックス、又はモールドウレタンとラテックスの積層構造などのクッション性のある材質を採用することができるが、特に材質は限定しない。
また、モールドウレタン、ラテックス、又はモールドウレタンとラテックスの積層構造などのクッション性のある材質で形成した内容物にカバーを被せることで車椅子用クッション50が構成される。
【0025】
車椅子用クッション50は平面視すると、概略四角形状に形成されており、背面側の左右両端部に、車椅子10のバックサポート16の左右両側に設けられたフレーム14を逃がすための逃がし部52が形成されている。
ここで示す逃がし部52は、背面側の左右両端部の角が丸められた形状に形成されており、平面視すると外側に向けて凸となる円弧又はなめらかな曲線状に形成されている。このような形状とすることでフレーム14が逃がし部52に当接したとしても当接する部位が曲面であるため、車椅子用クッション50を座シート18に配置して背面側に移動させる際の動作がスムーズに行える。
ただし、逃がし部52の端面形状は、平面視外側に向けて凸となる円弧又はなめらかな曲線状のものに限定することは無く、平面視直線状であってもよい。
【0026】
本実施形態では、車椅子用クッション50の背面側端面50a、左右両側端面50b、50c及び正面側端面50dが平面視直線状に形成されている。
車椅子用クッション50の背面側端面50aを平面視直線状に形成することにより、フレーム14を逃がしつつクッションの有効面積を最大化できる。
また、左右両側端面50b、50cも平面視直線状のため、サイドガード22に当接する箇所も直線であり、クッションの有効面積を最大化して使用者を確実に支持することできる。
【0027】
また、
図5に示すように、各逃がし部52は、背面側端面50a及び左右両側端面50b、50cよりも内側に各フレーム14が完全に収容されるような形状となるように構成するとよい。
【0028】
このような構成により、車椅子用クッション50を座シート18に配置させて背面側に押し込むと、逃がし部52にフレーム14が位置し、背面側端面50aはフレーム14よりも背面側に位置するため、背面側端面50aをバックサポート16に確実に当接させて車椅子用クッション50とバックサポート16との間に隙間が生じないようにできる。
【0029】
なお、
図5では、車椅子用クッション50をバックサポート16に押し付けて、バックサポート16がフレーム14よりも大きく背面側に位置するように撓ませるようにしているが、少なくとも車椅子用クッション50の背面側端面50aはフレーム14の正面側の面よりも背面側に位置するように逃がし部52を形成するとよい。
【0030】
また、車椅子10に背張り30を設けることができる構成の場合、車椅子用クッション50の各逃がし部52は、フレーム14及び背張り取り付け部32を逃がすように構成される。
図6に示すように、本実施形態の背張り取り付け部32は、フレーム14から正面側に突出するように形成されており、各逃がし部52は、背面側端面50a及び左右両側端面50b、50cよりも内側に各フレーム14及び背張り取り付け部32が完全に収容されるような形状となるように構成されている。
【0031】
なお、
図6では、逃がし部52が背面側の左右両端部の角が直線状に切り欠かれた形状になっている。
このように、逃がし部52の端面が平面視直線状であっても各フレーム14及び背張り取り付け部32を逃がし、背面側端面50aをバックサポート16に確実に当接させて車椅子用クッション50とバックサポート16との間に隙間が生じないようにできる。
【0032】
また、
図7に示すように、車椅子10に背張り30が設けられている場合、車椅子用クッション50の厚さは、車椅子用クッション50が背張り30の下端部よりも下方に位置して、車椅子用クッション50の背面側端面50aが背張り30に当接しない構成にするとよい。
車椅子用クッション50を背張り30よりも下方に位置させる構成にすることで、背張り30を使用者の腰に的確にフィットさせることができる。また、背張り30は左右の背張り取り付け部32の間で張り具合を調整できるが、背張り30に車椅子用クッション50が当接してしまうと張り具合の調整も困難であるため、車椅子用クッション50を背張り30よりも下方に位置させる構成にすることで背張り30の張り具合の調整も容易に行える。
【0033】
そして、車椅子用クッション50を背張り30よりも下方に位置させることにより、車椅子用クッション50の背面側端面50aは、バックサポート16に確実に当接させることができる。
これにより、車椅子用クッション50とバックサポート16との間に隙間を生じさせないようにすることができる。
【0034】
なお、逃がし部52の形状としては、上述してきた実施形態に限定するものではなく、フレーム14が収容できる程度の平面視矩形状の切り欠き状の凹部、又は平面視円形の切り欠き状の凹部であってもよい。
【0035】
上述してきた実施形態では、車椅子用クッション50の上面は平面となっている構成について図示してきた。
しかし、車椅子用クッション50の上面は、使用者の臀部と大腿部が当接する箇所において凹みが形成されているなど、立体的な形状であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 車椅子
12 ハンドル
14 フレーム
16 バックサポート
18 座シート
20 座フレーム
22 サイドガード
24 アームサポート
30 背張り
32 背張り取り付け部
33 隙間
50 車椅子用クッション
50a 背面側端面
50b、50c 左右両側端面
50d 正面側端面
52 逃がし部