IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タカノ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-クッション 図1
  • 特開-クッション 図2
  • 特開-クッション 図3
  • 特開-クッション 図4
  • 特開-クッション 図5
  • 特開-クッション 図6
  • 特開-クッション 図7
  • 特開-クッション 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093415
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】クッション
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/18 20060101AFI20240702BHJP
   A47C 27/15 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A47C7/18
A47C27/15 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209782
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 文博
(72)【発明者】
【氏名】大友 悠平
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 裕代
【テーマコード(参考)】
3B084
3B096
【Fターム(参考)】
3B084CA07
3B084CB01
3B096AA02
3B096AB05
(57)【要約】
【課題】座り心地や正しい着座姿勢を長時間に亘って維持することが可能なクッションを提供すること。
【解決手段】ウレタンフォームにより形成された下部クッション材10の上にラテックスフォームにより形成された上部クッション材20が載置されてなる二層構造のクッション100であって、下部クッション材10の上面には、使用者の臀部位置に対応する部位に臀部用凹部12が形成されていると共に、使用者の大腿部に対応する部位に大腿部用凹部13が形成されていることを特徴とするクッション100である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンフォームにより形成された下部クッション材の上にラテックスフォームにより形成された上部クッション材が載置されてなる二層構造のクッションであって、
前記下部クッション材の上面には、使用者の臀部位置に対応する部位に臀部用凹部が形成されていると共に、前記使用者の大腿部に対応する部位に大腿部用凹部が形成されていることを特徴とするクッション。
【請求項2】
前記上部クッション材は、均一厚さの板体に形成されていて、前記下部クッション材の上面と前記上部クッション材の下面との間にギャップ部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のクッション。
【請求項3】
前記上部クッション材には、前記臀部用凹部の平面投影領域内に複数の貫通孔が穿設されていることを特徴とする請求項1または2記載のクッション。
【請求項4】
前記上部クッション材には、前記大腿部用凹部どうしの間の位置に形成された凸部に嵌合する嵌合凹部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のクッション。
【請求項5】
前記臀部用凹部における座骨部分がさらに深く形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
椅子の座り心地を良好にする目的や、着座姿勢を良好に維持することを目的として椅子の座面に敷いて用いられるクッション材には様々なものが提案されている。このようなクッションにおいては、たとえば特許文献1(特開2020-199042号公報)に示すようなものが提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されているクッションは、上下に積層された2層構造のクッションであり、上部クッション材と下部クッション材における反発係数を夫々異ならせることにより、良好な座り心地を提供することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-199042号公報(請求項1、明細書段落0019―0024、図3図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているクッションによれば、均一厚さに形成された上部クッションと下部クッション材を単純に高さ方向に積層させているため、座り心地や正しい着座姿勢を長時間に亘って維持することが困難であるといった課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は上記課題を解決するためのものであり、その目的とするところは座り心地や正しい着座姿勢を長時間に亘って維持することが可能なクッションを提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため発明者が鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち本発明は、ウレタンフォームにより形成された下部クッション材の上にラテックスフォームにより形成された上部クッション材が載置されてなる二層構造のクッションであって、前記下部クッション材の上面には、使用者の臀部位置に対応する部位に臀部用凹部が形成されていると共に、前記使用者の大腿部に対応する部位に大腿部用凹部が形成されていることを特徴とするクッションである。
【0008】
これにより、使用者の臀部が臀部用凹部に、嵌り込むと共に、使用者の大腿部が大腿部用凹部に嵌り込むため、クッションと臀部および大腿部が互いに位置決めされた状態になり、座り心地や正しい着座姿勢を長期にわたって維持することができる。
【0009】
また、前記上部クッション材は、均一厚さの板体に形成されていて、前記下部クッション材の上面と前記上部クッション材の下面との間にギャップ部が形成されていることが好ましい。
【0010】
これにより、上部クッション材と下部クッション材との間に形成されたギャップ部にある空気が着座の都度クッションの内部と外部との間で流通するため、クッション内部における湿気や臭気の停滞を予防することができる。
【0011】
また、前記上部クッション材には、前記臀部用凹部の平面投影領域内に複数の貫通孔が穿設されていることが好ましい。
【0012】
これにより、上部クッション材の変形能が向上し、使用者の体重や体形に合わせて上部クッション材を適切に変形させることができる。また、貫通孔はギャップ部に連通しているため、ギャップ部における空気の流通がさらに良好になる。
【0013】
また、前記上部クッション材には、前記大腿部用凹部どうしの間の位置に形成された凸部に嵌合する嵌合凹部が形成されていることが好ましい。
【0014】
これにより、上部クッション材が下部クッション材に対して位置決めされた状態になり、着座状態における使用者の姿勢維持力が低下していても、使用者の臀部位置が着座方向前方にずれないようにすることができる。
【0015】
また、前記臀部用凹部における座骨部分がさらに深く形成されていることが好ましい。
【0016】
これにより、使用者の着座時における座り心地をより良好にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るクッションの構成を採用することにより、座り心地や正しい着座姿勢を長時間に亘って維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態におけるクッションの手前側からの斜視図である。
図2】本実施形態におけるクッションの背面図である。
図3】本実施形態におけるクッションの組立斜視図である。
図4図1中のIV―IV線における断面図である。
図5図1中のV―V線における断面図である。
図6図1中のVI―VI線における断面図である。
図7図1中のVII―VII線における断面図である。
図8図1中のVIII―VIII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るクッション100の実施形態について説明する。図1図3に示すように、本実施形態におけるクッション100は、下部クッション材10と、下部クッション材10の上面に積層される上部クッション材20とを具備する二層構造をなしている。なお、本実施形態における右、左、正面および背面とは、椅子等に載置された状態のクッション100に座った状態の使用者における右、左、正面および背面を意味している。必要に応じて積層された下部クッション材10と上部クッション材20は、内袋および外袋(いずれも図示はせず)に収容することもできる。内袋は、気体の通過を許容するが液体の通過を許容しない素材により形成されていることが好ましい。外袋は、外表面に肌触りが良好であって、洗濯機による洗濯が可能な素材により形成されていることが好ましい。
【0020】
下部クッション材10は、ウレタンフォームを用いたモールド成型により所定形状に形成されている。本実施形態における下部クッション材10は、平面視形状が角部を所定形状に切り落とした角丸四角形状(変形六角形状)に形成されている。これにより、椅子の座面にクッション100を載置する際において椅子の支柱等を回避することができ、クッション100を座面の適切な位置に載置することができる。また、図2に示すように、下部クッション材10の底面11は、下側に凸形状となる緩やかな湾曲形状に形成されており、平坦な座面の椅子等に載置した場合は、非着座時における椅子の座面と底面11との接触面積を可及的に少なくすることができる。これにより非着座時におけるクッション100の露出面積が増え、クッション100の湿気のこもりを防止することができる。また、車椅子の座面に載置する場合には、車椅子の湾曲した座面形状に沿わせることができ、車椅子へのクッション100の装着性が向上する。なお、車椅子の座面はメッシュ状になっていることが多いため、クッション100の通気性は十分確保可能である。
【0021】
図3に示すように、下部クッション材10の上面には使用者の臀部位置に対応する部位に臀部用凹部12が形成されていると共に、使用者の大腿部に対応する部位に大腿部用凹部13が形成されている。2本の大腿部用凹部13どうしの間部分には大腿部用凹部13に対して相対的に上方に突出する大腿部間凸部14が形成されている。また、図3に示すように、下部クッション材10の上面は、右側壁面16、背面側壁面17、左側壁面18および大腿部間凸部14における上面が臀部用凹部12および大腿部用凹部13に対して相対的に高く形成されている。右側壁面16、背面側壁面17、左側壁面18と、臀部用凹部12および大腿部用凹部13との間は、緩やかな傾斜面19によって滑らかに接続されている。また、右側壁面16と左側壁面18は、奥行方向において同じ高さに形成されているが、背面側壁面17は幅方向における中央部分が窪んだ凹形状に形成されている。
【0022】
着座時における臀部形状に倣って形成された臀部用凹部12には、着座状態の使用者の座骨部分の位置に対応する座骨部分12Aと、着座状態の使用者の会陰部の位置に対応する会陰部当接部12Bが形成されている。座骨部分12Aは、臀部用凹部12の他の部分よりもさらに深く形成されており、会陰部当接部12Bは臀部用凹部12の正面側から背面側に向けて湾曲する凸形状に形成されている。座骨部分12Aと会陰部当接部12Bにより、着座した際における使用者の座り心地を長期にわたって良好に維持することができると共に、着座姿勢を良好に維持することが可能になり、車椅子での使用者においては、褥瘡発生リスクの低減が期待できる。また、大腿部用凹部13と大腿部間凸部14により、着座状態の使用者の耐力(脚力)が低下している場合であっても、使用者の大腿部の内転動作を防止することができる。これにより、大腿部の内転による着座姿勢の乱れを防止することができる。さらに、大腿部用凹部13と傾斜面19により大腿部の外転を防止することもできる。さらにまた、臀部が前方(正面側)に滑って骨盤が寝た状態になるいわゆるズッコケ座りを防止することもできる。
【0023】
上部クッション材20は、ラテックスフォームを用いたモールド成型により形成することができる。本実施形態における上部クッション材20は、均一厚さ寸法の平板形状に形成されている。図1図3に示すように、上部クッション材20には、下部クッション材10の大腿部間凸部14が形成されている位置に対応する平面位置に大腿部間凸部14と平面的に凹凸嵌合する嵌合凹部22が形成されている。これにより上部クッション材20の平面視形状は、図3に示すようないわゆる短パンの正面視形状を模した形状に形成されている。また、上部クッション材20には下部クッション材10の臀部用凹部12の平面投影領域内に複数の貫通孔24が穿設されている。これらの貫通孔24は座骨部分12Aおよび会陰部当接部12Bの平面投影領域(骨盤の平面投影領域)を含む所要範囲にわたって平面視略M字状配列で配設されている。この貫通孔24により臀部用凹部12の平面投影領域における上部クッション材20の変形が促進され、使用者が着座した後の座骨位置のずれを防止することができる。このような上部クッション材20は、モールド成型の後に打ち抜き加工をすることで安価に製造することができる。
【0024】
本実施形態におけるクッション100は、下部クッション材10の上面に均一厚さに形成された上部クッション材20を載置することにより形成されている。上部クッション材20は、嵌合凹部22を下部クッション材10の大腿部間凸部14に凹凸嵌合させることにより位置決めおよび位置ずれ防止された状態で下部クッション材10に載置される。上部クッション材20は、接着剤を用いずに下部クッション材10に単に積層載置されている。これにより、クッション100が硬くならず、接着剤の臭いが生じず、破損や汚損した下部クッション材10または上部クッション材20の一方のみを交換することができ、異なる素材で形成された夫々の部材を分別して廃棄処理することができる。
【0025】
また、図2図4および図5等に示すように、上面に凹凸部が形成された下部クッション材10に均一厚さの上部クッション材20を積層載置することで、下部クッション材10の上面と上部クッション材20の下面との間にギャップ部30が形成されていてもよい。本実施形態におけるギャップ部30は、図4図8に示すように、臀部用凹部12の平面投影領域に形成され、背面側壁面17において外部空間に連通(開口)している。よって、使用者がクッション100に着座する都度、ギャップ部30の空気が貫通孔24や下部クッション材10および上部クッション材20の隙間部分からクッション100の内部と外部との間で流通することになる。これにより、クッション100の湿気や臭気の滞留を防止することができ、快適な使い心地を長期間維持することができる。なお、図4図8図1中の各切断線位置における断面図であるが、ここでは、断面部分の色を非断面部分とは異なる色にすることでハッチングを省略している。
【0026】
以上に、本発明に係るクッション100について実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、以上の実施形態においては、上部クッション材20が均一厚さの板状体に形成された形態を例示しているが、上部クッション材20の下面を下部クッション材10の上面の凹凸に倣った凹凸形状に形成した形態を採用することもできる。また、上部クッション材20の素材を柔軟な素材にすることで、平板状に形成した上部クッション材20であっても自重によるたわみによって下部クッション材10の上面に上部クッション材20の下面を密着させた形態を採用することもできる。これらの形態では、上部クッション材20が下部クッション材10の上面に凹凸嵌合し、下部クッション材10に上部クッション材20を位置決めした状態かつ位置ずれをより確実に防止した状態になるため、大腿部間凸部14は配設を省略することもできる。また、荷重が集中する部位における上部クッション材20の厚さ寸法を増加させることで、繰り返し使用におけるクッション100のへたりの進行を抑制することができる。
【0027】
また、以上の実施形態においては、上部クッション材20に大腿部間凸部14と平面的に凹凸嵌合する嵌合凹部22が形成されているが、この形態に限定されるものではない。大腿部間凸部14と高さ方向に凹凸嵌合させることで上部クッション材20を位置決めおよび位置ずれを防止した状態で下部クッション材10に積層載置することもできる。また、以上の実施形態における上部クッション材20には複数の貫通孔24が穿設されているが、クッション100の側周面(背面側壁面17)におけるギャップ部30の開口面積が十分確保されている場合は、貫通孔24の配設を省略することもできる。
【0028】
そして、以上の実施形態における下部クッション材10は、臀部用凹部12における座骨部分12Aおよび会陰部当接部12Bの部位を一段と深い凹部になるように形成しているがこの解体に限定されるものではない。座骨部分12Aは臀部用凹部12の全体形状に倣わせた形状に形成することもできる。さらには、会陰部当接部12Bの配設を省略した形態を採用することもできる。
【0029】
さらには、以上に説明した実施形態と上記変形例における任意の構成どうしが適宜組み合わされたクッション100の形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0030】
10:下部クッション材,
11:下面,
12:臀部用凹部,12A:座骨部分,12B:会陰部当接部,
13:大腿部用凹部,14:大腿部間凸部,
16:右側壁面,17:背面側壁面,18:左側壁面,19:傾斜面
20:上部クッション材,
22:嵌合凹部,24:貫通孔
30:ギャップ部
100:クッション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8