(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093430
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20240702BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20240702BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C9/18 K
B60C9/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209805
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】児玉 紀彦
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC12
3D131DA33
3D131DA45
3D131EA09V
3D131EA09X
3D131EB11V
3D131EB11X
(57)【要約】
【課題】低内圧時におけるトラクション性能を向上させる。
【解決手段】空気入りタイヤ1は、トレッドゴム14とベルト20とを有するトレッド2を備える。トレッドゴム14は、トレッド変曲点P10よりタイヤ軸方向中央側がセンター側トレッド曲率半径R11を有し、トレッド変曲点P10よりタイヤ軸方向外側がセンター側トレッド曲率半径R11より小さいショルダ側トレッド曲率半径R12を有する。ベルト20は、ベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向中央側がセンター側ベルト曲率半径R21を有し、ベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向外側がセンター側ベルト曲率半径R21より小さいショルダ側ベルト曲率半径R22を有する。トレッド変曲点P10は、ベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向中央側に位置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側に配置されたベルトとを有するトレッドを備えた空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムのタイヤ径方向外表面は、タイヤ子午線断面においてトレッド変曲点よりタイヤ軸方向中央側がセンター側トレッド曲率半径を有し、前記トレッド変曲点よりタイヤ軸方向外側が前記センター側トレッド曲率半径より小さいショルダ側トレッド曲率半径を有し、
前記ベルトのタイヤ径方向外表面は、タイヤ子午線断面においてベルト変曲点よりタイヤ軸方向中央側がセンター側ベルト曲率半径を有し、前記ベルト変曲点よりタイヤ軸方向外側が前記センター側ベルト曲率半径より小さいショルダ側ベルト曲率半径を有し、
前記トレッド変曲点は、前記ベルト変曲点よりタイヤ軸方向中央側に位置する
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記トレッドは、タイヤ周方向に延びる主溝によって画定されるセンター側陸とショルダ側陸とを有し、前記トレッド変曲点は、前記ショルダ側陸に位置する
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記トレッドゴムのタイヤ径方向外表面を形成する前記ショルダ側トレッド曲率半径の中心点は、前記トレッドゴムのタイヤ径方向外表面の前記トレッド変曲点と前記トレッドゴムのタイヤ径方向外表面を形成する前記センター側トレッド曲率半径の中心点とを結ぶ直線上に位置する
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ショルダ側トレッド曲率半径に対する前記センター側トレッド曲率半径の割合は、前記ショルダ側ベルト曲率半径に対する前記センター側ベルト曲率半径の割合より大きい
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤとして、トレッドの外形形状についてショルダ側トレッドの曲率半径をセンター側トレッドの曲率半径より小さくしたものが知られている。例えば特許文献1には、ショルダ側トレッド曲率半径をセンター側トレッド曲率半径より小さくした空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ノーマルタイヤ又はオールシーズンタイヤなどの空気入りタイヤについてもスノー性能の向上が求められている。このため、空気入りタイヤでは、トラクション性能、特に小型トラック用タイヤ(例えばJATMA「B章:小型トラック用」に記載のタイヤ)における350kPaなどの低内圧時におけるトラクション性能を向上させることが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、低内圧時におけるトラクション性能を向上させることができる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側に配置されたベルトとを有するトレッドを備えた空気入りタイヤであって、前記トレッドゴムのタイヤ径方向外表面は、タイヤ子午線断面においてトレッド変曲点よりタイヤ軸方向中央側がセンター側トレッド曲率半径を有し、前記トレッド変曲点よりタイヤ軸方向外側が前記センター側トレッド曲率半径より小さいショルダ側トレッド曲率半径を有し、前記ベルトのタイヤ径方向外表面は、タイヤ子午線断面においてベルト変曲点よりタイヤ軸方向中央側がセンター側ベルト曲率半径を有し、前記ベルト変曲点よりタイヤ軸方向外側が前記センター側ベルト曲率半径より小さいショルダ側ベルト曲率半径を有し、前記トレッド変曲点は、前記ベルト変曲点よりタイヤ軸方向中央側に位置する空気入りタイヤを提供する。
【0007】
本構成により、ショルダ側ベルト曲率半径をセンター側ベルト曲率半径より小さくした場合について、ショルダ側トレッド曲率半径をセンター側トレッド曲率半径より小さくされるとともに、ショルダ側トレッド曲率半径とセンター側トレッド曲率半径のトレッド変曲点が、ショルダ側ベルト曲率半径とセンター側ベルト曲率半径のベルト変曲点よりタイヤ軸方向中央側に位置される。これにより、ショルダ側ベルト曲率半径をセンター側ベルト曲率半径より小さくした場合について、ショルダ側トレッド曲率半径をセンター側トレッド曲率半径より小さくして、ショルダ側トレッド曲率半径がセンター側トレッド曲率半径と同等以上である場合に比して、ショルダ側トレッドのタイヤ周方向における接地長を短くして接地圧を向上させ、トラクション性能を向上させることができる。トレッド変曲点がベルト変曲点よりタイヤ軸方向中央側に位置するので、トレッド変曲点がベルト変曲点よりタイヤ軸方向外側に位置する場合に比して、加硫成型時にセンター側に比してショルダ側がタイヤ径方向外側に膨出するベルトによってショルダ側トレッドの接地長が長くなることを抑制して接地圧を向上させ、低内圧時におけるトラクション性能を向上させることができる。
【0008】
前記トレッドは、タイヤ周方向に延びる主溝によって画定されるセンター側陸とショルダ側陸とを有し、前記トレッド変曲点は、前記ショルダ側陸に位置する。
【0009】
本構成により、トレッドは、主溝によって画定されるセンター側陸とショルダ側陸とを有し、トレッド変曲点は、ショルダ側陸に位置するので、トレッド変曲点がショルダ側陸に位置するトレッドを有する空気入りタイヤにおいて、トラクション性能を向上させることができる。
【0010】
前記トレッドゴムのタイヤ径方向外表面を形成する前記ショルダ側トレッド曲率半径の中心点は、前記トレッドゴムのタイヤ径方向外表面の前記トレッド変曲点と前記トレッドゴムのタイヤ径方向外表面を形成する前記センター側トレッド曲率半径の中心点とを結ぶ直線上に位置することが好ましい。
【0011】
本構成により、トレッドゴムのタイヤ径方向外表面を形成するショルダ側トレッド曲率半径の中心点は、トレッド変曲点とトレッドゴムのタイヤ径方向外表面を形成するセンター側トレッド曲率半径の中心点とを結ぶ直線上に位置するので、センター側トレッド曲率半径とショルダ側トレッド曲率半径が異なる場合についても、センター側トレッド曲率半径を有する部分とショルダ側トレッド曲率半径を有する部分とを滑らかに接続することができる。
【0012】
前記ショルダ側トレッド曲率半径に対する前記センター側トレッド曲率半径の割合は、前記ショルダ側ベルト曲率半径に対する前記センター側ベルト曲率半径の割合より大きい。
【0013】
本構成により、ショルダ側トレッド曲率半径に対するセンター側トレッド曲率半径の割合は、ショルダ側ベルト曲率半径に対するセンター側ベルト曲率半径の割合より大きいことにより、ショルダ側トレッド曲率半径に対するセンター側トレッド曲率半径の割合が、ショルダ側ベルト曲率半径に対するセンター側ベルト曲率半径の割合より小さい場合に比して、低内圧時におけるトラクション性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、低内圧時におけるトラクション性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午線半断面図である。
【
図2】
図1に示す空気入りタイヤのトレッド及びその周辺の拡大図である。
【
図4】タイヤ内圧充填時のタイヤ内面の径方向変化量を示すグラフである。
【
図5】実施例に係る空気入りタイヤの接地形状を示す図である。
【
図6】比較例に係る空気入りタイヤの接地形状を示す図である。
【
図7】実施例に係る空気入りタイヤの接地形状及び接地圧力の解析結果を示す図である。
【
図8】比較例に係る空気入りタイヤの接地形状及び接地圧力の解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午線半断面図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るゴム製の空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」という)1は、路面に接するタイヤ接地面8を有するトレッド2と、トレッド2のタイヤ軸方向外側からタイヤ径方向内側に延びて空気入りタイヤ1の側面を構成する両側のサイドウォール3と、両側のサイドウォール3のタイヤ径方向内側にそれぞれ位置するとともに図示しないホイールのリムに固定される両側のビード4とを備えている。
【0018】
ビード4は、ビードコア5とビードコア5のタイヤ径方向外側に配置されるビードフィラー6とを有している。ビードコア5は、複数のビードワイヤを束ねて環状に形成されている。ビードフィラー6は、ビードコア5を補強するものであり、ゴム材料から断面略三角形状に環状に形成されている。
【0019】
タイヤ1は、両側のビード4の間に、具体的には両側のビードコア5の間にトロイダル状に掛け渡されたカーカスプライ10を備えている。カーカスプライ10は、第1カーカスプライ11及び第2カーカスプライ12から構成されている。第1カーカスプライ11及び第2カーカスプライ12はそれぞれ、複数の有機繊維を撚ったコードを並設してゴムで被覆して帯状に形成されている。
【0020】
第1カーカスプライ11は、両側のビードコア5の間に掛け渡され、第1カーカスプライ11の外端部11aは、ビードコア5に対して巻き上げられてビードフィラー6よりタイヤ径方向外側にサイドウォール3の最大幅位置M近傍に位置している。第2カーカスプライ12は、第1カーカスプライ11のタイヤ径方向外側に重ねて配置され、第2カーカスプライ12の外端部12aは、ビードコア5に対して巻き上げられてビードフィラー6のタイヤ径方向外側端部近傍に位置している。
【0021】
カーカスプライ10のタイヤ径方向内側には、タイヤ内面を構成して空気圧を保持するためのインナーライナ7が配置されている。インナーライナ7は、トレッド2、両側のサイドウォール3及び両側のビード4に亘って設けられ、空気の透過を防ぐゴム材料で形成されている。
【0022】
トレッド2におけるカーカスプライ10のタイヤ径方向外側には、無端状のベルト20が配置されている。ベルト20は、第1ベルト21及び第2ベルト22から構成されている。第1ベルト21は、カーカスプライ10のタイヤ径方向外側に重ねて配置され、第2ベルト22は、第1ベルト21のタイヤ径方向外側に重ねて配置されている。
【0023】
第2ベルト22のタイヤ軸方向外側端部22aは、第1ベルト21のタイヤ軸方向外側端部21aよりタイヤ軸方向内側(タイヤ赤道線であるタイヤ中心線CL側)に位置している。第1ベルト21及び第2ベルト22はそれぞれ、複数のワイヤを並設してゴムで被覆して帯状に形成されている。
【0024】
ベルト20のタイヤ径方向外側には、無端状のキャッププライ30が配置されている。キャッププライ30は、ベルト20を補強するためのものであり、ベルト20を覆っている。キャッププライ30は、第1キャッププライ31及び第2キャッププライ32から構成されている。第1キャッププライ31は、ベルト20のタイヤ径方向外側に重ねて配置され、第2キャッププライ32は、第1キャッププライ31のタイヤ径方向外側に重ねて配置されている。第1キャッププライ31及び第2キャッププライ32はそれぞれ、複数の有機繊維を撚ったコードを並設してゴムで被覆して帯状に形成されている。
【0025】
ベルト20のタイヤ軸方向外側端部21a,22aとカーカスプライ10との間には、ゴム製の無端状のパッド40が配置されている。第1ベルト21及び第2ベルト22のタイヤ軸方向外側端部21a,22aと第1キャッププライ31及び第2キャッププライ32のタイヤ径方向外側端部31a,32aとはそれぞれ、パッド40とタイヤ軸方向TWにオーバーラップする位置に配置されている。
【0026】
タイヤ1は、トレッド2におけるキャッププライ30のタイヤ径方向外側に設けられてトレッド2の外表面を形成するトレッドゴム14と、ビード4におけるカーカスプライ10のタイヤ径方向内側及びタイヤ軸方向両側に設けられてビード4の外表面を形成するリムストリップゴム15と、サイドウォール3におけるカーカスプライ10のタイヤ軸方向外側に設けられてサイドウォール3の外表面を形成するサイドウォールゴム16とを備えている。
【0027】
トレッド2には、タイヤ周方向TCに延びる複数の主溝24とタイヤ軸方向TWに延びる複数の横溝25とが形成され、複数の主溝24と複数の横溝25とによって画定される複数のブロック26,27が設けられている。主溝24と横溝25とは、タイヤ接地面8からの溝深さが同じである。主溝24の溝底を結ぶ溝底ライン9は、タイヤ接地面8に対して一定間隔でタイヤ径方向内側に形成されている。
【0028】
主溝24は、タイヤ軸方向TWの中心に位置するセンター主溝24aと、センター主溝24aのタイヤ軸方向TWの外側に位置する一対のショルダ主溝24bとを有している。センター主溝24aとショルダ主溝24bとは、タイヤ軸方向TWに間隔をあけて配置されている。
【0029】
トレッド2には、一対のショルダ主溝24bによって画定されるセンター側陸26とショルダ側陸27が設けられている。センター側陸26は、タイヤ軸方向内側に配置され、ショルダ側陸27は、タイヤ軸方向外側に配置されている。トレッド2には、タイヤ周方向TCに沿って複数のセンター側陸26であるセンターブロック26及びショルダ側陸27であるショルダブロック27が等間隔に設けられている。
【0030】
図2は、
図1に示す空気入りタイヤのトレッド及びその周辺の拡大図である。トレッド2は、
図2に示すように、トレッドゴム14と、トレッドゴム14のタイヤ径方向内側に配置されたキャッププライ30と、キャッププライ30のタイヤ径方向内側に配置されたベルト20と、ベルト20のタイヤ径方向内側に配置されたカーカスプライ10と、カーカスプライ10のタイヤ径方向内側に配置されたインナーライナ7とを有している。
【0031】
タイヤ1では、トレッドゴム14のタイヤ径方向外表面は、タイヤ子午線断面においてトレッド変曲点P10よりタイヤ軸方向内側であるタイヤ軸方向中央側がセンター側トレッド曲率半径R11を有し、トレッド変曲点P10よりタイヤ軸方向外側がセンター側トレッド曲率半径R11より小さいショルダ側トレッド曲率半径R12を有している。トレッド2は、一対のショルダ主溝24bによって画定されるセンター側陸26とショルダ側陸27とを有し、トレッド変曲点P10は、ショルダ側陸27に位置する。
【0032】
トレッドゴム14のタイヤ径方向外表面は、タイヤ子午線断面において、トレッド変曲点P10よりタイヤ軸方向中央側領域がセンター側トレッド曲率半径R11を有する円弧によって形成され、トレッド変曲点P10よりタイヤ軸方向外側領域がショルダ側トレッド曲率半径R12を有する円弧によって形成されている。
【0033】
タイヤ子午線断面においてセンター側トレッド曲率半径R11を有するトレッドゴム14のタイヤ軸方向中央側領域とショルダ側トレッド曲率半径R12を有するトレッドゴム14のタイヤ軸方向外側領域とはトレッド変曲点P10において滑らかに接続されている。トレッドゴム14のタイヤ径方向外表面を形成するショルダ側トレッド曲率半径R12の中心点C12は、トレッドゴム14のタイヤ径方向外表面のトレッド変曲点P10とトレッドゴム14のタイヤ径方向外表面を形成するセンター側トレッド曲率半径R11の中心点C11とを結ぶ直線L10上に位置する。
【0034】
タイヤ1では、ベルト20のタイヤ径方向外表面、具体的には第2ベルト22のタイヤ径方向外表面は、タイヤ子午線断面においてベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向中央側がセンター側ベルト曲率半径R21を有し、ベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向外側がセンター側ベルト曲率半径R21より小さいショルダ側ベルト曲率半径R22を有している。
【0035】
ベルト20のタイヤ径方向外表面、具体的には第2ベルト22のタイヤ径方向外表面は、タイヤ子午線断面において、ベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向中央側領域がセンター側ベルト曲率半径R21を有する円弧によって形成され、ベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向外側領域がショルダ側ベルト曲率半径R22を有する円弧によって形成されている。タイヤ子午線断面において、ベルト20のタイヤ径方向外表面を形成するセンター側トレッド曲率半径R21の中心点C21は、ベルト20のタイヤ径方向内側に位置し、ベルト20のタイヤ径方向外表面を形成するセンター側ベルト曲率半径R22の中心点C22は、ベルト20のタイヤ径方向外側に位置している。
【0036】
トレッド変曲点P10は、ベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向中央側に位置している。トレッドゴム14のタイヤ径方向外表面においてタイヤ軸方向内側からタイヤ軸方向外側に曲率半径が変わるトレッド変曲点P10は、ベルト20のタイヤ径方向外表面においてタイヤ軸方向内側からタイヤ軸方向外側に曲率半径が変わるベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向中央側に位置している。
【0037】
タイヤ1では、ショルダ側トレッド曲率半径R12に対するセンター側トレッド曲率半径R11の割合(R11/R12)は、ショルダ側ベルト曲率半径R22に対するセンター側ベルト曲率半径R21の割合(R21/R22)より大きく設定されている[(R11/R12)>(R21/R22)]。
【0038】
図3は、ベルトの張力分布を示すグラフである。
図3では、ベルトのタイヤ軸方向位置を横軸にとり、ベルトの張力を縦軸にとって表示している。
図3に示すように、ベルト20の張力は、ベルト20のタイヤ中心線CLであるタイヤ軸方向中心位置において最大値Tmaxを有し、タイヤ軸方向外側に向かうにつれて小さくなり、ベルト変曲点P20近傍において急激に小さくなる。ベルト20は、タイヤ軸方向中央側ではタイヤ径方向における拘束力が大きく、タイヤ軸方向外側ではタイヤ径方向における拘束力が小さくなる。
【0039】
図4は、タイヤ内圧充填時のタイヤ内面の径方向変化量を示すグラフである。
図4では、タイヤ内面のタイヤ軸方向位置を横軸にとり、タイヤ内圧充填時におけるタイヤ内面の径方向変化量を縦軸にとって表示している。加硫成型時にタイヤが内圧充填されて膨出変形されるとき、
図4に示すように、タイヤ内面の径方向変化量は、タイヤ内面のタイヤ中心線CLであるタイヤ軸方向中心位置からタイヤ軸方向外側に向かうにつれて大きくなり、タイヤ軸方向TWにおけるショルダ側のベルト変曲点P20近傍において最大値Vmaxを有し、タイヤ軸方向外側端部に向けて小さくなる。
【0040】
図3及び
図4に示すように、ベルト20は、ベルト20のタイヤ軸方向中央側ではタイヤ径方向における拘束力が大きく、ベルト20のタイヤ軸方向外側ではタイヤ径方向における拘束力が小さくなることから、加硫成型時にタイヤが内圧充填されて膨張変形されるとき、ショルダ側ではタイヤ内面の径方向変化量が大きくなり、ショルダ側においてトレッド2のタイヤ径方向外表面がタイヤ径方向に大きくなってタイヤ周方向における接地長が長くなるおそれがある。
【0041】
タイヤ1では、ショルダ側のタイヤ周方向における接地長を抑制するように、タイヤ子午線断面において、ショルダ側ベルト曲率半径R22をセンター側ベルト曲率半径R21より小さくした場合について、ショルダ側トレッド曲率半径R12をセンター側トレッド曲率半径R11より小さくするとともに、ショルダ側トレッド曲率半径R12とセンター側トレッド曲率半径R11のトレッド変曲点P10を、ショルダ側ベルト曲率半径R22とセンター側ベルト曲率半径R21のベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向中央側に位置している。
【0042】
また、ショルダ側トレッド曲率半径R12に対するセンター側トレッド曲率半径R11の割合(R11/R12)は、ショルダ側ベルト曲率半径R22に対するセンター側ベルト曲率半径R21の割合(R21/R22)より大きく設定されている。トレッド変曲点P10におけるトレッドゴム14の変曲度合いは、ベルト変曲点P20におけるベルト20の変曲度合いより大きくされている。すなわち、ショルダ側トレッド曲率半径R12に対するセンター側トレッド曲率半径R11とショルダ側トレッド曲率半径R12の差(R11-R12)の割合は、ショルダ側ベルト曲率半径R22に対するセンター側ベルト曲率半径R21とショルダ側ベルト曲率半径R22の差(R21-R22)の割合より大きくされている[(R11-R12)/R12>(R21-R22)/R22]。
【0043】
また、タイヤ子午線断面において、ベルト20、具体的には第2ベルト22のタイヤ軸方向外側端部の位置において溝底ライン9とキャッププライ30、具体的には第2キャッププライ32との距離t1が2mm以上に設定されるとともに、ショルダ主溝24bのタイヤ軸方向位置において溝底ライン9とキャッププライ30、具体的には第2キャッププライ32の距離t2が4mm以上に設定されている。
【0044】
本実施形態では、実施例として、サイズ265/70R17の小型トラック用タイヤにおいて、センター側トレッド曲率半径R11を1290mmとし、ショルダ側トレッド曲率半径R12を190mmとし、センター側ベルト曲率半径R21を670mmとし、ショルダ側ベルト曲率半径R22を530mmとし、トレッド変曲点P10をベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向内側に設け、センター側トレッド曲率半径R11をショルダ側トレッド曲率半径R12より大きくするとともに、ショルダ側トレッド曲率半径R12に対するセンター側トレッド曲率半径R11の割合(R11/R12)を、ショルダ側ベルト曲率半径R22に対するセンター側ベルト曲率半径R21の割合(R21/R22)より大きく設定した場合について、350kPaの低内圧時における接地形状及び接地圧力について台上試験装置を用いて調べた。なお、断面形状、部材の位置及び曲率半径などは、タイヤ1をタイヤ周方向に100mm程度の長さで切断して作成したカットサンプルにおいて、ビード間隔が正規リム装着状態になるように、ガムテープ等を貼ることで保持した状態において計測される。
【0045】
比較例として、サイズ265/70R17の小型トラック用タイヤにおいて、センター側トレッド曲率半径R11を750mmとし、ショルダ側トレッド曲率半径R12を1590mmとし、センター側ベルト曲率半径R21を600mmとし、ショルダ側ベルト曲率半径R22を440mmとし、トレッド変曲点P10をベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向内側に設け、センター側トレッド曲率半径R11をショルダ側トレッド曲率半径R12より小さくするとともに、ショルダ側トレッド曲率半径R12に対するセンター側トレッド曲率半径R11の割合(R11/R12)は、ショルダ側ベルト曲率半径R22に対するセンター側ベルト曲率半径R21の割合(R21/R22)より小さく設定した場合について、実施例と同一条件において、350kPaの低内圧時における接地形状及び接地圧力についても調べた。なお、断面形状、部材の位置及び曲率半径などは、タイヤ1をタイヤ周方向に100mm程度の長さで切断して作成したカットサンプルにおいて、ビード間隔が正規リム装着状態になるように、ガムテープ等を貼ることで保持した状態において計測される。
【0046】
図5は、実施例に係る空気入りタイヤの接地形状を示す図である。
図5に示すように、実施例に係る空気入りタイヤの接地形状は、仮想ラインL1で示すように、タイヤ軸方向外側端部がタイヤ軸方向外側に突出するように曲線状に湾曲して形成されている。また、実施例に係る空気入りタイヤでは、350kPaの低内圧時、全接地面積が272.4cm
2であり、タイヤ軸方向の接地幅が201.9mmであり、平均接地圧力が38.2N/cm
2であった。
【0047】
図6は、比較例に係る空気入りタイヤの接地形状を示す図である。
図6に示すように、実施例に係る空気入りタイヤの接地形状は、仮想ラインL2で示すように、タイヤ軸方向外側端部がタイヤ周方向に略直線状に形成されている。また、比較例に係る空気入りタイヤでは、350kPaの低内圧時、全接地面積が281.1cm
2であり、タイヤ軸方向の接地幅が209.3mmであり、平均接地圧力が36.7N/cm
2であった。
【0048】
実施例に係る空気入りタイヤでは、比較例に係る空気入りタイヤに比して、低内圧時における接地形状の全接地面積が小さくなって接地圧力が大きくなっていることが分かった。
【0049】
本実施形態ではまた、実施例として、サイズ265/70R17の小型トラック用タイヤにおいて、センター側トレッド曲率半径R11を2000mmとし、ショルダ側トレッド曲率半径R12を300mmとし、センター側ベルト曲率半径R21を400mmとし、ショルダ側ベルト曲率半径R22を110mmとし、トレッド変曲点P10をベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向中央側に設け、センター側トレッド曲率半径R11をショルダ側トレッド曲率半径R12より大きくするとともに、ショルダ側トレッド曲率半径R12に対するセンター側トレッド曲率半径R11の割合(R11/R12)は、ショルダ側ベルト曲率半径R22に対するセンター側ベルト曲率半径R21の割合(R21/R22)より大きく設定した場合について、350kPaの低内圧時における接地形状及び接地圧力について解析シミュレーションによって調べた。なお、曲率半径は、リムモデルに装着されていないタイヤモデルに対して内圧が充填されていないときのタイヤ断面についての寸法である。
【0050】
比較例として、サイズ265/70R17の小型トラック用タイヤにおいて、センター側トレッド曲率半径R11を1000mmとし、ショルダ側トレッド曲率半径R12を300mmとし、センター側ベルト曲率半径R21を400mmとし、ショルダ側ベルト曲率半径R22を110mmとし、トレッド変曲点P10をベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向内側に設け、センター側トレッド曲率半径R11をショルダ側トレッド曲率半径R12より大きくするとともに、ショルダ側トレッド曲率半径R12に対するセンター側トレッド曲率半径R11の割合(R11/R12)は、ショルダ側ベルト曲率半径R22に対するセンター側ベルト曲率半径R21の割合(R21/R22)より小さく設定した場合について、実施例と同一条件において、350kPaの低内圧時における接地形状及び接地圧力について解析シミュレーションによって調べた。なお、曲率半径は、リムモデルに装着されていないタイヤモデルに対して内圧が充填されていないときのタイヤ断面についての寸法である。
【0051】
解析シミュレーションでは、空気入りタイヤ1のトレッド2に、横溝25が設けられることなくタイヤ周方向に延びる主溝24を形成し、一対のショルダ主溝24bによって画定されるセンター側陸であるセンターリブとショルダ側陸であるショルダリブとを形成した場合について調べた。
【0052】
図7は、実施例に係る空気入りタイヤの接地形状及び接地圧力の解析結果を示す図である。
図8は、比較例に係る空気入りタイヤの接地形状及び接地圧力の解析結果を示す図である。
【0053】
解析シミュレーションでは、実施例に係る空気入りタイヤでは、350kPaの低内圧時、全接地面積が261.2cm2であり、タイヤ軸方向の接地幅が208.4mmであり、ショルダリブの平均接地圧力が446kPaであった。比較例に係る空気入りタイヤでは、350kPaの低内圧時、全接地面積が247.4cm2であり、タイヤ軸方向の接地幅が201.2mmであり、ショルダリブの平均接地圧力が431kPaであった。
【0054】
実施例に係る空気入りタイヤでは、比較例に係る空気入りタイヤに比して、ショルダリブの接地圧力が大きくなっていることが分かった。ショルダ側トレッド曲率半径R12に対するセンター側トレッド曲率半径R11の割合を、ショルダ側ベルト曲率半径R22に対するセンター側ベルト曲率半径R21の割合より大きくした場合、ショルダ側ベルト曲率半径R22に対するセンター側ベルト曲率半径R21の割合より小さくした場合に比して、ショルダリブの接地圧力が大きくなる。
【0055】
本実施形態に係るタイヤ1では、トレッド2に、一対のショルダ主溝24bによって画定されるセンター側陸26であるセンターブロックとショルダ側陸27であるショルダブロックとが形成されているが、一対のショルダ主溝24bによって画定されるセンター側陸であるセンターリブとショルダ側陸であるショルダリブとを形成するようにしてもよい。実施例及び比較例では、サイズ265/70R17の小型トラック用タイヤを用いているが、タイヤ1は、これに限定されるものではない。
【0056】
このように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、トレッドゴム14のタイヤ径方向外表面は、タイヤ子午線断面においてトレッド変曲点P10よりタイヤ軸方向中央側がセンター側トレッド曲率半径R11を有し、トレッド変曲点P10よりタイヤ軸方向外側がセンター側トレッド曲率半径R11より小さいショルダ側トレッド曲率半径R12を有し、ベルト20のタイヤ径方向外表面は、タイヤ子午線断面においてベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向中央側がセンター側ベルト曲率半径R21を有し、ベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向外側がセンター側ベルト曲率半径R21より小さいショルダ側ベルト曲率半径R22を有し、トレッド変曲点P10は、ベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向中央側に位置する。
【0057】
これにより、ショルダ側ベルト曲率半径R22をセンター側ベルト曲率半径R21より小さくした場合について、ショルダ側トレッド曲率半径R12をセンター側トレッド曲率半径R11より小さくして、ショルダ側トレッド曲率半径R12がセンター側トレッド曲率半径R11と同等以上である場合に比して、ショルダ側トレッドのタイヤ周方向における接地長を短くして接地圧を向上させ、トラクション性能を向上させることができる。トレッド変曲点P10がベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向中央側に位置するので、トレッド変曲点P10がベルト変曲点P20よりタイヤ軸方向外側に位置する場合に比して、加硫成型時にセンター側に比してショルダ側がタイヤ径方向外側に膨出するベルト20によってショルダ側トレッドの接地長が長くなることを抑制して接地圧を向上させ、低内圧時におけるトラクション性能を向上させることができる。
【0058】
また、トレッド2は、タイヤ周方向に延びる主溝24bによって画定されるセンター側陸26とショルダ側陸27とを有し、トレッド変曲点P10は、ショルダ側陸27に設けられる。これにより、トレッド変曲点P10がショルダ側陸27に位置するトレッド2を有する空気入りタイヤ1において、トラクション性能を向上させることができる。
【0059】
また、トレッドゴム14のタイヤ径方向外表面を形成するショルダ側トレッド曲率半径R12の中心点C12は、トレッドゴム14のタイヤ径方向外表面のトレッド変曲点P10とトレッドゴム14のタイヤ径方向外表面を形成するセンター側トレッド曲率半径R11の中心点C11とを結ぶ直線L10上に位置する。これにより、センター側トレッド曲率半径R11とショルダ側トレッド曲率半径R12が異なる場合についても、センター側トレッド曲率半径R11を有する部分とショルダ側トレッド曲率半径R12を有する部分とを滑らかに接続することができる。
【0060】
また、ショルダ側トレッド曲率半径R12に対するセンター側トレッド曲率半径R11の割合(R11/R12)は、ショルダ側ベルト曲率半径R22に対するセンター側ベルト曲率半径R21の割合(R21/R22)より大きい。これにより、ショルダ側トレッド曲率半径R12に対するセンター側トレッド曲率半径R11の割合(R11/R12)が、ショルダ側ベルト曲率半径R22に対するセンター側ベルト曲率半径R21の割合(R21/R22)より小さい場合に比して、低内圧時におけるトラクション性能を向上させることができる。
【0061】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【0062】
[付記1]
トレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側に配置されたベルトとを有するトレッドを備えた空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムのタイヤ径方向外表面は、タイヤ子午線断面においてトレッド変曲点よりタイヤ軸方向中央側がセンター側トレッド曲率半径を有し、前記トレッド変曲点よりタイヤ軸方向外側が前記センター側トレッド曲率半径より小さいショルダ側トレッド曲率半径を有し、
前記ベルトのタイヤ径方向外表面は、タイヤ子午線断面においてベルト変曲点よりタイヤ軸方向中央側がセンター側ベルト曲率半径を有し、前記ベルト変曲点よりタイヤ軸方向外側が前記センター側ベルト曲率半径より小さいショルダ側ベルト曲率半径を有し、
前記トレッド変曲点は、前記ベルト変曲点よりタイヤ軸方向中央側に位置する
空気入りタイヤ。
[付記2]
前記トレッドは、タイヤ周方向に延びる主溝によって画定されるセンター側陸とショルダ側陸とを有し、前記トレッド変曲点は、前記ショルダ側陸に位置する
付記1に記載の空気入りタイヤ。
[付記3]
前記トレッドゴムのタイヤ径方向外表面を形成する前記ショルダ側トレッド曲率半径の中心点は、前記トレッドゴムのタイヤ径方向外表面の前記トレッド変曲点と前記トレッドゴムのタイヤ径方向外表面を形成する前記センター側トレッド曲率半径の中心点とを結ぶ直線上に位置する
付記1又は付記2に記載の空気入りタイヤ。
[付記4]
前記ショルダ側トレッド曲率半径に対する前記センター側トレッド曲率半径の割合は、前記ショルダ側ベルト曲率半径に対する前記センター側ベルト曲率半径の割合より大きい
付記1から付記3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【符号の説明】
【0063】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド
10 カーカスプライ
14 トレッドゴム
20 ベルト
24 主溝
26 センター側陸
27 ショルダ側陸
P10 トレッド変曲点
P20 ベルト変曲点
R11 センター側トレッド曲率半径
R12 ショルダ側トレッド曲率半径
R21 センター側ベルト曲率半径
R22 ショルダ側ベルト曲率半径