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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093438
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】グランドパッキン
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/24 20060101AFI20240702BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F16J15/24 Z
F16J15/18 C
F16J15/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209816
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 洸平
(72)【発明者】
【氏名】井上 広大
(72)【発明者】
【氏名】高山 剛
【テーマコード(参考)】
3J043
【Fターム(参考)】
3J043AA11
3J043AA15
3J043BA02
3J043BA06
3J043CA08
3J043CB05
3J043CB16
3J043CB18
3J043CB20
3J043DA07
3J043DA20
(57)【要約】
【課題】過酷な条件下においてシール性を維持することが可能なグランドパッキンを提供する。
【解決手段】シールパッキン1を含んで構成されるグランドパッキン101であって、シールパッキン1は、それぞれがリング状であるパッキン本体10、シール部材20、及び浸透部材30を備え、シール部材20は、パッキン本体10に対して同軸状に設けられ、径方向の外端部20aがパッキン本体10の外周面10c,12c,14c,16cまで延びており、浸透部材30は、シール部材20に比べて多孔度が高い材料で構成され、パッキン本体10に対して同軸状に設けられ、径方向の内端部30bがパッキン本体の内周面10d,11d,13d,15dまで延び、径方向の外端部30aがパッキン本体10の外周面10c,12c,14c,16cまで延びている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールパッキンを含んで構成されるグランドパッキンであって、
前記シールパッキンは、
それぞれがリング状であるパッキン本体、シール部材、及び浸透部材を備え、
前記シール部材は、
前記パッキン本体に対して同軸状に設けられ、径方向の外端部が前記パッキン本体の外周面まで延びており、
前記浸透部材は、
前記シール部材に比べて多孔度が高い材料で構成され、
前記パッキン本体に対して同軸状に設けられ、径方向の内端部が前記パッキン本体の内周面まで延び、径方向の外端部が前記パッキン本体の外周面まで延びている、
グランドパッキン。
【請求項2】
前記パッキン本体が、軸方向一方側の第1端面と、軸方向他方側の第2端面と、を有し、
前記第1端面及び前記第2端面が平面で、かつ、平行であり、
前記シール部材が、前記第1端面に設けられ、
前記浸透部材が、前記第2端面に設けられる、請求項1に記載のグランドパッキン。
【請求項3】
前記パッキン本体が、
軸方向一方側を構成する第1パッキン本体と、軸方向他方側を構成する第2パッキン本体と、によって構成され、
前記第1パッキン本体が、軸方向一方側の第1端面と、軸方向他方側の第2端面と、を有し、
前記第2パッキン本体が、軸方向一方側の第3端面と、軸方向他方側の第4端面と、を有し、
前記第1端面及び前記第4端面が平面で、かつ、前記第2端面及び前記第3端面が円すい面であり、
前記第1端面及び前記第4端面が平行で、かつ、前記第2端面及び前記第3端面が対向し、
前記シール部材が、前記第1端面に設けられ、
前記浸透部材が、前記第2端面に設けられる、請求項1に記載のグランドパッキン。
【請求項4】
前記パッキン本体が、
軸方向一方側を構成する第1パッキン本体と、軸方向他方側を構成する第2パッキン本体と、によって構成され、
前記第1パッキン本体が、軸方向一方側の第1端面と、軸方向他方側の第2端面と、を有し、
前記第2パッキン本体が、軸方向一方側の第3端面と、軸方向他方側の第4端面と、を有し、
前記第1端面及び前記第4端面が平面で、かつ、前記第2端面及び前記第3端面が円すい面であり、
前記第1端面及び前記第4端面が平行で、かつ、前記第2端面及び前記第3端面が対向し、
前記シール部材が、前記第1端面に設けられ、
前記浸透部材が、前記第3端面に設けられる、請求項1に記載のグランドパッキン。
【請求項5】
前記浸透部材が、セラミック製又は金属製である、請求項1~4の何れか1項に記載のグランドパッキン。
【請求項6】
前記シール部材が機外側に位置し、かつ、前記浸透部材が機内側に位置する向きで使用される、請求項1~4の何れか1項に記載のグランドパッキン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グランドパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、従来のグランドパッキンが用いられている流体機器の部分断面図である。グランドパッキンは、ポンプ、バルブなどの流体機器に用いられるシール部材である。例えば、図11に示すように、従来のグランドパッキン110は、シールパッキン107及びアダプタパッキン108を含んで構成される。シールパッキン107及びアダプタパッキン108は、ポンプ、バルブ、ドレッサージョイント等の流体機器100において、パッキンボックス102とパッキンボックス102内に配置された軸103との間に形成された環状空間Sに、軸方向に複数並べて設置される。軸103は、パッキンボックス102に対して、軸103の軸線C回りに回転したり、軸方向に往復移動したりするようになっている。なお、図11に示す流体機器100は、軸103の軸線Cを鉛直方向に配置した場合を例示しているが、当該軸線Cを水平方向に配置してもよい。
【0003】
シールパッキン107は、パッキンボックス102の段差面102bと、大気側(本説明では、以下、機外側と称する)に設けられている筒状のパッキン押え104との間に、アダプタパッキン108を介して軸方向から挟まれた状態にある。アダプタパッキン108は、リング状の部材であり、シールパッキン107がパッキンボックスの段差面102b及びパッキン押え104と直接接することを防止して、シールパッキン107を保護する。パッキン押え104は、円筒状に形成されており、円環状のフランジ部104aを有している。フランジ部104aには、周方向に複数(図11では1個のみ図示)のボルト106が軸方向に貫通しており、これらの各ボルト106は、パッキンボックス102の機外側の端面に形成されたねじ孔105に螺合されている。そして、パッキン押え104がボルト106によって流体109側(本説明では、以下、機内側と称する)へ締め付けられると、シールパッキン107は軸方向に圧縮され、さらに、シールパッキン107は圧縮されるにつれてパッキンボックス102の内周面102a及び軸103の外周面103aに密着する。これにより、パッキンボックス102内の流体109が機外側へ漏れるのを防止することができる。このようなグランドパッキンとしては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【0004】
近年、流体機器によってより高温・高圧の流体を扱うケースや、流体機器における軸の作動頻度をより高くするケースが増えており、今まで以上に過酷な条件下でグランドパッキンが使用されるケースが増えている。このため、より過酷な条件下において、シール性を維持することが可能なグランドパッキンへの要求が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/163220号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のグランドパッキンは、軸(バルブステム)に接触する内周面側にシール部材を配置し、軸の外周面とグランドパッキンの内周面との間を流れる流体を、前記シール部材で封止する構成が採用されている。このような従来のグランドパッキンにおいて、内周面側の前記シール部材は、高温、高圧の流体に曝されたり、高頻度で軸が作動したりすることによって、摩耗等の劣化が生じやすい。このような従来のグランドパッキンは、前記シール部材が一旦劣化すると、シール性を維持することが困難となる。このため、従来のグランドパッキンは、さらに過酷な条件下で使用された場合に、シール性を維持することが困難である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、過酷な条件下においてシール性を維持することが可能なグランドパッキンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示のグランドパッキンは、シールパッキンを含んで構成されるグランドパッキンであって、前記シールパッキンは、それぞれがリング状であるパッキン本体、シール部材、及び浸透部材を備え、前記シール部材は、前記パッキン本体に対して同軸状に設けられ、径方向の外端部が前記パッキン本体の外周面まで延びており、前記浸透部材は、前記シール部材に比べて多孔度が高い材料で構成され、前記パッキン本体に対して同軸状に設けられ、径方向の内端部が前記パッキン本体の内周面まで延び、径方向の外端部が前記パッキン本体の外周面まで延びている。
【0009】
本開示のグランドパッキンは、浸透部材によって、内周面側の流体を外周面側へ導いて、グランドパッキンの外周面とパッキンボックスとの間を流れる流体を、外周面側のシール部材で封止することができる。このため、本開示のグランドパッキンは、グランドパッキンの内周面側が、高温、高圧の流体に曝されたり、軸が高頻度で作動したりする環境下におかれて劣化した場合であっても、外周面側のシール部材によって、シール性を維持することができる。
【0010】
(2)前記(1)の形態に係るグランドパッキンは、前記パッキン本体が、軸方向一方側の第1端面と、軸方向他方側の第2端面と、を有し、前記第1端面及び前記第2端面が平面で、かつ、平行であり、前記シール部材が、前記第1端面に設けられ、前記浸透部材が、前記第2端面に設けられると好ましい。
このグランドパッキンは、浸透部材によって、内周面側の流体を外周面側へ導いて、グランドパッキンの外周面とパッキンボックスとの間を流れる流体を、外周面側のシール部材で封止することができる。
【0011】
(3)前記(1)の形態に係るグランドパッキンは、前記パッキン本体が、軸方向一方側を構成する第1パッキン本体と、軸方向他方側を構成する第2パッキン本体と、によって構成され、前記第1パッキン本体が、軸方向一方側の第1端面と、軸方向他方側の第2端面と、を有し、前記第2パッキン本体が、軸方向一方側の第3端面と、軸方向他方側の第4端面と、を有し、前記第1端面及び前記第4端面が平面で、かつ、前記第2端面及び前記第3端面が円すい面であり、前記第1端面及び前記第4端面が平行で、かつ、前記第2端面及び前記第3端面が対向し、前記シール部材が、前記第1端面に設けられ、前記浸透部材が、前記第2端面に設けられると好ましい。
このグランドパッキンは、浸透部材によって、内周面側の流体を外周面側へ導いて、グランドパッキンの外周面とパッキンボックスとの間を流れる流体を、外周面側のシール部材で封止することができる。
【0012】
(4)前記(1)の形態に係るグランドパッキンは、前記パッキン本体が、軸方向一方側を構成する第1パッキン本体と、軸方向他方側を構成する第2パッキン本体と、によって構成され、前記第1パッキン本体が、軸方向一方側の第1端面と、軸方向他方側の第2端面と、を有し、前記第2パッキン本体が、軸方向一方側の第3端面と、軸方向他方側の第4端面と、を有し、前記第1端面及び前記第4端面が平面で、かつ、前記第2端面及び前記第3端面が円すい面であり、前記第1端面及び前記第4端面が平行で、かつ、前記第2端面及び前記第3端面が対向し、前記シール部材が、前記第1端面に設けられ、前記浸透部材が、前記第3端面に設けられると好ましい。
このグランドパッキンは、浸透部材によって、内周面側の流体を外周面側へ導いて、グランドパッキンの外周面とパッキンボックスとの間を流れる流体を、外周面側のシール部材で封止することができる。
【0013】
(5)前記(1)から(4)の形態に係るグランドパッキンは、前記浸透部材が、セラミック製又は金属製であると好ましい。
この場合、内周面側の流体を確実に外周面側へ導くことが可能な浸透部材を作成することができる。
【0014】
(6)前記(1)から(4)の形態に係るグランドパッキンは、前記シール部材が機外側に位置し、かつ、前記浸透部材が機内側に位置する向きで使用されると好ましい。
この場合、浸透部材の機外側に必ずシール部材を配置することができる。これにより、より少ない個数のグランドパッキンで流体を封止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、過酷な条件下においてシール性を維持することが可能なグランドパッキンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】シールパッキンの第1実施形態を示す図であり、(a)はシールパッキンの軸方向一方側を主に示す斜視図、(b)はシールパッキンの軸方向他方側を主に示す斜視図である。
図2図1(a)のA-A線における断面図である。
図3】第1実施形態に係るグランドパッキンの流体機器に対する配置状況を示す模式図である。
図4】第1実施形態に係るグランドパッキンによる流体のシール状況を示す模式図である。
図5】シールパッキンの第2実施形態を示す図であり、(a)はシールパッキンの軸方向一方側を主に示す斜視図、(b)はシールパッキンの軸方向他方側を主に示す斜視図である。
図6図5(a)のB-B線における断面図及びシールパッキンの分解図である。
図7】第2実施形態に係るシールパッキンの変形例を示す図である。
図8】第2実施形態に係るグランドパッキンの流体機器に対する配置状況を示す模式図である。
図9】第2実施形態に係るグランドパッキンによる流体のシール状況を示す模式図である。
図10】本開示のシールパッキンの第3実施形態を示す断面模式図及び分解図である。
図11】従来のグランドパッキンが用いられている流体機器の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
[グランドパッキンの概要]
図1は、シールパッキンの第1実施形態を示す図であり、(a)はシールパッキンの軸方向一方側を主に示す斜視図、(b)はシールパッキンの軸方向他方側を主に示す斜視図である。図2は、図1(a)のA-A線における断面図である。流体機器100(図11参照)は、従来のグランドパッキン110に代えて、本開示のグランドパッキン101(図3参照)を使用することができる。本開示のグランドパッキン101は、従来のシールパッキン107に代えて、シールパッキン1を含んで構成される。
【0019】
図1(a)(b)には、第1実施形態に係るシールパッキン1を示している。以下の説明では、第1実施形態に係るシールパッキン1を、第1シールパッキン1Xとも称する。以下の説明において、単にシールパッキン1と言う場合は、第1シールパッキン1Xと、他の実施形態に係るシールパッキン(後で説明する第2シールパッキン1Y及び第3シールパッキン1Z)と、において共通する構成を説明している。
【0020】
図1(a)(b)に示すように、シールパッキン1は、全体形状がリング状である。本説明では、シールパッキン1の軸方向について、一方側及び他方側を規定する(図1(a)(b)参照)。後で説明する他の実施形態に係るシールパッキン1(第2シールパッキン1Y及び第3シールパッキン1Z)においても同様である。本説明では、シールパッキン1の中心軸を、中心軸Pと称する。
【0021】
シールパッキン1は、軸方向一方側に位置する一端面1aと、軸方向他方側に位置する他端面1bと、外周面1cと、内周面1dとを備える。シールパッキン1は、パッキン本体10、シール部材20、及び浸透部材30を備える。なお、外周面1cは、グランドパッキン101の外周面とも称され、内周面1dは、グランドパッキン101の内周面とも称される。
【0022】
パッキン本体10は、シールパッキン1の主体部分を構成し、リング状の形態を有する。パッキン本体10は、パッキン本体10自身がシールとして機能する膨張黒鉛製の圧縮成形体により構成される。パッキン本体10は、炭素繊維又は膨張黒鉛製の編糸を編組することによって構成されたものであってもよい。
【0023】
図1及び図2に示すように、シール部材20は、シート状の膨張黒鉛を複数積層した材料により構成される。なお、シール部材20を構成するシート状の膨張黒鉛は、1枚であってもよい。シール部材20は、リング状の形態を有し、径方向について外端部20a及び内端部20bを有する。なお、シール部材20は、内端部20bの位置が、内周面1dに比べて径方向外側に位置すると好ましい。この場合、パッキン本体10に対するシール部材20の圧着度を高めることができ、これにより、シール部材20をパッキン本体10から離脱しにくくすることができる。
【0024】
浸透部材30は、リング状の形態を有し、径方向について外端部30a及び内端部30bを有する。浸透部材30は、グランドパッキン101の封止対象の流体(気体・液体)を浸透させることが可能な連続気泡を有する多孔質材料により構成される。浸透部材30は、シール部材20に比べて多孔度が高い材料により構成される。ここでいう多孔度とは、ある部材の体積を体積Vとし、その部材が有する空洞部分の体積を体積vとした場合の、体積Vに対する体積vの比(v/V)である。
【0025】
シールパッキン1において、浸透部材30は、セラミック製又は金属製であると好ましい。この場合、高温高圧下における浸透部材30の変形(気泡のつぶれ)を抑えることができ、これにより、高温高圧下において浸透部材30における流体の浸透性を確保することができる。
【0026】
セラミック製の浸透部材30は、例えば、内部に連続気泡が形成された多孔質セラミック材料を、リング状に成形したものであると好ましい。
【0027】
金属製の浸透部材30は、例えば、金属繊維をニット編みして作成されたニットメッシュであると好ましい。金属繊維としては、例えば、ステンレス線、インコネル線、モネル線等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
【0028】
[第1シールパッキン]
図1(a)(b)及び図2に示すように、第1シールパッキン1Xは、全体形状が中心軸Pを有するリング状であり、径方向に沿って切断した場合の断面(図2に示すA-A線断面)が、矩形となるように形成されている。
【0029】
第1シールパッキン1Xは、パッキン本体10、シール部材20、及び浸透部材30を備える。以下の説明では、第1シールパッキン1Xを構成するパッキン本体10を、パッキン本体10Xと称する。
【0030】
パッキン本体10Xは、中心軸Pを有するリング状であり、軸方向一方側の第1端面10aと、軸方向他方側の第2端面10bと、外周面10cと、内周面10dとを有する。パッキン本体10Xにおいて、第1端面10a及び第2端面10bは平面で、かつ、互いに平行である。
【0031】
パッキン本体10Xは、軸方向一方側の端面にシール部材20が設けられ、軸方向他方側の端面に浸透部材30が設けられる。
【0032】
第1シールパッキン1Xにおいて、シール部材20は、パッキン本体10Xの軸方向一端側の第1端面10aに同軸状に配置され、第1端面10aに圧着される。シール部材20は、外端部20aが、径方向についてパッキン本体10Xの外周面10cまで延びている。このため、シール部材20は、外端部20aが、パッキンボックス102の内周面102a(図11参照)に接触し、第1シールパッキン1Xの外周面1cと内周面102aとの間の隙間を封止する。
【0033】
第1シールパッキン1Xにおいて、浸透部材30は、パッキン本体10Xの軸方向他端側の第2端面10bの全面に設けられる。換言すると、浸透部材30は、外端部30aが、径方向についてパッキン本体10Xの外周面10cまで延びており、内端部30bが、径方向についてパッキン本体10Xの内周面10dまで延びている。このため、浸透部材30は、シールパッキン1の内周面1dから外周面1cへ流体を導く流路として機能する。なお、浸透部材30は、パッキン本体10Xの軸方向他端側の第2端面10bにおいて、周方向に途切れた部分を有してもよい。なお、浸透部材30は、シールパッキン1の内周面1dから外周面1cへ流体を導く流路として機能すればよく、外端部30aが、径方向についてパッキン本体10Xの外周面10cの近傍まで延びており、内端部30bが、径方向についてパッキン本体10Xの内周面10dの近傍まで延びている構成であってもよく、厳密に外周面10c及び内周面10dまで延びている構成でなくてもよい。
【0034】
このため、第1シールパッキン1Xにおいて、シール部材20は、外端部20aが、第1シールパッキン1Xの外周面1cまで延び、浸透部材30は、外端部30aが、第1シールパッキン1Xの外周面1cまで延び、内端部30bが、第1シールパッキン1Xの内周面1dまで延びている。
【0035】
[第1実施形態に係るグランドパッキンの配置状況]
図3は、第1実施形態に係るグランドパッキンの流体機器に対する配置状況を示す模式図である。図3に示すように、第1実施形態に係るグランドパッキン101は、第1シールパッキン1Xを含んで構成される。第1シールパッキン1Xは、流体機器100の環状空間Sにおいて、複数配置される。図3に示すように、本実施形態では、第1シールパッキン1Xを、流体機器100の機外側にシール部材20を有する一端面1aを向け、流体機器100の機内側に浸透部材30を有する他端面1bを向けた姿勢で使用している。なお、以下の説明では、第1実施形態に係るグランドパッキン101を、第1グランドパッキン101Xとも称する。
【0036】
シールパッキン1の配置数は、流体機器100の仕様(取り扱う流体の種類、圧力、温度等)に応じて決定する。なお、本開示のグランドパッキン101は、シールパッキン1を単独(1個だけ)で使用してもよい。シールパッキン1は、軸方向に複数積層して用いる場合には、全て同じ向きにして積層すると好ましい。
【0037】
シールパッキン1は、流体機器100の機外側にシール部材20を有する一端面1aを向け、流体機器100の機内側に浸透部材30を有する他端面1bを向けた姿勢で使用すると好ましい。この場合、浸透部材30の機外側に必ずシール部材20を配置することができる。このため、より少ない個数のシールパッキン1で流体を封止することが可能となる。なお、シールパッキン1は、流体機器100の機外側に浸透部材30を有する他端面1bを向け、流体機器100の機内側にシール部材20を有する一端面1aを向けた姿勢で使用してもよい。なお、本開示のグランドパッキン101を構成するアダプタパッキン108は、シールパッキン1と同様に、軸方向の一端側に配置されたシール部材と、他端側に配置された浸透部材とを備える構成であってもよい。本開示では、シールパッキン1をアダプタパッキン108と組み合わせて使用する場合を例示しているが、本開示のグランドパッキン101は、シールパッキン1のみで構成されてもよい。
【0038】
[第1実施形態に係るグランドパッキンによる流体のシール状況]
図4は、第1実施形態に係るグランドパッキンによる流体のシール状況を示す模式図である。ここでは、図4に示すように、第1実施形態に係る(即ち、第1シールパッキン1Xを含む)グランドパッキン101を備えた流体機器100において、機内側のアダプタパッキン108と軸103の外周面103aとの間から機外側へ向けた流体109の漏れ(流れF0)が生じた場合の、流体109のシール状況を説明する。第1実施形態に係るグランドパッキン101を備えた流体機器100では、流体109の漏れ(流れF0)が生じると、流れF0は、外周面103a及び内周面1dに沿った軸方向の流れF1aと、浸透部材30に沿った径方向の流れF1bに分けられる。このため、流れF1aの流量は、流れF0の流量に比べて少なくなる。
【0039】
流れF1bは、浸透部材30の内端部30bから外端部30a(外周面1c)に到達した後、パッキンボックス102の内周面102a及び外周面1cに沿った軸方向の流れとなる。流れF1bは、シール部材20の外端部20aと内周面102aとが接する部分で封止される。
【0040】
次に、流れF1aは、外周面103a及び内周面1dに沿った軸方向の流れF2aと、浸透部材30に沿った径方向の流れF2bに分けられる。このため、流れF2aの流量は、流れF1aの流量に比べて少なくなる。
【0041】
流れF2bは、浸透部材30の内端部30bから外端部30a(外周面1c)に到達した後、内周面102a及び外周面1cに沿った軸方向の流れとなる。流れF2bは、シール部材20の外端部20aと内周面102aとが接する部分で封止される。
【0042】
次に、流れF2aは、外周面103a及び内周面1dに沿った軸方向の流れF3aと、浸透部材30に沿った径方向の流れF3bに分けられる。このため、流れF3aの流量は、流れF2aの流量に比べて少なくなる。
【0043】
流れF3bは、浸透部材30の内端部30bから外端部30a(外周面1c)に到達した後、内周面102a及び外周面1cに沿った軸方向の流れとなる。流れF3bは、シール部材20の外端部20aと内周面102aとが接する部分で封止される。
【0044】
流体機器100では、流れF3aの流量が、流体109の機外への漏れ量となる。ユーザーは、流れF3aの流量が、流体機器100における流体109の漏れ量の許容値以下となるように、第1シールパッキン1Xの配置数(積層枚数)を決定する。
【0045】
以上に説明したように、第1実施形態に係るグランドパッキン101を備えた流体機器100では、軸103とグランドパッキン101との間のシール(以下、動的シールとも称する)に頼らず、パッキンボックス102とグランドパッキン101との間のシール(以下、静的シールとも称する)によって、流体109のシール性を確保している。膨張黒鉛製のシール部材は、軸103とグランドパッキン101との間のシール(動的シール)として使用された場合には、摩耗等の経年劣化が生じる。一方、膨張黒鉛製であるシール部材20を、パッキンボックス102とグランドパッキン101との間のシール(静的シール)として使用した場合には、摩耗等の経年劣化がほとんど生じない。このため、第1実施形態に係るグランドパッキン101を備えた流体機器100は、過酷な条件下で使用された場合に、軸103とグランドパッキン101との間のシール性(動的シール)が劣化したとしても、シール部材20(静的シール)によって、パッキンボックス102とグランドパッキン101との間のシール性を維持することができる。
【0046】
[第2シールパッキン]
図5は、シールパッキンの第2実施形態を示す図であり、(a)はシールパッキンの軸方向一方側を主に示す斜視図、(b)はシールパッキンの軸方向他方側を主に示す斜視図である。図6は、図5(a)のB-B線における断面図及びシールパッキンの分解図である。図5(a)(b)にはシールパッキン1の第2実施形態を示している。なお、以下の説明では、第2実施形態に係るシールパッキン1を、第2シールパッキン1Yとも称する。
【0047】
図5(a)に示すように、第2シールパッキン1Yは、全体形状が中心軸Pを有するリング状である。図5(b)に示すように、第2シールパッキン1Yは、径方向に沿って切断した場合の全体断面(図6下図参照)が矩形となるように形成されている。
【0048】
図5(a)(b)及び図6に示すように、第2シールパッキン1Yは、パッキン本体10、シール部材20、及び浸透部材30を備える。以下の説明では、第2シールパッキン1Yを構成するパッキン本体10を、パッキン本体10Yと称する。
【0049】
第2シールパッキン1Yにおいて、パッキン本体10Yは、第1パッキン本体11及び第2パッキン本体12により構成される。第1パッキン本体11及び第2パッキン本体12は、それ自身がシールとして機能する膨張黒鉛製の圧縮成形体により構成される。第1パッキン本体11及び第2パッキン本体12は、炭素繊維又は膨張黒鉛製の編糸を編組することによって構成されたものであってもよい。
【0050】
第1パッキン本体11は、中心軸P1を有するリング状であり、軸方向一方側の第1端面11aと、軸方向他方側の第2端面11bと、内周面11dとを有する。第1パッキン本体11は、径方向に沿った断面で、略三角形状である。第1パッキン本体11において、第1端面11aは平面であり、第2端面11bは円すい面である。なお、本説明でいう「円すい面」は、平面上に描かれた円周上のすべての点と、その平面上に無い一点とを結ぶ線分によってできる面であり、その内面及び外面の両方を含んでいる。
【0051】
第1パッキン本体11は、軸方向一方側の第1端面11aにシール部材20が設けられ、軸方向他方側の第2端面11bに浸透部材30が設けられる。
【0052】
第2パッキン本体12は、中心軸P2を有するリング状であり、軸方向一方側の第3端面12aと、軸方向他方側の第4端面12bと、外周面12cとを有する。第2パッキン本体12は、径方向に沿った断面で、略三角形状である。第2パッキン本体12において、第3端面12aは円すい面であり、第4端面12bは平面である。
【0053】
第2シールパッキン1Yにおいて、シール部材20は、第1パッキン本体11の第1端面11aに同軸状に配置され、第1端面11aに圧着される。
【0054】
第2シールパッキン1Yにおいて、浸透部材30は、第1パッキン本体11の第2端面11bの全体に設けられる。浸透部材30は、第2シールパッキン1Yの内周面1dから外周面1cへ流体を導く流路として機能する。なお、浸透部材30は、第2端面11bにおいて部分的に設けられてもよい。
【0055】
第1パッキン本体11及び第2パッキン本体12は、中心軸P1と中心軸P2とを同軸上に配置すると共に、浸透部材30と第3端面12aとが接するように一体に組み合わせて使用される。第2シールパッキン1Yにおいて、中心軸P1と中心軸P2は、第2シールパッキン1Yの中心軸Pに一致している。
【0056】
シール部材20及び浸透部材30を設けた第1パッキン本体11と第2パッキン本体12とを組み合わせた状態において、シール部材20は、外端部20aが、径方向について第2パッキン本体12の外周面12cまで延びている。第1パッキン本体11及び第2パッキン本体12を組み合わせた状態において、浸透部材30は、外端部30aが、径方向について第2パッキン本体12の外周面12cまで延びており、内端部30bが、径方向について第1パッキン本体11の内周面11dまで延びている。
【0057】
このため、第2シールパッキン1Yにおいて、シール部材20は、外端部20aが、第2シールパッキン1Yの外周面1cまで延び、浸透部材30は、外端部30aが、第2シールパッキン1Yの外周面1cまで延び、内端部30bが、第2シールパッキン1Yの内周面1dまで延びている。
【0058】
[第2シールパッキンの変形例]
図7は、第2実施形態に係るシールパッキンの変形例を示す図である。第2シールパッキン1Yは、図7に示すような形態であってもよい。
【0059】
図7に示す第2シールパッキン1Yにおいて、パッキン本体10Yは、第3パッキン本体13及び第4パッキン本体14により構成される。
【0060】
第3パッキン本体13は、軸方向一方側の第1端面13aと、軸方向他方側の第2端面13bと、外周面13cと、内周面13dとを有する。第3パッキン本体13は、径方向に沿った断面で、略台形状である。第3パッキン本体13において、第1端面13aは平面であり、第2端面13bは円すい面である。
【0061】
第3パッキン本体13は、中心軸P3を有するリング状であり、軸方向一方側の第1端面13aにシール部材20が設けられ、軸方向他方側の第2端面13bに浸透部材30が設けられる。
【0062】
第4パッキン本体14は、中心軸P4を有するリング状であり、軸方向一方側の第3端面14aと、軸方向他方側の第4端面14bと、外周面14cとを有する。第4パッキン本体14は、径方向に沿った断面で、略三角形状である。第4パッキン本体14において、第3端面14aは円すい面であり、第4端面14bは平面である。なお、この変形例では、第3パッキン本体13のみを、径方向に沿った断面で略台形状に構成しているが、第4パッキン本体14についても、径方向に沿った断面で略台形状に構成してもよい。
【0063】
図7に示すように、第3パッキン本体13及び第4パッキン本体14は、中心軸P3と中心軸P4とを同軸上に配置すると共に、浸透部材30と第3端面14aとが接するように一体に組み合わせて使用される。第2シールパッキン1Yの変形例において、中心軸P3と中心軸P4は、第2シールパッキン1Yの中心軸Pに一致している。
【0064】
第3パッキン本体13と第4パッキン本体14とを組み合わせた状態において、シール部材20は、外端部20aが、径方向について第3パッキン本体13の外周面13cまで延びている。第3パッキン本体13及び第4パッキン本体14を組み合わせた状態において、浸透部材30は、外端部30aが、径方向について第3パッキン本体13の外周面13cまで延びており、内端部30bが、径方向について第3パッキン本体13の内周面13dまで延びている。
【0065】
そして、図7に示す第2シールパッキン1Yの変形例において、シール部材20は、外端部20aが、第2シールパッキン1Yの外周面1cまで延び、浸透部材30は、外端部30aが、第2シールパッキン1Yの外周面1cまで延び、内端部30bが、第2シールパッキン1Yの内周面1dまで延びている。
【0066】
[第2実施形態に係るグランドパッキンの配置状況]
図8は、第2実施形態に係るグランドパッキンの流体機器に対する配置状況を示す模式図である。ここでは、図5及び図6に示す第2シールパッキン1Yを例示して説明する。図8に示すように、第2実施形態に係るグランドパッキン101は、第2シールパッキン1Yを含んで構成される。第2シールパッキン1Yは、流体機器100の環状空間Sにおいて、複数配置される。図8に示す第2シールパッキン1Yは、流体機器100の機外側に一方側を向け、流体機器100の機内側に他方側を向けた姿勢で配置される。本実施形態では、第2シールパッキン1Yを、流体機器100の機外側にシール部材20を有する一端面1aを向け、流体機器100の機内側に浸透部材30を有する他端面1bを向けた姿勢で使用している。なお、以下の説明では、第2実施形態に係るグランドパッキン101を、第2グランドパッキン101Yとも称する。
【0067】
[第2実施形態に係るグランドパッキンによる流体のシール状況]
図9は、第2実施形態に係るグランドパッキンによる流体のシール状況を示す模式図である。ここでは、図9に示すように、第2グランドパッキン101Yを備えた流体機器100において、機内側のアダプタパッキン108と軸103の外周面103aとの間から機外側へ向けた流体109の漏れ(流れF0)が生じた場合の、流体109のシール状況を説明する。第2グランドパッキン101Yを備えた流体機器100では、流体109の漏れ(流れF0)が生じると、流れF0は、外周面103a及び内周面1dに沿った軸方向の流れF1aと、浸透部材30に沿った流れF1bと、他端面1b(第4端面12b)に沿った径方向の流れF1cに分けられる。このため、流れF1aの流量は、流れF0の流量に比べて少なくなる。
【0068】
流れF1bは、浸透部材30の内端部30bから外端部30aまで流れた後、シール部材20によって封止される。
【0069】
流れF1cは、外周面1cに到達した後、パッキンボックス102の内周面102a及び外周面1cに沿った軸方向の流れとなる。流れF1cは、シール部材20の外端部20aと内周面102aとが接する部分で封止される。
【0070】
次に、流れF1aは、外周面103a及び内周面1dに沿った軸方向の流れF2aと、浸透部材30に沿った流れF2bと、他端面1b(第4端面12b)に沿った径方向の流れF2cに分けられる。このため、流れF2aの流量は、流れF1aの流量に比べて少なくなる。
【0071】
流れF2bは、浸透部材30の内端部30bから外端部30aまで流れた後、シール部材20によって封止される。
【0072】
流れF2cは、外周面1cに到達した後、内周面102a及び外周面1cに沿った軸方向の流れとなる。流れF2cは、シール部材20の外端部20aと内周面102aとが接する部分で封止される。
【0073】
次に、流れF2aは、外周面103a及び内周面1dに沿った軸方向の流れF3aと、浸透部材30に沿った径方向の流れF3bと、他端面1b(第4端面12b)に沿った径方向の流れF3cに分けられる。このため、流れF3aの流量は、流れF2aの流量に比べて少なくなる。
【0074】
流れF3bは、浸透部材30の内端部30bから外端部30aまで流れた後、シール部材20によって封止される。
【0075】
流れF3cは、外周面1cに到達した後、内周面102a及び外周面1cに沿った軸方向の流れとなる。流れF3cは、シール部材20の外端部20aと内周面102aとが接する部分で封止される。
【0076】
ユーザーは、流れF3aの流量が、流体機器100における流体109の漏れ量の許容値以下となるように、第2シールパッキン1Yの配置数(積層枚数)を決定する。
【0077】
第2グランドパッキン101Yを備えた流体機器100は、過酷な条件下で使用された場合に、軸103と第2グランドパッキン101Yとの間のシール性(動的シール)が劣化したとしても、シール部材20(静的シール)によって、パッキンボックス102と第2グランドパッキン101Yとの間のシール性を維持することができる。
【0078】
なお、第2グランドパッキン101Yでは、軸103と第2グランドパッキン101Yとの間の流体109を、2つの経路(例えば、流れF1b及び流れF1c)に分けて導き、その後シール部材20で流体109を封止するため、シール部材20に至るまでの経路の内容量(換言すると、流体109を溜めておける空洞の容積)が、前述した第1グランドパッキン101Xに比べて多い。換言すると、第2シールパッキン1Yは、第2シールパッキン1Y自身に貯留できる流体109の量が、第1シールパッキン1Xに比べて多い。これにより、第2グランドパッキン101Yは、第1グランドパッキン101Xに比べて高いシール性を確保することができる。
【0079】
[第3シールパッキン]
図10は、シールパッキンの第3実施形態を示す断面模式図及び分解図である。図10にはシールパッキン1の第3実施形態を示している。なお、以下の説明では、第3実施形態に係るシールパッキン1を、第3シールパッキン1Zとも称する。本開示のグランドパッキン101は、シールパッキン1として、第3シールパッキン1Zを使用してもよい。なお、第3シールパッキン1Zを含んで構成されるグランドパッキン101は、第3実施形態に係るグランドパッキン101とも称される。
【0080】
図10に示すように、第3シールパッキン1Zは、全体形状が中心軸Pを有するリング状であり、径方向に沿って切断した場合の全体断面(図10下図参照)が矩形となるように形成されている。第3シールパッキン1Zは、流体機器100(図11参照)の機外側に一方側を向け、流体機器100の機内側に他方側を向けた姿勢で配置されると好ましい。
【0081】
図10に示すように、第3シールパッキン1Zは、パッキン本体10、シール部材20、及び浸透部材30を備える。以下の説明では、第3シールパッキン1Zを構成するパッキン本体10を、パッキン本体10Zと称する。第3シールパッキン1Zにおいて、パッキン本体10Zは、第5パッキン本体15及び第6パッキン本体16により構成される。
【0082】
第5パッキン本体15は、軸方向一方側の第1端面15aと、軸方向他方側の第2端面15bと、内周面15dとを有する。第5パッキン本体15は、径方向に沿った断面で、略三角形状である。第5パッキン本体15において、第1端面15aは平面であり、第2端面15bは円すい面である。第5パッキン本体15は、軸方向一方側の第1端面15aにシール部材20が設けられる。
【0083】
第6パッキン本体16は、軸方向一方側の第3端面16aと、軸方向他方側の第4端面16bと、外周面16cとを有する。第6パッキン本体16は、径方向に沿った断面で、略三角形状である。第6パッキン本体16において、第3端面16aは円すい面であり、第4端面16bは平面である。第6パッキン本体16は、軸方向一方側の第3端面16aに浸透部材30が設けられる。なお、浸透部材30は、第3端面16aにおいて部分的に設けられてもよい。
【0084】
第5パッキン本体15及び第6パッキン本体16は、中心軸P5と中心軸P6とを同軸上に配置すると共に、第2端面15bと浸透部材30とが接するように一体に組み合わせて使用される。第3シールパッキン1Zにおいて、中心軸P5及び中心軸P6は、第3シールパッキン1Zの中心軸Pに一致している。
【0085】
シール部材20を設けた第5パッキン本体15と、浸透部材30を設けた第6パッキン本体16とを組み合わせた状態において、シール部材20は、外端部20aが、径方向について第6パッキン本体16の外周面16cまで延びている。第5パッキン本体15及び第6パッキン本体16を組み合わせた状態において、浸透部材30は、外端部30aが、径方向について第6パッキン本体16の外周面16cまで延びており、内端部30bが、径方向について第5パッキン本体15の内周面15dまで延びている。
【0086】
このため、第3シールパッキン1Zにおいて、シール部材20は、外端部20aが、第3シールパッキン1Zの外周面1cまで延びている。第3シールパッキン1Zにおいて、浸透部材30は、外端部30aが、第3シールパッキン1Zの外周面1cまで延び、内端部30bが、第3シールパッキン1Zの内周面1dまで延びている。このような構成の浸透部材30は、第3シールパッキン1Zの内周面1dから外周面1cへ流体109(図11参照)を導く流路として機能する。
【0087】
第3実施形態に係る(第3シールパッキン1Zを含む)グランドパッキン101は、以上の構成を有するため、第1グランドパッキン101Xに比べて高いシール性を確保することができる。
【0088】
[実施形態の作用効果]
(1)上記実施形態のグランドパッキン101は、シールパッキン1を含んで構成される。シールパッキン1は、それぞれがリング状であるパッキン本体10、シール部材20、及び浸透部材30を備える。グランドパッキン101において、シール部材20は、パッキン本体10に対して同軸状に設けられ、径方向の外端部20aがパッキン本体10の外周面10c,12c,14c,16cまで延びている。グランドパッキン110において、浸透部材30は、シール部材20に比べて多孔度が高い材料で構成される。グランドパッキン101において、浸透部材30は、パッキン本体10に対して同軸状に設けられ、径方向の内端部30bがパッキン本体の内周面10d,11d,13d,15dまで延び、径方向の外端部30aがパッキン本体10の外周面10c,12c,14c,16cまで延びている。
【0089】
このような構成のグランドパッキン101は、浸透部材30によって、内周面1d側の流体109を外周面1c側へ導いて、シールパッキン1の外周面1cとパッキンボックス2との間を流れる流体109を、外周面1c側のシール部材20で封止することができる。このため、グランドパッキン101は、内周面1d側が、高温、高圧の流体に曝されたり、軸103が高頻度で作動したりする環境下におかれて劣化した場合であっても、外周面1c側のシール部材20によって、シール性を維持することができる。
【0090】
(2)上記実施形態の第1シールパッキン1Xは、パッキン本体10Xが、軸方向一方側の第1端面10aと、軸方向他方側の第2端面10bと、を有し、第1端面10a及び第2端面10bが平面で、かつ、平行である。第1シールパッキン1Xは、シール部材20が、第1端面10aに設けられる。なお、シール部材20は、第1端面10aの径方向の途中から外周面1cに至る範囲に設けられる。第1シールパッキン1Xは、浸透部材30が、第2端面10bに設けられる。なお、第1シールパッキン1Xにおいて、浸透部材30は、第2端面10bの全面に設けられる。
この第1シールパッキン1Xを含む第1グランドパッキン101Xは、浸透部材30によって、内周面1d側の流体109を外周面1c側へ導いて、外周面1cとパッキンボックス102との間を流れる流体109を、外周面1c側のシール部材20で封止することができる。
【0091】
(3)上記実施形態の第2シールパッキン1Yは、パッキン本体10Yが、軸方向一方側を構成する第1パッキン本体11と、軸方向他方側を構成する第2パッキン本体12と、によって構成される。第2シールパッキン1Yは、第1パッキン本体11が、軸方向一方側の第1端面11aと、軸方向他方側の第2端面11bと、を有し、第2パッキン本体12が、軸方向一方側の第3端面12aと、軸方向他方側の第4端面12bと、を有する。第2シールパッキン1Yは、第1端面11a及び第4端面12bが平面で、かつ、第2端面11b及び第3端面12aが円すい面である。第2シールパッキン1Yは、第1端面11a及び第4端面12bが平行で、かつ、第2端面11b及び第3端面12aが対向する。第2シールパッキン1Yは、シール部材20が、第1端面11aに設けられ、浸透部材30が、第2端面11bに設けられる。
この第2シールパッキン1Yを含む第2グランドパッキン101Yは、浸透部材30によって、内周面1d側の流体109を外周面10c側へ導いて、外周面1cとパッキンボックス102との間を流れる流体109を、外周面1c側のシール部材20で封止することができる。
【0092】
(4)上記実施形態の第3シールパッキン1Zは、パッキン本体10Zが、軸方向一方側を構成する第5パッキン本体15と、軸方向他方側を構成する第6パッキン本体16と、によって構成される。第3シールパッキン1Zは、第5パッキン本体15が、軸方向一方側の第1端面15aと、軸方向他方側の第2端面15bと、を有し、第6パッキン本体16が、軸方向一方側の第3端面16aと、軸方向他方側の第4端面16bと、を有する。第3シールパッキン1Zは、第1端面15a及び第4端面16bが平面で、かつ、第2端面15b及び第3端面16aが円すい面である。第3シールパッキン1Zは、第1端面15a及び第4端面16bが平行で、かつ、第2端面15b及び第3端面16aが対向する。第3シールパッキン1Zは、シール部材20が、第1端面15aに設けられ、浸透部材30が、第3端面16aに設けられる。
この第3シールパッキン1Zを含むグランドパッキン101は、浸透部材30によって、内周面1d側の流体109を外周面1c側へ導いて、外周面1cとパッキンボックス102との間を流れる流体109を、外周面1c側のシール部材20で封止することができる。
【0093】
(5)上記実施形態のシールパッキン1は、浸透部材30が、セラミック製又は金属製である。
この場合、内周面1d側の流体109を確実に外周面10c側へ導くことが可能な浸透部材30を作成することができる。
【0094】
(6)上記実施形態のシールパッキン1は、シール部材20が機外側に位置し、かつ、浸透部材30が機内側に位置する向きで使用される。
この場合、浸透部材30の機外側に必ずシール部材20を配置することができる。このため、より少ない個数のシールパッキン1で流体を封止することができる。
【0095】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1 シールパッキン
1a 一端面
1b 他端面
1c 外周面
1d 内周面
1X 第1シールパッキン
1Y 第2シールパッキン
1Z 第3シールパッキン
10X パッキン本体
10Y パッキン本体
10Z パッキン本体
11 第1パッキン本体
11a 第1端面
11b 第2端面
12 第2パッキン本体
12a 第3端面
12b 第4端面
15 第5パッキン本体
15a 第1端面
15b 第2端面
16 第6パッキン本体
16a 第3端面
16b 第4端面
20 シール部材
20a 外端部
30 浸透部材
30a 外端部
30b 内端部
101 グランドパッキン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11